説明

工具の回転方向位置決め方法

【課題】簡素な構成で、且つ、短時間で、高精度に工具の回転方向の位置決めを行うことができる工具の回転方向位置決め方法を提供する。
【解決手段】主軸15に装着された工具32とワークWとを相対移動させると共に、主軸15の回転角度を制御して、工具32の加工面32aを常に切削方向に向けて加工する切削加工に先立って、工具15の回転方向の位置決めを行う工具の回転方向位置決め方法において、主軸15を所定の割出角度で割り出しながら工具32をその側方から撮像し、その撮像により得られた画像を用いて主軸15の回転軸と加工面32aとの間の測定距離Lを連続的に測定し、主軸の回転角度θと測定距離Lとの間の関係を示す曲線を取得し、この曲線を用いて当該曲線の極値となる測定距離Loに対応した回転角度θoを求め、主軸15を回転角度θoに制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の主軸に装着された工具を、所望の方向に向くように、その回転方向に位置決めを行う工具の回転方向位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フライス盤やマシニングセンタ等の工作機械においては、主軸に装着した工具とテーブルに固定したワークとを相対移動させることにより、ワークを所望の形状に加工するようになっている。また、このような工作機械には、エンドミルやドリル等の回転形の工具が用いられる他、ヘールバイト等の非回転形の工具も用いられている。そして、この非回転形の工具は、溝加工に多く用いられており、その工具正面形状も、加工する溝の横断面形状に合わせたものが一般的となっている。
【0003】
従って、非回転形の工具を工作機械の主軸に装着して、ワークの加工を行う場合には、工具とワークとの間における相対移動に同期して、工具が切削方向に対して常に正面を向くように、主軸の回転角度を制御している。これにより、加工中においては、工具の姿勢が切削方向に対して不変となるため、加工前においては、工具が切削方向に対して正面を向くように、工具とワークとの間の位置関係を設定しておかなければならない。即ち、非回転形の工具を用いて加工を行う場合には、工具をその回転方向に位置決めしてから、加工を開始する必要があった。
【0004】
しかしながら、オペレータの手作業で、工具正面を切削方向に一致させることは、非常に困難な作業であり、工具正面角度が不一致になると、加工形状に誤差が生じてしまう。そこで、工具装着後に、自動的に工具の回転方向の位置決めを行うようにした方法が提案されている。このような、工具の回転方向位置決め方法は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−87080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の位置決め方法においては、測定子を工具ホルダの平坦な基準面及び円柱面に当接させ、この測定子が当接したときの機械座標値に基づいて、工具ホルダの基準面が切削方向を向くように、主軸の回転角度を制御するようにしている。
【0007】
しかしながら、このような位置決め方法では、工具ホルダを特殊な形状に加工しなければならず、工具ホルダの製作コストがかかってしまう。また、工具ホルダを特殊形状としたため、工具ホルダの現在の回転角度を推定するための測定子による測定回数が多くなり、工具位置決め完了までの時間が増大するおそれがある。
【0008】
更に、工具をその回転方向に位置決めするにも関わらず、工具ホルダに基準面を設けているため、この工具ホルダと工具との間における回転方向の位置合わせ(位相合わせ)を高精度に行わなければならない。工具ホルダ及び工具には加工誤差や組付け誤差等が発生することから、これらの位置合わせを高精度に行うことは困難であり、結果的に、工具の回転方向の位置決めを高精度に行うことは困難になってしまう。
【0009】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、簡素な構成で、且つ、短時間で、高精度に工具の回転方向の位置決めを行うことができる工具の回転方向位置決め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する第1の発明に係る工具の回転方向位置決め方法は、
主軸に装着された工具とワークとを相対移動させると共に、前記主軸の回転角度を制御して、前記工具の加工面を常に切削方向に向けて加工する切削加工に先立って、前記工具の回転方向の位置決めを行う工具の回転方向位置決め方法において、
