説明

振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラ

【課題】常温での回転時に異音の発生を低減することができるとともに、低温条件下や高温条件下における起動特性の低下を低減することができる振動アクチュエータを提供すること。
【解決手段】電気機械変換素子13の駆動により振動波を生じる弾性体12と、弾性体12と加圧接触し、振動波によって回転軸を中心に弾性体12に対して相対的に回転される相対移動部材15と、を備え、相対移動部材15は、弾性体12に接触可能でかつ相対移動部材15の回転軸に直交する径方向において互いにヤング率の異なる同心の複数の円環状に形成される接触部35a,36a,37aを有し、相対移動部材15が変形しない場合と変形する場合とにおいて、接触部におけるヤング率の異なる部分が弾性体12に接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ、これを備えるレンズ鏡筒及びカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機械変換素子の伸縮を利用して弾性体の駆動面に進行性振動波(以下、進行波という)を発生させ、この進行波によって駆動面に生じた楕円運動を利用し、楕円運動の波頭に加圧接触した相対移動部材を駆動する振動アクチュエータが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平1−17354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の振動アクチュエータは、回転数を上げすぎると突発的な音(異音)が発生するため、性能的には余裕があっても異音が発生しない回転数以下でしか使用できない問題がある。この問題に対処するには、駆動部である弾性体の硬度を軟らかくすることが考えられる。しかし、低温条件下や高温条件下においては、振動アクチュエータは、弾性体の硬度が軟らかくなると、起動時に速やかに回転することができない等の起動特性が低下する可能性がある。
本発明の目的は、常温での回転時に異音の発生を低減することができるとともに、低温条件下や高温条件下における起動特性の低下を低減することができる振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段で前記課題を解決する。
請求項1に記載の発明は、電気機械変換素子(13)に接触して設けられ、前記電気機械変換素子(13)の駆動により振動波を生じる弾性体(12,121)と、前記弾性体(12,121)と加圧接触し、前記振動波によって回転軸を中心に前記弾性体(12,121)に対して相対的に回転される相対移動部材(15,15A,15B)と、を備える振動アクチュエータ(10,10A,10B)であって、前記相対移動部材(15,15A,15B)は、前記弾性体(12,121)に接触可能でかつ該相対移動部材(15,15A,15B)の前記回転軸に直交する径方向において互いにヤング率の異なる同心の複数の円環状に形成される接触部(35a,36a,37a,351a,361a)を有し、該相対移動部材(15,15A,15B)が変形しない場合と変形する場合とにおいて、前記接触部(35a,36a,37a,351a,361a)におけるヤング率の異なる部分が前記弾性体(12,121)に接触すること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,10A,10B)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータ(10)であって、前記相対移動部材(15)は、該相対移動部材(15)の前記回転軸方向において互いに線膨張係数の異なる複数の円板状部(32,33)が積層された積層部(31)を有し、周囲の温度が常温のときにヤング率の大きい前記接触部(36a)が前記弾性体(12,121)に接触し、周囲の温度が常温でないときに、前記積層部(31)における前記複数の円板状部(32,33)のうちの隣り合う円板状部(32,33)の一方が前記一方に隣り合う他方に対して伸縮して前記回転軸を中心にたわむことにより、ヤング率の小さい前記接触部(35a,37a)が前記弾性体(12,121)に接触すること、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータ(10A)であって、前記相対移動部材(15A)は、該相対移動部材(15A)の前記径方向において互いに線膨張係数の異なる同心の複数の円環状に形成される第1環状部(310)を有し、周囲の温度が常温のときにヤング率の大きい前記接触部(36a)が前記弾性体(12,121)に接触し、周囲の温度が常温でないときに、前記第1環状部(310)における前記線膨張係数の大きい部分(312)が前記径方向に伸縮することにより、ヤング率の小さい前記接触部(35a,37a)が前記弾性体(12,121)に接触すること、を特徴とする振動アクチュエータ(10A)である。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータ(10B)であって、前記相対移動部材(15B)は、該相対移動部材(15B)の前記径方向において互いにヤング率の異なる同心の複数の円環状に形成される第2環状部(320)を有し、前記弾性体(12,121)に対して一定の回転数以下で回転したときにはヤング率の小さい前記接触部(361a)が前記弾性体(12,121)に接触し、前記弾性体(12,121)に対して前記一定の回転数よりも大きい回転数で回転したときには、前記第2環状部(320)におけるヤング率の大きい部分(322)が遠心力で伸びることにより、ヤング率の大きい前記接触部(351a)が前記弾性体(12,121)に接触すること、を特徴とする振動アクチュエータ(10B)である。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10,10A,10B)を備えるレンズ鏡筒(3)である。
