排ガス浄化機能を有する浄化防音構造体およびそれを用いた道路構造。
【課題】自動車排ガス中の大気汚染物質(NOxやSOx等)を、太陽光などの照明を必要としないで浄化するとともに、道路騒音を防止できる。
【解決手段】本発明の浄化防音構造体1は、排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化する活性炭素繊維からなる浄化材4を音源側に配置し、背後の遮音材2との間に吸音材3を配置した、少なくとも3種部材を枠材6に組み付けられ平板形の排ガス浄化防音構造体1aあるいは防音壁の上端に取り付けられる立体形の排ガス浄化防音構造体1bが形成されている。排ガスを吸引または排出させるための振動材7を用いた浄化防音構造体は、その音源側表面の全部または一部に、周囲の風圧によってそれ自体が振動することによって排ガスを吸引排出させる膜状の振動材4を配置し、同様に平板形および立体形の排ガス振動浄化防音構造体1c、1dが構成される。
【解決手段】本発明の浄化防音構造体1は、排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化する活性炭素繊維からなる浄化材4を音源側に配置し、背後の遮音材2との間に吸音材3を配置した、少なくとも3種部材を枠材6に組み付けられ平板形の排ガス浄化防音構造体1aあるいは防音壁の上端に取り付けられる立体形の排ガス浄化防音構造体1bが形成されている。排ガスを吸引または排出させるための振動材7を用いた浄化防音構造体は、その音源側表面の全部または一部に、周囲の風圧によってそれ自体が振動することによって排ガスを吸引排出させる膜状の振動材4を配置し、同様に平板形および立体形の排ガス振動浄化防音構造体1c、1dが構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路を走行する自動車より発生する排ガスを浄化し、かつ自動車騒音を防止する機能を有する浄化防音構造体およびそれを用いた道路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
道路を走行する車両から発生する騒音対策として、道路端に防音壁を設置して民家側への騒音の伝播を防止する対策がとられている。防音壁は、一般に前面側に吸音材11、背面側12に遮音材を配した構造(図19参照)で、車両より発生した騒音を吸音しつつ遮蔽する機能を有する防音板10を建て込んだものであり、これらには、更に上端部に高消音性の防音板(防音装置)を設置することがある。
【0003】
これらの防音壁は騒音防止機能を有するが、車両から発生するガス中の大気汚染物質(NOx、SOx)を浄化する機能が無いため周辺地域に拡散して大気汚損物質濃度の上昇をきたすことがある。
この対策として、道路防音壁面の開口ルーバー13等に光触媒(二酸化チタン)を施し、太陽光(紫外線)によってNOx、SOxを酸化して硝酸イオンや硫酸イオンの変化させて除去する方法が提案されているが、光触媒は太陽光が当たらないと十分な効果が発揮できない問題があった。(特許文献1を参照のこと)
【0004】
【特許文献1】特開平9−268526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、自動車排ガス中の大気汚染物質(NOxやSOx等)を、太陽光などの照明を必要としないで浄化するとともに、道路騒音を防止できる浄化防音構造体およびそれらを用いた防音壁を備えた道路構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題は、排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化する活性炭素繊維からなる浄化材と吸音材と遮音材とによって、または吸音材を兼ねる前記浄化材と遮音材とによって少なくとも構成されることを特徴とする本発明の浄化防音構造体によって、解決することができる。
また、本発明は、前記浄化防音構造体の表面の全部または一部に、その振動によって防音構造体内に排ガスを吸引または排出させる振動材を配置し、排ガスの吸引通路または排出通路に浄化材を配置した形態が好ましい。
【0007】
さらに本発明の浄化防音構造体は次の形態に好ましく具体化される。
1)振動材が膜振動吸音性振動材または板振動吸音性振動材である形態。
2)前記浄化材がスリット状に配置されているもの。
3)前記浄化材が活性炭素繊維の集合体によって構成され、吸音材を兼ねたものである形態。
4)前記いずれかに記載の浄化防音構造体であって、道路防音壁の上部に設置し、自動車から排出されるガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに騒音を防止するようにしたもの。
【0008】
また、前記の問題は、前記のいずれかの浄化防音構造体を道路側端や中央分離帯に設置して防音壁とし、自動車排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに騒音を防止するようにしたことを特徴とする本発明の道路構造によって解決される。また、前記のいずれかの浄化防音構造体を、道路防音壁の上部に設置し、自動車から排出されるガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに騒音を防止するようにした道路構造としても具体化され得る。
さらには、前記のいずれかの浄化防音構造体をトンネル式道路もしくは堀割式道路の壁または天井、または高架道路の裏面に設置して自動車排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに吸音によって騒音を防止するようにした道路構造としても具体化され得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排ガス浄化機能を有する浄化防音構造体および道路構造は、このように構成されているので、以下に示すようないくつかの利点を達成できるという優れた効果がある。よって本発明は、従来の問題点を解消した浄化防音構造体および道路構造として、工業的価値はきわめて大なるものがある。
【0010】
a)本発明の特定の浄化防音構造体および道路構造は、活性炭素繊維からなる浄化材それ自体によって自動車の排気ガス中の汚損物質であるNOx、SOxを浄化するものであり、光触媒のように太陽光などの光を必要としないから、昼夜を問わず浄化機能を発揮して道路周辺の大気環境を改善することができる。
【0011】
b)また、本発明の浄化防音構造体によれば、従来の光触媒では捕集できなかった排ガス中の粒子状物質(PM)のような汚損物質も捕集することも可能であり、大気に煤塵環境を大きく改善することができる。
【0012】
c)さらに、本発明の浄化防音構造体は、排気ガス中の汚損物質であるNOx、SOxを浄化する機能の他、吸音および遮音機能も有するので、車両から発生する騒音を低減することに大きく寄与できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の浄化防音構造体および道路構造に係る実施形態について、図1〜18を参照しながら説明する。
先ず、図1〜7は、本発明の浄化防音構造体1を例示するもので、排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化する活性炭素繊維からなる浄化材4を音源側に配置し、背後の遮音材2との間に吸音材3を配置した、少なくとも3種部材を枠材6に組み付けられた平板形の浄化防音構造体1a(図1〜6)あるいは立体形(三角横長柱状)の浄化防音構造体1b(図7)が形成されている。この図1〜6の事例では、音源側表面にはエキスパンドメタルなどの多孔板5が配置され、枠材6に側面には取付部61、ワイヤ通し孔62があらかじめ設けられている。
【0014】
