床暖房装置
【課題】床仕上げ材として、柔軟性のあるシート状体を用いている場合において、そのシート状体が盛り上がるように変形することを抑制して、美観が良好な状態に維持することが可能な床暖房装置を提供する。
【解決手段】床スラブU上に暖房用マットAが設置され、その暖房用マット上に、矩形状の捨張合板Cが並設され、その並設された捨張合板上に、床仕上げ材Dが敷設され、床仕上げ材Dが、柔軟性のあるシート状体であり、床仕上げ材Dの裏面部又は表面部に、凹溝Eが並設されている。
【解決手段】床スラブU上に暖房用マットAが設置され、その暖房用マット上に、矩形状の捨張合板Cが並設され、その並設された捨張合板上に、床仕上げ材Dが敷設され、床仕上げ材Dが、柔軟性のあるシート状体であり、床仕上げ材Dの裏面部又は表面部に、凹溝Eが並設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床スラブ上に暖房用マットが設置され、その暖房用マット上に、矩形状の捨張合板が並設され、その並設された捨張合板上に、床仕上げ材が敷設された床暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような床暖房装置は、一般家庭等に設置して暖房対象空間を暖房するのに使用されるものであり、家屋の床スラブ上に、暖房用マットを設置し、その暖房用マット上に、矩形状の捨張合板を並設し、その並設された捨張合板上に、床仕上げ材を敷設することになる。
つまり、家屋の床スラブ上に、暖房用マット、捨張合板、及び、床仕上げ材を順次設置して構成されることになる(例えば、特許文献1参照。)。
尚、この特許文献1では、暖房用マットと床スラブとの間に、緩衝体を設けるようにしているが、この緩衝体を設けない形態で実施することも多い。
【0003】
上記特許文献1においては、床仕上げ材として、木質化粧合板とその下部の緩衝材とから構成される床材が用いられているが、床仕上げ材としては、クッションフロア等の柔軟性のあるシート状体が用いられる場合がある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−13641号公報
【特許文献2】特開平8−128658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
捨張合板は、水分を吸収及び放出し易く、また、その水分の吸収及び放出により膨張及び収縮し易い傾向にある。このため、床スラブが水分を含んでいると、その床スラブから放出される水分を吸収して膨張することになり、また、暖房マットの加熱より水分を放出して収縮することになる。
このように捨張合板が膨張及び収縮すると、床仕上げ材として、柔軟性のあるシート状体を用いる場合においては、その床仕上げ材も伸長及び収縮するものとなるが、捨張合板が膨張した場合において、床仕上げ材のうちの、隣接する捨張合板の間に位置する部分が、盛り上がるように変形して、美観を損なう虞があり、その改善が望まれる。
【0006】
説明を加えると、捨張合板は、隣接するもの同士を密接させるように並設されるものであるが、設置誤差等のために、隣接するもの同士の間に小さな隙間Wが存在する状態に並設されることがある(図10参照)。
また、一般に、柔軟性のあるシート状体にて構成される床仕上げ材は、その裏面の全体が接着剤等により捨張合板に止着される状態で敷設されることになる。
そして、捨張合板が膨張すると、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間が少なくなる状態となるように変化することになるが、この変化に伴って、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が、盛り上がるように変形して、盛り上がり部分Fが発生する虞があった(図11参照)。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、床仕上げ材として、柔軟性のあるシート状体を用いる場合において、その床仕上げ材が盛り上がるように変形することを抑制して、美観を良好な状態に維持することが可能な床暖房装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の床暖房装置は、床スラブ上に暖房用マットが設置され、その暖房用マット上に、矩形状の捨張合板が並設され、その並設された捨張合板上に、床仕上げ材が敷設されたものであって、その第1特徴構成は、
前記床仕上げ材が、柔軟性のあるシート状体であり、
前記床仕上げ材の裏面部又は表面部に、凹溝が並設されている点を特徴とする。
【0009】
すなわち、裏面部又は表面部に凹溝が並設された床仕上げ材は、凹溝が並設されていない場合に較べて、伸縮し易いものとなる。
このため、隣接する捨張合板同士の間に隙間が存在する状態に設置された捨張合板が膨張することにより、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間が少なくなる状態に変化して、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分に対して、収縮させる力が作用しても、床仕上げ材は伸縮し易いものであるため、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が、適切に収縮することになり、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が、盛り上がるように変形することがない、あるいは、大きく盛り上がるように変形することがなくなることになる。
つまり、床仕上げ材のうちの、隣接する捨張合板の間に位置する部分が、盛り上がるように変形することが抑制されることになる。
【0010】
ちなみに、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が、盛り上がるように変形することが抑制されるのは、その隣接する捨張合板の間に位置する部分が収縮する作用に加えて、その部分に隣接する床仕上げ材部分が、収縮する作用にもよるものである。
【0011】
つまり、床仕上げ材における捨張合板に接続されている合板接続部分は、その下面が捨張合板に接続されてはいるものの、その上側部分は、弾性変形可能であるから、捨張合板が膨張することにより、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間が少なくなる状態に変化して、その変化に伴って、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分に対して、収縮させる力が作用する際には、その部分に隣接する床仕上げ材の合板接続部分も収縮するように弾性変形して、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分に対して作用する収縮力を、減少させる機能を奏するものである。