請求項6に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10,10A,10B)を備えるカメラ(1)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、常温での回転時に異音の発生を低減することができるとともに、低温条件下や高温条件下における起動特性の低下を低減することができる振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態のカメラを説明する図である。
【図2】第1実施形態の超音波モータの断面図である。
【図3】周囲の温度が異なる場合における第1実施形態の超音波モータの移動子の形状を示す図であって、(a)は、常温のときの移動子の形状を示す図であり、(b)は、高温のときの移動子の形状を示す図であり、(c)は、低温のときの移動子の形状を示す図である。
【図4】周囲の温度が異なる場合における本発明の第2実施形態の超音波モータの移動子の形状を示す図であって、(a)は、常温のときの移動子の形状を示す図であり、(b)は、高温のときの移動子の形状を示す図であり、(c)は、低温のときの移動子の形状を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態の超音波モータの移動子の形状を示す図であって、(a)は、超音波モータの停止時の移動子の形状を示す図であり、(b)は、超音波モータの回転時の移動子の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、振動アクチュエータとして、超音波モータを例に挙げて説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のカメラ1を説明する図である。
図1に示すように、カメラ1は、撮像素子8を有するカメラボディ2と、レンズ7を有するレンズ鏡筒3とを備えている。レンズ鏡筒3は、カメラボディ2に着脱可能な交換レンズである。なお、本実施形態では、レンズ鏡筒3は、交換レンズである例を示したが、これに限らず、例えば、カメラボディ2と一体型のレンズ鏡筒としてもよい。
【0010】
レンズ鏡筒3は、レンズ7、カム筒6、ギア4,5、超音波モータ10等を備えている。本実施形態では、超音波モータ10は、カメラ1のフォーカス動作時にレンズ7を駆動する駆動源として用いられている。超音波モータ10から得られた駆動力は、ギア4,5を介してカム筒6に伝えられる。レンズ7は、カム筒6に保持されており、超音波モータ10の駆動力により、光軸方向(図1中に示す、矢印O方向)に略平行に移動して、焦点調節を行うフォーカスレンズである。
図1において、レンズ鏡筒3内に設けられた不図示のレンズ群(レンズ7を含む)によって、撮像素子8の撮像面に被写体像が結像される。撮像素子8によって、結像された被写体像が電気信号に変換され、その信号をA/D変換することによって、画像データが得られる。
【0011】
次に、超音波モータ10について説明する。図2は、第1実施形態の超音波モータ10の断面図である。
図2に示すように、第1実施形態の超音波モータ10は、振動子11、移動子15、出力軸18、加圧部材19等を備え、振動子11側を固定とし、移動子15を回転駆動する形態となっている。
振動子11は、弾性体12と、弾性体12に接合された圧電体13とを有する略円環形状の部材である。
弾性体12は、共振先鋭度が大きな金属材料によって形成され、その形状は、略円環形状である。この弾性体12は、櫛歯部12a、ベース部12b、フランジ部12cを有する。
【0012】
櫛歯部12aは、圧電体13が接合される面とは反対側の面に、複数の溝を切って形成され、この櫛歯部12aの先端面は、移動子15に加圧接触され、移動子15を駆動する駆動面12dとなる。この駆動面12dには、Ni−P(ニッケル−リン)メッキ等の潤滑性の表面処理が施されている。櫛歯部12aを設ける理由は、圧電体13の伸縮により駆動面12dに生じる進行波の中立面をできる限り圧電体13側へ近づけ、これにより駆動面12dの進行波の振幅を増幅させるためである。
ベース部12bは、弾性体12の周方向に連続した部分であり、ベース部12bの櫛歯部12aとは反対側の面(接合面12e)に、圧電体13が接合されている。
フランジ部12cは、弾性体12の内径方向に突出した鍔状の部分であり、ベース部12bの厚さ方向の略中央に配置されている。このフランジ部12cにより、振動子11は、固定部材16に固定されている。
【0013】
圧電体13は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電気機械変換素子である。本実施形態では、圧電体13に圧電素子を用いるが、電歪素子等を用いてもよい。圧電体13は、略円環形状の部材であり、周方向に沿って2つの相(A相、B相)の電気信号が入力される範囲に分かれている。各相には、1/2波長毎に分極が交互となった要素が並べられている。A相とB相との間には、1/4波長分の間隔が空けられている。この圧電体13は、接着剤によって弾性体12に接合されている。
