説明

振動アクチュエータ

【課題】回転子の表面上の異物を含む潤滑剤が回転子の回転軸へ流れるのを防ぐことによりその寿命の向上を図る振動アクチュエータを提供することを課題とする。
【解決手段】振動アクチュエータ101は、振動子2と、振動子2に接触させて設けられ且つローラ軸1cを中心に回転可能なローラ1と、ローラ1を振動子2に加圧する予圧部材8と、振動子2を振動させる圧電素子3と、振動子2及びローラ1に潤滑剤を供給可能な潤滑剤供給体10とを備える。ローラ1は内側侵入防止カバー11の第一突起部11a及び第二突起部11bを有し、内側侵入防止カバー11の第一突起部11a及び第二突起部11bは、振動子2とローラ1とが接触する領域からローラ軸1cに向かう経路の途中にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータに係り、特に、回転子の回転軸への異物の侵入を防止する振動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットのハンドやアームの関節等のように、多自由度であり、且つ高トルクな駆動を要求される部位に使用されるアクチュエータとして、超音波振動を発生して駆動する振動アクチュエータが使用されている。
振動アクチュエータには、超音波振動を発生する圧電素子等の振動手段と、振動手段に接触させて固定された振動子と、振動子に接触させて配置された回転子とが設けられている。振動子は、振動手段の発生する超音波振動からなる複合振動によって回転子との接触部に振動を発生させ、回転子は、この振動する接触部との間に発生する摩擦力によって、回転移動される。このような振動アクチュエータでは、回転子が振動子と接触した状態で回転されるため、これらの接触部分に摩耗が発生する。そこで、回転子と振動子との間の接触部分の摩耗を低減する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、球体の回転子(ロータ)を回転移動させる振動アクチュエータが記載されている。この振動アクチュエータでは、振動手段及び振動子(ステータ)が互いに連結されて円柱状の外形を形成し、振動子における振動手段との接触面と反対側の面に円筒状の凹部が形成され、この凹部の環状をした角部に回転子が接触配置されている。また、回転子には、凹部と反対側から、予圧部によって振動子に押し付けられる方向に予圧がかけられている。さらに、振動子の凹部には、グリス等の潤滑剤が収容されており、振動子の凹部から振動子と回転子との間に潤滑剤が供給されて潤滑される。
【0004】
また、振動アクチュエータとして、特許文献2には、回転軸(ローラ軸)で連結された2つの略円筒状のローラを回転子として有するものが記載されている。この振動アクチュエータでは、振動手段(圧電素子)及び振動子(固定子)が互いに連結されて円柱状の外形を形成し、振動手段及び振動子を貫通する支持部材に回転子の回転軸を回転自在に連結し、支持部材に予圧をかけることにより、回転子を振動子に押し付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−206251号公報
【特許文献2】国際公開第2010/007837号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の振動アクチュエータでは、回転子は支持部材に対して回転し、回転軸及び支持部材が互いに摺動する部位には、摩擦による摩耗粉が発生し回転子の表面等に付着する。
さらに、振動アクチュエータは、ロボットのハンドやアームの関節等において様々な姿勢で使用されるため、特許文献2の振動アクチュエータにおいて特許文献1のように振動子と回転子との間に潤滑剤を供給すると、回転子の表面上の潤滑剤が流れ、表面上に付着している摩耗粉を混入させてしまうことがある。さらに、摩耗粉を含んだ潤滑剤が回転軸に流れてしまうと、回転軸と支持部材との間に潤滑剤に含まれる摩耗粉が侵入し、摩耗粉が回転子の回転の障害となって振動アクチュエータが所望の動作及び駆動力を得られなくなるという問題がある。また、回転軸と支持部材との間に摩耗粉が侵入することにより、回転軸及び支持部材の摩耗が促進し、振動アクチュエータの寿命が低下するという問題もある。
【0007】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、回転子の表面上の異物を含む潤滑剤が回転子の回転軸へ流れるのを防ぐことにより振動アクチュエータの寿命の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る振動アクチュエータは、振動子と、振動子に接触させて設けられ且つ回転軸を中心に回転可能な回転子と、回転子を振動子に加圧する予圧手段と、振動子を振動させる振動手段と、振動子及び回転子に潤滑剤を供給可能な潤滑手段とを備え、回転子は潤滑剤阻止部を有し、潤滑剤阻止部は、振動子と回転子とが接触する領域から回転軸に向かう経路の途中にある。
【0009】
潤滑剤阻止部は帯状であって、潤滑剤阻止部の先端は回転軸から離れる方向に傾いていてもよい。
回転子の回転軸は、予圧手段に回転可能に連結されていてもよい。
さらに、回転子は、回転軸によって互いに連結される第一ローラ部及び第二ローラ部を有し、第一ローラ部は、振動子が接触する曲面状の第一ローラ面と、第一ローラ面及び回転軸の間に且つ第一ローラ面に対して回転軸が予圧手段と連結されている側に位置する第一側面とを有し、第二ローラ部は、振動子が接触する曲面状の第二ローラ面と、第二ローラ面及び回転軸の間に且つ第二ローラ面に対して回転軸が予圧手段に連結されている側に位置する第二側面とを有し、潤滑剤阻止部は、第一ローラ部の第一側面及び第二ローラ部の第二側面に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、振動アクチュエータは、回転子の表面上の異物を含む潤滑剤が回転子の回転軸へ流れるのを防ぐことによりその寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図2】図1のx2−x2線及びz2−z2線を含む面をIIの方向より見た模式断面側面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面を示す模式断面側面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る振動アクチュエータの構成の要部を示す模式断面側面図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る振動アクチュエータの構成の要部を示す模式断面側面図である。
