説明

履物用パッド

【課題】靴の養生(摩耗防止)、摩耗した靴底の補修あるいは靴内における足の保護、緩衝、滑り防止、安定性向上などの様々な用途に使用可能な履物用パッドを提供する。
【解決手段】履物用パッド20は、周縁20aが長円形をした可撓性を有するシート材20sの中央部分に厚さが一定のフラット部20fを設け、フラット部20fと周縁20aとの間の領域にフラット部20fから周縁20aに向かって連続的に厚さが増大したテーパ部20tを設けている。フラット部20fとテーパ部20tとの境界部20bは周縁20aと相似な長円形をなしている。また、フラット部20fの中央部に貫通孔21が開設され、フラット部20f及びテーパ部20tの裏面(シート材20の裏面)に、剥離シート付きの粘着面が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴の養生(摩耗防止)、摩耗した靴底の補修あるいは靴内における足の保護、緩衝、滑り防止、安定性向上など様々な用途に使用可能な履物用パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
靴については、従来、様々なアイディアが提案されているが、本願発明に関連するものとして、例えば、特許文献1記載の靴底補修部品がある。この靴底補修部品は、擦り減った靴の踵や爪先の補修箇所のサイズに合わせて切断して使用されるものであり、外周が厚く、中央穴部分の内周にかけて薄くなっているドーナツ形状の素材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−294609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の靴底補修部品は、ドーナツ形状の外周から内周にかけて薄くなった素材であるため、靴の踵や爪先において斜めに擦り減った部分の補修には好適であるが、用途が限定される。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、靴の養生(摩耗防止)、摩耗した靴底の補修あるいは靴内における足の保護、緩衝、滑り防止、安定性向上などの様々な用途に使用可能な履物用パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の履物用パッドは、周縁が長円形をした可撓性を有するシート材の中央部分に厚さが一定のフラット部を設け、前記フラット部と前記周縁との間の領域に前記フラット部から前記周縁に向かって連続的に厚さが増大したテーパ部を設けたことを特徴とする。
【0007】
このような構成とすれば、厚さが一定のフラット部と、周縁に向かって連続的に増厚したテーパ部とを備え、テーパ部の周縁が円弧状部分及び直線状部分で形成されていることにより、フラット部やテーパ部から使用目的に適した形状に切り出したパッド片を靴底や靴内底の一部に貼着することができるため、靴の養生(摩耗防止)、摩耗した靴底の補修あるいは靴内における足の保護、緩衝、滑り防止、安定性向上などの様々な用途に使用可能である。
【0008】
ここで、前記フラット部及び前記テーパ部の片面に、剥離シート付きの粘着面を設ければ、前記フラット部や前記テーパ部から切り出したパッド片を、接着剤を使用することなく、靴底や靴内底に貼着することができるため、貼着時の作業性が向上するだけでなく、接着剤の乾燥を待つ必要もなくなる。
【0009】
一方、前記フラット部の一部に貫通孔を開設すれば、当該貫通孔に鋏の刃先を差し込んで切り出し作業を開始することが可能となるため、切断作業が容易となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、靴の養生(摩耗防止)、摩耗した靴底の補修あるいは靴内における足の保護、緩衝、滑り防止、安定性向上などの様々な用途に使用可能な履物用パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態である履物用パッドを示す表面図である。
【図2】図1に示す履物用パッドの裏面図である。
【図3】図1のA−A線における断面図である。
【図4】図1のB−B線における断面図である。
【図5】図1に示す履物用パッドの使い方を示す底面図である。
【図6】図1に示す履物用パッドの使い方を示す水平断面図である。