圧電体13には、各相の電極にフレキシブルプリント基板14が接続されている。フレキシブルプリント基板14には、図示しない増幅部から駆動信号が供給され、この駆動信号によって、圧電体13が伸縮する。振動子11には、この圧電体13の伸縮により、弾性体12の駆動面12dに進行波(振動波)が発生する。
【0014】
移動子15は、アルミニウム等の軽金属によって形成されて、弾性体12の駆動面12dに生じる進行波によって回転駆動される略円環状の部材である。移動子15は、進行波によって後述する出力軸18を中心に弾性体12に対して相対的に回転される。
移動子15の詳細については後述する。
【0015】
出力軸18は、略円柱形状の部材である。出力軸18は、一方の端部がゴム部材23を介して移動子15に接しており、移動子15と一体的に回転するように設けられている。
ゴム部材23は、ゴムにより形成された略円環状の部材である。このゴム部材23は、ゴムによる粘弾性で移動子15と出力軸18とを一体に回転可能とする機能と、移動子15からの振動を出力軸18へ伝えないように振動を吸収する機能とを備えており、ブチルゴム、シリコンゴム、プロピレンゴム等が用いられている。
【0016】
加圧部材19は、振動子11と移動子15とを加圧接触させる加圧力を発生する部材であり、ギア20とベアリング受け部材21との間に設けられている。本実施形態では、加圧部材19は、圧縮コイルバネを用いているが、これに限定されることない。
【0017】
ギア20は、出力軸18の断面D字状の部分に嵌まるように挿入されて、Eリング等のストッパ22で固定され、回転方向及び軸方向に出力軸18と一体となるように設けられている。ギア20は、出力軸18の回転とともに回転することにより、ギア4(図1参照)に駆動力を伝達する。
【0018】
また、ベアリング受け部材21は、ベアリング17の内径側に配置され、ベアリング17は、固定部材16の内径側に配置された構造となっている。
加圧部材19は、振動子11を移動子15側へ、出力軸18の軸方向に加圧しており、この加圧力によって、移動子15は、振動子11の駆動面に加圧接触し、回転駆動される。なお、加圧部材19とベアリング受け部材21との間には、加圧力調整ワッシャーを設けて、超音波モータ10の駆動に適正な加圧力が得られるようにしてもよい。
【0019】
次に、本実施形態の移動子15について詳細に説明する。図3は、周囲の温度が異なる場合における第1実施形態の超音波モータ10の移動子15の形状を示す図であって、(a)は、常温のときの移動子15の形状を示す図であり、(b)は、高温のときの移動子15の形状を示す図であり、(c)は、低温のときの移動子15の形状を示す図である。
【0020】
図2及び図3に示すように、移動子15は、円筒基部30と、積層部31と、第1接触部34とを有している。移動子15は、円筒基部30、積層部31及び第1接触部34により一体的に形成される部材である。円筒基部30、積層部31及び第1接触部34は、ゴム部材23側から、円筒基部30、積層部31、第1接触部34の順に出力軸18の軸方向に積層されて、互いに接合されている。
【0021】
円筒基部30は、略円筒形状に形成されている。円筒基部30は、出力軸18に回転可能に嵌合している。
積層部31は、略円環形状に形成されている。積層部31は、出力軸18に回転可能に嵌合している。積層部31の径は、円筒基部30よりも大きく形成されている。積層部31の円筒基部30側の面の内周縁側は、円筒基部30に接合されている。積層部31の円筒基部30とは反対側の面の外周縁側には、後述する第1接触部34が接合されている。
【0022】
積層部31は、第1円板状部32と、第2円板状部33とが出力軸18の軸方向に積層されて形成されている。第1円板状部32は、積層部31における出力軸18の軸方向の円筒基部30側に配置されている。第2円板状部33は、積層部31における出力軸18の軸方向の円筒基部30とは反対側に配置されている。
第1円板状部32及び第2円板状部33は、略同じ径により円板状に形成されている。第1円板状部32及び第2円板状部33は、金属材料により形成されている。
【0023】
第1円板状部32及び第2円板状部33は、積層部31における出力軸18の軸方向において互いに線膨張係数が異なっている。
第1円板状部32の線膨張係数は、後述する第2円板状部33の線膨張係数よりも小さい。第2円板状部33の線膨張係数は、第1円板状部32の線膨張係数よりも大きい。
【0024】
このように構成される積層部31は、周囲の温度が低温及び高温に変化することにより変形する。
具体的には、図3(a)に示すように、積層部31は、周囲の温度が常温のときには、出力軸18に直交する方向に略平行で、かつ、弾性体12の駆動面12dに略平行の円板形状である。
【0025】
そして、図3(b)に示すように、周囲の温度が常温から高温になると、第2円板状部33の線膨張係数が第1円板状部32よりも大きいため、第2円板状部33は、第1円板状部32に対して伸びる。これにより、積層部31は、出力軸18の軸を中心に、積層部31の外周縁側が弾性体12から離れる方向に反った形状にたわむ。
【0026】
また、図3(c)に示すように、周囲の温度が常温から低温になると、第2円板状部33の線膨張係数が第1円板状部32よりも大きいため、第2円板状部33は、第1円板状部32に対して収縮する。これにより、積層部31は、出力軸18の軸を中心に、積層部31の外周縁側が弾性体12に近づく方向に反った形状にたわむ。