【図6】本発明の実施の形態4に係る振動アクチュエータの構成の要部を示す模式断面側面図である。
【図7】本発明の実施の形態5に係る振動アクチュエータの構成の要部を示す模式断面側面図である。
【図8】本発明の実施の形態6に係る振動アクチュエータの構成の要部を示す模式断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、この発明の実施の形態について、添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず、図1〜3を用いて、この発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータ101の構成を示す。
【0013】
図1を参照すると、振動アクチュエータ101は、円筒状をした一対の第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bを備えている。第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bは、同形状をして対向して設けられている。また、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bは、ローラ軸1cによって連結されて、ローラ軸1cを中心に一体に回転動作することができ、第一ローラ部1a、第二ローラ部1b及びローラ軸1cは、1つの回転子であるローラ1を形成している。
さらに、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bには、それぞれの円筒面1aa及び1baにおいて、柱状のアーム部材6が連結されている。よって、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bがローラ軸1cを中心に紙面上で時計回りの方向P又は反時計回りの方向Qに回転すると、アーム部材6が、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと共に、方向P又は方向Qに回転移動する。
【0014】
また、振動アクチュエータ101は、第一ローラ部1aの円筒面1aa及び第二ローラ部1bの円筒面1baに接触するようにして配置された略円筒状の振動子2を有している。振動子2には、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1b側となる端面2cにおいて、帯状に突出する第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bが平行に形成されている。そして、第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bは、これらの間に溝部2abを形成している。また、第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bはそれぞれ、溝部2ab側の角部が面取りされており、この面取りされた部分が第一当接面2a1及び第二当接面2b1を形成している。よって、振動子2は、第一突出爪部2aの第一当接面2a1及び第二突出爪部2bの第二当接面2b1を、第一ローラ部1aの円筒面1aa及び第二ローラ部1bの円筒面1baと接触させている。
ここで、第一ローラ部1aの円筒面1aa及び第二ローラ部1bの円筒面1baはそれぞれ、第一ローラ面及び第二ローラ面を構成している。
【0015】
また、振動アクチュエータ101は、振動子2における第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと反対側の端面に、円筒状の圧電素子3を有しており、振動子2と圧電素子3とは互いに連結・固定されている。圧電素子3は、図示しない駆動回路に電気的に接続された複数の圧電素子板を積層した構造を有している。そして、圧電素子3の複数の圧電素子板は、交流電圧を印加されることによって超音波振動を発生する。ここで、圧電素子3は、振動手段を構成している。
さらに、圧電素子3における振動子2と反対側の端面には、円筒状をした第一基部ブロック4及び第二基部ブロック5が順次設けられ、これらは互いに固定されている。
【0016】
また、ローラ軸1cには、予圧部材8が回転自在に設けられている。予圧部材8は、ローラ軸1cに対してその周りを取り囲むようにして回転自在に取り付けられた取付部8aと、取付部8aに連結されて振動子2、圧電素子3及び第一基部ブロック4を貫通する棒状の軸部8bと、第二基部ブロック5に設けられて取付部8aと反対側で軸部8bに連結された付勢部8cとを有している。付勢部8cは、軸部8bに対して取付部8aと反対側の方向Fに引張する力を加える。よって、予圧部材8の付勢部8cの引張力によって、ローラ軸1cは方向Fに引き付けられ、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bが、振動子2に押し付けられている、すなわち、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bは、振動子2に対して加圧する予圧力が付与されて、振動子2に対して固定されている。なお、予圧部材8は、予圧手段を構成している。
ここで、説明の便宜上、第二基部ブロック5からローラ軸1cへ向かう予圧部材8の軸部8bの軸方向をz軸正方向と規定し、z軸に対して垂直であるローラ軸1cの軸方向にx軸が、x軸及びz軸に対して垂直にy軸がそれぞれ延びているものとする。
【0017】
また、振動アクチュエータ101は、振動子2の溝部2abに、x軸方向に延びる略直方体状をした潤滑剤供給体10を有している。潤滑剤供給体10は、振動子2の第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bに隣接するようにして設けられ、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと接触している。ここで、潤滑剤供給体10は、潤滑手段を構成している。
