排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システム
【課題】小型車等においても使用可能で、排気管内において短い距離で効率良く浄化剤の蒸発及び拡散を促進できて、浄化剤を均一化した状態で排気ガス浄化装置に到達させることができる排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムを提供する。
【解決手段】内燃機関Eの排気通路4に配設された排気ガス浄化装置10で消費される浄化剤Fを、排気管内噴射装置13によって前記排気ガス浄化装置10より上流側の前記排気通路4内に供給して排気ガスGに混入させる排気ガス浄化方法において、遮蔽板14を、前記排気通路4に排気ガスGの流れの主方向Xに対して垂直な軸14c周りに前記排気ガスの流れの主方向Xから所定の角度θ傾斜させて設け、該遮蔽板14の下流側に前記浄化剤Fを噴射する。
【解決手段】内燃機関Eの排気通路4に配設された排気ガス浄化装置10で消費される浄化剤Fを、排気管内噴射装置13によって前記排気ガス浄化装置10より上流側の前記排気通路4内に供給して排気ガスGに混入させる排気ガス浄化方法において、遮蔽板14を、前記排気通路4に排気ガスGの流れの主方向Xに対して垂直な軸14c周りに前記排気ガスの流れの主方向Xから所定の角度θ傾斜させて設け、該遮蔽板14の下流側に前記浄化剤Fを噴射する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスを排気通路内に浄化剤を噴射して排気ガスを浄化又は排気ガス浄化装置の再生を行う排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に対する排ガス規制は厳しさを増し、エンジン側の技術開発だけでは追いつけない状況となりつつある。そのため、排気ガスを後処理装置によって浄化することが必要不可欠であり、ディーゼルエンジンや一部のガソリンエンジン等の内燃機関や様々な燃焼装置の排気ガス中からNOx(窒素酸化物)を還元除去するためのNOx触媒や、これらの排気ガス中の粒子状物質(パティキュレート・マター:以下、PM)を除去するディーゼルパティキュレートフィルタ装置(以下、DPF装置)について、種々の研究や提案がなされている。
【0003】
その中に、ディーゼルエンジン用のNOx低減触媒として、アンモニア選択還元型NOx触媒(Selective Catalystic Reduction:SCR触媒)やNOx吸蔵還元型触媒とNOx直接還元型触媒がある。
【0004】
アンモニア選択還元型NOx触媒を備えた排気ガス浄化システムでは、エンジン出口からアンモニア選択還元型NOx触媒までの排気管の中に尿素水溶液、アンモニア、アンモニア水等のアンモニア系溶液(ここでは「浄化剤」という)を噴射し、排気ガスとアンモニア系溶液を混合し、発生したアンモニアのNOxとの選択的な還元反応により、NOxを浄化している。
【0005】
この排気ガス浄化システムでは、現在は主にアンモニアを反応させるSCR触媒が主流であるが、添加する浄化剤は毒性のあるアンモニアの代りに排気ガス中でアンモニアに変化する無害の尿素水溶液を添加する方式に移行しつつある。
【0006】
この尿素水溶液は排気管中に噴射すると、これ自身の熱容量と蒸発潜熱が大きいため、容易に気体にはならず、液滴状態のままとなり、この液滴状態が続くと排気ガス中での拡散性が著しく低下する。そのため、尿素噴霧が排気ガス中で偏り、十分に均一拡散できないままSCR触媒に尿素が到達し、尿素から変化したアンモニアが不均一に分散し、過剰な部分では未反応のアンモニアがそのまま大気中に排出し(アンモニアスリップ)、不足の部分では、未反応のNOxがそのまま大気中に排出される。
【0007】
また、NOx吸蔵還元型触媒を備えた排気ガス浄化システムでは、NOx吸蔵還元型触媒は、酸化機能を持つ貴金属触媒と、アルカリ金属等のNOx吸蔵機能を持つNOx吸蔵材を担持しており、これらにより、排気ガス中の酸素濃度によってNOx吸蔵とNOx放出・浄化の二つの機能を発揮する。そして、NOx吸蔵推定量がNOx吸蔵飽和量になった時に、排気ガスの空燃比をリッチ状態にして、NOx吸蔵能力回復用の再生制御を行うが、この再生制御の一つに、排気管へ直接燃料等の炭化水素(ここでは「浄化剤」という)を供給する排気管内噴射リッチ制御がある。
【0008】
また、NOx直接還元型触媒を備えた排気ガス浄化システムでは、NOx直接還元型触媒は、β型ゼオライト等の担体に触媒成分であるロジウム(Rh)やパラジウム(Pd)等の金属を担持し、NOxを直接還元する。そして、NOx還元性能が悪化してくると、排気ガスの空燃比をリッチ空燃比にして、触媒の活性物質を再生して活性化するNOx還元性能回復用の再生制御を行うが、この再生制御の一つに、排気管へ直接燃料等の炭化水素(ここでは「浄化剤」という)を供給する排気管内噴射リッチ制御がある。
【0009】
また、排気ガス中のPM(粒子状物質)を捕集する連続再生型DPFを備えた排気ガス浄化システムでは、フィルタ部分に捕集され蓄積されたPMを燃焼除去してフィルタを再生するために、排気管内噴射により、排気管内に軽油燃料等の炭化水素(ここでは「浄化剤」という)を供給して、フィルタの上流側に配置した酸化触媒又はフィルタに担持された酸化触媒で、この炭化水素を酸化させることによって、フィルタの温度を上昇させてフィルタのPMを燃焼除去することが行われている。
【0010】
これらの排気管内噴射においては、浄化剤が偏った状態で触媒や連続再生型DPFに到達すると、排気ガスのNOx浄化やNOx触媒の再生や連続再生型DPFの再生の効率が下がり、また、浄化剤が十分に消費されず、下流側に排出されてしまう。そのため、浄化剤を排気ガス中に略均一に供給し、排気ガスと浄化剤の混合濃度を均一化することが重要で、様々な工夫がなされている。
【0011】
その一つに、排気中に還元剤を均一に拡散させるために、還元剤噴射装置(混入部)の下流位置の排気管内に、絞り部を設けて局所的に高流速で低圧の状態を造り、還元剤の気化を促すか、又は、還元剤噴射装置(混入部)の下流位置の排気管内に、撹拌部材を設けて乱流を起こし、排気流れの撹拌を促すエンジンの排気浄化構造も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
しかしながら、絞り部を設けた場合には、還元剤が噴霧状態の場合には、絞り部で流れの方向が中心方向に変化するため、慣性力が作用している噴霧状態の還元剤が絞り部の壁面に衝突して液状に付着するという問題がある。また、撹拌部材を設けた場合には、同様に、噴霧状態の還元剤が撹拌部材に衝突して液状に付着するという問題がある。
【0013】
更に、還元剤と排出ガスとの混合物を形成するための装置で、排出ガスと還元剤を導入可能な混合物形成領域を備え、この混合物形成領域の壁部を少なくとも部分的に、隆起部及び凹部を備えて、特に波形に形成して、言い換えれば、排気管に波形管を用いて渦流を起こして還元剤を混合する装置及び排出ガス浄化装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0014】
しかしながら、波形管を用いると、この凹部に煤が溜まり易く腐食の原因となったり、波形管は剛性が低くなるため、排気管の振動が誘因されたりするという問題がある。
【0015】
また、バルブなどの気流制御体と、該気流制御体の上流側と下流側とを連通させるバイパス通路とを有する、気流に旋回力を付与する気流制御手段と、該気流制御手段によって制御される旋回気流の中心軸に直交ないし交差する方向に燃料又は他の液体を噴射する少なくとも1つの噴射手段と、該噴射手段の下流に配置され、気流を絞るとともに加熱することが可能な気化手段とを備えて構成された気化混合装置が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0016】
しかしながら、この構成では、気流の主方向周りの旋回力を付与するため、遠心力によって燃料等が吸気通路部の壁面に付着し易く、また、気流制御装置が特殊な形状をしているため工作性が悪く、しかも、圧力損失が大きいという問題がある。
【0017】
また、圧縮空気と浄化剤を混合させて排気管中に噴霧させて、蒸発し易いように微細化を図るエアアシスト式という方法もあるが、この方法はエアタンクを装備している中・大型車でのみ可能な方法である。そのため、エアタンクを装備していない小型車では、均一拡散できるように、長い末広管を設けて蒸発と拡散ができる余地を与える方法が考えられている。しかしながら、この方法では、過渡運転による排ガス規制走行モードに対しては、応答性遅れのため排気ガス浄化制御が追随できなくなるという問題がある。そのため、浄化剤を如何に短時間で効率よく蒸発と拡散を行って均一に排気ガス浄化装置に到達させることが重要な課題となっている。
