説明

微細形状切削加工装置および微細形状切削加工方法。

【課題】被加工物の表面に高精度な微細形状を加工することができる微細形状切削加工装置および加工方法を提供する。
【解決手段】XまたはY移動機構12,11の駆動を制御する駆動プログラム開始時にタイマーカウント開始指令を出力するNC装置21と、これら移動機構の相対移動速度情報とワークWの加工開始位置情報とから、タイマーカウント開始指令が出力されてから切削工具が加工開始位置に到達するまでの到達時間T1を演算する到達時間演算手段22と、タイマーカウント開始指令が出力されてからの経過時間T2が到達時間T1に一致したかを判定し、一致したときにトリガー信号を出力する経過時間判定手段23と、トリガー信号を受けて予め設定した切込量で切削工具が進退するように往復動ステージを駆動させる往復動ステージ駆動手段24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具を用いて、被加工物の表面に微細な凹凸を加工する微細形状切削加工装置および微細形状切削加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削工具を用いて、被加工物の表面に微細な凹凸を加工する装置や方法として、特許文献1に開示された「微細表面形状切削加工装置および微細切削加工方法」が知られている。
これは、被加工物を搭載し、往復運動をする第1のスライド機構と、この第1のスライド機構の運動方向と直角方向に間欠位置決め運動をする第2のスライド機構と、これら第1および第2のスライド機構の運動軸とそれぞれ直角な方向に切削工具の切込み量を高速かつ微細に制御する工具切込み機構と、第1のスライド機構の運動に従ってパルス信号を発生する位置検出器とを備えて構成されている。
【0003】
被加工物の表面に微細表面形状を加工するには、第1のスライド機構の正方向の運動時に、位置検出器から発生するパルス信号に同期して工具切込み機構により切削工具の切込み量を高速に変化させ、第1のスライド機構の逆方向の運動時には、切削工具を被加工物から退避させ、かつ、第1のスライド機構が一往復する毎に第2のスライド機構を一定量送る。これによって、被加工物の表面に微細表面形状を加工することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−123085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示された加工装置や加工方法では、第1のスライド機構の正方向の運動時に、第1のスライド機構の位置情報を位置検出器で検出し、この位置検出器からのパルス信号をカウントし、カウント値が予め設定した値に一致したか否かを判定し、両者が一致したときにトリガー信号を出力し、このトリガー信号で工具切込み機構により切削工具の切込み量を高速に変化させている。そのため、位置検出器からのパルス信号をカウントし、設定値と一致するか否かを判定する処理が必要になるため、切削工具が進退するタイミングに遅れが生じやすく、被加工物の表面に高精度な微細表面形状を加工できない場合が考えられる。
【0006】
とくに、シートに複数のマイクロレンズを転写成形するために用いられるマイクロレンズ転写成形用ロールや転写成形金型を加工する場合、加工されるマイクロレンズ成形部は、外径が概ね10〜300μm程のほぼ円形状、深さが0.6〜50μmの凹レンズあるいは凸レンズなどの微小単位レンズであるため、切削工具が進退するタイミングにばらつきが発生すると、被加工物の表面に高精度な微細表面形状を加工できない。
【0007】
本発明の目的は、このような課題を解消し、被加工物の表面に高精度な微細形状を加工することができる微細形状切削加工装置および微細形状切削加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の微細加工切削装置は、被加工物を載置したテーブルおよび切削工具と、前記テーブルおよび前記切削工具を互いに直交するX軸およびY軸方向へ相対移動させるX軸移動機構およびY軸移動機構と、前記切削工具を前記X軸およびY軸方向に対して直交するZ軸方向へ進退させる切込軸を有するZ軸移動機構と、前記切込軸に設けられ前記Z軸方向への前記切削工具の切込量を高速で変化させる往復動ステージとを備えた微細形状切削加工装置において、前記各移動機構の駆動を制御する駆動プログラムを記憶し、この駆動プログラムに従って前記各移動機構の駆動を制御するともに、前記駆動プログラム開始時にタイマーカウント開始指令を出力する制御手段と、前記X軸移動機構およびY軸移動機構の少なくとも一方の相対移動速度情報と前記被加工物の加工開始位置情報とから、前記タイマーカウント開始指令が出力されてから前記切削工具が前記被加工物の加工開始位置に到達するまでの到達時間を演算する到達時間演算手段と、前記制御手段からタイマーカウント開始指令が出力されてからの経過時間を計測し、この経過時間が前記到達時間演算手段で演算された到達時間に一致したか否か判定し、両者が一致したときにトリガー信号を出力する経過時間判定手段と、前記経過時間判定手段からのトリガー信号を受けて、予め設定した切込量で前記切削工具が進退するように前記往復動ステージを駆動させる往復動ステージ駆動手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、制御手段によって駆動プログラムが開始されると、駆動プログラムに従って、X軸移動機構、Y軸移動機構およびZ軸移動機構の駆動が制御されるとともに、駆動プログラム開始時にタイマーカウント開始指令が出力される。
すると、経過時間判定手段において、制御手段からタイマーカウント開始指令が出力されてからの経過時間が計測され、この経過時間が到達時間演算手段で演算された到達時間に一致したか否か判定される。経過時間判定手段で計測された経過時間と到達時間演算手段で演算された到達時間とが一致すると、トリガー信号が出力される。
往復動ステージ駆動手段は、経過時間判定手段からのトリガー信号を受けて、予め設定した切込量で切削工具が進退するように、往復動ステージを駆動させる。これにより、切削工具が予め設定した切込量で進退されるため、被加工物の表面に微細形状が加工される。
【0010】
本発明では、駆動プログラム開始時にタイマーカウント開始指令が出力されてからの経過時間を計測し、この経過時間が予め到達時間演算手段で演算された到達時間に一致したときに出されるトリガー信号をトリガーとして、往復動ステージが駆動されるから、被加工物の表面に高精度な微細形状を加工することができる
つまり、従来のように、位置情報を位置検出器で検出し、この位置検出器からのパルス信号をカウントし、カウント値が設定した値に一致したか否かを判定し、両者が一致したときのトリガー信号で、工具切込み機構により切削工具の切込み量を高速に変化させるものではないから、被加工物の表面に高精度な微細形状を加工することができる。
【0011】
本発明の微細形状切削加工装置において、前記制御手段は、前記X軸移動機構の駆動を制御して前記テーブルおよび前記切削工具をX軸方向の第1の位置から第2の位置へ相対移動させるフィード動作と、前記Z軸移動機構を制御して前記切削工具を前記第2の位置からZ軸方向でかつ前記テーブルから退避する方向の第3の位置へ移動させる退避動作と、前記X軸移動機構の駆動を制御して前記テーブルおよび前記切削工具を第3の位置からX軸方向でかつ前記フィード動作とは逆方向の第4の位置へ相対移動させるリターン動作と、前記Z軸移動機構を制御して前記切削工具を前記第4の位置から前記第1の位置へ移動させる接近動作とを実行させ、前記フィード動作において、前記往復動ステージが駆動されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、テーブルおよび切削工具とが、第1の位置から第2の位置へフィード動作され、次に、第2の位置から第3の位置へ退避動作され、次に、第3の位置から第4の位置へリターン動作され、最後に、第4の位置から第1の位置へ接近動作する矩形状の軌跡で相対移動される。この相対移動の第1の位置から第2の位置へのフィード動作において、往復動ステージの駆動が制御され、切削工具が予め設定した切込量で被加工物の表面に対して進退され、その結果、被加工物の表面に高精度な微細形状が加工されるから、移動機構の制御も比較的簡単に行える。
【0013】
本発明の微細形状切削加工装置において、前記往復動ステージは、複数の圧電素子を積層した圧電素子積層体によって構成されていることが好ましい。
この構成によれば、往復動ステージに、複数の圧電素子を積層した圧電素子積層体を用いたので、切削工具の切込量を高速で制御することができる。従って、被加工物の表面に微細な形状を高精度にかつ高い仕上げ精度に加工できる。
【0014】
