説明

振動アクチュエータ

【課題】回転子と振動子との接触部に潤滑剤を供給する構造の簡易化を図る振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【解決手段】振動アクチュエータ101は、ローラ1と、ローラ1に接触する第一当接面2a1及び第二当接面2b1を有する振動子2と、振動子2を振動させる圧電素子3と、ローラ1を振動子2に加圧する予圧部材8と、振動子2の第一当接面2a1及び第二当接面2b1の近傍に且つローラ1に接触させて設けられる潤滑部材10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータに係り、特に、振動アクチュエータの回転子と振動子との接触部を潤滑可能な振動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
多自由度であり、且つ高トルクな駆動を要求される部位に使用されるアクチュエータとして、超音波振動を発生して駆動する振動アクチュエータが使用されている。
振動アクチュエータには、超音波振動を発生する圧電素子等の振動手段と、振動手段に接触させて固定された振動子と、振動子に接触させて配置された回転子とが設けられている。振動子は、振動手段が発生する超音波振動からなる複合振動によって回転子との接触部に振動を発生させ、回転子は、この振動する接触部との間に発生する摩擦力によって、回転移動される。このような振動アクチュエータでは、回転子が振動子と接触した状態で回転されるため、これらの接触部分に摩耗が発生する。そこで、回転子と振動子との間の接触部分の摩耗を低減する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、球体の回転子(ロータ)を回転移動させる振動アクチュエータが記載されている。この振動アクチュエータでは、振動手段及び振動子(ステータ)が互いに連結されて円柱状の外形を形成し、振動子における振動手段との接触面と反対側の面に円筒状の凹部が形成され、この凹部の環状をした角部に回転子が接触配置されている。また、回転子には、凹部と反対側から、予圧部によって振動子に押し付けられる方向に予圧がかけられている。さらに、予圧部には、回転子に向かって開いた凹部が形成されており、この凹部の中には、グリス等の潤滑剤が収容されている。また、振動子の凹部にも、グリス等の潤滑剤が収容されている。そして、予圧部及び振動子のそれぞれには、予圧部の凹部及び振動子の凹部に連通する潤滑剤供給経路が形成されており、各凹部には、予圧部及び振動子の外部から潤滑剤を補給することができる。よって、特許文献1の振動アクチュエータでは、予圧部の凹部から予圧部と回転子との間に潤滑剤が供給されて潤滑され、振動子の凹部から振動子と回転子との間に潤滑剤が供給されて潤滑される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−206251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の振動アクチュエータでは、予圧部及び振動子に潤滑剤を収容する凹部及び各凹部へ潤滑剤を供給する経路を形成しているため、その構造が複雑になり、製作工数も増大するため、コストが増大するという問題がある。さらに、回転子が球体でなくローラ等であり、予圧を回転子の外部からではなく内部からかける場合には、潤滑剤を収容する凹部の構造がさらに複雑になり、コストが増大するという問題がある。
【0006】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、回転子と振動子との接触部に潤滑剤を供給する構造の簡易化を図る振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る振動アクチュエータは、回転子と、回転子に接触する接触部を有する振動子と、振動子を振動させる振動手段と、回転子を振動子に加圧する予圧手段と、振動子の接触部の近傍に且つ回転子に接触させて設けられる供給体とを備える。
供給体は回転子と振動子の両方に接触していてもよい。
供給体は、振動子の接触部と異なる位置で回転子に接触していてもよい。
供給体は、多孔質性の部材に潤滑剤を含浸させたものであってよい。
振動子は、突出する突出爪部を有し、突出爪部の表面の一部に接触部が形成され、供給体は、突出爪部の少なくとも一部に接触していてもよい。
回転子は、振動子の接触部と接触する曲面を有してもよい。
回転子は、振動子の接触部と接触する球状面を有してもよい。
