説明

排気浄化装置

【課題】排気通路にPM捕集用のフィルタと排気絞り弁とが順に設けられる内燃機関において、フィルタの再生を適正な頻度で行うことができる排気浄化装置を提供する。
【解決手段】内燃機関10の排気通路14には、PMを捕集するPMフィルタ22と、PMフィルタ22の下流側に配置される排気絞り弁18とが設けられている。電子制御装置40は、その機能として、排気絞り弁18の開閉制御手段と、PMフィルタ22のPMの堆積を判定する堆積判定手段と、堆積判定手段による判定を禁止する禁止手段とを備えている。堆積判定手段は、差圧センサ34で検出されるPMフィルタ22の上流側と下流側との差圧ΔPが所定値以上になると、PMフィルタ22にPMが堆積していると判定する。禁止手段は、開閉制御手段の制御による排気絞り弁18の閉弁中に堆積判定手段による判定を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に設けられる排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ディーゼルエンジン等の内燃機関には、その排気通路に配置されてPM(粒子状物質)を捕集するフィルタを備える排気浄化装置が設けられたものがある。フィルタに捕集されたPMの堆積量が増加すると、これに伴って排気通路の圧力が上昇するため、燃費の悪化などを招くといった問題が生じる。そこで、例えば特許文献1に示す排気浄化装置では、フィルタの上流側と下流側との差圧を検出し、この差圧に基づいてフィルタにPMが堆積しているか否かを判定し、フィルタにPMが堆積していると判定されると、フィルタに捕集されたPMを燃焼、すなわちフィルタの再生を行うようにしている。
【0003】
具体的に、特許文献1に記載の排気浄化装置では、フィルタの目詰まり(PMの堆積)を示す差圧の閾値が排気流量の増大に伴って上昇する態様で予め設定されており、実際に検出される差圧が、この設定された閾値を越えるとフィルタが目詰まりしたと判定してフィルタの再生を行うようにしている。そして、このフィルタの上流側と下流側との差圧は、排気流量の増大に伴って大きくなるため、吸気絞り弁が閉じ側に制御されたり、エンジンのEGR弁が開き側に制御されたり、エンジンの回転速度が低下したりして排気流量が低下するときは閾値を小さくしている。したがって、排気流量が少ない状態では検出される差圧とこの閾値との差が相対的に小さくなるために誤判定を行うおそれがあり、目詰まりの判定を適切に実行できないおそれがある。そこで、この排気浄化装置では、排気流量が所定値以下のときには、フィルタの目詰まりの判定を禁止するようにしている。
【特許文献1】特開2005−299476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気浄化装置には、フィルタの再生をより効率的に行うために、フィルタの下流側に排気絞り弁を設けて排気通路の排気圧力及び排気温度を上昇させるようにしたものがある。
【0005】
このように排気絞り弁を設けると、この排気絞り弁の作動によってフィルタの上流側と下流側との差圧が変化する。そして、この差圧は、理論的には、図6の線Aで示すようになる。すなわち、排気絞り弁を開弁状態から閉弁状態に作動させたときに排気通路及び燃焼室に存在する排気が断熱変化を起こすと仮定すると、等エントロピー変化の式(PVκ =一定)により、排気圧力が上昇するのに伴って体積が減少する。これにより、排気通路内の排気の流速が減少するためにフィルタを通過する際の圧力損失もこの流速に比例して減少し、差圧が、図6の線Aに示すように排気圧力の増大に伴って減少する。なお、排気絞り弁を閉弁状態とすることよって排気圧力が上昇するが、排気絞り弁の開閉前後で吸気絞り弁の開度およびエンジンの回転速度が一定に保たれる場合には、排気流量も一定に保たれることとなる。
【0006】
そこで、フィルタにPMが堆積しているか否かを判定するにあたり、この理論的な差圧の変化を考慮した上で行うことも考えられる。しかしながら、排気絞り弁を開弁状態から閉弁状態に作動させたときの差圧は、実際は図6の黒点に示すように変化し、理論的に導出される線Aとは大きく異なることが本願発明者らによって確認された。したがって、排気絞り弁を閉弁状態にするとともに上記差圧の理論値に基づいてフィルタにPMが堆積しているか否かの判定を行うと、PMの堆積を誤判定するおそれがあり、結果的にフィルタの再生を不必要に或いは過少に行うおそれがある。