前記主軸を所定の割出角度で割り出しながら、前記工具をその側方から撮像し、
その撮像により得られた画像を用いて、前記主軸の回転軸と前記加工面との間の距離を連続的に測定し、
前記主軸の回転角度と測定した距離との間の関係を示す曲線を取得し、
前記曲線を用いて、当該曲線の極値となる最適距離に対応した位置決め回転角度を求め、
前記主軸を前記位置決め回転角度に制御する
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第2の発明に係る工具の回転方向位置決め方法は、
前記位置決め回転角度を求めた後に、前記所定の割出角度から徐々に小さくした割出角度で、前記主軸を割り出し、前記工具を繰り返し撮像し、
前記位置決め回転角度を求め直していく
ことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第3の発明に係る工具の回転方向位置決め方法は、
前回測定した際に前記主軸が回転した回転角度範囲よりも狭く、且つ、前記位置決め回転角度を含んだ所定の回転角度範囲内で、前記主軸を割り出し、前記工具を繰り返し撮像していく
ことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第4の発明に係る工具の回転方向位置決め方法は、
前記工具の再使用時に、前記曲線、前記最適距離、前記位置決め回転角度に基づいて、前記主軸の回転角度を制御する
ことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第5の発明に係る工具の回転方向位置決め方法は、
前記工具の初回使用時に記録された前記最適距離に対して許容範囲を設定し、
前記工具の再使用時に、撮像により得られた画像における前記主軸の回転軸と前記加工面との間の測定距離が、前記許容範囲内に入るように、前記主軸の回転角度を制御する
ことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第6の発明に係る工具の回転方向位置決め方法は、
前記工具の再使用時に、撮像により得られた画像における前記主軸の回転軸と前記加工面との間の測定距離と、前記工具の初回使用時に記録された前記曲線とに基づいて、前記主軸の回転角度を制御する
ことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する第7の発明に係る工具の回転方向位置決め方法は、
前記曲線を用いて、前記測定距離に対応した位置決め回転角度を求め、
前記最適距離に対応した前記位置決め回転角度と前記測定距離に対応した前記位置決め回転角度とが異なった場合には、前記主軸を前記最適距離に対応した前記位置決め回転角度に制御する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
従って、本発明に係る工具の回転方向位置決め方法によれば、主軸を所定の割出角度で割り出しながら、工具をその側方から撮像し、その撮像により得られた画像を用いて、主軸の回転軸と加工面との間の距離を連続的に測定し、主軸の回転角度と測定した距離との間の関係を示す曲線を取得し、この曲線を用いて、当該曲線の極値となる最適距離に対応した位置決め回転角度を求め、主軸を位置決め回転角度に制御することにより、簡素な構成で、且つ、短時間で、高精度に工具の回転方向の位置決めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例に係る工具の回転方向位置決め方法が適用される工作機械の概略構成図である。
【図2】撮像装置の概略構成図である。
【図3】工具の斜視図である。
【図4】撮像時の主軸回転による測定距離の変化を示した図である。
【図5】初回使用時における工具の回転方向位置決め方法を示したフローチャートである。
【図6】図5における主軸の回転角度と測定距離との間の関係を示した図である。
【図7】再使用時における工具の回転方向位置決め方法を示したフローチャートである。
【図8】図7における主軸の回転角度と測定距離との間の関係を示した図である。
【図9】再使用時における工具の回転方向位置決め方法を示した他のフローチャートである。
【図10】図9における主軸の回転角度と測定距離との間の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る工具の回転方向位置決め方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