【0027】
第1接触部34は、積層部31の円筒基部30とは反対側の面の外周縁側に接合されている。第1接触部34は、出力軸18から離間した略円環形状に形成されている。
第1接触部34は、第1内側接触部35と、第1中間接触部36と、第1外側接触部37とを有している。
【0028】
第1内側接触部35、第1中間接触部36及び第1外側接触部37は、金属材料により短筒の円環状に形成されている。第1内側接触部35、第1中間接触部36及び第1外側接触部37は、出力軸18を中心に、同心状に形成されている。第1内側接触部35、第1中間接触部36及び第1外側接触部37は、出力軸18側から、第1内側接触部35、第1中間接触部36、第1外側接触部37の順に径方向に配置されて一体的に形成されている。
【0029】
第1接触部34は、径方向において互いにヤング率の異なる同心の複数の円環状に形成される。本実施形態においては、第1接触部34の第1内側接触部35及び第1外側接触部37は、ヤング率が同じである。第1接触部34の第1中間接触部36のヤング率は、第1接触部34の第1内側接触部35及び第1外側接触部37のヤング率よりも大きい。
【0030】
ここで、ヤング率が大きい部材ほど軟らかい部材である。つまり、第1中間接触部36のヤング率が第1内側接触部35及び第1外側接触部37のヤング率よりも大きいため、第1中間接触部36は、第1内側接触部35及び第1外側接触部37よりも軟らかい部材である。
【0031】
第1内側接触部35、第1中間接触部36及び第1外側接触部37は、互いを貼り合わせて接合したり、モールド成形することにより一体的に形成されている。なお、第1内側接触部35、第1中間接触部36及び第1外側接触部37は、互いに同じ金属を使用して、製造時に添加物を添加することによって、ヤング率を異なるように形成することもできる。
【0032】
第1内側接触部35、第1中間接触部36及び第1外側接触部37それぞれは、第1内側接触面35a、第1中間接触面36a、第1外側接触面37aを有している。
第1内側接触面35a、第1中間接触面36a及び第1外側接触面37aは、弾性体12の駆動面12dに対向して配置されるとともに、弾性体12の駆動面12dに接触可能である。第1内側接触面35a、第1中間接触面36a及び第1外側接触面37aには、耐摩耗性向上のためアルマイト等の表面処理が施されている。
【0033】
第1内側接触面35a、第1中間接触面36a及び第1外側接触面37aは、周囲の温度の変化によって積層部31が変形しない場合と変形する場合において、弾性体12の駆動面12dへ接触する部分が異なっている。
【0034】
具体的には、図3(a)に示すように、周囲の温度が常温のときには、積層部31は、弾性体12の駆動面12dに略平行の円板形状である。そのため、第1接触部34における弾性体12の駆動面12dに主に接触する部分は、第1接触部34の径方向における中央に形成される第1中間接触部36の第1中間接触面36aとなる。第1中間接触面36aは、第1内側接触部35及び第1外側接触部37よりもヤング率が大きく軟らかい第1中間接触部36により形成される面である。
【0035】
また、図3(b)に示すように、積層部31は、周囲の温度が高温のときには、積層部31の外周縁側が弾性体12から離れる方向に反ってたわむ。そのため、第1接触部34における弾性体12の駆動面12dに接触する部分は、第1内側接触部35の第1内側接触面35aの内縁となる。第1内側接触面35aは、第1中間接触部36の第1中間接触部36よりもヤング率が小さくて硬い第1内側接触部35により形成される面である。
【0036】
また、図3(c)に示すように、周囲の温度が低温のときには、積層部31の外周縁側が弾性体12に近づく方向に反ってたわむ。そのため、第1接触部34における弾性体12の駆動面12dに接触する部分は、第1外側接触部37の第1外側接触面37aの外縁となる。第1外側接触面37aは、第1中間接触部36の第1中間接触面36aよりもヤング率が小さくて硬い第1外側接触部37により形成される面である
【0037】
次に、超音波モータ10の動作について説明する。
図3(a)に示すように、周囲の温度が常温のとき、移動子15の積層部31は、弾性体12の駆動面12dに略平行の円板形状である。
そのため、第1接触部34における弾性体12の駆動面12dに主に接触する部分は、第1中間接触部36の第1中間接触面36aとなる。この状態で、フレキシブルプリント基板14により圧電体13の各相の電極に不図示の増幅部から駆動信号が供給されると、圧電体13は、フレキシブルプリント基板14に供給された駆動信号によって伸縮する。圧電体13の伸縮により、振動子11の弾性体12に進行波が発生する。本実施形態では、4波の進行波が発生するようになっている。
【0038】
進行波は、弾性体12の駆動面12dを介して第1中間接触部36の第1中間接触面36aに伝達され、移動子15は、駆動力を受けて、回転する。移動子15の回転は、ゴム部材23、出力軸18、ギア20,4,5を介して、カム筒6を図1の矢印O方向に移動させる。この結果、超音波モータ10は、カメラ1のフォーカス調整を行うことになる。
【0039】
ここで、移動子15は、主に第1中間接触面36aが弾性体12の駆動面12dに接触した状態で回転している。そして、第1中間接触部36の第1中間接触面36aは、ヤング率が大きく軟らかい第1中間接触部36により形成される面である。
