説明

封止充填剤及び半導体装置

【課題】柔軟性及び耐マイグレーション性に優れ、アウトガスの発生を十分に低減した封止充填剤及びそれを用いた半導体装置を提供すること。
【解決手段】
本発明の封止充填剤は、150℃における溶融粘度が30〜10000Pa・sであり、1%重量減少温度が350℃以上であるポリイミド樹脂を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止充填剤及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の小型化、軽量化及び薄型化が急速に進むのに伴って、それに用いられる半導体装置並びにそれを構成する半導体チップ及び配線回路基板の小型化、軽量化及び薄型化が求められている。また、配線回路基板を構成する材料も、ガラスエポキシ等のリジッドな材料からポリイミドフィルム等のフレキシブルな材料へ移行しつつある。
【0003】
一般に、半導体チップは、配線回路基板上に実装され、実装方法としては、半導体チップのバンプと配線回路基板の電極とを、半田や共晶金属を用いて接合して導通するフリップチップ実装方法が用いられている。フリップチップ実装で作製した半導体装置の場合、半導体チップと配線回路基板との線膨張係数の差から熱衝撃に対する接続信頼性が低下することがある。そこで、フリップチップ実装では、半導体チップと配線回路基板との間に封止充填剤を配置し、接合部分に発生する応力を緩和することで、接続信頼性を高めている。
【0004】
封止充填剤を配置する方法としては、半導体チップのバンプと配線回路基板の電極とを接合した後に、半導体チップと配線回路基板との間隙に低粘度の液状熱硬化性樹脂組成物を毛細管現象により注入して充填し、熱硬化する方法が用いられている。しかしながら、半導体装置の更なる小型化の要求に伴い、配線間隙や半導体チップと配線回路基板との間隙をさらに狭めるファインピッチ化が求められており、上記方法では、作業効率が低下し、封止充填剤を隙間無く配置することが難しくなってきている。
【0005】
そこで、半導体チップ又は配線回路基板の所定の位置に予め封止充填剤を塗布又は滴下した後、半導体チップと配線回路基板とを加熱圧着して接合することで、封止充填する方法が検討されている。特許文献1では、封止充填剤としてエポキシ系熱硬化性樹脂を用いた接合方法が開示されている。
【特許文献1】特許第3750606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、エポキシ系熱硬化性樹脂は、吸水性が高く、また、その製造法に由来してイオン性不純物の含有量が比較的多い。そのため、封止充填剤としてエポキシ系熱硬化性樹脂を用いた場合、高温高湿下での連続電圧印加試験において配線回路基板の電極腐食を誘発し、回路がショートすることがある。また、エポキシ系熱硬化性樹脂は、硬化速度や硬化温度の制限から、フレキシブル配線板に追随できる柔軟性が低く、フレキシブル配線板基材や、ソルダーレジスト等の周辺部材にストレスを与えることがあり、それが配線回路基板の電極腐食を誘発し、回路がショートすることがある。そこで、封止充填剤には、可とう性が向上し、配線回路基板の電極腐食を誘発しないこと、すなわち、耐マイグレーション性の向上が望まれている。また、フリップチップ実装では、半導体チップのバンプと配線基板の電極とを接合する際に300〜350℃程度の高温を必要とするため、封止充填剤から発生するアウトガスを低減することが望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、可とう性及び耐マイグレーション性に優れ、アウトガスの発生を十分に低減した封止充填剤及びそれを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、150℃における溶融粘度が30〜10000Pa・sであり、1%重量減少温度が350℃以上であるポリイミド樹脂を含有する、封止充填剤を提供する。
【0009】
これにより、可とう性及び耐マイグレーション性に優れ、アウトガスの発生を十分に低減できる。上記封止充填剤によれば、特定の特性を備えるポリイミド樹脂を含有することにより、フレキシブル配線板へのフリップチップ実装方法において、半導体チップと配線回路基板との間を隙間無く充填でき、接合時の加熱による樹脂の分解や発泡を十分に低減し、硬化後の電気絶縁性が高く、配線回路基板上の電極の腐食を十分に抑制することができる。
【0010】
本発明の封止充填剤において、ポリイミド樹脂が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【化1】

【0011】
ここで、式(1)中、Arは4価の有機基を示し、Arは2価の有機基を示し、Ar及び/又はArは主鎖に炭素数5〜20のアルキレン鎖を含む。これにより、封止充填剤は、可とう性及び耐マイグレーション性にさらに優れ、アウトガスの発生をより一層低減できる。
【0012】
また、上記Arが、下記一般式(2)で表される基であると、封止充填剤の可とう性をより一層向上することができる。
【化2】

【0013】
ここで、式(2)中、Xは炭素数5〜20のアルキレン基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜3の整数を示す。mが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【0014】
上記一般式(1)において、Arが下記一般式(3)で表される2価の基であると、可とう性に優れ、反りを低減することができる。
【化3】

【0015】
ここで、式(3)中、Zは単結合又は2価の有機基を示し、Y及びYはそれぞれ独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示す。
【0016】
耐熱性の観点から、上記Zが、下記一般式(4)、(5)及び(6)でそれぞれ表される2価の基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましく、これにより、耐熱性が向上し、アウトガスをより一層低減できる。
【化4】

【0017】
ここで、式(4)、(5)及び(6)中、R、R及びR10は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、q、r及びsは、それぞれ独立に1〜4の整数を示す。qが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、rが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、sが2以上の場合、複数存在するR10は同一でも異なっていてもよい。
【0018】
上記ポリイミド樹脂が、下記一般式(7)で表される繰り返し単位を更に有することが好ましい。これにより、耐熱性が向上し、アウトガスを低減できるという本発明の効果をより一層有効かつ確実に発揮することができる。
【化5】

【0019】
ここで、式(7)中、Arは下記一般式(2)で表される4価の有機基を示し、Arは、芳香族炭化水素基を含む2価の有機基を示す。
【化6】


式(2)中、Xは炭素数5〜20のアルキレン基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜3の整数を示す。mが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【0020】
また、上記一般式(7)において、Arが、置換基を有していてもよいアリーレン基、下記一般式(8)で表される基及び下記一般式(9)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましい。これにより、ポリイミド樹脂の150℃における溶融粘度を良好な範囲にすることができ、かつ、耐熱性を向上することができる。
【化7】