【0018】
また、潤滑剤供給体10は、可撓性及び/又は弾性を有する多孔質性の樹脂部材に、オイルやグリスなどの潤滑剤を含浸させたものである。なお、以下の実施の形態では、潤滑剤としてオイルやグリスなどの潤滑剤を使用するものとする。
そして、潤滑剤供給体10は、予圧力により振動子2に押し付けられる第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと接触し且つこれらによって押し潰され、円筒面1aa及び1baの形状にならうように変形している。
また、潤滑剤供給体10の樹脂部材は、多孔質による連続気孔体構造の毛細管現象を用いて樹脂部材に潤滑剤を吸収・保持しており、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと接触すると、表面張力によるポンプ効果で潤滑剤を第一ローラ部1aの円筒面1aa及び第二ローラ部1bの円筒面1baに放出・供給する。
【0019】
また、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bの間には、樹脂製の内側侵入防止カバー11が嵌め込まれている。内側侵入防止カバー11は、第一ローラ部1aにおける第二ローラ部1bに対向する内側面1abに隙間を有さないように当接し且つローラ軸1cの周りを囲むようにして延びる、帯状の第一突起部11aを有している。さらに、内側侵入防止カバー11は、第二ローラ部1bにおける第一ローラ部1aに対向する内側面1bbに隙間を有さないように当接し且つローラ軸1cの周りを囲むようにして延びる、帯状の第二突起部11bを有し、そして、第一突起部11a及び第二突起部11bの両端同士を連結する2つの連結部11cを有している。第一突起部11a及び第二突起部11bのそれぞれの両端は、アーム部材6まで延び、アーム部材6との間に隙間を有さないように当接している。なお、内側侵入防止カバー11は、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bに対して取り外し可能となっており、その材料は、樹脂に限定されず金属であってもよい。
ここで、第一ローラ部1aの内側面1abは第一側面を構成し、第二ローラ部1bの内側面1bbは、第二側面を構成している。
【0020】
また、第二ローラ部1bの外側面1bcには、ローラ軸1cの端部を覆うようにして、円形蓋の形状をした樹脂製の第二カバー12bが取り付けられて突出している。さらに、第一ローラ部1aの外側面1acには、ローラ軸1cの端部を覆うようにして、円形蓋の形状をした樹脂製の第一カバー12a(図2参照)が取り付けられて突出している。第一カバー12a及び第二カバー12bは、外側侵入防止カバー12を構成している。なお、第一カバー12a及び第二カバー12bはそれぞれ、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bに対して取り外し可能となっており、その材料は、樹脂に限定されず金属であってもよい。
ここで、内側侵入防止カバー11及び外側侵入防止カバー12は、潤滑剤阻止部を構成している。
【0021】
さらに、図2を参照すると、振動アクチュエータ101の模式断面側面図が示されている。
内側侵入防止カバー11の第一突起部11aは、への字状の断面形状を有し、予圧部材8の取付部8aより第一ローラ部1aの半径方向外側に位置している。第一突起部11aの断面は、第一ローラ部1aの内側面1abに当接して内側面1abに沿ってローラ軸1cから離れる方向に延びる当接部11a2と、ローラ軸1cから離れる方向に当接部11a2から延びてローラ軸1cから離れるにしたがい内側面1abから離れるようにして延びる返し部11a1とによって形成されている。すなわち、第一突起部11aは、当接部11a2が内側面1abに当接しつつ第一ローラ部1aの半径方向外側に向かって延び、返し部11a1が、ローラ軸1cから離れるにしたがい内側面1abから離れるようにして第一ローラ部1aの半径方向外側に向かって延びる断面形状を有している。換言すれば、返し部11a1は、その先端11a11がローラ軸1cから離れる方向に傾くようにして、内側面1abから突出している。
そして、第一突起部11aは、返し部11a1と第一ローラ部1aの内側面1abとの間に、楔状の断面形状を有する空間11aaを形成している。
【0022】
また、内側侵入防止カバー11の第二突起部11bも、第一突起部11aと同様の構成を有し、返し部11b1及び当接部11b2によって形成されており、返し部11b1は、その先端11b11がローラ軸1cから離れる方向に傾くようにして、内側面1bbから突出している。さらに、第二突起部11bは、返し部11b1と第二ローラ部1bの内側面1bbとの間に、楔状の断面形状を有する空間11baを形成している。よって、第一突起部11a及び第二突起部11bは、これらの間を通るyz平面に関して鏡像の関係になっている。
【0023】
また、図3を参照すると、振動アクチュエータ101の図2のIII−III線に沿った模式断面側面図が示されている。
内側侵入防止カバー11の第一突起部11aは、第一ローラ部1aの内側面1ab上で、ローラ軸1cの周りを円弧状に延び、両端でアーム部材6に当接している。これにより、ローラ軸1c及び予圧部材8の取付部8aは、第一突起部11a及びアーム部材6によって周囲を囲まれる。また、第一突起部11aは、アーム部材6との当接部位の近傍で連結部11cと一体に連結され、連結部11cは、紙面上で奥から手前に向かう方向のx軸正方向に延びて、第二突起部11b(図2参照)と一体に連結されている。
【0024】
これにより、第一突起部11a、第二突起部11b及び連結部11cは一体となって内側侵入防止カバー11を形成し、第一ローラ部1aと第二ローラ部1b(図2参照)との間に嵌め込むことによって取り付けられ、反対に、例えば、連結部11cを摘んで引き抜くことによって取り外すことができる。そして、内側侵入防止カバー11が第一ローラ部1aと第二ローラ部1bとの間に取り付けられているとき、連結部11cが第一突起部11a及び第二突起部11bを支持して、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bの間から外れることを防ぐ。