【0007】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、排気通路にPM捕集用のフィルタと排気絞り弁とが順に設けられる内燃機関において、フィルタの再生を適正な頻度で行うことができる排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関の排気浄化装置であって、内燃機関の排気通路に配置されて前記内燃機関から排出される粒子状物質を捕集するフィルタと、前記排気通路における前記フィルタよりも下流側に配置されて前記排気通路の流路断面積を可変とする排気絞り弁と、前記排気絞り弁の開閉を制御する開閉制御手段と、前記フィルタの上流側と下流側との差圧を検出する差圧検出手段と、前記差圧検出手段の検出値に基づいて、前記フィルタに粒子状物質が堆積しているか否かを判定する堆積判定手段と、前記開閉制御手段の制御による前記排気絞り弁の閉弁中に前記堆積判定手段による判定を禁止する禁止手段とを備えていることを要旨としている。
【0009】
上述したように、排気絞り弁を開弁状態から閉弁状態としたとき、フィルタの上流側と下流側との差圧は理論的に導出される態様では変化しない。そのため、排気絞り弁の閉弁中に差圧の理論値に基づいてフィルタに粒子状物質が堆積しているか否か判定を行うと、フィルタの粒子状物質の堆積を誤判定するおそれがある。そこで、同構成によれば、開閉制御手段の制御による排気絞り弁の閉弁中に堆積判定手段による判定を禁止する禁止手段を備えるようにしたために、フィルタの粒子状物質の堆積を誤判定するおそれがない。その結果、フィルタの再生を適正な頻度で行うことができる。なお、排気絞り弁の閉弁中とは、排気絞り弁が全閉状態とされた場合に限らず、排気絞り弁を所定量閉じた状態を含むものとする。
【0010】
具体的には、請求項2に記載の発明によるように、前記禁止手段は、前記差圧検出手段による差圧の検出を禁止することにより、前記堆積判定手段による判定を禁止するといった態様を採用することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記禁止手段は、前記開閉制御手段が排気絞り弁を開弁状態から閉弁状態にするための制御信号を出力してから所定の第1期間の経過以降で且つ排気絞り弁を閉弁状態から開弁状態にするための制御信号を出力してから所定の第2期間の経過以前を排気絞り弁の閉弁中として、前記堆積判定手段による判定を禁止することを要旨としている。
【0012】
同構成によれば、開閉制御手段の制御により排気絞り弁が実際に作動するまでの応答遅れを是正することができるので、禁止手段は堆積判定手段による判定の禁止をより有効に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1〜6を参照して、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置を具体化した実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る排気浄化装置を搭載した車載内燃機関の模式図である。内燃機関10は、各気筒11に形成される燃焼室12と、燃焼室12に吸入空気を送り込む吸気通路13と、燃焼室12での燃焼により生じた排気が排出される排気通路14とを備えている。
【0014】
吸気通路13には、その通路面積を可変とする吸気絞り弁15が設けられ、吸気絞り弁15はアクチュエータ17によって駆動される。そして、吸気絞り弁15の開度が制御されることにより燃焼室12に吸入される空気量が調整される。吸気通路13に吸入された空気は、燃焼室12に設けられた燃料噴射弁16より噴射された燃料と混合して混合気となり、燃焼室12で燃焼する。また、吸気通路13には、燃焼室12に吸入される空気量を検出するためのエアフローメータ31が設けられている。
【0015】