【化8】

【0021】
ここで、式(8)及び(9)中、D及びEはそれぞれ独立に単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、スルホニル基、メチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基、下記式(i)で表される基又は下記式(ii)で表される基を示し、R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、t1、t2、t3、t4、t5及びt6はそれぞれ独立に1〜4の整数を示す。t1が2以上の場合、複数存在するR11は同一でも異なっていてもよく、t2が2以上の場合、複数存在するR12は同一でも異なっていてもよく、t3が2以上の場合、複数存在するR13は同一でも異なっていてもよく、t4が2以上の場合、複数存在するR14は同一でも異なっていてもよく、t5が2以上の場合、複数存在するR15は同一でも異なっていてもよく、t6が2以上の場合、複数存在するR16は同一でも異なっていてもよい。
【0022】
また、アウトガスをより一層低減するためには、ポリイミド樹脂のイミド化率が80%以上であることが好ましい。
【0023】
本発明は、半導体チップと、配線回路基板と、半導体チップ及び配線回路基板の間に形成された接合層とを備える半導体装置であって、接合層が上記封止充填剤を用いて形成されている半導体装置を提供する。このような半導体装置は、半導体チップと配線基板との間が本発明の封止充填剤の硬化物で隙間無く充填されているため、反りの発生が小さく、電気的な接続信頼性にも十分に優れるものとなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、可とう性及び耐マイグレーション性に優れ、アウトガスの発生を十分に低減した封止充填剤及びそれを用いた半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0026】
[封止充填剤]
本発明の封止充填剤は、150℃における溶融粘度が30〜10000Pa・sであり、1%重量減少温度が350℃以上であるポリイミド樹脂を含有する。これにより、可とう性及び耐マイグレーション性に優れ、アウトガスの発生を十分に低減した封止充填剤を提供することができる。
【0027】
封止充填剤は、半導体チップと配線基板のような異なる基材間を接合するための接着剤として機能するだけでなく、封止充填剤から形成される接合層は、金属接合部への負荷を低減するための応力緩和層として機能することができる。
【0028】
(ポリイミド樹脂)
上記ポリイミド樹脂は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。一般式(1)中、Arは4価の有機基を示し、Arは2価の有機基を示し、Ar及び/又はArは主鎖に炭素数5〜20のアルキレン鎖を含む。
【0029】
ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とから公知の方法によって合成される。テトラカルボン酸二無水物成分及び/又はジアミン成分は、主鎖に炭素数5〜20のアルキレン基を含むことが好ましい。炭素数5〜20のアルキレン基を含むことで、封止充填剤として用いた場合、低温硬化性、可とう性、低吸水性及び低反り性を達成することができる。
【0030】
また、テトラカルボン酸二無水物成分及び/又はジアミン成分が主鎖に芳香族基を有する場合、耐熱性が向上するため、アウトガスの発生をより一層低減できる。
【0031】
一方、ポリイミド樹脂は、ポリアルキレンオキシ基等のエーテル結合を含まないことが好ましい。エーテル結合は、高温で結合が壊れやすく、耐熱性が低下し、アウトガスが発生し易くなる。また、ポリイミド樹脂がエーテル結合を有すると、吸水性が増し、絶縁特性に影響を及ぼすこともある。
【0032】
テトラカルボン酸二無水物成分は、主鎖に炭素数5〜20のアルキレン基を有することが好ましく、上記一般式(2)で表される基を有することがより好ましい。このようなテトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、下記一般式(10)で表される化合物が挙げられる。
【0033】
【化9】


ここで、式(10)中、Xは炭素数5〜20アルキレン基であり、8〜15のアルキレン基であることが好ましい。
【0034】
一般式(10)で表される化合物としては、例えば、ペンタメチレンビストリメリテート二無水物、ヘキサメチレンビストリメリテート二無水物、ヘプタメチレンビストリメリテート二無水物、オクタメチレンビストリメリテート二無水物、ノナメチレンビストリメリテート二無水物、デカメチレンビストリメリテート二無水物、ドデカメチレンビストリメリテート二無水物が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
また、ポリイミド樹脂を合成するにあたり、上記主鎖に炭素数5〜20のアルキレン基を有するテトラカルボン酸二無水物成分以外のテトラカルボン酸二無水物を併用してもよい。このようなテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物(4,4’−オキシジフタル酸二無水物)、2,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]ノナン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]デカン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]トリデカン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]テトラデカン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル〕ペンタデカン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]−2−メチルデカン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]−2−メチルオクタン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]−2−エチルペンタデカン二無水物、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]ドデカン二無水物、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]デカン二無水物、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]トリデカン二無水物、2,2−ビス[3,5−ジエチル−4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]ペンタデカン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]シクロヘキサン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]プロピルシクロヘキサン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]ヘプチルシクロヘキサン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、4,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物が挙げられる。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0036】
ジアミン成分としては、主鎖に炭素数5〜20のアルキレン鎖を有することが好ましく、上記一般式(3)で表される2価の基を有することがより好ましい。なお、式(3)中、Y及びYは、それぞれ独立に炭素数5〜20のアルキレン基であり、6〜10のアルキレン基であることが好ましい。また、一般式(3)において、Zは、単結合又は2価の有機基を示し、Zが2価の有機基である場合、上記一般式(4)、(5)及び(6)でそれぞれ表される2価の基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましい。
【0037】
主鎖に炭素数5〜20のアルキレン基を有するジアミン成分としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン並びに下記一般式(11)、(12)及び(13)でそれぞれ表される化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0038】
【化10】


ここで、式(11)中、Y及びYは、それぞれ独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、qは1〜4の整数を示す。なお、qが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。上記一般式(11)で表される化合物を含有するジアミン成分として、例えば、1,4−ビス(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メトキシ−4−アミノペンチル)ベンゼンが挙げられる。
【0039】
【化11】