【0025】
また、第一ローラ部1aは、方向P又は方向Qに回転可能であり、アーム部材6が振動子2の第二突出爪部2b又は第一突出爪部2aに接触するまで回転することができる。このとき、第一ローラ部1aの円筒面1aaは、方向Pへの回転時、第二突出爪部2bの第二当接面2b1と境界Bまで接触し、方向Qへの回転時、第一突出爪部2aの第一当接面2a1と境界Aまで接触する。このため、円筒面1aaは、境界A及びBを結ぶ領域Rで第一当接面2a1、第二当接面2b1又は潤滑剤供給体10と接触する。
よって、第一突起部11aは、少なくとも領域Rからローラ軸1cの中心Cに向かう経路を遮断するように形成されている。
また、第一突起部11aは、予圧部材8の取付部8aに対して第一ローラ部1aの半径方向外側に配置されているため、第一ローラ部1aが方向P又はQに回転した場合であっても、取付部8aに接触することはない。
また、第二突起部11b(図2参照)も、第一突起部11aと同様にして形成されている。
【0026】
次に、図1〜3を用いて、この発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータ101の動作を示す。
図1を参照すると、圧電素子3は、その内部の各圧電素子板に図示しない駆動回路によって交流電圧が印加されると、各圧電素子板が振動方向の異なる超音波振動を発生する。さらに、これらの超音波振動の複合振動が振動子2に伝達され、振動子2の第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bの先端には、x軸回りの楕円振動が発生する。第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bのそれぞれは、その先端の第一当接面2a1及び第二当接面2b1においてx軸回りの超音波楕円振動を行うことによって、第一ローラ部1aの円筒面1aa及び第二ローラ部1bの円筒面1baを引っ掻くようにして、これらを方向P又は方向Qに回転させる。これにより、振動アクチュエータ101では、アーム部材6が、ローラ1を中心として、振動子2、圧電素子3、第一基部ブロック4及び第二基部ブロック5に対して、屈折するように動作する。なお、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bの回転方向は、圧電素子3に印加する交流電圧を制御することによって、制御される。
【0027】
また、第一ローラ部1aの円筒面1aa及び第二ローラ部1bの円筒面1baに潤滑剤供給体10が接触することによって、潤滑剤供給体10の潤滑剤は、表面張力のポンプ効果で円筒面1aa及び円筒面1baに途切れることなく供給されている。さらに、供給された潤滑剤は、振動子2を介して超音波振動が与えられている第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bでは、超音波振動の腹である最も振動している箇所に集まる特性を有している。このため、円筒面1aa及び1baでは、供給された潤滑剤が、振動の腹、すなわち振動子2との接触部である第一当接面2a1及び第二当接面2b1に集まり、円筒面1aa及び1baと第一当接面2a1及び第二当接面2b1との間に浸透し油膜を形成する。
【0028】
さらに、図3を参照すると、第一ローラ部1aの円筒面1aaは、第一当接面2a1、第二当接面2b1又は潤滑剤供給体10と、領域Rで接触することができるため、円筒面1aaの領域Rには、潤滑剤が付着する。
また、振動アクチュエータ101は、ロボットのハンドやアームの関節等に使用されて、振動子2及び圧電素子3が図示の姿勢を維持し続けることがなく、x軸、y軸又はz軸の周りに回転した姿勢になり得る。このため、第一ローラ部1aの円筒面1aaに付着した潤滑剤は、内側面1ab又は外側面1ac(図2参照)に流れ、さらに、第一ローラ部1aが方向P又はQに回転するため、内側面1ab又は外側面1acに付着した潤滑剤のうち、重力によりローラ軸1cに向かって流れるものがある。
【0029】
また、振動アクチュエータ101では、第一ローラ部1a、第二ローラ部1b(図2参照)及びローラ軸1cが回転すると、特に、潤滑剤等で潤滑されていないローラ軸1cと予圧部材8の取付部8aとの間には、互いに対する摺動により、摩耗粉が発生する。発生した摩耗粉は、第一ローラ部1aの内側面1abに付着しやすい。また、第一ローラ部1aの外側面1acには、ホコリなどの微細な異物が付着することがある。
【0030】
第一ローラ部1aの内側面1abに付着した摩耗粉が、内側面1ab上を流れる潤滑剤に含まれ、潤滑剤と共にローラ軸1cへ向かって流れる場合、摩耗粉を含む潤滑剤は、内側侵入防止カバー11の第一突起部11aによってその流れが遮られる。
そして、第一突起部11aが、少なくとも領域Rからローラ軸1cの中心Cに向かう経路を遮断するように形成されて、アーム部材6と共にローラ軸1cの周囲を囲っているため、摩耗粉を含む潤滑剤のローラ軸1cへの流れの全てが遮られる。さらに、図2に示すように、第一突起部11aは返し部11a1を有しており、第一突起部11aに流れた潤滑剤は、返し部11a1によって空間11aa内で堰き止められるが、返し部11a1が有する形状の作用によって潤滑剤が返し部11a1を越えにくくなっているため、堰き止められた潤滑剤は重力により返し部11a1に沿って下方に流れる。これにより、ローラ軸1cへの潤滑剤及び摩耗粉の侵入が防がれ、ローラ軸1c及び予圧部材8の取付部8aの間に摩耗粉が侵入することが防止される。
【0031】
また、図2を参照すると、第一ローラ部1aの外側面1acに付着したホコリ等の異物が、外側面1ac上を流れる潤滑剤に含まれ、潤滑剤と共にローラ軸1cへ向かって流れる場合、異物を含む潤滑剤は、ローラ軸1cを囲んで突出する外側侵入防止カバー12の第一カバー12aによってその流れが遮られ、重力により第一カバー12aに沿って下方に流れる。これにより、ローラ軸1cへの潤滑剤及び異物の侵入が阻止され、異物が第一ローラ部1aとローラ軸1cとの間に侵入することが防止される。
【0032】