【特許文献1】特開2002−213233号公報
【特許文献2】特開2004−510909号公報
【特許文献3】特開2004−324585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、エアアシスト方式が採用できない小型車であっても、排気管内において短い距離で効率良く浄化剤の蒸発及び拡散を促進できて、浄化剤を均一化した状態で排気ガス浄化装置に到達させることができる排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記のような目的を達成するための排気ガス浄化方法は、内燃機関の排気通路に配設された排気ガス浄化装置で消費される浄化剤を、排気管内噴射装置によって前記排気ガス浄化装置より上流側の前記排気通路内に供給して排気ガスに混入させる排気ガス浄化方法において、遮蔽板を、前記排気通路に排気ガスの流れの主方向に対して垂直な軸周りに前記排気ガスの流れの主方向から所定の角度傾斜させて設け、該遮蔽板の下流側に前記浄化剤を噴射することを特徴とする。
【0020】
なお、この遮蔽板の下流側とは、噴射(又は噴霧)された浄化剤の少なくとも一部が遮蔽板で生じる渦流に巻き込まれる範囲の下流側のことをいう。また、この遮蔽板の形状は、排気通路の一部を狭くして、排気ガスの流れに渦流を発生できれば良く、特に限定されない。また、遮蔽板の大きさは、排気通路の断面の多くを覆う必要はなく、浄化剤の噴射口に、排気ガスが直接当たることを妨げることができる程度の大きさと位置であればよい。
【0021】
この構成によれば、排気通路(排気管)に所定の角度を有して設けた遮蔽板により、安定した排気ガスの流れを故意に乱流化及び低速化させて、渦流を発生させ、この渦流が発生する部分の近傍に浄化剤を噴射する。噴射され微粒化された浄化剤は、遮蔽板によって発生する渦流と戻り流による淀み領域で微粒化した浄化剤が滞留し、徐々に下流へ流れて行くため、浄化剤の噴霧が偏って生じる局部的な排気ガス温度の低下が起こらず、浄化剤の蒸発が効率よく行われる。そのため、浄化剤は、排気管内において、短い距離で効率良く蒸発及び拡散し均一化した状態で排気ガス浄化装置に到達するようになる。
【0022】
従って、浄化剤の噴射位置と排気ガス浄化装置の距離が短い配置であっても、浄化剤を均一に拡散させて排気ガス浄化装置へ送ることができる。そのため、過渡運転による排ガス規制走行モードであっても、応答遅れが少なくなり、浄化制御や再生制御の追従性が向上する。また、この遮蔽板を設ける構成、即ち、排気通路の断面積を不連続に変化させる構成は単純となる。
【0023】
なお、遮蔽板の面の形状は、通常は加工が容易であるため、平面が用いられるが、渦流の発生を促進するために、円柱面や球面や円錐面等の曲面を使用することもできる。
【0024】
更に、上記の排気ガス浄化方法において、前記所定の角度を30度〜60度、好ましくは、40度〜50度の範囲内の角度とすると、渦流の発生の促進によるNOx浄化率の向上、NH3 のスリップ軽減・防止等の効果と、圧損の増加である排圧上昇率のマイナス効果とのバランスが取れる。
【0025】
そして、上記の排気ガス浄化方法は、特に、前記排気ガス浄化装置がアンモニア選択還元型NOx触媒を備えて形成され、前記浄化剤がアンモニア系溶液である場合に大きな効果を奏することができる。
【0026】
そして、上記のような目的を達成するための排気ガス浄化システムは、内燃機関の排気通路に排気ガス浄化装置を備えると共に、該排気ガス浄化装置で消費される浄化剤を前記排気ガス浄化装置の上流側の前記排気通路内に供給して排気ガスに混入させる排気管内噴射装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、前記排気通路に排気ガスの流れの主方向に対して垂直な軸周りに前記排気ガスの流れの主方向から所定の角度傾斜した遮蔽板を、前記排気管内噴射装置の噴射口の上流側に設けて構成する。
【0027】
この構成により、遮蔽板で発生する排気ガスの渦流部分に又はその近傍に、浄化剤を噴射することができるので、この渦流により、排気ガスとの混合が促進され、この混合により、浄化剤の分散均一化と蒸発が短距離で効率良く行われる。そのため、排気管内噴射装置の噴射口と排気ガス浄化装置との間が短くても、浄化剤は、均一分散状態で排気ガス浄化装置に到達する。また、排気通路に遮蔽板を設ける構成は、構造が単純となる。
【0028】
また、上記の排気ガス浄化システムで、前記所定の角度を30度〜60度、好ましくは、40度〜50度の範囲内の角度とすると、渦流の発生の促進によるNOx浄化率の向上、NH3 のスリップ軽減・防止等の効果と、圧損の増加である排圧上昇率のマイナス効果とのバランスが取れる。
【0029】
そして、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記排気ガス浄化装置がアンモニア選択還元型NOx触媒を備えて形成され、前記浄化剤がアンモニア系溶液であるように構成される。このアンモニア系溶液としては、アンモニア選択還元型NOx触媒で使用されるアンモニア水、アンモニア水溶液、尿素水溶液等がある。
【0030】
あるいは、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記排気ガス浄化装置が、上流側の酸化触媒と下流側のNOx吸蔵還元型触媒を備えて形成された排気ガス浄化装置、上流側の酸化触媒と下流側のNOx直接還元型触媒を備えて形成された排気ガス浄化装置、あるいは、酸化触媒を有する連続再生型ディーゼルパティキュレートフィルタを備えて形成された排気ガス浄化装置のいずれか一つで構成され、前記浄化剤が炭化水素であるように構成される。
【0031】
これらの構成により、それぞれの排気ガス浄化システムにおいて、浄化剤を適宜、排気ガス中に均一的に混入して、排気ガス浄化装置に供給することができるので、効率よく、NOxの浄化、NOx吸蔵還元型触媒やNOx直接還元型触媒の再生、連続再生型ディーゼルパティキュレートフィルタの再生を行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明に係る排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムによれば、排気管内において、短い距離で効率良く浄化剤の蒸発及び拡散を促進できて、浄化剤を均一分散状態で排気ガス浄化装置に供給することができる。
【0033】
しかも、圧縮空気を使用しないので、エアアシスト方式が使えない小型車等においても使用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0035】
図1に、本発明の第1の実施の形態の排気ガス浄化システム1の構成を示す。この排気ガス浄化システム1では、エンジン(内燃機関)Eの排気通路4に、アンモニア選択還元型NOx触媒11を有する排気ガス浄化装置10が配置される。
【0036】
このアンモニア選択還元型NOx触媒11は、コージェライトや酸化アルミニウムや酸化チタン等で形成されるハニカム構造の担持体(触媒構造体)に、チタニアーバナジウム、ゼオライト、酸化クロム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化タングステン等を担持して形成される。
【0037】
このアンモニア選択還元型NOx触媒11では、酸素過剰の雰囲気で、排気通路4内に、尿素水溶液、アンモニア、アンモニア水等のアンモニア系溶液(浄化剤)Fを噴射して、アンモニアをアンモニア選択還元型NOx触媒11に供給して、排気ガス中のNOxに対してアンモニアと選択的に反応させることにより、NOxを窒素に還元して浄化する。
【0038】
そのため、アンモニア選択還元型NOx触媒11の上流側の排気通路4に、NOxの還元剤となるアンモニア系溶液Fを噴射又は噴霧により供給するための排気管内噴射装置13を設ける。この排気管内噴射装置13は、図示しない貯蔵タンクから図示しない配管を経由して供給されてくるアンモニア系溶液Fを排気通路4内に直接噴射する。
【0039】
また、アンモニア選択還元型NOx触媒11の温度を測定するために、上流側温度センサー15と下流側温度センサー16を、アンモニア選択還元型NOx触媒11の上流側と下流側、即ち、前後にそれぞれ配置する。この二箇所に設置した温度センサ15、16の温度差により、触媒11内の温度差を推定する。
【0040】
