説明

強化ガラス板の接合方法

【課題】 穴をあけた強化ガラス板と穴をあけた添接板、または添接板を介して強化ガラス板同士を単純な接合部材を介して高力ボルトで締め付けることによる摩擦接合により強化ガラス板を接合することで、例えば、リブガラススクリーンのリブガラスを作製した際、リブガラスとして採用するに充分な強さの強化ガラスの接合方法を提供する。
【解決手段】 強化ガラス板の接合において、その接合部が強化ガラス板を両側から添接板で摩擦部材を介して挟んでなり、強化ガラス板と添接板とに高力ボルト挿入用の穴をあけ貫通させたボルトおよびナットにて締め付けることにより生じる摩擦力で添接板を介して強化ガラス板同士を接合する、または強化ガラスと添接板を接合する摩擦接合であることを特徴とする強化ガラス板の接合方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ガラス板の接合方法に関し、特に、ビル用窓等をリブガラススクリーンとした際、ガラススクリーンを構造的に支持するリブガラスの接合方法に用いる。
【背景技術】
【0002】
複数のガラス板を組み合わせ、大型のガラススクリーンを施工すると、建物の外部空間を視覚的に内部へ連続させる効果があり、開放的な雰囲気を演出する。
【0003】
ガラススクリーンの施工方法にガラス・スタビライザー工法等が挙げられ、通常、高さ、4m〜10mの大板ガラスを用い、大型のガラススクリーンが施工されている。
【0004】
ガラス・スタビライザー工法は、目障りな金属方立の代りにガラス方立て(以下、リブガラスと呼称する)を用いて、正面ガラス(以下、面板ガラスと呼称する)に加わる風荷重を支持する工法で、通常、面板ガラスとリブガラスとの接合部に、シリコーン系シーリング材を充填しリブガラススクリーンとして一体化させており、広々とした透視性のある開口部が得られ、連続したガラススクリーンを構成する。このようなリブガラススクリーンの構造が特許文献1、特許文献2、特許文献3等で開示されている。リブガラススクリーンを施工する際、リブガラスに強化ガラスを使うと、製造後、加熱風冷等の強化処理を何ら行っていないガラス板、言い換えれば、生板ガラスによるリブガラスより、リブガラスの板厚をより薄くし、しかも奥行き寸法の少ないものを使用してもガラススクリーンの強度を保てるが、高さ4〜10mのリブガラススクリーンに対応する長尺状の強化ガラス板からなるリブガラスを製造することは甚だ難しい。そこで、強化ガラス板を子割りにして縦に繋ぎ合わせて接合させ、それを長尺状にしてリブガラスとして用いれば、生板ガラスをリブガラスに用いるより、板厚を薄くし、しかも奥行き寸法が小さくなる。
【0005】
リブガラスを縦に繋ぐための方法として、橋やビル等の鋼構造物の接合方法として用いられている高力ボルト摩擦接合が挙げられる。
【0006】
摩擦接合は添接板を介してボルトおよびナットにて締め付けることにより、添接板と母材の間に圧縮力を導入し、その間の摩擦抵抗力により力を伝達する機能を有する。この摩擦接合の研究はアメリカが先行し、日本においては1953年頃からボルトの研究から着手され、JIS規格が1964年に制定された。特に、頭が6角形の高力ボルトによる摩擦接合、言い換えれば、高力ボルト摩擦接合については、日本道路協会より「摩擦接合設計指針」が1966年に制定され、1973年に道路橋示方書(S48)に初めて登場し、以後追加改正等を経て現在に至っている。このような高力ボルト摩擦接合の先行技術として特許文献4、特許文献5、特許文献6等が開示されている。詳しくは、特許文献4にて高力ボルトによる摩擦接合部構造が開示され、特許文献5にて高力ボルト摩擦接合構造が開示され、特許文献6にて建物骨組の摩擦ボルト接合構造が開示されている。
【0007】
しかしながら、高力ボルト摩擦接合をガラス板の接合に使用すると、例えば、リブガラススクリーンのリブガラスの接合等に使用すると、接合時にガラスが割れる心配があり高力ボルト摩擦接合は応用された例はなく、例えば、リブガラスの接合においては、特許文献7、特許文献8、特許文献9等に記載のように金属とガラスが直接接触しないよう金属の接合部材とガラスの間には接着シートまたは接着材が介在しており、また、締め付けるボルトやナットも特殊な形状をしていた。
【特許文献1】特開平10−61070号公報
【特許文献2】特開2003−328476号公報
【特許文献3】特開2003−328477号公報
【特許文献4】特開平6−330566号公報
【特許文献5】特開平6−272323号公報
【特許文献6】特開平5−222777号公報
【特許文献7】特開2000−87924号公報
【特許文献8】特開2003−327453号公報
【特許文献9】特開2004−340178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
穴を開けたガラス板を、穴をあけた金属板等を接合治具とし、ボルトおよびナットできつく締め付けるとガラスが破損する。例え、ガラス板が割れなくても接続したガラス板同士を引っ張るとガラス板と金属板等の接合治具が滑り、接合し得ないという意識があり、ボルトおよびナットによる接着材を用いない摩擦接合はガラス板に対して検討されることもなく、ガラススクリーン等の大板ガラスにおける建造物では実用化されるに至っていない。
【0009】
