説明

微小化構造を有する物体を検査及び加工するための電子顕微鏡、並びに、当該物体の製造方法

【課題】微小化構造を有する物体を検査及び加工するための電子顕微鏡、微小化構造を有する物体の製造方法を提供する。
【解決手段】製造方法は、反応ガスを供給すると同時に、加工すべき箇所に電子ビームを当てて、材料を堆積するか、あるいは、材料を切除することにより、物体を加工する工程と、物体の表面を電子ビームによって走査し、生成された後方散乱電子及び二次電子をエネルギー選択器7に導入し、二次電子をエネルギー選択器7によって反射させ、エネルギー選択器7を通過する後方散乱電子を検出し、検出された後方散乱電子に応じて走査領域の電子顕微鏡像を形成して、物体を検査する工程と、形成された電子顕微鏡像を調べて、材料のさらなる堆積又は切除を実施すべきか否かを決定する工程とを含む。並びに、この方法を実施するように構成された電子顕微鏡及び加工システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小化構造を有する物体を検査及び加工するための電子顕微鏡、並びに、微小化構造を有する物体を検査及び加工する工程を含む微小化構造を有する物体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡による検査は、検査対象となる物体の表面を検査するための、長年にわたる確立された方法である。特に、走査型電子顕微鏡による検査において、検査対象となる物体は、細い電子ビームを用いて走査される。電子ビームの衝突による、物体表面から飛散する電子又は後方散乱した物体表面からの後方散乱電子を検出することにより、走査された領域の電子顕微鏡画像を生成することができる。従来の電子顕微鏡は、次の構成要素を含んでいる。すなわち、従来の電子顕微鏡は、電子ビームを発生させるための電子ビーム源と、電子ビームを検査対象となる物体に集束させるための電子光学系と、電子ビームを用いて物体の表面を走査するための偏向光学系と、物体表面において後方散乱した電子又は物体表面から飛散する電子を検出するための少なくとも1つの検出器とを含んでいる。純粋な検査のためだけでなく、物体上の微小化構造の加工あるいは微小化構造を有する物体の製造のために電子顕微鏡を利用することが増大している。従って、物体の加工すべき箇所に反応ガスを供給することにより、材料を選択的に、かつ、高精度をもって堆積するか、あるいは、切除することができる。すなわち、反応ガスは、物体の加工すべき箇所に衝突する電子ビームによって励起され、化学的に活性となるため、物体表面における励起箇所の材料を選択的に堆積するか、あるいは、選択的に切除することができる。その際、物体の表面の切除されるべき微小化構造の材料に応じて、あるいは、物体の表面に堆積されるべき材料に応じて、反応ガスが適切に選択される。この技術が特に適用される分野は、リソグラフのマスク修正という分野である。半導体産業の分野における微小化構造を製造するために、マスクは依然として重要な役割を果たしている。リソグラフ技術においては、光が(フォト)マスクを通過して、ウェーハ上にマスクの微小化像を生成し、ウェーハに塗布されたフォト・レジストが露光されることにより、生成されるべき構造が以後の加工工程においてウェーハに形成される。そのため、マスクの欠陥は、マスクを用いて生成される微小化構造の品質を劣化させる恐れがある。マスクの製造は、依然として時間を要する高価なものであるため、種々のマスク修正方法が適用されるようになってきている。その際、前記の電子ビームによって誘発される化学反応を用いて、マスクの欠陥を特定的に、かつ、高精度をもって修正することができる。マスク修正方法、また微小化構造を生成するための他の方法においては、十分な量の材料が堆積あるいは切除される、材料堆積あるいは材料切除の終点を検知することが必要である。この終点を検知するために、種々のパラメータ、例えば、二次電子又は後方散乱電子からの信号、X線、ガス成分、あるいは物体において誘起される電流などを使用することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常は高真空で操作される電子顕微鏡装置における反応ガスによる操作、並びに、マスク用に従来から使用されている材料特性を有するマスクの加工のために、電子顕微鏡システム及び加工システムの性能に対する要件は極めて大きい。反応ガスの供給に関する特別な要件として挙げられるのは、電子顕微鏡及び全加工システムの真空ポンプシステムである。なぜならば、真空は所定の閾値を超えてはならず、さらに、反応ガスに対するいくつかの電子顕微鏡の構成要素の感度の点で、それらのシステム内での配置を考慮しなければならないからである。従って、例えば、過大圧力によって引き起こされる電子顕微鏡の構成要素の損傷及び電気的フラッシュオーバを防止しなければならない。その他の要件は、マスク特にフォトマスクが通常は電子顕微鏡によって像形成するのが困難であるという事実から生じるが、それは、通常的にフォトマスク用に用いられる材料、例えば、石英基板上のMoSiによって得られるのが極めて劣悪な材料コントラストだからである。さらに、マスクの不十分な導電率による問題が生じる。石英は、通常、電子顕微鏡による検査及び加工工程中に帯電する。そして、そのような帯電により、電子ビームの歪み及び偏向、並びに、全体的な像ドリフトが生じる。さらに、物体表面から飛散する二次電子及び後方散乱電子の個数及び分布が、物体の帯電によって悪影響を受ける。
【0004】
従って、本発明の目的は、非導電性基板に対しても優れた材料コントラストを有する電子顕微鏡像を記録することができると共に、ガス供給による加工を行うことができる、物体を検査及び加工するための電子顕微鏡を提供することである。
【0005】
さらに、本発明の目的は、非導電性基板に対しても加工状態を評価することができる、物体を検査及び加工するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の局面によれば、第5の真空空間を有する真空チャンバ内に配置された微小化構造を有する物体を検査及び加工するための電子顕微鏡によって問題が解決されるが、前記電子顕微鏡は、