図1に示すように、工作機械1の下部には、ベッド11が設けられている。ベッド11の上面には、コラム12が立設されており、このコラムの12の前面には、サドル13が水平なX軸方向に移動可能に支持されている。更に、サドル13の前面には、主軸ヘッド14が鉛直なZ軸方向に移動可能に支持されており、この主軸ヘッド14には、主軸15が鉛直なC軸周りに回転可能に支持されている。
【0021】
そして、主軸15には、工具ホルダ31を介して、工具32が着脱可能に装着されている。ここで、図3に示すように、工具32は、ヘールバイト等の非回転形工具であって、その正面には、すくい面(加工面)32aが形成されている。
【0022】
なお、コラム12の側部には、自動工具交換装置16が設けられている。この自動工具交換装置16は、保持した多数の工具の中から次加工用の工具を選択し、この次加工用の工具と主軸15に装着された工具32とを自動的に交換可能にするものである。
【0023】
また、コラム11の前方におけるベッド11の上面には、テーブル17が水平なY軸方向に移動可能に支持されている。更に、テーブル15の上面中央部には、ワークWが着脱可能に取り付けられると共に、テーブル15の上面隅部には、工具撮像機能を有する工具撮像装置18が設けられている。
【0024】
図2に示すように、工具撮像装置18は、テーブル15の上面に設けられるベース41と、このベース41の上部に支持される投光部42と、この投光部42と対向配置されるCCDカメラ(撮像手段)43と、このCCDカメラ43に接続される表示部44とから構成されている。そして、投光部42は、主軸15に装着された工具32がベース41の上方における所定の測定位置に移動されると、その先端に向けて光を照射するようになっており、CCDカメラ43は、その工具32の先端を一定時間間隔で連続的に撮像し、取得した画像データを表示部44へ出力するようになっている。更に、表示部44は、CCDカメラ43から入力された画像データを画像に変換し、この画像を表示画面44aに表示するようになっている。
【0025】
ここで、図1及び図2に示すように、工作機械1には、当該工作機械1全体を統合的に制御するNC装置19が設けられており、このNC装置19は、サドル13、主軸ヘッド14、主軸15、自動工具交換装置16、テーブル17、工具撮像装置18等に接続されている。そして、NC装置19では、加工前(工具装着後)における工具撮像装置18による工具32の画像に基づいて、主軸15のC軸周りの回転角度を制御して、工具32の回転方向の位置決めを行った後、図示しない入力装置に入力された加工条件に基づいて、工具32のX軸方向及びZ軸方向への移動、ワークWのY軸方向への移動、主軸15のC軸周りの回転を制御することにより、ワークWへの直線溝や曲線溝等の加工を可能にしている。
【0026】
従って、工作機械1を用いてワークWに溝加工を行う場合には、先ず、自動工具交換装置16を用いて、主軸15への工具交換を行った後、その主軸15に装着された工具32を工具撮像装置18内の測定位置に移動させる。なお、工具撮像装置18内の測定位置とは、主軸15の回転軸(C軸)とCCDカメラ43(表示画面44a)の画像縦中心線とが一致した位置のことである。
【0027】
次いで、投光部42から工具32の先端に向けて光が照射されると、その反対側からCCDカメラ43によって、工具32の先端が撮像され、その画像データが表示部44に入力される。これにより、その表示画面44aには、工具32の先端の画像が表示されることになる。
【0028】
そして、NC装置19では、主軸15を正転及び逆転させながら(図4参照、この図4では正転のみを図示)、表示画面44aに表示された画像を用いて、主軸15(工具32)の回転軸から工具32のすくい面32aまでの距離を連続的に測定した後(図2参照)、その測定した測定距離Lが最も短くなったときの主軸15の回転角度θで、工具32の回転方向の位置決めを行う。即ち、測定距離Lが最も短くなったときが、工具31のすくい面32aが切削方向に向いた状態となる。なお、NC装置19は、記録機能を有しており、工具32の初回使用時や再使用時における測定距離L、これに対応した回転角度θ、これらの関係を示した2次元曲線(図6参照)を記録するようになっている。
【0029】
次いで、工具32を位置決めした状態のまま、この工具32のX軸方向及びZ軸方向への移動や、ワークWのY軸方向への移動を制御し、必要に応じて、切削方向を変えるために、主軸15のC軸周りの回転を制御することにより、ワークWに直線溝や曲線溝が加工されることになる。