ちなみに、このように、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分に対して作用する収縮力を減少させる機能を奏するときには、凹溝が消滅するあるいは少なくなるように、床仕上げ材が変形することになる。
【0012】
要するに、本発明の第1特徴構成によれば、床仕上げ材として、柔軟性のあるシート状体を用いる場合において、その床仕上げ材が盛り上がるように変形することを抑制して、美観を良好な状態に維持することが可能な床暖房装置を提供するに至った。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記凹溝が、前記捨張合板の辺部に沿った方向に形成されている点を特徴とする。
【0014】
すなわち、床仕上げ材は、並設される凹溝が並ぶ方向に伸縮し易いものとなるが、凹溝が捨張合板の辺部に沿った方向に形成されているから、並設される凹溝の並ぶ方向は、捨張合板の辺部と直交する方向となる。
つまり、矩形状の捨張合板には、互いに平行な姿勢で対向する一対の辺部の組が、2組存在することになるが、並設される凹溝の並ぶ方向は、2組の一対の辺部のうちの一方の組における一対の辺部と直交する方向となる。
【0015】
そして、捨張合板が膨張することにより、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間が少なくなる状態に変化する状態とは、隣接する捨張合板の対向する辺部が接近するように変化する状態であるが、そのように隣接する捨張合板の対向する辺部が接近するように変化する方向に、伸縮し易い状態となるように床仕上げ材が設置されているため、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が盛り上がるように変形することを抑制し易いものとなる。
【0016】
ちなみに、捨張合板は、一般に長方形状に形成されるものであり、水分の吸収による膨張量はその長手方向に大きいものとなるから、床仕上げ材を、並設される凹溝の並び方向が捨張合板の長手方向となるように設置すれば、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が盛り上がるように変形することを適切に抑制し易いものとなる。
【0017】
要するに、本発明の第2特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が盛り上がるように変形することを適切に抑制し易いものとなる床暖房装置を提供するに至った。
【0018】
本発明の第3特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記凹溝が、前記捨張合板の辺部に対して傾斜する方向に形成されている点を特徴とする。
【0019】
すなわち、床仕上げ材は、並設される凹溝が並ぶ方向に伸縮し易いものとなるが、凹溝が捨張合板の辺部に対して傾斜する方向に形成されているから、並設される凹溝の並ぶ方向は、捨張合板の隣接する辺部の夫々に対して交差する方向となる。
つまり、床仕上げ材は、捨張合板の隣接する辺部の夫々に直交する両方向に伸縮し易いものとなる。
【0020】
そして、矩形状の捨張合板は、水分の吸収により、隣接する辺部の夫々に直交する両方向に膨張することになるが、このような捨張合板の膨張に応じて、床仕上げ材が適切に伸縮し易いため、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が盛り上がるように変形することを的確に抑制し易いものとなるのである。
【0021】
要するに、本発明の第3特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が盛り上がるように変形することを的確に抑制し易いものとなる床暖房装置を提供するに至った。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】床暖房装置の縦断正面図
【図2】床暖房装置の一部切欠き平面図
【図3】暖房用マットの平面図
【図4】床暖房装置の要部の縦断正面図
【図5】小根太装着部の縦断正面図
【図6】第2実施形態の床暖房装置の一部切欠き平面図
【図7】第2実施形態の床暖房装置の要部の縦断正面図
【図8】第2実施形態の小根太装着部の縦断正面図
【図9】第3実施形態の床暖房装置の一部切欠き平面図
【図10】従来例の小根太装着部の縦断正面図
【図11】従来例の小根太装着部の縦断正面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、暖房対象空間Sにおける床スラブUの上部に、暖房用マットAと合板製のダミーパネルBとが設置され、暖房用マットAの上部には、矩形状の捨張合板Cが並設され、並設された捨張合板CとダミーパネルBとの上部には、床仕上げ材Dが敷設されている。
【0024】
すなわち、矩形状に形成された暖房用マットAが、暖房対象空間Sの床スラブUの中央箇所に設置され、そして、ダミーパネルBが、暖房用マットAの周辺部に位置し、かつ、その上面を捨張合板Cの上面と同じ高さにする状態で、暖房対象空間Sの床スラブUの周辺部に配置され、それら暖房用マットAとダミーパネルBとの全体を覆う状態で、床仕上げ材Dが設置されている。
【0025】
床仕上げ材Dは、一般には、クッションフロアと呼称される、柔軟性のあるシート状体であり、並設された捨張合板C及びダミーパネルBの上部に、接着剤にて接着する状態で敷設されている。
ちなみに、床仕上げ材Dと捨張合板CやダミーパネルBとの間には、接着剤層Zが形成されることになる(図5参照)。
【0026】
本実施形態では、シート状の床仕上げ材Dは、ロール状に巻き付けられたものを、適当長さに切断して敷設されている。
つまり、図1及び図2においては、長方形状の床仕上げ材Dが、四枚並設されている。
尚、床仕上げ材Dは、横幅が広すぎる場合には、適宜切断して、横幅を適当な横幅に調整することになる。
ちなみに、シート状の床仕上げ材Dとしては、ロール状に巻き付けたものに代えて、短冊状に形成されたものを用いてもよい。
【0027】
図2に示すように、本実施形態においては、床仕上げ材Dの上面には、フローリングの模様が印刷されている。ちなみに、床仕上げ材Dの上面に印刷する模様は、タイル模様等、種々の模様を印刷してもよい。
【0028】
図3及び図4に示すように、暖房用マットAは、矩形状の板状基材1に、加熱体としての、4本の合成樹脂製の熱媒通流管2を蛇行状に配設して構成されている。
板状基材1は、熱伝導率が低い発泡ポリスチレン等の発泡樹脂にて構成されるものであり、その上面側に、図5に示すように、熱媒通流管2が配備される凹溝3が形成されている。
【0029】
また、板状基材1に、複数本の小根太4が、互いに平行する姿勢で、かつ、等間隔(例えば303mm)に並べた状態で設けられている。