また、図8〜13は、排ガスを吸引または排出させるための振動材7を用いた浄化防音構造体を例示するもので、前記浄化防音構造体の音源側表面の全部または一部に、周囲の風圧でそれ自体が振動することによって浄化防音構造体内に排ガスを吸引または排出させる板状または膜状の振動材7を配置し、排ガスが吸引または排出される通路に浄化材4を配置して、平板形の振動浄化防音構造体1c(図8〜11)または防音壁の上端に取り付けられる立体形の振動浄化防音構造体1d(図12〜13)が構成される。なお、振動材以外の構造は先の場合と同様である。
【0015】
次に、各部分の構成部材について詳細に説明する。
(大気汚染物質を浄化するための浄化材)
本発明の浄化防音構造体における排ガス浄化のための主要構成部材である浄化材4は、活性炭素繊維の集合体であって、この活性炭素繊維の集合体を排ガスが通過する際に、排ガス中の汚損物質(NOx、SOx、粒子状物質(PM))を活性炭素繊維に吸着させて除去し、浄化された排ガスを排出するよう作用する。
【0016】
本発明に用いられる活性炭素繊維は、ポリアクリルニトリル系繊維、セルロース系繊維、フェノール系繊維、コールタールピッチ系繊維などから得られる繊維径が5μm〜30μmの炭素繊維を素材として、賦活処理によって繊維に無数の微細な細孔(細孔径0.1nm〜10nm)を形成し、吸着活性を高活性化したものである。その好ましい表面積は、500〜3000m2/gの範囲である。
【0017】
本発明に用いられる活性炭索繊維の集合体は、使用個所の状況、要求などにより種々の形態が利用可能である。例えば、不定形綿状の形態、綿をやや密に絡めたマット、縮絨したフェルト、織機または編み機による織物、編物あるいは網状体、ハニカム状孔明きブロック状成形体、孔明き平板状成形体などの成形加工体が適宜に用いられる。要は、浄化すべき排ガスが、含有する汚損物質を吸着除去するに好ましい速度で通過できるような気孔構造を持つ集合体が好ましいのである。このような成形加工には、所定形状を保持するためのバインダーを用いてもよいが、繊維の微細な細孔を塞がないよう最小限に抑える配慮が必要である。
【0018】
前記活性炭索繊維集合体の嵩密度は、値が大きいと通気抵抗が大きくなって排気ガスの吸入、放出が困難となるなどするので、排気ガスの通気性を考慮して定めるが、繊維密度(嵩密度)は0.001〜0.1g/cm3の範囲から選択される。
【0019】
また、前記の活性炭素繊維は、吸着活性を選択的に発揮させる所定の化学薬品の含浸、酸化還元性を高める酸化剤、還元剤の添加、触媒成分の添加などの各種化学処理を施して、その機能を向上させるようにするのもよい。
【0020】
(吸音材(多孔質吸音材))
本発明に用いられる吸音材3には、例えば、連通孔を有する多孔質吸音材であるグラスウール、ロックウール等の無機繊維からなる多孔質材、アルミニウム繊維などの金属繊維からなる金属多孔質材、アルミの発泡体、アルミ粒子の焼結体、陶磁器粒子粒子の焼結体、セラミック発泡体、ウレタン、メラミン樹脂などの樹脂発泡体、軽量骨材の焼結体または接着多孔体、セメント発泡体、珪酸カルシウム発泡体など各種の吸音材が適宜に採用される。
【0021】
それらの気孔率、流れ抵抗、通気率、嵩比重、大きさ、厚さ、取り付け時の背後空気層有無、あるいはフィルム等の吸音材への保護材の有無、または、内部に配置される吸音材自身の吸音特性に、特に諸条件に制限があるものではない。
【0022】
なお、活性炭素繊維の集合体は、それ自体が多孔質材料であるから、浄化材と吸音材とを兼用した部材としても使用できる。この浄化材は、賦活処理によって炭素繊維に無数の微細な細孔を形成し吸着活性を高活性化した繊維径が5μm〜30μmの炭素繊維の集合体であって、不定形綿状の形態、綿をやや密に絡めたマット、縮絨したフェルト、織機または編み機による織物、編物あるいは網状体、ハニカム状孔明きブロック状成形体で、繊維間には表裏に連通する細孔を有するので、炭素繊維の集合体に入射した音波を繊維間の細孔部で摩擦などによって熱エネルギーに変換して吸収する吸音機能も有する。
【0023】
従って、活性炭素繊維からなる浄化材と遮音材を組み合わせた構成の浄化防音構造体を用いても音源からの騒音を吸収し、遮音材によって騒音を遮蔽することによって民家側への騒音を低減することができる。より高い吸音性が必要な場合は、活性炭素繊維集合体の繊維密度を0.01〜0.05g/cm3に、厚さを25mm以上にすることが好ましい。この場合の吸音率は、400Hzで0.7以上、1000Hzで0.8以上が得られる。
また、例えば遮音壁が十分高い場合で吸音性がそれほど高くなくても民家側への騒音を低減できる場合は、活性炭素繊維集合体の繊維密度は0.001〜0.1g
/cm3としてもよい。
【0024】
このように、繊維構造体は多孔質材料であって、繊維自身と繊維と繊維の間に細孔を有するので、繊維自身の細孔部での排ガス中の大気汚染物質の吸着機能と、繊維間の比較的大きい細孔部での吸音機能を有するので、浄化と吸音を兼ねることができるのである。
なお、浄化防音構造体の吸音性を高めるため(400Hzで0.7以上、1000Hzで0.8以上)、吸音材を追加して、浄化材、吸音材、遮音材の構成にしてもよい。
【0025】
(振動材)(膜状振動材、板状振動材)
本発明に用いられる振動材7は、通気性がないか、または通気性の小さい有機材料(合成樹脂、天然樹脂、ゴム)、金属材料、または無機材料からなるフィルム、シート、薄板状のものであって、走行する自動車の走行風や自然風によって、それ自体が振動する材料である。この目的には、厚さは、一般的には0.006mm〜2mmが好ましく、金属板の場合には1mm以下が適当である。
【0026】
振動材用の有機材料としては、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化エチレン等のフッ素樹脂系やポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチエン、酢酸ビニル、ポリビニリデン、ポリカーボネート、アクリルなどの合成樹脂のフィルム、シートが用いられる。また、天然ゴムまたは合成ゴムのシートや、天然合成繊維の不織布や織布でもよい
【0027】
また、振動材用の金属材料としては、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの薄板、金属繊維や金属粒子の圧縮成形薄板が用いられる。また、無機材料としては、ガラス繊維、ロックウール等の無機繊維の圧縮成形板またはクロスなども使用可能である。さらに、これら各種材料を複合して組合せた材料でもよい。
【0028】
本発明の振動材7は、走行風圧以外に、走行車両から発生する騒音(音波)による振動を利用することもできるものである。この場合は、振動材は、共鳴周波数付近で吸音性を示すが、自動車走行音を吸音するために幅広い周波数域で吸音性を得るようにするには、これら有機材料等の振動材(フィルム、シート)の両面または片面に金属材料、有機材料、無機材料の多孔板(網、孔明き板、エキスパンドメタルなど)を配置した積層体とし、音波による膜状材(振動材)の振動と膜状材と多孔板による摩擦による吸音性が発揮できるようにして、全体の吸音性を高めるのが特に好ましい。
【0029】
(遮音材)
本発明の浄化防音構造体の背後に配置する遮音材2は、鉄板、やアルミ板などの金属板やポリカーボネートやアクリルなどのプラスチック板、コンクリートなどの無機質板など、従来から知られている材料が用いられる。
【0030】
次に、本発明の排ガス浄化防音構造体の各種形態について、さらに説明する。
道路を走行する自動車の走行風や自然風によって自動車排ガスを防音構造体の前面側の排ガス浄化材部に接触または通過させて浄化するタイプのa)平板形の排ガス浄化防音構造体、b)防音壁上端部分に取り付ける三角横長柱状形など立体形の排ガス浄化防音構造体について、図1〜7を参考にして説明する。
【0031】
《a》平板形の排ガス浄化防音構造体1a(図1〜6)
前面の多孔板5と枠材6からなる箱形パネルの前面側から、浄化材4(活性炭素繊維)、その背後に吸音材3、遮音材2に順に配置する。(図1参照)
浄化材4と吸音材3、吸音材3と遮音材2の間には空間を設けても設けなくともよい。浄化防音構造体全体の大きさは、高さが500〜1000mm、横幅(長さ)が1000〜4000mm、厚さは50〜300mm程度が適当である。
