説明

局側装置及びPONシステムのエラー情報通知方法

【課題】 複数のONUが接続されたOLTのMACチップにおける負荷を軽減する。
【解決手段】 複数のONU(宅側装置)と共にPONシステムを構成するOLT(局側装置)において、CPUは、当該システム内のMACチップに対して、エラー情報を収集し、エラー数が閾値に達したときアラームを通知するよう要求する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の宅側装置(ONU)と共に、光ファイバを用いたPON(Passive Optical Network)を構成する局側装置(OLT)に関する。
【背景技術】
【0002】
PON方式の光ネットワークでは、電話局側に設置される局側装置(OLT)に接続された光ファイバが、光スプリッタを介して多数に分岐され、それぞれについて、ユーザ側に設置される宅側装置(ONU)が接続される(例えば、非特許文献1参照。)。OLT及びONUにはそれぞれMACチップが搭載されており、各MACチップは、当該装置における所定の統計情報(エラー情報等)を収集している。OLTに搭載されたCPUは、OLTの配下に接続された全ONU及びOLT自身のMACチップに対して、定期的(例えば1秒間隔)に統計情報を要求する。ONUのMACチップへの要求は、OLTのMACチップを経由する。
【0003】
【非特許文献1】NTT技術ジャーナル2003.1「ブロードバンド光アクセス技術動向」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ONUの接続数が多くなると、その接続数に応じてOLTのMACチップの負荷が増大する。高負荷状態となったMACチップはCPUへの応答が遅くなり、統計情報以外の制御情報を取得することができない状態となる。
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、複数のONUが接続されたOLTのMACチップにおける負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複数の宅側装置と共にPONシステムを構成する局側装置において、当該システム内のMACチップに対して、エラー情報を収集し、エラー数が閾値に達したときアラームを通知するよう要求するCPUを設けたことを特徴とするものである。
上記のように構成された局側装置では、エラー数が閾値に達したときにのみMACチップはCPUにアラームの通知を行う。従って、複数のONUが接続されたOLTのMACチップにおける負荷が軽減される。
【0006】
また、上記局側装置において、CPUは、アラームの通知を受けてから一定時間内にアラームが解除された場合に、上位の管理装置へのアラームの通知を中止するようにしてもよい。
この場合、短期間(一定時間)にしか生じないアラームは管理装置に通知されないので、管理装置に対する必要以上のアラーム通知を差し控え、管理装置の負担を軽減することができる。
【0007】
また、上記局側装置において、CPUは、エラー情報に含まれる各情報に対して個別に閾値を設定してもよい。
この場合、個別に閾値を設定することによりエラーごとのアラームレベルを調整することができる。
【0008】
また、上記局側装置において、CPUは、各情報に対してアラーム解除のための閾値を設定してもよい。
この場合、当該閾値に基づいてアラームを解除を管理装置に通知することができる。従って、管理装置はアラーム解除も把握することができ、管理上便利である。
【0009】
一方、本発明は、局側装置及び複数の宅側装置によって構成されるPONシステムのエラー情報通知方法であって、局側装置のCPUから当該システム内のMACチップに対して、取得したいエラー情報とそのエラー数の閾値とを設定し、前記MACチップは、エラー情報を収集し、エラー数が閾値に達したとき前記CPUにアラームを通知することを特徴とするものである。
上記のようなエラー情報通知方法においては、エラー数が閾値に達したときにのみMACチップはCPUにアラームの通知を行う。従って、複数のONUが接続されたOLTのMACチップにおける負荷が軽減される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の局側装置/エラー情報通知方法によれば、エラー数が閾値に達したときにのみMACチップはCPUにアラームの通知を行うので、複数のONUが接続されたOLTのMACチップにおける負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による局側装置を含む、GE−PON(Gigabit Ethernet-Passive Optical Network(Ethernetは登録商標))システムの構成を示す図である。図において、局側に設置されるOLT1(局側装置)には光ファイバ2が接続され、これが、光スプリッタ3により分岐(例えば4分岐)される。さらに、分岐されたそれぞれの光ファイバ2が、光スプリッタ4により分岐(例えば8分岐)される。そして、光ファイバ2の終端には、ユーザ側に設置されるONU5(宅側装置)が接続される。ONU5にはユーザのパソコン等が接続される。一方、OLT1は、スイッチ6を介して管理装置7と接続されている。管理装置7は、OLT1及びONU5を管理している通信事業者の装置であり、OLT1に対して上位の装置である。実際には管理装置7以外にも他の装置がスイッチ6に接続されており、スイッチ6の動作により線路の切換が可能となっている。
【0012】
図2は、OLT1の内部構成の概略を示す図である。OLT1は、MACチップ11及びCPU12を備えている。MACチップ11は光ファイバ2を介して各ONU5(1個のみ図示している。)の内部のMACチップ51と接続されている。MACチップ11,51は、PON区間(MACチップ11からMACチップ51まで)の所定の統計情報を収集する。
【0013】
図3は、統計情報の構成を示す図である。この統計情報は以下の内容によって構成されている。
ID1 Octets transferred 転送したバイト数
ID2 Total frames transferred 転送したフレーム数
ID3 Unicast frames transferred 転送したユニキャスト用フレーム数
ID4 Broadcast frames transferred 転送したブロードキャスト用フレーム数
ID5 Multicast frames transferred 転送したマルチキャスト用フレーム数
ID6 CRC-32 Errors PON区間伝送中に発生したエラー数
ID8 CRC-8 (preamble) Errors 機器内で発生したエラー数
【0014】