本発明は、穴をあけた強化ガラス板同士を単純な接合部材を介してボルトで締め付けることによる摩擦接合により強化ガラス板を接合することで、例えば、リブガラススクリーンのリブガラスを作製した際、リブガラスとして採用するに充分な強さの強化ガラスの接合方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の強化ガラス板の接合方法において、穴をあけた添接板を接合部材とし穴をあけた強化ガラス板同士をボルトおよびナットで締め付け接合する際に、添接板と強化ガラス板と単純な接合部材である座金を入れ、該座金を介してボルトおよびナットで締め付けることにより強化ガラス板を接合するボルト摩擦接合を使用することで、締め付けた際のボルトの軸方向における締め付け力である軸力を各ボルト単位で調整することが可能となった。即ち、単純な接合部材である座金を使用しない場合と異なり、ボルト摩擦接合を利用することによって、添接板と強化ガラス板の間に座金を挟むことで、各ボルトの締め付け力である軸力を調整可能となり、締め付けが偏り、強化ガラス板が破損する虞が少なくなった。また、強化ガラス板と座金の狭い接触面で軸力が伝わることにより、接合した強化ガラス板同士が滑ってずれる虞が少なくなり、接着材を用いる必要はない
更に、接合する強化ガラスの板厚、強化ガラス板および接合部材である添接板の穴の数、座金の材料等を選定することによって、例えばリブガラススクリーンのリブガラスを作製した際、リブガラスとして採用するに充分な強さの強化ガラス板の接合方法が得られた。
【0011】
即ち、本発明は、強化ガラス板の接合方法において、その接合部が強化ガラス板を両側から添接板で摩擦部材を介して挟んでなり、強化ガラス板と添接板とにボルト挿入用の穴をあけ貫通させたボルトおよびナットにて締め付けることにより強化ガラス板と摩擦部材とに生じる摩擦力で添接板を介して強化ガラス板同士を接合する摩擦接合であることを特徴とする強化ガラス板の接合方法である。
【0012】
強化ガラス板と添接板とを接合することで、強化ガラス同士のみならず他の部材、例えば金属部材等とも接合することが可能となる。リブガラススクリーンにおいては、例えば、天井、梁、方立て等と接合する。
【0013】
更に、本発明は、接合部が強化ガラス板を両側から添接板で摩擦部材を介して挟んでなり、強化ガラス板と添接板とにボルト挿入用の穴をあけ貫通させたボルトおよびナットにて締め付けることにより強化ガラス板と摩擦部材とに生じる摩擦力で強化ガラス板と添接板を接合することを特徴とする強化ガラス板の接合方法である。
【0014】
更に、本発明は、ボルトおよびナットが、JIS B1186−1979に準拠した高力6角ボルトおよび高力6角ナットであることを特徴とする上記の強化ガラス板の接合方法である。
【0015】
更に、本発明は、前記強化ガラス板が板厚、9.0mm以上、19.0mm以下の単板強化ガラスであり、前記ボルトで締め付けた際の軸力が60kN以上、300kN以下であること特徴とする上記の強化ガラス板の接合方法である。
【0016】
本発明において、強化ガラス板とは強化ガラス単板のみならず、強化ガラス単板からなる合わせガラス構造のものも指す。
【0017】
更に、本発明は、前記強化ガラス板が強化ガラスを用いた合わせガラス構造であることを特徴とする上記の強化ガラス板の接合方法である。
【0018】
更に、本発明は、接合する強化ガラス板に少なくとも2以上のボルト挿入用の穴加工をし、前記添接板に4ヶ所以上の穴加工してある添接板を用いたことを特徴とする上記の強化ガラス板の接合方法。
【0019】
更に、本発明は、前記添接板と強化ガラス板に介在させる摩擦部材が、ボルトに挿通させた接触座金であることを特徴とする上記の強化ガラス板の接合方法である。
【0020】
上記、強化ガラスの接合方法により接合された強化ガラスはリブガラススクリーンにおける長尺上のリブガラスとなる。
【0021】
更に、本発明は、上記の強化ガラスの接合方法により接合された強化ガラスからなるリブガラスを用いたことを特徴とするリブガラススクリーンである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、穴をあけた強化ガラス同士を単純な接合部材を介して、ボルトで締め付けることにより強化ガラス同士、または強化ガラスと他の部材とを接合する強化ガラス板の接合方法であり、本発明の強化ガラス板の接合方法を用いて、強化ガラスを繋ぎ合わせることで、接着材を用いることなくリブガラススクリーンのリブガラスとして用いるに十分な強さのリブガラスが作製された。
【0023】
穴をあけた添接板を接合部材とし穴をあけた強化ガラス板同士をボルトで締め付け接合する際に、添接板と強化ガラス板と単純な接合部材である座金を入れ、座金を介してボルトで締め付けるボルト摩擦接合を使用することで、締め付けた際のボルトの軸方向における締め付け力である軸力が各ボルト単位で調整されることになり、強化ガラスが軸力の偏りで破損する虞が少なくなり、座金と強化ガラス板の小さな接触面積で軸力が伝わることによる接触部位の摩擦で強化ガラス板と添接板がずれて滑る虞が少なった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1が、本発明の強化ガラス板の接合方法によるリブガラスの一例の説明図である。
【0025】
図1の(A)が、リブガラスを正面から見た図、(B)が側面から見た図である。