更に、排気ガス浄化システム1の制御装置が、エンジンEの制御装置20に組み込まれ、エンジンEの運転制御と並行して、排気ガス浄化システム1の制御を行う。この排気ガス浄化システム1の制御装置は、排気管内噴射装置13のアンモニア系溶液Fの噴射制御を行う。
【0041】
この噴射制御では、エンジンEの運転状態(回転数や負荷)によって、アンモニア系溶液Fの噴射量を変化させて、排気ガスGの流量が変化しても、より効率よく排気ガスG中のNOxを還元すると共に、排気ガス浄化装置10の下流側の浄化された排気ガスGc中へのアンモニアの流出(アンモニアスリップ)が極力少なくなるように制御する。
【0042】
そして、本発明においては、図1〜図7に示すように、排気通路4における排気管内噴射装置13の噴射口13aの上流側に遮蔽板(遮蔽部材)14を設ける。この遮蔽板14は、図3に示すように、排気ガスGの流れの主方向Xに対して垂直な軸14c周りに所定の角度θ傾斜させて設ける。
【0043】
この所定の角度θは、30度〜60度、好ましくは、40度〜50度の範囲内の角度とする。これにより、渦流の発生の促進によるNOx浄化率の向上、NH3 のスリップ軽減・防止等の効果と、圧損の増加である排圧上昇率のマイナス効果とのバランスを取る。
【0044】
この遮蔽板14の形状や、排気通路4への突出量dや閉塞率や、幅Bや円弧の角度α等は特に限定せず、排気ガスGが直接噴射口13aに直接当たることを防ぐことができる大きさや配置で、かつ、排気通路の一部を狭くして、排気ガスの流れに渦流を発生できれば良い。また、遮蔽板14と噴射口13aの距離は、噴射(又は噴霧)された浄化剤の少なくとも一部が遮蔽板14で生じる渦流に巻き込まれる範囲であれば良い。
【0045】
なお、この遮蔽板14の大きさと配置位置は、実験や数値計算によって定めることができるが、簡易的には、排気通路4の上流側の軸方向から見た場合に噴射口13aが遮蔽板14によって遮られて見えないような大きさや配置とすればよい。
【0046】
また、図1の構成では、排気管内噴射装置13は、アンモニア系溶液Fを排気通路4の排気ガスGの流れの方向Xに対して垂直方向に噴射するように噴射口(開口部)13aを排気通路4の内壁から突出させて設ける。つまり、噴射口13aから噴射されるアンモニア系溶液Fの流れの向きを排気通路4の軸方向Xと垂直な方向にする。
【0047】
また、アンモニア系溶液Fの噴射中心の傾斜角度、噴射の拡がり範囲、噴射口13aの位置等もそれぞれの排気ガス浄化システム1の構造に対応させて最適な構成を採用することができる。つまり、排気ガスGの流れの方向Xに対して垂直方向に噴射する構成以外の、例えば、排気ガスGの流れの方向Xに対して平行な方向に噴射する構成も採用できる。
【0048】
この構成によれば、排気通路4の直線状部分に所定の角度θで傾斜した遮蔽板14を設けて安定した排気ガスGの流れに故意に渦流を発生させると共に、この遮蔽板14の下流側近傍に排気管内噴射装置13の噴射口13aを設けてアンモニア系溶液Fを噴射する構成により、アンモニア系溶液Fは、この遮蔽板14で発生する渦流により排気ガスGと混合し、拡散する。そのため、排気ガス温度が均一化し、温度の低い部分が発生しないのでアンモニア系溶液Fの蒸発が効率よく行われ、排気通路4内において、短い距離で効率良く蒸発及び拡散し均一に排気ガス浄化装置10に到達する。従って、排気管内噴射装置13の噴射口13aと排気ガス浄化装置10の距離が短い配置であっても、アンモニア系溶液Fを均一に拡散させて排気ガス浄化装置10へ供給することができる。
【0049】
次に、第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態においては、図5〜図7に示すように、第1の実施の形態の排気ガス浄化システム1の構成に加えて、排気通路4内において、アンモニア系溶液(浄化剤)Fの噴射経路にアンモニア系溶液Fの微粒化を促進させる分散部材としての衝突板17、17Aを設ける。この衝突板17、17Aの分散効果によりアンモニア系溶液Fの微粒化を促進させることができ、より微粒化及び均一分散化できる。
【0050】
この衝突板17、17Aは、この衝突板17、17Aに噴射されてくるアンモニア系溶液Fを分散させる機能を有するものであれば良い。なお、この衝突板17、17Aに噴射の分散機能に加えて、排気ガスGの流れを渦流にする渦流発生機能を持たせると、アンモニア系溶液Fのより分散化、均一化を図ることができる。
【0051】
図5に示す構成では、アンモニア系溶液Fが衝突する部分を、噴射方向に対して適当に(例えば、30°〜60°)に傾斜させた平面を有する衝突板17で形成する。この衝突板17は、アンモニア系溶液Fの噴射方向が排気ガスGの流れ方向Xに垂直か垂直に近い角度となる時に大きな効果を奏することができる。
【0052】
また、図6及び図7に示す構成では、円錐の頂点を浄化剤の噴射口に対向させた円錐形状の棒状体で衝突板17Aを形成する。また、遮蔽板14は、噴射口13a部分に対して流れを遮蔽できればよいので、この遮蔽部分以外は支持部14aのみとする構成でもよい。この構成は、アンモニア系溶液Fの噴射方向が排気ガスGの流れ方向Xに平行か平行に近い角度となる時に大きな効果を奏することができる。
【0053】
次に、第3及び第4の実施の形態の排気ガス浄化システムについて説明する。この第3及び第4の実施の形態の排気ガス浄化システムでは、排気ガス浄化装置10は、上流側の酸化触媒と下流側のNOx吸蔵還元型触媒を備えて形成され、浄化剤が炭化水素であるように構成される。その他の構成は、それぞれ第1及び2の実施の形態と同様である。
【0054】
この酸化触媒は、コージェライト、炭化ケイ素、又はステンレス等の構造材で形成されたモノリス触媒に、白金やロジウムやパラジウム等の触媒金属を担持して形成される。また、NOx吸蔵還元型触媒は、酸化機能を持つ白金(Pt)等の貴金属触媒と、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類等のNOx吸蔵機能を持つNOx吸蔵材を担持し、これらにより、排気ガス中の酸素濃度によってNOx吸蔵とNOx放出・浄化の二つの機能を発揮する。
【0055】
そして、このNOx吸蔵還元型触媒は、通常運転時にNOxを触媒金属に吸蔵し、吸蔵能力が飽和に近づくと、適時、流入してくる排気ガスの空燃比をリッチ空燃比にして、吸蔵したNOxを放出させると共に、放出されたNOxを触媒の三元機能で還元する。
【0056】
このNOx吸蔵還元型触媒を備えた排気ガス浄化システムでは、NOx吸蔵推定量がNOx吸蔵飽和量になった時に、排気管内噴射装置13により、排気通路4に直接燃料等の炭化水素(浄化剤)Fを供給する。この炭化水素Fを、上流側の酸化触媒で酸化することにより、排気ガスGの空燃比をリッチ状態にして、吸収したNOxを放出させる。この放出されたNOxを貴金属触媒により還元させる。この再生処理により、NOx吸蔵能力を回復する。
【0057】
次に、第5及び第6の実施の形態の排気ガス浄化システムについて説明する。この第5及び第6の実施の形態の排気ガス浄化システムでは、排気ガス浄化装置10は、上流側の酸化触媒と下流側のNOx直接還元型触媒を備えて形成され、浄化剤が炭化水素であるように構成される。その他の構成は、それぞれ第1及び第2の実施の形態と同様である。
【0058】
この酸化触媒は、第3及び第4の実施の形態と同様に、コージェライト、炭化ケイ素、又はステンレス等の構造材で形成されたモノリス触媒に、白金やロジウムやパラジウム等の触媒金属を担持して形成される。NOx直接還元型触媒は、β型ゼオライト等の担体に触媒成分であるロジウム(Rh)やパラジウム(Pd)等の金属を担持させて形成する。更に、金属の酸化作用を軽減し、NOx還元能力の保持に寄与するセリウム(Ce)を配合したり、下層に三元触媒を設けて酸化還元反応、特に排気ガスリッチ状態におけるNOxの還元反応を促進するようにしたり、NOxの浄化率を向上させるために単体に鉄(Fe)を加える等する。
【0059】
そして、このNOx直接還元型触媒は、通常運転時のリーン状態でNOxを直接還元するが、この還元の際に触媒の活性物質である金属に酸素(O2 )が吸着して還元性能が悪化する。そのため、NOx還元性能が悪化してきた時に、排気管内噴射装置13により、排気通路4に直接燃料等の炭化水素(浄化剤)Fを供給する。この炭化水素Fを、上流側の酸化触媒で酸化することにより、排気ガスGの空燃比をリッチ状態にして、触媒の活性物質である金属を再生して活性化する。
【0060】
次に、第7及び第8の実施の形態の排気ガス浄化システムについて説明する。この第7及び第8の実施の形態の排気ガス浄化システムでは、排気ガス浄化装置10は、酸化触媒を有する連続再生型ディーゼルパティキュレートフィルタを備えて形成され、浄化剤が炭化水素であるように構成される。その他の構成は、それぞれ第1及び第2の実施の形態と同様である。