ここで、式(12)中、Y及びYそれぞれ独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、rは1〜4の整数を示す。なお、rが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【0040】
【化12】


ここで、式(13)中、Y及びYはそれぞれ独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示し、R10は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、sは1〜4の整数を示す。なお、sが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【0041】
上記一般式(12)で表される化合物を含有するジアミン成分として、[3,4−ビス(1−アミノヘプチル)−6−ヘキシルー5−(1−オクテニル)]シクロヘキセン(コグニスジャパン社製、商品名「バーサミン551」)が市販品として入手可能である。ここで、「バーサミン551」は、下記式(21)で表される化合物及び/又は下記(21)で表される化合物の不飽和部が水添された化合物を含むジアミン化合物である。
【化13】

【0042】
また、ジアミン成分として、耐熱性(1%重量減少温度)を向上させる観点から、芳香族炭化水素基を有するジアミン化合物を、上記主鎖に炭素数5〜20のアルキレン鎖を有するジアミン化合物と併用して用いることが好ましい。芳香族炭化水素基を有するジアミン化合物として、置換基を有していてもよいアリーレン基、上記一般式(8)で表される基及び一般式(9)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有するジアミン化合物を、主鎖に炭素数5〜20のアルキレン鎖を有するジアミン化合物と併用して用いることがより好ましい。
【0043】
上記一般式(8)で表される基を有するジアミン化合物としては、下記一般式(14)で表されるジアミン化合物が挙げられる。
【0044】
【化14】


ここで、式(14)中、Dは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、スルホニル基、メチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基、下記式(i)で表される基又は下記式(ii)で表される基を示し、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、t1及びt2はそれぞれ独立に1〜4の整数を示す。t1が2以上の場合、複数存在するR11は同一でも異なっていてもよく、t2が2以上の場合、複数存在するR12は同一でも異なっていてもよい。
【化15】