電子ビームを発生させるための電子ビーム源と、
前記物体上に前記電子ビームを集束させるための集束レンズと、
二次電子検出器と、
前記電子ビームの方向、つまり、前記電子ビーム源から前記集束レンズへの方向に見て、前記二次電子検出器の前方にそれから離れて配置された後方散乱電子検出器であって、前記二次電子検出器と後方散乱電子検出器とが、前記電子顕微鏡の内部の、前記集束レンズと前記電子ビーム源との間に配置されるような、後方散乱電子検出器と、
前記二次電子検出器と前記後方散乱電子検出器との間に配置されたエネルギー選択器とを含み、
前記電子顕微鏡は、前記電子ビーム源から前記集束レンズへの方向に見て、以下のような4つの真空空間を含んでいる。
【0007】
すなわち、前記電子顕微鏡は、前記電子ビーム源が配置された第1の真空空間と、前記電子ビームが通過する第1の圧力ステージによって前記第1の真空空間から不十分に分離された第2の真空空間と、前記後方散乱電子検出器が配置され、かつ、前記電子ビームが通過する第2の圧力ステージによって前記第2の真空空間から不十分に分離された第3の真空空間と、前記二次電子検出器の表面が配置され、かつ、前記電子ビームが通過する第3の圧力ステージによって前記第3の真空空間から不十分に分離された第4の真空空間とを含んでいる。
【0008】
本発明は、電子顕微鏡法において特に低エネルギーを有する一次電子ビームを使用する場合に、後方散乱電子を用いて電子顕微鏡像を形成することが特に有利であるという知見を用いている。さらに、本発明は、反応ガスの供給による前記物体上の前記電子ビームの衝突箇所でのガス圧力の増大にも拘わらず、前記電子顕微鏡内での適切な圧力形成を可能にすると共に、エネルギー選択器を備えた後方散乱電子検出器を利用することができ、それにより、特に効率的な電子顕微鏡像の形成を行うことができる、装置を提供する。
【0009】
一次電子と表されるのは、前記物体に衝突する前に前記電子ビーム源によって発生される電子のことであり、従って、これらの電子のエネルギーは、一次エネルギーと呼ばれる。
【0010】
本発明による電子顕微鏡のさらなる利点は、単一信号つまり後方散乱電子の信号が、通常では電子光学的に極めて判別しにくい微小化構造を有する非導電性及び低導電性の物体に対しても十分に優れた材料コントラストを発揮する電子顕微鏡像を形成するために十分である、という事実に存する。そして、これにより、特にマスク修正中の、終点検出、特に、自動終点検出が可能となる。
【0011】
前記電子ビームが前記物体表面に衝突する際に、前記電子ビームの構成電子が前記物体と相互作用する。各物体材料並びに前記電子ビームの前記一次エネルギーに応じて、種々のエネルギーを有する二次電子及び後方散乱電子が飛散する。これらの物体との強い相互作用のために、二次電子は後方散乱電子よりも低いエネルギーを有しており、それらは異なる角度で飛散するが、そのために、それらは別の位相空間を占める。後方散乱電子は、前記物体表面において弾性的あるいは非弾性的に散乱するが、一般的に、前記一次電子のおよそ50〜80%のエネルギーを有する。しかし、前記二次電子は、前記一次エネルギーの何分の1かにすぎない。
【0012】
本発明による電子顕微鏡は、互いに離れた2種類の検出器、つまり、後方散乱電子検出器と二次電子検出器とを備えている。両電子検出器は、前記電子顕微鏡内に配置されているために、「レンズ内」検出器と呼ばれる。それぞれの種類の電子の効率的な検出に加えて、この構成により、集束レンズと物体表面との間の有利な短い作動距離が可能となる。
【0013】
前記二次電子は、それらの異なるエネルギー及び異なる飛散角度のために、後方散乱電子の経路とは大きく異なる前記電子顕微鏡内の経路を通過する。それにより、二次電子ビームの横断位置は、後方散乱電子ビームの横断位置よりも前記物体に近くなる。二次電子と後方散乱電子のエネルギーの相違により、エネルギー選択器を用いて、後方散乱電子のみを前記後方散乱電子検出器を通過させることができるが、そのことは、前記電子顕微鏡像の形成に対して特に有利となる。また、特に4つの真空空間を備えた電子顕微鏡の設計により、一方では反応ガスの供給及びそれに伴う前記物体の領域での圧力の増加、他方では後方散乱電子の有効な検出といった相反する要件に対する解決を図ることができる。特に、前記後方散乱電子を前記電子顕微鏡内へ、つまり、後方散乱電子検出器に対して送り込むために十分な大きさの通過断面積を提供し、これにより、同時に前記後方散乱電子検出器に対する十分な真空環境の確立が達成された。
【0014】
前記電子ビーム源は、一般に電子放出電極と抽出電極とアノードとを含む、従来型の電子ビーム源の1つとすることができる。前記電子ビーム源は、例えば、サーマル・フィールドエミッタ(TFE)、ショットキー・フィールドエミッタ又はヘアピン・カソードから構成することができる。
【0015】
前記集束レンズは、電子ビームを集束させるためのあらゆる形式の適切な電子光学レンズとすることができる。好ましくは、前記集束レンズは、静電油浸レンズを備えた磁気レンズを含んでいる。この組み合わせにより、当初は高加速されている一次電子を低い最終エネルギーに減速して、前記電子顕微鏡全体の解像度を向上させることができる。前記磁気レンズは、典型的には、内側磁極片と、外側磁極片と、それらの間に配置された励磁コイルとを含み、前記電子ビームが通過する前記磁気レンズの出口開口部領域における磁界の生成を行うことができる。静電油浸レンズは、例えば、光軸に沿って前記内側磁極片を通過し、かつ、下端を有するビーム管と、前記ビーム管の下端から離れて前記物体の方向に配置された終端電極とを備えた電極装置を含んでいる。それにより、前記ビーム管は、前記内側磁極片によって形成される内部空間の下部に実質的に有利に配置され、そのような実施の形態における終端電極は、実質的に、前記一次電子ビームの方向の前記外側磁極片の後に位置している。しかし、前記物体表面への衝突前に前記一次電子ビームを減速させるために、他の任意の電極装置を採用することもできる。
