説明

広口減圧吸収容器

【課題】 本発明は、容器の底部に設けた減圧吸収機能部により十分に大きくかつ確実な減圧吸収作用を得ることにより、減圧に対して安全にかつ適正に対応する容器を提供することを目的とする。
【解決手段】 口筒部3と胴部3と底部8を有する容器本体1の本体部分を構成し、底部8の底板部10に形成された開放部11を塞いでインモールド材である柔らかい底フィルム12を設け、周端部を底板部10に密に接合した底フィルム12の撓み変形により、大きな減圧吸収能力を確実に得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に発生した減圧を、容器の底部部分で吸収するようにした広口減圧吸収容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器内に発生した減圧を、容器の底部部分で吸収すべく構成した容器としては、例えば特許文献1が知られている。この特許文献1に示された容器は、底部に、容器内方に凹む蛇腹構造の減圧吸収面を形成した構成となっている。
【0003】
この特許文献1に示された従来技術は、底部を蛇腹構造に構成して、容器内に凹み状に伸び変形し易くしているので、この底部の容器内への伸び変形により、容器内の減圧を吸収する、と云う作用を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−048322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、容器全体が一体成形物であり、かつこの底部は容器の脚部を形成する部分であるので、十分に柔軟性のある状態で成形することが難しく、かつ瓶体状の容器はPET製の2軸延伸ブロー成形品であるので、成形技術の関係から底部を十分に薄肉に成形する、すなわち変形し易い状態に成形することが難しく、このため底部に形成された減圧吸収機能部が、適正に伸び変形することができる保証がない、と云う問題があった。
【0006】
特に、内容物を高温充填する容器にあっては、充填後密封して冷却すると、容器内がかなりの減圧状態なるが、上記した従来技術では、この減圧を十分に吸収することができない、と云う不安が強く生じることになる。
【0007】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、容器の底部に設けた減圧吸収機能部により十分に大きくかつ確実な減圧吸収作用を得ることを技術的課題とし、減圧に対して安全にかつ適正に対応する容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するための本発明の主たる構成は、
口筒部と胴部と底部を有する容器本体と、口筒部に着脱自在に組付いて容器本体を開閉する蓋体とからなる広口容器であること、
容器本体は、合成樹脂製射出成形品であること、
容器本体の底部の底板部には開放部が形成してあること、
底板部の上面には開放部を塞いでインモールド材である底フィルムが位置していること、
この底フィルムは、周端部を底板部の上面周端部に密に接合させていること、
にある。
なお、広口容器における「広口」とは、口筒部が、胴部を成形する金型部分から型抜きの可能な口径寸法を意味する。
【0009】
底フィルムはインモールド材であるので、容器本体の射出成形と同時に、底部の底板部上面へ密な接合が達成され、この底フィルムの底板部上面への接合により、底フィルムは底板部の開放部を密に塞ぐことになる。
【0010】
底フィルムは、その周端部を底板部の上面周端部に密に接合させているので、底板部上面の略全域を覆う状態で、その略全体を変形可能としている。これにより、柔軟性を有する底フィルムは、容器内の減圧に従って撓み変形して変位し、この変形変位に伴う容積変化が大きいので、大きな減圧吸収能力を発揮することになる。
【0011】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、底板部をリング板状として、中央部分の略全体を開放部とした、ことを加えたものである。
【0012】
底板部をリング板状として、中央部分の略全体を開放部としたものにあっては、底板部の成形樹脂量を大幅に低減することができ、また底フィルムの略全域を、底板部に対して上下方向に変位可能に支持することになるので、底フィルムに大きな変位可能範囲を与えることができる。
【0013】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、底板部の一部に、上下に貫通する通孔を開設し、この通孔を開放部とした、ことを加えたものである。