【0032】
浄化材4の厚さは、防音構造体の厚さに応じて調整するが、例えば、全体の厚さが200mmの場合は、約150mmの浄化材、約50mm吸音材(例えば32kg/m3のグラスウール)が用いられる。
【0033】
この場合、図2に示すように、浄化材4(活性炭素繊維)は、排ガスとの接触面を増すために多数の短冊状に形成して、表面から内部に向けて多数の隙間41を開けるよう配置するのが好ましい。この場合、吸音材3はスリットなど設けずに平板に配置すればよい。
この場合、隙間の幅は5〜10mmが好ましい。狭過ぎると排ガスが流れにくくなる。広すぎると捕集効率が低下する。また、前面から見た隙間の連通方向は垂直、水平、斜めのいずれでもよいが、排ガスの流れのためには垂直(上下)方向が最も好ましい。
【0034】
また、活性炭素繊維からなる浄化材4が前述のように吸音材3を兼ねる場合は、多数の吸音材兼浄化材43を、図5に示すように、前面から奥行き全長にわたって、隙間41を設けて配置すればよい。なお、図1のような構成においても、浄化材4が吸音材を兼ねる場合は吸音材3を省略してもよい。この場合の主要構成材は、浄化材(兼吸音材)4と遮音材2の組合せになる。
【0035】
以上説明した事例において、浄化材4、吸音材兼浄化材43の表面は多孔板5で保護するのがよい。この多孔板5としては、金属や樹脂の孔明き板や網材などが適当であるが、内側の活性炭素繊維の浄化材4などの損傷、飛散を防ぐため、開口孔の寸法や目開きはできる限り小さくするとともに、通気性を確保するため開孔率はできる限り大きくすることが好ましい。
【0036】
なお、図3に示すように、設置後のメンテナンス時に排ガス浄化材部の浄化材4を新品または洗浄済の材料に交換する場合の便宜を考慮して、排ガス浄化材4を多孔板5で前後から挟んでユニット化し、防音板の枠材6にネジ、ボルトなどで取り付けたり、ワンタッチで固定するように構成して、着脱容易に取り付けておくことが好ましい。
【0037】
また、図4に示すように、浄化防音構造体1aの枠材6に上部と下部には、切り欠き開口63を設けておき、排ガスの流通を促すのが好ましい。
また、図6に示すように、排ガス浄化材4を多孔板5で前後から挟んでユニット化し、これを吸音材3と遮音材2と枠材6からなる防音板の前面に、排ガスとの接触を高めるように突出するように取り付けるよう構成してもよい。
【0038】
なお、補足すると、a)トンネル、堀割り、高架裏面などの音響的に反射性の構造物の表面に使用する場合は、遮音板を省略することができる。b)道路の中央分離帯用に使用する浄化防音構造体は、両面に浄化材と吸音材(浄化材兼吸音材)を配置して中央部分に遮音材を配置する構成が好ましいが、遮音材を省略して、浄化材と吸音材をスリット状に配置してパネル化した防音板にしてもよい。c)本発明の浄化防音構造体の両端部に落下防止用のワイヤーロープを通すためのワイヤ通し孔62(図1、2参照)を設けてもよい。
【0039】
《b》防音壁上端部分に取り付ける立体形の排ガス浄化防音構造体(図7参照)
従来の防音壁の上端部分に沿って取り付けて、防音効果を向上させるとともに、排ガス中の汚損物質(NOx、SOxなど)を吸着、除去し、環境を改善することができるものである。
【0040】
この目的の浄化防音構造体1bの外形は、例えば、縦断面が逆三角形の横長柱状体であり、奥行き(防音壁に直角)200〜2000mm、高さ200〜〜1000mm、長さ(防音壁方向)1000〜4000mの三角横長柱状体、また、縦断面が円形、または楕円形で、奥行き(又は直径)200〜1000mm、高さ200〜1000mm、長さ1000〜4000mの大きさの曲面横長柱状体である。
【0041】
三角横長柱状体の浄化防音構造体1bの例を図7に示すが、音源側の面に多孔板5を配し、反対側に遮音材2を配し、その間に吸音材兼浄化材43を隙間41を設けて音源側の面から反対側に向けて掛け渡すように配置している。この場合、浄化防音構造体1bの上面は大気に開放した構造を採用しているが、必要に応じて保護用の多孔板を配置してもよい。
なお、防音壁上部に取り付ける浄化防音構造体では、遮音材を省略して、多孔板、浄化材(または吸音材兼浄化材)、吸音材で構成してもよい。
また、排ガス除去効果を高めるため、遮音板を立体形構造の中央付近に縦方向に配置し、音源側(道路側)、反対側(民家側)、及び上部側に浄化材や吸音材を配置するなどの方法で、ほぼ全表面に浄化材を配置した構造にしてもよい。
【0042】
次に、振動材を用いた本発明の浄化防音構造体の各種形態について、さらに説明する。
この浄化防音構造体は、自動車の走行風や自然風を利用して振動材を振動させ、防音構造体内の空間部に負圧を生じさせて、排ガスを吸引し、浄化材を通過させて排ガスを浄化するものであり、平板形の振動浄化防音構造体1c(図8〜11)、および防音壁の上端に取り付けられる振動浄化防音構造体1d(図12〜13)がある。
【0043】
《a》平板形の排ガス振動浄化防音構造体1c(図8〜11)
本発明では、防音板1cの表面の一部に振動材7を配置し、残りの表面に浄化材4を配置し、浄化材4の部分を通じて外気の流通が可能にするが、他の部分は基本的に密閉構造としている。
【0044】
振動材7と浄化材4の配置の仕方は、上下配置(図8、9)、左右配置(図10、11)などがある。
すなわち、上下配置(図8、9)では、一枚の浄化防音構造体1cの前面の上半分に振動材7が、下半分には浄化材4が配置されている。なお、吸音材3は浄化材を兼ねるものでもよい。
また、左右配置(図10、11)では、一枚の浄化防音構造体1cの前面の左右方向に振動材7の部分と浄化材4の部分とが交互に配置されている。
もちろん、本発明では、振動材の振動によって排ガスが浄化材を流通する構造ならよいので、この形態に限定されるものではない。
なお、浄化材4が吸音材を兼ねる場合は、前記同様に吸音材3を省略してもよい。
【0045】
なお、振動材7は、風による振動を起こしやすくするため、その周囲部分あるいは両端部分を枠材に取り付け固定するが、内側部分は固定しないで自由に振動可能としておくことが重要である。周囲部分の固定方法も、連続して固定するのではなく、間隔をおいて点状に部分固定してもよい。
【0046】
なお、浄化材と振動材とを別個に枠部材などに取り付けたユニットを別々に製作しておき、施工時に合体させて設置するようにしてもよい。もちろん、浄化材と遮音材からなる構造体と振動材と遮音材からなる構造体を個別に製作して、施工時に上下や左右に隣接して設置することによって浄化防音構造体としてもよいが、いずれの場合も排ガスの吸引、浄化、排出を行うために、それぞれの構造体の空間部同士が繋がるように接する面に開口を設けておく必要がある。また、浄化防音構造体を設置後に空間部が上下で繋がるようにしておき、排ガスを上部にも排出できるようにしてもよい。また、振動材を前記膜振動吸音材にすると、吸音性も向上するので、防音効果の点から好ましい。
【0047】
《b》防音壁上端部分に取り付ける立体形の排ガス振動浄化防音構造体1d(図12〜13)
この防音壁先端に取り付けるタイプの振動浄化防音構造体1dは、音源側に振動材7を配置した部分と吸音材兼浄化材43を配した部分に区分し、背面側に遮音材2を配し、上面側にも振動材7aを配し、振動材7、7aの背面側に空間63を形成すれば、振動材7、7aの振動によって排ガスが吸音材兼浄化材43の隔離した隙間43を流通して浄化作用を営むのは、図8〜11の場合と同様である。
この場合も、浄化材および振動材は予めユニット化したものを振動浄化防音構造体に着脱可能なものとしておくのも好ましい。
【0048】
次に、本発明の排ガス浄化防音構造体の道路上への構築形態について説明する。
《a》平板形の排ガス浄化防音構造体(図14〜16参照)
本発明の平板形の浄化防音構造体1a、1cを、道路9の両側や中央分離帯に沿って設けられたH形支柱の支柱間に落とし込んで防音壁8aを構築する。支柱の前面や背面側にボルトで取り付けてもよい。