【0045】
上記一般式(9)で表される基を有するジアミン化合物としては、下記一般式(15)で表されるジアミン化合物が挙げられる。
【0046】
【化16】


ここで、式(15)中、Eは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、スルホニル基、メチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基、上記式(i)で表される基又は上記式(ii)で表される基を示し、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、t3、t4、t5及びt6はそれぞれ独立に1〜4の整数を示す。t3が2以上の場合、複数存在するR13は同一でも異なっていてもよく、t4が2以上の場合、複数存在するR14は同一でも異なっていてもよく、t5が2以上の場合、複数存在するR15は同一でも異なっていてもよく、t6が2以上の場合、複数存在するR16は同一でも異なっていてもよい。
【0047】
上記芳香族炭化水素基を有するジアミン化合物としては、例えば、4,4’−ジアミノジベンジルスルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、ビス(4−アミノフェニル)エチルホスフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、1,2−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノ−2−メチルナフタレン、1,5−ジアミノ−2−メチルナフタレン、1,3−ジアミノ−2−フェニルナフタレン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノトルエン、1−メトキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジメチルベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジメチルベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メトキシ−5−メチルベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、o−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート、1,1−ビス(4−アミノフェニル)−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)デカフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ブタ−1−エン−3−イン4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(3−アミノフェニル)エーテル、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−トルイジン)スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(5−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。これらのジアミン成分は、1種を単独で又は2種以上併用して使用してもよい。
【0048】
また、本発明において、上記一般式(11)〜(15)で表されるジアミン化合物以外のジアミン化合物を併用することができる。一般式(11)〜(15)で表されるジアミン化合物以外のジアミン化合物としては、例えば、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,2’−ジアミノジエチルスルフィドが挙げられる。これらのジアミン成分は、1種を単独で又は2種以上を併用して使用してもよい。本発明において、溶融粘度、耐熱性(1%重量減少温度)、吸水率及び耐マイグレーション性を良好にできる観点から、一般式(10)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、一般式(11)又は(12)で表されるジアミン化合物と、置換基を有していてもよいアリーレン基を有するジアミン化合物、一般式(14)又は(15)で表されるジアミン化合物と、から合成されるポリイミド樹脂が好ましい。
【0049】
上記芳香族炭化水素基を有するジアミン化合物を用いる場合の添加量は、ジアミン成分全量に対して、1〜80モル%であることが好ましく、5〜50モル%であることがより好ましく、20〜40モル%であることがさらに好ましい。芳香族炭化水素基を有するジアミン化合物の添加量が1モル%未満では耐熱性が不足する傾向があり、アウトガスが発生し易くなり、80モル%を超えると、ポリイミド樹脂の流動性が不足し150℃における溶融粘度が高くなる傾向にあり、ボイド発生の要因となり易い。
【0050】
なお、ジアミン成分として、上述したジアミン化合物以外のジアミン化合物を本発明が奏する効果の範囲を逸脱しない範囲で併用することができる。
【0051】
ポリイミド樹脂は、上記テトラカルボン酸二無水物成分と上記ジアミン成分とを選択的に組み合わせ、有機溶媒中で反応させることにより合成することができる。具体的には、ポリイミド樹脂は、ほぼ当モルのテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを有機溶媒中、30〜80℃で2〜3時間付加重合してポリアミック酸を合成した後、120℃以上、好ましくは150℃以上で1〜5時間脱水縮合して閉環させてイミド化することで得られる。
【0052】
耐熱性及び保存安定性を良好にする観点から、イミド化率が80%以上となるように閉環させることが好ましく、90%以上となることがより好ましく、95%以上となることがさらに好ましい。
【0053】
上記溶媒としては、例えば、含窒素系溶剤類(N,N’−ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジエチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチレンホスホアミド、N−メチルピロリドン等)、ラクトン類(γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等)、脂環式ケトン類(シクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン等)、エーテル類(3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルアセテート等)が挙げられる。これらの中でも、溶解性及び吸水性の観点から、含窒素系溶剤類、脂環式ケトン類がより好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキサノンが特に好ましい。これらは、1種を単独又は2種以上混合して使用することができる。また、ポリアミック酸を合成した後、脱水縮合反応によるイミド化を促進するために、水と共沸する溶媒(例えば、トルエン)を添加してもよい。なお、封止充填剤として使用する場合の乾燥温度を低くするために、ポリイミドを合成した後、合成時に用いた溶媒の一部を除去して、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン)等の沸点が比較的低い溶媒に置換してもよい。
【0054】
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分との組合せは、最終的に形成されるポリイミド樹脂からなる硬化膜の耐熱性、機械的特性、電気的特性等を考慮して、上述した成分の中から選択することができる。
【0055】
ポリイミド樹脂の150℃における溶融粘度は、30〜10000Pa・sであり、40〜6000Pa・sであることが好ましく、100〜5000Pa・sであることがより好ましい。上記溶融粘度が30Pa・s未満では、目的の厚みで接着層を形成し難くなり、10000Pa・sを超えると、封止充填剤の可とう性が低下し、実装時に半導体チップと配線基板との間を隙間無く充填し難くなる。
【0056】
ポリイミド樹脂の150℃における溶融粘度を30〜10000Pa・sにするためには、ポリイミド樹脂中のポリイミド構造繰り返し単位当たりの平均分子量を800〜1500とすることが好ましく、850〜1200とすることがより好ましく、900〜1100とすることが特に好ましい。なお、上記ポリイミド構造繰り返し単位当たりの平均分子量は、ポリイミド樹脂合成時のテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分の配合割合(モル比)から計算できる。
【0057】
ポリイミド樹脂の1%重量減少温度は、350℃以上であり、360℃以上であることが好ましく、370℃以上であることがより好ましい。上記1%重量減少温度が350℃未満では、耐熱性が低下するため、アウトガスが発生し易くなる。なお、ポリイミド樹脂の1%重量減少温度の上限は特に制限されないが、通常、400℃程度である。
【0058】
また、150℃以下におけるポリイミド樹脂の流動性及び溶媒への溶解性を良好にする観点から、ポリイミド樹脂の数平均分子量は、1000〜30000であることが好ましく、2000〜15000であることがより好ましく、3000〜10000であることが特に好ましい。ポリイミド樹脂の数平均分子量が1000未満では、耐熱性が不十分となる傾向があり、30000を超えると溶融粘度が高くなり流動性が低下する傾向がある。
【0059】
(ポリイミド以外の樹脂)
封止充填剤は、上記ポリイミド樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有することができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、使用条件(使用温度等)に合わせて選択することが好ましい。
【0060】
また、封止充填剤には、各種基材との接着性を向上し、耐マイグレーション性をさらに向上させるため、各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、消泡剤、シランカップリング剤、酸化防止材、無機又は有機フィラー、顔料が挙げられる。
【0061】
封止充填剤は、必要に応じて溶媒を添加して粘度を調整し、ペースト状で使用することができる。使用できる溶媒としては、ポリイミド樹脂並びに必要に応じて含まれる熱可塑性樹脂及び添加剤と反応性がなく、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限されない。ペースト状の封止充填剤を用いる場合、半導体チップ又は配線回路基板に封止充填剤からなる層を印刷等により形成した後、封止充填剤が溶融する温度まで加熱・加圧して半導体チップと配線回路基板とを接合することができる。
【0062】
また、封止充填剤は、フィルム状にして用いることもできる。この場合、封止充填剤を必要に応じて溶媒を添加して粘度を調整した溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離形紙等の剥離性基材上に塗布し、あるいは不織布等の基材に上記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶媒等を除去してフィルム状の封止充填剤を作製する。フィルムの形状で使用すると取扱性の点から一層便利である。フィルム状封止充填剤を用いる場合、半導体チップ又は配線回路基板にフィルム状封止充填剤を配置した後、封止充填剤が溶融する温度まで加熱・加圧して半導体チップと配線回路基板とを接合することができる。
【0063】