【0016】
前記二次電子検出器及び前記後方散乱電子検出器は、好ましい実施の形態においては、それぞれの場合の一次電子のビーム経路の周囲に環状に配置された検出面を備えた検出器である。それらは、それぞれ、シンチレータ、光ファイバ及びフォト・マルチプライヤを含む、先行技術から周知の通常の電子検出器によって形成することができる。
【0017】
前記第4の真空空間は、前記電子ビームが通過する集束レンズにおけるガス導入開口部を介して、前記真空チャンバの内部空間(第5の真空空間)に接続されている。本発明の有利な実施の形態によれば、前記第4の真空空間は、例えば、前記電子ビームが通過しない前記第3の圧力ステージの領域に配置されたガス導入開口部を介して前記真空チャンバの前記内部空間にも接続されている。このガス導入接続により、前記第4の真空空間と前記真空チャンバの内部との間に極めて小さな圧力差が生じる。そして、この構成により、特に電子顕微鏡及び設置されている場合のガス供給用などの追加構成要素と前記物体との距離を僅少に維持して、物体至近の稼働真空をおよそ係数10だけ下げることができ、従って、前記真空チャンバの内部の全体におけるよりも圧力を高くすることができる。それにより、有利な高いガス濃度及び吸着に対して効果的な反応ガス分圧を前記一次電子ビームの衝突領域に生じさせることができる。
【0018】
前記第4の真空空間における前記開口部及びガス導入接続の他の構成も考えられ、例えば、開口部を前記第3の圧力ステージからより大きい距離だけ離す、つまり、例えば、集束レンズを側面に沿って通過する前記物体に近付けることもできる。前記第4の真空空間の種々の箇所に複数の開口部を設けることも考えられる。
【0019】
材料切除及び材料堆積のために設計された先行技術から公知の電子顕微鏡とは異なり、反応ガスの供給時に前記電子顕微鏡の前記内部空間を前記真空チャンバからできるかぎり離すことは、この場合には行われず、その一方で、前記第4の真空空間と前記真空チャンバの前記内部空間との間の直接的な接続が行われる。前記ガス導入接続は、例えば、ガス流に対する抵抗が極めて小さい管又は気密ホースなどによって行うことができる。
【0020】
本発明の別の実施の形態において、前記第3の圧力ステージ、つまり、前記第4の真空空間を前記第3の真空空間から不十分に分離する圧力ステージは、前記二次電子検出器を含んでいる。この実施の形態において、前記圧力ステージは、前記電子ビームが通過する前記二次電子検出器の開口部によって実質的に形成される。前記二次電子検出器は、例えば、フォト・マルチプライヤに接続される光ファイバに接続された環状シンチレータを含んでいる。前記後方散乱電子は、前記二次電子よりも高い運動エネルギーを有するため、大半の前記後方散乱電子は、前記二次電子検出器の前記開口部を通過して、次の真空空間に進入する。
【0021】
有利な実施の形態において、前記電子ビームが通過する前記二次電子検出器の前記開口部は、対応する真空空間において最小直径の電子ビーム経路部を構成するため、隣接する前記真空空間の間での少なくとも係数(factor)2程度の圧力差及び真空差を達成することができる。磁気レンズと静電油浸レンズとを組み合わせた実施の形態において、例えば、前記ビーム管、前記終端電極の前記開口部及び前記磁気レンズの中央ドリルの直径は、それぞれ、前記電子ビームが通過する前記二次電子検出器の前記開口部の直径よりも大きく、この開口部は、圧力ステージを形成して、少なくとも係数2程度の圧力差及び真空差を達成することができるように、隣接する2つの真空空間を分離することができる。
【0022】
前記エネルギー選択器は、それが二次電子と後方散乱電子を互いに分離するように、特に好適に配置及び適合される。これにより、二次電子を前記第3の真空空間に到来する後方散乱電子から分離することができる。前記二次電子を前記後方散乱電子から分離することにより、電子顕微鏡像を特に有利に形成することができる。特に、前記電子顕微鏡像を前記後方散乱電子に基づいて形成することができ、これにより、像形成材料の材料コントラストを向上させることができる。
【0023】
特に、二次電子を反射させるために、前記エネルギー選択器を配置及び適合させることができる。例えば、前記エネルギー選択器は、互いに平行な2つのグリッドと、これらのグリッド間に電界を発生させるための電圧源とにより構成することができる。これらのグリッドは、前記後方散乱電子検出器の検出面に対して実質的に平行となるように、有利に配置される。前記二次電子は、前記後方散乱電子よりも低い運動エネルギーを有するため、これらの2つのグリッド間に発生した電界を適切に調整して、二次電子を反射させ、後方散乱電子は当該電界を通過させることができる。従って、後方散乱電子のみが前記後方散乱電子検出器に到達する。さらに、前記エネルギー選択器は、それらのエネルギーが所定の閾値エネルギーを超える後方散乱電子のみを前記後方散乱電子検出器に向けて通過させるように構成することができ、これにより、前記後方散乱電子のエネルギー選択を行うことができる。所定のエネルギー選択器に対して、これは、例えば、印加される電圧及び電位差の適切な選択によって達成することができる。材料、寸法、メッシュ幅などに関して、前記グリッドは、それらが二次電子の反射並びに適用可能であればそれらのエネルギーに関して前記後方散乱電子の適切な選択を行うことができる電界強さ及び電界形状の電界を発生させることができるかぎり、同種あるいは異種のいずれでもよい。電界強さは、前記二次電子の運動エネルギー及び前記後方散乱電子の運動エネルギーに対して調整されるが、当該エネルギーは、とりわけ、前記物体表面に衝突する前記電子ビームの前記一次エネルギー、物体材料及び微小化構造の形状、並びに、前記電子顕微鏡に対する前記物体の向きにより左右される。電界強さの適切な選択、すなわち、適切なエネルギー選択により、前記後方散乱電子の収量及びそれにより形成される電子顕微鏡像の品質が顕著に向上する。
