打ち継ぎ部形成具、地中壁の打ち継ぎ部の施工方法
【課題】地中壁の先打ちパネルを構築する際に接合金物を保持していた打ち継ぎ部形成具を、容易に先打ちパネルから剥離させることができるようにする。
【解決手段】打ち継ぎ部形成具100に、接合金物20の形状に対応した形状を有する、接合金物20の後打ちパネル側の端部を収容可能である収容溝150と、先打ちパネル側3Aへ向かって突出可能なジャッキ140と、を設けておき、ジャッキ140を突出させ、収容溝150から接合金物20を離脱させつつ、打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aから離間させる。
【解決手段】打ち継ぎ部形成具100に、接合金物20の形状に対応した形状を有する、接合金物20の後打ちパネル側の端部を収容可能である収容溝150と、先打ちパネル側3Aへ向かって突出可能なジャッキ140と、を設けておき、ジャッキ140を突出させ、収容溝150から接合金物20を離脱させつつ、打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aから離間させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中壁における先打ちパネルと後打ちパネルとの打継ぎ部の施工方法及びこの方法で用いられる打ち継ぎ部形成具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、先打ちパネルに連続して後打ちパネルを構築することにより地中壁を構築する方法が用いられている。このような先打ちパネルと後打ちパネルの打ち継ぎ面は、一体に構築したコンクリートに比べてせん断力に対する強度が低下する。このため、本願出願人らは、先打ちパネル及び後打ちパネルを互いに接合するための波形鉄板を先打ちパネル及び後打ちパネル夫々に両端が埋設されるように設けることにより、打ち継ぎ部におけるせん断耐力を向上する方法を提案している。
【0003】
また、本願出願人らは、上記のような構成の打ち継ぎ部を構築する方法として、先打ちパネルを構成するコンクリートを打設する際に、先打ちパネルと後打ちパネルとの打ち継ぎ面に当たる位置に、波形状の凹凸を備えた接合金物を取り付け可能な溝が形成された打ち継ぎ部形成具を配置し、接合金物の一端が埋設されるように先打ちパネルを構成するコンクリートを打設し、打設したコンクリートが硬化した後、先打ちパネルより打ち継ぎ部形成具を剥離させ、後打ちパネルを構成するコンクリートを打設する方法を提案している(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2003―41577号公報
【特許文献2】特開2003―342950号公報
【特許文献3】特開2007―113390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記の方法では、例えば、特許文献1の図12に示すような、基底部の両端に先端が折り曲げられて形成された爪部が取り付けられてなる剥離ピースを掘削機等に取り付け、この剥離ピースの爪部を打ち継ぎ部形成具と先打ちパネルとの間に楔を打つようにして差込むことにより、先打ちパネルから打ち継ぎ部形成具を剥離させていた。
【0005】
しかしながら、先打ちパネルから打ち継ぎ部形成具を剥離させる方法では、地中壁の深度が大きい場合には、地中壁の底部まで確実に打ち継ぎ部形成具を剥離させることは困難である。
【0006】
また、地中壁の周囲の地盤が砂礫等からなる場合には、先打ちパネルにあたる部分を掘削する際に周囲の地盤が崩れてしまい、掘削孔の幅が打ち継ぎ部形成具の幅よりも広くなってしまう。このように幅が広くなってしまった掘削孔内に上記の打ち継ぎ部形成具を配置して先打ちパネルのコンクリートを打設すると、打ち継ぎ部形成具の外周に打設したコンクリートが回り込み、打ち継ぎ部形成具がコンクリートに埋もれていまい、剥離ピースの爪部を打ち継ぎ部形成具と先打ちパネルとの間に差し込むことが困難である。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、地中壁の先打ちパネルを構築する際に接合金物を保持していた打ち継ぎ部形成具を、容易に先打ちパネルから剥離させることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の打ち継ぎ部形成具は、地中壁の先打ちパネル及び後打ちパネルにそれらの接合面を通るように埋設される接合金物を、前記先打ちパネルを構築するのに先立って、着脱自在に保持するための打ち継ぎ部形成具であって、前記接合金物を前記先打ちパネル側に突出するように、前記後打ちパネル側の端部を着脱可能にし得るとともに、前記接合金物の形状に対応した形状を有する収容溝と、前記先打ちパネル側へ向かって突出可能な突出機構と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記の打ち継ぎ部形成具において、前記突出機構は、前記打ち継ぎ部形成具の長手方向に間隔を開けて設けられたジャッキであってもよい。
また、前記接合金物は波形鉄板であり、前記収容溝は、前記波形鉄板に対応した波形の形状に形成されていてもよい。
また前記突出機構は、前記先打ちパネルの前記後打ちパネル側の端面に当接した状態から、前記接合金物の前記収容溝に収容される部分の幅以上の距離だけ、前記先打ちパネル側へ向かって突出可能であってもよい。
【0010】
また、本発明の地中壁の打ち継ぎ部の施工方法は、地中壁の先打ちパネル及び後打ちパネルにそれらの接合面を通るように接合金物が埋設された地中壁の打ち継ぎ部の施工方法であって、前記接合金物を前記先打ちパネル側に突出するように、前記後打ちパネル側の端部を着脱可能にし得るとともに、前記接合金物の形状に対応した形状を有する収容溝と、前記先打ちパネル側へ向かって突出可能な突出機構と、を備える打ち継ぎ部形成具の前記収容溝に前記接合金物を着脱自在に保持する第1ステップと、地盤に形成された掘削孔の前記先打ちパネルの前記後打ちパネル側の端部にあたる位置に、前記接合金物が保持された打ち継ぎ部形成具を、前記収容溝が形成された側の面を前記先打ちパネル側に向けて建て込む第2ステップと、前記接合金物の前記収容溝からの突出部分が埋設されるように前記先打ちパネルを構築する第3ステップと、前記突出機構を突出させることで、前記打ち継ぎ部形成具を前記先打ちパネルから離間させる第4ステップと、前記打ち継ぎ部形成具の収容溝から前記接合金物を取り外す第5ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、突出機構を先打ちパネルに向かって突出させることにより、打ち継ぎ部形成具を先打ちパネルを構成するコンクリートから離間させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の地中壁の打ち継ぎ構造及びその施工方法の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の打ち継ぎ部の施工方法により構築された地中連続壁2の打ち継ぎ部10の構成を示す図であり、(A)は、内部の構造を示すべく、一部を除去して示す正面図であり、(B)は、(A)におけるI―I´断面図であり、(C)は、(B)におけるII部の拡大図である。