説明

振動アクチュエータ、レンズ鏡筒、カメラ

【課題】小型化した場合にも駆動性能の良好な振動アクチュエータ、これを備えるレンズ鏡筒及びカメラを提供する。
【解決手段】第1の接合面(13a)を有し、駆動信号によって励振される電気機械変換素子(13)と、第1の接合面(13a)が接合される第2の接合面(12e)及び励振によって振動波を生じる駆動面(12d)を有する弾性体(12)と、駆動面(12d)に加圧接触される接触面(15a)を有し、振動波によって駆動され、弾性体(12)に対して相対移動する相対移動部材(15)とを備え、第1の接合面(13a)の外形は、相対移動部材(15)の接触面(15a)とは異なる形状であり、第2の接合面(13e)は、第1の接合面(13a)と略一致する形状を有することを特徴とする振動アクチュエータ(10)とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ、これを備えるレンズ鏡筒及びカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機械変換素子の伸縮を利用して弾性体の駆動面に進行性振動波(以下、進行波という)を発生させ、この進行波によって駆動面には楕円運動を発生させ、楕円運動の波頭に加圧接触した相対移動部材を駆動する振動アクチュエータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平1−17354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、このような振動アクチュエータの小型化が要求されている。しかし、振動アクチュエータの小型化に伴い、電気機械変換素子と弾性体との接合面の面積が小さくなると、電気機械変換素子の厚さや誘電率等の他の条件を一定とした場合には、電気機械変換素子の静電容量が減少する。電気機械変換素子の静電容量が低下すると、これに伴い、振動アクチュエータの起動トルク等の駆動性能も低下する。
【0004】
本発明の課題は、小型化した場合にも駆動性能の良好な振動アクチュエータ、これを備えるレンズ鏡筒及びカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。
請求項1の発明は、第1の接合面(13a)を有し、励振される電気機械変換素子(13)と、前記第1の接合面が接合される第2の接合面(12e,32e)及び前記励振によって振動波を生じる駆動面(12d,32d)を有する弾性体(12,32)と、前記駆動面に加圧接触される接触面(15a)を有し、前記振動波によって駆動され、前記弾性体に対して相対移動する相対移動部材(15)と、を備える振動アクチュエータであって、前記第1の接合面の外形は、前記接触面の外形とは異なる形状であること、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータにおいて、前記接触面(15a)の外形は、前記第2の接合面(12e,32e)の外形よりも小さいこと、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の振動アクチュエータにおいて、前記駆動面(32d)の外形は、前記第2の接合面(32e)の外形よりも小さいこと、を特徴とする振動アクチュエータである。
請求項4の発明は、請求項3に記載の振動アクチュエータにおいて、前記第1の接合面(13a)の外形及び前記第2の接合面(32d)の外形は、楕円形状であること、を特徴とする振動アクチュエータである。
請求項5の発明は、請求項4に記載の振動アクチュエータにおいて、前記第2の接合面の短径(32e)は、前記駆動面(32d)の前記短径に平行な方向における寸法と略等しいこと、を特徴とする振動アクチュエータである。
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、前記第2の接合面(12e,32e)は、前記第1の接合面(13a)と略一致する形状であること、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、前記駆動面(32d)は、前記接触面(15a)と相似形であること、を特徴とする振動アクチュエータである。
請求項8の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、前記接触面(15a)の外形は、真円形状であること、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
【0006】
請求項9の発明は、外形が真円以外の形状であって弾性体(12)が接合される接合面(13a)と、前記接合面の中心部分に形成された円形形状の貫通孔(13c)と、を備える電気機械変換素子(13)である。
請求項10の発明は、外形が真円以外の形状であって電気機械変換素子(13)が接合される接合面(12e,32e)と、前記電気機械変換素子の励振によって振動波を生じる駆動面(12d,32d)と、を備える弾性体(12,32)である。