【0024】
好ましい実施の形態によれば、前記第1の真空空間は、第1の真空ポンプへの接続部を含み、前記第2の真空空間は、前記第1の真空ポンプとは異なる第2の真空ポンプへの接続部を含み、前記第3の真空空間は、前記第1及び第2の真空ポンプとは異なる第3の真空ポンプへの接続部を含んでいる。これにより、異なる真空空間を特に効率的に個別に排気すると共に、該当する真空空間においてそこに配置された構成要素に適合する圧力を与えることができる。
【0025】
いくつかの実施の形態において、前記真空チャンバ及びそれを介した前記第4の真空空間は、前記第1〜第3の真空ポンプとは異なる第4の真空ポンプへの接続部を有している。従って、前記第4の真空空間及び前記真空チャンバは、同じ真空ポンプによって排気される。本発明による電子顕微鏡のこれらの真空空間及び圧力ステージは、4つの真空ポンプを備えた電子顕微鏡の操作において互いに隣接する4つの真空空間におけるガス圧力差がそれぞれ少なくとも1:10、好ましくは、少なくとも1:20、1:50あるいは1:100となるように、好適に適合される。
【0026】
別の実施の形態において、前記第3の真空空間の前記接続部及び前記第4の真空空間への前記真空チャンバの前記接続部は、共に前記第3の真空ポンプに接続される。これにより、特に、前記真空チャンバの前記接続部を前記第3の真空空間の接続部に結合することができる。すなわち、前記真空チャンバの前記接続部は、前記第3の真空空間に接続される。この実施の形態において、前記第3の真空空間及び真空チャンバからの前記接続部が合流する。すなわち、組み合わされた接続部として、例えば、ターボ分子ポンプである前記第3の真空ポンプに接続される。この実施の形態の前記真空空間及び圧力ステージは、前記電子顕微鏡の操作において第1、第2及び第3の真空空間におけるガス圧力差がそれぞれ少なくとも1:10、好ましくは、少なくとも1:20、1:50あるいは1:100となり、また、前記第3の真空空間と前記第4の真空空間におけるガス圧力差が少なくとも1:2となるように、好適に適合される。
【0027】
このような異なる真空空間への適切な分割及びそれにしたがって設計された圧力ステージにより、ガス供給による前記電子顕微鏡の操作並びに感圧性の前記後方散乱電子検出器の採用が可能になると共に、選択すべき前記二次電子及び後方散乱電子に対して十分に大きな通過開口部を与えることができる。
【0028】
本発明の第2の局面によれば、微小化構造を有する物体の製造方法によって問題が解決され、当該方法は、
a)前記物体の表面に反応ガスを供給すると共に、前記物体の表面の加工すべき箇所に電子ビームを当てて、前記物体に材料を堆積するか、あるいは、前記物体から材料を切除することにより、前記物体を加工する工程と、
b)前記物体の表面及び前記物体の表面の領域を前記電子ビームによって走査し、前記走査用電子ビームによって生成された後方散乱電子及び二次電子をエネルギー選択器に導入し、前記二次電子を前記エネルギー選択器によって反射させ、前記エネルギー選択器を通過する後方散乱電子を検出し、検出された前記後方散乱電子に応じて前記走査領域の電子顕微鏡像を形成して、前記物体を検査する工程と、
c)形成された前記電子顕微鏡像を調べて、材料のさらなる堆積又は切除を実施すべきか否かを決定する工程とを含んでいる。
【0029】
本発明による方法は、本発明による電子顕微鏡によって特に有利に実施することができる。上記の考慮すべき事項及び詳細な説明は、本発明による方法に同様に適用される。
【0030】
従って、前記走査用電子ビームによって生成された前記後方散乱電子及び二次電子をエネルギー選択器に導入する工程は、前記走査用電子ビームによって生成された前記後方散乱電子及び二次電子を前記電子顕微鏡の内部のエネルギー選択器に導入することを含むのが特に好ましい。
【0031】
本発明による前記方法は、エネルギー選択器を用いて二次電子を予め分離した後方散乱電子を検出するならば、特に非導電性の物体及び低導電性の物体、さらに前記電子ビームの低い一次エネルギーでは電子光学的に判別しにくい材料の組み合わせを有する物体に対しても、十分に優れた材料コントラストを示す電子顕微鏡像が得られるという知見を用いている。上記のように、前記エネルギー選択器が互いに平行に配置された2つのグリッドを備えた電極装置を含むとき、前記反射二次電子は、好ましくは、これらのグリッド間で生成された電界における反射二次電子を含む。従って、前記電子顕微鏡に関する概要において既述したように、前記電界は、その強さ及び形状に関して、二次電子は反射されるが、後方散乱電子は前記エネルギー選択器を通過するように、選択される。さらに、前記エネルギー選択器を用いて、前記後方散乱電子をそれらのエネルギーに関して選択することができる。例えば、それにより、それらのエネルギーが所定の閾値を超える後方散乱電子のみが通過して前記検出器に入るように、前記エネルギー選択器を構成することができる。
【0032】
本発明が特に有利であるのは、加工及び検査工程中の前記電子ビームの電子が前記物体の前記箇所において5keV以下、例えば、2keV以下、特に、1keV以下の一次エネルギーを呈する実施の形態の場合である。前記電子ビームのそのような小さな一次エネルギーを用いることにより、前記物体の望ましくない帯電を少なくとも低減することができる。
【0033】
この一次エネルギーは、既述したように、前記焦点レンズの領域における、又は、前記焦点レンズと物体との間の、静電油浸レンズあるいは他の適切な電極装置によって得ることができる。それらの装置は、電子ビームを所望の一次エネルギーにすることができるだけでなく、前記電子顕微鏡の内部への二次電子及び後方散乱電子の導入についても有利である。
【0034】
本発明による前記方法の別の有利な実施の形態において、前記エネルギー選択器に供給されない前記走査用電子ビームによって生成された前記二次電子を導く工程は、これらの二次電子を二次電子検出器に導くこと、及び、前記二次電子検出器に供給された前記二次電子を検出することを含む。この方法のステップにより、前記物体の表面に関するより詳細な情報を得ることができる。各検出器の信号は、前記電子顕微鏡像の所望の情報内容に応じて、互いに相関させることができる。