本発明の微細形状切削加工方法は、被加工物を載置したテーブルおよび切削工具と、前記テーブルおよび前記切削工具を互いに直交するX軸およびY軸方向へ相対移動させるX軸移動機構およびY軸移動機構と、前記切削工具を前記X軸およびY軸方向に対して直交するZ軸方向へ進退させる切込軸を有するZ軸移動機構と、前記切込軸に設けられ前記Z軸方向への前記切削工具の切込量を高速で変化させる往復動ステージとを備えた微細形状切削加工装置を用いて、前記被加工物の表面に微細形状を切削加工する微細形状切削加工方法であって、前記各移動機構の駆動を制御する駆動プログラムに従って前記各移動機構の駆動を制御するともに、前記駆動プログラム開始時にタイマーカウント開始指令を出力するステップと、前記X軸移動機構およびY軸移動機構の少なくとも一方の相対移動速度情報と前記被加工物の加工開始位置情報とから、前記タイマーカウント開始指令が出力されてから前記切削工具が前記被加工物の加工開始位置に到達するまでの到達時間を演算する到達時間演算ステップと、前記タイマーカウント開始指令が出力されてからの経過時間を計測し、この経過時間が前記到達時間演算ステップで演算された到達時間に一致したか否かを判定し、両者が一致したときにトリガー信号を出力する経過時間判定ステップと、前記トリガー信号が出力されたとき、予め設定した切込量で前記切削工具が進退するように前記往復動ステージを駆動させる往復動ステージ駆動ステップとを備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、上述した微細形状切削加工装置で述べた効果と同様な効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<図1の説明>
図1は、本発明の微細形状切削加工装置の実施形態を示す正面図である。同微細形状切削加工装置は、ベース1と、このベース1の上面にY軸方向(図1の紙面に対して直交する方向)へ移動可能に設けられ上面に被加工物としてのワークWを載置したテーブル2と、ベース1の両側に立設されたコラム3と、このコラム3の上端間に掛け渡されたクロスレール4と、このクロスレール4に沿ってX軸方向へ移動可能に設けられたスライダ5と、このスライダ5にZ軸方向へ移動可能に設けられた切込軸6と、この切込軸6に往復動ステージ7を介して取り付けられた切削工具8とを備える。
【0017】
ベース1とテーブル2との間には、テーブル2をY軸方向へ移動させるY軸駆動機構11が設けられている。クロスレール4とスライダ5との間には、スライダ5をX軸方向へ移動させるX軸駆動機構12が設けられている。スライダ5と切込軸6との間には、切込軸6を含みこの切込軸6をZ軸方向へ移動させるZ軸駆動機構13が設けられている。つまり、ワークWを載置したテーブル2および切削工具8を互いに直交するX軸およびY軸方向へ相対移動させるX軸移動機構12およびY軸移動機構11と、切削工具8をX軸およびY軸方向に対して直交するZ軸方向へ進退させるZ軸移動機構13とを備えている。なお、これらの駆動機構11,12,13は、ボールねじ送り機構などによって構成されているが、これに限られない。
【0018】
往復動ステージ7は、切込軸6と切削工具8との間に設けられ、切削工具8の切込量、つまり、Z軸方向へ進退量を高速で変化させることができるものあればいずれでもよい。例えば、複数の圧電素子を積層した圧電素子積層体によって構成することができる。このほか、リニアモータやボイスコイルなどを用いて構成することもできる。
【0019】
<図2の説明>
図2は、微細形状切削加工装置の制御システムを示している。同システムには、X軸駆動機構12、Y軸駆動機構11、Z軸駆動機構13などを制御する制御手段としてのNC装置21と、到達時間演算手段22と、経過時間判定手段23と、往復動ステージ駆動手段24とを備える。
【0020】
NC装置21は、X軸駆動機構12、Y軸駆動機構11、Z軸駆動機構13の駆動を制御する駆動プログラムを記憶し、この駆動プログラムに従ってX軸駆動機構12、Y軸駆動機構11、Z軸駆動機構13の駆動を制御するともに、この駆動プログラムに基づいて駆動プログラム開始時にタイマーカウント開始指令(例えば、M80コード)を出力する。
【0021】