請求項11の発明は、請求項10に記載の弾性体において、前記接合面の外形(12e,32e)は、楕円形状であること、を特徴とする弾性体(12,32)である。
請求項12は、請求項10又は請求項11に記載の弾性体において、前記駆動面(32d)の外形は、前記接合面(32e)の外形よりも小さいこと、を特徴とする弾性体(32)である。
請求項13の発明は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10)を備えることを特徴とするレンズ鏡筒(3)である。
請求項14の発明は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10)を備えることを特徴とするカメラ(1)である。
なお、本発明をわかりやすく説明するために、実施形態を示す図面の符号に対応付けて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。さらに、その配置について特に限定のな構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型化した場合にも駆動性能の良好な振動アクチュエータ、これを備えるレンズ鏡筒及びカメラを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、振動アクチュエータとして、超音波モータを例に挙げて説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のカメラ1を説明する図である。
第1実施形態のカメラ1は、撮像素子を有するカメラボディ2と、レンズ7を有するレンズ鏡筒3とを備えている。
レンズ鏡筒3は、カメラボディ2に着脱可能な交換レンズである。なお、本実施形態では、レンズ鏡筒3は、交換レンズである例を示したが、これに限らず、例えば、カメラボディと一体型のレンズ鏡筒としてもよい。
【0010】
レンズ鏡筒3は、レンズ7、カム筒6、ギア4,5、超音波モータ10等を備えている。本実施形態では、超音波モータ10は、カメラ1のフォーカス動作時にレンズ7を駆動する駆動源として用いられており、超音波モータ10から得られた駆動力は、ギア4,5を介してカム筒6に伝えられる。レンズ7は、カム筒6に保持されており、超音波モータ10の駆動力により、光軸方向(図1中に示す、矢印L方向)に略平行に移動して、焦点調節を行うフォーカスレンズである。
図1において、レンズ鏡筒3内に設けられた不図示のレンズ群(レンズ7を含む)によって、撮像素子8の撮像面に被写体像が結像される。撮像素子8によって、結像された被写体像が電気信号に変換され、その信号をA/D変換することによって、画像データが得られる。
【0011】
図2は、第1実施形態の超音波モータ10の断面図である。
第1実施形態の超音波モータ10は、振動子11、移動子15、出力軸18、加圧部材19等を備え、振動子11側を固定とし、移動子15を回転駆動する形態となっている。
振動子11は、弾性体12と、弾性体12に接合された圧電体13とを有する中空形状の部材である。本実施形態の振動子11は、後述の図3(a)に示すように、移動子15側から見た外形が略楕円形状であり、その中央部に略円形形状の貫通孔11cが形成されている。
弾性体12は、共振先鋭度が大きな金属材料によって形成された部材である。弾性体12は、移動子15側から見た外形が略楕円形状である中空形状(図3(a)参照)であり、この弾性体12は、櫛歯部12a、ベース部12b、フランジ部12c等を有する。
【0012】
櫛歯部12aは、圧電体13が接合される面(弾性体側接合面12e)とは反対側の面に、複数の溝を切って形成され、この櫛歯部12aの先端面は、移動子15に加圧接触され、移動子15を駆動する駆動面12dとなる。この駆動面には、Ni−P(ニッケル−リン)メッキ等の潤滑性の表面処理が施されている。櫛歯部12aを設ける理由は、圧電体13の伸縮により駆動面12dに生じる進行波の中立面をできる限り圧電体13側へ近づけ、これにより駆動面12dの進行波の振幅を増幅させるためである。
ベース部12bは、弾性体12の周方向に連続した部分であり、ベース部12bの櫛歯部12aとは反対側である弾性体側接合面12eに、圧電体13が接合されている。
フランジ部12cは、弾性体12の内径方向に突出した鍔状の部分であり、ベース部12bの厚さ方向の中央に配置されている。このフランジ部12cにより、振動子11は、固定部材16に固定されている。
なお、弾性体側接合面12e及び駆動面12d、後述する圧電体側接合面13aの形状等に関する詳細は、後述する。
【0013】
圧電体13は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電気機械変換素子である。本実施形態では、圧電体13として圧電素子を用いたが、電歪素子等を用いてもよい。