振動手段は、振動の腹の位置又は振動の腹の近傍が振動子の接触部に含まれるように、振動が制御されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、振動アクチュエータの回転子と振動子との接触部に潤滑剤を供給する構造の簡易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る振動アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係る振動アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態4に係る振動アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図5】図4のx5−x5線及びz5−z5線を含む面をVの方向より見た模式断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、この発明の実施の形態について、添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず、図1を用いて、この発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータ101の構成を示す。
【0011】
図1を参照すると、振動アクチュエータ101は、円筒状をした一対の第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bを備えている。第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bは、同形状をして対向して設けられている。また、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bは、ローラ軸1cによって連結されて、ローラ軸1cを中心に一体に回転動作することができ、第一ローラ部1a、第二ローラ部1b及びローラ軸1cは、1つのローラ1を形成している。ここで、ローラ1は回転子を構成している。
さらに、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bには、それぞれの円筒面1aa及び1baにおいて、柱状のアーム部材6が連結されている。よって、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bがローラ軸1cを中心に紙面上で時計回りの方向P又は反時計回りの方向Qに回転すると、アーム部材6が、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと共に、方向P又は方向Qに回転移動する。
【0012】
また、振動アクチュエータ101は、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bそれぞれの円筒面1aa及び1baに接触するようにして配置された略円筒状の振動子2を有している。振動子2には、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1b側となる端面2cにおいて、帯状に突出する第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bが平行に形成されている。そして、第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bは、これらの間に溝部2abを形成している。また、第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bはそれぞれ、溝部2ab側の角部が面取りされており、この面取りされた部分が第一当接面2a1及び第二当接面2b1を形成している。よって、振動子2は、第一突出爪部2aの第一当接面2a1及び第二突出爪部2bの第二当接面2b1を、第一ローラ部1aの円筒面1aa及び第二ローラ部1bの円筒面1baと接触させている。ここで、第一当接面2a1及び第二当接面2b1は、振動子2の接触部を構成している。
【0013】
また、振動アクチュエータ101は、振動子2における第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと反対側の端面に、円筒状の圧電素子3を有しており、振動子2と圧電素子3とは互いに連結・固定されている。圧電素子3は、図示しない駆動回路に電気的に接続される複数の圧電素子板を積層した構造を有している。そして、圧電素子3の複数の圧電素子板は、交流電圧を印加されることによって超音波振動を発生する。ここで、圧電素子3は、振動手段を構成している。
さらに、圧電素子3における振動子2と反対側の端面には、円筒状をした第一基部ブロック4及び第二基部ブロック5が順次設けられ、これらは互いに固定されている。
【0014】
また、ローラ軸1cには、予圧部材8が回転自在に設けられている。予圧部材8は、ローラ軸1cに対してその周りを取り囲むようにして回転自在に取り付けられた取付部8aと、取付部8aに連結されて振動子2、圧電素子3及び第一基部ブロック4を貫通する棒状の軸部8bと、第二基部ブロック5に設けられて取付部8aと反対側で軸部8bに連結された付勢部8cとを有している。付勢部8cは、軸部8bに対して取付部8aと反対側の方向Fに引張する力を加える。よって、予圧部材8の付勢部8cの引張力によって、軸部8bは方向Fに引き付けられ、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bが、振動子2に押し付けられている。すなわち、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bは、振動子2に対して加圧する予圧力が付与されて、振動子2に対して固定されている。なお、予圧部材8は、予圧手段を構成している。