【0030】
更に、主軸15から一度離脱させた工具32を再使用する場合には、NC装置19に記録された初回使用時の回転角度θ、測定距離L、これらの関係を示す2次元曲線(後述する回転角度θo及び測定距離Loを含む)を用いて、工具32の回転方向の位置決めを行うようになっている。
【0031】
次に、加工前(工具装着後)における工具32の回転方向の位置決め方法について、図5乃至図10を用いて詳細に説明する。
【0032】
最初に、工具32を初めて使用する場合のその回転方向位置決め方法について、図5及び図6を用いて説明する。
【0033】
先ず、ステップS1で、主軸15の最小割出角度を任意に設定する。
【0034】
次いで、ステップS2で、自動工具交換装置16を用いて、主軸15に工具32を装着させ、ステップS3で、工具32を工具撮像装置18内の測定位置に移動させる。
【0035】
そして、ステップS4で、工具32のすくい面32aが所定の方向を向くように主軸15の回転角度を制御して、工具32の回転方向の位置決めを大まかに行う(粗位置決め)。
【0036】
次いで、ステップS5で、工具32の先端をCCDカメラ43により撮像し、その画像を表示部44の表示画面44aに表示させる。
【0037】
そして、ステップS6で、主軸15を正転方向及び逆転方向に所定の割出角度で割り出しながら、表示画面44aに表示された画像を用いて、主軸15の回転軸(C軸)から工具32のすくい面32aまでの測定距離Lを連続的に測定する。これにより、主軸15の回転角度θと主軸15の回転軸からすくい面32aまでの測定距離Lとの間の関係を示した下に凸の2次元曲線が得られる(図6参照)。
【0038】
次いで、ステップS7で、図6に示した2次元曲線から、その極値(極小値)、即ち、測定距離Lが最も短くなったときの測定距離(最適距離)Loを求める。
【0039】
そして、ステップS8で、測定距離Loに対応した回転角度(位置決め回転角度)θoを求めた後、所定の回転角度範囲θaを、その回転角度θoを跨ぐように設定する。更に、この回転角度範囲θa内において、前回測定時(ステップS6)における割出角度よりも小さい割出角度で、主軸15を正転方向及び逆転方向に割り出しながら、測定距離Lを連続的に再測定する。これにより、図6に示した2次元曲線における極値を含んだ一部分において、回転角度θと測定距離Lとの間の関係をより精密に示すことができる。
【0040】
次いで、ステップS9で、ステップS8で求めた2次元曲線の一部から、測定距離Lが最も短くなったときの測定距離Loを再度求める。
【0041】
そして、ステップS10で、今回測定時(ステップS8)における主軸15の割出角度が、ステップS1で設定した最小割出角度であるか否かが判定される。
【0042】
ここで、可であれば、ステップS11で、ステップS9で求めた測定距離Loに対応した回転角度θoを求めた後、主軸15をこの回転角度θoに回転させ、工具32の回転方向の位置決めを行う。
【0043】
また、否であれば、ステップS8に戻る。その後、主軸15の割出角度を徐々に小さくしながら、測定距離Loを求め直していき、最終的に、主軸15の割出角度がステップS1で設定した最小割出角度になるまで処理が続けられる。
【0044】
次に、工具32を再使用する場合のその回転方向位置決め方法について、図7及び図8を用いて説明する。
【0045】
先ず、ステップS21で、図8に示すように、工具32の初回使用時に記録された最新の測定距離Loに対して、プラス側及びマイナス側に、誤差を許容するための誤差許容距離|La|を設定し、ステップS22で、主軸15の最小割出角度を任意に設定する。
【0046】
次いで、ステップS23で、自動工具交換装置16を用いて、主軸15に工具32を装着させ、ステップS24で、工具32を工具撮像装置18内の測定位置に移動させる。
【0047】
そして、ステップS25で、主軸15を測定距離Loに対応した回転角度θoに回転させ、工具32の回転方向の位置決めを行う。
【0048】
次いで、ステップS26で、工具32の先端をCCDカメラ43により撮像し、その画像を表示部44の表示画面44aに表示させる。
【0049】
そして、ステップS27で、表示画面44aに表示された画像を用いて、主軸15の回転軸から工具32のすくい面32aまでの測定距離L1を測定する(図8参照)。
【0050】
次いで、ステップS28で、測定距離Loと測定距離L1との偏差が、誤差許容距離|La|内であるか否かが判定される。
【0051】