圧電体13は、略平板形状であり、弾性体12に接合される圧電体側接合面13aを有し、圧電体側接合面13aの中心部分に円形形状の貫通孔13cが形成された中空形状の部材である(図3参照)。圧電体13は、圧電体側接合面13aが弾性体側接合面12eに接着剤を用いて接合されている。
この圧電体13には、駆動信号を入力するための不図示の電極部が形成されている。
【0014】
フレキシブルプリント基板14は、その配線が圧電体13の電極部に接続されている。フレキシブルプリント基板14は、圧電体13に駆動信号を供給する機能を有する。
このフレキシブルプリント基板14から供給される駆動信号によって、圧電体13が伸縮することにより、弾性体12を励振し、弾性体12の駆動面に進行波が発生する。本実施形態では、4波の進行波が発生している。
【0015】
移動子15は、弾性体12の駆動面に生じる進行波によって回転駆動される部材である。移動子15は、アルミニウム等の軽金属によって形成された略円盤形状の部材であり、振動子11(弾性体12の駆動面12d)に接触する接触面15aを有する。
接触面15aは、略円環形状であり、接触面15aの表面には、耐磨耗性向上のためのアルマイト等の表面処理が施されている。
出力軸18は、略円柱形状の部材である。出力軸18は、一方の端部がゴム部材23を介して移動子15に接しており、移動子15と一体に回転するように設けられている。
ゴム部材23は、ゴムにより形成された略円環形状の部材である。このゴム部材23は、ゴムによる粘弾性で移動子15と出力軸18とを一体に回転可能とする機能と、移動子15からの振動を出力軸18へ伝えないように振動を吸収する機能とを有しており、ブチルゴム、シリコンゴム、プロピレンゴム等が用いられている。
【0016】
加圧部材19は、振動子11と移動子15とを加圧接触させる加圧力を発生する部材である。この加圧部材19は、ギア部材20とベアリング受け部材21との間に設けられている。本実施形態では、加圧部材19は、圧縮コイルバネを用いているが、これに限定されるものではない。
ギア部材20は、出力軸18のDカットに嵌まるように挿入され、Eリング等のストッパ22で固定され、回転方向及び軸方向に出力軸18と一体となるように設けられている。ギア部材20は、出力軸18の回転とともに回転することにより、ギア4(図1参照)に駆動力を伝達する。
また、ベアリング受け部材21は、ベアリング17の内径側に配置され、ベアリング17は、固定部材16の内径側に配置された構造となっている。
加圧部材19は、振動子11を移動子15側へ、出力軸18の軸方向に加圧しており、この加圧力によって、移動子15は、振動子11の駆動面に加圧接触し、回転駆動される。なお、加圧部材19とベアリング受け部材21との間には、加圧力調整ワッシャーを設けて、超音波モータ10の駆動に適正な加圧力が得られるようにしてもよい。
【0017】
次に、本実施形態の駆動面12d及び弾性体側接合面12eと圧電体側接合面13aの形状について説明する。
図3は、第1実施形態の振動子11を示す図である。なお、理解を容易にするために、図3及び以下に示す図4には、XYZ直交座標系を設けた。出力軸18の軸方向に平行な方向をZ軸方向とし、Z軸方向において移動子15側に向かう方向をZ軸プラス方向とした。そして、Z軸プラス方向(移動子15側)から見た振動子11の外形の楕円形状の長径(長軸)に平行な方向をX軸方向、短径(短軸)に平行な方向をY軸方向とした。
図3(a)は、振動子11を移動子15側から見た図であり、図3(b)は、XZ平面に平行な矢印S1−S2断面での振動子11の断面図であり、図3(c)は、YZ平面に平行な矢印S3−S4断面での振動子11の断面図である。また、図3(a)中に破線で示される形状は、駆動面12dに接する移動子15の接触面15aの形状であり、接触面15aは、この破線で示された領域で駆動面12dと接する。
【0018】
圧電体13は、略平板形状の部材であり、弾性体12が接合される圧電体側接合面13aを有し、圧電体側接合面13aの中心部分に円形形状の貫通孔13cが形成されている。この圧電体側接合面13aは、弾性体12側(Z軸プラス側)から見た外形が楕円形状である。
弾性体12は、図3に示すように、Z軸方向プラス側の端面が駆動面12dであり、Z軸方向マイナス側の端面が弾性体側接合面12eである。
弾性体側接合面12eの外形は、楕円形状である。この弾性体側接合面12eの形状は、圧電体側接合面13aの形状と略一致する。また、本実施形態では、駆動面12dの外形は、弾性体側接合面12eの外形と略一致しており、Z軸方向に沿って移動子15側から見た場合に、図3(a)に示すように、圧電体側接合面13a、弾性体側接合面12e、駆動面12dの外形は略一致している。
本実施形態では、圧電体側接合面13a、弾性体側接合面12e、駆動面12dの外形となる楕円形状の長半径をa、短半径をbとすると、長半径と短半径との寸法比は、a:b=1.5:1となっている。
【0019】