この時の接合温度は、半導体に対する負荷軽減、半導体装置の反りの軽減及び錫めっき等の金属の溶融温度の観点から、200℃〜500℃が好ましく、250℃〜450℃がより好ましく、350℃〜420℃がさらに好ましい。また、接合圧力は、0.02〜0.12N/バンプが好ましく、0.03〜0.08N/バンプがより好ましく、0.04〜0.06N/バンプがさらに好ましい。
【0064】
封止充填剤は、耐マイグレーション性を向上する観点から、イオン性不純物の含有量が少ないことが好ましい。一般に、エポキシ樹脂と比較して、ポリイミド樹脂はイオン性不純物の含有量が少ないことが知られており、本発明の封止充填剤はイオン性不純物の含有量が少なく、イオン性不純物に起因するマイグレーションの発生を抑制することができる。イオン性不純物としては、塩素イオン等が挙げられる。封止充填剤中に含有される塩素イオンの含有量は、5ppm以下であることが好ましく、3ppm未満であることがより好ましく、1ppm未満であることが更に好ましい。
【0065】
また、封止充填剤から形成される接合層の弾性率は、10〜3500MPaであることが好ましく、10〜3000MPaであることがより好ましく、50〜2800MPaであることがさらに好ましく、50〜1500MPaであることが特に好ましく、100〜1000MPaであることが最も好ましい。
【0066】
上記接合層の線膨張係数は、300ppm/℃以下であることが好ましく、200ppm/℃以下であることがより好ましく、150ppm/℃以下であることがさらに好ましい。
【0067】
接合層の弾性率が3500MPaを超え、かつ、線膨張係数が300ppm/℃を超えると、フリップチップ実装品を構成する材料間に応力が発生し、クラック又は剥離の原因となり、耐マイグレーション性を低下させる傾向がある。また、弾性率が高すぎると、半導体チップに与える応力が増大し、半導体装置に不具合が生じたり、反りが生じて変形したりする傾向がある。
【0068】
上記接合層の吸水率は、封止充填剤から形成される硬化膜の厚みを20μmとした場合、水に25℃24時間浸漬後、絶縁特性(耐マイグレーション性)向上の観点から、2%未満であることが好ましく、1.5%未満であることがより好ましく、0.5%未満であることがさらに好ましい。
【0069】
また、接合層は、フレキシブル配線基板やソルダーレジストに追随して折り曲げ可能であることが好ましい。折り曲げ性が低いと、フレキシブル配線基板を装置に組み込む際に折り曲げた場合、接合層の端部が半導体チップや配線基板から剥離したり、接合層にクラックが生じたりし、耐マイグレーション性を低下させる傾向がある。
【0070】
本発明の封止充填剤は、例えば、回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ、ダイボンド接着材等に代表される半導体素子接着剤として使用することができる。
【0071】
[半導体装置]
上記封止充填剤を用いフリップチップ実装により半導体装置を作製することができる。本発明の半導体装置は、半導体チップと、配線回路基板と、半導体チップ及び配線回路基板の間に形成された接合層とを備える半導体装置であって、接合層が上記封止充填剤を用いて形成されている。
【0072】
図1は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示すように、本実施形態の半導体装置20Aは、相互に対向する配線回路基板であるフィルム状基材1及び半導体チップ10を備えており、フィルム状基材1と半導体チップ10との間には、これらを接合する接合層6A’が設けられている。
【0073】
フィルム状基材1は、フィルム状基材1の主面に所定の間隔で形成された銅配線2を備え、銅配線2には、銅配線2の所定部分を覆うように金属めっき3が施され、銅配線2の金属めっき3が施されていない部分にはソルダーレジスト4が形成されている。ここで、ソルダーレジスト4は、耐熱性コーティング材からなり、接合部分以外のパターン等の保護膜として機能する。また、金属めっき3としては、錫又は金めっきが好ましいが、特に限定されるものではない。一方、半導体チップ10には、半導体チップ10の主面上に所定の間隔でメタルポスト11が形成され、さらにメタルポスト11上にはバンプ12が形成されている。バンプ12と銅配線2とは電気的に接続している。
【0074】
次に、本発明の封止充填剤を用いて半導体チップ10とフィルム状基材1とを接合するフリップチップ実装方法について、その工程図である図2を参照にしつつ、説明する。
【0075】
まず、銅配線2を備えるフィルム状基材1を用意する。銅配線2は半導体チップの実装位置5を確保するために所定の間隔で形成されている(図2(a)参照)。次に、フィルム状封止充填剤6Aを用意し、半導体チップの実装位置5を覆うように、フィルム状基材1上に配置する(図2(b)参照)。フィルム状封止充填剤6Aを配置する法としては、ラミネート法が挙げられ、加温しながら熱圧着することで封止充填剤からなる層をフィルム状基材1上に形成することができる。この際の加熱温度としては、50℃〜160℃が好ましく、80℃〜130℃がより好ましい。なお、図2(b)では、フィルム状封止充填剤6Aが直接ソルダーレジスト4に接しているが、一例を図示したものであり、図示の例に限らず種々の態様を含むことができる。
【0076】
次に、半導体チップ10を用意し、半導体チップ10上のバンプ12とフィルム状基材1A上に形成されている金属めっき3とが対向するように配置し、所定温度で加熱しながら半導体チップ10とフィルム状基材1とを押圧装置15によって加圧する。(図2(c)参照)この時、超音波接合を行ってもよい。
【0077】
以上のようにして、半導体チップ10のバンプ12とフィルム状基材1の金属めっき3とが接続され、バンプ12と金属めっき3との接続部の近傍がフィルム状封止充填剤6Aを加熱溶融した後に再硬化してなる接合層6A’で封止されたフリップチップ実装品である半導体装置20Aを製造することができる(図2(d)参照)。
【0078】
上記フィルム状封止充填剤は、熱硬化性樹脂を含有しないため保存安定性に極めて優れている。よって、フリップチップ実装時に、半導体チップ又は配線回路基板上にフィルム状封止充填剤を配置した後、半導体チップと配線回路基板との加熱接合までの放置時間に制限はない。また、一般的な熱硬化性樹脂に必要な接合後のアフターキュアーを必要としないため、工程を短縮することができる。さらに、加熱接合後、低温で加熱・加圧処理することにより短時間で接合層内のボイド消失することが可能である。
【0079】
このように、本発明の封止充填剤を用いた実装方法より、電気的な接続信頼性に十分に優れる半導体装置を作製することができる。
【0080】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0081】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0082】
(分子量の測定)
ポリイミド樹脂の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算して求めた。GPCの測定条件を以下に示す。
ポンプ:日立 L−6000型(日立製作所社製、商品名)
検出器:日立 L−3300型RI(日立製作所社製、商品名)
カラム:Gelpack GL−S300MDT−5(計2本)(以上、日立化成工業社製、商品名)
溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/THF(テトラヒドロフラン)(質量比1/1)
流量:1mL/分
【0083】
(実施例1)
攪拌機、温度計、窒素導入管及びディーンスタ−ク還流冷却器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、テトラカルボン酸二無水物成分として、デカメチレンビストリメリテート二無水物(黒金化成社製、商品名「DBTA−KU」)7.3g(14mmol)及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)18.05g(56mmol)、ジアミン成分として、「バーサミン551」(コグニスジャパン社製、商品名)38.86g(70mmol)、溶媒として、シクロヘキサノン164gを加え、40℃で15分間攪拌し反応を行った。次いで、上記反応液を150℃まで昇温し、3時間加熱還流を行い、生成する水及び溶媒の一部を除去しながらイミド化反応を行った。次に、上記反応液を40℃まで冷却した後、固形分が30質量%になるように調整して、ポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液からなる封止充填剤を作製した。得られたポリイミド樹脂のMnは7200であり、分散度(Mw/Mn)は2.6であった。また、ポリイミド樹脂中のポリイミド構造繰り返し単位当たりの平均分子量は881であった。
【0084】
(実施例2)
攪拌機、温度計、窒素導入管及びディーンスタ−ク還流冷却器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、テトラカルボン酸二無水物成分として、「DBTA−KU」36.55g(70mmol)、ジアミン成分として、「バーサミン551」19.46g(35mmol)、溶媒として、シクロヘキサノン164gを加え、40℃で15分攪拌し反応を行った。次いで、上記反応液中へジアミン成分として2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(和歌山精化社製、商品名「BAPP」)14.36g(35mmol)を30分かけて添加し、添加後、150℃まで昇温し、3時間加熱還流を行い、生成する水及び溶媒の一部を除去しながらイミド化反応を行った。次に、上記反応液を40℃まで冷却した後、固形分が30質量%になるように調整して、ポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液からなる封止充填剤を作製した。得られたポリイミド樹脂のMnは7200、分散度は2.6であった。また、ポリイミド樹脂中のポリイミド構造繰り返し単位当たりの平均分子量は969であった。
【0085】
(実施例3)
攪拌機、温度計、窒素導入管及びディーンスタ−ク還流冷却器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、テトラカルボン酸二無水物成分として、「DBTA−KU」36.55g(70mmol)、ジアミン成分として、「バーサミン551」23.36g(42mmol)、溶媒として、シクロヘキサノン164gを加え、40℃で15分攪拌し反応を行った。次いで、上記反応液中へジアミン成分として「BAPP」11.49g(28mmol)を30分かけて添加し、添加後、150℃まで昇温し、3時間加熱還流を行い、生成する水及び溶媒の一部を除去しながらイミド化反応を行った。次に、上記反応液を40℃まで冷却した後、固形分が30質量%になるように調整して、ポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液からなる封止充填剤を作製した。得られたポリイミド樹脂のMnは7200、分散度は2.6であった。また、ポリイミド樹脂中のポリイミド構造繰り返し単位当たりの平均分子量は984であった。
【0086】
(実施例4)
攪拌機、温度計、窒素導入管及びディーンスタ−ク還流冷却器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、テトラカルボン酸二無水物成分として、「DBTA−KU」36.55g(70mmol)、ジアミン成分として、「バーサミン551」31.15g(56mmol)、溶媒として、シクロヘキサノン164gを加え、40℃で15分攪拌し反応を行った。次いで、上記反応液中へジアミン成分として「BAPP」5.75g(14mmol)を30分かけて添加し、添加後、150℃まで昇温し、3時間加熱還流を行い、生成する水及び溶媒の一部を除去しながらイミド化反応を行った。次に、上記反応液を40℃まで冷却した後、固形分が30質量%になるように調整して、ポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液からなる封止充填剤を作製した。得られたポリイミド樹脂のMnは7200、分散度は2.6であった。また、ポリイミド樹脂中のポリイミド構造繰り返し単位当たりの平均分子量は1012であった。