【0026】
図1の(B)に示すように、接合部は強化ガラス板Gを両側から添接板1で摩擦部材2を介して挟んでなり、強化ガラス板Gと添接板1とにボルト3挿入用の穴をあけ、ボルト3を貫通させて摩擦部材2を介して、ナット4にて締め付けることにより生じる強化ガラス板Gと摩擦部材2とに生じる摩擦力で強化ガラス板G同士を接合する摩擦接合のみにより接合される。摩擦部材2を添接板1と強化ガラス板Gの間に挟んだ摩擦接合を使用することによって、個々のボルト3の締め付け力、言い換えれば、軸力が調整が容易となり、摩擦部材2と強化ガラス板Gが接触する面での摩擦力により、安易にガラス板が滑りずれることがない。それに比較して、摩擦部材2を使用しないと、添接板1の撓み等で、個々のボルト3で軸力が変化し、添接板1と強化ガラス板Gの接触面積が広いために、強化ガラス板Gが滑ってずれ易くなる。
【0027】
本発明の強化ガラス板の接合方法において使用する単板のガラス板のみからなる強化ガラス板の前記強化ガラス板Gの厚みは、9.0mm以上、19.0mm以下の範囲が好適である。9.0mmより薄いと、リブガラスとして使用するに十分な強度がなく破損し易い。19.0mmより厚い強化ガラス板Gは用途が限られ、量販されておらず実用的でない。
【0028】
19.0mmより厚い強化ガラス板に、本発明の強化ガラス板の接合方法を使用する場合には、厚み、19.0mm以下の単板強化ガラスをポリビニルブチラール樹脂等の中間膜を用いて合わせガラス構造とした強化ガラス板を用いる。
【0029】
本発明において、強化ガラス板とは強化ガラス単板のみならず、強化ガラス単板からなる合わせガラス構造のものも指す。
【0030】
また、ボルト3を締め付ける際の好適な軸力、言い換えれば、ボルト3による軸方向の締め付け力、言い換えれば、軸力は60kN以上、250kN以下である。軸力が60kNより弱いと、接合部の強化ガラス板Gが滑ってずれる虞がある。250kNを超えると、圧縮応力のため強化ガラス板Gといえ破損することがある。また、本発明の強化ガラス板の接合方法に好適に用いられるボルト呼び径、M16、M22の市販高力ボルト3のボルトメーカー各社の推奨軸力は60kN以上、300kNの範囲内にある。
【0031】
高力ボルト3とは、High Strength Boltsの訳で通常、頭が六角形の高力6角ボルト3のことを指すが、市販されている高力ボルト3には、頭が6角形の高力6角ボルト3の他に、一定の締め付けトルクでピンテールが破損する高力NKボルトがある。本発明の強化ガラスの接合方法においては、ボルト3の締め付け力、即ち、軸力の調整がし易く、本発明の強化ガラスの接合方法を用いたリブガラススクリーンを解体する際、交換する際等に外すことが容易な高力6角ボルトを使用することが好ましい。高力6角ボルトには、耐力(単位、N/mm)、引っ張り強さ(単位、N/mm)、伸び(単位、%)、絞り(単位、%)等のボルトの機械的性質によりF8T、F10T、F12T、F13T等の種類に分けられ、材料には低炭素ボロン鋼、ステンレス鋼等が用いられる。本発明の強化ガラス板の接合方法には、JIS B1186−1979(摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット)に準拠する機械的性質に優れた高力6角ボルト3を用いることが好ましい。例えば、軟鋼製のボルトおよびナットを用いると、締め付けトルクを維持できず緩みが生じる、また締め付けによる応力集中の可能性がある。高力6角ボルト3は、例えば、光精工株式会社、中山三星建材株式会社等より市販されている。
【0032】
接合した強化ガラス板Gを滑ってずれることなきよう安定させるためには、接合する強化ガラス板Gの双方に2箇所以上のボルト3挿入用の穴をあけ、添接板1に4箇所以上のボルト3挿入用の穴をあけ、該複数の穴にボルト3を貫通させて、図1の(B)に示すように、強化ガラス板Gを摩擦部材2としての例えば座金等を介して添接板1で挟み、それらにボルト3とナット4にて締め付けることによって接合する。穴の数が多くなる程、個々のボルト3の締め付けトルクを弱くしたとしても、強化ガラス板Gが安定し良好な接合状態となるが、穴加工が大変となる。
【0033】
本発明の強化ガラス板の接合方法を、実際に、リブガラスに使用する際は、ボルト呼び径、M16の高力6角ボルト3、ボルト呼び径、M20、またはボルト呼び径、M22の高力6角ボルト3を使用することが好ましい。JIS B 1186−1979(摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット)において、このサイズ付近では、高力6角ボルト3の径+2mmが推奨されるので、強化ガラス板Gにあける穴の径は、ボルト呼び径、M16の高力6角ボルト3を用いた場合、20mm、ボルト呼び径、M20の高力6角ボルト3を用いた場合、24mm、ボルト呼び径、M22の高力6角ボルト3を用いた場合、26mmとなる。例えば、ボルト呼び径、M16の高力6角ボルト3の場合、JIS B 1186−1979にて推奨される軸力は110kN〜133kNの範囲である。径、11.8mm未満の高力6角ボルトは締め付けトルクの推奨値が低く、リブガラスの接合に対して強固な接合を得ることができない。径、24.5mmより大きい高力6角ボルトは見栄えが悪くなるとともに締め付けトルクの推奨値が大き過ぎる。よって、本発明の強化ガラス板の接合方法に使用するに好適なボルト3の径は、11.8mm以上、24.5mm以下である。