【図7】図1に示す履物用パッドの使い方を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。図1〜図4に示すように、履物用パッド20は、周縁20aが長円形をした可撓性を有するシート材20sの中央部分に厚さ20Tfが一定のフラット部20fを設け、フラット部20fと周縁20aとの間の領域にフラット部20fから周縁20aに向かって連続的に厚さ20Ttが増大したテーパ部20tを設けている。フラット部20fとテーパ部20tとの境界部20bは周縁20aと相似する長円形をなしている。
【0013】
また、フラット部20fの中央部には貫通孔21が開設されている。さらに、図2〜図4に示すように、フラット部20f及びテーパ部20tの裏面(シート材20sの裏面)には、剥離シート22付きの粘着面20cが設けられている。なお、貫通孔21の位置は限定しないので、フラット部20fの中央部以外の部分に開設することもできる。
【0014】
次に、図5,図6,図7を参照しながら、図1に示す履物用パッド20の使い方について説明する。図5に示すように、新しい靴10を下ろす前に、その靴底10aの摩耗し易い部分10bに予めパッド片20pを貼着しておくことにより、新しい靴10の養生(摩耗防止)を図ることができる。この場合、摩耗し易い部分10bの位置や大きさは、靴10を履く人によって異なるので、その人が履き続けている靴(図示せず)の靴底の摩耗部分の形状に基づいて、履物用パッド20からパッド片20pを切り出し、裏面の剥離シート22p(図2参照)を剥がして、粘着面(図示せず)を靴10の摩耗し易い部分10bに貼着する。
【0015】
図3,図4に示すように、履物用パッド20は、シート材20sの中央部分に位置する厚さ20Tfが一定のフラット部20fと、フラット部20fから周縁20aに向かって厚さ20Ttが連続的に増大したテーパ部20tと、を備え、長円形をなす周縁20aには直線状部分と円弧状部分とが存在する。従って、靴10の靴底10aの摩耗し易い部分10bの形状にほぼ見合ったサイズ、形状のパッド片20pを切り出すことが可能であり、このパッド片20pの粘着面20c(図2参照)を、摩耗し易い部分に貼着することにより、靴10の養生(摩耗の防止)を図ることができる。
【0016】
なお、図5に示すパッド片20pの形状、靴底10aにおける貼着位置などは例示であって、これらに限定するものではないので、履く人によって異なる、靴底10aの摩耗し易い部分10bの位置や形状に基づいて、パッド片の形状、貼着位置などを決定することができる。一般に、靴底10aの減り方は、外側の方が深く、内側に向かって浅くなる傾向があるが、履物用パッド20から切り出したパッド片20pは、それに合わせた形状となっている。
【0017】
図5に示すように、履物用パッド20においては、フラット部20fの中央部に貫通孔21が開設されているため、パッド片20pを切り出す際に、当該貫通孔21に鋏の刃先を差し込んで切断作業を開始することが可能であり、作業性が良好である。パッド片20pは、予め摩耗し易い部分10bに応じた形状に整えた後、その部分に貼着することができるが、作業手順は限定しないので、摩耗し易い部分よりも大きめのサイズに切り出したパッド片20pを摩耗し易い部分10bに貼着した後、当該摩耗し易い部分10bからはみ出したパッド片20pの一部をカットして形を整えることもできる。靴底10aは、相当な運動量や荷重を受けるため、パッド片20pは、摩耗し易い部分10bの実寸より大きめのサイズに切り出し、貼着面を広くして、剥がれ難くする必要がある。そのためには、テーパ部20tだけを使って部分貼りや当て貼りをするのではなく、図5に示すように、フラット部20fにかけて貼着面を引き延ばした形状にカットして、なるべく靴底10aの幅いっぱいに貼着する方が望ましく、このようにすれば、接着がより強固になり、かつ靴底10aの違和感・段差感が少なく、安定性も増す。
【0018】
また、図2に示すように、履物用パッド20において、フラット部20f及びテーパ部20tの裏面(シート材20sの裏面)に、剥離シート22付きの粘着面20cを設けているため、履物用パッド20から切り出したパッド片20pは、剥離シート22を剥がすだけで摩耗し易い部分10bに貼着可能である。従って、補修用接着剤が不要であり、接着剤が乾燥する時間を待つ必要もないので、作業の迅速化を図ることができる。なお、履物用パッド20を構成するシート材20sの素材は可撓性及びクッション性を有する合成樹脂を採用しているが、これに限定しないので、可撓性、柔軟性及びクッション性などを有する天然樹脂や複合素材などを採用することもできる。
【0019】
次に、図6に基づいて、図1に示す履物用パッド20のその他の使い方について説明する。図6に示すように、履物用パッド20から切り出したパッド片20x,20yを、それぞれ新しい靴10の内底10cにおいて、靴10を履く人の足裏の5本の指の付け根の下の膨らんだ部分(以下、「膨らみ部分」という。)や、土踏まず部分とそれぞれ対向する部分に貼着することもできる。この場合、靴10を履く人の足裏の膨らみ部分や土踏まず部分にそれぞれ対応したサイズ、形状に切り出したパッド片20x,20yを、その粘着面(図示せず)を下にして靴10の内底10cに貼着する。
【0020】
図6に示すように、パッド片20x,20yを、靴10の内底10cにおいて、靴10を履く人の足裏の膨らみ部分や土踏まず部分と対向する部分にそれぞれ貼着すれば、魚の目や靴擦れの苦痛の軽減や扁平足のアーチサポートに有効である。なお、パッド片20x,20yのサイズ、形状や貼着位置などは、図6に示す形態に限定しないので、用途に応じて適宜決定することができる。
【0021】
図1,図2に示す履物用パッド20は、これを構成するシート材20sの周縁20aが長円形であるため、フラット部20fを挟んで位置する二つのテーパ部20tには直線帯状部Sが存在する。従って、履物用パッド20から直線的な形状のパッド片を切り出して貼着する場合に好適である。
【0022】
靴底の摩耗状態(減り方)は、その靴を履く人によって多種多様であるが、履く人固有の摩耗状態(減り方)があることが知られている。このため、新しく下ろした靴を長期間履き続けると、その靴底は、それ以前に履き古した靴と同じような減り方をすることが予測される。従って、新しい靴を使用開始するとき、履き古した靴の靴底を観察して摩耗部分を確認し、図5に示すように、新しい靴10の靴底10aにおける前記摩耗部分に該当する部分(摩耗し易い部分10b)に、履物用パッド20から切り出したパッド片20pを予め貼着しておけば、靴10の養生(摩耗の防止)を図ることができる。
【0023】
また、新品の靴10に貼着したパッド片20pなどが摩耗したら、新たに切り出したパッド片20pなどを再び貼着することにより、靴底10a自体の摩耗を回避することができるので、自分の足に馴染んだ靴10を長期間に亘って履き続けることができる。
【0024】
殆どの人の骨格は、多かれ、少なかれ左右非対称であり、自分では気付かない僅かな程度であるが、左右の脚長は異なっている。この脚長差は、鏡の前に立って骨盤の左右の位置や、スカートのウエストあるいはズボンのベルトの左右を見れば、その高低差を視認することができる。また、両脚を揃え、うつ伏せになった状態で、左右の踵の位置を他人に見てもらうという方法によっても左右の脚長差を確認することもできる。左右の脚長差があると骨盤が傾き、身体は無意識に脊椎でその歪みを調整してくれるが、その分、脊椎に負担が掛かり、長期間経過するうちに脊椎まで歪んでくると言われている。脚長差が著しい場合は、特別な装具や靴が必要となるが、若干の脚長差であれば、市販の靴の底に、履物用パッド20から切り出したパッド片を貼着すれば、ある程度の左右差脚差の補高、矯正を図ることができる。この場合、靴底全体の嵩上げを図るため、図7に示すように、履物用パッド20より、パッド片20k,20m,20nを、靴底10aの幅サイズに切り出し、その全面を靴底10aに貼着するが、適宜、重ね貼りも可能である。このように、新しい靴を下ろすときに、骨盤の低くなっている側の靴底10aに履物用パッド20から切り出したパッド片20k,20m,20nを貼ることにより、脚長差の補高、矯正を図ることができる。
【0025】
補高用として、新しい靴の底に貼着したパッド片は養生も兼ねるが、貼着したパッド片が摩耗したら、履物用パッド20から新たに切り出したパッド片を再び靴底に貼着し、それを繰り返せば、補高、矯正状態を長期間持続していくことができる。これにより、靴の寿命が延びるだけでなく、脚長差によって生じる身体の歪みの進行や健康上の問題発生(健康障害)を回避することができる。
【0026】
一方、靴の内底に硬い素材や滑りやすい素材が使用されている靴は、足を滑らせながら靴を履くことができるので、履き易いという長所がある反面、歩行中は、爪先に向かって下り勾配をなす靴内底面に沿って足が滑動するので、歩行中に体重が掛かる爪先が靴内の先端部分に押し付けられ、圧迫痛や損傷が生じることがある。また、歩行中、靴内の先端部分に向かって足が滑動すると、靴内の後端部分に隙間が生じ、踵が靴から抜けそうになるので、歩きづらくなる。
【0027】
