説明

対向式斜板型ピストンポンプ・モータ

【課題】対向式斜板型ピストンポンプ・モータの構造を簡素化する。
【解決手段】シリンダブロックの両側に第一、第二斜板30、40を備え、第一、第二斜板30、40の傾転角度が変えられる対向式斜板型ピストンモータ1であって、第一、第二斜板30、40を互いに連動させる傾転連動機構45と、第一斜板30を傾転させる単一のサーボ機構33とを備え、このサーボ機構33を用いて第一、第二斜板30、40の傾転角度を互いに同期して変えられる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックの両側に第一、第二斜板を傾転可能に備える対向式斜板型ピストンポンプ・モータの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可変容量形油圧ポンプの斜板を傾転する油圧サーボ機構が開示されている。
【0003】
特許文献2には、シリンダブロックの両側に第一、第二斜板を備え、シリンダブロックの回転に伴って複数の第一、第二ピストンが第一、第二斜板に追従して各シリンダを往復動する対向式(両側)斜板型ピストンポンプ・モータが開示されている。
【特許文献1】特開平11−247990号公報
【特許文献2】特開2005−105898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の対向式斜板型ピストンポンプ・モータにあっては、第一、第二斜板の傾転角度をそれぞれ切換える2つのサーボ機構を設けていたため、製品のコストアップを招くという問題点があった。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、対向式斜板型ピストンポンプ・モータの構造を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シリンダブロックの両側に第一、第二斜板を傾転可能に備え、シリンダブロックの回転に伴って複数の第一、第二ピストンがこの第一、第二斜板に追従して各シリンダを往復動する対向式斜板型ピストンポンプ・モータであって、第一、第二斜板を互いに連動して傾転させる傾転連動機構と、第一、第二斜板とこの傾転連動機構のいずれかを駆動する単一のサーボ機構とを備え、このサーボ機構を用いて第一、第二斜板の傾転角度を最小容量位置から最大容量位置の間で互いに同期して変える構成としたことを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、単一のサーボ機構を用いて第一、第二斜板の傾転角度が最小容量位置から最大容量位置へと互いに同期して連続的に変えられるため、従来装置のように2つのサーボ機構を備える必要がなく、対向式斜板型ピストンポンプ・モータの構造を簡素化し、製品の信頼性を高められるとともにコストダウンがはかれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を作業車両等に変速機として搭載されるHSTのモータに適用した実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0009】
まず、図1に本発明が適用可能なHSTの一例を示す。このHST3は可変容量形油圧ピストンポンプ91と可変容量形油圧ピストンモータ1を組合せたもので、ピストンポンプ91がポンプシャフト92を介して連動する図示しないエンジンによって回転駆動されると、このピストンポンプ91から吐出する作動油によってピストンモータ1が回転駆動され、このモータシャフト5の出力回転が図示しないミッション、ディファレンシャルギヤ等を介して左右の車輪に伝えられる。
【0010】
ピストンモータ1は、シリンダブロック4の両側に第一、第二斜板30、40を備える対向式斜板型ピストンポンプ・モータである。なお、この対向式斜板型ピストンポンプ・モータの基本構造は本出願人により特願2003−338552号として既に出願されている。
【0011】
ピストンモータ1は、ケース25とポートブロック50とによりハウジング室24が形成され、このハウジング室24にシリンダブロック4および第一、第二斜板30、40等が収装される。
【0012】
シリンダブロック4にはその軸心回りの同一円周上に複数のシリンダ6が形成され、このシリンダ6には両側から第一、第二ピストン8、9がそれぞれ挿入され、これらの間に容積室10が画成される。
【0013】
第一、第二ピストン8、9の一端側はシリンダブロック4の両端面からそれぞれ突出し、第一、第二斜板30、40にシュー21、22を介して支持される。
【0014】
シリンダブロック4が回転すると、第一、第二ピストン8、9は第一、第二斜板30、40との間で互いに逆方向に往復動し、シリンダ6の容積室10を拡縮させる。
【0015】