図14は垂直の防音壁8aの例で、図15は防音壁の上部をアーチ状に道路内に傾けた防音壁8bの事例である。
【0049】
防音壁8a、8bの高さが同じであれば、アーチ状の方が、排気ガスと浄化材との接触が増すことによる浄化の効果の向上が認められ、かつ騒音の低減効果も大きくなる利点がある。また、図16に示すように、浄化防音構造体1a、1cを従来の防音壁8cの上部に継ぎ足すように併用して設置してもよい。さらには、排ガス中の大気汚損物質の除去効率を高めるため、ファン(図示せず)などによって排ガスを強制的に活性炭素繊維層の浄化材4層を通過させる強制通風構造を付加することもできる。
【0050】
平板形の浄化防音構造体1a、1cを道路のトンネル、堀割道路の壁面、天井面および高架道路の裏面など設置する場合は、それら壁面や天井面に所定の間隔でアンカーボルトを打ち込み、取り付け金具を介してナットで固定したり、壁面や天井面に予め金属製の下地を取り付けておき、取り付け金具を介してボルトナット固定する方法で設置する。
なお、既設の防音壁がコンクリート板などの遮音板を用いている場合には、本発明の浄化防音構造体をその従来防音壁の前面に併設して排ガス浄化機能を有する防音壁にすることもできる。
【0051】
《b》防音壁上部に取り付ける立体形の排ガス浄化防音構造体(図17、18参照)
防音壁上端に取り付ける本発明の浄化防音構造体1b、1dは、通常は防音壁8cの上部先端に取り付けられる。浄化防音構造体1b、1dの両端に設けてある取り付け部61(図7、12参照)を所定の間隔で建て込まれたH形支柱(図示せず)のフランジ間にスライドさせながら落とし込んで、防音壁8cの最上部に嵌合させ、支柱と排ガス浄化防音体1b、1dとの隙間に固定金具を打ち込んで固定する。
【0052】
この場合、防音壁8cは、平板型の浄化防音構造体からなる防音壁であっても従来の単なる防音板であっても応用可能である。本発明の防音壁上部に設置する排ガス浄化防音構造体1b、1dは、垂直に建て込まれたH形支柱に取り付けても道路内にアーチ状に張り出すように構築されることになるので、排気ガスと浄化材との接触が増すことによる浄化効果が向上し、あわせて騒音の低減効果も大きくなるという利点が得られるのである。
【0053】
ここで本発明の排ガス浄化の作用、関連事項についてまとめて説明する。
a)本発明の排ガス浄化のための主要構成部材は、活性炭素繊維の集合体であって、この活性炭素繊維の集合体中を排ガスが通過する際に、排ガス中の汚損物質(NOx、SOx、粒子状物質(PM))が活性炭素繊維に吸着されて除去され、浄化された排ガスが排出されるよう作用するのである。
【0054】
b)自動車自体の走行風や自然風によって浄化防音構造体表面に風圧が加わるが、その風圧は自然に強弱変化することにより、自動車から排出された排ガスは、自動的に浄化防音板に吸入され排出される。この際、浄化材中(活性炭素繊維集合体および隙間)を通過する際に、排ガス中のNOxやSOx、粒子状物質(PM)などが上記のように除去され、排ガスは浄化されるのである。
【0055】
c)浄化材(活性炭素繊維)に吸着されたNOxやSOxは、水分と反応して硝酸や硫酸に変化するが、空気中のアルカリやコンクリートのアルカリと反応、中和され、最終的には無害化される。さらには、無害化された状態で降雨によって流出する。
【0056】
d)前記浄化材には予め還元剤を付加しておけば、吸着されたNOxを窒素ガスと水に分解し、無害化することもできる。また、本発明の排ガス浄化防音板などに対して定期的に散水して、浄化材(活性炭素繊維)に吸着されたNOx、SOx、粒子状物質(PM)などを洗い流せるよう、適宜な散水設備を併設してもよい。
【0057】
e)振動材を配置した浄化防音構造体においては、自動車走行風や自然風で発生する振動材の振動によって、内部の隙間43、空間63(図9、10、11、13など参照)において正圧と負圧が繰り返し発生するので、排ガスは吸収されたり排出されたりする。その際に排ガスは浄化材4を通過し、大気汚損物質が吸着浄化されるので、自然風のみによる場合に比べて浄化効率を高めることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の浄化防音構造体の要部断面図A、正面図B、側面図C。
【図2】本発明の浄化材のスリット状配置を説明するための要部断面図A、正面図B、側面図C。
【図3】本発明の浄化防音構造体の要部縦断面図。
【図4】本発明の他の形態の浄化防音構造体の要部縦断面図。
【図5】本発明の浄化材が吸音材を兼ねた形態の浄化防音構造体の要部断面図A、正面図B、側面図C。
【図6】本発明の浄化材が吸音材を兼ねた他の形態の浄化防音構造体の要部断面図A、正面図B、側面図C。
【図7】防音壁の突端に取り付けられる本発明の浄化防音構造体の要部斜視図A、断面図B、他の形態の断面図C。
【図8】振動材を配置した本発明の浄化防音構造体の要部断面図A、正面図B、側面図C。
【図9】図8の浄化防音構造体の縦断面図。
【図10】スリット状の浄化材と振動材とを配置した本発明の浄化防音構造体の要部断面図A、正面図B、側面図C。
【図11】図10の浄化防音構造体の縦断面図A(振動部分)、B(吸引排出部分)。
【図12】防音壁の上端に取り付けられる振動材を配置した本発明の浄化防音構造体の要部正面図A、側面図B。
【図13】図12の浄化防音構造体の吸排気を説明する要部断面略図。
【図14】本発明の浄化防音構造体からなる防音壁を配置した道路構造1の断面略図。
【図15】本発明の浄化防音構造体からなる防音壁を配置した道路構造2の断面略図。
【図16】本発明の浄化防音構造体からなる防音壁を配置した道路構造3の断面略図。
【図17】本発明の浄化防音構造体からなる防音壁を配置した道路構造4の断面略図。
【図18】本発明の浄化防音構造体からなる防音壁を配置した道路構造5の断面略図。
【図19】従来の防音板を示す要部縦断面図。
【符号の説明】
【0059】
1a:平板形の浄化防音構造体、1c:平板形の振動浄化防音構造体
1b:立体形の浄化防音構造体、1d:立体形の振動浄化防音構造体
2:遮音材
3:吸音材
4:浄化材
5:多孔板
6:枠材、61:取付部、62:ワイヤ通し孔
7:振動材
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路を走行する自動車より発生する排ガスを浄化し、かつ自動車騒音を防止する機能を有する浄化防音構造体およびそれを用いた道路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
道路を走行する車両から発生する騒音対策として、道路端に防音壁を設置して民家側への騒音の伝播を防止する対策がとられている。防音壁は、一般に前面側に吸音材11、背面側12に遮音材を配した構造(図19参照)で、車両より発生した騒音を吸音しつつ遮蔽する機能を有する防音板10を建て込んだものであり、これらには、更に上端部に高消音性の防音板(防音装置)を設置することがある。
【0003】
これらの防音壁は騒音防止機能を有するが、車両から発生するガス中の大気汚染物質(NOx、SOx)を浄化する機能が無いため周辺地域に拡散して大気汚損物質濃度の上昇をきたすことがある。
この対策として、道路防音壁面の開口ルーバー13等に光触媒(二酸化チタン)を施し、太陽光(紫外線)によってNOx、SOxを酸化して硝酸イオンや硫酸イオンの変化させて除去する方法が提案されているが、光触媒は太陽光が当たらないと十分な効果が発揮できない問題があった。(特許文献1を参照のこと)
【0004】
【特許文献1】特開平9−268526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、自動車排ガス中の大気汚染物質(NOxやSOx等)を、太陽光などの照明を必要としないで浄化するとともに、道路騒音を防止できる浄化防音構造体およびそれらを用いた防音壁を備えた道路構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題は、排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化する活性炭素繊維からなる浄化材と吸音材と遮音材とによって、または吸音材を兼ねる前記浄化材と遮音材とによって少なくとも構成されることを特徴とする本発明の浄化防音構造体によって、解決することができる。