従って、超音波モータ10は、周囲の温度が常温のとき、回転時においてヤング率が大きく軟らかい第1中間接触面36aが弾性体12の駆動面12dに接触しているため、高速回転しても異音が発生することが低減される。
【0040】
また、周囲の温度が高温のとき、図3(b)に示すように、第2円板状部33は、第1円板状部32よりも線膨張係数が大きいため、第1円板状部32に対して伸びる。このため、積層部31(第2円板状部33及び第1円板状部32)の外周縁側は、弾性体12から離れる方向に反ってたわんでいる。これにより、弾性体12の駆動面12dに接触する部分は、第1中間接触部36よりもヤング率が小さくて硬い第1内側接触部35の第1内側接触面35aとなる。
【0041】
従って、周囲の温度が高温のときには、超音波モータ10は、移動子15の回転の立ち上がり時である超音波モータ10の起動時に、ヤング率が小さくて硬い第1内側接触面35aに接触した状態で起動するため、移動子15を速やかに回転させることができる。
【0042】
また、周囲の温度が低温のとき、図3(c)に示すように、第2円板状部33は、第1円板状部32よりも線膨張係数が大きいため、第1円板状部32に対して収縮する。このため、積層部31(第2円板状部33及び第1円板状部32)の外周縁側は、弾性体12に近づく方向に反ってたわんでいる。これにより、弾性体12の駆動面12dに接触する部分は、第1中間接触部36よりもヤング率が小さくて硬い第1外側接触部37の第1外側接触面37aとなる。
【0043】
従って、周囲の温度が低温のときには、超音波モータ10は、移動子15の回転の立ち上がり時である超音波モータ10の起動時に、ヤング率が小さくて硬い第1外側接触面37aに接触した状態で起動するため、移動子15を速やかに回転させることができる。
【0044】
以上のように構成される超音波モータ10を備えたレンズ鏡筒3、カメラ1は、焦点調整を速やかにかつ静かに行うことができる。
また、超音波モータ10を備えたレンズ鏡筒3、カメラ1は、周囲の温度に影響されることなく、焦点調整を速やかに行うことができる。
【0045】
以上、第1実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)超音波モータ10は、周囲の温度が常温のとき、積層部31が弾性体12の駆動面12dに略平行であるため、ヤング率が大きく軟らかい第1中間接触面36aが主に弾性体12の駆動面12dに接触している。
また、超音波モータ10は、周囲の温度が高温のとき、積層部31の外周縁側が弾性体12から離れる方向に反ってたわむため、ヤング率が小さい硬い第1内側接触面35aが弾性体12の駆動面12dに接触する。
また、超音波モータ10は、周囲の温度が低温のとき、積層部31の内周縁側が弾性体12から離れる方向に反ってたわむため、ヤング率が小さい第1外側接触面37aが弾性体12の駆動面12dに接触する。
【0046】
そのため、常温での回転時において、超音波モータ10は、主にヤング率が大きく軟らかい第1中間接触面36aが弾性体12の駆動面12dに接触しているので、高速回転しても異音が発生することが低減される。更に、高温時及び低温時において、超音波モータ10は、移動子15の回転の立ち上がり時である超音波モータ10の起動時に、ヤング率が小さい硬い第1内側接触面35aや第1外側接触面37aが弾性体12の駆動面12dに接触するので、移動子15を速やかに回転させることができる。
従って、超音波モータ10は、常温での回転時に異音の発生を低減することができるとともに、低温条件下や高温条件下における起動特性の低下を低減することができる。
【0047】
(2)また、第1接触部34は、径方向においてヤング率の異なる同心の円環状に形成される。そのため、ヤング率が大きい部分の割合を適宜調整することで、超音波モータ10の回転特性の低下を低減することができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態については、主として、第1実施形態とは異なる点を説明し、第1実施形態と同様な構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。また、超音波モータの動作についても第1実施形態と同様であるため説明を省略する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、主に、移動子15A及び弾性体121である。
図4は、周囲の温度が異なる場合における本発明の第2実施形態の超音波モータ10Aの移動子15Aの形状を示す図であって、(a)は、常温のときの移動子15Aの形状を示す図であり、(b)は、高温のときの移動子15Aの形状を示す図であり、(c)は、低温のときの移動子15Aの形状を示す図である。
【0049】
図4に示すように、第2実施形態の超音波モータ10Aの弾性体121は、櫛歯部12aの先端から移動子15A側に向けて突出する突出部12fを有している。突出部12fは、出力軸18の径方向に所定長さ(幅)を有して略円環形状に形成されている。突出部12fの先端面は、移動子15Aに加圧接触され、移動子15Aを駆動する駆動面12dとなる。
【0050】
移動子15Aは、円筒基部30と、第1環状部310と、第1接触部34と、を有している。第1接触部34は、第1実施形態と同様であるため詳細な説明を省略するが、第1内側接触部35と、第1中間接触部36と、第1外側接触部37とを有している。第1内側接触部35、第1中間接触部36及び第1外側接触部37それぞれは、弾性体12の駆動面12dに対向するとともに、弾性体12の駆動面12dに接触可能な、第1内側接触面35a、第1中間接触面36a及び第1外側接触面37aを有している。