また、第二ローラ部1bにおいても、第一ローラ部1aと同様にして、内側侵入防止カバー11の第二突起部11b及び外側侵入防止カバー12の第二カバー12bによって、異物を含む潤滑剤がローラ軸1cへ流れることが防止される。
【0033】
このように、実施の形態1に係る振動アクチュエータ101は、振動子2と、振動子2に接触させて設けられ且つローラ軸1cを中心に回転可能なローラ1と、ローラ1を振動子2に加圧する予圧部材8と、振動子2を振動させる圧電素子3と、振動子2及びローラ1に潤滑剤を供給可能な潤滑剤供給体10とを備え、ローラ1は内側侵入防止カバー11の第一突起部11a及び第二突起部11bを有し、内側侵入防止カバー11の第一突起部11a及び第二突起部11bは、振動子2とローラ1とが接触する領域Rからローラ軸1cに向かう経路の途中にある。
【0034】
これによって、ローラ1の内側侵入防止カバー11の第一突起部11a及び第二突起部11bはそれぞれ、ローラ1において、ローラ1が回転する際にローラ1が振動子2と接触する領域Rとローラ軸1cとの間に設けられているため、ローラ1の表面に付着した潤滑剤のローラ軸1cへの流通を遮断することができる。よって、ローラ1の表面上の潤滑剤が異物を含んでいる場合であっても、潤滑剤がローラ軸1cへ流れるのを防ぐことにより、ローラ軸1cに異物が付着して摺動することを防ぐことができるため、ローラ軸1cの損傷を防ぎ振動アクチュエータ101の寿命を向上させることが可能になる。さらに、潤滑剤に含まれる異物がローラ軸1cと予圧部材8の取付部8aとの間に侵入することが防がれ、異物の侵入による振動アクチュエータ101の駆動力の低下を低減することが可能になる。
【0035】
また、内側侵入防止カバー11の第一突起部11a及び第二突起部11bは帯状であって、第一突起部11aの先端11a11及び第二突起部11bの先端11b11はローラ軸1cから離れる方向に傾いている。これによって、内側侵入防止カバー11の帯状の第一突起部11a及び第二突起部11bのそれぞれにおいて、返し部11a1の先端11a11及びの返し部11b1の先端11b11がローラ軸1cから離れる方向に傾いているため、ローラ軸1cに向かって流れる潤滑剤が、内側侵入防止カバー11の第一突起部11aの返し部11a1及び第二突起部11bの返し部11b1を越えてローラ軸1cに流れることをさらに防ぐことが可能になる。
【0036】
また、ローラ1のローラ軸1cは、予圧部材8に回転可能に連結されており、内側侵入防止カバー11の第一突起部11a及び第二突起部11bは、振動子2とローラ1とが接触する領域Rからローラ軸1cに向かう経路の途中にある。これによって、互いに摺動して摩耗粉を発生する予圧部材8の取付部8aが連結されたローラ軸1cへ潤滑剤が流れることを防ぐことによって、発生した摩耗粉を含んだ潤滑剤がローラ軸1cと予圧部材8の取付部8aとの間の摺動部分に侵入することを防ぐことが可能になる。
【0037】
また、ローラ1は、ローラ軸1cによって互いに連結される第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bを有している。さらに、第一ローラ部1aは、振動子2が接触する曲面状の円筒面1aaと、円筒面1aa及びローラ軸1cの間に且つ円筒面1aaに対してローラ軸1cが予圧部材8と連結されている側に位置する内側面1abとを有し、第二ローラ部1bは、振動子2が接触する曲面状の円筒面1baと、円筒面1ba及びローラ軸1cの間に且つ円筒面1baに対してローラ軸1cが予圧部材8に連結されている側に位置する内側面1bbとを有し、内側侵入防止カバー11の第一突起部11a及び第二突起部11bはそれぞれ、第一ローラ部1aの内側面1ab及び第二ローラ部1bの内側面1bbに設けられている。
これによって、内側侵入防止カバー11の第一突起部11a及び第二突起部11bは、ローラ1が回転する際に、第一ローラ部1aの円筒面1aaと振動子2との接触、及び、第二ローラ部1bの円筒面1baと振動子2との接触の障害とならないため、振動アクチュエータ101の動作に悪影響を与えない。さらに、第一突起部11a及び第二突起部11bは、第一ローラ部1aの円筒面1aa及び第二ローラ部1bの円筒面1ba上の潤滑剤がローラ軸1cと予圧部材8の取付部8aとの間の摺動部分に侵入することを確実に防ぐことが可能になる。
【0038】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る振動アクチュエータ102は、実施の形態1の第一ローラ部1aの内側面1ab及び第二ローラ部1bの内側面1bbにおいて、内側侵入防止カバー11の第一突起部11aの返し部11a1及び第二突起部11bの返し部11b1と対向する部位に溝を設けたものである。
なお、以下の実施の形態において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0039】
図4を参照すると、振動アクチュエータ102の第一ローラ部1aの内側面1abには、内側侵入防止カバー11の第一突起部11aの返し部11a1と対向する部位に第一溝部13aが形成されている。第一溝部13aは、返し部11a1と対向するようにして円弧状に延びている。そして、第一溝部13aは、返し部11a1と内側面1abとの間の空間11aaの容積を増大させている。
【0040】
また、第二ローラ部1bの内側面1bbにも、第一溝部13aと同様にして、第二突起部11bの返し部11b1と対向するようにして円弧状に延びる第二溝部13bが形成され、第二溝部13bは、返し部11b1と内側面1bbとの間の空間11baの容積を増大させている。
また、この発明の実施の形態2に係る振動アクチュエータ102のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
このように、実施の形態2に係る振動アクチュエータ102において、上記実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様な効果が得られる。