小根太4は、熱媒通流管2における直線状部分の隣接するもの同士の間に配設されることになる。
つまり、本実施形態においては、隣接する小根太4の間に、熱媒通流管2の直線状部分が4本並ぶように構成されている。
【0030】
本実施形態においては、板状基材1は、一対の基材部分1A、1Bに分割され、これら一対の基材部分1A、1Bのうちの一方の基材部分1Aに、熱媒ヘッダ5が配設されている。
熱媒ヘッダ5には、4本の熱媒通流管2の両端が接続され、また、例示はしないが、熱源機からの熱媒供給管及び熱媒戻し管が接続されることになる。
【0031】
一対の基材部分1A、1Bは、複数の折り畳み単位部分Tに分割され、そして、一対の基材部分1A、1Bにおける複数の折り畳み単位部分Tのうちの一端部(図3では左端)に位置するもの同士が、折り畳み自在に接続され、かつ、一対の基材部分1A、1Bにおる、その他の折り畳み畳み単位部分同士が、分離されている。
したがって、一対の基材部分1A、1Bを折り畳み単位部分Tにて折り畳むことと、折り畳み単位部分Tにて折り畳んだ状態の一対の基材部分1A、1Bを、さらに重ね合わせるように折り畳むことにより、板状基材1をコンパクトに折り畳むことができるように構成されている。
【0032】
ちなみに、一対の基材部分1A、1Bにおける複数の折り畳み単位部分Tのうちの一端部(図3では左端)に位置するもの同士の折り畳みは、谷折りで行われ、そして、一対の基材部分1A、1Bの折り畳み単位部分Tでの折り畳みが、山折りと谷折りを交互に行うアコーディオン式の形態で行われるように構成されている。
【0033】
図3に示すように、複数の小根太4には、熱媒通流管2を配設するための切欠き6が形成されている。
また、熱媒通流管2は、板状基材1を折り畳む箇所に相当する部分では、折り畳み線に対し、斜めに通過するように配設されている。
【0034】
図4及び図5に示すように、板状基材1の上面部には、アルミニウム製の均熱シート7が配設されている。
この均熱シート7は、板状基材1を山折りする箇所では切断され、板状基材1を谷折りする部分では、一連に連なっている状態で設けられており、板状基材1を谷折りする部分では、折り畳み単位部分Tを接続するヒンジの機能を発揮するようになっている。
尚、例示はしないが、板状基材1を山折りする箇所では、ヒンジ用の接続片が、板状基材1の裏面側に取り付けられている。
【0035】
図5に示すように、板状基材1は、小根太4をビス8にて暖房対象空間Sの床スラブUに止着することにより、暖房対象空間Sの床スラブUに止着されることになる。
つまり、暖房用マットAは、小根太4を床スラブUにビス8にて止着することにより、床スラブUに設置されるように構成されている。
【0036】
捨張合板Cは、長方形状の原板、例えば、長さが1.818mmで、横幅が909mmで、厚さが12mmの原板を、適当大きさに切断して使用されるものであり、4つの辺部のうちの少なくとも2つの辺部が、小根太4の上部に位置するように設置されている。
そして、捨張合板Cは、図5に示すように、小根太4に対して釘9にて止着されることにより、暖房用マットAに対して固定されるように構成されている。
ちなみに、暖房用マットAにおける小根太並び方向の端部側に設置する捨張合板Cは、4つの辺部のうちの少なくとも1つの辺部が、小根太4の上部に位置するように設置される場合もある。
【0037】
図2、図4及び図5に示すように、床仕上げ材Dの裏面部には、凹溝Eが並設されている。
そして、本実施形態においては、凹溝Eが、ロール状に巻き取られている長尺状の床仕上げ材Dの長手方向に沿って伸びる状態に形成されている。
【0038】
これらの凹溝Eは、暖房用マットAの小根太4の並び方向に沿って、例えば、75mmの設定間隔にて形成されており、そして、その深さが、例えば、1mmで、その横幅が、例えば、0.5mmに形成されている。また、その断面形状が矩形状に形成されている。
ちなみに、シート状の床仕上げ材Dの厚さは、例えば、3.5mmである。
尚、図2においては、床仕上げ材Dに表す模様の大きさ及び凹溝Eの形成間隔を、分かり易くするために、大きめに記載している。
【0039】
ところで、本実施形態においては、図2に示すように、長方形状の床仕上げ材Dが、その長手方向を暖房用マットAにおける小根太4の長手方向に向けた状態で敷設され、その床仕上げ材Dに形成される凹溝Eも、その長手方向を暖房用マットAにおける小根太4の長手方向に向けた状態で存在することになる。
そして、上述の如く、捨張合板Cは、4つの辺部のうちの少なくとも2つの辺部を小根太4の上部に位置させるもの、つまり、4つの辺部のうちの対向する2辺部を、小根太4の長手方向に沿う姿勢に位置させるものであるため、本実施形態においては、凹溝Eが、捨張合板Cの辺部に沿った方向に形成されている。
【0040】
このように、床仕上げ材Dの裏面部に、凹溝Eが並設されるため、図5に示す如く、捨張合板Cが、隣接する捨張合板同士の間に隙間Wが存在する状態に設置され、その後、捨張合板Cが、床スラブUから放出される水分を吸収して膨張することにより、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間Wが少なくなる状態となるように変化しても、床仕上げ材Dにおける隣接する捨張合板Cの間に位置する部分が、盛り上がるように変形することがない、あるいは、大きく盛り上がるように変形することがなくなることになる。
【0041】
すなわち、床仕上げ材Dの裏面部や表面部に凹溝Eが並設されていないと、図10に示すように、捨張合板Cが、隣接する捨張合板同士の間に隙間Wが存在する状態に設置され、その後、図11に示すように、捨張合板Cが、床スラブUから放出される水分を吸収して膨張することにより、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間Wが少なくなる状態となるように変化すると、その変化によって、床仕上げ材Dにおける隣接する捨張合板Cの間に位置する部分に対して、収縮させる力が作用して、床仕上げ材Dにおける隣接する捨張合板Cの間に位置する部分が、盛り上がるように変形することになり、その結果、床仕上げ部材Dに、盛り上がり部分Fが発生する虞がある。
【0042】
本実施形態では、床仕上げ材Dの裏面部に凹溝Eが並設されているため、床仕上げ材Dが伸縮し易いものとなり、盛り上がり部分Fの発生を抑制できることになる。
尚、図10及び図11においては、捨張合板Cを小根太4に止着する釘9の記載を省略している。
【0043】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態を説明するが、この第2実施形態は、床仕上げ材Dに並設する凹溝Eの別実施形態を示すものであり、その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、以下においては凹溝Eについて説明して、その他の部分についての説明を省略する。