【0034】
本発明の強化ガラス板の接合方法には、ボルト呼び径M12、ボルト呼び径M24の高力6角ボルト3も使用されるが、ボルト呼び径M16、またはボルト呼び径M20の高力6角ボルト3が特に好適に使用される。尚、JIS B 1186−1979(摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット)において、ボルト呼び径、M12とは、径12.0mmを基準として+0.7mm、−0.2mm、即ち、径11.8mm〜12.7mmの範囲、M16とは径16.0mmを基準として+0.7mm、−0.2mm、即ち、径15.8mm〜16.7mmの範囲、M20とは径20.0mmを基準として+0.8mm、−0.4mm、即ち、径19.6〜20.8mmの範囲、M22とは、径22.0mmを基準として+0.8mm、−0.4mm、即ち、径21.6mm〜22.8mmの範囲、M24とは、径24.0mmを基準として+0.8mm、−0.4mm、即ち、径23.6〜24.8mmと明記されている。
【0035】
また、強化ガラス板Gと添接板1の間に介在させる摩擦部材2としては、機械構造用炭素鋼、ステンレス鋼製等の硬く機械的強度に優れた材料からなる座金を使用することが好ましい。高力6角ボルト用に市販されている、座金を用いると経時変化により高力ボルト3の締め付けにおける軸力が減少する等の不具合がなく、これら座金を摩擦部材2として用いることが好ましい。尚、JIS G 4051(1979)に準拠した機械構造用炭素鋼は、高力ボルト用ナット4および座金の材料として用いられ、本発明の強化ガラス板の接合方法における摩擦部材2である座金に好適な材料である。また、JIS B 1186−1979(摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット)に準拠した平座金は、本発明の強化ガラス板の接合方法における摩擦部材2として使用するに好ましい。
【0036】
一方、焼入れをしていない軟鋼製の座金等の硬さの足りない座金をリブガラス等の接合に摩擦部材2として使用すると、経時変化等によりボルト3の締め付けにおける軸力が減少し、接合部の強度が減少する。座金は中心の穴にボルト3を貫通させて使用する。
【0037】
本発明の強化ガラス板の接合方法において、摩擦部材2として使用する座金の厚みは、3.5mm以上、10.0mm以下であることが好ましい。3.5mmより薄いと座金が変形し、ボルト3を締め付けた際の軸力が強化ガラス板Gと座金の接触部に均等に加わらず、強化ガラス板Gに穴部よりクラックが入る懸念がある。10.0mmより厚いと、ボルト3の締め付けが緩む等の不具合が発生しやすく、10.0mmより厚くする必要もない。より好ましい接触座金の厚みは、3.5mm以上である。
【0038】
尚、本発明に使用する強化ガラス板Gとは、フロート法等で製造されたガラス板を加熱後、急冷し表面に圧縮応力を与え割れ難くした風冷強化板や、倍強度ガラスであり、例えば、セントラル硝子株式会社製、商品名、テンパレックス、HSレックス等が市販されている。
【実施例1】
【0039】
(万能材料試験機での引っ張り試験による摩擦力の測定)
高力6角ボルトとして、M16、M20、M22を用いて、摩擦部材である座金を介し強化ガラスと添接板を摩擦接合したときの摩擦接合1ヶ所当たりに生じる摩擦力を測定した。
【0040】
図3は、強化ガラス板Gと添接板1とを摩擦部材2を介し摩擦接合したときの側面図である。
【0041】
図3に示すように、径20.0mmの穴を開けた厚み11.6mm、大きさ350mm×350mmの強化ガラス板Gに、高力ボルト3として、JIS B1186−1979に準拠した呼び径がM16のボルト、ナットを用い、ボルト3、ナット4と添接板1との間に、M16の摩擦接合用平座金、ハイテンPW16(大きさ、厚み4.2mm、外径31.6mm、内径17.4mm)を、添接板1と強化ガラス板Gとの間に、摩擦部材2として呼び径がM24の摩擦接合用平座金ハイテンPW24(大きさ、厚み5.5mm、外径47.6mm、内径25.2mm)を用いて、強化ガラス板Gに開けた穴にM16高力ボルト3を貫通させて、トルクレンチを用いて300N−mのトルクで、軸力、118kNに高力6角ボルト用ナット4で締め付け固定した試験片を、万能材料試験機で引っ張り試験を行い、強化ガラス板Gと添接板1の間の摩擦部材2である座金が滑り始める引っ張り荷重、言い換えれば、摩擦部材2である座金と強化ガラス板G、および、添接板1との間に生じる摩擦力を測定した。
【0042】
図4が万能材料試験機にて引っ張り試験をした際の平面図である。
【0043】
図5が万能材料試験機にて引っ張り試験をした際の側面図であり、(A)が、高力6角ボルト引っ張り金具の側面図、(B)がガラス引っ張り金具の側面図である。
【0044】
万能材料試験機試験は株式会社オリエンテック製 型式、UCT−10Tを用い、図5の(A)、(B)に示すように、高力6角ボルト3をボルト引っ張り金具9にあけた穴に通した後、軸力、118kNにナット4を締め付けて接合し、ガラス引っ張り金具10を図示しない万能材料試験機ロードセルに連結し、図5の(B)に示すように、ガラス引っ張り金具10に強化ガラス板Gを挟みこんで固定し、ボルト引っ張り金具9を図示しない万能材料試験機固定金具に連結した。万能材料試験機ロードセルにより矢印方向に引っ張り、摩擦部材2である座金が滑り始めた際の荷重をつまり摩擦力を測定した。摩擦力の測定は5回行った。測定結果は、23.6kN、24.6kN、23.2kN、24,7kNおよび23.7kNであり、平均値は24.0kNであった。