到達時間演算手段22は、予めX軸移動機構12およびY軸移動機構11の少なくとも一方の相対移動速度情報(送り速度情報および加速度情報)と、ワークWの加工形状つまり加工開始位置情報とから、タイマーカウント開始指令が出力されてから切削工具8がワークWの加工開始位置に到達するまでの到達時間T1を演算する。
【0022】
経過時間判定手段23は、カウンタを有し、そのカウンタでNC装置21からタイマーカウント開始指令が出力されてからの経過時間T2を計測する。そして、この経過時間T2が到達時間演算手段22で演算された到達時間T1に一致したか否か判定し、両者が一致したときにトリガー信号を出力する。
【0023】
往復動ステージ駆動手段24は、経過時間判定手段23からのトリガー信号を受けて、予め設定した切込量で切削工具8が進退するように往復動ステージ7を駆動させる。具体的には、ワークWの表面加工形状を加工するための往復動ステージ7の駆動データを記憶し、経過時間判定手段23からのトリガー信号を受けたとき、記憶した駆動データをアナログ電圧に変換して往復動ステージ7に与える。
【0024】
<図3の説明>
図3は、NC装置21によって制御される切削工具8とワークWとの相対移動軌跡を示している。
NC装置21によって駆動プログラムが開始されると、この駆動プログラムに従って、X軸移動機構12、Y軸移動機構11およびZ軸移動機構13の駆動が制御されるとともに、駆動プログラム開始時にタイマーカウント開始指令が出力される。
【0025】
まず、X軸移動機構12の駆動制御により、切削工具8がX軸方向の第1の位置P1から第2の位置P2へ相対移動される(フィード動作)。次に、Z軸移動機構13の駆動制御により、切削工具8が第2の位置P2からZ軸方向でかつテーブル2から退避する方向の第3の位置P3へ移動される(退避動作)。次に、X軸移動機構12の駆動制御により、切削工具8が第3の位置P3からX軸方向でかつフィード動作とは逆方向の第4の位置P4へ移動される(リターン動作)。最後に、Z軸移動機構13の駆動制御により、切削工具8が第4の位置P4から第1の位置P1へ移動される(接近動作)。つまり、切削工具8がワークWに対して、トラバース運動を行う。
また、この駆動プログラム開始時に、つまり、フィード動作開始時において、NC装置21からはタイマーカウント開始指令が出力される。
【0026】
<図4および図5の説明>
図4および図5は、NC装置21によって駆動プログラムが開始されてから、切削工具8がワークWに対して切削加工を行う過程を示している。
まず、NC装置21による駆動プログラムの開始前に、到達時間演算手段22において、X軸移動機構12の相対移動速度情報とワークWの加工開始位置情報などから、NC装置21からタイマーカウント開始指令が出力されてから切削工具8がワークWの加工開始位置に到達するまでの到達時間T1が演算される。つまり、図4に示すように、NC装置21からタイマーカウント開始指令が出力されたときの切削工具8の位置からワークWの加工開始位置までのX軸方向の距離、送り速度、加速度情報などを基に、NC装置21からタイマーカウント開始指令が出力されてから、切削工具8がワークWの加工開始位置に到達するまでの到達時間T1が演算される。
【0027】
NC装置21によって駆動プログラムが開始されると、到達時間判定手段23において、NC装置21からタイマーカウント開始指令が出力されてから切削工具8がワークWの加工開始位置に到達するまでの経過時間T2が計測され、この経過時間T2が到達時間演算手段22で演算された到達時間T1に一致したか否か判定される。到達時間判定手段23で計測された経過時間T2と到達時間演算手段22で演算された到達時間T1とが一致すると、トリガー信号が出力される。
【0028】
往復動ステージ駆動手段24は、経過時間判定手段23からのトリガー信号を受けて、予め設定した切込量で切削工具8が進退するように、往復動ステージ7を駆動させる。例えば、図5に示すように、一定周期毎に、切削工具8の切込量が次第に大きくなったのち小さくなり、こののち一定に維持されるように制御される。これにより、ワークWの表面に深さhの凹部31が一定ピッチ間隔で加工される。つまり、ワークWの表面に微細な凹凸形状が加工される。
【0029】
このようにして、ワークWの表面に、X軸方向に沿って微細な凹凸形状を加工したのち、Y軸駆動機構11を一定ピッチ移動させて位置決めし、この位置において、上記の動作を繰り返せば、ワークWの表面全面にわたって微細な凹凸形状を加工することができる。
【0030】
<実施形態の効果>