【0035】
さらに別の有利な実施の形態によれば、本発明による前記方法は、さらに、前記二次電子検出器の電子検出面が配置される空間に第1の真空を発生させ、前記エネルギー選択器が配置される空間に第2の真空を発生させることをさらに含み、その際、前記第1の真空のガス圧力は、前記第2の真空のガス圧力の少なくとも2倍、例えば、5倍以上、10倍、20倍又は50倍以上である。本発明による前記電子顕微鏡に関する概要において既述したように、前記電子顕微鏡のそのような設計並びにそれに関連する方法ステップにより、ガス供給による前記物体表面の加工及び後方散乱電子の効率的な検出が可能となる。さらに、2つのグリッド間に生成される前記電界を用いる電極装置の場合における前記エネルギー選択器、前記エネルギー選択器の特殊調整、両グリッド間の前記電界の形状及び強さの調整により、形成された前記電子顕微鏡像における物体の走査された異種材料間のコントラストを向上させることができる。
【0036】
例えば、材料コントラストの改良により、マスク修正中の自動終点検出が可能となる。そのような実施の形態において、形成された前記電子顕微鏡像を調べて、材料のさらなる堆積又は切除を実施すべきか否かを決定する工程は、前記電子顕微鏡像の検査された画素の最大値を検査された前記電子顕微鏡像の当該画素の目標値と比較し、実際の値と目標値との差が特定の限界値未満になれば加工を終了することを含んでいる。この決定は、マスク修正方法に関連する材料堆積及び材料切除中の自動的な終点検出において特に有利である。
【0037】
前記電子顕微鏡像の形成は、さらに以下の工程を含むことができる:前記物体の表面を前記電子ビームによって走査して、検出された前記後方散乱電子に応じて第1の電子顕微鏡像を形成し、前記物体の表面を前記電子ビームによって再走査して、検出された前記後方散乱電子に応じて走査された領域の第2の電子顕微鏡像を形成し、さらに、前記第1の電子顕微鏡像と前記第2の電子顕微鏡像を平均して電子顕微鏡像を形成する。この方法は、さらに、n回の走査と、それに対応するn個の電子顕微鏡像の形成とを含むことができ、その際の前記平均の電子顕微鏡像は、好ましくは、前記n個の電子顕微鏡像の平均とされる。この方法により、形成される前記電子顕微鏡像の信号対雑音比を有利に向上させることができる。そして、それにより、前記比は、平均される画素数を有する信号に有利となるように増加する。
【0038】
本発明の第3の局面によれば、微小化構造を有する物体を加工するための加工システムが提供されるが、当該システムは、本発明による前記電子顕微鏡と、反応ガスを前記物体表面に供給するためのガス供給装置とを含んでいる。
【0039】
適切なガス供給装置は、先行技術から公知である。ガス供給装置の一例として、例えば、ドイツ特許公開文献DE10208043A1を参照することができる。
【0040】
材料切除又は材料堆積のために反応ガスを供給して物体を加工することは、先行技術から公知である。さらに、エッティング及び堆積工程用の新しい材料及び反応も常時に開発されている。前記物体の加工すべき箇所の領域におけるガス圧力の増大は、一方では供給される所要反応ガスによるが、他方では反応過程において生じる気体状の反応生成物であり、これは局部的にガス圧力を高めるため、システムから除去しなければならない。
【0041】
好ましい実施の形態において、前記電子顕微鏡及び/又は前記加工システムは、本発明による方法を実施するように構成される。例えば、前記電子顕微鏡及び前記加工システムは、好ましくは、前記エネルギー選択器において印加すべき電位差を最適化することを含む方法ステップを制御するための制御ユニットを含んでいる。好ましくは、この制御ユニットは、実際の像を目標となる像と比較することによって決定するステップを自動的に実施すべく構成される。
【0042】
好ましい実施の形態によれば、本発明による前記加工システムは、さらに、前記電子顕微鏡の前記集束レンズと前記物体との間に配置される電極を含み、当該電極が前記電子ビームが通過する開口部を有する電極装置を含んでいる。この電極は、遮蔽エレメントとして機能して、前記一次電子ビームの衝突領域において、当該一次電子ビームに対して、前記物体の帯電などによって生じる電界を遮蔽することができる。前記電極の開口部及び前記電極自体は、前記物体に対して配置されると共に、それが前記電子顕微鏡の方向に前記電極の開口部を通過する二次電子及び後方散乱電子の個数を実質的に減少させないようなサイズにされる。適正な電極装置については、例えば、国際公開公報WO2005/101451A1に記載されている。
【0043】
例示的な実施の形態において、前記ガス供給装置及び/又は前記遮蔽エレメントとして機能する電極は、前記物体の加工中に前記物体に対する広範な密封が当該構成要素及び/又は物体至近の他の一つ又は複数の構成要素によって与えられ、この領域に存在する反応ガスや反応によって生成されたガスの好ましくは少なくともおよそ50質量%、さらに好ましくは少なくともおよそ75質量%の主要割合が前記第4の真空空間と前記真空チャンバの内部との間の前記ガス導入接続部を介して前記真空チャンバへ供給され、そこから真空ポンプによって除去され、前記物体の領域のガスの比較的より少ない割合が前記真空チャンバの内部に飛散するように、構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する
図1は、本発明による加工システムの第1の実施の形態の簡略化された概略断面図である。
【0045】
図2は、本発明による加工システムの第2の実施の形態の簡略化された概略断面図である。
【0046】
同一の参照符合は、同一の構成要素を表す。
【0047】
加工システム100は、電子顕微鏡1と、物体ホルダ81に保持された物体Oの加工箇所に反応ガスを供給するためのガス供給装置8と、電極装置9とを含んでいる。