同図に示すように、地中連続壁2は、コンクリート4A,4B内に鉄筋かご5A,5Bが埋設されてなる先打ちパネル3A及び後打ちパネル3Bが連続して構築されることにより構成されている。打ち継ぎ部10は、地中連続壁2の幅方向中央に打ち継ぎ面Fを縦断するように設けられ、先打ちパネル3A及び後打ちパネル3Bに両端が埋設された波形鉄板20を備える。
【0013】
図2は、波形鉄板20を示す鉛直断面図である。同図に示すように、波形鉄板20は、縦方向に台形状の凹凸20Aが連続して形成された鋼板であり、地中連続壁2の深さ方向全長に亘るような長さを有する。先打ちパネル3A及び後打ちパネル3Bを構成するコンクリート4A,4Bは、波形鉄板20の表裏面の凹凸20Aに入り込んだ状態で硬化している。上記のように、波形鉄板20が先打ちパネル3A及び後打ちパネル3Bを構成するコンクリート4A,4Bの打ち継ぎ面Fを跨ぐように埋設されていることにより、打ち継ぎ面Fを通るような水平方向のせん断力が作用しても、波形鉄板20を介して先打ちパネル3A及び後打ちパネル3Bとの間で応力が伝達され、このようなせん断力に抵抗することが可能となる。さらに、地中連続壁2に水平方向にせん断力が作用した場合には、凹凸20Aが台形状に形成されているため、凹凸20Aにおいて支圧効果が生じ、より効率よく先打ちパネル3Aと後打ちパネル3Bとの間でせん断力の伝達が行われるため、打ち継ぎ面Fのせん断耐力が向上される。
【0014】
図3は、本実施形態の地中連続壁2の打ち継ぎ部10の施工に用いられる打ち継ぎ部形成具100を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)におけるI―I´断面図、(C)は(A)におけるII部の拡大図である。打ち継ぎ部形成具100は、地中連続壁2の先打ちパネル3Aを構成するコンクリート4Aを打設する際に、波形鉄板20を、その端部がコンクリート4Aに埋設されるように、先打ちパネル3A側に突出するように保持するためのものである。同図に示すように、打ち継ぎ部形成具100は、地中連続壁2の断面形状に合わせて形成された鋼製の帯状のベース板110と、このベース板110の一方の面(先打ちパネル側の面)の幅方向両側に溶接により取り付けられた一対の第1の条材120及びこれら一対の第1の条材120の間に溶接により取り付けられた第2の条材130とから構成される。
【0015】
第1の条材120は、断面台形状の中空の鋼材からなり、打ち継ぎ部形成具100の中央側の側面には、波形鉄板20に合わせた台形状の凹凸120Aが形成されている。また、第2の条材130は、断面矩形状の中空の鋼材からなり、第1の条材120と対向する側の面には第1の条材120の側面に設けられた凹凸120Aと対応するような凹凸130Aが形成されている。これにより、第1の条材120と第2の条材130との間には、正面視において波形鉄板20の凹凸20Aに対応するような波形状の収容溝150が形成されることとなる。
【0016】
また、第2の条材130には、長手方向に間隔をあけて孔130Bが形成されており、
第2の条材130の内部には、孔130Bよりも少し小さな径の板材140Aが先端に取り付けられた油圧ジャッキ140が設置され、この油圧ジャッキ140に油圧を供給するための配管141が上下方向に延びている。
【0017】
板材140Aの外周及び第2の条材130の孔130Bの内周にはシール材が取り付けられ、常時は、板材140Aが、第2の条材130の孔130Bに隙間なく嵌まり込むことにより、後述する先打ちパネル3Aを構成するコンクリート4Aを打設する際に、のろが第2の条材130内に入り込むことを防止できる。
【0018】
また、ジャッキ140としては、後述するように、打ち継ぎ部形成具100に波形鉄板20を取り付けた状態において、波形鉄板20の収容溝150に嵌め込まれる部分の幅以上、伸長可能であるとともに、水中でも使用可能な油圧ジャッキが用いられている。
【0019】
以下、上記の打ち継ぎ部形成具100を用いた地中連続壁2の打ち継ぎ部の施工方法を説明する。
図4〜図12は、地中連続壁2の施工方法を説明するための図である。
なお、図4において、(A)は地中連続壁2の正面方向の鉛直断面図、(B)は地中連続壁2を縦断する方向の鉛直断面図である。また、図5〜図7、及び図10〜図12において、(A)は地中連続壁2の正面方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。また、図8において、(A)は地中連続壁2の正面方向の鉛直断面図、(B)は地中連続壁2を縦断する方向の鉛直断面図、(C)は(A)におけるI−I´断面図である。また、図9において、(A)は地中連続壁2の正面方向の鉛直断面図、(B)は地中連続壁2を縦断する方向の鉛直断面図、(C)は(B)におけるII部の拡大図である。
【0020】
まず、図4に示すように、先打ちパネル3Aを形成するにあたり、揚重機200により揚重した掘削装置210により先打ちパネル3Aにあたる部分の地盤を掘削し、掘削孔6Aを形成する。
次に、図5に示すように、揚重機200により先打ちパネル3Aに埋設される鉄筋かご5Aを揚重し、掘削孔6A内に鉄筋かご5Aを挿入する。
【0021】
次に、地上において、打ち継ぎ部形成具100に波形鉄板20を収容溝150に取り付ける。図13は、波形鉄板20が取り付けられた状態の打ち継ぎ部形成具100を示す図である。同図に示すように、打ち継ぎ部形成具100に形成された収容溝150に波形鉄板20を嵌め込む。
【0022】
また、波形鉄板20は、その幅方向の一方の端部から略中央付近までが収容溝150に挿入された状態で保持されている。上記のように、収容溝150は波形鉄板20の形状に合わせて形成されているため、波形鉄板20を嵌め込むことにより、打ち継ぎ部形成具100に保持させることが可能となる。
【0023】