【0061】
なお、この酸化触媒を有する連続再生型ディーゼルパティキュレートフィルタとしては、上流側の酸化触媒と下流側のフィルタとから形成されるものや、酸化触媒を担持したフィルタから形成されるもの等がある。
【0062】
この上流側の酸化触媒は、第3及び第4の実施の形態と同様に、コージェライト、炭化ケイ素、又はステンレス等の構造材で形成されたモノリス触媒に、白金やロジウムやパラジウム等の触媒金属を担持して形成される。フィルタは、多孔質のセラミックのハニカムのチャンネルの入口と出口を交互に目封じした、即ち、市松模様状に目封じしたモノリスハニカム型ウォールスルータイプのフィルタで形成される。このフィルタで排気ガス中のPM(粒子状物質)を捕集する。
【0063】
また、酸化触媒を担持したフィルタは、モノリスハニカム型ウォールスルータイプのフィルタに、白金やロジウムやパラジウム等の触媒金属を担持して形成され、このフィルタで排気ガス中のPMを捕集する。
【0064】
そして、フィルタ部分に捕集され蓄積されたPMを燃焼除去するために、排気管内噴射13により、排気通路4内に軽油燃料等の炭化水素(浄化剤)Fを供給して、フィルタの上流側に配置した酸化触媒又はフィルタに担持された酸化触媒で、この炭化水素Fを酸化させることによって、フィルタの温度を上昇させてフィルタのPMを燃焼除去する。
【0065】
上記の第1〜第8の実施の形態の排気ガス浄化システムによれば、浄化剤Fを排気通路4内に供給する排気ガス浄化システム1において、遮蔽板14の下流側の近傍に噴射された浄化剤Fは、この所定の角度θ傾斜した遮蔽板14や衝突板17、17Aで発生する渦流により排気ガスとの混合が促進され、この混合により、浄化剤Fの分散均一化と蒸発が短距離で行われる。そのため、浄化剤Fは、短い距離で効率良く蒸発及び拡散し、均一化した状態で排気ガス浄化装置に到達する。
【0066】
従って、浄化剤Fの噴射位置と排気ガス浄化装置10の距離が短い配置であっても、浄化剤Fを均一に拡散させて排気ガス浄化装置10へ供給することができる。
【実施例】
【0067】
本発明の第2の実施の形態において、図5に示すように、遮蔽板14と衝突板(分散部材)17を設けたものを実施例とし、図8に示すように、遮蔽板14を設けず衝突板17のみを設けたものを比較例とした。
【0068】
ここで、実施例では、排気通路4の直径Dが90mmφで遮蔽板14の形状は図4に示す円弧状の形状であり、その突出量dは15mmで、直径Dの17%で、根本の広がり角度αは根本部に対して60度である。また、排気ガスの主流方向Xに対して垂直な軸14c周りの所定の角度θは、45度にしている。
【0069】
実施例における遮蔽板14と噴射口13aとの距離は50mmである。また、衝突板17に関しては、いずれも、衝突板17のアンモニア系溶液Fが衝突する面の中心は、壁面から10mmの距離に置かれ、その衝突面は排気ガスGの流れの主方向Xに対しても、また、アンモニア系溶液Fの主噴射方向に対しても、45度傾斜している。
【0070】
この実施例と比較例に関して、NOx浄化試験を行った。このNOx浄化試験は、ガソリン13モードの9モード目(定格回転の60%回転、60%トルク)で行った。この結果を図9と図10に示す。
【0071】
図9及び図10に示す横軸の当量比とは、理想状態でNOxと反応するアンモニアの比率である。当量比1の場合は、噴霧した尿素から発生するアンモニアの量が排気管中のNOxと1:1で反応する量である。
【0072】
このNOx浄化率を比較した図9によれば、実施例(実線A)は、ほぼ理想状態のNOx浄化率で推移し、当量比1.0ではNOx浄化率が、目標NOx浄化率90%以上に対して、99%と目標値を上回っているが、それと比較して、比較例(点線B)は当量比0.5付近から既に理想浄化率(当量比0.5の場合は浄化率50%)を若干下回り始め、当量比1.0においても82%というNOx浄化率となっていることが分かる。
【0073】
また、図10によれば、アンモニアスリップは、実施例(実線A)では当量比1.0付近まで殆ど出ていないが、NOx浄化率が低い比較例(点線B)では著しいことが分かる。
【0074】
従って、排気管内噴射装置13の上流側の近傍に所定の角度θ傾斜した遮蔽板14を設けた排気管形状では、排気管に段差4bを設けることなく、段差付き排気管形状と同様に、高いNOx浄化率を得られることが分かる。
【0075】
更に、図11に、図3で示した所定の角度(傾斜角度)θを変化させた場合のNOx浄化率(実線C)と排圧上昇率(点線D)を示す。この排圧上昇率は、遮蔽板14を所定の角度θを0度にして取り付けた時の排圧値をP0とし、また、所定の角度θを90度にした時の排圧値をP1とし、xを測定角度θにおける排圧実測値とし、yを排圧上昇度合(%表示)とした場合に、y=(x−P0)/(P1−P0)×100の式から求めている。つまり、y=(測定角度θにおける0度との排圧差)/(0〜90度の排圧差)×100である。この図11から、所定の角度θを30度〜60度とすると排圧上昇率を抑えながら、NOx浄化率を維持できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る第1実施の形態の排気ガス浄化システムの全体構成を示す図である。
【図2】遮蔽板を設けた部分を示す排気通路の側断面図である。
【図3】図2の平面断面図である。
【図4】図2の横断面図である。
【図5】第2の実施の形態の衝突板で形成される分散部材を設けた構成を示す排気通路の側断面図である。
【図6】第2の実施の形態の円錐を頭部に有する棒状体で形成される分散部材を設けた構成を示す排気通路の側断面図である。
【図7】図6の横断面図である。
【図8】比較例の遮蔽板を設けず分散部材を設けた構成を示す排気通路の側断面図である。
【図9】実施例と比較例のNOx浄化率を示す図である。
【図10】実施例と比較例のアンモニアスリップを示す図である。
【図11】実施例の傾斜角度の変化とNOx浄化率と排圧上昇率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
E エンジン
1 排気ガス浄化システム
4 排気通路
10 排気ガス浄化装置
11 アンモニア選択還元型NOx触媒
13 排気管内噴射装置
13a 噴射口
14 遮蔽板(遮蔽部材)
14a 支持部
14c 軸
17 衝突板(分散部材)
17A 円錐形状の棒状体
θ 所定の角度(傾斜角度)
F アンモニア系溶液(浄化剤、液滴)
G 排気ガス
Gc 浄化された排気ガス
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスを排気通路内に浄化剤を噴射して排気ガスを浄化又は排気ガス浄化装置の再生を行う排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に対する排ガス規制は厳しさを増し、エンジン側の技術開発だけでは追いつけない状況となりつつある。そのため、排気ガスを後処理装置によって浄化することが必要不可欠であり、ディーゼルエンジンや一部のガソリンエンジン等の内燃機関や様々な燃焼装置の排気ガス中からNOx(窒素酸化物)を還元除去するためのNOx触媒や、これらの排気ガス中の粒子状物質(パティキュレート・マター:以下、PM)を除去するディーゼルパティキュレートフィルタ装置(以下、DPF装置)について、種々の研究や提案がなされている。
【0003】
その中に、ディーゼルエンジン用のNOx低減触媒として、アンモニア選択還元型NOx触媒(Selective Catalystic Reduction:SCR触媒)やNOx吸蔵還元型触媒とNOx直接還元型触媒がある。
【0004】
アンモニア選択還元型NOx触媒を備えた排気ガス浄化システムでは、エンジン出口からアンモニア選択還元型NOx触媒までの排気管の中に尿素水溶液、アンモニア、アンモニア水等のアンモニア系溶液(ここでは「浄化剤」という)を噴射し、排気ガスとアンモニア系溶液を混合し、発生したアンモニアのNOxとの選択的な還元反応により、NOxを浄化している。
【0005】
この排気ガス浄化システムでは、現在は主にアンモニアを反応させるSCR触媒が主流であるが、添加する浄化剤は毒性のあるアンモニアの代りに排気ガス中でアンモニアに変化する無害の尿素水溶液を添加する方式に移行しつつある。
【0006】