ここで、説明の便宜上、第二基部ブロック5からローラ軸1cへ向かう予圧部材8の軸部8bの軸方向をz軸正方向と規定し、z軸に対して垂直であるローラ軸1cの軸方向にx軸が、x軸及びz軸に対して垂直にy軸がそれぞれ延びているものとする。
【0015】
また、振動アクチュエータ101は、振動子2の溝部2abに設けられ、且つx軸方向に延びる略直方体状をした潤滑部材10を有している。潤滑部材10は、振動子2の第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bに隣接し接触するようにして設けられ、第一当接面2a1に隣接する位置から第二当接面2b1に隣接する位置の間の全体にわたり第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと接触すると共に、振動子2の溝部2abの端面2cと接触している。このとき、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bのそれぞれにおいて、潤滑部材10がと接触している部位と、第一突出爪部2aの第一当接面2a1及び第二突出爪部2bの第二当接面2b1が接触している部位とは、重なっていない。すなわち、潤滑部材10、並びに第一当接面2a1及び第二当接面2b1はそれぞれ、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと直接接触している。
ここで、潤滑部材10は、供給体を構成している。
【0016】
また、潤滑部材10は、可撓性及び/又は弾性を有する多孔質性の樹脂部材に、オイルやグリスなどの潤滑油等の潤滑剤を含浸させたものである。なお、以下の実施の形態では、潤滑剤としてオイルやグリスなどの潤滑油を使用するものとする。
そして、潤滑部材10は、予圧力により振動子2に押し付けられる第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと接触し且つこれらによって押し潰され、円筒面1aa及び1baの形状にならうように変形している。よって、潤滑部材10は、予圧力と、予圧力に抗して変形を復元する方向に働く潤滑部材10の弾性力との相互作用によって、振動子2の溝部2abに固定されている。すなわち、潤滑部材10は、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bを振動子2に対して固定する予圧力を利用して、溝部2abに固定されている。
【0017】
また、潤滑部材10の樹脂部材は、多孔質による連続気孔体構造の毛細管現象を用いて樹脂部材に潤滑油を吸収・保持しており、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと接触すると、表面張力によるポンプ効果で潤滑油を第一ローラ部1aの円筒面1aa及び第二ローラ部1bの円筒面1baに放出・供給する。
【0018】
また、潤滑部材10の樹脂部材は、気孔率の高いものほど潤滑油の含浸量が多くなり、気孔径の大きいものほど潤滑油の供給量が多くなる。このため、樹脂部材には、気孔率の高いものが好ましく、例えば、約90%以上の気孔率を有するPVA樹脂(ポリビニルアルコール)を使用することが好ましい。そして、所望の気孔径を有する樹脂部材を選定することにより、潤滑油の供給量を設定することができる。
また、潤滑油には、例えば、フッ素系、グリコール系、合成炭化水素系、又はエステル系のオイルやグリスを使用することができる。
【0019】
次に、図1を用いて、この発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータ101の動作を示す。
図1を参照すると、圧電素子3は、その内部の各圧電素子板に図示しない駆動回路によって交流電圧が印加されると、各圧電素子板が振動方向の異なる超音波振動を発生する。さらに、これらの超音波振動の複合振動が振動子2に伝達され、振動子2の第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bの先端には、x軸回りの楕円振動が発生する。第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bのそれぞれは、その先端の第一当接面2a1及び第二当接面2b1においてx軸回りの超音波楕円振動を行うことによって進行波を発生させて、第一ローラ部1aの円筒面1aa及び第二ローラ部1bの円筒面1baを引っ掻くようにして、これらを方向P又は方向Qに回転させる。これにより、振動アクチュエータ101では、アーム部材6が、ローラ1を中心として、振動子2、圧電素子3、第一基部ブロック4及び第二基部ブロック5に対して、屈折するように動作する。なお、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bの回転方向は、圧電素子3に印加する交流電圧を制御することによって、制御される。