【0045】
このように、呼び径がM16の高力ボルト3、ナット4を用いた場合、平均で24.0kNの摩擦力が発生していた。即ち、M16の高力ボルト3、ナット4、1ヶ所当たり許容できるせん断力は、平均で24.0kNである。このように軸力118kNでM16の高力ボルト3、ナット4を締め付けることでせん断力24.0kNが得られた。
【0046】
例えば、図1に示すようなリブガラスに使用する際に、実用に対して充分な接合強度となるように、添接板1と強化ガラス板Gとを摩擦部材2を介して摩擦接合する際の、穴あけ数、使用するボルト数、ナット数が決まるが、図1では2枚の強化ガラス板の接合に対し4ヶ所のM16の高力ボルト3とナット4を用いており、それぞれのボルトナットを軸力118kNで締め付けると、1ヶ所あたりせん断力24.0kNが得られるので、合計で96.0kNのせん断強度を有する、強化ガラス板G同士を接合したリブガラスが得られた。言い換えると、4ヶ所のM16の高力ボルト3摩擦接合部に96.0kNの力が加わっても、強化ガラス板Gと高力ボルト3は摩擦力で保持されているため、強化ガラス板Gと高力ボルト3とが接触しないので、強化ガラス板Gが破損することはない。つまり、強化ガラス板Gの厚み方向から摩擦接合部に96.0kNの力が加わっても壊れない強化ガラス板G同士を摩擦接合で接合したリブガラスを得た。
【実施例2】
【0047】
実施例1と同じく、強化ガラス板Gに開けた穴径を、径24.0mmとし、高力ボルト3として、JIS B1186−1979に準拠した呼び径がM20のボルト3、ナット4を用い、ボルト3、ナット4と添接板1との間に、摩擦部材2としてM20の摩擦接合用平座金、ハイテンPW20(大きさ、厚み4.3mm、外径39.0mm、内径21.3mm)を、添接板1と強化ガラス板Gとの間に、摩擦部材2として呼び径がM27の摩擦接合用平座金ハイテンPW27(大きさ、厚み6.1mm、外径51.5mm、内径28.8mm)を用いて、強化ガラス板Gに開けた穴にM20高力ボルト3を貫通させて、トルクレンチを用いて470N−mのトルクで、軸力、182kNに高力6角ボルト用ナット4で締め付け固定した試験片を、万能材料試験機で引っ張り試験を行い、摩擦部材2である座金と強化ガラス板G、および、添接板1との間に生じる摩擦力を実施例1と同様に測定した。摩擦力の測定は5回行った。測定結果は、29.4kN、32.9kN、29.4kN、31.9kNおよび31.7kNであり、平均値は31.1kNであった。
【0048】
このように、呼び径がM20のボルト3、ナット4を用いた場合、平均で31.1kNの摩擦力が発生していた。即ち、M20の高力ボルト1ヶ所当たり許容できるせん断力は、平均で31.1kNであり、軸力、182kNでぼるとナットを締め付けることで、せん断力、31.1kNが得られた。
【0049】
例えば、図1に示すようなリブガラスに使用する際に、実用に対して充分な接合強度となるように、添接板1と強化ガラス板Gとを摩擦部材2を介して摩擦接合する際の、穴あけ数、使用するボルト数、ナット数が決まるが、図1では2枚の強化ガラス板Gの接合に対し4ヶ所のM20の高力ボルト3とナット4を用いており、それぞれのボルトナットを軸力182kNで締め付けると、1ヶ所あたりせん断力31.1kNが得られるので、合計で124.4kNのせん断強度を有する、強化ガラス板G同士を接合したリブガラスが得られた。言い換えると、4ヶ所のM20の高力ボルト3摩擦接合部に124.4kNの力が加わっても、強化ガラス板Gと高力ボルト3は摩擦力で保持されているため、強化ガラス板Gと高力ボルト#とが接触しないので、強化ガラス板Gが破損することはない。つまり、強化ガラス板Gの厚み方向から摩擦接合部に124.4kNの力が加わっても壊れない強化ガラス板同士を摩擦接合で接合したリブガラスを得た。
【実施例3】
【0050】
実施例1と同じく、強化ガラス板Gに開けた穴径を、径26.0mmとし、高力ボルト3として、JIS B1186−1979に準拠した呼び径がM22のボルト3、ナット4を用い、ボルト3、ナット4と添接板1との間に、摩擦部材2としてM22の摩擦接合用平座金、ハイテンPW22(大きさ、厚み5.5mm、外径43.8mm、内径24.2mm)を、添接板1と強化ガラス板Gとの間に、摩擦部材2として呼び径がM30の摩擦接合用平座金ハイテンPW30(大きさ、厚み5.8mm、外径57.4mm、内径33.2mm)を用いて、強化ガラス板Gに開けた穴にM22高力ボルト3を貫通させて、トルクレンチを用いて650N−mのトルクで、軸力が226kNになるように高力6角ボルト用ナット4で締め付け固定した試験片を、万能材料試験機で引っ張り試験を行い、摩擦部材2である座金と強化ガラス板G、および、添接板1との間に生じる摩擦力を測定した。摩擦力の測定は5回行った。測定結果は、43.8kN、43.2kN、46.4kN、42.6kNおよび42.3kNであり、平均値は43.7kNであった。
【0051】