ここで、可であれば、ステップS29で、主軸15をその状態の回転角度θoで保持し、工具32の回転方向の位置決めを行う(図8の位置I)。
【0052】
また、否であれば、ステップS30で、主軸15を正転方向及び逆転方向に所定の割出角度で割り出しながら、表示画面44aに表示された画像を用いて、主軸15の回転軸から工具32のすくい面32aまでの測定距離L(L2)を連続的に測定する。
【0053】
そして、ステップS31で、測定距離Loと、測定した距離が最も短くなった測定距離L2との偏差が、誤差許容距離|La|内であるか否かが判定される。
【0054】
ここで、可であれば、ステップS32で、主軸15を測定距離L2に対応した回転角度θ2で保持し、工具32の回転方向の位置決めを行う(図8の曲線II)。
【0055】
また、否であれば、ステップS33で、今回測定時(ステップS30)における主軸15の割出角度が、ステップS22で設定した最小割出角度であるか否かが判定される。
【0056】
更に、ここで、可であれば、ステップS34で、主軸15の回転角度を制御しても、一向に測定距離Lが誤差許容距離|La|内に入らないため(図8の曲線III)、異常事態(例えば、工具破損、工具の取り違え)として、オペレータに対して、表示画面44aによってアラーム表示で知らせる。
【0057】
また、否であれば、ステップS30に戻る。その後、主軸15の割出角度を徐々に小さくしながら、測定距離L2を求め直していき、最終的に、主軸15の割出角度がステップS22で設定した最小割出角度になるまで処理が続けられる。
【0058】
また、工具32を再使用する場合の他の回転方向の位置決め方法について、図9及び図10を用いて説明する。
【0059】
先ず、ステップS41で、自動工具交換装置16を用いて、主軸15に工具32を装着させ、ステップS42で、工具32を工具撮像装置18内の測定位置に移動させる。
【0060】
次いで、ステップS43で、主軸15を測定距離Loに対応した回転角度θoに回転させ、工具32の回転方向の位置決めを行う。
【0061】
そして、ステップS44で、工具32の先端をCCDカメラ43により撮像し、その画像を表示部44の表示画面44aに表示させる。
【0062】
次いで、ステップS45で、表示画面44aに表示された画像を用いて、主軸15の回転軸から工具32のすくい面32aまでの測定距離L3を測定し、ステップS46で、工具32の初回使用時に記録された最新の2次元曲線を用いて、測定距離L3に対応した回転角度θ3を求める(図10参照)。
【0063】
そして、ステップS47で、回転角度θoと回転角度θ3とが同じ回転角度であるか否かが判定される。
【0064】
ここで、可であれば、ステップS48で、主軸15をその状態の回転角度θ3で保持し、工具32の回転方向の位置決めを行う。
【0065】
また、否であれば、ステップS49で、回転角度θoと回転角度θ3との偏差角度Δθを求める。
【0066】
次いで、ステップS50で、主軸15を、回転角度θ3から偏差角度Δθだけ回転させて、回転角度θoに保持し、工具32の回転方向の位置決めを行う。
【0067】
なお、本実施形態においては、非回転形工具として、すくい面32aが工具中心線(C軸)よりも切削方向前方に形成される工具32を用いたが、すくい面が工具中心線よりも切削方向後方に形成される工具を用いても構わない。また、このような工具を使用する場合には、主軸の回転角度と測定距離との間の関係を示す2次元曲線が上に凸のものとなり、主軸を測定距離が極値(極大値)となる回転角度に制御し、工具の回転方向の位置決めを行う。
【0068】
従って、本発明に係る工具の回転方向位置決め方法によれば、主軸15を所定の割出角度で割り出しながら工具32を撮像し、その撮像により得られた主軸15の回転角度θ及び測定距離Lから2次元曲線を取得し、主軸15をその2次元曲線の極値となる測定距離Loに対応した回転角度θoに制御することにより、簡素な構成で、且つ、短時間で、高精度に工具32の回転方向の位置決めを行うことができる。
【0069】
また、回転角度θoを求めた後、この回転角度θoを跨ぐように設定した所定の回転角度範囲θa内において、前回測定時の割出角度よりも小さい割出角度で、主軸15を正転方向及び逆転方向に割り出しながら、測定距離Lを連続的に再測定することにより、回転角度θoの高精度化を図ることができる。これにより、最初から小さい割出角度で、主軸15を正転方向及び逆転方向に割り出しながら、測定距離Lを連続的に測定するよりも、大きな割出角度から徐々に小さな割出角度で測定することにより、全体の測定時間を短くすることができる。