また、本発明は、前記浄化防音構造体の表面の全部または一部に、その振動によって防音構造体内に排ガスを吸引または排出させる振動材を配置し、排ガスの吸引通路または排出通路に浄化材を配置した形態が好ましい。
【0007】
さらに本発明の浄化防音構造体は次の形態に好ましく具体化される。
1)振動材が膜振動吸音性振動材または板振動吸音性振動材である形態。
2)前記浄化材がスリット状に配置されているもの。
3)前記浄化材が活性炭素繊維の集合体によって構成され、吸音材を兼ねたものである形態。
4)前記いずれかに記載の浄化防音構造体であって、道路防音壁の上部に設置し、自動車から排出されるガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに騒音を防止するようにしたもの。
【0008】
また、前記の問題は、前記のいずれかの浄化防音構造体を道路側端や中央分離帯に設置して防音壁とし、自動車排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに騒音を防止するようにしたことを特徴とする本発明の道路構造によって解決される。また、前記のいずれかの浄化防音構造体を、道路防音壁の上部に設置し、自動車から排出されるガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに騒音を防止するようにした道路構造としても具体化され得る。
さらには、前記のいずれかの浄化防音構造体をトンネル式道路もしくは堀割式道路の壁または天井、または高架道路の裏面に設置して自動車排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに吸音によって騒音を防止するようにした道路構造としても具体化され得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排ガス浄化機能を有する浄化防音構造体および道路構造は、このように構成されているので、以下に示すようないくつかの利点を達成できるという優れた効果がある。よって本発明は、従来の問題点を解消した浄化防音構造体および道路構造として、工業的価値はきわめて大なるものがある。
【0010】
a)本発明の特定の浄化防音構造体および道路構造は、活性炭素繊維からなる浄化材それ自体によって自動車の排気ガス中の汚損物質であるNOx、SOxを浄化するものであり、光触媒のように太陽光などの光を必要としないから、昼夜を問わず浄化機能を発揮して道路周辺の大気環境を改善することができる。
【0011】
b)また、本発明の浄化防音構造体によれば、従来の光触媒では捕集できなかった排ガス中の粒子状物質(PM)のような汚損物質も捕集することも可能であり、大気に煤塵環境を大きく改善することができる。
【0012】
c)さらに、本発明の浄化防音構造体は、排気ガス中の汚損物質であるNOx、SOxを浄化する機能の他、吸音および遮音機能も有するので、車両から発生する騒音を低減することに大きく寄与できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の浄化防音構造体および道路構造に係る実施形態について、図1〜18を参照しながら説明する。
先ず、図1〜7は、本発明の浄化防音構造体1を例示するもので、排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化する活性炭素繊維からなる浄化材4を音源側に配置し、背後の遮音材2との間に吸音材3を配置した、少なくとも3種部材を枠材6に組み付けられた平板形の浄化防音構造体1a(図1〜6)あるいは立体形(三角横長柱状)の浄化防音構造体1b(図7)が形成されている。この図1〜6の事例では、音源側表面にはエキスパンドメタルなどの多孔板5が配置され、枠材6に側面には取付部61、ワイヤ通し孔62があらかじめ設けられている。
【0014】
また、図8〜13は、排ガスを吸引または排出させるための振動材7を用いた浄化防音構造体を例示するもので、前記浄化防音構造体の音源側表面の全部または一部に、周囲の風圧でそれ自体が振動することによって浄化防音構造体内に排ガスを吸引または排出させる板状または膜状の振動材7を配置し、排ガスが吸引または排出される通路に浄化材4を配置して、平板形の振動浄化防音構造体1c(図8〜11)または防音壁の上端に取り付けられる立体形の振動浄化防音構造体1d(図12〜13)が構成される。なお、振動材以外の構造は先の場合と同様である。
【0015】
次に、各部分の構成部材について詳細に説明する。
(大気汚染物質を浄化するための浄化材)
本発明の浄化防音構造体における排ガス浄化のための主要構成部材である浄化材4は、活性炭素繊維の集合体であって、この活性炭素繊維の集合体を排ガスが通過する際に、排ガス中の汚損物質(NOx、SOx、粒子状物質(PM))を活性炭素繊維に吸着させて除去し、浄化された排ガスを排出するよう作用する。
【0016】
本発明に用いられる活性炭素繊維は、ポリアクリルニトリル系繊維、セルロース系繊維、フェノール系繊維、コールタールピッチ系繊維などから得られる繊維径が5μm〜30μmの炭素繊維を素材として、賦活処理によって繊維に無数の微細な細孔(細孔径0.1nm〜10nm)を形成し、吸着活性を高活性化したものである。その好ましい表面積は、500〜3000m2/gの範囲である。
【0017】
本発明に用いられる活性炭索繊維の集合体は、使用個所の状況、要求などにより種々の形態が利用可能である。例えば、不定形綿状の形態、綿をやや密に絡めたマット、縮絨したフェルト、織機または編み機による織物、編物あるいは網状体、ハニカム状孔明きブロック状成形体、孔明き平板状成形体などの成形加工体が適宜に用いられる。要は、浄化すべき排ガスが、含有する汚損物質を吸着除去するに好ましい速度で通過できるような気孔構造を持つ集合体が好ましいのである。このような成形加工には、所定形状を保持するためのバインダーを用いてもよいが、繊維の微細な細孔を塞がないよう最小限に抑える配慮が必要である。
【0018】
前記活性炭索繊維集合体の嵩密度は、値が大きいと通気抵抗が大きくなって排気ガスの吸入、放出が困難となるなどするので、排気ガスの通気性を考慮して定めるが、繊維密度(嵩密度)は0.001〜0.1g/cm3の範囲から選択される。
【0019】
また、前記の活性炭素繊維は、吸着活性を選択的に発揮させる所定の化学薬品の含浸、酸化還元性を高める酸化剤、還元剤の添加、触媒成分の添加などの各種化学処理を施して、その機能を向上させるようにするのもよい。
【0020】
(吸音材(多孔質吸音材))
本発明に用いられる吸音材3には、例えば、連通孔を有する多孔質吸音材であるグラスウール、ロックウール等の無機繊維からなる多孔質材、アルミニウム繊維などの金属繊維からなる金属多孔質材、アルミの発泡体、アルミ粒子の焼結体、陶磁器粒子粒子の焼結体、セラミック発泡体、ウレタン、メラミン樹脂などの樹脂発泡体、軽量骨材の焼結体または接着多孔体、セメント発泡体、珪酸カルシウム発泡体など各種の吸音材が適宜に採用される。
【0021】
それらの気孔率、流れ抵抗、通気率、嵩比重、大きさ、厚さ、取り付け時の背後空気層有無、あるいはフィルム等の吸音材への保護材の有無、または、内部に配置される吸音材自身の吸音特性に、特に諸条件に制限があるものではない。
【0022】
なお、活性炭素繊維の集合体は、それ自体が多孔質材料であるから、浄化材と吸音材とを兼用した部材としても使用できる。この浄化材は、賦活処理によって炭素繊維に無数の微細な細孔を形成し吸着活性を高活性化した繊維径が5μm〜30μmの炭素繊維の集合体であって、不定形綿状の形態、綿をやや密に絡めたマット、縮絨したフェルト、織機または編み機による織物、編物あるいは網状体、ハニカム状孔明きブロック状成形体で、繊維間には表裏に連通する細孔を有するので、炭素繊維の集合体に入射した音波を繊維間の細孔部で摩擦などによって熱エネルギーに変換して吸収する吸音機能も有する。