【0014】
底板部の一部に、上下に貫通する通孔を開設し、この通孔を開放部としたものにあっては、柔らかい底フィルムを底板部が下方から支持すると共に、底板部が他の物品との接触等から保護することになる。
【0015】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、胴部を合成樹脂製チューブ体で構成した、ことを加えたものである。
【0016】
胴部を合成樹脂製チューブ体で構成したものにあっては、胴部を十分に薄肉とすることができるので、その分、消費される樹脂量を少なくすることができ、またチューブ体の柔軟性を利用して、容器の廃棄時の大きな減容変形を簡単に得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成にあっては、柔軟性を有する底フィルムが、容器内の減圧に従って容易に撓み変形して変位し、大きな減圧吸収能力を発揮するので、減圧に即応した素早い減圧吸収を得ることができると共に、例え高温充填のような大きな減圧が発生する場合でも、これに適正に対応して、減圧による容器の外観体裁の劣化の発生を確実に防止する。
【0018】
底板部をリング板状として、中央部分の略全体を開放部としたものにあっては、底板部の成形樹脂量を大幅に低減することができ、また底フィルムに大きな変位可能範囲を与えることができるので、消費樹脂量の省資源化と十分な減圧吸収能力とを得ることができる。
【0019】
底板部の一部に、上下に貫通する通孔を開設し、この通孔を開放部としたものにあっては、柔らかい底フィルムを底板部が他の物品との接触等から保護するので、容器の安全性を高めることができる。
【0020】
胴部を合成樹脂製チューブ体で構成したものにあっては、消費される樹脂量を少なくすることができ、また容器の廃棄時の大きな減容変形を簡単に得ることができるので、消費樹脂の大幅な省資源化と容器の廃棄処理の高効率化とを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一実施形態例を示す、全体縦断面である。
【図2】図1に示した実施形態例の、全体平面図である。
【図3】本発明の第二実施形態例を示す、全体縦断面である。
【図4】本発明の第三実施形態例を示す、全体縦断面である。
【図5】第三実施形態例の減容変形状態を示す、全体縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態例を、図面を参照しながら説明する。
本発明による広口減圧吸収容器(図1参照)は、容器本体1と蓋体13とから構成され、容器本体1は、合成樹脂により径の大きい有底円筒状に射出成形された本体部分と、この本体部分の底部8の底板部10に開設された開放部11を塞ぐ柔らかいインモールド材である底フィルム12とから構成され、蓋体13は、容器本体1の口筒部3に着脱して開閉動作を行う。
【0023】
容器本体1の本体部分は、外周面に蓋体13の装着機能部を有する口筒部3と、容器本体1の主体部分を構成する円筒形状をした胴部2と、脚機能部を形成する底部8とから構成され、底部8は、短円筒片状の筒片部9の下端内周面にリング板状となって開放部11を形成する底板部10を連設して構成されている。この底板部10の上面周端部には、開放部11を塞ぐ底フィルム12の周端部が、インモールド成形により密に接合されている。
【0024】
このように、容器本体1の底部8に形成された開放部11が、柔らかな底フィルム12で塞がれており、またこの底フィルム12は、その周端部で底板部10に接合固定されて、その大部分が変形変位可能となっている。それゆえ、蓋体13で密閉された容器内に減圧が発生した状態となると、この発生した減圧に従って速やかに底フィルム12が、容器本体1内側に陥没状(図1および図3参照)に撓み変形して、減圧を吸収する。
【0025】
この底フィルム12の減圧吸収動作は、インモールド材である底フィルム12が柔らかく、かつその大部分を変形変位可能な状態としていることから、素早い減圧吸収動作と、大きな減圧吸収能力の発揮とを得ることができる。
【0026】
蓋体13(図1および図2参照)は、頂壁14と筒壁15とを有する有頂短円筒形状をしていて、頂壁14の下面周端部には、シール筒片16とシール条17とが垂下突片状に設けられており、シール筒片16は、容器本体1に組付いた状態で、容器本体1の上端開孔部に密嵌入し、シール条17は、容器本体1に組付いた状態で、容器本体1の上端面に、全周に亘って密に弾接し、このシール筒片16およびシール条17により、蓋体13による容器本体1の密閉が確保される。
【0027】