また、振動アクチュエータ102では、第一ローラ部1aの内側面1ab及び第二ローラ部1bの内側面1bbのそれぞれに付着した潤滑剤が、第一突起部11aの返し部11a1及び第二突起部11bの返し部11b1によって空間11aa及び11ba内で堰き止められても、空間11aa及び11baはそれぞれ第一溝部13a及び第二溝部13bの容積だけ容積が増大しているため、潤滑剤が返し部11a1及び11b1を越えてローラ軸1cに向かって流れるオーバーフローが低減される。さらに、第一溝部13a及び第二溝部13bに流入した潤滑剤は、第一溝部13a及び第二溝部13bがガイドとなって、重力により下方に容易に流れる。よって、振動アクチュエータ102は、実施の形態1の振動アクチュエータ101より、ローラ軸1cへの潤滑剤の流入を低減することができる。
【0042】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る振動アクチュエータ103は、実施の形態1の内側侵入防止カバー11の返し部11a1及び11b1の形状を変更したものである。
【0043】
図5を参照すると、振動アクチュエータ103の内側侵入防止カバー31の第一突起部31aは、略Z字状の断面形状を有している。すなわち、第一突起部31aの当接部31a2は、第一ローラ部1aの内側面1abに当接しつつ第一ローラ部1aの半径方向外側に向かって延びる断面形状を有している。当接部31a2に続く返し部31a1は、ローラ軸1cから離れる方向の第一ローラ部1aの半径方向外側に向かって延びるが、ローラ軸1cから離れるにしたがい第一ローラ部1aの内側面1abから離れるようにして延びた後、内側面1abにほぼ平行に延びる断面形状を有している。このとき、返し部31a1と内側面1abとの間には略台形状の断面形状を有する空間31aaが形成される。よって、空間31aaに潤滑剤が流入した場合、潤滑剤は、返し部31a1によって紙面上で右方向となるx軸正方向への流れが遮られるため、返し部31a1を越えてローラ軸1cに向かって流れることが低減される。
【0044】
なお、内側侵入防止カバー31の第二突起部31bも、第一突起部31aと同様の構成を有している。
また、この発明の実施の形態3に係る振動アクチュエータ103のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
このように、実施の形態3に係る振動アクチュエータ103において、上記実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様な効果が得られる。
また、振動アクチュエータ103では、第一ローラ部1aの内側面1ab及び第二ローラ部1bの内側面1bbのそれぞれに付着した潤滑剤が、第一突起部31aの返し部31a1及び第二突起部31bの返し部31b1によって空間31aa及び31ba内で堰き止められても、返し部31a1及び31b1が予圧部材8の軸部8b方向への潤滑剤の移動を遮るため、潤滑剤が返し部31a1及び31b1を越えてローラ軸1cに向かって流れるオーバーフローが低減される。よって、振動アクチュエータ103は、実施の形態1の振動アクチュエータ101より、ローラ軸1cへの潤滑剤の流入を低減することができる。
【0046】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係る振動アクチュエータ104は、実施の形態1の内側侵入防止カバー11の返し部の11a1及び11b1の形状を変更したものである。
【0047】
図6を参照すると、振動アクチュエータ104の内側侵入防止カバー41の第一突起部41aは、返し部41a1が、ローラ軸1cから離れる方向の第一ローラ部1aの半径方向外側に向かって延びて、第一ローラ部1aの内側面1ab側と反対の方向であるx軸正方向に膨らむように湾曲した弧状の断面形状を有している。このとき、返し部41a1と内側面1abとの間には、略半円状の断面形状を有する空間41aaが形成される。そして、空間41aaでは、紙面上で下方向となるz軸負方向の入口41abが形成され、入口41abは、そのx軸方向の幅が、内部空間の幅より狭くなっている。よって、空間41aaに潤滑剤が流入した場合、潤滑剤は、空間41aa内で捕捉されて、入口41abから流出しにくくなっており、そのまま空間41aa内を重力によって下方に流れる。これにより、潤滑剤が、返し部41a1を越えてローラ軸1cに向かって流れることが低減される。
【0048】
なお、内側侵入防止カバー41の第二突起部41bも、第一突起部41aと同様の構成を有している。
また、この発明の実施の形態4に係る振動アクチュエータ104のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0049】
このように、実施の形態4に係る振動アクチュエータ104において、上記実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様な効果が得られる。
また、振動アクチュエータ104では、第一ローラ部1aの内側面1ab及び第二ローラ部1bの内側面1bbのそれぞれに付着した潤滑剤が、第一突起部41aの返し部41a1及び第二突起部41bの返し部41b1によって空間41aa及び41ba内で堰き止められると、これらの内部の幅に対して入口41ab及び41bbの幅が狭くなっているため、振動アクチュエータ104がどのような姿勢であっても、空間41aa及び41ba内から流出しにくくなっている。このため、空間41aa及び41ba内の潤滑剤は、重力によって空間41aa及び41ba内を下方に流れ、返し部41a1及び41b1を越えてローラ軸1cに向かって流れるオーバーフローが低減される。よって、振動アクチュエータ104は、実施の形態1の振動アクチュエータ101より、ローラ軸1cへの潤滑剤の流入を低減することができる。
【0050】
また、実施の形態4の内側侵入防止カバー41では、第一突起部41aの返し部41a1及び第二突起部41bの返し部41b1は、弧状の断面形状を有していたがこれに限定れるものでなく、矩形状又は三角形状であってもよい。
【0051】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5に係る振動アクチュエータ105は、実施の形態1の内側侵入防止カバー11の第一突起部11a及び第二突起部11bのそれぞれに潤滑剤吸収材51a及び51bを設けたものである。
【0052】