このような場合、図6に示すように、履物用パッド20から切り出したパッド片20xを、靴10の内底10aにおいて、足裏の膨らみ部分と対向する部分に貼着すれば、足の前方滑動を有効に防止することができる。また、パッド片20xを貼着することにより、靴10の内底10aと足裏との密着度が増し、滑り難くなるので、歩行中の安定性が向上する。さらに、靴底が薄い靴の内底にパッド片を貼着すれば、当該パッド片が緩衝材として機能するので、歩行時に足裏に加わる衝撃を緩和することができる。
【0028】
そのほか、履物用パッド20から切り出したパッド片(図示せず)を内底に貼着することにより、靴を履いたときに足と靴の内面や内底との間に生じる空間を無くせば、靴と足との一体感が高まり、靴と足との摩擦も減少するので、履き心地が大幅に向上し、靴擦れを予防することができる。特に、デザイン重視のあまり、履き心地の良くない女性用靴において有効である。
【0029】
また、履物用パッド20から切り出したパッド片を、足裏の滑り防止及び安定材として靴の内底に貼着する場合、例えば、女性用のパンプスのように、靴内部の余裕(靴内面と足との隙間)の少ない靴の内底に貼着する場合、履物用パッド20のフラット部20fから切り出したパッド片を貼着することが望ましい。
【0030】
一方、図6に示すように、内底10aにおいて足裏の土踏まずと対向する部分に履物用パッド20から適切な形状に切り出したパッド片20yを貼着すれば、この靴を履いた人の足裏の土踏まずを前記パッド片20yによって支えることが可能となるため、フィット感が高まり、足の疲労を軽減することができる。
【0031】
また、履物用パッド20は靴底補修用として使用することもできる。この場合、図5に示す靴10の底部10aにおける実際の摩耗部分の形状に合わせて、履物用パッド20からパッド片20pを切り出し、裏面の剥離シート22p(図2参照)を剥がして、粘着面(図示せず)を摩耗部分に貼着すれば、摩耗部分を元の状態に修復することができる。
【0032】
図3,図4に示すように、履物用パッド20は、シート材20sの中央部分に位置する厚さ20Tfが一定のフラット部20fと、フラット部20fから周縁20aに向かって厚さ20Ttが連続的に増大したテーパ部20tと、を備え、長円形をなす周縁20aには直線状部分と円弧状部分とが存在する。従って、靴10の底部13aの摩耗部分の形状にほぼ見合った形状のパッド片を切り出すことが可能であり、前記パッド片の粘着面20c(図2参照)を摩耗部分に貼着することにより、摩耗部分を的確に補修することができる。また、パッド片を貼着してフラットになった靴底に、パッド片を重ねて貼り付け、養生・補高を図ることも可能である。
【0033】
このように、履物用パッド20は、用途に応じた適切なサイズ、形状にカットして靴底や内底などに貼着することにより、履き心地の向上、身体骨格の矯正、健康増進、疲労軽減、靴擦れ予防など様々な効果を得ることができるほか、靴底の摩耗部分の補修材として、あるいはフラット部20fをテープのように切り出して、靴アッパー部内外の破損補修にも使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る履物用パッドは、靴、サンダル、草履、地下足袋、スリッパなどの各種履物において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 靴
10a 靴底
10b 摩耗し易い部分
10c 内底
20 履物用パッド
20a 周縁
20b 境界部
20c 粘着面
20f フラット部
20p,20k,20m,20n,20x,20y パッド片
20s シート材
20t テーパ部
20Tf,20Tt 厚さ
21 貫通孔
22 剥離シート
S 直線帯状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁が長円形をした可撓性を有するシート材の中央部分に厚さが一定のフラット部を設け、前記フラット部と前記周縁との間の領域に前記フラット部から前記周縁に向かって連続的に厚さが増大したテーパ部を設けたことを特徴とする履物用パッド。
【請求項2】
前記フラット部及び前記テーパ部の片面に、剥離シート付きの粘着面を設けたことを特徴とする請求項1記載の履物用パッド。
【請求項3】
前記フラット部の一部に貫通孔を開設したことを特徴とする請求項1または2記載の履物用パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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