【0048】
電子顕微鏡1は、電子ビームの方向に、電子ビーム源3と、第1の集束/偏向エレメント48と、後方散乱電子検出器6と、エネルギー選択器7と、二次電子検出器5と、集束レンズ4とを含んでいる。集束レンズ4内には、第2の集束/偏向エレメント47が配置されている。集束レンズ4は、磁気レンズと静電油浸レンズとの組み合わせである。磁気レンズは、内側磁極片42と、外側磁極片41と、それらの間に設けられたコイル43とを含み、内側磁極片42の下端と外側磁極片41の下端とは、実質的に軸方向間隙44を形成している。この軸方向間隙44には、実質的に軸方向隙間44の領域に突き出たコイル43における電流により、磁極片41、42を通る磁気流の誘導時に磁界が発生する。そして、この磁界により、電子ビーム源3から加速される電子ビームを物体Oに向かって集束させることができる。静電油浸レンズは、内部空間が内側磁極片42と外側磁極片41とにより形成される磁気レンズの内部空間を貫通するビーム管45を含んでいる。静電油浸レンズは、さらに、ビーム管45の下端から離れて配置された終端電極46を含んでいる。電圧源(概略図示、参照符号なし)を介してビーム管45と終端電極46との間に適切な電界を印加することにより、一次電子のエネルギーをフォトマスクの検査に適した1keVの一次エネルギーへ減ずることができる。図示された実施の形態において、ビーム管は例えば+8keVとすることができるが、終端電極46は接地される。
【0049】
電子顕微鏡1は、4つの異なる第1〜第4の真空空間21、22、23、24に区分されるが、それらは第1〜第3の圧力ステージ25、26、27によって互いに不十分に分離されている。真空チャンバ2に収容される第5の真空空間35は、第4の真空空間24から不十分に分離されている。第1の真空空間21は、電子ビーム源3を含んでいる。第1の真空空間21は、第1の接続部29を介してイオンゲッタポンプ37と連通している。第1の真空空間21は、開口部129を介してイオンゲッタポンプ37に接続されている。例えば、第1の真空空間21において、電子顕微鏡の操作中の圧力はおよそ10-9から10-10ミリバールまでの範囲にある。第1の圧力ステージ25は、電子ビーム経路を対称的に包囲する開口部によって形成されている。第2の真空空間22は、第2の接続部30を介して第2の真空ポンプつまりイオンゲッタポンプ38に接続されている。第2の真空空間22は、開口部130を介してイオンゲッタポンプ38と連通している。第2の圧力ステージ26は、第2の真空空間22を第3の真空空間23から不十分に分離している。第2の真空空間22内の圧力は、例えば、電子顕微鏡の操作中におよそ10-7ミリバールの範囲に到達し得る。第3の真空空間23には、後方散乱電子検出器6とエネルギー選択器7とが配置されている。第3の真空空間23は、第2及び第3の圧力ステージ26、27により、第2及び第4の真空空間22、24から不十分に分離され、また、第3の真空空間23を第3の真空ポンプ39に接続する第3の接続部31を有している。第3の真空空間23は、開口部131を介して第3の真空ポンプ39と連通している。第3の真空空間23の圧力は、例えば、電子顕微鏡の操作中におよそ10-5ミリバールの範囲に到達し得る。第4の真空空間24は、第3の圧力ステージ27により、第3の真空空間23から不十分に分離されている。図示された例示的な実施の形態において、第3の圧力ステージ27は二次電子検出器5を含んでいる。従って、第3の圧力ステージ27の開口部は、電子ビームが通過する二次電子検出器5の開口部により形成される。不十分に分離された第3及び第4の真空空間23、24間で釣り合う圧力が二次電子検出器5の開口部を介してのみ生じ得るように、二次電子検出器5は、電子顕微鏡1内に保持されている。第4の真空空間24のハウジングは、開口部128を含むと共に、真空チャンバ2の内部(第5の真空空間35)に対する開口部128’へのガス導入接続部28を有している。ガス導入接続部28は、ここでは、単純な金属管によって与えられる。真空チャンバ2の内部へのガスの搬送に対する抵抗をできるだけ抑制するために、極めて大きな直径を有する金属管を介して、ガス供給装置8から供給された反応ガスが第4の真空空間24から真空チャンバ2へ排出される。図示された例示的な実施の形態において、ビーム管45は、電子ビーム方向に二次電子検出器5に向けて円錐状に拡大する下部円筒形状領域を有しており、さらに上方へ拡大直径を有する円筒形状をなして第2の真空空間22へと延びる。従って、ビーム管45は、二次電子検出器5、エネルギー選択器7及び後方散乱電子検出器6を囲んでいる。ビーム管45は、例えばセラミック製の気密式ホルダ49により、二次電子検出器5の下方に離れて保持されており、また、第4の真空空間24がビーム管45の内部空間、及び絶縁部49と電子ビーム源3の方向にある第3の真空空間23との間の中間空間を実質的に含むように、外側磁極片41に気密接続されている。操作中に第3の圧力ステージ27の領域つまりその付近における第4の真空空間24の内部圧力は、例えばおよそ10-4ミリバールの範囲にあるが、真空チャンバ2の内部における真空は、例えば、およそ10-5ミリバールの範囲に到達する。真空チャンバ2は、接続部32に通じる開口部132を含み、開口部132は、真空チャンバ2に収容される第5の真空空間35を第4の真空ポンプ40と連通させる。従って、第1、第2、第3の真空空間21、22、23、及び、第4の真空空間24と第5の真空空間35との組み合わせは、それぞれ個別に排気できるため、真空チャンバ2へのガス供給時に電子顕微鏡の円滑な操作が可能となる。
【0050】