また、圧電素子3の発生する超音波振動は、圧電素子3から振動子2に伝達された超音波振動において、その振幅が最も大きくなる振動の腹又は振動の腹の近傍が、振動子2の第一突出爪部2aの第一当接面2a1及び第二突出爪部2bの第二当接面2b1の位置となる、すなわち、第一当接面2a1及び第二当接面2b1に含まれるように、圧電素子3に印加する交流電圧を制御することによって振動の位相が制御されている。このため、振動の腹の位置又はその近傍となる第一当接面2a1及び第二当接面2b1では、超音波振動の振幅が大きくなっている、すなわち、振動が大きくなっている。
【0020】
また、第一ローラ部1aの円筒面1aa及び第二ローラ部1bの円筒面1baには、潤滑部材10の樹脂部材が接触することによって、表面張力のポンプ効果で潤滑油が、第一突出爪部2aの第一当接面2a1及び第二突出爪部2bの第二当接面2b1の間の全体にわたり途切れることなく供給されている。さらに、振動子2を介して超音波振動が与えられている第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bでは、供給された潤滑油は、超音波振動の腹である最も振動している箇所の近傍で、超音波振動の腹に集まる特性を有している。これは、液体が超音波振動する部材の表面で、振動の大きい腹部に集まる現象を利用している。このため、供給された潤滑油は、円筒面1aa及び1baにおいて、振動の腹である振動子2の第一当接面2a1及び第二当接面2b1との接触部に集まり、円筒面1aa及び1baと第一当接面2a1及び第二当接面2b1との間の接触箇所全体に浸透し油膜を形成する。よって、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと振動子2との間における接触箇所は、潤滑油で潤滑される。さらに、この接触箇所への潤滑油の供給は、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bに超音波振動が与えられていれば各ローラ部1a,1bが回転しなくとも行われる。従って、予圧部材8によって振動子2に押し付けられつつ回転する第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと、振動子2との間における摩耗の発生が抑制される。つまり、振動アクチュエータとしての寿命が長くなる。
特に、起動時に予圧により油膜が切れやすい状態に対して、超音波振動で潤滑油が瞬時に供給されるため、起動時の摩耗が抑制される。つまり、振動アクチュエータの起動がスムーズになる。
【0021】
このとき、潤滑部材10から第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bに作用する力は、潤滑部材10がその変形を復元する弾性力だけであるため、PVA樹脂のような柔軟な樹脂部材を使用することによって、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bに与える駆動抵抗を低く抑えることができる。
また、潤滑部材10に使用する潤滑油の粘度を高くするほど、潤滑油が形成する油膜による第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと振動子2との間における摩擦係数の低下、そして、それによる第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bの駆動力の低下を抑制することできる。同時に、使用する潤滑油の粘度を高くするほど、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと振動子2との間における摩耗を抑制することができる。よって、潤滑油は、高粘度のものが好ましく、例えば、ISO粘度分類でISO VG 180以上の粘度のものが好ましい。また、超音波環境下では潤滑油の成分が蒸発しやすくなるが、フッ素系であれば、揮発(蒸発)しにくいので好ましい。また温度上昇する環境下でも潤滑油の供給が保たれる。
【0022】
また、潤滑部材10の潤滑油の種類はどのようなものでも使用することができるが、特にフッ素系の潤滑油を使用することによって、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bの駆動力の低下、並びに、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと振動子2との間における摩耗がより抑制される。
【0023】
また、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bが回転する際、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと振動子2との間に摩耗粉が発生するが、潤滑部材10は、発生した摩耗粉が第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bに付着するのを防ぐような供給量の潤滑油を供給できるようにすることもできる。このとき、潤滑部材10の樹脂部材では、摩耗粉の硬さ、大きさに応じて気孔径が選定される。例えば、潤滑部材10の樹脂部材の気孔径を40μm〜130μmとすることによって、硬く微細な摩耗粉の付着を防ぐことができる。また、40μm〜130μmの気孔径は、発生する摩耗粉に比べて十分大きいため、このような気孔径を有する潤滑部材10は、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bの回転時、円筒面1aa及び1baに付着した摩耗粉や微細なごみを拭き取る作用も有する。