【0023】
従って、活性炭素繊維からなる浄化材と遮音材を組み合わせた構成の浄化防音構造体を用いても音源からの騒音を吸収し、遮音材によって騒音を遮蔽することによって民家側への騒音を低減することができる。より高い吸音性が必要な場合は、活性炭素繊維集合体の繊維密度を0.01〜0.05g/cm3に、厚さを25mm以上にすることが好ましい。この場合の吸音率は、400Hzで0.7以上、1000Hzで0.8以上が得られる。
また、例えば遮音壁が十分高い場合で吸音性がそれほど高くなくても民家側への騒音を低減できる場合は、活性炭素繊維集合体の繊維密度は0.001〜0.1g
/cm3としてもよい。
【0024】
このように、繊維構造体は多孔質材料であって、繊維自身と繊維と繊維の間に細孔を有するので、繊維自身の細孔部での排ガス中の大気汚染物質の吸着機能と、繊維間の比較的大きい細孔部での吸音機能を有するので、浄化と吸音を兼ねることができるのである。
なお、浄化防音構造体の吸音性を高めるため(400Hzで0.7以上、1000Hzで0.8以上)、吸音材を追加して、浄化材、吸音材、遮音材の構成にしてもよい。
【0025】
(振動材)(膜状振動材、板状振動材)
本発明に用いられる振動材7は、通気性がないか、または通気性の小さい有機材料(合成樹脂、天然樹脂、ゴム)、金属材料、または無機材料からなるフィルム、シート、薄板状のものであって、走行する自動車の走行風や自然風によって、それ自体が振動する材料である。この目的には、厚さは、一般的には0.006mm〜2mmが好ましく、金属板の場合には1mm以下が適当である。
【0026】
振動材用の有機材料としては、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化エチレン等のフッ素樹脂系やポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチエン、酢酸ビニル、ポリビニリデン、ポリカーボネート、アクリルなどの合成樹脂のフィルム、シートが用いられる。また、天然ゴムまたは合成ゴムのシートや、天然合成繊維の不織布や織布でもよい
【0027】
また、振動材用の金属材料としては、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの薄板、金属繊維や金属粒子の圧縮成形薄板が用いられる。また、無機材料としては、ガラス繊維、ロックウール等の無機繊維の圧縮成形板またはクロスなども使用可能である。さらに、これら各種材料を複合して組合せた材料でもよい。
【0028】
本発明の振動材7は、走行風圧以外に、走行車両から発生する騒音(音波)による振動を利用することもできるものである。この場合は、振動材は、共鳴周波数付近で吸音性を示すが、自動車走行音を吸音するために幅広い周波数域で吸音性を得るようにするには、これら有機材料等の振動材(フィルム、シート)の両面または片面に金属材料、有機材料、無機材料の多孔板(網、孔明き板、エキスパンドメタルなど)を配置した積層体とし、音波による膜状材(振動材)の振動と膜状材と多孔板による摩擦による吸音性が発揮できるようにして、全体の吸音性を高めるのが特に好ましい。
【0029】
(遮音材)
本発明の浄化防音構造体の背後に配置する遮音材2は、鉄板、やアルミ板などの金属板やポリカーボネートやアクリルなどのプラスチック板、コンクリートなどの無機質板など、従来から知られている材料が用いられる。
【0030】
次に、本発明の排ガス浄化防音構造体の各種形態について、さらに説明する。
道路を走行する自動車の走行風や自然風によって自動車排ガスを防音構造体の前面側の排ガス浄化材部に接触または通過させて浄化するタイプのa)平板形の排ガス浄化防音構造体、b)防音壁上端部分に取り付ける三角横長柱状形など立体形の排ガス浄化防音構造体について、図1〜7を参考にして説明する。
【0031】
《a》平板形の排ガス浄化防音構造体1a(図1〜6)
前面の多孔板5と枠材6からなる箱形パネルの前面側から、浄化材4(活性炭素繊維)、その背後に吸音材3、遮音材2に順に配置する。(図1参照)
浄化材4と吸音材3、吸音材3と遮音材2の間には空間を設けても設けなくともよい。浄化防音構造体全体の大きさは、高さが500〜1000mm、横幅(長さ)が1000〜4000mm、厚さは50〜300mm程度が適当である。
【0032】
浄化材4の厚さは、防音構造体の厚さに応じて調整するが、例えば、全体の厚さが200mmの場合は、約150mmの浄化材、約50mm吸音材(例えば32kg/m3のグラスウール)が用いられる。
【0033】
この場合、図2に示すように、浄化材4(活性炭素繊維)は、排ガスとの接触面を増すために多数の短冊状に形成して、表面から内部に向けて多数の隙間41を開けるよう配置するのが好ましい。この場合、吸音材3はスリットなど設けずに平板に配置すればよい。
この場合、隙間の幅は5〜10mmが好ましい。狭過ぎると排ガスが流れにくくなる。広すぎると捕集効率が低下する。また、前面から見た隙間の連通方向は垂直、水平、斜めのいずれでもよいが、排ガスの流れのためには垂直(上下)方向が最も好ましい。
【0034】
また、活性炭素繊維からなる浄化材4が前述のように吸音材3を兼ねる場合は、多数の吸音材兼浄化材43を、図5に示すように、前面から奥行き全長にわたって、隙間41を設けて配置すればよい。なお、図1のような構成においても、浄化材4が吸音材を兼ねる場合は吸音材3を省略してもよい。この場合の主要構成材は、浄化材(兼吸音材)4と遮音材2の組合せになる。
【0035】
以上説明した事例において、浄化材4、吸音材兼浄化材43の表面は多孔板5で保護するのがよい。この多孔板5としては、金属や樹脂の孔明き板や網材などが適当であるが、内側の活性炭素繊維の浄化材4などの損傷、飛散を防ぐため、開口孔の寸法や目開きはできる限り小さくするとともに、通気性を確保するため開孔率はできる限り大きくすることが好ましい。
【0036】
なお、図3に示すように、設置後のメンテナンス時に排ガス浄化材部の浄化材4を新品または洗浄済の材料に交換する場合の便宜を考慮して、排ガス浄化材4を多孔板5で前後から挟んでユニット化し、防音板の枠材6にネジ、ボルトなどで取り付けたり、ワンタッチで固定するように構成して、着脱容易に取り付けておくことが好ましい。
【0037】
また、図4に示すように、浄化防音構造体1aの枠材6に上部と下部には、切り欠き開口63を設けておき、排ガスの流通を促すのが好ましい。
また、図6に示すように、排ガス浄化材4を多孔板5で前後から挟んでユニット化し、これを吸音材3と遮音材2と枠材6からなる防音板の前面に、排ガスとの接触を高めるように突出するように取り付けるよう構成してもよい。
【0038】
なお、補足すると、a)トンネル、堀割り、高架裏面などの音響的に反射性の構造物の表面に使用する場合は、遮音板を省略することができる。b)道路の中央分離帯用に使用する浄化防音構造体は、両面に浄化材と吸音材(浄化材兼吸音材)を配置して中央部分に遮音材を配置する構成が好ましいが、遮音材を省略して、浄化材と吸音材をスリット状に配置してパネル化した防音板にしてもよい。c)本発明の浄化防音構造体の両端部に落下防止用のワイヤーロープを通すためのワイヤ通し孔62(図1、2参照)を設けてもよい。
【0039】
《b》防音壁上端部分に取り付ける立体形の排ガス浄化防音構造体(図7参照)
従来の防音壁の上端部分に沿って取り付けて、防音効果を向上させるとともに、排ガス中の汚損物質(NOx、SOxなど)を吸着、除去し、環境を改善することができるものである。
【0040】
この目的の浄化防音構造体1bの外形は、例えば、縦断面が逆三角形の横長柱状体であり、奥行き(防音壁に直角)200〜2000mm、高さ200〜〜1000mm、長さ(防音壁方向)1000〜4000mの三角横長柱状体、また、縦断面が円形、または楕円形で、奥行き(又は直径)200〜1000mm、高さ200〜1000mm、長さ1000〜4000mの大きさの曲面横長柱状体である。