この尿素水溶液は排気管中に噴射すると、これ自身の熱容量と蒸発潜熱が大きいため、容易に気体にはならず、液滴状態のままとなり、この液滴状態が続くと排気ガス中での拡散性が著しく低下する。そのため、尿素噴霧が排気ガス中で偏り、十分に均一拡散できないままSCR触媒に尿素が到達し、尿素から変化したアンモニアが不均一に分散し、過剰な部分では未反応のアンモニアがそのまま大気中に排出し(アンモニアスリップ)、不足の部分では、未反応のNOxがそのまま大気中に排出される。
【0007】
また、NOx吸蔵還元型触媒を備えた排気ガス浄化システムでは、NOx吸蔵還元型触媒は、酸化機能を持つ貴金属触媒と、アルカリ金属等のNOx吸蔵機能を持つNOx吸蔵材を担持しており、これらにより、排気ガス中の酸素濃度によってNOx吸蔵とNOx放出・浄化の二つの機能を発揮する。そして、NOx吸蔵推定量がNOx吸蔵飽和量になった時に、排気ガスの空燃比をリッチ状態にして、NOx吸蔵能力回復用の再生制御を行うが、この再生制御の一つに、排気管へ直接燃料等の炭化水素(ここでは「浄化剤」という)を供給する排気管内噴射リッチ制御がある。
【0008】
また、NOx直接還元型触媒を備えた排気ガス浄化システムでは、NOx直接還元型触媒は、β型ゼオライト等の担体に触媒成分であるロジウム(Rh)やパラジウム(Pd)等の金属を担持し、NOxを直接還元する。そして、NOx還元性能が悪化してくると、排気ガスの空燃比をリッチ空燃比にして、触媒の活性物質を再生して活性化するNOx還元性能回復用の再生制御を行うが、この再生制御の一つに、排気管へ直接燃料等の炭化水素(ここでは「浄化剤」という)を供給する排気管内噴射リッチ制御がある。
【0009】
また、排気ガス中のPM(粒子状物質)を捕集する連続再生型DPFを備えた排気ガス浄化システムでは、フィルタ部分に捕集され蓄積されたPMを燃焼除去してフィルタを再生するために、排気管内噴射により、排気管内に軽油燃料等の炭化水素(ここでは「浄化剤」という)を供給して、フィルタの上流側に配置した酸化触媒又はフィルタに担持された酸化触媒で、この炭化水素を酸化させることによって、フィルタの温度を上昇させてフィルタのPMを燃焼除去することが行われている。
【0010】
これらの排気管内噴射においては、浄化剤が偏った状態で触媒や連続再生型DPFに到達すると、排気ガスのNOx浄化やNOx触媒の再生や連続再生型DPFの再生の効率が下がり、また、浄化剤が十分に消費されず、下流側に排出されてしまう。そのため、浄化剤を排気ガス中に略均一に供給し、排気ガスと浄化剤の混合濃度を均一化することが重要で、様々な工夫がなされている。
【0011】
その一つに、排気中に還元剤を均一に拡散させるために、還元剤噴射装置(混入部)の下流位置の排気管内に、絞り部を設けて局所的に高流速で低圧の状態を造り、還元剤の気化を促すか、又は、還元剤噴射装置(混入部)の下流位置の排気管内に、撹拌部材を設けて乱流を起こし、排気流れの撹拌を促すエンジンの排気浄化構造も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
しかしながら、絞り部を設けた場合には、還元剤が噴霧状態の場合には、絞り部で流れの方向が中心方向に変化するため、慣性力が作用している噴霧状態の還元剤が絞り部の壁面に衝突して液状に付着するという問題がある。また、撹拌部材を設けた場合には、同様に、噴霧状態の還元剤が撹拌部材に衝突して液状に付着するという問題がある。
【0013】
更に、還元剤と排出ガスとの混合物を形成するための装置で、排出ガスと還元剤を導入可能な混合物形成領域を備え、この混合物形成領域の壁部を少なくとも部分的に、隆起部及び凹部を備えて、特に波形に形成して、言い換えれば、排気管に波形管を用いて渦流を起こして還元剤を混合する装置及び排出ガス浄化装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0014】
しかしながら、波形管を用いると、この凹部に煤が溜まり易く腐食の原因となったり、波形管は剛性が低くなるため、排気管の振動が誘因されたりするという問題がある。
【0015】
また、バルブなどの気流制御体と、該気流制御体の上流側と下流側とを連通させるバイパス通路とを有する、気流に旋回力を付与する気流制御手段と、該気流制御手段によって制御される旋回気流の中心軸に直交ないし交差する方向に燃料又は他の液体を噴射する少なくとも1つの噴射手段と、該噴射手段の下流に配置され、気流を絞るとともに加熱することが可能な気化手段とを備えて構成された気化混合装置が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0016】
しかしながら、この構成では、気流の主方向周りの旋回力を付与するため、遠心力によって燃料等が吸気通路部の壁面に付着し易く、また、気流制御装置が特殊な形状をしているため工作性が悪く、しかも、圧力損失が大きいという問題がある。
【0017】
また、圧縮空気と浄化剤を混合させて排気管中に噴霧させて、蒸発し易いように微細化を図るエアアシスト式という方法もあるが、この方法はエアタンクを装備している中・大型車でのみ可能な方法である。そのため、エアタンクを装備していない小型車では、均一拡散できるように、長い末広管を設けて蒸発と拡散ができる余地を与える方法が考えられている。しかしながら、この方法では、過渡運転による排ガス規制走行モードに対しては、応答性遅れのため排気ガス浄化制御が追随できなくなるという問題がある。そのため、浄化剤を如何に短時間で効率よく蒸発と拡散を行って均一に排気ガス浄化装置に到達させることが重要な課題となっている。
【特許文献1】特開2002−213233号公報
【特許文献2】特開2004−510909号公報
【特許文献3】特開2004−324585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、エアアシスト方式が採用できない小型車であっても、排気管内において短い距離で効率良く浄化剤の蒸発及び拡散を促進できて、浄化剤を均一化した状態で排気ガス浄化装置に到達させることができる排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記のような目的を達成するための排気ガス浄化方法は、内燃機関の排気通路に配設された排気ガス浄化装置で消費される浄化剤を、排気管内噴射装置によって前記排気ガス浄化装置より上流側の前記排気通路内に供給して排気ガスに混入させる排気ガス浄化方法において、遮蔽板を、前記排気通路に排気ガスの流れの主方向に対して垂直な軸周りに前記排気ガスの流れの主方向から所定の角度傾斜させて設け、該遮蔽板の下流側に前記浄化剤を噴射することを特徴とする。
【0020】
なお、この遮蔽板の下流側とは、噴射(又は噴霧)された浄化剤の少なくとも一部が遮蔽板で生じる渦流に巻き込まれる範囲の下流側のことをいう。また、この遮蔽板の形状は、排気通路の一部を狭くして、排気ガスの流れに渦流を発生できれば良く、特に限定されない。また、遮蔽板の大きさは、排気通路の断面の多くを覆う必要はなく、浄化剤の噴射口に、排気ガスが直接当たることを妨げることができる程度の大きさと位置であればよい。
【0021】
この構成によれば、排気通路(排気管)に所定の角度を有して設けた遮蔽板により、安定した排気ガスの流れを故意に乱流化及び低速化させて、渦流を発生させ、この渦流が発生する部分の近傍に浄化剤を噴射する。噴射され微粒化された浄化剤は、遮蔽板によって発生する渦流と戻り流による淀み領域で微粒化した浄化剤が滞留し、徐々に下流へ流れて行くため、浄化剤の噴霧が偏って生じる局部的な排気ガス温度の低下が起こらず、浄化剤の蒸発が効率よく行われる。そのため、浄化剤は、排気管内において、短い距離で効率良く蒸発及び拡散し均一化した状態で排気ガス浄化装置に到達するようになる。
【0022】
従って、浄化剤の噴射位置と排気ガス浄化装置の距離が短い配置であっても、浄化剤を均一に拡散させて排気ガス浄化装置へ送ることができる。そのため、過渡運転による排ガス規制走行モードであっても、応答遅れが少なくなり、浄化制御や再生制御の追従性が向上する。また、この遮蔽板を設ける構成、即ち、排気通路の断面積を不連続に変化させる構成は単純となる。
【0023】
なお、遮蔽板の面の形状は、通常は加工が容易であるため、平面が用いられるが、渦流の発生を促進するために、円柱面や球面や円錐面等の曲面を使用することもできる。
【0024】
更に、上記の排気ガス浄化方法において、前記所定の角度を30度〜60度、好ましくは、40度〜50度の範囲内の角度とすると、渦流の発生の促進によるNOx浄化率の向上、NH3 のスリップ軽減・防止等の効果と、圧損の増加である排圧上昇率のマイナス効果とのバランスが取れる。
【0025】
そして、上記の排気ガス浄化方法は、特に、前記排気ガス浄化装置がアンモニア選択還元型NOx触媒を備えて形成され、前記浄化剤がアンモニア系溶液である場合に大きな効果を奏することができる。