円筒基部30は、第1実施形態と同様の構成であるため詳細な説明を省略する。
【0051】
第1環状部310は、出力軸18の軸方向に所定長さ(厚さ)を有する略円環形状で円板状に形成される。第1環状部310は、第1内側筒状部311と、第1中間筒状部312と、第1外側筒状部313とを有している。
【0052】
第1内側筒状部311、第1中間筒状部312及び第1外側筒状部313は、金属材料によって形成され、同心状に互いに接合されている。第1内側筒状部311、第1中間筒状部312及び第1外側筒状部313は、出力軸18側から、第1内側筒状部311、第1中間筒状部312、第1外側筒状部313の順に、径方向に配置されている。第1内側筒状部311、第1中間筒状部312及び第1外側筒状部313は、出力軸18の軸方向の長さ(厚さ)は、略同じに形成されている。
【0053】
第1環状部310は、径方向において互いに線膨張係数の異なる同心の複数の円環状に形成される。本実施形態においては、第1中間筒状部312の線膨張係数は、第1内側筒状部311及び第1外側筒状部313の線膨張係数よりも大きい。
【0054】
このように構成される第1環状部310は、周囲の温度が低温及び高温に変化することにより変形する。
具体的には、図4(a)に示すように、第1環状部310は、周囲の温度が常温のときは、積層部31が弾性体121の駆動面12dに略平行の円板形状である。そして、第1環状部310の径方向の長さは、第1中間接触部36の第1中間接触面36aが突出部12fの駆動面12dに接触する長さである。第1中間接触面36aは、ヤング率が大きく軟らかい面である。
【0055】
また、図4(b)に示すように、第1環状部310は、周囲の温度が高温になると、第1中間筒状部312の線膨張係数が大きいため、出力軸18の径方向に伸びる。これにより、第1環状部310の径方向の長さは、第1内側接触面35aが突出部12fの駆動面12dに接触する長さに伸長する。第1内側接触面35aは、ヤング率が小さく硬い面である。
【0056】
また、図4(c)に示すように、第1環状部310は、周囲の温度が低温になると、第1中間筒状部312の線膨張係数が大きいため、出力軸18の径方向に収縮する。これにより、第1環状部310の径方向の長さは、第1外側接触面37aが突出部12fの駆動面12dに接触する長さに収縮する。第1外側接触面37aは、ヤング率が小さく硬い面である。
【0057】
以上のように構成されることによって、第2実施形態の超音波モータ10Aは、前述の第1実施形態と同様に、常温時において、ヤング率が大きく軟らかい第1中間接触部36の第1中間接触面36aが接触するため、高速回転しても異音が発生することが低減される。更に、超音波モータ10Aは、高温時及び低温時において、ヤング率が小さく硬い第1内側接触面35a又は第1外側接触面37aが突出部12fの駆動面12dに接触するため、超音波モータ10Aの起動時に、移動子15Aを速やかに回転させることができる。
【0058】
第2実施形態によると、以下の効果を有する。
超音波モータ10Aは、周囲の温度が常温のとき、ヤング率が大きく軟らかい第1中間接触面36aが弾性体12の駆動面12dに接触している。また、超音波モータ10Aは、周囲の温度が高温のとき、線膨張係数の大きい第1中間筒状部312が主に径方向に伸びて、ヤング率が小さく硬い第1内側接触面35aが弾性体12の駆動面12dに接触する。また、超音波モータ10Aは、周囲の温度が低温のとき、第1中間筒状部312が主に径方向に収縮して、ヤング率が小さく硬い第1外側接触面37aが弾性体12の駆動面12dに接触する。
そのため、超音波モータ10Aは、第1実施形態の超音波モータ10と同様な効果を有し、常温時において、高速回転しても異音が発生することが低減される。更に、超音波モータ10Aは、高温時及び低温時において、超音波モータ10Aの起動時に、移動子15Aを速やかに回転させることができるため、起動特性の低下を低減することができる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態については、主として、第1実施形態及び第2実施形態とは異なる点を説明し、第1実施形態及び第2実施形態と同様な構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。また、超音波モータの動作についても第1実施形態と同様であるため説明を省略する。第3実施形態が第2実施形態と異なる点は、主に、移動子15Bである。図5は、本発明の第3実施形態の超音波モータ10Bの移動子15Bの形状を示す図であって、(a)は、超音波モータ10Bの停止時の移動子15Bの形状を示す図であり、(b)は、超音波モータ10Bの回転時の移動子15Bの形状を示す図である。
【0060】
第3実施形態の超音波モータ10Bの弾性体121は、第2実施形態と同様に、櫛歯部12aの先端から移動子15B側に向けて突出する突出部12fを有している。突出部12fの先端面は、移動子15Aに加圧接触され、移動子15Bを駆動する駆動面12dとなる。
【0061】
図5に示すように、第3実施形態の超音波モータ10Bの移動子15Bは、円筒基部30と、第2環状部320と、第2接触部341と、を有している。円筒基部30は、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成であるため詳細な説明を省略する。