【0070】
更に、工具32を再使用する場合には、初回使用時に記録された回転角度θ,θo及び測定距離L,Loや、これらの関係を示した2次元曲線に基づいて、主軸15の回転角度を制御することにより、工具装着完了から工具位置決め完了までの間の時間を、初回使用時におけるその時間よりも短くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、加工精度の向上を図ることを目的として、加工前に工具長を測定する工具長測定方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 工作機械
11 ベッド
12 コラム
13 サドル
14 主軸ヘッド
15 主軸
16 自動工具交換装置
17 テーブル
18 工具撮像装置
19 NC装置
31 工具ホルダ
32 工具
32a すくい面
41 ベース
42 投光部
43 CCDカメラ
44 表示部
44a 表示画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に装着された工具とワークとを相対移動させると共に、前記主軸の回転角度を制御して、前記工具の加工面を常に切削方向に向けて加工する切削加工に先立って、前記工具の回転方向の位置決めを行う工具の回転方向位置決め方法において、
前記主軸を所定の割出角度で割り出しながら、前記工具をその側方から撮像し、
その撮像により得られた画像を用いて、前記主軸の回転軸と前記加工面との間の距離を連続的に測定し、
前記主軸の回転角度と測定した距離との間の関係を示す曲線を取得し、
前記曲線を用いて、当該曲線の極値となる最適距離に対応した位置決め回転角度を求め、
前記主軸を前記位置決め回転角度に制御する
ことを特徴とする工具の回転方向位置決め方法。
【請求項2】
請求項1に記載の工具の回転方向位置決め方法において、
前記位置決め回転角度を求めた後に、前記所定の割出角度から徐々に小さくした割出角度で、前記主軸を割り出し、前記工具を繰り返し撮像し、
前記位置決め回転角度を求め直していく
ことを特徴とする工具の回転方向位置決め方法。
【請求項3】
請求項2に記載の工具の回転方向位置決め方法において、
前回測定した際に前記主軸が回転した回転角度範囲よりも狭く、且つ、前記位置決め回転角度を含んだ所定の回転角度範囲内で、前記主軸を割り出し、前記工具を繰り返し撮像していく
ことを特徴とする工具の回転方向位置決め方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の工具の回転方向位置決め方法において、
前記工具の再使用時に、前記曲線、前記最適距離、前記位置決め回転角度に基づいて、前記主軸の回転角度を制御する
ことを特徴とする工具の回転方向位置決め方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の工具の回転方向位置決め方法において、
前記工具の初回使用時に記録された前記最適距離に対して許容範囲を設定し、
前記工具の再使用時に、撮像により得られた画像における前記主軸の回転軸と前記加工面との間の測定距離が、前記許容範囲内に入るように、前記主軸の回転角度を制御する
ことを特徴とする工具の回転方向位置決め方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の工具の回転方向位置決め方法において、
前記工具の再使用時に、撮像により得られた画像における前記主軸の回転軸と前記加工面との間の測定距離と、前記工具の初回使用時に記録された前記曲線とに基づいて、前記主軸の回転角度を制御する
ことを特徴とする工具の回転方向位置決め方法。
【請求項7】
請求項6に記載の工具の回転方向位置決め方法において、
前記曲線を用いて、前記測定距離に対応した位置決め回転角度を求め、
前記最適距離に対応した前記位置決め回転角度と前記測定距離に対応した前記位置決め回転角度とが異なった場合には、前記主軸を前記最適距離に対応した前記位置決め回転角度に制御する
ことを特徴とする工具の回転方向位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−41985(P2011−41985A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189669(P2009−189669)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】