【0026】
そして、上記のような目的を達成するための排気ガス浄化システムは、内燃機関の排気通路に排気ガス浄化装置を備えると共に、該排気ガス浄化装置で消費される浄化剤を前記排気ガス浄化装置の上流側の前記排気通路内に供給して排気ガスに混入させる排気管内噴射装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、前記排気通路に排気ガスの流れの主方向に対して垂直な軸周りに前記排気ガスの流れの主方向から所定の角度傾斜した遮蔽板を、前記排気管内噴射装置の噴射口の上流側に設けて構成する。
【0027】
この構成により、遮蔽板で発生する排気ガスの渦流部分に又はその近傍に、浄化剤を噴射することができるので、この渦流により、排気ガスとの混合が促進され、この混合により、浄化剤の分散均一化と蒸発が短距離で効率良く行われる。そのため、排気管内噴射装置の噴射口と排気ガス浄化装置との間が短くても、浄化剤は、均一分散状態で排気ガス浄化装置に到達する。また、排気通路に遮蔽板を設ける構成は、構造が単純となる。
【0028】
また、上記の排気ガス浄化システムで、前記所定の角度を30度〜60度、好ましくは、40度〜50度の範囲内の角度とすると、渦流の発生の促進によるNOx浄化率の向上、NH3 のスリップ軽減・防止等の効果と、圧損の増加である排圧上昇率のマイナス効果とのバランスが取れる。
【0029】
そして、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記排気ガス浄化装置がアンモニア選択還元型NOx触媒を備えて形成され、前記浄化剤がアンモニア系溶液であるように構成される。このアンモニア系溶液としては、アンモニア選択還元型NOx触媒で使用されるアンモニア水、アンモニア水溶液、尿素水溶液等がある。
【0030】
あるいは、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記排気ガス浄化装置が、上流側の酸化触媒と下流側のNOx吸蔵還元型触媒を備えて形成された排気ガス浄化装置、上流側の酸化触媒と下流側のNOx直接還元型触媒を備えて形成された排気ガス浄化装置、あるいは、酸化触媒を有する連続再生型ディーゼルパティキュレートフィルタを備えて形成された排気ガス浄化装置のいずれか一つで構成され、前記浄化剤が炭化水素であるように構成される。
【0031】
これらの構成により、それぞれの排気ガス浄化システムにおいて、浄化剤を適宜、排気ガス中に均一的に混入して、排気ガス浄化装置に供給することができるので、効率よく、NOxの浄化、NOx吸蔵還元型触媒やNOx直接還元型触媒の再生、連続再生型ディーゼルパティキュレートフィルタの再生を行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明に係る排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムによれば、排気管内において、短い距離で効率良く浄化剤の蒸発及び拡散を促進できて、浄化剤を均一分散状態で排気ガス浄化装置に供給することができる。
【0033】
しかも、圧縮空気を使用しないので、エアアシスト方式が使えない小型車等においても使用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0035】
図1に、本発明の第1の実施の形態の排気ガス浄化システム1の構成を示す。この排気ガス浄化システム1では、エンジン(内燃機関)Eの排気通路4に、アンモニア選択還元型NOx触媒11を有する排気ガス浄化装置10が配置される。
【0036】
このアンモニア選択還元型NOx触媒11は、コージェライトや酸化アルミニウムや酸化チタン等で形成されるハニカム構造の担持体(触媒構造体)に、チタニアーバナジウム、ゼオライト、酸化クロム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化タングステン等を担持して形成される。
【0037】
このアンモニア選択還元型NOx触媒11では、酸素過剰の雰囲気で、排気通路4内に、尿素水溶液、アンモニア、アンモニア水等のアンモニア系溶液(浄化剤)Fを噴射して、アンモニアをアンモニア選択還元型NOx触媒11に供給して、排気ガス中のNOxに対してアンモニアと選択的に反応させることにより、NOxを窒素に還元して浄化する。
【0038】
そのため、アンモニア選択還元型NOx触媒11の上流側の排気通路4に、NOxの還元剤となるアンモニア系溶液Fを噴射又は噴霧により供給するための排気管内噴射装置13を設ける。この排気管内噴射装置13は、図示しない貯蔵タンクから図示しない配管を経由して供給されてくるアンモニア系溶液Fを排気通路4内に直接噴射する。
【0039】
また、アンモニア選択還元型NOx触媒11の温度を測定するために、上流側温度センサー15と下流側温度センサー16を、アンモニア選択還元型NOx触媒11の上流側と下流側、即ち、前後にそれぞれ配置する。この二箇所に設置した温度センサ15、16の温度差により、触媒11内の温度差を推定する。
【0040】
更に、排気ガス浄化システム1の制御装置が、エンジンEの制御装置20に組み込まれ、エンジンEの運転制御と並行して、排気ガス浄化システム1の制御を行う。この排気ガス浄化システム1の制御装置は、排気管内噴射装置13のアンモニア系溶液Fの噴射制御を行う。
【0041】
この噴射制御では、エンジンEの運転状態(回転数や負荷)によって、アンモニア系溶液Fの噴射量を変化させて、排気ガスGの流量が変化しても、より効率よく排気ガスG中のNOxを還元すると共に、排気ガス浄化装置10の下流側の浄化された排気ガスGc中へのアンモニアの流出(アンモニアスリップ)が極力少なくなるように制御する。
【0042】
そして、本発明においては、図1〜図7に示すように、排気通路4における排気管内噴射装置13の噴射口13aの上流側に遮蔽板(遮蔽部材)14を設ける。この遮蔽板14は、図3に示すように、排気ガスGの流れの主方向Xに対して垂直な軸14c周りに所定の角度θ傾斜させて設ける。
【0043】
この所定の角度θは、30度〜60度、好ましくは、40度〜50度の範囲内の角度とする。これにより、渦流の発生の促進によるNOx浄化率の向上、NH3 のスリップ軽減・防止等の効果と、圧損の増加である排圧上昇率のマイナス効果とのバランスを取る。
【0044】
この遮蔽板14の形状や、排気通路4への突出量dや閉塞率や、幅Bや円弧の角度α等は特に限定せず、排気ガスGが直接噴射口13aに直接当たることを防ぐことができる大きさや配置で、かつ、排気通路の一部を狭くして、排気ガスの流れに渦流を発生できれば良い。また、遮蔽板14と噴射口13aの距離は、噴射(又は噴霧)された浄化剤の少なくとも一部が遮蔽板14で生じる渦流に巻き込まれる範囲であれば良い。
【0045】
なお、この遮蔽板14の大きさと配置位置は、実験や数値計算によって定めることができるが、簡易的には、排気通路4の上流側の軸方向から見た場合に噴射口13aが遮蔽板14によって遮られて見えないような大きさや配置とすればよい。
【0046】
また、図1の構成では、排気管内噴射装置13は、アンモニア系溶液Fを排気通路4の排気ガスGの流れの方向Xに対して垂直方向に噴射するように噴射口(開口部)13aを排気通路4の内壁から突出させて設ける。つまり、噴射口13aから噴射されるアンモニア系溶液Fの流れの向きを排気通路4の軸方向Xと垂直な方向にする。
【0047】
また、アンモニア系溶液Fの噴射中心の傾斜角度、噴射の拡がり範囲、噴射口13aの位置等もそれぞれの排気ガス浄化システム1の構造に対応させて最適な構成を採用することができる。つまり、排気ガスGの流れの方向Xに対して垂直方向に噴射する構成以外の、例えば、排気ガスGの流れの方向Xに対して平行な方向に噴射する構成も採用できる。
【0048】
この構成によれば、排気通路4の直線状部分に所定の角度θで傾斜した遮蔽板14を設けて安定した排気ガスGの流れに故意に渦流を発生させると共に、この遮蔽板14の下流側近傍に排気管内噴射装置13の噴射口13aを設けてアンモニア系溶液Fを噴射する構成により、アンモニア系溶液Fは、この遮蔽板14で発生する渦流により排気ガスGと混合し、拡散する。そのため、排気ガス温度が均一化し、温度の低い部分が発生しないのでアンモニア系溶液Fの蒸発が効率よく行われ、排気通路4内において、短い距離で効率良く蒸発及び拡散し均一に排気ガス浄化装置10に到達する。従って、排気管内噴射装置13の噴射口13aと排気ガス浄化装置10の距離が短い配置であっても、アンモニア系溶液Fを均一に拡散させて排気ガス浄化装置10へ供給することができる。