そして、図6に示すように、揚重機200を用いて、先打ちパネル3Aの両端部にあたる位置に波形鉄板20を取り付けた打ち継ぎ部形成具100を、波形鉄板20が先打ちパネル3Aの側に突出するように配置する。なお、この際、打ち継ぎ部形成具100を構成する第1及び第2の条材120、130の内部に安定液が入り込むが、上記のようにジャッキ140として水中でも使用可能な油圧ジャッキを用いているため、ジャッキ140に異常が生じることはない。
【0024】
次に、図7に示すように、掘削孔6Aに波形鉄板20の周囲に十分充填されるようにコンクリート4Aを打設する。そして、打設したコンクリート4Aが硬化することにより、波形鉄板20の一端が埋設された状態の先打ちパネル3Aの構築が完了し、打ち継ぎ部形成具100の先打ちパネル3A側の面にコンクリート4Aが固着される。
【0025】
次に、図8に示すように、先打ちパネル3Aの掘削孔6Aを形成した場合と同様にして、揚重機200により掘削装置210を揚重して、後打ちパネル3Bにあたる部分の地盤を掘削し、掘削孔6Bを形成する。
【0026】
次に、図9に示すように、波形鉄板20を打ち継ぎ部形成具100から離脱させながら打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aから剥離し、揚重機200により掘削孔6Bから撤去する。
【0027】
図14は、波形鉄板20を打ち継ぎ部形成具100から離脱させる詳細な工程を示す図である。先打ちパネル3Aの構築が完了した状態では、同図(A)に示すように、先打ちパネル3Aを構成するコンクリート4Aの端面には、波形鉄板20の中央部より先打ちパネル3A側の部分が埋設されるとともに、この端面は打ち継ぎ部形成具100の表面に固着している。波形鉄板20を打ち継ぎ部形成具100から離脱させるには、ジャッキ140の先端の板材140Aにより、先打ちパネル3Aを構成するコンクリート4Aに反力をとりながら、ジャッキ140を伸長させる。これにより、図14(B)に示すように、打ち継ぎ部形成具100は先打ちパネル3Aを構成するコンクリート4Aから離間することとなる。また、上記のように、ジャッキ140は、波形鉄板20の収容溝150に嵌め込まれる部分の幅以上、伸長可能なジャッキが用いられており、打ち継ぎ部形成具100の収容溝150から完全に波形鉄板20を離脱させることができる。なお、打ち継ぎ部形成具100に設けられた全てのジャッキ140を同時に伸長させてもよいし、順次伸長させてもよい。例えば、上方のジャッキ140から下方のジャッキ140へ順次伸長させることでスムーズに波形鉄板20を離脱させることができる。
【0028】
上記のように打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aより剥離すると、先打ちパネル3Aの端面から、後打ちパネル3Bの側に向けて波形鉄板20の他端が突出することとなる。なお、先打ちパネル3Aより剥離された打ち継ぎ部形成具100は、後に連続して地中連続壁2を構築していく場合に、再利用することができる。
【0029】
次に、図10に示すように、後打ちパネル3Bにあたる位置に形成された掘削孔6B内に鉄筋かご5Bを建て込む。
次に、図11に示すように、揚重機200により、後打ちパネル3Bの端部にあたる位置に波形鉄板20を取り付けた打ち継ぎ部形成具100を設置する。そして、後打ちパネル3Bを構成するコンクリート4Bを掘削孔内に打設する。この打設したコンクリート4Bが硬化することにより、図12に示すように、後打ちパネル3Bが完成するとともに、波形鉄板20の他端は後打ちパネル3B内に埋設されることとなり、先打ちパネル3Aと後打ちパネル3Bの打ち継ぎ部構造が形成される。
上記の工程を繰り返し行うことにより、連続してパネルを構築していくことができ、これにより所望の長さの地中連続壁2を構築することができる。
【0030】
本実施形態によれば、打ち継ぎ部形成具100に設けられたジャッキ140を伸長させることにより、打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aを構成するコンクリート4Aから離間させることができる。これにより、地中連続壁2の深度が大きい場合や打ち継ぎ部形成具100の周囲にコンクリートが回りこんでしまった場合でも、容易に打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aから剥離することができる。
【0031】
また、波形鉄板20は縦方向に台形状の凹凸が形成されているため、ジャッキ140を伸縮させることにより打ち継ぎ部形成具100から離間させることができても、その一部が収容溝150に入り込んだ状態では揚重機により地上から引き上げることができない。これに対して、本実施形態によれば、ジャッキ140として、波形鉄板20の収容溝150に嵌め込まれる部分の幅以上、伸長可能であるジャッキを用いており、波形鉄板20を収容溝150から完全に離脱させることができるため、スムーズに打ち継ぎ部形成具100を撤去することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、打ち継ぎ部形成具100内にジャッキ140を設置し、このジャッキ140を伸長させることにより、打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aより剥離させることとしたが、これに限らず、その一部に先打ちパネル3A側に突出可能な機構が設けられた打ち継ぎ部形成具100であれば、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0033】
また、本実施形態では、収容溝150から波形鉄板20が完全に離脱するまでさせるジャッキ140を伸長させることとしたが、これに限らず、例えば、打ち継ぎ部形成具100と先打ちパネル3Aの上端に隙間が生じるまでジャッキ140を伸長させ、この後、前記生じた隙間に、従来技術の欄に記載したような剥離ピースの爪部を差し込み、打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aから剥離するものとしてもよい。このような場合には、ジャッキ140は打ち継ぎ部形成具100の上部のみに設けることとしてもよい。さらに、上方から下方に向かってジャッキ140を伸長させながら、剥離ピースにより、上方から下方に向かって打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aから剥離させることとしてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、波形鉄板20を先打ちパネル3A及び後打ちパネル3Bを構成するコンクリート4A、4Bの打ち継ぎ面Fを跨ぐように埋設する場合について説明したが、これに限らず、通常の鉄板などのせん断力を伝達するための部材を打ち継ぎ面Fを跨ぐように埋設する場合であれば本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態の打ち継ぎ部の施工方法により構築された地中連続壁の打ち継ぎ部の構成を示す図であり、(A)は、内部の構造を示すべく、一部を除去して示す正面図であり、(B)は、(A)におけるI―I´断面図であり、(C)は、(B)におけるII部の拡大図である。