排気通路14には、PM(粒子状物質)を捕集するフィルタとしてのPMフィルタ22が設けられ、燃焼室12での燃焼により生じた排気が送り込まれる。PMフィルタ22は、多孔質材料によって形成されており、これにより排気中のPMを捕集するようにしている。また、PMフィルタ22には、排気中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化して浄化する酸化触媒が担持されている。この酸化触媒によって触発される反応により、PMフィルタ22に捕集されたPMが燃焼(酸化)して除去される。
【0016】
排気通路14のPMフィルタ22の上流側には、PMフィルタ22に流入する排気の温度を検出する温度センサ32が設けられている。また、排気通路14には、PMフィルタ22の排気上流側とその排気下流側との差圧ΔPを検出する差圧検出手段である差圧センサ34が設けられている。
【0017】
排気通路14におけるPMフィルタ22の下流側には、排気絞り弁18が設けられている。この排気絞り弁18は、アクチュエータ19によって開弁状態と閉弁状態との2つの状態の間で切換えられる切換弁である。具体的に、後述する電子制御装置40の開閉制御手段が排気絞り弁18の駆動信号「ON」を出力すると、排気絞り弁18はアクチュエータ19により閉弁状態とされ、開閉制御手段が排気絞り弁18の駆動信号「OFF」を出力すると、排気絞り弁18はアクチュエータ19により開弁状態とされる。
【0018】
また、排気通路14には、排気絞り弁18の上流側と下流側とを連通するウエイストゲート20が設けられている。ウエイストゲート20には、ウエイストゲート弁21が設けられており、このウエイストゲート弁21の開度を調節することで、排気絞り弁18が閉弁状態となったときに排気絞り弁18の上流側の圧力を調整するようにしている。
【0019】
こうした内燃機関10の各種制御は、電子制御装置40により実施されている。電子制御装置40は、機関制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。そして、電子制御装置40は、その機能として、上述した排気絞り弁18の駆動信号を出力する開閉制御手段と、差圧センサ34の検出値に基づいてPMフィルタ22にPMが堆積しているか否かを判定する堆積判定手段と、開閉制御手段の制御による排気絞り弁18の閉弁中に堆積判定手段による判定を禁止する禁止手段とを備えている。すなわち、本実施形態では、排気浄化装置は、PMフィルタ22と排気絞り弁18と差圧センサ34とこの電子制御装置40とを備えている。
【0020】
電子制御装置40の入力ポートには、上述した各センサに加え、機関回転速度を検出するNEセンサ35、アクセル操作量を検出するアクセルセンサ36、吸気絞り弁15の開度を検出する吸気絞りセンサ37等が接続されている。また電子制御装置40の出力ポートには、吸気絞り弁15、燃料噴射弁16、排気絞り弁18、及びウエイストゲート弁21等の駆動回路が接続されている。
【0021】
電子制御装置40は、上記各センサから入力される検出信号により把握される機関運転状態に応じて、上記出力ポートに接続された各機器類の駆動回路に指令信号を出力する。このようにして吸気絞り弁15の開度制御、燃料噴射弁16からの燃料噴射制御、排気絞り弁18の開閉制御、及びウエイストゲート弁21の開度制御等の各種制御が電子制御装置40により実施される。
【0022】
このように構成された内燃機関10の排気浄化装置では、内燃機関10の運転によりPMフィルタ22で捕集されたPMを除去するために、PMフィルタ22に堆積したPMを燃焼させて浄化するフィルタ再生制御が実施される。こうしたフィルタ再生制御は、排気絞り弁18の作動により排気温度及び排気圧力を上昇させるとともに、PMフィルタ22に担持された酸化触媒に未燃燃料成分を供給することで行われ、これにより未燃燃料成分の排気中や触媒上での酸化に伴う発熱により触媒を活性化させるとともに触媒周りのPMを燃焼させる。なお、フィルタ再生制御での触媒への未燃燃料成分の供給は、内燃機関10の駆動に寄与する燃料噴射弁16からの燃料噴射の後、例えば排気行程中での燃料噴射であるポスト噴射等によって行われる。以下に、電子制御装置40が実施するフィルタ再生制御について説明する。
【0023】