【0049】
次に、第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態においては、図5〜図7に示すように、第1の実施の形態の排気ガス浄化システム1の構成に加えて、排気通路4内において、アンモニア系溶液(浄化剤)Fの噴射経路にアンモニア系溶液Fの微粒化を促進させる分散部材としての衝突板17、17Aを設ける。この衝突板17、17Aの分散効果によりアンモニア系溶液Fの微粒化を促進させることができ、より微粒化及び均一分散化できる。
【0050】
この衝突板17、17Aは、この衝突板17、17Aに噴射されてくるアンモニア系溶液Fを分散させる機能を有するものであれば良い。なお、この衝突板17、17Aに噴射の分散機能に加えて、排気ガスGの流れを渦流にする渦流発生機能を持たせると、アンモニア系溶液Fのより分散化、均一化を図ることができる。
【0051】
図5に示す構成では、アンモニア系溶液Fが衝突する部分を、噴射方向に対して適当に(例えば、30°〜60°)に傾斜させた平面を有する衝突板17で形成する。この衝突板17は、アンモニア系溶液Fの噴射方向が排気ガスGの流れ方向Xに垂直か垂直に近い角度となる時に大きな効果を奏することができる。
【0052】
また、図6及び図7に示す構成では、円錐の頂点を浄化剤の噴射口に対向させた円錐形状の棒状体で衝突板17Aを形成する。また、遮蔽板14は、噴射口13a部分に対して流れを遮蔽できればよいので、この遮蔽部分以外は支持部14aのみとする構成でもよい。この構成は、アンモニア系溶液Fの噴射方向が排気ガスGの流れ方向Xに平行か平行に近い角度となる時に大きな効果を奏することができる。
【0053】
次に、第3及び第4の実施の形態の排気ガス浄化システムについて説明する。この第3及び第4の実施の形態の排気ガス浄化システムでは、排気ガス浄化装置10は、上流側の酸化触媒と下流側のNOx吸蔵還元型触媒を備えて形成され、浄化剤が炭化水素であるように構成される。その他の構成は、それぞれ第1及び2の実施の形態と同様である。
【0054】
この酸化触媒は、コージェライト、炭化ケイ素、又はステンレス等の構造材で形成されたモノリス触媒に、白金やロジウムやパラジウム等の触媒金属を担持して形成される。また、NOx吸蔵還元型触媒は、酸化機能を持つ白金(Pt)等の貴金属触媒と、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類等のNOx吸蔵機能を持つNOx吸蔵材を担持し、これらにより、排気ガス中の酸素濃度によってNOx吸蔵とNOx放出・浄化の二つの機能を発揮する。
【0055】
そして、このNOx吸蔵還元型触媒は、通常運転時にNOxを触媒金属に吸蔵し、吸蔵能力が飽和に近づくと、適時、流入してくる排気ガスの空燃比をリッチ空燃比にして、吸蔵したNOxを放出させると共に、放出されたNOxを触媒の三元機能で還元する。
【0056】
このNOx吸蔵還元型触媒を備えた排気ガス浄化システムでは、NOx吸蔵推定量がNOx吸蔵飽和量になった時に、排気管内噴射装置13により、排気通路4に直接燃料等の炭化水素(浄化剤)Fを供給する。この炭化水素Fを、上流側の酸化触媒で酸化することにより、排気ガスGの空燃比をリッチ状態にして、吸収したNOxを放出させる。この放出されたNOxを貴金属触媒により還元させる。この再生処理により、NOx吸蔵能力を回復する。
【0057】
次に、第5及び第6の実施の形態の排気ガス浄化システムについて説明する。この第5及び第6の実施の形態の排気ガス浄化システムでは、排気ガス浄化装置10は、上流側の酸化触媒と下流側のNOx直接還元型触媒を備えて形成され、浄化剤が炭化水素であるように構成される。その他の構成は、それぞれ第1及び第2の実施の形態と同様である。
【0058】
この酸化触媒は、第3及び第4の実施の形態と同様に、コージェライト、炭化ケイ素、又はステンレス等の構造材で形成されたモノリス触媒に、白金やロジウムやパラジウム等の触媒金属を担持して形成される。NOx直接還元型触媒は、β型ゼオライト等の担体に触媒成分であるロジウム(Rh)やパラジウム(Pd)等の金属を担持させて形成する。更に、金属の酸化作用を軽減し、NOx還元能力の保持に寄与するセリウム(Ce)を配合したり、下層に三元触媒を設けて酸化還元反応、特に排気ガスリッチ状態におけるNOxの還元反応を促進するようにしたり、NOxの浄化率を向上させるために単体に鉄(Fe)を加える等する。
【0059】
そして、このNOx直接還元型触媒は、通常運転時のリーン状態でNOxを直接還元するが、この還元の際に触媒の活性物質である金属に酸素(O2 )が吸着して還元性能が悪化する。そのため、NOx還元性能が悪化してきた時に、排気管内噴射装置13により、排気通路4に直接燃料等の炭化水素(浄化剤)Fを供給する。この炭化水素Fを、上流側の酸化触媒で酸化することにより、排気ガスGの空燃比をリッチ状態にして、触媒の活性物質である金属を再生して活性化する。
【0060】
次に、第7及び第8の実施の形態の排気ガス浄化システムについて説明する。この第7及び第8の実施の形態の排気ガス浄化システムでは、排気ガス浄化装置10は、酸化触媒を有する連続再生型ディーゼルパティキュレートフィルタを備えて形成され、浄化剤が炭化水素であるように構成される。その他の構成は、それぞれ第1及び第2の実施の形態と同様である。
【0061】
なお、この酸化触媒を有する連続再生型ディーゼルパティキュレートフィルタとしては、上流側の酸化触媒と下流側のフィルタとから形成されるものや、酸化触媒を担持したフィルタから形成されるもの等がある。
【0062】
この上流側の酸化触媒は、第3及び第4の実施の形態と同様に、コージェライト、炭化ケイ素、又はステンレス等の構造材で形成されたモノリス触媒に、白金やロジウムやパラジウム等の触媒金属を担持して形成される。フィルタは、多孔質のセラミックのハニカムのチャンネルの入口と出口を交互に目封じした、即ち、市松模様状に目封じしたモノリスハニカム型ウォールスルータイプのフィルタで形成される。このフィルタで排気ガス中のPM(粒子状物質)を捕集する。
【0063】
また、酸化触媒を担持したフィルタは、モノリスハニカム型ウォールスルータイプのフィルタに、白金やロジウムやパラジウム等の触媒金属を担持して形成され、このフィルタで排気ガス中のPMを捕集する。
【0064】
そして、フィルタ部分に捕集され蓄積されたPMを燃焼除去するために、排気管内噴射13により、排気通路4内に軽油燃料等の炭化水素(浄化剤)Fを供給して、フィルタの上流側に配置した酸化触媒又はフィルタに担持された酸化触媒で、この炭化水素Fを酸化させることによって、フィルタの温度を上昇させてフィルタのPMを燃焼除去する。
【0065】
上記の第1〜第8の実施の形態の排気ガス浄化システムによれば、浄化剤Fを排気通路4内に供給する排気ガス浄化システム1において、遮蔽板14の下流側の近傍に噴射された浄化剤Fは、この所定の角度θ傾斜した遮蔽板14や衝突板17、17Aで発生する渦流により排気ガスとの混合が促進され、この混合により、浄化剤Fの分散均一化と蒸発が短距離で行われる。そのため、浄化剤Fは、短い距離で効率良く蒸発及び拡散し、均一化した状態で排気ガス浄化装置に到達する。
【0066】
従って、浄化剤Fの噴射位置と排気ガス浄化装置10の距離が短い配置であっても、浄化剤Fを均一に拡散させて排気ガス浄化装置10へ供給することができる。
【実施例】
【0067】
本発明の第2の実施の形態において、図5に示すように、遮蔽板14と衝突板(分散部材)17を設けたものを実施例とし、図8に示すように、遮蔽板14を設けず衝突板17のみを設けたものを比較例とした。
【0068】
ここで、実施例では、排気通路4の直径Dが90mmφで遮蔽板14の形状は図4に示す円弧状の形状であり、その突出量dは15mmで、直径Dの17%で、根本の広がり角度αは根本部に対して60度である。また、排気ガスの主流方向Xに対して垂直な軸14c周りの所定の角度θは、45度にしている。
【0069】
実施例における遮蔽板14と噴射口13aとの距離は50mmである。また、衝突板17に関しては、いずれも、衝突板17のアンモニア系溶液Fが衝突する面の中心は、壁面から10mmの距離に置かれ、その衝突面は排気ガスGの流れの主方向Xに対しても、また、アンモニア系溶液Fの主噴射方向に対しても、45度傾斜している。
【0070】
この実施例と比較例に関して、NOx浄化試験を行った。このNOx浄化試験は、ガソリン13モードの9モード目(定格回転の60%回転、60%トルク)で行った。この結果を図9と図10に示す。
【0071】