このように、高力ボルト3の呼び径がM22のボルトを用いた場合、平均で43.3kNの摩擦力が発生していた。即ち、M22の高力ボルト1ヶ所当たり許容できるせん断力は、平均で43.3kNである。このように、M22のボルト、ナットを軸力、226kNで締め付けることで、せん断力、43.3kNが得られた。
【0052】
例えば、図1に示すようなリブガラスに使用する際に、実用に対して充分な接合強度となるように、添接板1と強化ガラス板Gとを摩擦部材2を介して摩擦接合する際の、穴あけ数、使用するボルト数、ナット数が決まるが、図1では2枚の強化ガラス板の接合に対し4ヶ所のM22の高力ボルト3とナット4を用いており、それぞれのボルトナットを軸力226kNで締め付けると、1ヶ所あたりせん断力43.3kNが得られるので、合計で173.2kNのせん断強度を有する、強化ガラス板G同士を接合したリブガラスが得られた。言い換えると、4ヶ所のM22の高力ボルト摩擦接合部に173.2kNの力が加わっても、強化ガラス板Gと高力ボルト3は摩擦力で保持されているため、強化ガラス板Gと高力ボルト3とが接触しないので、強化ガラス板Gが破損することはない。つまり、強化ガラス板Gの厚み方向から摩擦接合部に173.2kNの力が加わっても壊れない強化ガラス板G同士を摩擦接合で接合したリブガラスを得た。
【実施例4】
【0053】
図6は、本発明の強化ガラス板の接合方法により添接板と強化ガラスとを接合したリブガラスの一例の説明図であり、(A)がリブガラスを正面から見た図、(B)が側面から見た図である。
【0054】
図6に示すように、強化ガラス板Gと添接板1を摩擦部材であるワッシャー2を介してJIS B1186−1979に準拠した高力ボルト3とナット4によって摩擦接合したリブガラスを作製した。強化ガラス板Gは、厚みが11.6mm、大きさは500mm×2000mmで、径26.0mmの穴を4ヶ所開けたものを用いた。高力ボルト3、ナット4としては、呼び径がM22のボルト、ナットを用い、ボルト3、ナット4と添接板1との間に、摩擦部材2としてM22の摩擦接合用平座金、ハイテンPW22(大きさ、厚み5.5mm、外径43.8mm、内径24.2mm)を、添接板1と強化ガラス板Gとの間に、摩擦部材2として呼び径がM30の摩擦接合用平座金ハイテンPW30(大きさ、厚み5.8mm、外径57.4mm、内径33.2mm)を用いて、強化ガラス板Gに開けた穴にM22高力ボルト3を貫通させて、トルクレンチを用いて650N−mのトルクで、軸力が226kNになるように高力6角ボルト用ナット4で締め付け、強化ガラスGと添接板1にあけた4ヶ所の穴を摩擦部材2である座金を介して摩擦接合した。
【0055】
次に、こうして得られたリブガラスを、強化ガラス板Gの厚み方向の面下部を、図6に示すように、図示しない油圧式ジャッキにて10kNの力に及ぶまで矢印方向に加力したが、強化ガラス板Gは破損しなかった。即ち、10kNの矢印方向の加力に耐え得るリブガラスが得られた。
(万能材料試験機によるガラス板の加圧試験)
強化ガラス板G、フロート法で製造後、何ら強化処理を行っていない生板ガラスを用い、ガラス板をボルト3、ナット4で締め付けた際のガラス板が破壊される虞がないか確認するための万能材料試験機(株式会社オリエンテック製、型番、UCT−30)によるガラス板の加圧試験を行った。ボルト3には、中山三星建材株式会社製の、低炭素ボロン鋼からなる高力6角ボルト3で、ボルトの機械的性質による等級がF10Tの市販品を用い、ナット4には、中山三星建材株式会社製の構造用炭素鋼からなる高力ボルト用ナット4で、ナットの機械的性質による等級がF10の市販品を用いた。
【0056】
図2は、万能材料試験機によるガラス板の加圧試験を説明するための説明図である。図2に示すように、中央部に径、20.0mmの穴を開けた呼び厚み、12mm、実測で板厚、11.6mm、大きさ、350.0mm×350.0mmの強化ガラス板Gにあけた穴部の上に、呼びM24の摩擦接合用平座金ハイテンPW24(大きさ、厚み5.5mm、外径47.6mm、内径25.2mm)を摩擦部材2として用い、強化ガラス板Gにあけた径20.0mm穴が、前記平座金の内径25.2mmの穴とが重なるように置き、万能材料試験機の押さえ金具5と受け金具6との間に挟んだ状態で万能材料試験機を操作し加圧して250kNの圧縮力を、平座金を介して強化ガラス板Gに加えたが、強化ガラス板Gは破壊しなかった。更に、同様の強化ガラス板Gを2枚用意し、同様に万能材料試験機によるガラスの加圧試験を行ったが、2枚ともに破壊しなかった。
【0057】
次いで、前記強化ガラス板Gに替えて、中央部に径、20.0mmの穴を開けた板厚、11.6mm、大きさ、350.0×350.0mmのフロート法にて製造後、何ら強化処理を行っていない3枚の生板ガラスを用い、同様に万能材料試験機によるガラスの加圧試験を行った。生板ガラスを加圧する力が個々134kN、184kN、203kNに達した際に生板ガラスに亀裂が発生した。生板ガラスは、加圧134kNで亀裂が発生したことより、本発明の強化ガラスの接合方法に使用するには不適であった。
(各種座金を用いた際のガラスの破壊強度試験)