【0044】
すなわち、この第2実施形態においては、図6~図8に示すように、凹溝Eが、床仕上げ材Dの表面部に並設されている。
この凹溝Eは、第1実施形態と同様に、暖房用マットAの小根太4の並び方向に沿って、例えば、75mmの設定間隔にて形成されている。
尚、図6においては、床仕上げ材Dに表す模様の大きさ及び凹溝Eの形成間隔を、分かり易くするために、大きめに記載している。
【0045】
この第2実施形態においては、凹溝Eは、その断面形状がV字状であり、且つ、その底部は、湾曲する形状となっている。そして、深さは、例えば、1mmであり、その上端の横幅は、例えば、1mmである。
尚、第1実施形態と同様に、捨張合板Cの厚さは、例えば、12mmであり、シート状の床仕上げ材Dの厚さは、例えば、3.5mmである。
【0046】
ちなみに、この第2実施形態においても、長方形状の床仕上げ材Dが、その長手方向を暖房用マットAにおける小根太4の長手方向に向けた状態で敷設され、その床仕上げ材Dに形成される凹溝Eも、その長手方向を暖房用マットAにおける小根太4の長手方向に向けた状態で存在することになる。
そして、捨張合板Cは、4つの辺部のうちの少なくとも2つの辺部を小根太4の上部に位置させるもの、つまり、4つに辺部のうちの対向する2辺部を、小根太4の長手方向に沿う姿勢に位置させるものであるため、本実施形態においては、凹溝Eが、捨張合板Cの辺部に沿った方向に形成されている。
【0047】
そして、本実施形態では、床仕上げ材Dの表面部に凹溝Eが並設されているため、床仕上げ材Dが伸縮し易いものとなり、捨張合板Cが、隣接する捨張合板同士の間に隙間Wが存在する状態に設置され、その後、捨張合板Cが、床スラブUから放出される水分を吸収して膨張することにより、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間が少なくなる状態となるように変化しても、床仕上げ材Dにおける隣接する捨張合板Cの間に位置する部分が、盛り上がるように変形することがない、あるいは、大きく盛り上がるように変形することがなくなることになる。
【0048】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態を説明するが、この第3実施形態は、床仕上げ材Dに並設する凹溝Eの別実施形態を示すものであり、その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、以下においては凹溝Eについて説明して、その他の部分についての説明は省略する。
【0049】
すなわち、この第3実施形態においては、第1実施形態と同様に、床仕上げ材Dの裏面部に、凹溝Eが並設されることになり、そして、図9に示すように、凹溝Eが、ロール状に巻き取られている長尺状の床仕上げ材Dの長手方向に対して、45度傾斜する姿勢で形成されている。
ちなみに、凹溝Eは、例えば、75mmの設定間隔にて形成されており、そして、その深さが、例えば、1mmで、その横幅が、例えば、0.5mmに形成されている。また、その断面形状が矩形状に形成されている。
ちなみに、シート状の床仕上げ材Dの厚さは、例えば、3.5mmである。
【0050】
そして、この第3実施形態においても、図9に示すように、長方形状の床仕上げ材Dが、その長手方向を暖房用マットAにおける小根太4の長手方向に向けた状態で敷設されるため、その床仕上げ材Dに形成される凹溝Eが、その長手方向を暖房用マットAにおける小根太4の長手方向に対して、45度傾斜する状態で存在することになる。
尚、図9においては、床仕上げ材Dに表す模様の大きさ及び凹溝Eの形成間隔を、分かり易くするために、大きめに記載している
【0051】
そして、捨張合板Cは、4つの辺部のうちの少なくとも2つの辺部を小根太4の上部に位置させるもの、つまり、4つに辺部のうちの対向する2辺部を、小根太4の長手方向に沿う姿勢に位置させるものであるため、本実施形態においては、凹溝Eが、捨張合板Cの辺部に対して傾斜する方向に形成されている。
【0052】
そして、この第3実施形態においても、床仕上げ材Dの裏面部に凹溝Eが並設されているため、床仕上げ材Dが伸縮し易いものとなり、捨張合板Cが、隣接する捨張合板同士の間に隙間が存在する状態に設置され、その後、捨張合板Cが、床スラブUから放出される水分を吸収して膨張することにより、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間が少なくなる状態となるように変化しても、床仕上げ材Dにおける隣接する捨張合板Cの間に位置する部分が、盛り上がるように変形することがない、あるいは、大きく盛り上がるように変形することがなくなることになる。
【0053】
しかも、この第3実施形態においては、凹溝Eが捨張合板Cの辺部に対して傾斜する方向に形成されているから、並設される凹溝Eの並ぶ方向は、捨張合板Cの隣接する辺部の夫々に対して交差する方向となる。
つまり、床仕上げ材Dは、捨張合板Cの隣接する辺部の夫々に直交する両方向に伸縮し易いものとなるため、矩形状の捨張合板Cが、隣接する辺部の夫々に直交する両方向に膨張しても、このような捨張合板Cの膨張に応じて、床仕上げ材Dが適切に伸縮し易いため、床仕上げ材Dにおける隣接する捨張合板Cの間に位置する部分が盛り上がるように変形することを的確に抑制し易いものとなるのである。
【0054】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(イ)床仕上げ材の裏面部又は表面部に、凹溝を並設するにあたり、その形成間隔、その深さ、横幅、その断面形状は、上記実施形態に記載のものに限定されるものではなく、床仕上げ材の材質、及び、厚さ等に応じて、適宜変更できるものである。
【0055】
(ロ)上記実施形態では、暖房用マットとして、熱媒流通管が配設されたものを例示したが、電熱線が配設される暖房用マットに対しても、本願発明は同様に実施できるものである。
また、上記実施形態では、小根太を備える暖房用マットを例示したが、小根太を備えない暖房用マットに対しても、本願発明は同様に実施できる。
【0056】
(ハ)上記実施形態では、暖房用マットを床スラブの上に、直接設置する場合を例示したが、例えば、緩衝部材を介在させて設置する等、中間部材を介在させる状態で設定してもよい。
【符号の説明】
【0057】
E 凹溝
A 暖房用マット
C 捨張合板
D 床仕上げ材
U 床スラブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、床スラブ上に暖房用マットが設置され、その暖房用マット上に、矩形状の捨張合板が並設され、その並設された捨張合板上に、床仕上げ材が敷設された床暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような床暖房装置は、一般家庭等に設置して暖房対象空間を暖房するのに使用されるものであり、家屋の床スラブ上に、暖房用マットを設置し、その暖房用マット上に、矩形状の捨張合板を並設し、その並設された捨張合板上に、床仕上げ材を敷設することになる。