【0041】
三角横長柱状体の浄化防音構造体1bの例を図7に示すが、音源側の面に多孔板5を配し、反対側に遮音材2を配し、その間に吸音材兼浄化材43を隙間41を設けて音源側の面から反対側に向けて掛け渡すように配置している。この場合、浄化防音構造体1bの上面は大気に開放した構造を採用しているが、必要に応じて保護用の多孔板を配置してもよい。
なお、防音壁上部に取り付ける浄化防音構造体では、遮音材を省略して、多孔板、浄化材(または吸音材兼浄化材)、吸音材で構成してもよい。
また、排ガス除去効果を高めるため、遮音板を立体形構造の中央付近に縦方向に配置し、音源側(道路側)、反対側(民家側)、及び上部側に浄化材や吸音材を配置するなどの方法で、ほぼ全表面に浄化材を配置した構造にしてもよい。
【0042】
次に、振動材を用いた本発明の浄化防音構造体の各種形態について、さらに説明する。
この浄化防音構造体は、自動車の走行風や自然風を利用して振動材を振動させ、防音構造体内の空間部に負圧を生じさせて、排ガスを吸引し、浄化材を通過させて排ガスを浄化するものであり、平板形の振動浄化防音構造体1c(図8〜11)、および防音壁の上端に取り付けられる振動浄化防音構造体1d(図12〜13)がある。
【0043】
《a》平板形の排ガス振動浄化防音構造体1c(図8〜11)
本発明では、防音板1cの表面の一部に振動材7を配置し、残りの表面に浄化材4を配置し、浄化材4の部分を通じて外気の流通が可能にするが、他の部分は基本的に密閉構造としている。
【0044】
振動材7と浄化材4の配置の仕方は、上下配置(図8、9)、左右配置(図10、11)などがある。
すなわち、上下配置(図8、9)では、一枚の浄化防音構造体1cの前面の上半分に振動材7が、下半分には浄化材4が配置されている。なお、吸音材3は浄化材を兼ねるものでもよい。
また、左右配置(図10、11)では、一枚の浄化防音構造体1cの前面の左右方向に振動材7の部分と浄化材4の部分とが交互に配置されている。
もちろん、本発明では、振動材の振動によって排ガスが浄化材を流通する構造ならよいので、この形態に限定されるものではない。
なお、浄化材4が吸音材を兼ねる場合は、前記同様に吸音材3を省略してもよい。
【0045】
なお、振動材7は、風による振動を起こしやすくするため、その周囲部分あるいは両端部分を枠材に取り付け固定するが、内側部分は固定しないで自由に振動可能としておくことが重要である。周囲部分の固定方法も、連続して固定するのではなく、間隔をおいて点状に部分固定してもよい。
【0046】
なお、浄化材と振動材とを別個に枠部材などに取り付けたユニットを別々に製作しておき、施工時に合体させて設置するようにしてもよい。もちろん、浄化材と遮音材からなる構造体と振動材と遮音材からなる構造体を個別に製作して、施工時に上下や左右に隣接して設置することによって浄化防音構造体としてもよいが、いずれの場合も排ガスの吸引、浄化、排出を行うために、それぞれの構造体の空間部同士が繋がるように接する面に開口を設けておく必要がある。また、浄化防音構造体を設置後に空間部が上下で繋がるようにしておき、排ガスを上部にも排出できるようにしてもよい。また、振動材を前記膜振動吸音材にすると、吸音性も向上するので、防音効果の点から好ましい。
【0047】
《b》防音壁上端部分に取り付ける立体形の排ガス振動浄化防音構造体1d(図12〜13)
この防音壁先端に取り付けるタイプの振動浄化防音構造体1dは、音源側に振動材7を配置した部分と吸音材兼浄化材43を配した部分に区分し、背面側に遮音材2を配し、上面側にも振動材7aを配し、振動材7、7aの背面側に空間63を形成すれば、振動材7、7aの振動によって排ガスが吸音材兼浄化材43の隔離した隙間43を流通して浄化作用を営むのは、図8〜11の場合と同様である。
この場合も、浄化材および振動材は予めユニット化したものを振動浄化防音構造体に着脱可能なものとしておくのも好ましい。
【0048】
次に、本発明の排ガス浄化防音構造体の道路上への構築形態について説明する。
《a》平板形の排ガス浄化防音構造体(図14〜16参照)
本発明の平板形の浄化防音構造体1a、1cを、道路9の両側や中央分離帯に沿って設けられたH形支柱の支柱間に落とし込んで防音壁8aを構築する。支柱の前面や背面側にボルトで取り付けてもよい。
図14は垂直の防音壁8aの例で、図15は防音壁の上部をアーチ状に道路内に傾けた防音壁8bの事例である。
【0049】
防音壁8a、8bの高さが同じであれば、アーチ状の方が、排気ガスと浄化材との接触が増すことによる浄化の効果の向上が認められ、かつ騒音の低減効果も大きくなる利点がある。また、図16に示すように、浄化防音構造体1a、1cを従来の防音壁8cの上部に継ぎ足すように併用して設置してもよい。さらには、排ガス中の大気汚損物質の除去効率を高めるため、ファン(図示せず)などによって排ガスを強制的に活性炭素繊維層の浄化材4層を通過させる強制通風構造を付加することもできる。
【0050】
平板形の浄化防音構造体1a、1cを道路のトンネル、堀割道路の壁面、天井面および高架道路の裏面など設置する場合は、それら壁面や天井面に所定の間隔でアンカーボルトを打ち込み、取り付け金具を介してナットで固定したり、壁面や天井面に予め金属製の下地を取り付けておき、取り付け金具を介してボルトナット固定する方法で設置する。
なお、既設の防音壁がコンクリート板などの遮音板を用いている場合には、本発明の浄化防音構造体をその従来防音壁の前面に併設して排ガス浄化機能を有する防音壁にすることもできる。
【0051】
《b》防音壁上部に取り付ける立体形の排ガス浄化防音構造体(図17、18参照)
防音壁上端に取り付ける本発明の浄化防音構造体1b、1dは、通常は防音壁8cの上部先端に取り付けられる。浄化防音構造体1b、1dの両端に設けてある取り付け部61(図7、12参照)を所定の間隔で建て込まれたH形支柱(図示せず)のフランジ間にスライドさせながら落とし込んで、防音壁8cの最上部に嵌合させ、支柱と排ガス浄化防音体1b、1dとの隙間に固定金具を打ち込んで固定する。
【0052】
この場合、防音壁8cは、平板型の浄化防音構造体からなる防音壁であっても従来の単なる防音板であっても応用可能である。本発明の防音壁上部に設置する排ガス浄化防音構造体1b、1dは、垂直に建て込まれたH形支柱に取り付けても道路内にアーチ状に張り出すように構築されることになるので、排気ガスと浄化材との接触が増すことによる浄化効果が向上し、あわせて騒音の低減効果も大きくなるという利点が得られるのである。
【0053】
ここで本発明の排ガス浄化の作用、関連事項についてまとめて説明する。
a)本発明の排ガス浄化のための主要構成部材は、活性炭素繊維の集合体であって、この活性炭素繊維の集合体中を排ガスが通過する際に、排ガス中の汚損物質(NOx、SOx、粒子状物質(PM))が活性炭素繊維に吸着されて除去され、浄化された排ガスが排出されるよう作用するのである。
【0054】
b)自動車自体の走行風や自然風によって浄化防音構造体表面に風圧が加わるが、その風圧は自然に強弱変化することにより、自動車から排出された排ガスは、自動的に浄化防音板に吸入され排出される。この際、浄化材中(活性炭素繊維集合体および隙間)を通過する際に、排ガス中のNOxやSOx、粒子状物質(PM)などが上記のように除去され、排ガスは浄化されるのである。
【0055】
c)浄化材(活性炭素繊維)に吸着されたNOxやSOxは、水分と反応して硝酸や硫酸に変化するが、空気中のアルカリやコンクリートのアルカリと反応、中和され、最終的には無害化される。さらには、無害化された状態で降雨によって流出する。
【0056】
d)前記浄化材には予め還元剤を付加しておけば、吸着されたNOxを窒素ガスと水に分解し、無害化することもできる。また、本発明の排ガス浄化防音板などに対して定期的に散水して、浄化材(活性炭素繊維)に吸着されたNOx、SOx、粒子状物質(PM)などを洗い流せるよう、適宜な散水設備を併設してもよい。