各容積室10に作動油を給排する油通路は、ポートブロック50の第一軸受凹部32に開口する対の軸受ポート(図示せず)と、第一斜板30に開口する対の斜板ポート16(図2参照)と、ポートプレート60に開口するシリンダ6と同数のバルブポート61と、各シュー21を貫通するシューポート19とによって形成される。
【0016】
ピストンモータ1における作動油の流れは、一方の軸受ポート→一方の斜板ポート→バルブポート61→シューポート19→容積室10→シューポート19→バルブポート61→他方の斜板ポート→他方の軸受ポートとなる。こうして各容積室10に導かれる作動油圧によって第一、第二ピストン8、9がシリンダ6を互いに逆方向に往復動し、シリンダブロック4とモータシャフト5が回転する。
【0017】
ピストンモータ1の1回転当たりの押しのけ容積を可変とするため、第一、第二斜板30、40は傾転角度が変えられるようになっており、そのため、第一、第二斜板30、40はその斜板背面ジャーナル部31、41がハーフログ形の円柱面状に形成され、第一、第二軸受凹部32、42に対して傾転可能に支持される。第一、第二斜板30、40の傾転角度は図示しないサーボ機構により切換えられる。
【0018】
HST3の作動時、ピストンポンプ91から吐出される作動油はピストンモータ1に送られて循環し、ピストンモータ1における第一、第二斜板30、40の傾転角度を切換えることにより、ピストンモータ1の1回転当たりの押しのけ容積が変化する。この結果、入力側のポンプシャフト92と出力側のモータシャフト5の回転数の比率はピストンポンプ91とピストンモータ1の押しのけ容積の比に応じて変化する。
【0019】
対向式斜板型ピストンモータ1は最大容量から最小容量までの可変容量比率を従来の非対向式斜板型ピストンポンプ・モータに比べて略2倍にすることが可能となり、HST3の回転速度レンジを大きくすることができる。
【0020】
ところで、こうした従来の対向式斜板型ピストンモータ1にあっては、第一、第二斜板30、40の傾転角度をそれぞれ切換える2つのサーボ機構を設けていたため、製品のコストアップを招くという問題点があった。
【0021】
これに対処して、本発明は、対向式斜板型ピストンポンプ・モータにおいて、単一のサーボ機構を用いて第一、第二斜板の傾転角度をそれぞれ切換える構造を提供するものである。
【0022】
以下、その具体的な例につき図2以下に示した実施形態を説明する。これは基本的には図1のピストンモータ1と同じ構成を有し、相違する部分のみを説明する。なお、図1に示したピストンモータ1と同一構成部には同一符号を付す。
【0023】
図2に示すように、ピストンモータ1のポートブロック50には第一斜板30を傾転させるサーボ機構33が設けられる。このサーボ機構33は、ポートブロック50に摺動可能に収装されるサーボレギュレータピストン34を備え、このサーボレギュレータピストン34が作動油圧によって移動することにより、駆動用係合ピン65、スライドメタル66を介して第一斜板30が傾転する。サーボレギュレータピストン34にはスライドメタル66を摺動可能に係合させる凹部67が形成され、駆動用係合ピン65はスライドメタル66を介して凹部67に係合する。
【0024】
ポートブロック50には同軸上に延びるシリンダ部51、52が形成され、サーボレギュレータピストン34にはこのシリンダ部51、52に摺動可能に嵌合するピストン部35、36が形成され、シリンダ部51、52とピストン部35、36の間に油圧室28、29が形成される。シリンダ部51の開口径はシリンダ部52の開口径より小さく形成され、ピストン部35、36は所定の受圧面積差を持っている。
【0025】
第一油圧室28は油圧源から作動油圧が導かれ、油圧室29は油圧源から作動油圧が図示しない比例電磁減圧弁を介して導かれる。油圧室28に導かれる作動油圧に応じて、サーボレギュレータピストン34のストロークが調節される。油圧室28、29に導かれる作動油圧が同等に保たれると、サーボレギュレータピストン34がピストン部35、36の受圧面積差によって図2に示すように一方のストロークエンドに移動する。油圧室28に導かれる作動油圧が所定値に減圧されると、サーボレギュレータピストン34が他方のストロークエンドに移動する。
【0026】
上記した油圧源にはHST3の油圧ピストンポンプ91の吐出圧を取り出す図示しないシャトル弁と、このシャトル弁から導かれる作動油圧を所定値に減圧する図示しない減圧弁とが備えられる。
【0027】
サーボレギュレータピストン34の動きはスライドメタル66、駆動用係合ピン65を介して第一斜板30に伝えられる。
【0028】