図7を参照すると、振動アクチュエータ105の内側侵入防止カバー11の第一突起部11aには、返し部11a1における第一ローラ部1aの内側面1abに対向する面に潤滑剤吸収材51aが取り付けられている。そして、返し部11a1に取り付けられた潤滑剤吸収材51aは、内側面1abとの間に楔状の断面形状を有する空間51aaを形成している。
なお、潤滑剤吸収材51aの材料は、潤滑剤を吸収可能な材料であればどのようなものでもよく、例えば、多孔質性の樹脂、フェルト等を使用することができる。
【0053】
よって、空間51aaに摩耗粉を含む潤滑剤が流入した場合、潤滑剤は、潤滑剤吸収材51aによって吸収されるため、返し部11a1を越えてローラ軸1cに向かって流れることが低減される。さらに、空間51aaに流入した潤滑剤は、摩耗粉と共に潤滑剤吸収材51aによって吸収されるため、空間51aaから再び流出して第一ローラ部1aの円筒面1aa及び潤滑剤供給体10に戻ることが防がれる。よって、摩耗粉を含む汚れた潤滑剤が円筒面1aa又は潤滑剤供給体10に戻り、円筒面1aaと振動子2の第二当接面2b1との間に供給されることが防止される。
【0054】
なお、内側侵入防止カバー11の第二突起部11bの返し部11b1にも、第一突起部11aと同様にして、潤滑剤吸収材51bが取り付けられている。
また、この発明の実施の形態5に係る振動アクチュエータ105のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
このように、実施の形態5に係る振動アクチュエータ105において、上記実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様な効果が得られる。
【0056】
また、振動アクチュエータ105では、第一ローラ部1aの内側面1ab及び第二ローラ部1bの内側面1bbのそれぞれに付着した潤滑剤が、第一突起部11aの返し部11a1及び第二突起部11bの返し部11b1によって空間51aa及び51ba内で堰き止められると、潤滑剤吸収材51a及び51bによって吸収される。このため、空間51aa及び51ba内の潤滑剤は、返し部11a1及び11b1を越えてローラ軸1cに向かって流れるオーバーフローが低減される。よって、振動アクチュエータ105は、実施の形態1の振動アクチュエータ101より、ローラ軸1cへの潤滑剤の流入を低減することができる。さらに、空間51aa及び51ba内で堰き止められた摩耗粉を含む潤滑剤は潤滑剤吸収材51a及び51bによって吸収されて、第一ローラ部1aの円筒面1aa及び第二ローラ部1bの円筒面1baと振動子2の第二当接面2b1との間に供給されないため、第一ローラ部1a、第二ローラ部1b及び振動子2の損傷を低減して耐久性を向上させることができる。また、潤滑剤吸収材51a及び51bを交換可能とすることで、第一ローラ部1a、第二ローラ部1b及び振動子2の耐久性をさらに向上させることができる。
【0057】
実施の形態6.
この発明の実施の形態6に係る振動アクチュエータ106は、実施の形態1において、内側侵入防止カバー11を第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと予圧部材8の取付部8aとの間に設けたものである。
【0058】
図8を参照すると、振動アクチュエータ106は、実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様の構成を有しているが、予圧部材68の構成が異なっている。すなわち、予圧部材68の取付部68aは、その側面68aaと第一ローラ部1aの内側面1abとの間に間隙68gaを有し、側面68abと第二ローラ部1bの内側面1bbとの間に間隙68gbを有している。
【0059】
さらに、振動アクチュエータ106は、間隙68gaに、筒状をした第一内側侵入防止カバー61aを有し、第一内側侵入防止カバー61aは、ローラ軸1cの円筒面1c1を取り囲むようにして円筒面1c1に近接して設けられている。また、振動アクチュエータ106は、間隙68gbに、筒状をした第二内側侵入防止カバー61bを有し、第二内側侵入防止カバー61bは、ローラ軸1cの円筒面1c1を取り囲むようにして円筒面1c1に近接して設けられている。
【0060】
第一内側侵入防止カバー61aは、第一ローラ部1aの内側面1abに取り付けられ、その貫通穴61a5をローラ軸1cが通り、第一ローラ部1aと一体に回転する。さらに、第一内側侵入防止カバー61aは、第二ローラ部1bに向かって拡がる略台形状の断面形状をした略円錐台状の外形を有し、内側面1abに取り付けられる上底面61a2と、取付部68aの側面68aaに対向する下底面61a3と、上底面61a2及び下底面61a3を結ぶ筒状の斜面61a4とを有している。また、斜面61a4は、下底面61a3に向かって窪むように湾曲している。よって、第一内側侵入防止カバー61aの斜面61a4は、ローラ軸1cから離れるにしたがい内側面1abから離れるようにして延び、内側面1abとの間に、空間61aaを形成している。そして、斜面61a4と下底面61a3とで返し部61a1を形成している。
【0061】
よって、空間61aaに潤滑剤が流入した場合、潤滑剤は、返し部61a1によってx軸正方向への流れが遮られるため、返し部61a1を越えてローラ軸1cに向かって流れることが低減される。
なお、第二内側侵入防止カバー61bも、第一内側侵入防止カバー61aと同様の構成を有している。
また、この発明の実施の形態6に係る振動アクチュエータ106のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
このように、実施の形態6に係る振動アクチュエータ106において、上記実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様な効果が得られる。