表1は、圧電体の静電容量等に関して本実施形態の超音波モータと比較例の超音波モータとを比較した図である。
【0020】
【表1】

【0021】
不図示の比較例1及び比較例2の超音波モータは、圧電体側接合面13a等の外形が異なる点以外は、本実施形態の超音波モータ10と略同様の形態である。
比較例1の超音波モータは、振動子が略円環形状をしている。従って、比較例1の圧電体側接合面と弾性体側接合面及び駆動面の外形は、円形形状であり、a:b=1:1である。この比較例1の圧電体側接合面と弾性体側接合面及び駆動面の外径は、本実施形態の圧電体側接合面13aの外形の短半径bと同じ寸法である。
比較例2の超音波モータは、圧電体側接合面と弾性体側接合面及び駆動面の外形は楕円形状であるが、その楕円形状の長半径と短半径との比がa:b=3:1である。この比較例2の圧電体側接合面は、短半径が本実施形態の圧電体側接合面13aの短半径と等しい寸法であり、長半径が本実施形態の圧電体側接合面13aの長半径の2倍の寸法である。
【0022】
表1中に示す圧電体の静電容量の比とは、比較例1の圧電体の静電容量を1とした場合の本実施形態及び各比較例の圧電体の静電容量の比である。なお、この静電容量は、各圧電体の中央に形成される貫通孔の内径c=0である場合、すなわち、貫通孔が形成されていない状態で比較した。
駆動面の径方向における振動振幅の差とは、駆動面に生じる進行波の振動振幅の大きさについて駆動面の内周側と外周側とを比較した結果である。駆動面の径方向における振動振幅の大きさの差が小さいものを良好として表1中に○で示し、径方向における差は多少あるが使用可能なものを可として表1中に△で示し、径方向における差が大きく使用に適さないものを不可として表1中に×で示す。
また、移動子の周方向における回転速度のムラとは、移動子15が駆動面の進行波によって回転駆動される際の接触面15aの周方向における回転速度のムラである。接触面15aの周方向において、回転速度のムラの小さいものを良好として表1中に○で示し、回転速度のムラはあるが使用可能なものを可として表1中に△で示し、回転速度のムラが大きく使用に適さないものを不可として表1中に×で示す。
【0023】
表1に示すように、静電容量は、長半径aが大きくなるにつれて、大きくなることがわかる。これは、厚さや誘電率等の条件を一定とした場合に、圧電体の静電容量は、圧電体が分極された領域の面積に比例するため、圧電体の面積を広くすることにより、分極される領域を広くすることができるからである。つまり、圧電体と弾性体との接合面の面積が広くなれば、圧電体が分極される領域を広くとることができ、圧電体の静電容量を大きくできる。これにより、より大きな駆動力が得られる。
しかし、表1に示すように、長半径aと短半径bとの比が大きくなるにつれ、駆動面の径方向における振動振幅の差が大きくなる。進行波の振動振幅は、駆動面の径方向において、外周側となるにつれて大きくなる傾向を有する。従って、通常、駆動面の内周側に比べて、外周側の方が進行波の振動振幅が大きい。
駆動面の外形が楕円形状である場合、例えば、本実施形態において、駆動面12dの短径方向の外周端付近の点t1と長径方向の外周端付近の点t2とでは、振動振幅の大きさが異なり、点t2での振動振幅が点t1の振動振幅よりも大きい。
【0024】
この振動振幅の大きさの変化は、径方向の位置に単純に比例するものではないため、移動子15の接触面15aが接触する領域(図3(a)の破線で囲まれた領域)において、例えば、本実施形態の駆動面12dの短径方向に位置する点t3と、長径方向の外周端付近に位置する点t4とでは、点t3での振動振幅が、点t4での振動振幅に比べて大きくなる。
この点t3と点t4とにおける進行波の振動振幅の差のように、接触面15aが接触する領域における振動振幅の差は、駆動面の楕円形状の長半径aと短半径bとの比が大きくなるにつれて、大きくなる(表1参照)。
上述のように、接触面15aが駆動面に接触する領域において、振動振幅に差が生じているため、移動子15は、その周方向において、回転速度にムラが生じる。この回転速度のムラが大きくなると、移動子15の安定した駆動が行うことができなくなり、超音波モータの駆動性能や駆動効率の低下等が生じる。
【0025】
しかし、本実施形態では、駆動面12d等の外径となる楕円形状の長半径aと短半径bとの比をa:b=1.5:1としたので、所望する駆動力と安定した駆動とを両立することができる。
よって、本実施形態によれば、小型化した場合にも、駆動性能の良好な超音波モータとすることができる。例えば、振動子が円環形状である従来の超音波モータを小径化し、振動子の外径を本実施形態の短半径bと同じ寸法としてた場合に比べて、本実施形態の超音波モータ10では大きなトルクを得ることができる。
また、本実施形態によれば、Z軸方向から見た外形が楕円形状であるので、例えば、Z軸方向から見たときに、X軸及びY軸方向において、一方の寸法は大きいが他方の寸法は小さいといった空間にも配置でき、スペース効率が向上する。
【0026】
(第2実施形態)