第3実施形態の第2接触部341は、出力軸18から離間した略円環形状に形成されている。第2接触部341は、第2内側接触部351と、第2外側接触部361とを有している。第2接触部341の第2内側接触部351及び第2外側接触部361それぞれは、弾性体121の駆動面12dに対向するとともに、弾性体121の駆動面12dに接触可能な、第2内側接触面351a及び第2外側接触面361aを有している。
【0062】
第2内側接触部351及び第2外側接触部361は、金属材料により短筒の円環状に形成されている。第2内側接触部351及び第2外側接触部361は、出力軸18を中心に、同心状に形成されている。第2内側接触部351及び第2外側接触部361は、出力軸18側から、第2内側接触部351、第2外側接触部361の順に径方向に配置されて一体的に形成されている。
【0063】
第2接触部341は、径方向において互いにヤング率の異なる同心の複数の円環状に形成される。本実施形態においては、第2接触部341の第2内側接触部351のヤング率は、第2外側接触部361のヤング率よりも大きい。
【0064】
第2環状部320は、出力軸18の軸方向に所定長さ(厚さ)を有する略円環形状で円板状に形成される。第2環状部320は、第2内側筒状部321と、第2中間筒状部322と、第2外側筒状部323とを有している。
【0065】
第2内側筒状部321、第2中間筒状部322及び第2外側筒状部323は、金属材料によって形成され、同心状に互いに接合されている。第2内側筒状部321、第2中間筒状部322及び第2外側筒状部323は、出力軸18側から、第2内側筒状部321、第2中間筒状部322、第2外側筒状部323順に、径方向に配置されている。第2内側筒状部321、第2中間筒状部322及び第2外側筒状部323は、出力軸18の軸方向の長さ(厚さ)は、略同じに形成されている。
【0066】
第2環状部320は、径方向において互いにヤング率の異なる同心の複数の円環状に形成される。本実施形態においては、第2中間筒状部322のヤング率は、第2内側筒状部321及び第2外側筒状部323のヤング率よりも大きい。
【0067】
このように構成される第2環状部320は、移動子15の回転時において、ヤング率が大きく軟らかい第2中間筒状部322が遠心力で径方向に伸びる。
具体的には、図5(a)に示すように、第2環状部320は、移動子15の停止時においては、積層部31が弾性体12の駆動面12dに略平行の円筒形状である。そして、第2環状部320は、第2外側接触面361aが弾性体12の駆動面12dに接触するような径方向の長さである。第2外側接触面361aは、ヤング率が小さく硬い面である。
【0068】
また、図5(b)に示すように、第2環状部320は、移動子15が弾性体12に対して一定の回転数よりも大きい回転数で回転したときには、第2中間筒状部322のヤング率が大きく軟らかいため、第2中間筒状部322が遠心力で出力軸18の径方向に伸びる。これにより、第2環状部320は、第2内側接触面351aが弾性体12の駆動面12dに接触するような径方向の長さに伸長する。第2内側接触面351aは、ヤング率が大きく軟らかい面である。
【0069】
以上のように構成されることによって、第3実施形態の超音波モータ10Bは、超音波モータ10Bの起動時に、ヤング率の小さい硬い第2外側接触面361aが突出部12fの駆動面12dに接触する。そのため、超音波モータ10Bは、移動子15Bを速やかに回転させることができる。更に、超音波モータ10Bは、移動子15Bが弾性体121に対して一定の回転数よりも大きい回転数で回転したときには、ヤング率が大きく軟らかい第2内側接触面351aが接触する。そのため、超音波モータ10Bは、高速回転しても異音が発生することが低減される。
【0070】
第3実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)超音波モータ10Bは、超音波モータ10Bの起動時に、ヤング率の大きい第2中間筒状部322が伸びていない状態であるため、ヤング率の小さい硬い第2外側接触面361aが弾性体12の駆動面12dに接触している。そのため、超音波モータ10Bは、超音波モータ10Bの起動時に、移動子15Bを速やかに回転させることができる。これにより、超音波モータ10Bは、起動特性の低下を低減することができる。
また、移動子15Bが弾性体121に対して一定の回転数よりも大きい回転数で回転したときには、ヤング率の大きい第2中間筒状部322が遠心力で伸びて、ヤング率の大きい軟らかい第2内側接触面351aが弾性体121の駆動面12dに接触する。これにより、超音波モータ10Bは、高速回転しても異音が発生することが低減される。
【0071】
(2)第2環状部320及び第2接触部341は、径方向においてヤング率の異なる同心の円環状に形成される。そのため、ヤング率が大きい部分の割合を適宜調整することで、超音波モータ10Bの回転特性の低下を低減することができる。
【0072】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
【0073】
(1)前述の第1実施形態において、第2円板状部33の線膨張係数を第1円板状部32の線膨張係数よりも大きく構成したが、第1円板状部32の線膨張係数を第2円板状部33の線膨張係数よりも大きく構成してもよい。
この場合、前述の第1実施形態と同様に、周囲の温度が常温のとき、ヤング率が大きい軟らかい部分である第1中間接触面36aが主に弾性体12の駆動面12dに接触する。