【図2】波形鉄板を示す鉛直断面図である。
【図3】本実施形態の地中連続壁の打ち継ぎ部の施工に用いられる打ち継ぎ部形成具を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)におけるI―I´断面図、(C)は(A)におけるII部の拡大図である。
【図4】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その1)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は地中連続壁を縦断する方向の鉛直断面図である。
【図5】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その2)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図6】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その3)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図7】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その4)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図8】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その5)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は地中連続壁を縦断する方向の鉛直断面図、(C)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図9】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その6)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は地中連続壁を縦断する方向の鉛直断面図、(C)は(B)におけるII部の拡大図である。
【図10】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その7)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図11】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その8)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図12】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その9)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図13】波形鉄板を取り付けた上体の打ち継ぎ部形成具を示す断面図である。
【図14】ジャッキを伸長させて波形鉄板を打ち継ぎ部形成具から離脱させるとともに、打ち継ぎ部形成具を先打ちパネルから剥離する様子を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
2 地中連続壁
3A 先打ちパネル
3B 後打ちパネル
4A、4B コンクリート
5A,5B 鉄筋かご
6A、6B 掘削孔
10 打ち継ぎ部
20 波形鉄板
20A 凹凸
100 打ち継ぎ部形成具
110 ベース板
120 第1の条材
120A、130A 凹凸
130 第2の条材
130B 孔
140 ジャッキ
140A 板材
141 配管
150 収容溝
200 揚重機
210 掘削装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中壁における先打ちパネルと後打ちパネルとの打継ぎ部の施工方法及びこの方法で用いられる打ち継ぎ部形成具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、先打ちパネルに連続して後打ちパネルを構築することにより地中壁を構築する方法が用いられている。このような先打ちパネルと後打ちパネルの打ち継ぎ面は、一体に構築したコンクリートに比べてせん断力に対する強度が低下する。このため、本願出願人らは、先打ちパネル及び後打ちパネルを互いに接合するための波形鉄板を先打ちパネル及び後打ちパネル夫々に両端が埋設されるように設けることにより、打ち継ぎ部におけるせん断耐力を向上する方法を提案している。
【0003】
また、本願出願人らは、上記のような構成の打ち継ぎ部を構築する方法として、先打ちパネルを構成するコンクリートを打設する際に、先打ちパネルと後打ちパネルとの打ち継ぎ面に当たる位置に、波形状の凹凸を備えた接合金物を取り付け可能な溝が形成された打ち継ぎ部形成具を配置し、接合金物の一端が埋設されるように先打ちパネルを構成するコンクリートを打設し、打設したコンクリートが硬化した後、先打ちパネルより打ち継ぎ部形成具を剥離させ、後打ちパネルを構成するコンクリートを打設する方法を提案している(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2003―41577号公報
【特許文献2】特開2003―342950号公報
【特許文献3】特開2007―113390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記の方法では、例えば、特許文献1の図12に示すような、基底部の両端に先端が折り曲げられて形成された爪部が取り付けられてなる剥離ピースを掘削機等に取り付け、この剥離ピースの爪部を打ち継ぎ部形成具と先打ちパネルとの間に楔を打つようにして差込むことにより、先打ちパネルから打ち継ぎ部形成具を剥離させていた。
【0005】
しかしながら、先打ちパネルから打ち継ぎ部形成具を剥離させる方法では、地中壁の深度が大きい場合には、地中壁の底部まで確実に打ち継ぎ部形成具を剥離させることは困難である。
【0006】