【0087】
(実施例5)
攪拌機、温度計、窒素導入管及びディーンスタ−ク還流冷却器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、テトラカルボン酸二無水物成分として、「DBTA−KU」36.55g(70mmol)、ジアミン成分として、「バーサミン551」11.68g(21mmol)、溶媒として、シクロヘキサノン164gを加え、40℃で15分攪拌し反応を行った。次いで、上記反応液中へジアミン成分として「BAPP」11.5g(28mmol)を15分かけて添加し、更に1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学ファイン社製、商品名「APBーN」)6.13g(21mmol)を15分かけて添加した。添加後、150℃まで昇温し、3時間加熱還流を行い、生成する水及び溶媒の一部を除去しながらイミド化反応を行った。次に、上記反応液を40℃まで冷却した後、固形分が30質量%になるように調整して、ポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液からなる封止充填剤を作製した。得られたポリイミド樹脂のMnは7400、分散度は2.6であった。また、ポリイミド樹脂中のポリイミド構造繰り返し単位当たりの平均分子量は905であった。
【0088】
(比較例1)
攪拌機、温度計、窒素導入管及びディーンスタ−ク還流冷却器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、テトラカルボン酸二無水物成分として、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物(大日本インキ化学工業社製、商品名「エピクロンB4400」)18.4g(70mmol)、ジアミン成分として、「バーサミン551」11.68g(21mmol)、溶媒として、シクロヘキサノン164gを加えて40℃で15分攪拌し反応を行った。次いで、上記反応液中へジアミン成分として「BAPP」11.49g(28mmol)を15分かけて添加し、更に「APB−N」6.13g(21mmol)を15分かけて添加した。添加後、150℃まで昇温し、3時間加熱還流を行い、生成する水及び溶媒の一部を除去しながらイミド化反応を行った。次に、上記反応液を40℃まで冷却した後、固形分が30質量%になるように調整して、ポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液からなる封止充填剤を作製した。得られたポリイミド樹脂のMnは7400、分散度は2.6であった。また、ポリイミド樹脂中のポリイミド構造繰り返し単位当たりの平均分子量は629であった。
【0089】
(比較例2)
攪拌機、温度計、窒素導入管及びディーンスタ−ク還流冷却器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、トリブロックポリエーテルジアミン化合物(サンテクノケミカル社製、商品名「XTJ−542」)53.43g(52.5mol)、ヘキサメチレンジアミン2.03g(17.5mmol)、N−メチルピロリドン164gを加えて40℃で15分攪拌し、そこへ、テトラカルボン酸二無水物成分として、「エピクロンB4400」18.4g(70mmol)を15分かけて添加した。完全に溶解した後、トルエン50gを加え、150℃へ昇温して3時間加熱還流し、200℃へ昇温して3時間加熱還流を行い、生成する水及び溶媒の一部を除去しながらイミド化反応を行った。次に、上記反応液を40℃まで冷却した後、固形分が30質量%になるように調整して、ポリイミド樹脂のN−メチルピロリドン溶液からなる封止充填剤を作製した。得られたポリイミド樹脂のMnは20420、分散度は4.18であった。また、ポリイミド樹脂中のポリイミド構造繰り返し単位当たりの平均分子量は997であった。
【0090】
上記実施例1〜5並びに比較例1及び2で作製した封止充填剤をそれぞれ用い、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポンフィルム社製、商品名「ピューレックス」)上にマイクロアプリケーターを用いて塗布した後、130℃30分乾燥し、PETフィルムから剥離して、厚み35μmのポリイミド樹脂からなるフィルム状封止充填剤を得た。
【0091】
(比較例3)
市販の封止充填剤であるエポキシ系熱硬化性樹脂組成物(日立化成工業社製、商品名「RC281C」)を準備した。次いで、上記「RC281C」をガラス板に塗布した後、150℃で2時間硬化し、ガラス板から剥離して、厚み35μmのエポキシ樹脂からなるフィルム状封止充填剤を得た。
【0092】
[各種特性の評価]
実施例及び比較例で作製した封止充填剤の各種特性を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0093】
<イミド化率の測定>
実施例及び比較例で得られたフィルム状封止充填剤について、赤外線測定装置(DIGILAB社製、商品名「EXCALIBUR SERIES」)を用い、赤外吸収スペクトル(透過光)を4000cm−1〜500cm−1の範囲で測定し、イミド基の特性吸収の吸光度比からイミド化率を求めた。なお、フィルム状封止充填剤を更に250℃で1時間熱処理した後のフィルムの吸収スペクトルを理論的にイミド化率100%とし、下記式(a)にて硬化膜のイミド化率X(%)を算出した。
X(%)=[(K/L)−(M/N)]/[(O/P)−(M/N)] (a)
K:フィルム状封止充填剤の1375cm−1付近の極大ピークの吸光度
L:フィルム状封止充填剤の1500cm−1付近の極大ピークの吸光度
M:ポリイミド樹脂合成時、150℃に昇温する前に樹脂の一部を抜き出し、130℃で15分間乾燥させた後のポリアミック酸の(イミド化率0%)の1375cm−1付近の極大ピークの吸光度
N:ポリイミド樹脂合成時、150℃に昇温する前に樹脂の一部を抜き出し、130℃で15分間乾燥させた後のポリアミック酸の(イミド化率0%)の1500cm−1付近の極大ピークの吸光度
O:250℃で1時間熱処理した後のフィルム(イミド化率100%)の1375cm−1付近の極大ピークの吸光度
P:250℃で1時間熱処理した後のフィルム(イミド化率100%)の1500cm−1付近の極大ピークの吸光度
【0094】
<溶融粘度の測定>
各フィルム状封止充填剤から試験片として2gを量り取り、レオメーター(セイコーインスツルメンツ社製、商品名「EXTRADMS6000」)を用いて周波数5Hz、降温速度:5℃/分、測定温度23〜200℃の条件でずり粘度を測定し、150℃におけるずり粘度をポリイミド樹脂の溶融粘度とした。
【0095】
<1%重量減少温度の測定>
各フィルム状封止充填剤から試験片として0.5mgを量りとり、示差熱熱重量同時測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、TG−DTA法により昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下(流量20mL/分)におけるポリイミド樹脂の1%重量減少温度を測定した。
【0096】
<吸水率の測定>
各フィルム状封止充填剤から5cm×5cmの試験片を切り出して、23℃、24時間脱イオン水に浸漬し、以下の式(b)により吸水率を算出した。なお、浸漬後の質量は、試験片表面をペーパータオルにて軽く拭き取り、10秒後の値を読み取った。
λ(%)=[(w−w)/w]×100 (b)
λ:吸水率(%)
:脱イオン水に浸漬前の樹脂の質量
w:脱イオン水に浸漬後の樹脂の質量
【0097】
<引張り弾性率の測定>
各フィルム状封止充填剤から1cm×4cmの試験片を切り出し、引張り試験機(島津製作所社製、商品名「オートグラフAGF−5KN」)を用い、温度23℃、チャック間20mm、引張り速度5mm/分の条件で引張り弾性率を測定した。
【0098】
<線膨張係数の測定>
各フィルム状封止充填剤から1cm×4cmの試験片を切り出し、引張り試験機(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「熱機械分析装置TMA−120」)を用いて、昇温速度10℃/分、加重3gでTMA法により、線膨張係数を測定した。
【0099】
<イオン性不純物>
よく洗浄した耐圧容器に各フィルム状封止充填剤から試験片約2gを量り取り、純水約18gを入れ、121℃/100%RHの環境で20時間抽出し、陰イオンクロマトグラフ(ダイオネクス社製、商品名「DX−120」、カラム:AS12A)を用いて塩素イオンの含有量を測定した。
【0100】
<反りの試験>
実施例1〜5及び比較例1、2で作製した封止充填剤並びに比較例3で準備したエポキシ系封止充填剤をそれぞれ、スピンコータを用いて8インチシリコンウェハ(厚み:420±25μm)に塗布し、加熱乾燥して厚み200μmの封止充填剤からなる塗布膜をそれぞれ作製した。反りの評価は、ウェハの片端から1cmまでを平板で押さえ、反対側の浮き高さが1mm未満であるものを「○」、1mm以上を「×」とした。
【0101】
<接合評価試験>
各フィルム状封止充填剤をPETフィルム上の形成した状態で3mm×15mmに切り出した試験片、フレキシブル配線基板(日立超LSI社製、商品名「JKIT COF TEG 30−B」、2層キャスティング材、30μmピッチ、錫めっき)及び半導体チップ(日立超LSI社製、商品名「JTEG PHASE6 30」)を準備した。次に、上記試験片を封止充填剤面がフレキシブル配線基板と接触するように配置して、本圧着装置(日化設備エンジニアリング社製、商品名「MB−50C」)を用いて260℃、20kgf/cmの条件で圧着した。圧着後、PETフィルムを剥離し、ボンディング装置(東レエンジニアリング社製、商品名「FC−100M」)を用いて半導体チップを、ステージ温度100℃、ツール温度420℃、圧力60Nで0.5秒間熱圧着した。金属接合後、150℃で1時間加熱してボイドがないものを「○」、残っているものを「×」とした。
【0102】
<アウトガスの評価>
上記接合評価試験におけるフレキシブル配線基板をスライドガラスに代えた以外は接合評価試験と同様の条件でフィルム状封止充填剤を熱圧着した。熱圧着後、スライドガラス上の試験片周辺に付着物が目視できないものを「○」、目視できるものを「×」とした。
【0103】
<耐マイグレーション性(HAST(不飽和加圧蒸気)耐性)>
図3は、耐マイグレーション性評価用基板30の概略平面図である。各フィルム状封止充填剤をPETフィルム上の形成した状態で5mm×30mmに切り出した試験片6A及びすずめっき銅配線32を施したポリイミドフレキシブル基板(30μmピッチ、すずめっき)31を準備した。上記試験片を封止充填剤面がポリイミドフレキシブル配線基板と接触するように配置して、本圧着装置(日化設備エンジニアリング社製、商品名「MB−50C」)を用いて260℃、20kgf/cmの条件で圧着した。圧着後、PETフィルムを剥離し、イオンマイグレーションテスター(商品名:IMV社製、MIG−8600)を用いて、120℃/85%RH/60V条件下で100時間処理した後の耐マイグレーション性を評価した。抵抗値が1.E+8以上であるものは「○」、抵抗値が1.E+8未満となったものは「×」とした。また、上記条件で200時間処理した後の抵抗値が1.E+8以上であるものは「◎」とした。
【0104】
<耐折り曲げ性>
耐折り曲げ性は、上記耐マイグレーション性評価後の試験片を180度に折り曲げた時の状態を観察して評価した。割れなかったものを「○」、割れたものを「×」とした。
【0105】
【表1】