本実施形態では、駆動プログラム開始時にタイマーカウント開始指令が出力されてからの経過時間T2を計測し、この経過時間T2が予め到達時間演算手段22で演算された到達時間T1に一致したときに出力されるトリガー信号をトリガーとして、往復動ステージ7が駆動されるから、ワークWの表面に高精度な微細形状を加工することができる。
つまり、従来のように、位置情報を位置検出器で検出し、この位置検出器からのパルス信号をカウントし、カウント値が設定した値に一致したか否かを判定し、両者が一致したときのトリガー信号で、工具切込み機構により切削工具の切込み量を高速に変化させるものではないから、被加工物の表面に高精度な微細形状を加工することができる。例えば、ワークの表面に微細な球面状凹部を一定ピッチ間隔で配列したマイクロレンズ成形用金型などを加工することができる。
【0031】
また、切削工具8が、第1の位置P1から第2の位置P1へフィード動作され、次に、第2の位置P2から第3の位置P3へ退避動作され、次に、第3の位置P3から第4の位置P4へリターン動作され、最後に、第4の位置P4から第1の位置P1へ接近動作される。この矩形の相対移動動作のうち、第1の位置P1から第2の位置P2へのフィード動作において、往復動ステージ7の駆動が制御され、切削工具8が予め設定した切込量でワークWの表面に対して進退され、その結果、ワークWの表面に高精度な微細形状が加工されるから、移動機構の制御も比較的簡単に行える。
【0032】
また、往復動ステージ7に、複数の圧電素子を積層した圧電素子積層体を用いたので、切削工具8の切込量を高速で制御することができる。従って、ワークWの表面に微細な形状を高精度にかつ高い仕上げ精度に加工できる。
【0033】
<変形例>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
上記実施形態では、テーブル2をY軸方向へ移動可能に構成するとともに、切削工具8をX軸方向へ移動可能に構成したが、これとは逆方向な構成でもよい。つまり、テーブル2をX軸方向へ移動可能に構成するとともに、切削工具8をY軸方向へ移動可能に構成してもよい。あるいは、テーブル2および切削工具8のいずれか一方を、X軸方向およびY軸方向へ移動可能に構成してもよい。
【0034】
上記実施形態では、X軸駆動機構12によって切削工具8をX軸方向へ移動させながら、往復動ステージ7を駆動して切削工具8の切込量を制御するようにしたが、Y軸駆動機構11によって切削工具8をY軸方向へ移動させながら、往復動ステージ7を駆動して切削工具8の切込量を制御するようにしてもよい。
あるいは、X軸駆動機構12およびY軸駆動機構11によって、切削工具8をXおよびY軸方向へ同時に移動させながら、往復動ステージ7を駆動して切削工具8の切込量を制御するようにしてもよい。
【0035】
上記実施形態では、ワークWの表面に凹部31を一定ピッチ間隔で加工する加工方法について説明したが、これに限られない。例えば、ワークWの表面に凹部や溝を不規則に加工する場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、例えば、ワークの表面に微細な球面状凹部を一定ピッチ間隔で配列したマイクロレンズ成形用金型などの加工に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の微細形状切削加工装置の一実施形態を示す正面図。
【図2】同上実施形態の制御システムを示すブロック図。
【図3】同上実施形態において、切削工具の移動軌跡を示す図。
【図4】同上実施形態において、切削工具とワークとの関係を示す図。
【図5】同上実施形態において、切削工具がワークを加工している状態を示す図。
【符号の説明】
【0038】
6…切込軸、
7…往復動ステージ、
8…切削工具、
11…Y軸駆動機構、
12…X軸駆動機構、
13…Z軸駆動機構、
21…NC装置(制御手段)、
22…到達時間演算手段、
23…経過時間判定手段、
24…往復動ステージ駆動手段、
31…凹部、
P1…第1の位置、
P2…第2の位置、
P3…第3の位置、
P4…第4の位置、
T1…到達時間、
T2…経過時間、
