説明

把持装置、および、この把持装置の形成方法

【課題】円柱状の剛性コアと、その周面に取り付けられて前記剛性コアとの間に気密空間を形成する環状スリーブとを具え、密空間に内圧を加えることにより拡径するよう構成された把持装置の製造において、加締め機を不要なものとすることができ、しかも、工程を簡素化できる把持装置およびその形成方法を提供する。
【解決手段】環状スリーブ2の上側端2bおよび下側端2aは、それぞれの、半径方向外側に配置された剛性リング5、7と、半径方向内側に配置されたゴムリング4、6とによって厚さ方向に締め付けられて固定され、ゴムリング4、6は軸線方向に圧縮された状態で剛性コア1に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円柱状の剛性コアと、その周面に取り付けられて前記剛性コアとの間に気密空間を形成する環状スリーブとを具え、前記環状スリーブは、剛性コアの軸線を通る面内に延在するゴム被覆コードを周方向に配列して形成されるとともに、剛性コアの軸線を上下に向けた姿勢における上側端および下側端をともに端面が上側に向く姿勢で取り付けられ、前記気密空間に内圧を加えることにより拡径するよう構成された把持装置およびその形成方法に関し、特に、かしめ工程を経ることなく前記環状スリーブの上側端および下側端を剛性コアに取り付けることができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上記のように構成された把持装置が、例えば、壊れ易い筒状の部品を内側から把持するのに用いられている。図1に断面図で示すように、このような把持装置90は、円柱状の剛性コア91と、その周面に取り付けられて前記剛性コア91との間に気密空間95を形成する環状スリーブ92とを具え、環状スリーブ92は、剛性コア91の軸線を通る面内に延在するゴム被覆コードを周方向に配列して形成されるとともに、剛性コア91の軸線を上下に向けた姿勢における上側端92aおよび下側端92bをともに端面99a、99bが上側に向く姿勢で取り付けられ、前記気密空間95に内圧を加えることにより拡径するようになっている。
【0003】
このような把持装置90において、環状スリーブ92の上側端92aおよび下側端92bは、それらの半径方向外側に仮止めした金属リング97a、97bを加締めることによって気密空間95に高い内圧が加わっても剛性コア91から外れないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−26570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、環状スリーブ92が剛性コア91から抜けないよう、環状スリーブ92の上側端92aおよび下側端92bを加締める方法は、大掛かりで高価な加締め装置が必要なことに加えて、剛性コア91に環状スリーブ92aの下側端92bを加締めて固定し加締め装置から剛性コア91を取り出し環状スリーブ92を半径方向外側に折り返して金属リング97aを嵌めたあと、再び剛性コア91を加締め装置にセットして上側端93を加締めなければならず、工程が複雑で生産性が低いという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、加締め機を不要なものとすることができ、しかも、工程を簡素化できる把持装置およびその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>は、円柱状の剛性コアと、その周面に取り付けられて前記剛性コアとの間に気密空間を形成する環状スリーブとを具え、前記環状スリーブは、剛性コアの軸線を通る面内に延在するゴム被覆コードを周方向に配列して形成されるとともに、剛性コアの軸線を上下に向けた姿勢における上側端および下側端をともに端面が上側に向く姿勢で取り付けられ、前記気密空間に内圧を加えることにより拡径するよう構成された把持装置において、
前記環状スリーブの上側端および下側端は、それぞれの、半径方向外側に配置された剛性リングと、半径方向内側に配置されたゴムリングとによって厚さ方向に締め付けられて固定され、前記ゴムリングは軸線方向に圧縮された状態で前記剛性コアに固定されていることを特徴とする把持装置である。
【0008】
<2>は、<1>において、前記剛性コアは、本体部材と、前記上側端および下側端のそれぞれに対応して設けられた付属部材とで構成され、これらの付属部材は、それぞれに対応する前記ゴムリングを本体部材との間で軸方向に圧縮した状態で固定されていることを特徴とする把持装置である。
【0009】
<3>は、<2>において、前記付属部材は、本体部材にネジ止めされ、ネジを締めることにより軸方向に移動して本体部材に接近し前記ゴムリングを軸方向に圧縮するよう構成されていることを特徴とする把持装置である。
【0010】
<4>は、<1>〜<3>のいずれかにおいて、前記下側端に対応する剛性リングは、前記剛性コアと一体的に形成されていることを特徴とする把持装置である。