そのため、二次電子検出器5の検出面51は、第4の真空空間24に配置され、後方散乱電子検出器6は、より高い真空が達成される第3の真空空間23に配置される。物体Oから放出されるすべての電子又はそれから後方散乱される電子がエネルギー選択器7を通過して、後方散乱電子検出器6の検出面に到達できるように、エネルギー選択器7は、後方散乱電子検出器6の前方に配置される。図示された実施の形態において、エネルギー選択器7は、第1のグリッド71と、第2のグリッド72と、第1のグリッド71と第2のグリッド72との間に適切な電界を発生させるための電圧源73とを含み、これにより、物体表面から飛散した二次電子を反射することが可能となる。第1及び第2のグリッド71、72は、互いに平行に配置され、電子ビーム源3から発生する一次電子ビームの電子ビーム経路を環状に包囲する。例示された実施の形態において、第1のグリッド71は、電圧源73に接続されているが、第2のグリッド72は、ビーム管45に結合されて、ビーム管45と同じ電位にある。第1及び第2のグリッド71、72によって形成される電子ビームの通過する開口部に絶縁管を挿入して、第1及び第2のグリッド71、72間に印加される電界の影響から一次電子ビームを保護することができる。電圧源73を用いて印加される電界は、後方散乱電子が当該電界を通過して後方散乱電子検出器6で検出され、二次電子はそれらの低い運動エネルギーのゆえに反射されて検出されないように、一次電子エネルギー並びに検査及び加工されるサンプルの特性に適合される。第1及び第2のグリッド71、72に印加される電位差の調整により、電界の強さを、従って、検出信号のレベルを改良することができる。
【0051】
図示された実施の形態は、さらに、電子ビーム経路の周囲に環状に配置された遮蔽電極91を有する電極装置9を含み、当該遮蔽電極91は、一次電子ビームの妨害されない伝達並びに二次電子及び後方散乱電子の顕著に制約されない伝達を可能にする中央開口部92を有している。適切な電圧源(概略図示、参照符号なし)を用いて遮蔽電極91に対して適正な電圧を印加することにより、一次電子ビームに対して物体Oを帯電させることによって発生した電界を効果的に遮蔽することができる。
【0052】
第1ステップにおける自動終点検出法において、物体の検査はフォトマスクの修正が対象となるが、それは例えば石英基板上の微小化モリブデン構造に対して適用される。検査中にマスクの欠陥が特定されて、当該欠陥を除去及び修正するための加工手順が選択される。次に、加工工程において、物体O上の加工すべき箇所が一次電子ビームの領域に移動され、さらに電子ビームの電子によって励起されて化学的に活性となる反応ガスがガス供給装置8を用いて供給される。それにより、例えば、材料を切除することができる。材料の切除から一定時間が経過したならば、加工された箇所が再び検査される。この検査は、エネルギー選択器7を用いて二次電子が分離された後方散乱電子の検出によって実施される。物体Oの表面から飛散する二次電子は、電子顕微鏡1の内部に進入し、第4の真空空間24において二次電子検出器5の検出面51に衝突する。二次電子検出器5の開口部を通って第3の真空空間23に進入する二次電子は、エネルギー選択器7の第1のグリッド71と第2のグリッド72との間に適切な電圧を印加することによって反射される。より高いエネルギーを有する後方散乱電子だけが、エネルギー選択器7を通過して、後方散乱電子検出器6に到達する。終点到達を決定するための根拠となる電子顕微鏡像は、検出された後方散乱電子に基づいて形成される。形成された電子顕微鏡像が目標となる像に合致すれば、物体の加工を中止することができる。そうでない場合には、反応ガスを供給して新たな加工工程が実施される。この種の方法により、特にフォトマスクの修正に対する自動終点検出を特に有利に行うことができる。
【0053】
第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第3及び第4の真空空間23、24の真空ポンプとの接続及び関連だけである。第2の例示的な実施の形態において、第3の真空空間23の第3の接続部31’は、真空チャンバ2の接続部32’に合流する。従って、第3の真空空間23、真空チャンバ2及び当該真空チャンバ2を介した第4の真空空間24は、同じ第3の真空ポンプ39に接続されている。これにより、第5の真空空間35は、開口部132’を介して第3の真空ポンプ39と連通している。さらに、この手段として簡略な実施の形態により、電子顕微鏡内部における適切な真空環境を達成することができる。操作中の、第1の真空空間21における真空はおよそ5×10-10ミリバールの範囲にあり、また、第2の真空空間22における真空はおよそ5×10-8ミリバールの範囲にある。第3の真空空間23及び第3の接続部31’の真空は、例えば、およそ7×10-5ミリバールである。第4の真空空間24の内部の第3の圧力ステージ27の領域及び真空チャンバ2の内部において、操作中の圧力は例えばおよそ10-4ミリバールの範囲にあり、また、物体の至近での真空は例えばおよそ10-2ミリバールの範囲にある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による加工システムの第1の実施の形態の簡略化された概略断面図である。
【図2】本発明による加工システムの第2の実施の形態の簡略化された概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小化構造を有する物体の製造方法であって、
(a)前記物体の表面にプロセスガスを供給すると共に、前記物体の表面の加工すべき箇所に電子ビームを当てて、前記物体に材料を堆積すること、及び、前記物体から材料を切除することの少なくともいずれかにより、前記物体を加工する工程と、
(b)前記物体の表面を前記電子ビームによって走査し、前記走査用電子ビームによって生成された後方散乱電子及び二次電子をエネルギー選択器に供給し、前記二次電子を前記エネルギー選択器によって反射させ、前記エネルギー選択器を通過する後方散乱電子を検出し、検出された前記後方散乱電子に基づいて前記走査領域の電子顕微鏡像を形成して、前記物体を検査する工程と、
(c)(i)前記物体の加工及び検査を反復すること、及び
(ii)前記物体のさらなる加工及び検査を中止することのうちの1つを、前記物体の形成された前記電子顕微鏡像の解析に基づいて行う工程とを含むことを特徴とする微小化構造を有する物体の製造方法。