つまり、家屋の床スラブ上に、暖房用マット、捨張合板、及び、床仕上げ材を順次設置して構成されることになる(例えば、特許文献1参照。)。
尚、この特許文献1では、暖房用マットと床スラブとの間に、緩衝体を設けるようにしているが、この緩衝体を設けない形態で実施することも多い。
【0003】
上記特許文献1においては、床仕上げ材として、木質化粧合板とその下部の緩衝材とから構成される床材が用いられているが、床仕上げ材としては、クッションフロア等の柔軟性のあるシート状体が用いられる場合がある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−13641号公報
【特許文献2】特開平8−128658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
捨張合板は、水分を吸収及び放出し易く、また、その水分の吸収及び放出により膨張及び収縮し易い傾向にある。このため、床スラブが水分を含んでいると、その床スラブから放出される水分を吸収して膨張することになり、また、暖房マットの加熱より水分を放出して収縮することになる。
このように捨張合板が膨張及び収縮すると、床仕上げ材として、柔軟性のあるシート状体を用いる場合においては、その床仕上げ材も伸長及び収縮するものとなるが、捨張合板が膨張した場合において、床仕上げ材のうちの、隣接する捨張合板の間に位置する部分が、盛り上がるように変形して、美観を損なう虞があり、その改善が望まれる。
【0006】
説明を加えると、捨張合板は、隣接するもの同士を密接させるように並設されるものであるが、設置誤差等のために、隣接するもの同士の間に小さな隙間Wが存在する状態に並設されることがある(図10参照)。
また、一般に、柔軟性のあるシート状体にて構成される床仕上げ材は、その裏面の全体が接着剤等により捨張合板に止着される状態で敷設されることになる。
そして、捨張合板が膨張すると、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間が少なくなる状態となるように変化することになるが、この変化に伴って、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が、盛り上がるように変形して、盛り上がり部分Fが発生する虞があった(図11参照)。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、床仕上げ材として、柔軟性のあるシート状体を用いる場合において、その床仕上げ材が盛り上がるように変形することを抑制して、美観を良好な状態に維持することが可能な床暖房装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の床暖房装置は、床スラブ上に暖房用マットが設置され、その暖房用マット上に、矩形状の捨張合板が並設され、その並設された捨張合板上に、床仕上げ材が敷設されたものであって、その第1特徴構成は、
前記床仕上げ材が、柔軟性のあるシート状体であり、
前記床仕上げ材の裏面部又は表面部に、凹溝が並設されている点を特徴とする。
【0009】
すなわち、裏面部又は表面部に凹溝が並設された床仕上げ材は、凹溝が並設されていない場合に較べて、伸縮し易いものとなる。
このため、隣接する捨張合板同士の間に隙間が存在する状態に設置された捨張合板が膨張することにより、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間が少なくなる状態に変化して、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分に対して、収縮させる力が作用しても、床仕上げ材は伸縮し易いものであるため、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が、適切に収縮することになり、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が、盛り上がるように変形することがない、あるいは、大きく盛り上がるように変形することがなくなることになる。
つまり、床仕上げ材のうちの、隣接する捨張合板の間に位置する部分が、盛り上がるように変形することが抑制されることになる。
【0010】
ちなみに、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が、盛り上がるように変形することが抑制されるのは、その隣接する捨張合板の間に位置する部分が収縮する作用に加えて、その部分に隣接する床仕上げ材部分が、収縮する作用にもよるものである。
【0011】
つまり、床仕上げ材における捨張合板に接続されている合板接続部分は、その下面が捨張合板に接続されてはいるものの、その上側部分は、弾性変形可能であるから、捨張合板が膨張することにより、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間が少なくなる状態に変化して、その変化に伴って、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分に対して、収縮させる力が作用する際には、その部分に隣接する床仕上げ材の合板接続部分も収縮するように弾性変形して、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分に対して作用する収縮力を、減少させる機能を奏するものである。
ちなみに、このように、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分に対して作用する収縮力を減少させる機能を奏するときには、凹溝が消滅するあるいは少なくなるように、床仕上げ材が変形することになる。
【0012】
要するに、本発明の第1特徴構成によれば、床仕上げ材として、柔軟性のあるシート状体を用いる場合において、その床仕上げ材が盛り上がるように変形することを抑制して、美観を良好な状態に維持することが可能な床暖房装置を提供するに至った。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記凹溝が、前記捨張合板の辺部に沿った方向に形成されている点を特徴とする。
【0014】
すなわち、床仕上げ材は、並設される凹溝が並ぶ方向に伸縮し易いものとなるが、凹溝が捨張合板の辺部に沿った方向に形成されているから、並設される凹溝の並ぶ方向は、捨張合板の辺部と直交する方向となる。
つまり、矩形状の捨張合板には、互いに平行な姿勢で対向する一対の辺部の組が、2組存在することになるが、並設される凹溝の並ぶ方向は、2組の一対の辺部のうちの一方の組における一対の辺部と直交する方向となる。