【0024】
このように、実施の形態1に係る振動アクチュエータ101は、ローラ1と、ローラ1に接触する第一当接面2a1及び第二当接面2b1を有する振動子2と、振動子2を振動させる圧電素子3と、ローラ1を振動子2に加圧する予圧部材8と、振動子2の第一当接面2a1及び第二当接面2b1の近傍に且つローラ1に接触させて設けられる潤滑部材10とを備える。
【0025】
このとき、潤滑部材10を振動子2の第一当接面2a1及び第二当接面2b1の近傍に且つローラ1に接触させて設けることによって、潤滑部材10の潤滑油が、ローラ1に供給される。さらに、振動子2を介して振動が与えられているローラ1では、第一当接面2a1及び第二当接面2b1の近傍に供給された潤滑油は、最も振動している箇所である振動子2との接触部の第一当接面2a1及び第二当接面2b1に集まり、第一当接面2a1及び第二当接面2b1と振動子2と間の接触箇所全体に浸透し潤滑する。よって、ローラ1の回転の有無にかかわらず、第一当接面2a1及び第二当接面2b1に潤滑油を供給することができる。しかしながら、潤滑部材10は、振動子2の第一当接面2a1及び第二当接面2b1の近傍に且つローラ1に接触させて設けられるだけの簡易な構造でよい。従って、ローラ1と振動子2との接触部に潤滑油を供給する構造の簡易化を図ることが可能になる。
【0026】
また、潤滑部材10は、多孔質性の部材に潤滑油を含浸させたものである。このとき、潤滑部材10は、ローラ1に接触すると、表面張力によるポンプ効果でローラ1に潤滑油を途切れることなく供給することができる。よって、潤滑部材10の構造をさらに容易にすることが可能になる。
また、潤滑部材10は、振動子2の第一当接面2a1及び第二当接面2b1と異なる位置でローラ1に接触している。このとき、潤滑部材10を振動子2とローラ1と間の摺動部に介在させないことによって、潤滑部材10がローラ1の回転に与える抵抗を低減することができる。さらに、潤滑部材10に使用する材料は、摩耗強度の考慮を必要とせずに選択することができる。
【0027】
また、振動子2は、突出する第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bを有し、第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bそれぞれの表面の一部に、第一当接面2a1及び第二当接面2b1が形成され、潤滑部材10は、第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bの少なくとも一部に接触している。これによって、潤滑部材10は、第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bの少なくとも一部に接触しこれらに隣接して設けられている。従って、潤滑部材10がローラ1に接触する部位と、第一当接面2a1及び第二当接面2b1との距離が近くなるため、潤滑部材10による第一当接面2a1及び第二当接面2b1への安定した潤滑油の供給を行うことが可能になる。
また、圧電素子3は、振動子2を振動させる振動における振動の腹又は振動の腹の近傍が振動子2の第一当接面2a1及び第二当接面2b1に含まれるように、振動が制御される。これによって、第一当接面2a1及び第二当接面2b1での振動を大きくすることができるため、潤滑部材10からローラ1の円筒面1aa及び1baに供給された潤滑油を、第一当接面2a1及び第二当接面2b1に効率的に集めることが可能になる。
【0028】
また、実施の形態1の振動アクチュエータ101において、潤滑部材10は、ローラ1と振動子2の両方に接触している。さらに、潤滑部材10は、ローラ1と振動子2との間に形成される溝部2abでローラ1を介して予圧部材8によって加圧されるように設けられている。これによって、潤滑部材10は、予圧部材8によってローラ1を固定するための力により固定されるため、固定のために別個の部品を不要としてコストを低減すると共に、省スペース化を図ることが可能になる。さらに、潤滑部材10を、振動子2の第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bの外側ではなくこれらの間の溝部2abに設けることによって、ローラ1が回転した場合に、アーム部材6が潤滑部材10に接触することがない。よって、潤滑部材10を第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bの外側に設ける場合に比べて、アーム部材6の可動範囲を拡大することが可能になる。