また、周囲の温度が高温のとき、第1円板状部32が第2円板状部33に対して伸びて、積層部31の外周縁側が弾性体12に近づく方向に反ってたわむ。これにより、第1外側接触面37aは、弾性体12に接触する。
また、周囲の温度が低温のとき、第1円板状部32が第2円板状部33に対して収縮して、積層部31の外周縁側が弾性体12から離れる方向に反ってたわむ。これにより、第1内側接触面35aは、弾性体12に接触する。
そのため、第1実施形態と同様に、常温時において、超音波モータ10は、高速回転しても異音が発生することが低減される。更に、高温時及び低温時において、超音波モータ10の起動時に、超音波モータ10は、移動子15を速やかに回転させることができる。
【0074】
(2)また、前述の第2実施形態においては、第1中間筒状部312の線膨張係数を、第1内側筒状部311及び第1外側筒状部313よりも大きく構成したが、これに制限されず、第1内側筒状部311及び第1外側筒状部313の線膨張係数を、第1中間筒状部312よりも大きく構成してもよい。この場合においても、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、常温時において、超音波モータ10Aは、高速回転しても異音が発生することが低減される。更に、超音波モータ10Aは、高温時及び低温時において、第1内側筒状部311及び第1外側筒状部313が径方向に伸縮するため、超音波モータ10Aの起動時に、移動子15Aを速やかに回転させることができる。
【符号の説明】
【0075】
1:カメラ、3:レンズ鏡筒、10,10A,10B:超音波モータ、11:振動子、12:弾性体、13:圧電体、15,15A,15B:移動子、31:積層部、32:第1円板状部、33:第2円板状部、34:第1接触部、35:第1内側接触部、35a:第1内側接触面、36:第1中間接触部、36a:第1中間接触面、37:第1外側接触部、37a:第1外側接触面、121:弾性体、310:第1環状部、320:第2環状部、341:第2接触部、351:第2内側接触部、351a:第2内側接触面、361:第2外側接触部、361a:第2外側接触面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械変換素子に接触して設けられ、前記電気機械変換素子の駆動により振動波を生じる弾性体と、前記弾性体と加圧接触し、前記振動波によって回転軸を中心に前記弾性体に対して相対的に回転される相対移動部材と、を備える振動アクチュエータであって、
前記相対移動部材は、前記弾性体に接触可能でかつ該相対移動部材の前記回転軸に直交する径方向において互いにヤング率の異なる同心の複数の円環状に形成される接触部を有し、該相対移動部材が変形しない場合と変形する場合とにおいて、前記接触部におけるヤング率の異なる部分が前記弾性体に接触すること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動アクチュエータであって、
前記相対移動部材は、該相対移動部材の前記回転軸方向において互いに線膨張係数の異なる複数の円板状部が積層された積層部を有し、周囲の温度が常温のときにヤング率の大きい前記接触部において前記弾性体に接触し、周囲の温度が常温でないときに、前記積層部における前記複数の円板状部のうちの隣り合う円板状部の一方が前記一方に隣り合う他方に対して伸縮して前記回転軸を中心にたわむことにより、ヤング率の小さい前記接触部において前記弾性体に接触すること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1に記載の振動アクチュエータであって、
前記相対移動部材は、該相対移動部材の前記径方向において互いに線膨張係数の異なる同心の複数の円環状に形成される第1環状部を有し、周囲の温度が常温のときにヤング率の大きい前記接触部において前記弾性体に接触し、周囲の温度が常温でないときに、前記第1環状部における前記線膨張係数の大きい部分が前記径方向に伸縮することにより、ヤング率の小さい前記接触部において前記弾性体に接触する
こと、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1に記載の振動アクチュエータであって、
前記相対移動部材は、該相対移動部材の前記径方向において互いにヤング率の異なる同心の複数の円環状に形成される第2環状部を有し、前記弾性体に対して一定の回転数以下で回転したときにはヤング率の小さい前記接触部において前記弾性体に接触し、前記弾性体に対して前記一定の回転数よりも大きい回転数で回転したときには、前記第2環状部におけるヤング率の大きい部分が遠心力で伸びることにより、ヤング率の大きい前記接触部において前記弾性体に接触すること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の振動アクチュエータを備えるレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の振動アクチュエータを備えるカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−27235(P2013−27235A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162022(P2011−162022)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】