また、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bのそれぞれと予圧部材68の取付部68aとの間隙68ga及び68gbが広くなる場合、間隙68ga及び68gbのそれぞれに第一内側侵入防止カバー61a及び第二内側侵入防止カバー61bを挟むようにして設けることによって、第一内側侵入防止カバー61a及び第二内側侵入防止カバー61bが、スペーサーとして機能して、取付部68aがローラ軸1cの軸方向に移動することを防ぐことができる。よって、第一内側侵入防止カバー61a及び第二内側侵入防止カバー61bが、ローラ軸1cへ潤滑剤の流入阻止だけでなくスペーサーとしても機能するため、部品点数を低減しコストを低減することが可能になる。さらに、第一内側侵入防止カバー61a及び第二内側侵入防止カバー61bを摩擦係数の低い材料で形成することによって、取付部68aとの間の摺動抵抗が低減し、それにより、振動アクチュエータ106の駆動力の低下を低減することができる。
【0063】
また、実施の形態6において、第一内側侵入防止カバー61aの返し部61a1及び第二内側侵入防止カバー61bの返し部61b1をそれぞれ、実施の形態1、3及び4の第一突起部11a,31a,41a及び第二突起部11b,31b,41bの返し部と同様の形状としてもよい。また、実施の形態6において、空間61aa内の第一ローラ部1aの内側面1ab及び空間61ba内の第二ローラ部1bの内側面1bbに、実施の形態2のように溝を形成してもよい。
【0064】
また、実施の形態1〜5の内側侵入防止カバー11,31,41において、第一突起部11a,31a,41a及び第二突起部11b,31b,41bを、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと別体としていたが、これに限定されるものでなく、一体であってもよい。すなわち、各返し部11a1,31a1,41a1及び11b1,31b1,41b1が、第一ローラ部1aの内側面1ab及び第二ローラ部1bの内側面1bbのそれぞれから突出する突起として、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと一体に形成されてもよい。また、実施の形態6において、第一内側侵入防止カバー61a及び第二内側侵入防止カバー61bを、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと一体に形成してもよい。
また、実施の形態1〜6において、外側侵入防止カバー12の第一カバー12a及び第二カバー12bはそれぞれ、第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bと別体としていたが、これに限定されるものでなく、一体であってもよい。
【0065】
また、実施の形態1〜6において、ローラ1は円筒状であったが、これに限定されるものでなく、回転軸を中心に回転する球体であってもよい。
また、実施の形態1〜6において、予圧部材8,68は、ローラ1の内側となる第一ローラ部1a及び第二ローラ部1bの間においてローラ軸1cに連結されていたが、これに限定されるものでなく、ローラ1の外側、すなわち第一ローラ部1aの外側面1ac側及び第二ローラ部1bの外側面1bc側でローラ軸1cに連結されてもよい。
【0066】
また、実施の形態1〜6において、潤滑剤供給体10は、振動子2の溝部2abに設けられていたが、これに限定されるものでない。潤滑剤供給体10は、振動子2の第一突出爪部2a及び第二突出爪部2bの外側に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 ローラ(回転子)、1a 第一ローラ部(回転子)、1b 第二ローラ部(回転子)、1c ローラ軸(回転軸)、1aa 円筒面(第一ローラ部の第一ローラ面)、1ab 内側面(第一ローラ部の第一側面)、1ba 円筒面(第二ローラ部の第二ローラ面)、1bb 内側面(第二ローラ部の第二側面)、2 振動子、3 圧電素子(振動手段)、8,68 予圧部材(予圧手段)、10 潤滑剤供給体(潤滑手段)、11,31,41 内側侵入防止カバー(潤滑剤阻止部)、11a,31a,41a 第一突起部(潤滑剤阻止部)、11a11,11b11 先端(潤滑剤阻止部の先端)、11b,31b,41b 第二突起部(潤滑剤阻止部)、12 外側侵入防止カバー(潤滑剤阻止部)、12a 第一カバー(潤滑剤阻止部)、12b 第二カバー(潤滑剤阻止部)、61a 第一内側侵入防止カバー(潤滑剤阻止部)、61b 第二内側侵入防止カバー(潤滑剤阻止部)、R 領域(振動子と回転子とが接触する領域)、101,102,103,104,105,106 振動アクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子と、
前記振動子に接触させて設けられ且つ回転軸を中心に回転可能な回転子と、
前記回転子を前記振動子に加圧する予圧手段と、
前記振動子を振動させる振動手段と、
前記振動子及び前記回転子に潤滑剤を供給可能な潤滑手段とを備え、
前記回転子は潤滑剤阻止部を有し、
前記潤滑剤阻止部は、前記振動子と前記回転子とが接触する領域から前記回転軸に向かう経路の途中にあることを特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記潤滑剤阻止部は帯状であって、前記潤滑剤阻止部の先端は前記回転軸から離れる方向に傾いている請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記回転子の前記回転軸は、前記予圧手段に回転可能に連結されている請求項1または2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記回転子は、前記回転軸によって互いに連結される第一ローラ部及び第二ローラ部を有し、
前記第一ローラ部は、前記振動子が接触する曲面状の第一ローラ面と、前記第一ローラ面及び前記回転軸の間に且つ前記第一ローラ面に対して前記回転軸が前記予圧手段と連結されている側に位置する第一側面とを有し、
前記第二ローラ部は、前記振動子が接触する曲面状の第二ローラ面と、
前記第二ローラ面及び前記回転軸の間に且つ前記第二ローラ面に対して前記回転軸が前記予圧手段に連結されている側に位置する第二側面とを有し、
前記潤滑剤阻止部は、前記第一ローラ部の前記第一側面及び前記第二ローラ部の前記第二側面に設けられる請求項3に記載の振動アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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