W…ワーク(被加工物)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を載置したテーブルおよび切削工具と、前記テーブルおよび前記切削工具を互いに直交するX軸およびY軸方向へ相対移動させるX軸移動機構およびY軸移動機構と、前記切削工具を前記X軸およびY軸方向に対して直交するZ軸方向へ進退させる切込軸を有するZ軸移動機構と、前記切込軸に設けられ前記Z軸方向への前記切削工具の切込量を高速で変化させる往復動ステージとを備えた微細形状切削加工装置において、
前記各移動機構の駆動を制御する駆動プログラムを記憶し、この駆動プログラムに従って前記各移動機構の駆動を制御するともに、前記駆動プログラム開始時にタイマーカウント開始指令を出力する制御手段と、
前記X軸移動機構およびY軸移動機構の少なくとも一方の相対移動速度情報と前記被加工物の加工開始位置情報とから、前記タイマーカウント開始指令が出力されてから前記切削工具が前記被加工物の加工開始位置に到達するまでの到達時間を演算する到達時間演算手段と、
前記制御手段からタイマーカウント開始指令が出力されてからの経過時間を計測し、この経過時間が前記到達時間演算手段で演算された到達時間に一致したか否か判定し、両者が一致したときにトリガー信号を出力する経過時間判定手段と、
前記経過時間判定手段からのトリガー信号を受けて、予め設定した切込量で前記切削工具が進退するように前記往復動ステージを駆動させる往復動ステージ駆動手段とを備えることを特徴とする微細形状切削加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の微細形状切削加工装置において、
前記制御手段は、前記X軸移動機構の駆動を制御して前記テーブルおよび前記切削工具をX軸方向の第1の位置から第2の位置へ相対移動させるフィード動作と、前記Z軸移動機構を制御して前記切削工具を前記第2の位置からZ軸方向でかつ前記テーブルから退避する方向の第3の位置へ移動させる退避動作と、前記X軸移動機構の駆動を制御して前記テーブルおよび前記切削工具を第3の位置からX軸方向でかつ前記フィード動作とは逆方向の第4の位置へ相対移動させるリターン動作と、前記Z軸移動機構を制御して前記切削工具を前記第4の位置から前記第1の位置へ移動させる接近動作とを実行させ、
前記フィード動作において、前記往復動ステージが駆動されることを特徴とする微細形状切削加工装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の微細形状切削加工装置において、
前記往復動ステージは、複数の圧電素子を積層した圧電素子積層体によって構成されていることを特徴とする微細形状切削加工装置。
【請求項4】
被加工物を載置したテーブルおよび切削工具と、前記テーブルおよび前記切削工具を互いに直交するX軸およびY軸方向へ相対移動させるX軸移動機構およびY軸移動機構と、前記切削工具を前記X軸およびY軸方向に対して直交するZ軸方向へ進退させる切込軸を有するZ軸移動機構と、前記切込軸に設けられ前記Z軸方向への前記切削工具の切込量を高速で変化させる往復動ステージとを備えた微細形状切削加工装置を用いて、前記被加工物の表面に微細形状を切削加工する微細形状切削加工方法であって、
前記各移動機構の駆動を制御する駆動プログラムに従って前記各移動機構の駆動を制御するともに、前記駆動プログラム開始時にタイマーカウント開始指令を出力するステップと、
前記X軸移動機構およびY軸移動機構の少なくとも一方の相対移動速度情報と前記被加工物の加工開始位置情報とから、前記タイマーカウント開始指令が出力されてから前記切削工具が前記被加工物の加工開始位置に到達するまでの到達時間を演算する到達時間演算ステップと、
前記タイマーカウント開始指令が出力されてからの経過時間を計測し、この経過時間が前記到達時間演算ステップで演算された到達時間に一致したか否かを判定し、両者が一致したときにトリガー信号を出力する経過時間判定ステップと、
前記トリガー信号が出力されたとき、予め設定した切込量で前記切削工具が進退するように前記往復動ステージを駆動させる往復動ステージ駆動ステップとを備えることを特徴とする微細形状切削加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−23043(P2009−23043A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188024(P2007−188024)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】