【0015】
そして、捨張合板が膨張することにより、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間が少なくなる状態に変化する状態とは、隣接する捨張合板の対向する辺部が接近するように変化する状態であるが、そのように隣接する捨張合板の対向する辺部が接近するように変化する方向に、伸縮し易い状態となるように床仕上げ材が設置されているため、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が盛り上がるように変形することを抑制し易いものとなる。
【0016】
ちなみに、捨張合板は、一般に長方形状に形成されるものであり、水分の吸収による膨張量はその長手方向に大きいものとなるから、床仕上げ材を、並設される凹溝の並び方向が捨張合板の長手方向となるように設置すれば、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が盛り上がるように変形することを適切に抑制し易いものとなる。
【0017】
要するに、本発明の第2特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が盛り上がるように変形することを適切に抑制し易いものとなる床暖房装置を提供するに至った。
【0018】
本発明の第3特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記凹溝が、前記捨張合板の辺部に対して傾斜する方向に形成されている点を特徴とする。
【0019】
すなわち、床仕上げ材は、並設される凹溝が並ぶ方向に伸縮し易いものとなるが、凹溝が捨張合板の辺部に対して傾斜する方向に形成されているから、並設される凹溝の並ぶ方向は、捨張合板の隣接する辺部の夫々に対して交差する方向となる。
つまり、床仕上げ材は、捨張合板の隣接する辺部の夫々に直交する両方向に伸縮し易いものとなる。
【0020】
そして、矩形状の捨張合板は、水分の吸収により、隣接する辺部の夫々に直交する両方向に膨張することになるが、このような捨張合板の膨張に応じて、床仕上げ材が適切に伸縮し易いため、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が盛り上がるように変形することを的確に抑制し易いものとなるのである。
【0021】
要するに、本発明の第3特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、床仕上げ材における隣接する捨張合板の間に位置する部分が盛り上がるように変形することを的確に抑制し易いものとなる床暖房装置を提供するに至った。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】床暖房装置の縦断正面図
【図2】床暖房装置の一部切欠き平面図
【図3】暖房用マットの平面図
【図4】床暖房装置の要部の縦断正面図
【図5】小根太装着部の縦断正面図
【図6】第2実施形態の床暖房装置の一部切欠き平面図
【図7】第2実施形態の床暖房装置の要部の縦断正面図
【図8】第2実施形態の小根太装着部の縦断正面図
【図9】第3実施形態の床暖房装置の一部切欠き平面図
【図10】従来例の小根太装着部の縦断正面図
【図11】従来例の小根太装着部の縦断正面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、暖房対象空間Sにおける床スラブUの上部に、暖房用マットAと合板製のダミーパネルBとが設置され、暖房用マットAの上部には、矩形状の捨張合板Cが並設され、並設された捨張合板CとダミーパネルBとの上部には、床仕上げ材Dが敷設されている。
【0024】
すなわち、矩形状に形成された暖房用マットAが、暖房対象空間Sの床スラブUの中央箇所に設置され、そして、ダミーパネルBが、暖房用マットAの周辺部に位置し、かつ、その上面を捨張合板Cの上面と同じ高さにする状態で、暖房対象空間Sの床スラブUの周辺部に配置され、それら暖房用マットAとダミーパネルBとの全体を覆う状態で、床仕上げ材Dが設置されている。
【0025】
床仕上げ材Dは、一般には、クッションフロアと呼称される、柔軟性のあるシート状体であり、並設された捨張合板C及びダミーパネルBの上部に、接着剤にて接着する状態で敷設されている。
ちなみに、床仕上げ材Dと捨張合板CやダミーパネルBとの間には、接着剤層Zが形成されることになる(図5参照)。
【0026】
本実施形態では、シート状の床仕上げ材Dは、ロール状に巻き付けられたものを、適当長さに切断して敷設されている。
つまり、図1及び図2においては、長方形状の床仕上げ材Dが、四枚並設されている。
尚、床仕上げ材Dは、横幅が広すぎる場合には、適宜切断して、横幅を適当な横幅に調整することになる。
ちなみに、シート状の床仕上げ材Dとしては、ロール状に巻き付けたものに代えて、短冊状に形成されたものを用いてもよい。
【0027】
図2に示すように、本実施形態においては、床仕上げ材Dの上面には、フローリングの模様が印刷されている。ちなみに、床仕上げ材Dの上面に印刷する模様は、タイル模様等、種々の模様を印刷してもよい。
【0028】
図3及び図4に示すように、暖房用マットAは、矩形状の板状基材1に、加熱体としての、4本の合成樹脂製の熱媒通流管2を蛇行状に配設して構成されている。
板状基材1は、熱伝導率が低い発泡ポリスチレン等の発泡樹脂にて構成されるものであり、その上面側に、図5に示すように、熱媒通流管2が配備される凹溝3が形成されている。
【0029】
また、板状基材1に、複数本の小根太4が、互いに平行する姿勢で、かつ、等間隔(例えば303mm)に並べた状態で設けられている。
小根太4は、熱媒通流管2における直線状部分の隣接するもの同士の間に配設されることになる。
つまり、本実施形態においては、隣接する小根太4の間に、熱媒通流管2の直線状部分が4本並ぶように構成されている。
【0030】
本実施形態においては、板状基材1は、一対の基材部分1A、1Bに分割され、これら一対の基材部分1A、1Bのうちの一方の基材部分1Aに、熱媒ヘッダ5が配設されている。
熱媒ヘッダ5には、4本の熱媒通流管2の両端が接続され、また、例示はしないが、熱源機からの熱媒供給管及び熱媒戻し管が接続されることになる。
【0031】
一対の基材部分1A、1Bは、複数の折り畳み単位部分Tに分割され、そして、一対の基材部分1A、1Bにおける複数の折り畳み単位部分Tのうちの一端部(図3では左端)に位置するもの同士が、折り畳み自在に接続され、かつ、一対の基材部分1A、1Bにおる、その他の折り畳み畳み単位部分同士が、分離されている。
したがって、一対の基材部分1A、1Bを折り畳み単位部分Tにて折り畳むことと、折り畳み単位部分Tにて折り畳んだ状態の一対の基材部分1A、1Bを、さらに重ね合わせるように折り畳むことにより、板状基材1をコンパクトに折り畳むことができるように構成されている。