また、地中壁の周囲の地盤が砂礫等からなる場合には、先打ちパネルにあたる部分を掘削する際に周囲の地盤が崩れてしまい、掘削孔の幅が打ち継ぎ部形成具の幅よりも広くなってしまう。このように幅が広くなってしまった掘削孔内に上記の打ち継ぎ部形成具を配置して先打ちパネルのコンクリートを打設すると、打ち継ぎ部形成具の外周に打設したコンクリートが回り込み、打ち継ぎ部形成具がコンクリートに埋もれていまい、剥離ピースの爪部を打ち継ぎ部形成具と先打ちパネルとの間に差し込むことが困難である。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、地中壁の先打ちパネルを構築する際に接合金物を保持していた打ち継ぎ部形成具を、容易に先打ちパネルから剥離させることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の打ち継ぎ部形成具は、地中壁の先打ちパネル及び後打ちパネルにそれらの接合面を通るように埋設される接合金物を、前記先打ちパネルを構築するのに先立って、着脱自在に保持するための打ち継ぎ部形成具であって、前記接合金物を前記先打ちパネル側に突出するように、前記後打ちパネル側の端部を着脱可能にし得るとともに、前記接合金物の形状に対応した形状を有する収容溝と、前記先打ちパネル側へ向かって突出可能な突出機構と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記の打ち継ぎ部形成具において、前記突出機構は、前記打ち継ぎ部形成具の長手方向に間隔を開けて設けられたジャッキであってもよい。
また、前記接合金物は波形鉄板であり、前記収容溝は、前記波形鉄板に対応した波形の形状に形成されていてもよい。
また前記突出機構は、前記先打ちパネルの前記後打ちパネル側の端面に当接した状態から、前記接合金物の前記収容溝に収容される部分の幅以上の距離だけ、前記先打ちパネル側へ向かって突出可能であってもよい。
【0010】
また、本発明の地中壁の打ち継ぎ部の施工方法は、地中壁の先打ちパネル及び後打ちパネルにそれらの接合面を通るように接合金物が埋設された地中壁の打ち継ぎ部の施工方法であって、前記接合金物を前記先打ちパネル側に突出するように、前記後打ちパネル側の端部を着脱可能にし得るとともに、前記接合金物の形状に対応した形状を有する収容溝と、前記先打ちパネル側へ向かって突出可能な突出機構と、を備える打ち継ぎ部形成具の前記収容溝に前記接合金物を着脱自在に保持する第1ステップと、地盤に形成された掘削孔の前記先打ちパネルの前記後打ちパネル側の端部にあたる位置に、前記接合金物が保持された打ち継ぎ部形成具を、前記収容溝が形成された側の面を前記先打ちパネル側に向けて建て込む第2ステップと、前記接合金物の前記収容溝からの突出部分が埋設されるように前記先打ちパネルを構築する第3ステップと、前記突出機構を突出させることで、前記打ち継ぎ部形成具を前記先打ちパネルから離間させる第4ステップと、前記打ち継ぎ部形成具の収容溝から前記接合金物を取り外す第5ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、突出機構を先打ちパネルに向かって突出させることにより、打ち継ぎ部形成具を先打ちパネルを構成するコンクリートから離間させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の地中壁の打ち継ぎ構造及びその施工方法の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の打ち継ぎ部の施工方法により構築された地中連続壁2の打ち継ぎ部10の構成を示す図であり、(A)は、内部の構造を示すべく、一部を除去して示す正面図であり、(B)は、(A)におけるI―I´断面図であり、(C)は、(B)におけるII部の拡大図である。同図に示すように、地中連続壁2は、コンクリート4A,4B内に鉄筋かご5A,5Bが埋設されてなる先打ちパネル3A及び後打ちパネル3Bが連続して構築されることにより構成されている。打ち継ぎ部10は、地中連続壁2の幅方向中央に打ち継ぎ面Fを縦断するように設けられ、先打ちパネル3A及び後打ちパネル3Bに両端が埋設された波形鉄板20を備える。
【0013】
図2は、波形鉄板20を示す鉛直断面図である。同図に示すように、波形鉄板20は、縦方向に台形状の凹凸20Aが連続して形成された鋼板であり、地中連続壁2の深さ方向全長に亘るような長さを有する。先打ちパネル3A及び後打ちパネル3Bを構成するコンクリート4A,4Bは、波形鉄板20の表裏面の凹凸20Aに入り込んだ状態で硬化している。上記のように、波形鉄板20が先打ちパネル3A及び後打ちパネル3Bを構成するコンクリート4A,4Bの打ち継ぎ面Fを跨ぐように埋設されていることにより、打ち継ぎ面Fを通るような水平方向のせん断力が作用しても、波形鉄板20を介して先打ちパネル3A及び後打ちパネル3Bとの間で応力が伝達され、このようなせん断力に抵抗することが可能となる。さらに、地中連続壁2に水平方向にせん断力が作用した場合には、凹凸20Aが台形状に形成されているため、凹凸20Aにおいて支圧効果が生じ、より効率よく先打ちパネル3Aと後打ちパネル3Bとの間でせん断力の伝達が行われるため、打ち継ぎ面Fのせん断耐力が向上される。
【0014】
図3は、本実施形態の地中連続壁2の打ち継ぎ部10の施工に用いられる打ち継ぎ部形成具100を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)におけるI―I´断面図、(C)は(A)におけるII部の拡大図である。打ち継ぎ部形成具100は、地中連続壁2の先打ちパネル3Aを構成するコンクリート4Aを打設する際に、波形鉄板20を、その端部がコンクリート4Aに埋設されるように、先打ちパネル3A側に突出するように保持するためのものである。同図に示すように、打ち継ぎ部形成具100は、地中連続壁2の断面形状に合わせて形成された鋼製の帯状のベース板110と、このベース板110の一方の面(先打ちパネル側の面)の幅方向両側に溶接により取り付けられた一対の第1の条材120及びこれら一対の第1の条材120の間に溶接により取り付けられた第2の条材130とから構成される。
【0015】
第1の条材120は、断面台形状の中空の鋼材からなり、打ち継ぎ部形成具100の中央側の側面には、波形鉄板20に合わせた台形状の凹凸120Aが形成されている。また、第2の条材130は、断面矩形状の中空の鋼材からなり、第1の条材120と対向する側の面には第1の条材120の側面に設けられた凹凸120Aと対応するような凹凸130Aが形成されている。これにより、第1の条材120と第2の条材130との間には、正面視において波形鉄板20の凹凸20Aに対応するような波形状の収容溝150が形成されることとなる。