【0106】
実施例1〜5で得られた封止充填剤は、いずれも溶融粘度が10000Pa・s以下であり、十分な可とう性を有し接合性に優れており、1%重量減少温度が350℃以上と耐熱性が高くアウトガスの発生を十分に低減できており、吸水率も極めて低く、耐マイグレーション性にも十分に優れていた。
【0107】
一方、比較例1及び2で得られた封止充填剤は、1%重量減少温度が270℃と耐熱性が低いためアウトガスの発生が観察された。さらに、比較例1及び2で得られた封止充填剤は、エーテル結合を有することもあり、吸水率が比較的高く、耐マイグレーション性が低下した。また、比較例2では、溶融粘度が15000Pa・Sと高く、流動性が悪いため接合性が不十分となりボイドが残存しており、反りも大きかった。さらに、比較例3では、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂からなる封止充填剤であるため、1%重量減少温度が200℃未満であり耐熱性が不十分となりアウトガスの発生が観察され、弾性率が高くフレキシブル配線基板等への追随性が低いため、耐マイグレーション性が低下した。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の半導体装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本実施形態に係るシート状封止充填剤を用いたフリップチップ実装方法の一連の工程図である。
【図3】耐マイグレーション性評価用基板の模式平面図である。
【符号の説明】
【0109】
1…フィルム状基材、2…銅配線、3…金属めっき、4…ソルダーレジスト、5…半導体チップの実装位置、6A…フィルム状封止充填剤、6A’…接合層、10…半導体チップ、11…メタルポスト、12…バンプ、15…押圧装置、20A…フリップチップ実装品、30…耐マイグレーション性評価用基板、31…ポリイミドフレキシブル基板、32…すずめっき銅配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
150℃における溶融粘度が30〜10000Pa・sであり、1%重量減少温度が350℃以上であるポリイミド樹脂を含有する、封止充填剤。
【請求項2】
前記ポリイミド樹脂が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する、請求項1記載の封止充填剤。
【化1】