図3に示すように、ピストンモータ1には第一、第二斜板30、40を互いに連動させる傾転連動機構45が設けられる。この傾転連動機構45はケース25に支持ピン49を介して揺動可能に連結される揺動リンク48と、第二斜板40をこの揺動リンク48の一端に係合させる第二係合ピン53と、第一斜板30をこの揺動リンク48の他端に係合させる第一係合ピン54とを備え、後述するように第一、第二斜板30、40の傾転角度が所定の関係をもって変化するように各部の寸法が設定される。
【0029】
第一係合ピン54はスライドメタル75を介して揺動リンク48の凹部58に摺動可能に係合する。第一係合ピン54は第二斜板40の側部から突出している。
【0030】
第二係合ピン53はスライドメタル62を介して揺動リンク48の凹部55に摺動可能に係合する。
【0031】
第二係合ピン53、第一係合ピン54、駆動用係合ピン65は、それぞれの中心軸が第一、第二斜板30、40の傾転中心軸O30、O40と平行に延びるように配置される。
【0032】
図2に示すように、サーボ機構33と傾転連動機構45とが第一斜板30を挟むように配置され、駆動用係合ピン65と第一係合ピン54は第一斜板30の両側部からそれぞれ逆方向に突出するように設けられる。
【0033】
図4の(a)は第二斜板40の側面図、(b)は背面図、(c)は側面図である。図4の(a)、(b)に示すように、第二斜板40の一方の側部には傾転アーム46が突出し、この傾転アーム46の先端部から第二係合ピン53が突出して設けられる。第二係合ピン53は傾転アーム46を介して第二斜板40の傾転中心軸O40より第一斜板30側に配置される。
【0034】
図4の(b)、(c)に示すように、第二斜板40の他方の側部にはブラケット56を介してセンサ軸57が設けられ、このセンサ軸57を介してポテンショメータ59(図1参照)が設けられる。このセンサ軸57は第二斜板40の傾転中心軸O40と同軸上に配置され、ポテンショメータ59は第二斜板40の傾転角度を検出するものである。
【0035】
図5はケース25、揺動リンク48、支持ピン49の断面図である。支持ピン49は揺動リンク48の穴63に摺動可能に挿入され、ナット64を介してケース25に締結される。これにより、揺動リンク48はケース25に支持ピン49を介して揺動可能に支持される。
【0036】
図6の(a)はピストンモータ1が最小容量に切換えられた状態を示し、第一斜板30の傾転角度TH4が0°になり、第二斜板40の傾転角度TH5が6.67°になっている。
【0037】
図6の(b)はピストンモータ1が最大容量に切換えられた状態を示し、第一斜板30の傾転角度TH1が16.3°になり、第二斜板40の傾転角度TH3が同じく16.3°になっている。
【0038】
サーボ機構33のサーボレギュレータピストン34が移動することにより、第一斜板30が傾転するとともに、第二斜板40が傾転連動機構45を介して第一斜板30に連動して傾転し、図6の(a)に示す最小容量位置から図6の(b)に示す最大容量位置へと切換えられ、この間でサーボレギュレータピストン34のストロークに応じてピストンモータ1の容量が連続的に変えられる。
【0039】
なお、図6の(a)において、シリンダブロック4の回転中心軸O4上に第二係合ピン53、第一係合ピン54、支持ピン49の各中心が配置されているが、これに限らず、図6の(b)に示す各部の寸法が次式を満たせば、第二係合ピン53、第一係合ピン54、支持ピン49を任意の位置に配置できる。
TH0=TH1−TH4 …(1)
TH2=TH3−TH5 …(2)
C=Lr*sin(TH0) …(3)
D=Ls*sin(TH2) …(4)
C/D=A/B …(5)
A/B=(Lr*sin(TH0))/(Ls*sin(TH2)) …(6)
ただし、Aは第一係合ピン54と支持ピン49の中心間距離であり、Bは支持ピン49と第二係合ピン53の中心間距離である。Lrは第一係合ピン54の中心と第一斜板30の傾転中心軸O30との距離であり、Lsは第二係合ピン53の中心と第二斜板40の傾転中心軸O40との距離である。Dは第二係合ピン53の中心が支持ピン49の中心に対して図6の(b)において上方向(シリンダブロック4の回転中心軸O4と直交方向)に変位する変位量であり、Cは第一係合ピン54の中心が支持ピン49の中心に対して図6の(b)において下方向(シリンダブロック4の回転中心軸O4と直交方向)に変位する変位量である。
【0040】
以上のように、本実施形態では、シリンダブロック4の両側に第一、第二斜板30、40を備え、シリンダブロック4の回転に伴って第一、第二ピストン8、9が第一、第二斜板30、40に追従してシリンダ6を往復動し、第一、第二斜板30、40の傾転角度が変えられる対向式斜板型ピストンモータ1であって、第一、第二斜板30、40を互いに連動させる傾転連動機構45と、第一斜板30を傾転させる単一のサーボ機構33とを備え、このサーボ機構33を用いて第一、第二斜板30、40の傾転角度を図6の(a)に示す最小容量位置から図6の(b)に示す最大容量位置へと互いに同期して連続的に変えられるため、従来装置のように2つのサーボ機構や比例電磁減圧弁を備える必要がなく、製品の信頼性を高められるとともにコストダウンがはかれる。