【0016】
また、第2の条材130には、長手方向に間隔をあけて孔130Bが形成されており、
第2の条材130の内部には、孔130Bよりも少し小さな径の板材140Aが先端に取り付けられた油圧ジャッキ140が設置され、この油圧ジャッキ140に油圧を供給するための配管141が上下方向に延びている。
【0017】
板材140Aの外周及び第2の条材130の孔130Bの内周にはシール材が取り付けられ、常時は、板材140Aが、第2の条材130の孔130Bに隙間なく嵌まり込むことにより、後述する先打ちパネル3Aを構成するコンクリート4Aを打設する際に、のろが第2の条材130内に入り込むことを防止できる。
【0018】
また、ジャッキ140としては、後述するように、打ち継ぎ部形成具100に波形鉄板20を取り付けた状態において、波形鉄板20の収容溝150に嵌め込まれる部分の幅以上、伸長可能であるとともに、水中でも使用可能な油圧ジャッキが用いられている。
【0019】
以下、上記の打ち継ぎ部形成具100を用いた地中連続壁2の打ち継ぎ部の施工方法を説明する。
図4〜図12は、地中連続壁2の施工方法を説明するための図である。
なお、図4において、(A)は地中連続壁2の正面方向の鉛直断面図、(B)は地中連続壁2を縦断する方向の鉛直断面図である。また、図5〜図7、及び図10〜図12において、(A)は地中連続壁2の正面方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。また、図8において、(A)は地中連続壁2の正面方向の鉛直断面図、(B)は地中連続壁2を縦断する方向の鉛直断面図、(C)は(A)におけるI−I´断面図である。また、図9において、(A)は地中連続壁2の正面方向の鉛直断面図、(B)は地中連続壁2を縦断する方向の鉛直断面図、(C)は(B)におけるII部の拡大図である。
【0020】
まず、図4に示すように、先打ちパネル3Aを形成するにあたり、揚重機200により揚重した掘削装置210により先打ちパネル3Aにあたる部分の地盤を掘削し、掘削孔6Aを形成する。
次に、図5に示すように、揚重機200により先打ちパネル3Aに埋設される鉄筋かご5Aを揚重し、掘削孔6A内に鉄筋かご5Aを挿入する。
【0021】
次に、地上において、打ち継ぎ部形成具100に波形鉄板20を収容溝150に取り付ける。図13は、波形鉄板20が取り付けられた状態の打ち継ぎ部形成具100を示す図である。同図に示すように、打ち継ぎ部形成具100に形成された収容溝150に波形鉄板20を嵌め込む。
【0022】
また、波形鉄板20は、その幅方向の一方の端部から略中央付近までが収容溝150に挿入された状態で保持されている。上記のように、収容溝150は波形鉄板20の形状に合わせて形成されているため、波形鉄板20を嵌め込むことにより、打ち継ぎ部形成具100に保持させることが可能となる。
【0023】
そして、図6に示すように、揚重機200を用いて、先打ちパネル3Aの両端部にあたる位置に波形鉄板20を取り付けた打ち継ぎ部形成具100を、波形鉄板20が先打ちパネル3Aの側に突出するように配置する。なお、この際、打ち継ぎ部形成具100を構成する第1及び第2の条材120、130の内部に安定液が入り込むが、上記のようにジャッキ140として水中でも使用可能な油圧ジャッキを用いているため、ジャッキ140に異常が生じることはない。
【0024】
次に、図7に示すように、掘削孔6Aに波形鉄板20の周囲に十分充填されるようにコンクリート4Aを打設する。そして、打設したコンクリート4Aが硬化することにより、波形鉄板20の一端が埋設された状態の先打ちパネル3Aの構築が完了し、打ち継ぎ部形成具100の先打ちパネル3A側の面にコンクリート4Aが固着される。
【0025】
次に、図8に示すように、先打ちパネル3Aの掘削孔6Aを形成した場合と同様にして、揚重機200により掘削装置210を揚重して、後打ちパネル3Bにあたる部分の地盤を掘削し、掘削孔6Bを形成する。
【0026】
次に、図9に示すように、波形鉄板20を打ち継ぎ部形成具100から離脱させながら打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aから剥離し、揚重機200により掘削孔6Bから撤去する。
【0027】
図14は、波形鉄板20を打ち継ぎ部形成具100から離脱させる詳細な工程を示す図である。先打ちパネル3Aの構築が完了した状態では、同図(A)に示すように、先打ちパネル3Aを構成するコンクリート4Aの端面には、波形鉄板20の中央部より先打ちパネル3A側の部分が埋設されるとともに、この端面は打ち継ぎ部形成具100の表面に固着している。波形鉄板20を打ち継ぎ部形成具100から離脱させるには、ジャッキ140の先端の板材140Aにより、先打ちパネル3Aを構成するコンクリート4Aに反力をとりながら、ジャッキ140を伸長させる。これにより、図14(B)に示すように、打ち継ぎ部形成具100は先打ちパネル3Aを構成するコンクリート4Aから離間することとなる。また、上記のように、ジャッキ140は、波形鉄板20の収容溝150に嵌め込まれる部分の幅以上、伸長可能なジャッキが用いられており、打ち継ぎ部形成具100の収容溝150から完全に波形鉄板20を離脱させることができる。なお、打ち継ぎ部形成具100に設けられた全てのジャッキ140を同時に伸長させてもよいし、順次伸長させてもよい。例えば、上方のジャッキ140から下方のジャッキ140へ順次伸長させることでスムーズに波形鉄板20を離脱させることができる。
【0028】
上記のように打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aより剥離すると、先打ちパネル3Aの端面から、後打ちパネル3Bの側に向けて波形鉄板20の他端が突出することとなる。なお、先打ちパネル3Aより剥離された打ち継ぎ部形成具100は、後に連続して地中連続壁2を構築していく場合に、再利用することができる。
【0029】
次に、図10に示すように、後打ちパネル3Bにあたる位置に形成された掘削孔6B内に鉄筋かご5Bを建て込む。
次に、図11に示すように、揚重機200により、後打ちパネル3Bの端部にあたる位置に波形鉄板20を取り付けた打ち継ぎ部形成具100を設置する。そして、後打ちパネル3Bを構成するコンクリート4Bを掘削孔内に打設する。この打設したコンクリート4Bが硬化することにより、図12に示すように、後打ちパネル3Bが完成するとともに、波形鉄板20の他端は後打ちパネル3B内に埋設されることとなり、先打ちパネル3Aと後打ちパネル3Bの打ち継ぎ部構造が形成される。