第2実施形態の超音波モータは、振動子31の駆動面32dの外形が異なる点以外は、第1実施形態と略同様の形態である。従って、前述の第1実施形態と同様の機能を果たす部分は、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図4は、第2実施形態の超音波モータの振動子31を示す図である。図4(a)は、振動子31を移動子15側から見た図であり、図4(b)は、XZ平面に平行な矢印S5−S6断面での振動子31の断面図であり、図4(c)は、YZ平面に平行な矢印S7−S8断面での振動子31の断面図である。また、図4(a)中に破線で示される領域は、駆動面32dに接触する移動子15の接触面15aの形状であり、接触面15aが駆動面32dと接触する領域に略等しい。
【0027】
第2実施形態の振動子31は、弾性体32と、圧電体13と貫通孔31cを有する。貫通孔31cは、第1実施形態の貫通孔11cと略同様の形状である。
第2実施形態の弾性体32は、櫛歯部32a、ベース部32b、フランジ部32c、駆動面32d、弾性体側接合面32eを有している。櫛歯部32a、ベース部32b、フランジ部32c、弾性体側接合面32eは、第1実施形態に示した機能と略同様の機能を果たす部分であるが、駆動面32dの外形が第1実施形態とは異なるので、櫛歯部32a、ベース部32bの外周側の形状が第1実施形態とは異なっている(図4(b)参照)。この形状の違いに関しては後述する。
駆動面32dは、図4(a)等に示すように、移動子15側(Z軸プラス側)から見た形状は、外径rの円環形状であり、移動子15の接触面15aと相似形である。
駆動面32dの中心と、弾性体側接合面32eの楕円形状の中心とは、Z軸方向に平行な同一の直線上に位置しており、駆動面32dの外径rの寸法は、弾性体側接合面32eの短半径bの寸法に等しく、r=b=(2/3)×aである。
【0028】
図4(b)及び(c)に示すように、弾性体側接合面32eの短径方向(Y軸方向)においては、弾性体側接合面32eの寸法(2×b)と駆動面32dの寸法(2×r)とが等しいが、弾性体側接合面32eの長径方向(X軸方向)においては、駆動面32dの寸法(2×r)は、弾性体側接合面32eの寸法(2×a)よりも小さい。
従って、駆動面32dの外形は、弾性体側接合面32eの外形に比べて小さく、図4(b)に示すように、櫛歯部32a及びベース部32bの一部の外周側は、内周側に向かって傾斜した形状となっている。
【0029】
本実施形態の駆動面32dは、外形が円形形状であるので、駆動面32dに生じる進行波は、周方向における振動振幅の大きさの差が小さい。例えば、駆動面32dにおけるY軸方向の外周端付近に位置する点t5とX軸方向の外周端付近に位置する点t6との進行波の振動振幅の大きさの差は、前述の第1実施形態に示した点t1と点t2(図3(a)参照)とにおける進行波の振動振幅の差に比べて小さい。
また、駆動面32dの外形が円形形状となったことにより、接触面15aが駆動面32dと接触する領域は、駆動面32dの外径に対する径方向の位置が周方向の位置に関係なく略一定となる。
従って、接触面15aが接触する駆動面32dの領域(図4(a)中に示す破線の領域)において、Y軸方向に位置する点t7とX軸方向に位置する点t8での振動振幅の大きさの差が小さくなる。
【0030】
以上のことから、本実施形態によれば、接触面15aが接触する駆動面32dの領域での周方向における振動振幅の大きさの差が小さくなり、移動子15の周方向における回転速度ムラを小さくすることができる。よって、移動子15を安定して駆動でき、超音波モータの駆動性能を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、超音波モータの駆動力を低下させることなく、小型化できる。
さらに、駆動面32dの半径rは、弾性体側接合面32eの短半径bと寸法が等しいので、接触面15aと接触する領域を、周方向の位置によらず駆動面32dの径方向における外周側とすることができる。従って、より大きな振動振幅によって移動子15を駆動することができ、超音波モータのトルクを向上させることができる。
【0031】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能である。
(1)各実施形態において、圧電体側接合面13a及び弾性体側接合面12e,32eの外形が楕円形状である例を示したが、これに限らず、例えば、多角形形状として、よりスペース効率の向上等を図ってもよい。
【0032】
(2)各実施形態において、移動子15が回転駆動される超音波モータを例に挙げて説明したが、これに限らず、移動子が直線方向に駆動されるリニア型の振動アクチュエータに適用してもよい。
【0033】
(3)各実施形態において、超音波領域の振動を用いる超音波モータを例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、超音波領域以外の振動を用いる振動アクチュエータに適用してもよい。