【0032】
ちなみに、一対の基材部分1A、1Bにおける複数の折り畳み単位部分Tのうちの一端部(図3では左端)に位置するもの同士の折り畳みは、谷折りで行われ、そして、一対の基材部分1A、1Bの折り畳み単位部分Tでの折り畳みが、山折りと谷折りを交互に行うアコーディオン式の形態で行われるように構成されている。
【0033】
図3に示すように、複数の小根太4には、熱媒通流管2を配設するための切欠き6が形成されている。
また、熱媒通流管2は、板状基材1を折り畳む箇所に相当する部分では、折り畳み線に対し、斜めに通過するように配設されている。
【0034】
図4及び図5に示すように、板状基材1の上面部には、アルミニウム製の均熱シート7が配設されている。
この均熱シート7は、板状基材1を山折りする箇所では切断され、板状基材1を谷折りする部分では、一連に連なっている状態で設けられており、板状基材1を谷折りする部分では、折り畳み単位部分Tを接続するヒンジの機能を発揮するようになっている。
尚、例示はしないが、板状基材1を山折りする箇所では、ヒンジ用の接続片が、板状基材1の裏面側に取り付けられている。
【0035】
図5に示すように、板状基材1は、小根太4をビス8にて暖房対象空間Sの床スラブUに止着することにより、暖房対象空間Sの床スラブUに止着されることになる。
つまり、暖房用マットAは、小根太4を床スラブUにビス8にて止着することにより、床スラブUに設置されるように構成されている。
【0036】
捨張合板Cは、長方形状の原板、例えば、長さが1.818mmで、横幅が909mmで、厚さが12mmの原板を、適当大きさに切断して使用されるものであり、4つの辺部のうちの少なくとも2つの辺部が、小根太4の上部に位置するように設置されている。
そして、捨張合板Cは、図5に示すように、小根太4に対して釘9にて止着されることにより、暖房用マットAに対して固定されるように構成されている。
ちなみに、暖房用マットAにおける小根太並び方向の端部側に設置する捨張合板Cは、4つの辺部のうちの少なくとも1つの辺部が、小根太4の上部に位置するように設置される場合もある。
【0037】
図2、図4及び図5に示すように、床仕上げ材Dの裏面部には、凹溝Eが並設されている。
そして、本実施形態においては、凹溝Eが、ロール状に巻き取られている長尺状の床仕上げ材Dの長手方向に沿って伸びる状態に形成されている。
【0038】
これらの凹溝Eは、暖房用マットAの小根太4の並び方向に沿って、例えば、75mmの設定間隔にて形成されており、そして、その深さが、例えば、1mmで、その横幅が、例えば、0.5mmに形成されている。また、その断面形状が矩形状に形成されている。
ちなみに、シート状の床仕上げ材Dの厚さは、例えば、3.5mmである。
尚、図2においては、床仕上げ材Dに表す模様の大きさ及び凹溝Eの形成間隔を、分かり易くするために、大きめに記載している。
【0039】
ところで、本実施形態においては、図2に示すように、長方形状の床仕上げ材Dが、その長手方向を暖房用マットAにおける小根太4の長手方向に向けた状態で敷設され、その床仕上げ材Dに形成される凹溝Eも、その長手方向を暖房用マットAにおける小根太4の長手方向に向けた状態で存在することになる。
そして、上述の如く、捨張合板Cは、4つの辺部のうちの少なくとも2つの辺部を小根太4の上部に位置させるもの、つまり、4つの辺部のうちの対向する2辺部を、小根太4の長手方向に沿う姿勢に位置させるものであるため、本実施形態においては、凹溝Eが、捨張合板Cの辺部に沿った方向に形成されている。
【0040】
このように、床仕上げ材Dの裏面部に、凹溝Eが並設されるため、図5に示す如く、捨張合板Cが、隣接する捨張合板同士の間に隙間Wが存在する状態に設置され、その後、捨張合板Cが、床スラブUから放出される水分を吸収して膨張することにより、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間Wが少なくなる状態となるように変化しても、床仕上げ材Dにおける隣接する捨張合板Cの間に位置する部分が、盛り上がるように変形することがない、あるいは、大きく盛り上がるように変形することがなくなることになる。
【0041】
すなわち、床仕上げ材Dの裏面部や表面部に凹溝Eが並設されていないと、図10に示すように、捨張合板Cが、隣接する捨張合板同士の間に隙間Wが存在する状態に設置され、その後、図11に示すように、捨張合板Cが、床スラブUから放出される水分を吸収して膨張することにより、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間Wが少なくなる状態となるように変化すると、その変化によって、床仕上げ材Dにおける隣接する捨張合板Cの間に位置する部分に対して、収縮させる力が作用して、床仕上げ材Dにおける隣接する捨張合板Cの間に位置する部分が、盛り上がるように変形することになり、その結果、床仕上げ部材Dに、盛り上がり部分Fが発生する虞がある。
【0042】
本実施形態では、床仕上げ材Dの裏面部に凹溝Eが並設されているため、床仕上げ材Dが伸縮し易いものとなり、盛り上がり部分Fの発生を抑制できることになる。
尚、図10及び図11においては、捨張合板Cを小根太4に止着する釘9の記載を省略している。
【0043】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態を説明するが、この第2実施形態は、床仕上げ材Dに並設する凹溝Eの別実施形態を示すものであり、その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、以下においては凹溝Eについて説明して、その他の部分についての説明を省略する。
【0044】
すなわち、この第2実施形態においては、図6~図8に示すように、凹溝Eが、床仕上げ材Dの表面部に並設されている。
この凹溝Eは、第1実施形態と同様に、暖房用マットAの小根太4の並び方向に沿って、例えば、75mmの設定間隔にて形成されている。
尚、図6においては、床仕上げ材Dに表す模様の大きさ及び凹溝Eの形成間隔を、分かり易くするために、大きめに記載している。
【0045】
この第2実施形態においては、凹溝Eは、その断面形状がV字状であり、且つ、その底部は、湾曲する形状となっている。そして、深さは、例えば、1mmであり、その上端の横幅は、例えば、1mmである。
尚、第1実施形態と同様に、捨張合板Cの厚さは、例えば、12mmであり、シート状の床仕上げ材Dの厚さは、例えば、3.5mmである。
【0046】
ちなみに、この第2実施形態においても、長方形状の床仕上げ材Dが、その長手方向を暖房用マットAにおける小根太4の長手方向に向けた状態で敷設され、その床仕上げ材Dに形成される凹溝Eも、その長手方向を暖房用マットAにおける小根太4の長手方向に向けた状態で存在することになる。