上記の工程を繰り返し行うことにより、連続してパネルを構築していくことができ、これにより所望の長さの地中連続壁2を構築することができる。
【0030】
本実施形態によれば、打ち継ぎ部形成具100に設けられたジャッキ140を伸長させることにより、打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aを構成するコンクリート4Aから離間させることができる。これにより、地中連続壁2の深度が大きい場合や打ち継ぎ部形成具100の周囲にコンクリートが回りこんでしまった場合でも、容易に打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aから剥離することができる。
【0031】
また、波形鉄板20は縦方向に台形状の凹凸が形成されているため、ジャッキ140を伸縮させることにより打ち継ぎ部形成具100から離間させることができても、その一部が収容溝150に入り込んだ状態では揚重機により地上から引き上げることができない。これに対して、本実施形態によれば、ジャッキ140として、波形鉄板20の収容溝150に嵌め込まれる部分の幅以上、伸長可能であるジャッキを用いており、波形鉄板20を収容溝150から完全に離脱させることができるため、スムーズに打ち継ぎ部形成具100を撤去することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、打ち継ぎ部形成具100内にジャッキ140を設置し、このジャッキ140を伸長させることにより、打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aより剥離させることとしたが、これに限らず、その一部に先打ちパネル3A側に突出可能な機構が設けられた打ち継ぎ部形成具100であれば、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0033】
また、本実施形態では、収容溝150から波形鉄板20が完全に離脱するまでさせるジャッキ140を伸長させることとしたが、これに限らず、例えば、打ち継ぎ部形成具100と先打ちパネル3Aの上端に隙間が生じるまでジャッキ140を伸長させ、この後、前記生じた隙間に、従来技術の欄に記載したような剥離ピースの爪部を差し込み、打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aから剥離するものとしてもよい。このような場合には、ジャッキ140は打ち継ぎ部形成具100の上部のみに設けることとしてもよい。さらに、上方から下方に向かってジャッキ140を伸長させながら、剥離ピースにより、上方から下方に向かって打ち継ぎ部形成具100を先打ちパネル3Aから剥離させることとしてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、波形鉄板20を先打ちパネル3A及び後打ちパネル3Bを構成するコンクリート4A、4Bの打ち継ぎ面Fを跨ぐように埋設する場合について説明したが、これに限らず、通常の鉄板などのせん断力を伝達するための部材を打ち継ぎ面Fを跨ぐように埋設する場合であれば本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態の打ち継ぎ部の施工方法により構築された地中連続壁の打ち継ぎ部の構成を示す図であり、(A)は、内部の構造を示すべく、一部を除去して示す正面図であり、(B)は、(A)におけるI―I´断面図であり、(C)は、(B)におけるII部の拡大図である。
【図2】波形鉄板を示す鉛直断面図である。
【図3】本実施形態の地中連続壁の打ち継ぎ部の施工に用いられる打ち継ぎ部形成具を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)におけるI―I´断面図、(C)は(A)におけるII部の拡大図である。
【図4】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その1)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は地中連続壁を縦断する方向の鉛直断面図である。
【図5】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その2)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図6】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その3)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図7】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その4)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図8】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その5)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は地中連続壁を縦断する方向の鉛直断面図、(C)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図9】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その6)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は地中連続壁を縦断する方向の鉛直断面図、(C)は(B)におけるII部の拡大図である。
【図10】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その7)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図11】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その8)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図12】地中連続壁の施工方法を説明するための図(その9)であり、(A)は地中連続壁の正面方向の鉛直断面図、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図13】波形鉄板を取り付けた上体の打ち継ぎ部形成具を示す断面図である。