【0041】
車両の無段変速機として用いられるHST3の場合、加速、減速のチューニングは従来、ピストンポンプ91の斜板を駆動するサーボレギュレータとピストンモータ1の第一、第二斜板30、40を駆動する各々のサーボレギュレータの計3つで行っていたが、本発明の場合はピストンポンプ91用と、ピストンモータ1用のサーボレギュレータの計2つですみ、チューニング工数を減らせる。
【0042】
なお、本実施形態では、単一のサーボ機構33が第一斜板30を傾転させる構成としたが、これに限らず単一のサーボ機構が第二斜板40または傾転連動機構45を駆動する構成としても良い。
【0043】
また、シリンダブロック4と第一、第二斜板30、40を収容するケース25を備え、傾転連動機構45は、このケース25に支持ピン49を介して揺動可能に連結される揺動リンク48を備え、第一、第二斜板30、40に揺動リンク48に対して摺動可能に係合する第一、第二係合ピン54、53を備え、第一、第二斜板30、40の傾転角度範囲に比例する位置に支持ピン49を配置し、揺動リンク48の一方の揺動端部に係合する第二係合ピン53を傾転アーム46を介して第二斜板40の傾転中心軸O40より第一斜板30側(シリンダブロック4側)に配置するとともに、揺動リンク48の他方の揺動端部に係合する第一係合ピン54を第一斜板30の傾転中心軸O30より第二斜板40と反対側(シリンダブロック4と反対側)に配置するため、第一、第二斜板30、40の傾転角度を図6の(a)に示す最小容量位置から図6の(b)に示す最大容量位置へと互いに同期して連続的に変えられる。
【0044】
なお、これに限らず、第二係合ピン53を第二斜板40の傾転中心軸O40より第一斜板30と反対側(シリンダブロック4と反対側)に配置するとともに、第一係合ピン54を第一斜板30の傾転中心軸O30より第二斜板40側(シリンダブロック4側)に配置しても良い。
【0045】
また、サーボ機構33と傾転連動機構45とが第一斜板30を挟むように配置されたため、ケース25内の限られたスペースにサーボ機構33と傾転連動機構45とをコンパクトに収容し、装置の大型化が避けられる。
【0046】
次に図7、図8に示す他の実施形態を説明する。
【0047】
第一、第二斜板30、40を互いに連動させる傾転連動機構70として、ケース25に対して平行移動するスライドバー71と、第一斜板30をこのスライドバー71の一端に係合させる第一係合ピン73と、第二斜板40をこのスライドバー71の他端に係合させる第二係合ピン74とを備え、後述するように第一、第二斜板30、40の傾転角度が所定の関係をもって変化するように各部の寸法が設定される。
【0048】
スライドバー71はケース25に対して一対のガイド72を介して支持され、シリンダブロック4の回転中心軸O4と直交方向に平行移動する。
【0049】
第一係合ピン73はスライドバー71の凹部77に摺動可能に係合する。第一係合ピン73は第一斜板30の側部から突出している。第一係合ピン73は第一斜板30の傾転中心軸O30より第二斜板40と反対側に配置される。
【0050】
第二係合ピン74はスライドバー71の凹部78に摺動可能に係合する。第二係合ピン74は第一斜板30から突出する傾転アーム76の先端部から突出している。第二係合ピン74は傾転アーム76を介して第二斜板40の傾転中心軸O40より第一斜板30と反対側に配置される。
【0051】
第一係合ピン73、第二係合ピン74、駆動用係合ピン65(図2参照)は、それぞれの中心軸が第一、第二斜板30、40の傾転中心軸O30、O40と平行に延びるように配置される。
【0052】
図7はピストンモータ1が最小容量に切換えられた状態を示し、第一斜板30の傾転角度TH3が0°になり、第二斜板40の傾転角度TH4が6.67°になっている。
【0053】
図8はピストンモータ1が最大容量に切換えられた状態を示し、第一斜板30の傾転角度TH1が16.3°になり、第二斜板40の傾転角度TH2が同じく16.3°になっている。
【0054】
サーボ機構33のサーボレギュレータピストン34が移動することにより、駆動用係合ピン65を介して第一斜板30が傾転するとともに、第二斜板40が傾転連動機構70を介して第一斜板30に連動して傾転し、図7に示す最小容量位置から図8に示す最大容量位置へと切換えられ、この間でサーボレギュレータピストン34のストロークに応じてピストンモータ1の容量が連続的に変えられる。
【0055】
上記したように第一、第二斜板30、40を傾転させるため、第一、第二斜板30、40の傾転角度範囲に比例する位置に第一係合ピン73、第二係合ピン74を配置する。このような構成にするため、図8に示すように、各部の寸法が次式を満たすように設定される。