図4は、CPU12、MACチップ11,51及び管理装置7の間での、信号シーケンスを示す図である。図において、ONU5がPONシステムに接続されたとき、すなわち、ONU5がOLT1に対して最初に接続の宣言をしてきたとき、OLT1のCPU12は、そのONU5のMACチップ51に対してパラメータの設定を行う。この設定は1回だけ行われる。但し、ONU5が一旦接続解除されて、再度接続されたときにも行われる。設定には以下の内容が含まれている。なお、CPU12は、OLT1のMACチップ11についても同様に設定を行う。
【0015】
Alarm code (アラームコード:取得したいエラー情報)
Tag (タグ:エラー検知するポイント)
Direction (ディレクション:上り又は下りの方向)
Rising Thresh (ライジングスレッシュ:アラームの通知をするエラー数の閾値)
Falling Thresh (フォーリングスレッシュ:アラームを解除するエラー数の閾値)
ここで、閾値は各エラー情報(CRC-32 Errors, CRC-8 Errors)について設定可能である。従って、個別に閾値を設定することによりエラーごとのアラームレベルを調整することができる。
【0016】
例えば、図示の例では、OLT1における上り方向のCRC−32エラーについて、そのエラー数が毎秒Xフレーム以上になればアラームの通知を行い、毎秒Yフレーム以下になればアラームを解除せよ、という設定になる。このようにして、全てのMACチップ11,51に対してパラメータ設定が行われる。MACチップ11,51はエラー情報を収集し続け、エラー数が閾値Xに達したとき初めてCPU12にアラームを通知する(Report Alarm)。通知の内容は、例えば、以下のようになる。
Alarm code: CRC-32 Error (エラー情報はCRC-32 エラー)
Tag: OLT EPON (エラー検知ポイントはOLT EPON)
Direction: UP (上り方向)
Alarm State: ON (アラーム・オン)
【0017】
アラームの通知を受けたCPU12は、ここでN秒待機し、その後、上位の管理装置7に「上り誤り率劣化発生」を通知する。また、その後、エラー数が低下して閾値Y以下になれば、MACチップ11,51はCPU12にアラームが解除されたことを通知する(Report Alarm)。通知の内容は、例えば、以下のようになる。
Alarm code: CRC-32 Error (エラー情報はCRC-32 エラー)
Tag: OLT EPON (エラー検知ポイントはOLT EPON)
Direction: UP (上り方向)
Alarm State: OFF (アラーム・オフ)
アラーム解除の通知を受けたCPU12は、ここでN秒待機し、その後、上位の管理装置7に「上り誤り率劣化クリア」を通知する。これにより、管理装置7はアラーム解除も把握することができ、管理上便利である。
【0018】
以上のようにして、従来のようにMACチップに対してエラー情報の通知を定期的に頻繁に行わせるのではなく、エラー数が、設定された閾値に達したときにのみ通知を行わせるようにしたので、複数のONU5が接続されたOLT1のMACチップ11は、エラー情報等の統計情報の取得に翻弄されることが無くなり、負荷が軽減される。その結果、OLT1のMACチップ11は、CPU12への迅速な応答性を損なわず、統計情報以外の制御情報を確実に取得することができる。
【0019】
図5は、CPU12、MACチップ11,51及び管理装置7の間での、信号シーケンスの他の例を示す図である。パラメータ設定及びアラームの通知までは図4の信号シーケンスと同じであるが、それ以後が異なる。すなわち、アラームの通知を受けたCPU12は、N秒待機するが、このN秒の間にエラー数が低下して、アラームを解除する閾値Y以下になれば、MACチップ11,51はCPU12にアラームが解除されたことを通知する。アラーム解除の通知を受けたCPU12は、N秒経過後、上位の管理装置7への「上り誤り率劣化発生」の通知を中止する。こうして、N秒の間に解消されるような短期間のアラームが管理装置7に通知されることを防止する。すなわち、管理装置7に対する必要以上のアラーム通知を差し控え、管理装置7の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による局側装置を含む、GE−PON(Gigabit Ethernet-Passive Optical Network)システムの構成を示す図である。
【図2】OLTの内部構成の概略を示す図である。
【図3】統計情報の構成を示す図である。
【図4】CPU、MACチップ及び管理装置の間での、信号シーケンスの一例を示す図である。
【図5】CPU、MACチップ及び管理装置の間での、信号シーケンスの他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 OLT(局側装置)
5 ONU(宅側装置)
7 管理装置
11,51 MACチップ
12 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の宅側装置と共にPONシステムを構成する局側装置において、当該システム内のMACチップに対して、エラー情報を収集し、エラー数が閾値に達したときアラームを通知するよう要求するCPUを設けたことを特徴とする局側装置。
【請求項2】
前記CPUは、アラームの通知を受けてから一定時間内にアラームが解除された場合に、上位の管理装置へのアラームの通知を中止する請求項1記載の局側装置。
【請求項3】
前記CPUは、前記エラー情報に含まれる各情報に対して個別に閾値を設定する請求項1又は2に記載の局側装置。
【請求項4】
前記CPUは、各情報に対してアラーム解除のための閾値を設定する請求項3記載の局側装置。
【請求項5】
局側装置及び複数の宅側装置によって構成されるPONシステムのエラー情報通知方法であって、
局側装置のCPUから当該システム内のMACチップに対して、取得したいエラー情報とそのエラー数の閾値とを設定し、
前記MACチップは、エラー情報を収集し、エラー数が閾値に達したとき前記CPUにアラームを通知する
ことを特徴とするPONシステムのエラー情報通知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−104206(P2007−104206A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290267(P2005−290267)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(502312498)住友電工ネットワークス株式会社 (212)
【Fターム(参考)】