図2は内燃機関10の運転時間に対するPMの堆積量を示したものである。同図に示すように、時間T0から内燃機関10の運転が開始されると、運転時間の経過に伴ってPMフィルタ22で捕集されるPMの堆積量が増加する。電子制御装置40では、堆積判定手段が差圧センサ34により検出される差圧ΔPが所定量を超えた場合にPMフィルタ22のPMの堆積量が過多となっていると判定し、PMフィルタ22の再生制御を開始する。そして、時間T1においてPMフィルタ22の再生制御が開始されると、PMの堆積量は減少し始め、時間T2において堆積量がほぼ0になる。電子制御装置40は、このような制御を繰り返し行うことで、外部へ排出されるPMの量を低減する。
【0024】
ここで、PMフィルタ22の再生制御が実行される期間Xにおける制御について説明する。図3は期間Xにおける車両速度、排気絞り弁18の状態を示したものである。図3(a)に示すように車両速度が変化する場合、電子制御装置40は、図3(b)に示すように排気絞り弁18を駆動する。すなわち、車両が加速状態にある期間Yでは、電子制御装置40の開閉制御手段により駆動信号「OFF」が出力され、アクチュエータ19によって排気絞り弁18が全開状態とされる。一方、車両が加速状態以外の定速走行状態、減速状態、アイドル状態等にあるときには、開閉制御手段により駆動信号「ON」が出力され、アクチュエータ19によって排気絞り弁18が全閉状態とされる。車両が加速状態にあるときは、燃焼室12に吸入される空気量が増加するため、排気絞り弁18が閉弁状態になることで車両の加速性能が損なわれることを防止している。
【0025】
排気絞り弁18を閉弁状態に作動して排気通路14が全閉となると、排気絞り弁18の上流側における排気温度及び排気圧力が上昇する。すなわち、排気絞り弁18の開度を絞ることによって排気抵抗を増大させると、燃料噴射量が増加して排気温度が上昇することとなる。そして、排気温度が上昇すると、PMフィルタ22に担持されている酸化触媒が活性化され、堆積したPMの燃焼が促進される。また、排気圧力が上昇すると、空気量の増加によってPMとの燃焼に用いられる酸素量を増加させることができるため、PMの酸化反応速度を速めることができ、PMの燃焼をより促進することができる。このようにPMの燃焼を促進することによって、フィルタ再生制御が実行される期間Xを短縮し、燃料噴射弁からの未燃燃料成分の供給量を抑えることによって燃費の悪化を抑制している。そして、温度センサ32によって測定される排気温度からPMフィルタ22に担持された触媒の活性が推定されるので、これにより、PMフィルタ22の再生度合いを推定し、PMフィルタ22に堆積していたPMが除去されたと推定されると、こうしたフィルタ再生制御を終了する。
【0026】
電子制御装置40による排気絞り弁18の開閉制御は、より詳細には図4に示すよう行われる。図4は、排気絞り弁18の制御態様を示したタイムチャートであり、(a)が排気絞り弁の駆動信号、(b)が排気絞りの制御モード、(c)が排気絞り弁18の開度を示したものである。
【0027】
図4に示すように、開閉制御手段による排気絞り弁18の駆動信号が「OFF」の状態では、排気絞り制御モードがモード0となり、排気絞り弁18は開弁状態(open)となる。そして、開閉制御手段による排気絞り弁18の駆動信号が「OFF」から「ON」になると、排気絞り制御モードは、所定期間t1が経過するまではモード0を維持し、その後、所定期間t2はモード1となり、この所定期間t2が経過するとモード2となる。排気絞り弁18は、この排気絞り制御モードがモード1となると閉じはじめ、排気絞りモードがモード2となると完全に閉弁状態(close)となる。つまり、所定期間t1は、駆動信号が「OFF」から「ON」となってから排気絞り弁18が開き始めるまでに要する期間であり、所定期間t2は、排気絞り弁18が開弁状態から閉弁状態となるまでに要する期間である。
【0028】
一方、開閉制御手段による排気絞り弁18の駆動信号が「ON」から「OFF」になると、排気絞り制御モードは、所定期間t3が経過するまではモード2を維持し、その後、所定期間t4はモード3となり、この所定期間t4が経過するとモード0となる。そして、排気絞り弁18は、この排気絞り制御モードがモード3となると開きはじめ、排気絞りモードがモード0となると完全に開弁状態(open)となる。つまり、所定期間t3は、駆動信号が「ON」から「OFF」となってから排気絞り弁18が閉じ始めるまでに要する期間であり、所定期間t4は、排気絞り弁18が閉弁状態から開弁状態となるまでに要する期間である。そして、このような排気絞り弁18の開閉動作中に、ウエイストゲート弁21は、この排気圧力を適宜調整している。