また、筒壁15の内周面には、口筒部3の螺条5に螺合する螺条が刻設されていて、この筒壁15の口筒部3に対する螺着により、容器本体1の密閉が維持される。なお、この筒壁15の外周面には細かい縦条であるローレットが形成されて、蓋体13の容器本体1に対する着脱操作が行い易くしている。
【0028】
図1は本発明の第一実施形態例を示すもので、底部8の底板部10をリング板状に構成し、インモールド材である底フィルム12で底板部10の開放部11を閉塞するように構成した。このように、底板部1を内鍔状のリング板形状としたので、底板部10を成形するに要する樹脂材料量を少なくすることができる。
【0029】
この第一実施形態例の場合、底フィルム12は、容器内に充填された内容物の重みにより底板部10の開放部11から外側に膨出する(図1の下側の図示状態を参照)ことになるが、この状態で充填された高温内容物が冷却されて容器内に減圧が発生すると、外側に膨出状に位置していた底フィルム12が容器の内側に変位(図1の実線図示した中間の図示状態、および上側の図示状態参照)し、これにより容器内に発生した減圧を吸収する。この際、底フィルム12の容器内側への変形は、略平坦となる位置(図1の中間の図示状態参照)を越えて、内側に陥没する反転位置(図1の上側の図示状態参照)まで変位することが可能であるので、大きな減圧吸収能力を得ることができる。
【0030】
図3は本発明の第二実施形態例を示すもので、底部8の底板部10の略中央部に透孔状の開放部11を設け、底板部10の上面を覆ってインモールド材である底フィルム12を位置させ、この底フィルム12を底板部10に対して、周端部だけが密に溶着し、他の部分は剥離自在に組付けたものである。
【0031】
この第二実施形態例の場合、柔らかい底フィルム12は、その全体が底板部10上に位置して、底板部10で支持された状態にあるので、底板部10が、機械的強度の十分ではない底フィルム12を、機械的に保護することになると共に、内容物が充填された状態で、底フィルム12の垂れ下がりを阻止する。なお、底フィルム12は、第一実施形態例と同様に、その略全体で撓み変形するので、大きな減圧吸収能力を発揮する。
【0032】
なお、インモールド材である底フィルム12は、射出成形された容器本体1の本体部分の離型後における収縮変形、特に底部8の収縮により撓み変形が発生することがあり、この底フィルム12の撓み変形は、容器内に発生した減圧に伴う底フィルム12の変位をし易くするように作用するので、底フィルム12による減圧吸収効果は、より高められることになる。
【0033】
図4は本発明の第三実施形態例を示すもので、容器本体1の本体部分は、径の大きい合成樹脂チューブ体製の胴部2と、この胴部2の上端開放部にインサート成形により取付けられて、胴部2の内径と略等しい口径の開口部を形成する口筒部3と、胴部2の下端開放部にインサート成形により取付けられた底部8とから構成されている。口筒部3は、変形し難くかつ胴部2よりも大きい外径を持つ筒片状の本体筒4を有し、底部8は、変形し難くかつ胴部2よりも大きい外径を持つ筒状の筒片部9を有している。
【0034】
容器本体1の胴部2は、合成樹脂積層シートを丸めて成形されたチューブ体で形成されており、この合成樹脂積層シートを構成する各層を選択して組合せることにより、胴部2に所望する物性を簡単に附与することができる。また、胴部2は、柔軟性を有するチューブ体製であるので、強引な潰し変形が可能であり、それゆえ廃棄時には上下から押し潰すとか、捻りながら押し潰す等する(図5参照)ことにより容器の十分な減容化を得ることができ、これにより容器の廃棄を効率良く達成できる。特に、胴部2を形成するチューブ体は径が大きいので、上記した潰し変形を適正にかつ簡単に得ることができる。
【0035】
例えば、胴部2を形成するチューブ体として、アルミ箔を用いた合成樹脂積層シートを用いた場合は、アルミ箔が発揮する各種のバリヤー機能、例えば各種の気体に対するガスバリヤー性、液体成分に対するバリヤー性、さらに遮光性を得ることができ、優れた内容物保存効果を得ることがでる。また、胴部2を形成するチューブ体として、シリカ蒸着層や透明なバリヤー樹脂フィルムを用いた透明合成樹脂積層シートを用いた場合は、ガスバリヤー性を得ることができる状態で、容器外から内容物を直接観察することができるので、商品である容器を安心して購入することができる。
【0036】
胴部2をバリヤー性が附与された合成樹脂積層チューブ体で形成した場合には、底フィルム12にも同様のバリヤー性を附与するのが望ましいので、底フィルム12をバリヤー性が附与された合成樹脂積層フィルムで構成するのがよい。このように、薄肉部分となっている合成樹脂積層チューブ体製の胴部2および底フィルム12にバリヤー性を附与することにより、容器全体のバリヤー性を高めることができる。