【請求項2】
前記エネルギー選択器は、互いに離れて配置された2つのグリッド電極を含み、前記二次電子の反射は、前記グリッド電極間で生成される電界によって前記二次電子を反射させることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子ビームの電子は、前記物体の表面において5keV未満の運動エネルギーを有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギー選択器に供給されない前記走査用電子ビームによって生成された二次電子を二次電子検出器へ供給する工程と、前記二次電子検出器へ供給された前記二次電子を検出する工程とをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記二次電子検出器の電子検出面が配置される空間に第4の真空を形成し、前記エネルギー選択器が配置される空間に第3の真空を形成し、前記物体の加工中に前記第3の真空のガス圧力と前記第4の真空のガス圧力の比を1:2未満に維持する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
電子ビーム源が配置される空間と前記エネルギー選択器が配置される空間との間の空間に第2の真空を形成し、前記電子ビーム源が配置される空間に第1の真空を形成し、前記物体の加工中に前記第1の真空のガス圧力と前記第2の真空のガス圧力との比、及び前記第2の真空のガス圧力と前記第3の真空のガス圧力との比をそれぞれ1:10未満に維持する工程をさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
微小化構造を有する物体を検査及び加工するための加工システムであって、前記電子顕微鏡システムは、
電子ビームを発生させるための電子ビーム源と、
前記物体上に前記電子ビームを集束させるための集束レンズと、
前記物体から離れて配置された二次電子検出器と、
前記二次電子検出器よりも前記物体からはるかに離れて配置されたエネルギー選択器と、
前記エネルギー選択器よりも前記物体からはるかに離れて配置された後方散乱電子検出器と、
前記電子ビーム源が配置された第1の真空空間と、
前記電子ビームが通過する開口部を含む第1の分離構造により、前記第1の真空空間から不十分に分離された第2の真空空間と、
前記電子ビームが通過する開口部を含む第2の分離構造(26)により、前記第2の真空空間から不十分に分離された、前記後方散乱電子検出器が配置される第3の真空空間と、
前記電子ビームが通過する開口部を含む第3の分離構造(27)により、前記第3の真空空間から不十分に分離された、前記二次電子検出器の表面が配置される第4の真空空間とを含むことを特徴とする加工システム。
【請求項8】
前記第3の分離構造は、前記二次電子検出器を含む請求項7に記載の加工システム。
【請求項9】
前記エネルギー選択器は、二次電子と後方散乱電子を互いに分離すべく構成された請求項7に記載の加工システム。
【請求項10】
前記エネルギー選択器は、前記二次電子を反射すべく構成された請求項9に記載の加工システム。
【請求項11】
前記エネルギー選択器は、所定の閾値エネルギーよりも大きい運動エネルギーを有する後方散乱電子のみが前記後方散乱電子検出器に到達できるように構成された請求項9に記載の加工システム。
【請求項12】
前記エネルギー選択器は、互いに離れて配置された2つのグリッド電極と、前記2つのグリッド電極間に電界を発生させるための電圧源とを含む請求項7に記載の加工システム。
【請求項13】
前記物体の表面に反応ガスを供給するためのガス供給装置をさらに含む請求項7に記載の加工システム。
【請求項14】
第1、第2及び第3の真空ポンプをさらに含み、
前記第1の真空空間のハウジングは、前記第1の真空ポンプと連通する開口部を含み、
前記第2の真空空間のハウジングは、前記第2の真空ポンプと連通する開口部を含み、
前記第3の真空空間のハウジングは、前記第3の真空ポンプと連通する開口部を含む請求項7に記載の加工システム。
【請求項15】
前記物体が配置される第5の真空空間をさらに含み、
前記第4の真空空間のハウジングは、前記電子ビームが通過しない開口部を含み、
前記第5の真空空間のハウジングは、前記電子ビームが通過しない開口部を含み、前記第4の真空空間の前記開口部と連通する請求項7に記載の加工システム。
【請求項16】
前記第1、第2及び第3の真空ポンプとは異なる第4の真空ポンプをさらに含み、
前記第5の真空空間の前記ハウジングは、前記第4の真空ポンプと連通する開口部を含む請求項15に記載の加工システム。
【請求項17】
前記第5の真空空間は、前記第3の真空ポンプと連通する開口部を含む請求項15に記載の加工システム。
【請求項18】
前記電子顕微鏡システムは、操作中に、前記第1の真空空間のガス圧力と前記第2の真空空間のガス圧力との比、及び、前記第2の真空空間の前記ガス圧力と前記第3の真空空間のガス圧力との比が、それぞれ1:10よりも小さくなるように構成された請求項7に記載の加工システム。
【請求項19】
前記電子顕微鏡システムは、さらに、操作中に、前記第3の真空空間の前記ガス圧力と前記第4の真空空間のガス圧力との比が1:2よりも小さくなるように構成された請求項7に記載の加工システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−159568(P2008−159568A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−242771(P2007−242771)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(504020452)カール・ツァイス・エヌティーエス・ゲーエムベーハー (36)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss NTS GmbH
【Fターム(参考)】