【0011】
<5>は、<1>〜<4>のいずれかの把持装置を形成する方法において、
前記環状スリーブの下側端を、ゴムリングと剛性リングとの間に挟んで仮止めする工程と、
前記環状スリーブを半径方向外側に折り返す工程と、
前記環状スリーブの上側端を、ゴムリングと剛性リングとの間に挟んで仮止めする工程と、
前記付属部材を本体部材に対して軸方向に移動させてゴムリングを軸方向に圧縮する工程と、
を具えることを特徴とする把持装置の形成方法である。
【発明の効果】
【0012】
<1>によれば、前記環状スリーブの上側端および下側端は、それぞれの、半径方向外側に配置された剛性リングと、半径方向内側に配置されたゴムリングとによって厚さ方向に締め付けられて固定され、前記ゴムリングは軸線方向に圧縮された状態で前記剛性コアに固定されていることを特徴とするので、上側端および下側端を金属リングで加締める必要がなくなり、その結果、加締め機を不要なものとすることができ、しかも、工程を簡素化することができる。
【0013】
<2>によれば、前記剛性コアは、本体部材と、前記上側端および下側端のそれぞれに対応して設けられた付属部材とで構成され、これらの付属部材は、それぞれに対応する前記ゴムリングを本体部材との間で軸方向に圧縮した状態で固定されているので、<1>の構成を容易に実現することができる。
【0014】
<3>によれば、前記付属部材は、本体部材にネジ止めされ、ネジを締めることにより軸方向に移動して本体部材に接近し前記ゴムリングを軸方向に圧縮するよう構成されているので、環状スリーブの上側端および下側端を厚さ方向への締め付けを簡易に行うことができる。
【0015】
<4>によれば、前記下側端に対応する剛性リングは、前記剛性コアと一体的に形成されているので部品点数を少なくしコスト低減に寄与させることができる。
【0016】
<5>によれば、把持装置を形成する工程は前述のように構成されているので、<1>〜<4>のいずれかに記載の把持装置を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の把持装置を示す断面図である。
【図2】本発明に係る実施形態の把持装置を、ゴムリングを軸方向に圧縮する前の状態で示す断面図である。
【図3】本発明に係る実施形態の把持装置を、ゴムリングを軸方向に圧縮した後の状態で示す断面図である。
【図4】形成途中の把持装置を示す断面図である。
【図5】図4に示した工程のあとの工程における、形成途中の把持装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る実施形態の把持装置について図を参照して以下に説明する。図2は、本発明に係る実施形態の把持装置を、ゴムリングを軸方向に圧縮する前の状態で示す断面図であり、図3は、この把持装置を、ゴムリングを軸方向に圧縮した後の状態で示す断面図である。把持装置10は、円柱状の剛性コア1と、その周面に取り付けられて剛性コア10との間に気密空間3を形成する環状スリーブ2とを具え、環状スリーブ2は、剛性コア1の軸線を通る面内に延在するゴム被覆コードを周方向に配列して形成されるとともに、剛性コアの軸線を上下に向けた姿勢における上側端2bおよび下側端2aをともに端面9a、9bが上側に向く姿勢で取り付けられ、前記気密空間3に内圧を加えることにより拡径するよう構成されている。
【0019】
把持装置10は、その特徴として、環状スリーブ2の上側端2bおよび下側端2aが、それぞれの、半径方向外側に配置された剛性リング5、7と、半径方向内側に配置されたゴムリング4、6とによって厚さ方向に締め付けられて固定され、前記ゴムリング4、6は軸線方向に圧縮された状態で前記剛性コア1に固定されている。
【0020】
剛性コア1は、本体部材11と、下側端2aに対応する付属部材12と、上側端2bに対応する付属部材13とで構成され、これらの付属部材12、13は、それぞれに対応するゴムリング4、6を本体部材11との間で軸方向に圧縮した状態で本体部材11にそれぞれネジ止め固定されており、ボルト15を締め付けてゆくと、ゴムリング4は、付属部材12に形成されている段付部18と、本体部11とによって軸方向に圧縮され、ゴムリング4は、軸方向に圧縮されるその体積は殆ど変化しないので、厚さ方向に厚くなり、ゴムリング4の厚さ方向の膨張力により、環状スリーブ2の下側端2aを、剛性リング5との間で締め付けて固定することができる。一方、付属部材12は、ボルト15を締め付けることによって本体部材11に固定され、ゴムリング4の軸方向の復元力によってボルト15が緩むのを防止することができる。
【0021】
同様にして、ボルト16を締め付けてゆくと、ゴムリング6は、本体部材11に形成された段付部17と、付属部材13とによって軸方向に圧縮されて厚さ方向に厚くなり、このゴムリング7の厚さ方向の膨張力により、環状スリーブ2の下側端2bを、剛性リング7との間で締め付けて固定することができる。一方、付属部材13は、ボルト16を締め付けることによって本体部材11に固定され、ゴムリング6の軸方向の復元力によってボルト16が緩むことはない。