次いで、各種座金2を用いた際のガラスの破壊強度試験を行った結果について説明する。表1に座金の種類を示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1に示すように、摩擦部材2として使用した各種座金は、実施例5に示した呼び径、M22高力ボルト用座金、即ち、機械構造用炭素鋼の厚み5.5mm、外径43.5mm、内径、23.3mmの座金、実施例6に示した呼び径、M24高力ボルト用座金、即ち、機械構造用炭素鋼製の厚み、5.5mm、外径、47.6mm、内径、25.2mmの座金、実施例7に示したステンレス鋼製の厚み、4.0mm、外径39.0mm、内径、25.0mmの座金、実施例8に示した焼入れをした鋼鉄製の厚み、10.0mm、外形は50.0mm角の正方径であり、あけた穴は円形で径は17.0mm、言い換えれば、内径、17.0mmの座金、比較例1に示した呼び径、M24ボルト用座金、即ち、ステンレス鋼製の厚み、2.9mm、外径、47.9mm、内径、25.7mmの座金、比較例2に示したボルト呼び径、M22ボルト用の焼入れをしていない軟鋼製の厚み、4.1mm、外径、38.7mm、内径、24.8mmの座金の6種類である。
【0060】
図7に示すように、中央部に径、20.0mmの孔を開けた板厚、11.6mm、大きさ、350.0×350.0mmの強化ガラス板Gにあけた径、20.0mmの穴の上に上述の摩擦部材2としての6種類の座金と、ボルト呼び径、M16ボルト用の座金7を重ねておき、長さ80.0mmのSUS630鋼製のボルト呼び径、M16の高力6角ボルト3(光精工株式会社製、商品名、F10TM16)を通し高力ボルト用ナット4(光精工株式会社製、商品名、F10M16)と螺合した。尚、高力ボルトナットを締め付けた際の軸力は、高力ボルト用ナット4側の座金を2枚用い、軸力センサーであるロードワッシャー8(日本キスラー株式会社製、商品名、ロードワッシャー9041A)を座金の間に挟み込み、ロードワッシャー8にケーブルにて図示しない軸力計(日本キスラー株式会社製、商品名、チャージメーター5015A1010)を取り付けて測定した。
【0061】
上述の6種類の座金を使用し、図3に示した状態で強化ガラス板Gを貫通した高力6角ボルト3の頭を万力で固定し、締め付けトルクを300N−mに設定したトルクレンチにて高力ボルト用ナット4を締め付けた。軸力計にて軸力を測定したところ、軸力は118kNであった。
【0062】
上述の6種類の座金に関し、軸力は118kNとなるように高力6角ボルト用ナットを締め付けて、強化ガラス板Gの破棄強度試験を複数回行った結果、摩擦部材2に実施例5〜8に示した座金を用いた場合、強化ガラス板Gにクラックが発生することがなく、座金の変形も見られなかった。しかしながら、比較例1に示しに示したステンレス鋼製の厚み、2.9mm、外径47.9mm、内径、25.7mmの座金を用いた場合には、強化ガラス板Gにあけた穴よりクラックが入った。このことは、比較例1に示した座金が厚み2.9mmで薄いために、強化ガラス板Gと該座金との接触部に均等に軸力が加わらず、穴部付近に局所的に軸力が加えられたことによると考えられる。このことを裏づけるように、比較例2に示した焼入れをしていない軟鋼製の厚み、4.0mm、外径、38.7mm、内径、24.8mmの座金を使用した場合、強化ガラス板Gの破損は見られなかったが、強化ガラス板Gの破壊強度試験を5回行ったところ、穴付近で0.2mm〜0.5mm程、強化ガラス板G側に接触座金2が凹み変形した。摩擦部材2に用いた座金の種類には関係なく、厚み、3.0mm未満では、強化ガラス板Gが破損する問題のあることを確認した。
【0063】
摩擦部材2に用いる座金の厚みが、3.5mm以上、更に、好ましくは、4.0mm以上あれば、トルクレンチで軸力118kNに強化ガラス板Gを締め付けても、均等に軸力が強化ガラス板Gに加わり、強化ガラス板Gが割れる懸念が少ない。また、焼入れしていない軟鋼製の座金を摩擦部材2に用いた場合では、焼き入れをしていない軟鋼製の座金が長期使用等において軸力により変形し軸力が低下することが懸念され、リブガラスの接合部材としての耐久性に乏しい。
(万能材料試験機による引っ張り試験)
次いで、摩擦部材2として用いる前述6種類の座金のうち、実施例6に示した機械構造用炭素鋼製の厚み、5.5mm、外径、47.6mm、内径、25.7mmの座金、実施例7に示したステンレス鋼製の厚み、4.0mm、外径39.0mm、内径、25.0mmの座金、実施例8に示した焼入れをした鋼鉄製の厚み、10.0mm、外形は50.0mm角の正方径、外形は50.0mm角の正方径であり、あけた穴は円形で径は17.0mm、言い換えれば、内径17.0mmの座金を介して、強化ガラス板Gに空けた穴に高力6角ボルト3を貫通させて、300N−mの締め付けトルクでトルクレンチにより、軸力、118kNになるように高力6角ボルト用ナット4で締め付け固定した試験片の万能材料試験機での引っ張り試験を行い、摩擦部材2である座金と強化ガラス板Gが滑って当たり、強化ガラス板Gにクラックが発生した際の破壊荷重を測定した。尚、引っ張り試験に際して、高力6角ボルト3はボルト締め付け金具にあけた穴に通した。
【0064】
万能材料試験機試験は株式会社オリエンテック社製 型式、UCT−10Tを用い、図5の(A)、(B)に示すように、高力6角ボルト3をボルト引っ張り金具9にあけた穴に通した後、軸力、118kNになるようにナット4を締め付けて接合し、ガラス引っ張り金具10を図示しない万能材料試験機ロードセルに連結し、図5の(B)に示すように、ガラス引っ張り金具10に強化ガラス板Gを挟みこんで固定し、ボルト引っ張り金具9を図示しない万能材料試験機固定金具に連結した。万能材料試験機ロードセルにより矢印方向に引っ張り、摩擦部材2である座金と強化ガラス板Gが滑って当たり、強化ガラス板Gである強化ガラス板Gにクラックが発生した際の破壊荷重を測定した。