D1/D2=(TH1−TH3)/(TH2−TH4) …(4)
ただし、D1は第一斜板30の傾転中心軸O30を中心とする第一係合ピン73の中心O73が傾転する軌跡の直径であり、D2は第二斜板40の傾転中心軸O40を中心とする第二係合ピン74の中心O74が傾転する軌跡の直径であり、TH1、TH2は図8に示す最大容量位置における第一、第二斜板30の傾転角度であり、TH3、TH4は図7に示す最小容量位置における第一、第二斜板30の傾転角度である。
【0056】
本実施形態では、シリンダブロック4と第一、第二斜板30、40を収容するケース25を備え、傾転連動機構70は、このケース25に対して平行移動するスライドバー71を備え、第一、第二斜板30、40にスライドバー71に対して摺動可能に係合する第一、第二係合ピン53、54を連結するため、第一、第二斜板30、40の傾転角度を図7に示す最小容量位置から図8に示す最大容量位置へと互いに同期して連続的に変えられる。
【0057】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、斜板型油圧ピストンポンプ・モータとして油圧ポンプにも適用でき、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、HSTを構成する油圧モータまたは油圧ポンプをはじめ、種々の斜板型油圧ビストンポンプ・モータに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明が適用されるHSTの断面図。
【図2】本発明の実施の形態を示す傾転連動機構とサーボ機構の断面図。
【図3】同じく傾転連動機構の側面図。
【図4】同じく第一斜板の三面図。
【図5】同じくケースと揺動リンクの断面図。
【図6】同じく傾転連動機構の動作を示す側面図。
【図7】他の実施の形態を示す傾転連動機構の側面図。
【図8】同じく傾転連動機構の動作を示す側面図。として、同じくポートブロックの平面図。
【符号の説明】
【0060】
1 ピストンモータ
3 HST
4 シリンダブロック
5 シャフト
6 シリンダ
8 第一ピストン
9 第二ピストン
25 ケース
30 第一斜板
33 サーボ機構
40 第二斜板
45 傾転連動機構
48 揺動リンク
49 支持ピン
53 第一係合ピン
54 第二係合ピン
70 傾転連動機構
71 スライドバー
73 第一係合ピン
74 第二係合ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックの両側に第一、第二斜板を傾転可能に備え、シリンダブロックの回転に伴って複数の第一、第二ピストンがこの第一、第二斜板に追従して各シリンダを往復動する対向式斜板型ピストンポンプ・モータであって、
前記第一、第二斜板を互いに連動して傾転させる傾転連動機構と、前記第一、第二斜板とこの傾転連動機構のいずれかを駆動する単一のサーボ機構とを備え、このサーボ機構を用いて前記第一、第二斜板の傾転角度を最小容量位置から最大容量位置の間で互いに同期して変える構成としたことを特徴とする対向式斜板型ピストンポンプ・モータ。
【請求項2】
前記シリンダブロックと前記第一、第二斜板を収容するケースを備え、前記傾転連動機構はこのケースに対して支持ピンを介して揺動可能に支持される揺動リンクを備え、前記第一、第二斜板にこの揺動リンクに対して揺動可能に係合する第一、第二係合ピンを備え、前記第一、第二斜板の傾転角度範囲に比例する位置に前記支持ピンを配置したことを特徴とする請求項1記載の対向式斜板型ピストンポンプ・モータ。
【請求項3】
前記傾転連動機構は前記第一、第二係合ピンの一方をこれが備えられる前記第一、第二斜板の傾転中心軸より前記シリンダブロック側に配置するとともに、前記第一、第二係合ピンの他方をこれが備えられる前記第一、第二斜板の傾転中心軸より前記シリンダブロックと反対側に配置することを特徴とする請求項2に記載の対向式斜板型ピストンポンプ・モータ。
【請求項4】
前記シリンダブロックと前記第一、第二斜板を収容するケースを備え、前記傾転連動機構はケースに対して平行移動可能に支持されるスライドバーを備え、前記第一、第二斜板にこのスライドバーに対して揺動可能に係合する第一、第二係合ピンを備え、前記第一、第二斜板の傾転角度範囲に比例する位置にこの第一、第二係合ピンを配置したことを特徴とする請求項1に記載の対向式斜板型ピストンポンプ・モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−231924(P2008−231924A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68157(P2007−68157)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】