【0037】
口筒部3および底部8は、変形し難いすなわち剛性を有しているので、柔軟性を有する胴部2の上端部および下端部を、安定して一定形状に保持することができ、これにより容器として要求される一定形状を維持することになる。また、胴部2よりも大きい外径を有しているので、容器を並列配置して取扱う際には、隣接する容器同士は、口筒部3および底部8が突き当ったり擦れ合ったりすることはあっても、柔軟性のある胴部2が接触したり擦れ合ったりすることがなく、これにより胴部2に施された表示の状態が劣化するのを、効果的に防止することになる。
【0038】
口筒部3および底部8は、胴部2の外表面にインサート成形されており、口筒部3(図4参照)は、主体部分である円筒状の本体筒4と、この本体筒4の上端に内鍔状に位置して、胴部2の上端面を覆う内鍔6とから構成され、本体筒4は、上半部分外周面に蓋体13の装着機能部分である螺条5を刻設し、下半部分を外方に肉厚に膨出した膨出下部7としている。この膨出下部7は、容器の最も大きい外径部分を形成するので、容器の取扱い時には、他の物品が蓋体13に擦れ状に接触するのを邪魔することになり、これにより蓋体13の螺着組付きを安定させ、また蓋体13の着脱操作時には、容器本体1側の支持部として安定して機能する。
【0039】
底部8(図4参照)は、短円筒状の筒片部9と、リング板状の底板部10とから構成され、その下面で容器の脚機能部を形成している。
【0040】
このように、口筒部3および底部8は、胴部2を構成するインサート材であるチューブ体の外表面にインサート成形されるので、インサート材であるチューブ体は、その内表面全域をコア金型(図示省略)に密接させ、金型装置は、チューブ体の外側だけにキャビティを形成すればよいので、その構造がきわめて簡単なものとなる。
【0041】
なお、容器本体1に対する蓋体13の着脱は、螺合組付き構造に限定されることはなく、他の適当な密な組付けを得ることのできる組付け手段を採用してもよい。また、口筒部3の膨出下部7は、その全体が大きな肉厚である必要はなく、一部を大きな肉厚にした構成で、他部を把持力を支えることができる剛性を発揮できる程度の小さい肉厚にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明の広口減圧吸収容器は、柔らかい底フィルムの撓み変形のし易さを利用して大きな減圧吸収能力を発揮するものであり、内容物を高温充填することにより大きな減圧の発生する広口減圧吸収容器に関して幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0043】
1 ;容器本体
2 ;胴部
3 ;口筒部
4 ;本体筒
5 ;螺条
6 ;内鍔
7 ;膨出下部
8 ;底部
9 ;筒片部
10;底板部
11;開放部
12;底フィルム
13;蓋体
14;頂壁
15;筒壁
16;シール筒片
17;シール条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口筒部(3)と胴部(2)と底部(8)を有する容器本体(1)と、前記口筒部(3)に着脱自在に組付いて容器本体(1)を開閉する蓋体(13)とからなる広口容器であって、前記容器本体(1)は、合成樹脂製射出成形品であり、前記底部(8)の底板部(10)には開放部(11)が形成してあり、前記底板部(10)の上面には開放部(11)を塞いでインモールド材である底フィルム(12)が位置しており、該底フィルム(12)は周端部を底板部(10)の上面周端部に密に接合させていることを特徴とする広口減圧吸収容器。
【請求項2】
底板部(10)をリング板状として、中央部分の略全体を開放部(11)とした請求項1に記載の広口減圧吸収容器。
【請求項3】
底板部(10)の一部に、上下に貫通する通孔を開設し、該通孔を開放部(11)とした請求項1に記載の広口減圧吸収容器。
【請求項4】
胴部(2)を合成樹脂製チューブ体で構成した請求項1〜3の何れか1項に記載の広口減圧吸収容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−232756(P2012−232756A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100968(P2011−100968)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】