【0029】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る振動アクチュエータ102は、実施の形態1の振動アクチュエータ101における潤滑部材10の構成を変更したものである。
なお、以下の実施の形態において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0030】
図2を参照すると、振動アクチュエータ102は、潤滑部材20を除き、実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様の構成を有している。
振動アクチュエータ102の振動子2の溝部2abには、x軸方向に延びる直方体状をした第一潤滑部材20a及び第二潤滑部材20bが、予圧部材8の軸部8bを互いの間に挟むようにして、挿入されている。第一潤滑部材20aは、振動子2の第一突出爪部2aに隣接し接触させて設けられ、第二潤滑部材20bは、第二突出爪部2bに隣接し接触させて設けられている。
【0031】
第一潤滑部材20aは、実施の形態1の潤滑部材10と同様の材料からなる第一樹脂部材20a1と、金属等の硬質な材料からなる第一支持部材20a2とを有している。第一樹脂部材20a1は、第一支持部材20a2に対してz軸正方向側である紙面上の上方向に重ねて配置され、第一当接面2a1の近傍で第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bに接触し、それらの円筒面1aa及び1baの形状にならうように変形している。一方、第一支持部材20a2は振動子2の端面2cに接触している。
また、第二潤滑部材20bも、第一潤滑部材20aと同様にして、第二樹脂部材20b1及び第二支持部材20b2を有している。第二樹脂部材20b1は、第二当接面2b1の近傍で第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bに接触し、それらの円筒面1aa及び1baの形状にならうように変形している。一方、第二支持部材20b2は振動子2の端面2cに接触している。
【0032】
さらに、第一支持部材20a2及び第二支持部材20b2は、連結部材20cによって互いに連結されている。
よって、第一潤滑部材20a、第二潤滑部材20b及び連結部材20cは一体となって、潤滑部材20を形成している。そして、潤滑部材20は、例えば連結部材20cを掴んで、溝部2abに挿入する又は溝部2abから引き抜くことによって、交換可能になっている。
【0033】
また、振動アクチュエータ102では、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bに、第一潤滑部材20aの第一樹脂部材20a1、及び第二潤滑部材20bの第二樹脂部材20b1によって、潤滑油が供給される。さらに、圧電素子3の超音波振動が振動子2を介して伝達されることによって、供給された潤滑油は、第一当接面2a1及び第二当接面2b1に集まり、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと振動子2との間の接触箇所全体に浸透し潤滑する。
また、この発明の実施の形態2に係る振動アクチュエータ102のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
このように、実施の形態2に係る振動アクチュエータ102において、上記実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様な効果が得られる。
【0034】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る振動アクチュエータ103は、実施の形態1の振動アクチュエータ101において、振動子2における第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bの間の溝部2abに設けられていた潤滑部材10を、突出爪部の外側に設けたものである。
図3を参照すると、振動アクチュエータ103は、振動子32及び潤滑部材30を除き、実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様の構成と有している。
【0035】
振動子32は、z軸正方向側の端面32cの中央付近に、x軸方向に延びて帯状に突出する突出爪部32aを有し、突出爪部32aは、第一ローラ部1aの円筒面1aa及び第二ローラ部1b円筒面1baに整合する形状を有する当接面32a1をz軸正方向側に有している。そして、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bは、それぞれの円筒面1aa及び1baを当接面32a1に接触させて設けられている。
【0036】
