説明

平行開閉式チャックハンド

【課題】円・楕円などの内径部を有するワークを把持することができ、かつ把持爪の曲げ強度を高めることができ、これにより重量の大きいワークを把持する場合でも、内径部との間に必要なクリアランスを確保することができる平行開閉式チャックハンドを提供する。
【解決手段】開位置と閉位置の間で平行に開閉駆動される1対の支持部材12,14と、支持部材に片持ち支持された広幅把持爪16及び狭幅把持爪18とを備える。広幅把持爪16は、開位置において幅方向の両端部16a,16bが内径部の内周面6,7に接触し、中間部が内周面に沿って延びかつ外方に湾曲した凹部16cを有する円弧状の断面形状を有する。狭幅把持爪18は、閉位置において広幅把持爪16の凹部16c嵌合する断面形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの内径部を把持する平行開閉式チャックハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
円・楕円などの内径部を有するワークを把持するために、図1(A)(B)に示すような平行開閉式チャックハンドが、例えばロボットハンドとして従来から用いられている。
この図において、1,2,3は円筒形の把持爪、4は把持爪1を片持ち支持する第1支持部、5は把持爪2,3を片持ち支持する第2支持部、6はワークの最小内径部、7はワークの最大内径部である。
【0003】
第1支持部4と第2支持部5は、図示しない駆動装置により、把持爪1,2,3を平行に保持しながら、その相対距離を開位置と閉位置の間で開閉できるようになっている。
【0004】
図2は、図1の平行開閉式チャックハンドの作動説明図であり、(A)は最小内径部6を把持した状態、(B)は最大内径部7を把持した状態を示している。
【0005】
上述した平行開閉式チャックハンドでワークを把持する場合、予め第1支持部4と第2支持部5の相対距離を、図1に示す閉位置に位置決めする。次いで、チャックハンドの位置及び姿勢を制御して、把持爪1,2,3を円・楕円などの内径部6,7の内側に挿入する。この状態から、把持爪1,2,3を平行に保持しながら、その相対距離を閉位置から開位置に向けて移動することで、図2(A)(B)に示すように、円・楕円などの内径部を有するワークを把持することができる。
【0006】
なお、上述したチャックハンドと同様に、複数の把持爪でワークを把持する装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−192888号公報、「マニピュレータ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した平行開閉式チャックハンドにおいて、重量・内径寸法が異なるワークの内径部を同一のチャックハンドで把持する際には、把持爪を内径部に挿入する際に必要なクリアランスや把持爪の必要曲げ強度に応じて、把持爪を交換する必要がある。
特に、重量の大きいワークを把持する場合、把持に必要な力が大きくなるが、その反力を受ける把持爪の強度を満たすためには把持爪の寸法も大きくなり、結果的に上述クリアランス量が減ることになる。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、円・楕円などの内径部を有するワークを把持することができ、かつ把持爪の曲げ強度を高めることができ、これにより重量の大きいワークを把持する場合でも、内径部との間に必要なクリアランスを確保することができる平行開閉式チャックハンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、内径部の内周面を利用してワークを把持する平行開閉式チャックハンドであって、
開位置と閉位置の間で平行に開閉駆動される1対の支持部材と、
該支持部材に片持ち支持された広幅把持爪及び狭幅把持爪と、を備え、
前記広幅把持爪は、前記開位置において幅方向の両端部が前記内周面に接触し、中間部が前記内周面に沿って延びかつ外方に湾曲した凹部を有する円弧状の断面形状を有し、
前記狭幅把持爪は、前記閉位置において前記凹部に嵌合する断面形状を有する、ことを特徴とする平行開閉式チャックハンドが提供される。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記広幅把持爪の断面形状は、幅方向の両端部の円形とその間を結ぶ円弧断面とからなり、
前記狭幅把持爪の断面形状は、円形又は幅方向に延びる楕円形である。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の構成によれば、広幅把持爪が、開位置において幅方向の両端部が内径部の内周面に接触し、中間部が内周面に沿って延びかつ外方に湾曲した凹部を有する円弧状の断面形状を有するので、従来の2本爪を円弧状に曲がった楕円形状にして一体化したことに相当し、曲げ強度を大きくできる。
【0013】
また、狭幅把持爪が、閉位置において広幅把持爪の凹部に嵌合する断面形状を有するので、その断面形状を大きくして、曲げ強度を大きくできる。
【0014】
さらに、狭幅把持爪が、閉位置において広幅把持爪の凹部に嵌合するので、1対の把持爪の軸心間距離が小さくなり、把持爪の曲げ強度を高めても把持爪全体を小さくできる。従って、重量の大きいワークを把持する場合でも、内径部の内周面との間に必要なクリアランスを確保することができる。