【0057】
e)振動材を配置した浄化防音構造体においては、自動車走行風や自然風で発生する振動材の振動によって、内部の隙間43、空間63(図9、10、11、13など参照)において正圧と負圧が繰り返し発生するので、排ガスは吸収されたり排出されたりする。その際に排ガスは浄化材4を通過し、大気汚損物質が吸着浄化されるので、自然風のみによる場合に比べて浄化効率を高めることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の浄化防音構造体の要部断面図A、正面図B、側面図C。
【図2】本発明の浄化材のスリット状配置を説明するための要部断面図A、正面図B、側面図C。
【図3】本発明の浄化防音構造体の要部縦断面図。
【図4】本発明の他の形態の浄化防音構造体の要部縦断面図。
【図5】本発明の浄化材が吸音材を兼ねた形態の浄化防音構造体の要部断面図A、正面図B、側面図C。
【図6】本発明の浄化材が吸音材を兼ねた他の形態の浄化防音構造体の要部断面図A、正面図B、側面図C。
【図7】防音壁の突端に取り付けられる本発明の浄化防音構造体の要部斜視図A、断面図B、他の形態の断面図C。
【図8】振動材を配置した本発明の浄化防音構造体の要部断面図A、正面図B、側面図C。
【図9】図8の浄化防音構造体の縦断面図。
【図10】スリット状の浄化材と振動材とを配置した本発明の浄化防音構造体の要部断面図A、正面図B、側面図C。
【図11】図10の浄化防音構造体の縦断面図A(振動部分)、B(吸引排出部分)。
【図12】防音壁の上端に取り付けられる振動材を配置した本発明の浄化防音構造体の要部正面図A、側面図B。
【図13】図12の浄化防音構造体の吸排気を説明する要部断面略図。
【図14】本発明の浄化防音構造体からなる防音壁を配置した道路構造1の断面略図。
【図15】本発明の浄化防音構造体からなる防音壁を配置した道路構造2の断面略図。
【図16】本発明の浄化防音構造体からなる防音壁を配置した道路構造3の断面略図。
【図17】本発明の浄化防音構造体からなる防音壁を配置した道路構造4の断面略図。
【図18】本発明の浄化防音構造体からなる防音壁を配置した道路構造5の断面略図。
【図19】従来の防音板を示す要部縦断面図。
【符号の説明】
【0059】
1a:平板形の浄化防音構造体、1c:平板形の振動浄化防音構造体
1b:立体形の浄化防音構造体、1d:立体形の振動浄化防音構造体
2:遮音材
3:吸音材
4:浄化材
5:多孔板
6:枠材、61:取付部、62:ワイヤ通し孔
7:振動材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化する活性炭素繊維からなる浄化材と吸音材と遮音材とによって、または吸音材を兼ねる前記浄化材と遮音材とによって少なくとも構成されることを特徴とする浄化防音構造体。
【請求項2】
前記浄化防音構造体の表面の全部または一部に、その振動によって防音構造体内に排ガスを吸引または排出させる振動材を配置し、排ガスの吸引通路または排出通路に浄化材を配置した請求項1に記載の浄化防音構造体。
【請求項3】
振動材が膜振動吸音性振動材または板振動吸音性振動材である請求項2に記載の浄化防音構造体。
【請求項4】
前記浄化材がスリット状に配置されている請求項1または2または3に記載の浄化防音構造体。
【請求項5】
前記浄化材が活性炭素繊維の集合体によって構成され、吸音材を兼ねたものである請求項1〜4のいずれかに記載の浄化防音構造体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の浄化防音構造体であって、道路防音壁の上部に設置し、自動車から排出されるガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに騒音を防止するようにしたことを特徴とする浄化防音構造体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の浄化防音構造体を道路側端や中央分離帯に設置して防音壁とし、自動車排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに騒音を防止するようにしたことを特徴とする道路構造。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の浄化防音構造体を、道路防音壁の上部に設置し、自動車から排出されるガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに騒音を防止するようにしたことを特徴とする道路構造。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の浄化防音構造体をトンネル式道路もしくは堀割式道路の壁または天井、または高架道路の裏面に設置して自動車排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに吸音によって騒音を防止するようにしたことを特徴とする道路構造。
【請求項1】
排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化する活性炭素繊維からなる浄化材と吸音材と遮音材とによって、または吸音材を兼ねる前記浄化材と遮音材とによって少なくとも構成されることを特徴とする浄化防音構造体。
【請求項2】
前記浄化防音構造体の表面の全部または一部に、その振動によって防音構造体内に排ガスを吸引または排出させる振動材を配置し、排ガスの吸引通路または排出通路に浄化材を配置した請求項1に記載の浄化防音構造体。
【請求項3】
振動材が膜振動吸音性振動材または板振動吸音性振動材である請求項2に記載の浄化防音構造体。
【請求項4】
前記浄化材がスリット状に配置されている請求項1または2または3に記載の浄化防音構造体。
【請求項5】
前記浄化材が活性炭素繊維の集合体によって構成され、吸音材を兼ねたものである請求項1〜4のいずれかに記載の浄化防音構造体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の浄化防音構造体であって、道路防音壁の上部に設置し、自動車から排出されるガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに騒音を防止するようにしたことを特徴とする浄化防音構造体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の浄化防音構造体を道路側端や中央分離帯に設置して防音壁とし、自動車排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに騒音を防止するようにしたことを特徴とする道路構造。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の浄化防音構造体を、道路防音壁の上部に設置し、自動車から排出されるガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに騒音を防止するようにしたことを特徴とする道路構造。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の浄化防音構造体をトンネル式道路もしくは堀割式道路の壁または天井、または高架道路の裏面に設置して自動車排ガス中の大気汚染物質を吸着して浄化するとともに吸音によって騒音を防止するようにしたことを特徴とする道路構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−175019(P2008−175019A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11075(P2007−11075)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
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