さらに、振動子32の端面32cの上には、略台形状の断面を有し且つx軸方向に延びる柱状をした潤滑部材30が、突出爪部32aのy軸正方向側の側面32a2に隣接し接触させて設けられ、当接面32a1に隣接する位置で第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと接触している。潤滑部材30は、実施の形態1の潤滑部材10と同様の材料によって形成されて振動子32に固定されており、予圧力により振動子32に押し付けられている第一ローラ部1aの円筒面1aa及び第二ローラ部1bの円筒面1baに押し潰されてこれらの形状にならうように変形している。
【0037】
よって、振動アクチュエータ103では、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bに、潤滑部材30によって潤滑油が供給され、圧電素子3の超音波振動が振動子32を介して伝達されることによって、供給された潤滑油は、当接面32a1に集まり、当接面32a1と第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bとの間の接触箇所全体に浸透し潤滑する。このため、潤滑部材30は、突出爪部32aを挟んで両側に設ける必要がなく、片側のみでも振動子32と第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bとの間の接触箇所には潤滑油が供給される。
また、この発明の実施の形態3に係る振動アクチュエータ103のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
このように、実施の形態3に係る振動アクチュエータ103において、上記実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様な効果が得られる。
【0038】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係る振動アクチュエータ104は、実施の形態1の振動アクチュエータ101において、曲面を有する回転子として使用していた略円筒状のローラ1を球状面を有する球状としたものである。
図4を参照すると、振動アクチュエータ104は、ローラ41、振動子42、予圧部材48及び潤滑部材40を除き、実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様の構成と有している。
【0039】
振動アクチュエータ104の振動子42は、z軸正方向側の端面42dに、円弧状に延びて帯状に突出する突出爪部42a、42b及び42cを有し、突出爪部42a、42b及び42cは、1つの環を形成している。突出爪部42a、42b及び42cのそれぞれは、環の内側のz軸正方向側の角部に、当接面42a1、42b1及び42c1を有している。
【0040】
また、振動アクチュエータ104のローラ41は、球状の形状を有しており、その球状面41aを、振動子42の突出爪部42a、42b及び42cのそれぞれに、当接面42a1、42b1及び42c1で接触させて設けられている。(図5参照)
さらに、図5を参照すると、振動子42に配置されたローラ41のz軸正方向側には、予圧部材48が設けられ、予圧部材48は、ローラ41をz軸負方向側となる紙面上の下方向に加圧して、振動子42に押し付けている。
これにより、圧電素子3に交流電圧が印加されると、圧電素子3が発生する超音波振動の複合振動によって振動子42の突出爪部42a、42b及び42cが振動し、ローラ41が多自由度に回転される。
【0041】
図4に戻り、振動子42の端面42d上において、突出爪部42a、42b及び42cの内側の空間42abcには、円筒状をした潤滑部材40が突出爪部42a、42b及び42cに隣接し接触するようにして設けられている。潤滑部材40は、実施の形態1の潤滑部材10と同様の材料によって形成されている。なお、潤滑部材40は、分割し、突出爪部42a、42b及び42cのそれぞれに対して個別に設けてもよい。
【0042】
そして、図5をあわせて参照すると、潤滑部材40は、ローラ41が振動子42の突出爪部42a、42b及び42cに配置されて予圧部材48によって加圧されることによって、当接面42a1、42b1及び42c1のそれぞれに隣接した位置及び当接面同士の間でローラ41に接触し、ローラ41の球状面41aに押し潰されてこの形状にならうように変形する。これにより、潤滑部材40がローラ41と振動子42との間に固定される。(図5参照)
【0043】
よって、振動アクチュエータ104では、ローラ41に、潤滑部材40によって潤滑油が供給され、圧電素子3の超音波振動が振動子42を介して伝達されることによって、供給された潤滑油は、当接面42a1、42b1及び42c1に集まり、ローラ41と振動子42との間の接触箇所全体に浸透し潤滑する。
また、この発明の実施の形態4に係る振動アクチュエータ104のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
このように、実施の形態4に係る振動アクチュエータ104において、上記実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様な効果が得られる。
【0044】