【0022】
なお、剛性リング5は、本体部材11と一体的なものとして構成することができ、この場合部品点数を減らすことができる。また、剛性リング5、7には、抜け止め防止用の溝19を設けることにより、一層の抜け止め防止を図ることができる。なお、図において符号9は内圧となる空気の流出入口である。
【0023】
このような把持装置10を形成する方法について説明する。まず、本体部材11と付属部材12との間にゴムリング4をセットし、図4に示すように、ゴムリング4が殆ど圧縮されないようにしてボルト15で締めて、本体部材11と付属部材12とを連結する。これに前後して、本体部材11と付属部材13との間にゴムリング6をセットし、ゴムリング6が殆ど圧縮されない状態までボルト16で締めて、本体部材11と付属部材13とを連結しておいてもよい。
【0024】
そして、環状スリーブ2の下端部2aを、剛性リング5とゴムリング4との間に挿入してこれらの間に下端部2aを挟み込んで仮止めする。このときスリーブ2は、筒状のままなので、このあと、環状スリーブ2の、上側端2bとなる部分を折り返して、図5に示した状態にする。次いで、剛性リング7を剛性部材1の外側に挿入し上側端2bの半径方向外側に位置させる。このとき、上側端2bは、剛性リング7とゴムリング6との間に挟まれて仮止めされる。
【0025】
このあと、ボルト15、16を締め込み、付属部材12、13を本体部材11に近づけて、ゴムリング4、6を軸方向に圧縮することにより、ゴムリング4、6を半径方向外側に膨らませて下側端2a、上側端2bを締め付けて漏れ止め固定して、把持装置の形成を完了する。
【符号の説明】
【0026】
1 剛性コア
2 環状スリーブ
2a 環状スリーブの下側端
2b 環状スリーブの上側端
3 環状空間
4 ゴムリング
5 剛性リング
6 ゴムリング
7 剛性リング
9a、9b 下側端および上側端の端面
10 把持装置
11 本体部材
12、13 付属部材
15、16 ボルト
17、18 段付部
19 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の剛性コアと、その周面に取り付けられて前記剛性コアとの間に気密空間を形成する環状スリーブとを具え、前記環状スリーブは、剛性コアの軸線を通る面内に延在するゴム被覆コードを周方向に配列して形成されるとともに、剛性コアの軸線を上下に向けた姿勢における上側端および下側端をともに端面が上側に向く姿勢で取り付けられ、前記気密空間に内圧を加えることにより拡径するよう構成された把持装置において、
前記環状スリーブの上側端および下側端は、それぞれの、半径方向外側に配置された剛性リングと、半径方向内側に配置されたゴムリングとによって厚さ方向に締め付けられて固定され、前記ゴムリングは軸線方向に圧縮された状態で前記剛性コアに固定されていることを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記剛性コアは、本体部材と、前記上側端および下側端のそれぞれに対応して設けられた付属部材とで構成され、これらの付属部材は、それぞれに対応する前記ゴムリングを本体部材との間で軸方向に圧縮した状態で固定されていることを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記付属部材は、本体部材にネジ止めされ、ネジを締めることにより軸方向に移動して本体部材に接近し前記ゴムリングを軸方向に圧縮するよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記下側端に対応する剛性リングは、前記剛性コアと一体的に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の把持装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の把持装置を形成する方法において、
前記環状スリーブの下側端を、ゴムリングと剛性リングとの間に挟んで仮止めする工程と、
前記環状スリーブを半径方向外側に折り返す工程と、
前記環状スリーブの上側端を、ゴムリングと剛性リングとの間に挟んで仮止めする工程と、
前記付属部材を本体部材に対して軸方向に移動させてゴムリングを軸方向に圧縮する工程と、
を具えることを特徴とする把持装置の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−36936(P2011−36936A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184583(P2009−184583)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】