図9及び図10に示す横軸の当量比とは、理想状態でNOxと反応するアンモニアの比率である。当量比1の場合は、噴霧した尿素から発生するアンモニアの量が排気管中のNOxと1:1で反応する量である。
【0072】
このNOx浄化率を比較した図9によれば、実施例(実線A)は、ほぼ理想状態のNOx浄化率で推移し、当量比1.0ではNOx浄化率が、目標NOx浄化率90%以上に対して、99%と目標値を上回っているが、それと比較して、比較例(点線B)は当量比0.5付近から既に理想浄化率(当量比0.5の場合は浄化率50%)を若干下回り始め、当量比1.0においても82%というNOx浄化率となっていることが分かる。
【0073】
また、図10によれば、アンモニアスリップは、実施例(実線A)では当量比1.0付近まで殆ど出ていないが、NOx浄化率が低い比較例(点線B)では著しいことが分かる。
【0074】
従って、排気管内噴射装置13の上流側の近傍に所定の角度θ傾斜した遮蔽板14を設けた排気管形状では、排気管に段差4bを設けることなく、段差付き排気管形状と同様に、高いNOx浄化率を得られることが分かる。
【0075】
更に、図11に、図3で示した所定の角度(傾斜角度)θを変化させた場合のNOx浄化率(実線C)と排圧上昇率(点線D)を示す。この排圧上昇率は、遮蔽板14を所定の角度θを0度にして取り付けた時の排圧値をP0とし、また、所定の角度θを90度にした時の排圧値をP1とし、xを測定角度θにおける排圧実測値とし、yを排圧上昇度合(%表示)とした場合に、y=(x−P0)/(P1−P0)×100の式から求めている。つまり、y=(測定角度θにおける0度との排圧差)/(0〜90度の排圧差)×100である。この図11から、所定の角度θを30度〜60度とすると排圧上昇率を抑えながら、NOx浄化率を維持できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る第1実施の形態の排気ガス浄化システムの全体構成を示す図である。
【図2】遮蔽板を設けた部分を示す排気通路の側断面図である。
【図3】図2の平面断面図である。
【図4】図2の横断面図である。
【図5】第2の実施の形態の衝突板で形成される分散部材を設けた構成を示す排気通路の側断面図である。
【図6】第2の実施の形態の円錐を頭部に有する棒状体で形成される分散部材を設けた構成を示す排気通路の側断面図である。
【図7】図6の横断面図である。
【図8】比較例の遮蔽板を設けず分散部材を設けた構成を示す排気通路の側断面図である。
【図9】実施例と比較例のNOx浄化率を示す図である。
【図10】実施例と比較例のアンモニアスリップを示す図である。
【図11】実施例の傾斜角度の変化とNOx浄化率と排圧上昇率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
E エンジン
1 排気ガス浄化システム
4 排気通路
10 排気ガス浄化装置
11 アンモニア選択還元型NOx触媒
13 排気管内噴射装置
13a 噴射口
14 遮蔽板(遮蔽部材)
14a 支持部
14c 軸
17 衝突板(分散部材)
17A 円錐形状の棒状体
θ 所定の角度(傾斜角度)
F アンモニア系溶液(浄化剤、液滴)
G 排気ガス
Gc 浄化された排気ガス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配設された排気ガス浄化装置で消費される浄化剤を、排気管内噴射装置によって前記排気ガス浄化装置より上流側の前記排気通路内に供給して排気ガスに混入させる排気ガス浄化方法において、遮蔽板を、前記排気通路に排気ガスの流れの主方向に対して垂直な軸周りに前記排気ガスの流れの主方向から所定の角度傾斜させて設け、該遮蔽板の下流側に前記浄化剤を噴射することを特徴とする排気ガス浄化方法。
【請求項2】
前記排気ガス浄化装置がアンモニア選択還元型NOx触媒を備えて形成され、前記浄化剤がアンモニア系溶液であることを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化方法。
【請求項3】
内燃機関の排気通路に排気ガス浄化装置を備えると共に、該排気ガス浄化装置で消費される浄化剤を前記排気ガス浄化装置の上流側の前記排気通路内に供給して排気ガスに混入させる排気管内噴射装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、前記排気通路に排気ガスの流れの主方向に対して垂直な軸周りに前記排気ガスの流れの主方向から所定の角度傾斜した遮蔽板を、前記排気管内噴射装置の噴射口の上流側に設けたことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項4】
前記所定の角度を30度〜60度の範囲内の角度としたことを特徴とする請求項3記載の排気ガス浄化システム。
【請求項5】
前記所定の角度を40度〜50度の範囲内の角度としたことを特徴とする請求項4記載の排気ガス浄化システム。
【請求項6】
前記排気ガス浄化装置がアンモニア選択還元型NOx触媒を備えて形成され、前記浄化剤がアンモニア系溶液であることを特徴とする請求項3、4又は5に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項7】
前記排気ガス浄化装置が、上流側の酸化触媒と下流側のNOx吸蔵還元型触媒を備えて形成された排気ガス浄化装置、上流側の酸化触媒と下流側のNOx直接還元型触媒を備えて形成された排気ガス浄化装置、あるいは、酸化触媒を有する連続再生型ディーゼルパティキュレートフィルタを備えて形成された排気ガス浄化装置のいずれか一つで構成され、前記浄化剤が炭化水素であることを特徴とする請求項3、4又は5に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配設された排気ガス浄化装置で消費される浄化剤を、排気管内噴射装置によって前記排気ガス浄化装置より上流側の前記排気通路内に供給して排気ガスに混入させる排気ガス浄化方法において、遮蔽板を、前記排気通路に排気ガスの流れの主方向に対して垂直な軸周りに前記排気ガスの流れの主方向から所定の角度傾斜させて設け、該遮蔽板の下流側に前記浄化剤を噴射することを特徴とする排気ガス浄化方法。
【請求項2】
前記排気ガス浄化装置がアンモニア選択還元型NOx触媒を備えて形成され、前記浄化剤がアンモニア系溶液であることを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化方法。
【請求項3】
内燃機関の排気通路に排気ガス浄化装置を備えると共に、該排気ガス浄化装置で消費される浄化剤を前記排気ガス浄化装置の上流側の前記排気通路内に供給して排気ガスに混入させる排気管内噴射装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、前記排気通路に排気ガスの流れの主方向に対して垂直な軸周りに前記排気ガスの流れの主方向から所定の角度傾斜した遮蔽板を、前記排気管内噴射装置の噴射口の上流側に設けたことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項4】
前記所定の角度を30度〜60度の範囲内の角度としたことを特徴とする請求項3記載の排気ガス浄化システム。
【請求項5】
前記所定の角度を40度〜50度の範囲内の角度としたことを特徴とする請求項4記載の排気ガス浄化システム。
【請求項6】
前記排気ガス浄化装置がアンモニア選択還元型NOx触媒を備えて形成され、前記浄化剤がアンモニア系溶液であることを特徴とする請求項3、4又は5に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項7】
前記排気ガス浄化装置が、上流側の酸化触媒と下流側のNOx吸蔵還元型触媒を備えて形成された排気ガス浄化装置、上流側の酸化触媒と下流側のNOx直接還元型触媒を備えて形成された排気ガス浄化装置、あるいは、酸化触媒を有する連続再生型ディーゼルパティキュレートフィルタを備えて形成された排気ガス浄化装置のいずれか一つで構成され、前記浄化剤が炭化水素であることを特徴とする請求項3、4又は5に記載の排気ガス浄化システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−332797(P2007−332797A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162568(P2006−162568)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
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