【0065】
表1に示すように、実施例5〜8に示した座金を用いた全ての場合において、一般的に金属の摩擦接合で好ましいとされる破壊荷重30kNを上回り、いずれも良好な結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の穴の開いた強化ガラス板を、添接板および摩擦部材としての座金を用い、両側からボルト3およびナット4で締め付ける接合方法で強化ガラス板を接合することにより、長い方立てガラス、言い換えれば、長い、リブガラスが提供される。
【0067】
また、リブガラスに取り付けた接触金具をガラススクリーンと接続することも可能であり、ボルトでガラススクリーンと接続できることからリブガラススクリーンの設計の自由度が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の強化ガラス板の接合方法によるリブガラスの説明図であり、(A)がリブガラスを正面ら見た図、(B)が側面から見た図である。
【図2】万能材料試験機によるガラスの加圧試験を説明するための説明図である。
【図3】強化ガラスと添接板とを摩擦部材を介し摩擦接合したときの側面図である。
【図4】図3を万能材料試験機にて引っ張り試験をした際の平面図である。
【図5】万能材料試験機にて引っ張り試験をした際の側面図であり、(A)が高力6角ボルト引っ張り金具の側面図、(B)がガラス引っ張り金具の側面図である。
【図6】本発明の強化ガラス板の接合方法により添接板と強化ガラスとを接合したリブガラスの一例の説明図であり、(A)がリブガラスを正面から見た図、(B)が側面から見た図である。
【図7】万能材料試験機によるガラス板の加圧試験を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0069】
G 強化ガラス板
1 添接板
2 摩擦部材
3 ボルト(高力6角ボルト)
4 ナット(高力6角ボルト用ナット)
5 (万能材料試験機の)押さえ金具
6 (万能材料試験機の)押さえ金具
7 呼び径、M16ボルト用の座金
8 ロードワッシャー
9 ボルト引っ張り金具
10 ガラス引っ張り金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化ガラス板の接合方法において、その接合部が強化ガラス板を両側から添接板で摩擦部材を介して挟んでなり、強化ガラス板と添接板とにボルト挿入用の穴をあけ貫通させたボルトおよびナットにて締め付けることにより強化ガラス板と摩擦部材とに生じる摩擦力で添接板を介して強化ガラス板同士を接合する摩擦接合であることを特徴とする強化ガラス板の接合方法。
【請求項2】
接合部が強化ガラス板を両側から添接板で摩擦部材を介して挟んでなり、強化ガラス板と添接板とにボルト挿入用の穴をあけ貫通させたボルトおよびナットにて締め付けることにより強化ガラス板と摩擦部材とに生じる摩擦力で強化ガラス板と添接板を接合することを特徴とする強化ガラス板の接合方法。
【請求項3】
ボルトおよびナットが、JIS−B1186−1979に準拠した高力6角ボルトおよび高力6角ナットであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の強化ガラス板の接合方法。
【請求項4】
前記強化ガラス板が板厚、9.0mm以上、19.0mm以下であり、前記ボルトで締め付けた際の軸力が60kN以上、300kN以下であること特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の強化ガラス板の接合方法。
【請求項5】
前記強化ガラス板が強化ガラスを用いた合わせガラス構造であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の強化ガラス板の接合方法。
【請求項6】
接合する強化ガラス板に少なくとも2以上のボルト挿入用の穴加工をし、前記添接板に4ヶ所以上の穴加工してある添接板を用いたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の強化ガラス板の接合方法。
【請求項7】
前記添接板と強化ガラス板に介在させる摩擦部材が、ボルトに挿通させた接触座金であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の強化ガラス板の接合方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求7のいずれか1項に記載の強化ガラスの接合方法により接合された強化ガラス板からなるリブガラスを用いたリブガラススクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−250345(P2006−250345A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350548(P2005−350548)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】