【0034】
(4)各実施形態において、超音波モータは、フォーカス動作時にレンズの駆動に用いられる例を示したが、これに限らず、例えば、レンズのズーム動作時の駆動に用いられる超音波モータとしてもよい。
【0035】
(5)各実施形態において、超音波モータは、カメラに用いられる例を示したが、これに限らず、例えば、複写機の駆動部や、自動車のハンドルチルト装置やヘッドレストの駆動部に用いてもよい。
なお、上述の実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1実施形態のカメラ1を説明する図である。
【図2】第1実施形態の超音波モータ10の断面図である。
【図3】第1実施形態の振動子11を示す図である。
【図4】第2実施形態の振動子31を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1:カメラ、3:レンズ鏡筒、10:超音波モータ、12,32:弾性体、12d,32d:駆動面、12e,32e:弾性体側接合面、13:圧電体、13a:圧電体側接合面13a、15:移動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接合面を有し、励振される電気機械変換素子と、
前記第1の接合面が接合される第2の接合面及び前記励振によって振動波を生じる駆動面を有する弾性体と、
前記駆動面に加圧接触される接触面を有し、前記振動波によって駆動され、前記弾性体に対して相対移動する相対移動部材と、
を備える振動アクチュエータであって、
前記第1の接合面の外形は、前記接触面の外形とは異なる形状であること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記接触面の外形は、前記第2の接合面の外形よりも小さいこと、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記駆動面の外形は、前記第2の接合面の外形よりも小さいこと、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項3に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記第1の接合面の外形及び前記第2の接合面の外形は、楕円形状であること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項5】
請求項4に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記第2の接合面の短径は、前記駆動面の前記短径に平行な方向における寸法と略等しいこと、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記第2の接合面は、前記第1の接合面と略一致する形状であること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記駆動面は、前記接触面と相似形であること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記接触面の外形は、真円形状であること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項9】
外形が真円以外の形状であって弾性体が接合される接合面と、
前記接合面の中心部分に形成された円形形状の貫通孔と、
を備える電気機械変換素子。
【請求項10】
外形が真円以外の形状であって電気機械変換素子が接合される接合面と、
前記電気機械変換素子の励振によって振動波を生じる駆動面と、
を備える弾性体。
【請求項11】
請求項10に記載の弾性体において、
前記接合面の外形は、楕円形状であること、
を特徴とする弾性体。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の弾性体において、
前記駆動面の外形は、前記接合面の外形よりも小さいこと、
を特徴とする弾性体。
【請求項13】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータを備えることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項14】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータを備えることを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−201191(P2009−201191A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37648(P2008−37648)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】