【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の平行開閉式チャックハンドの構成図である。
【図2】図1の平行開閉式チャックハンドの作動説明図である。
【図3】本発明による平行開閉式チャックハンドの実施形態図である。
【図4】図3の平行開閉式チャックハンドの作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0017】
図3は、本発明による平行開閉式チャックハンドの実施形態図である。
この図において、(A)は平行開閉式チャックハンド10の側面図、(B)はそのB−B矢視図である。
【0018】
本発明が対象とするワークは、その一部に円・楕円などの内径部を有し、その内径部は、円筒又は楕円柱の内周面を有する。また、対象とする内径部は、最小直径を有する最小内径部6から最大直径を有する最大内径部7までの範囲にあるものとする。最小直径は例えば55mmであり、最大直径は例えば110mmである。
【0019】
本発明の平行開閉式チャックハンド10(以下、単に「チャックハンド」と呼ぶ)は、上述した内径部の内周面6,7を利用してワークを把持する装置である。
【0020】
図3において、本発明のチャックハンド10は、1対の支持部材12,14と広幅把持爪16及び狭幅把持爪18とを備える。
【0021】
図3(A)に示すように、1対の支持部材12,14は、開位置Oと閉位置Cの間で平行に開閉駆動される。開位置Oは、1対の把持爪16,18の隙間が最小の位置であり、閉位置Cは、1対の把持爪16,18の隙間が最大の位置である。また、「平行に開閉駆動」とは、支持部材12,14の姿勢が変化せず、結果として広幅把持爪16と狭幅把持爪18が平行に維持される開閉状態を意味する。
【0022】
1対の支持部材12,14は、図示しないリニアガイドにより図3(A)で左右方向に案内されている。また、広幅把持爪16と狭幅把持爪18の姿勢を保持したまま一方又は両方を図示しないアクチュエータにより図で左右方向に駆動される。アクチュエータは、例えばラック&ピニオン機構とモータ、直動の電動シリンダ、ネジ棒とモータ等である。
【0023】
広幅把持爪16と狭幅把持爪18は、1対の支持部材12,14にそれぞれ図で上端が片持ち支持されている。
【0024】
図3(B)に示すように、広幅把持爪16は、開位置において両端部16a,16bが内径部6,7の内周面に接触する。両端部16a,16bの形状はこの例では円形であるが、その他の形状であってもよい。
また、広幅把持爪16の中間部は、内径部6,7の内周面に沿って延びかつ外方に湾曲した凹部16cを有する円弧状の断面形状を有する。外方に湾曲した凹部16cはこの例では緩い円弧状の凹みであるが、その他の形状(半円形、矩形等)であってもよい。
【0025】
すなわち、この例において、広幅把持爪16の断面形状は、幅方向の両端部の円形とその間を結ぶ円弧断面とからなり、従来の2本爪を円弧状に曲がった楕円形状にして一体化したことに相当する。従って、広幅把持爪16の断面中心軸17から最外面までの距離(円筒面の半径に相当する)が同一の場合、広幅把持爪16の図で左右方向の曲げ強度は、従来の2本爪と比較して、大幅に大きくできる。
【0026】
また、この図において、狭幅把持爪18は、閉位置において広幅把持爪16の凹部16cに嵌合する断面形状を有する。この例において、狭幅把持爪18の断面形状は円形であるが幅方向に延びる楕円形であってもよい。
この場合、中心軸19から最外面までの距離(円筒面の半径に相当する)が同一の場合、狭幅把持爪18の図で左右方向の曲げ強度は、従来の1本爪と比較して、円形の場合同一であり、楕円形の場合は大幅に大きくなる。
【0027】
さらに、狭幅把持爪18が、閉位置において広幅把持爪16の凹部16cに嵌合するので、1対の把持爪16,18の軸心間距離が小さくなり、把持爪16,18の曲げ強度を高めても把持爪全体を小さくできる。従って、重量の大きいワークを把持する場合でも、内径部の内周面との間に必要なクリアランスを確保することができる。
【0028】
図4は、図3の平行開閉式チャックハンドの作動説明図である。
この図において、(A)は把持爪16,18の閉位置、(B)は最小内径部6を把持した状態、(C)は最大内径部7を把持した状態を示している。
【0029】
図4(A)に示すように、本発明のチャックハンド10でワークを把持する場合、予め1対の支持部材12,14を、閉位置に位置決めする。この閉位置において、1対の把持爪16,18は最小内径部6に対して必要なクリアランスを確保するように寸法が設定されている。
次いで、チャックハンドの位置及び姿勢を制御して、1対の把持爪16,18を円・楕円などの内径部6,7の内側に挿入する。
【0030】
この状態から、1対の把持爪16,18を平行に保持しながら、その相対距離を閉位置から開位置に向けて移動することで、図4(B)(C)に示すように、円・楕円などの内径部を有するワークを内側から把持することができる。
なお、本発明のチャックハンド10が、把持爪16,18に作用する力を検出する力センサを備え、把持爪16,18に作用する力が所定の値に達した位置で開方向への移動を停止するのがよい。
【0031】
上述の例では、本発明のチャックハンド10で、円・楕円などの内径部を有するワークを把持する場合を説明したが、本発明はこのような例に限定されない。
すなわち、本発明のチャックハンド10により、把持爪16,18を開位置から閉位置に移動して、図示しない別のワークを把持してもよい。この場合、薄い板材、細い線材等も確実に把持することができる。
またこの場合、本発明のチャックハンド10をロボットハンド以外の用途、例えば加工機械のチャック装置等に用い、研磨、塗装、溶接、検出等のツールを把持してもよい。
【0032】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0033】
1,2,3 円筒形の把持爪、
4 第1支持部、5 第2支持部、
6 最小内径部、7 最大内径部、
10 チャックハンド、
12,14 支持部材、
16,18 把持爪、
16a,16b 両端部、16c 凹部、
17 断面中心軸、19 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径部の内周面を利用してワークを把持する平行開閉式チャックハンドであって、
開位置と閉位置の間で平行に開閉駆動される1対の支持部材と、
該支持部材に片持ち支持された広幅把持爪及び狭幅把持爪と、を備え、
前記広幅把持爪は、前記開位置において幅方向の両端部が前記内周面に接触し、中間部が前記内周面に沿って延びかつ外方に湾曲した凹部を有する円弧状の断面形状を有し、
前記狭幅把持爪は、前記閉位置において前記凹部に嵌合する断面形状を有する、ことを特徴とする平行開閉式チャックハンド。
【請求項2】
前記広幅把持爪の断面形状は、幅方向の両端部の円形とその間を結ぶ円弧断面とからなり、
前記狭幅把持爪の断面形状は、円形又は幅方向に延びる楕円形である、ことを特徴とする請求項1に記載の平行開閉式チャックハンド。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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