【図14】ジャッキを伸長させて波形鉄板を打ち継ぎ部形成具から離脱させるとともに、打ち継ぎ部形成具を先打ちパネルから剥離する様子を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
2 地中連続壁
3A 先打ちパネル
3B 後打ちパネル
4A、4B コンクリート
5A,5B 鉄筋かご
6A、6B 掘削孔
10 打ち継ぎ部
20 波形鉄板
20A 凹凸
100 打ち継ぎ部形成具
110 ベース板
120 第1の条材
120A、130A 凹凸
130 第2の条材
130B 孔
140 ジャッキ
140A 板材
141 配管
150 収容溝
200 揚重機
210 掘削装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中壁の先打ちパネル及び後打ちパネルにそれらの接合面を通るように埋設される接合金物を、前記先打ちパネルを構築するのに先立って、着脱自在に保持するための打ち継ぎ部形成具であって、
前記接合金物を前記先打ちパネル側に突出するように、前記後打ちパネル側の端部を着脱可能に保持し得るとともに、前記接合金物の形状に対応した形状を有する収容溝と、
前記先打ちパネル側へ向かって突出可能な突出機構と、を備えることを特徴とする打ち継ぎ部形成具。
【請求項2】
前記突出機構は、前記打ち継ぎ部形成具の長手方向に間隔を開けて設けられたジャッキからなることを特徴とする請求項1記載の打ち継ぎ部形成具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の打ち継ぎ部形成具であって、
前記接合金物は波形鉄板であり、
前記収容溝は、前記波形鉄板に対応した波形の形状に形成されていることを特徴とする打ち継ぎ部形成具。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項記載の打ち継ぎ部形成具であって、
前記突出機構は、前記先打ちパネルの前記後打ちパネル側の端面に当接した状態から、前記接合金物の前記収容溝に収容される部分の幅以上の距離だけ、前記先打ちパネル側へ向かって突出可能であることを特徴とする打ち継ぎ部形成具。
【請求項5】
地中壁の先打ちパネル及び後打ちパネルにそれらの接合面を通るように接合金物が埋設された地中壁の打ち継ぎ部の施工方法であって、
前記接合金物を前記先打ちパネル側に突出するように、前記後打ちパネル側の端部を着脱可能に保持し得るとともに、前記接合金物の形状に対応した形状を有する収容溝と、前記先打ちパネル側へ向かって突出可能な突出機構と、を備える打ち継ぎ部形成具の前記収容溝に前記接合金物を着脱自在に保持する第1ステップと、
地盤に形成された掘削孔の前記先打ちパネルの前記後打ちパネル側の端部にあたる位置に、前記接合金物が保持された打ち継ぎ部形成具を、前記収容溝が形成された側の面を前記先打ちパネル側に向けて建て込む第2ステップと、
前記接合金物の前記収容溝からの突出部分が埋設されるように前記先打ちパネルを構築する第3ステップと、
前記突出機構を突出させることで、前記打ち継ぎ部形成具を前記先打ちパネルから離間させる第4ステップと、
前記打ち継ぎ部形成具の収容溝から前記接合金物を取り外す第5ステップと、を備えることを特徴とする地中壁の打ち継ぎ部の施工方法。
【請求項1】
地中壁の先打ちパネル及び後打ちパネルにそれらの接合面を通るように埋設される接合金物を、前記先打ちパネルを構築するのに先立って、着脱自在に保持するための打ち継ぎ部形成具であって、
前記接合金物を前記先打ちパネル側に突出するように、前記後打ちパネル側の端部を着脱可能に保持し得るとともに、前記接合金物の形状に対応した形状を有する収容溝と、
前記先打ちパネル側へ向かって突出可能な突出機構と、を備えることを特徴とする打ち継ぎ部形成具。
【請求項2】
前記突出機構は、前記打ち継ぎ部形成具の長手方向に間隔を開けて設けられたジャッキからなることを特徴とする請求項1記載の打ち継ぎ部形成具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の打ち継ぎ部形成具であって、
前記接合金物は波形鉄板であり、
前記収容溝は、前記波形鉄板に対応した波形の形状に形成されていることを特徴とする打ち継ぎ部形成具。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項記載の打ち継ぎ部形成具であって、
前記突出機構は、前記先打ちパネルの前記後打ちパネル側の端面に当接した状態から、前記接合金物の前記収容溝に収容される部分の幅以上の距離だけ、前記先打ちパネル側へ向かって突出可能であることを特徴とする打ち継ぎ部形成具。
【請求項5】
地中壁の先打ちパネル及び後打ちパネルにそれらの接合面を通るように接合金物が埋設された地中壁の打ち継ぎ部の施工方法であって、
前記接合金物を前記先打ちパネル側に突出するように、前記後打ちパネル側の端部を着脱可能に保持し得るとともに、前記接合金物の形状に対応した形状を有する収容溝と、前記先打ちパネル側へ向かって突出可能な突出機構と、を備える打ち継ぎ部形成具の前記収容溝に前記接合金物を着脱自在に保持する第1ステップと、
地盤に形成された掘削孔の前記先打ちパネルの前記後打ちパネル側の端部にあたる位置に、前記接合金物が保持された打ち継ぎ部形成具を、前記収容溝が形成された側の面を前記先打ちパネル側に向けて建て込む第2ステップと、
前記接合金物の前記収容溝からの突出部分が埋設されるように前記先打ちパネルを構築する第3ステップと、
前記突出機構を突出させることで、前記打ち継ぎ部形成具を前記先打ちパネルから離間させる第4ステップと、
前記打ち継ぎ部形成具の収容溝から前記接合金物を取り外す第5ステップと、を備えることを特徴とする地中壁の打ち継ぎ部の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−293222(P2009−293222A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146161(P2008−146161)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(504365799)株式会社特殊構工法計画研究所 (26)
【出願人】(507234357)立正工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(504365799)株式会社特殊構工法計画研究所 (26)
【出願人】(507234357)立正工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
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