そして、捨張合板Cは、4つの辺部のうちの少なくとも2つの辺部を小根太4の上部に位置させるもの、つまり、4つに辺部のうちの対向する2辺部を、小根太4の長手方向に沿う姿勢に位置させるものであるため、本実施形態においては、凹溝Eが、捨張合板Cの辺部に沿った方向に形成されている。
【0047】
そして、本実施形態では、床仕上げ材Dの表面部に凹溝Eが並設されているため、床仕上げ材Dが伸縮し易いものとなり、捨張合板Cが、隣接する捨張合板同士の間に隙間Wが存在する状態に設置され、その後、捨張合板Cが、床スラブUから放出される水分を吸収して膨張することにより、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間が少なくなる状態となるように変化しても、床仕上げ材Dにおける隣接する捨張合板Cの間に位置する部分が、盛り上がるように変形することがない、あるいは、大きく盛り上がるように変形することがなくなることになる。
【0048】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態を説明するが、この第3実施形態は、床仕上げ材Dに並設する凹溝Eの別実施形態を示すものであり、その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、以下においては凹溝Eについて説明して、その他の部分についての説明は省略する。
【0049】
すなわち、この第3実施形態においては、第1実施形態と同様に、床仕上げ材Dの裏面部に、凹溝Eが並設されることになり、そして、図9に示すように、凹溝Eが、ロール状に巻き取られている長尺状の床仕上げ材Dの長手方向に対して、45度傾斜する姿勢で形成されている。
ちなみに、凹溝Eは、例えば、75mmの設定間隔にて形成されており、そして、その深さが、例えば、1mmで、その横幅が、例えば、0.5mmに形成されている。また、その断面形状が矩形状に形成されている。
ちなみに、シート状の床仕上げ材Dの厚さは、例えば、3.5mmである。
【0050】
そして、この第3実施形態においても、図9に示すように、長方形状の床仕上げ材Dが、その長手方向を暖房用マットAにおける小根太4の長手方向に向けた状態で敷設されるため、その床仕上げ材Dに形成される凹溝Eが、その長手方向を暖房用マットAにおける小根太4の長手方向に対して、45度傾斜する状態で存在することになる。
尚、図9においては、床仕上げ材Dに表す模様の大きさ及び凹溝Eの形成間隔を、分かり易くするために、大きめに記載している
【0051】
そして、捨張合板Cは、4つの辺部のうちの少なくとも2つの辺部を小根太4の上部に位置させるもの、つまり、4つに辺部のうちの対向する2辺部を、小根太4の長手方向に沿う姿勢に位置させるものであるため、本実施形態においては、凹溝Eが、捨張合板Cの辺部に対して傾斜する方向に形成されている。
【0052】
そして、この第3実施形態においても、床仕上げ材Dの裏面部に凹溝Eが並設されているため、床仕上げ材Dが伸縮し易いものとなり、捨張合板Cが、隣接する捨張合板同士の間に隙間が存在する状態に設置され、その後、捨張合板Cが、床スラブUから放出される水分を吸収して膨張することにより、隣接する捨張合板の間に存在していた隙間が少なくなる状態となるように変化しても、床仕上げ材Dにおける隣接する捨張合板Cの間に位置する部分が、盛り上がるように変形することがない、あるいは、大きく盛り上がるように変形することがなくなることになる。
【0053】
しかも、この第3実施形態においては、凹溝Eが捨張合板Cの辺部に対して傾斜する方向に形成されているから、並設される凹溝Eの並ぶ方向は、捨張合板Cの隣接する辺部の夫々に対して交差する方向となる。
つまり、床仕上げ材Dは、捨張合板Cの隣接する辺部の夫々に直交する両方向に伸縮し易いものとなるため、矩形状の捨張合板Cが、隣接する辺部の夫々に直交する両方向に膨張しても、このような捨張合板Cの膨張に応じて、床仕上げ材Dが適切に伸縮し易いため、床仕上げ材Dにおける隣接する捨張合板Cの間に位置する部分が盛り上がるように変形することを的確に抑制し易いものとなるのである。
【0054】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(イ)床仕上げ材の裏面部又は表面部に、凹溝を並設するにあたり、その形成間隔、その深さ、横幅、その断面形状は、上記実施形態に記載のものに限定されるものではなく、床仕上げ材の材質、及び、厚さ等に応じて、適宜変更できるものである。
【0055】
(ロ)上記実施形態では、暖房用マットとして、熱媒流通管が配設されたものを例示したが、電熱線が配設される暖房用マットに対しても、本願発明は同様に実施できるものである。
また、上記実施形態では、小根太を備える暖房用マットを例示したが、小根太を備えない暖房用マットに対しても、本願発明は同様に実施できる。
【0056】
(ハ)上記実施形態では、暖房用マットを床スラブの上に、直接設置する場合を例示したが、例えば、緩衝部材を介在させて設置する等、中間部材を介在させる状態で設定してもよい。
【符号の説明】
【0057】
E 凹溝
A 暖房用マット
C 捨張合板
D 床仕上げ材
U 床スラブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブ上に暖房用マットが設置され、その暖房用マット上に、矩形状の捨張合板が並設され、その並設された捨張合板上に、床仕上げ材が敷設された床暖房装置であって、
前記床仕上げ材が、柔軟性のあるシート状体であり、
前記床仕上げ材の裏面部又は表面部に、凹溝が並設されている床暖房装置。
【請求項2】
前記凹溝が、前記捨張合板の辺部に沿った方向に形成されている請求項1記載の床暖房装置。
【請求項3】
前記凹溝が、前記捨張合板の辺部に対して傾斜する方向に形成されている請求項1記載の床暖房装置。
【請求項1】
床スラブ上に暖房用マットが設置され、その暖房用マット上に、矩形状の捨張合板が並設され、その並設された捨張合板上に、床仕上げ材が敷設された床暖房装置であって、
前記床仕上げ材が、柔軟性のあるシート状体であり、
前記床仕上げ材の裏面部又は表面部に、凹溝が並設されている床暖房装置。
【請求項2】
前記凹溝が、前記捨張合板の辺部に沿った方向に形成されている請求項1記載の床暖房装置。
【請求項3】
前記凹溝が、前記捨張合板の辺部に対して傾斜する方向に形成されている請求項1記載の床暖房装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−226126(P2011−226126A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96058(P2010−96058)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
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