また、実施の形態1、2及び4の潤滑部材10,20,40において、潤滑油を含浸させるものとして可撓性及び/又は弾性を有する樹脂部材を使用していたがこれに限定されるものでない。潤滑部材10,20,40の樹脂部材を、硬質な樹脂部材又は金属部材とし、潤滑部材10,20,40と振動子2,42との間に板ばねを挿入し、潤滑部材10,20,40をローラ1,41に押し付けるようにしてもよい。
また、実施の形態1〜4において、振動子2,32,42の突出爪部2a,2b,32a,42a,42b,42cに隣接させて、潤滑部材10,20,30,40を配置していたが、これに限定されるものでない。潤滑剤が供給可能であるならば、潤滑部材10,20,30,40は、突出爪部2a,2b,32a,42a,42b,42cと間隙を有して配置されてもよい。
【0045】
また、実施の形態1〜4において、潤滑部材10,20,30,40は、ローラ1,41及び振動子2,32,42と別個に設けられていたが、これに限定されるものでない。潤滑部材を、ローラ1の円筒面1aa及び1ba、若しくは、ローラ41の球状面41aに埋め込んでもよい。又は、潤滑部材を、振動子2の第一突出爪部2aの第一当接面2a1及び第二突出爪部2bの第二当接面2b1、振動子32の突出爪部32aの当接面32a1、若しくは、振動子42の突出爪部42a,42b,42cの当接面42a1,42b1,42c1に埋め込んでもよい。また、ローラ1の円筒面1aa及び1ba、若しくは、ローラ41の球状面41aを多孔質性の部材で形成して潤滑油を含浸させてもよく、又は、振動子2の第一突出爪部2a及び第二突出爪部2b、振動子32の突出爪部32a、若しくは、振動子42の突出爪部42a,42b,42cを多孔質性の部材で形成して潤滑油を含浸させてもよい。
【0046】
また、実施の形態1〜4において、潤滑部材10,20,30,40を積極的に振動させてもよい。例えば、振動手段を別個に設けて潤滑部材10,20,30,40を振動させてもよい。潤滑部材10,20,30,40を積極的に振動させることにより、ローラ1,41への潤滑油の供給量を増大させることができるため、ローラ1,41及び振動子2,32,42の摩耗を低減し振動アクチュエータ101,102,103,104の寿命を長くすることが可能になる。振動手段を別個に設けなくても、定在波が発生するように振動手段を振動させれば、潤滑油の供給が可能である。ほかに予圧力以下の振動で振動手段を振動させてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1,41 ローラ(回転子)、1a 第一ローラ部(回転子)、1b 第二ローラ部(回転子)、1c ローラ軸(回転子)、2,32,42 振動子、2a 第一突出爪部、2a1 第一当接面(接触部)、2b 第二突出爪部、2b1 第二当接面(接触部)、3 圧電素子(振動手段)、8,48 予圧部材(予圧手段)、10,20,30,40 潤滑部材、32a,42a,42b,42c 突出爪部、32a1,42a1,42b1,42c1 当接面(接触部)、101,102,103,104 振動アクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、
前記回転子に接触する接触部を有する振動子と、
前記振動子を振動させる振動手段と、
前記回転子を前記振動子に加圧する予圧手段と、
前記振動子の前記接触部の近傍に且つ前記回転子に接触させて設けられる供給体と
を備える振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記供給体は前記回転子と前記振動子の両方に接触している請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記供給体は、前記振動子の前記接触部と異なる位置で前記回転子に接触している請求項1または2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記供給体は、多孔質性の部材に潤滑剤を含浸させたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記振動子は、突出する突出爪部を有し、
前記突出爪部の表面の一部に前記接触部が形成され、
前記供給体は、前記突出爪部の少なくとも一部に接触している請求項1〜4のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記回転子は、前記振動子の前記接触部と接触する曲面を有する請求項1〜5のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項7】
前記回転子は、前記振動子の前記接触部と接触する球状面を有する請求項1〜6のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項8】
前記振動手段は、振動の腹の位置又は振動の腹の近傍が前記振動子の前記接触部に含まれるように、振動が制御される請求項1〜7のいずれか一項に記載の振動アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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