[式(1)中、Arは4価の有機基を示し、Arは2価の有機基を示し、Ar及び/又はArは主鎖に炭素数5〜20のアルキレン鎖を含む。]
【請求項3】
前記Arが、下記一般式(2)で表される基である、請求項2記載の封止充填剤。
【化2】


[式(2)中、Xは炭素数5〜20のアルキレン基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜3の整数を示す。mが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項4】
前記Arが、下記一般式(3)で表される2価の基である、請求項2又は3記載の封止充填剤。
【化3】


[式(3)中、Zは単結合又は2価の有機基を示し、Y及びYはそれぞれ独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示す。]
【請求項5】
前記Zが、下記一般式(4)、(5)及び(6)でそれぞれ表される2価の基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である、請求項4記載の封止充填剤。
【化4】


[式(4)、(5)及び(6)中、R、R及びR10は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、q、r及びsは、それぞれ独立に1〜4の整数を示す。qが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、rが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、sが2以上の場合、複数存在するR10は同一でも異なっていてもよい。]
【請求項6】
前記ポリイミド樹脂が、下記一般式(7)で表される繰り返し単位を更に有する、請求項2〜5のいずれか一項に記載の封止充填剤。
【化5】


[式(7)中、Arは下記一般式(2)で表される4価の有機基を示し、Arは、芳香族炭化水素基を含む2価の有機基を示す。]
【化6】


[式(2)中、Xは炭素数5〜20のアルキレン基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜3の整数を示す。mが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項7】
前記Arが、置換基を有していてもよいアリーレン基、下記一般式(8)で表される基及び下記一般式(9)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である、請求項6記載の封止充填剤。
【化7】


【化8】


[式(8)及び(9)中、D及びEは、それぞれ独立に単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、スルホニル基、メチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基、下記式(i)で表される基又は下記式(ii)で表される基を示し、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、t1、t2、t3、t4、t5及びt6は、それぞれ独立に1〜4の整数を示す。t1が2以上の場合、複数存在するR11は同一でも異なっていてもよく、t2が2以上の場合、複数存在するR12は同一でも異なっていてもよく、t3が2以上の場合、複数存在するR13は同一でも異なっていてもよく、t4が2以上の場合、複数存在するR14は同一でも異なっていてもよく、t5が2以上の場合、複数存在するR15は同一でも異なっていてもよく、t6が2以上の場合、複数存在するR16は同一でも異なっていてもよい。]
【化9】

【請求項8】
前記ポリイミド樹脂のイミド化率が80%以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の封止充填剤。
【請求項9】
半導体チップと、配線回路基板と、前記半導体チップ及び前記配線回路基板の間に形成された接合層と、を備える半導体装置であって、
前記接合層が、請求項1〜8のいずれか一項に記載の封止充填剤を用いて形成されている、半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−6983(P2010−6983A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169097(P2008−169097)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】