【0029】
ここで、PMフィルタ22の再生制御は、差圧センサ34で検出される差圧ΔPに基づいてPMフィルタ22にPMが堆積していると堆積判定手段が判定することにより行われるが、この差圧ΔPは、排気絞り弁18の開閉動作によって変化するため、PMフィルタ22の堆積判定においては、この排気絞り弁18の開閉動作を考慮する必要がある。そして、排気絞り弁18を開弁状態から閉弁状態とすることによって差圧センサ34により検出される差圧ΔPは、上述したように、理論的には図6の線Aに示すように変化する。すなわち、排気絞り弁18を開弁状態から閉弁状態に作動させたときに排気通路14及び燃焼室12に存在する排気が断熱変化を起こすと仮定すると、エントロピー変化の式(PVκ =一定)により、排気圧力が上昇するのに伴って体積が減少する。これにより、排気通路14内の排気の流速が減少するためにPMフィルタ22を通過する際の圧力損失もこの流速に比例して減少し、差圧ΔPが、図6の線Aに示すように排気圧力の増大に伴って減少する。しかしながら、実際に差圧センサ34により検出される差圧ΔPは、図6の黒点に示すように変化し、線Aとは大きく異なる。そのため、排気絞り弁18を閉弁中に差圧ΔPの理論値に基づいてPMフィルタ22にPMが堆積しているか否かの判定を行うと、PMの堆積を誤判定するおそれがあり、結果的にPMフィルタ22の再生を不必要に或いは過少に行うおそれがある。そこで、本実施形態では、電子制御装置40の禁止手段が、開閉制御手段の制御による排気絞り弁18の閉弁中に堆積判定手段によるPMフィルタ22のPMの堆積判定を禁止する。以下に、この排気浄化装置におけるPMフィルタ22の堆積判定の禁止制御について説明する。
【0030】
図5に電子制御装置40が実行するPMフィルタ22の堆積判定の禁止制御ルーチンのフローチャートを示す。電子制御装置40は、同フローチャートに示す手順に従って、堆積判定の禁止を行う。
【0031】
図5に示すように、PMフィルタの堆積判定の禁止ルーチンが開始されると、ステップS1において、堆積判定を行う前提条件が成立したか否かが判定される。この前提条件の判定では、例えば、差圧センサ34が正常に作動するか否か、エンジン回転数、燃料噴射量及び吸入空気量の偏差や吸入空気量がこの制御を行うのに適した所定範囲内にあるか否かなどの判定が行われる。そして、この前提条件が成立していない場合は、ENDに移り、成立していたらステップS2に移る。なお、上記前提条件は適宜変更可能であり、条件の一部を省略してもよく、また更に別の条件を追加してもよい。
【0032】
ステップS2では、排気絞り弁18が閉弁中であるか否かが判定される。ここで、図4に示したように、開閉制御手段が駆動信号「ON」を出力してから、排気絞り弁18が閉じ始めるのは所定期間t1経過後であり、開閉制御手段が排気絞り弁の駆動信号「OFF」を出力してから、排気絞り弁18が全開状態となるのは、所定期間t3及び所定期間t4経過後である。そこで、禁止手段は、図4(b)の排気絞り制御モードがモード1〜3のいずれかのとき、すなわち排気絞り弁18が少しでも閉じた状態となるときを排気絞り弁18の閉弁中とする。つまり、本実施形態では、排気絞り弁18が完全に開いている状態では駆動信号が「ON」であっても堆積判定手段による判定を行う一方、排気絞り弁18が少しでも閉じた状態であれば駆動信号が「OFF」であっても堆積判定手段による判定を行わないようにする。これにより、開閉制御手段による駆動信号の出力に対して排気絞り弁18が実際に作動するまでの応答遅れを是正することができるので、堆積判定手段による判定の禁止をより有効に行うことができる。さらに、図6に示すように、排気圧力が少しでも上昇しているとき、すなわち排気絞り弁18が少しでも閉じているときには、差圧ΔPの検出値に影響があるが、上記構成を採用することによりこの影響をより確実に排除することができる。なお、本実施形態において、この応答遅れを是正するための所定の第1期間は所定期間t1であり、所定の第2期間は所定期間t3及び所定期間t4を合わせた期間である。
【0033】
そして、ステップS2において排気絞り弁18が閉弁中と判定されると、差圧センサ34による差圧ΔPの検出が行われることなくENDに移る。すなわち、排気絞り弁18が閉弁中であると、PMフィルタ22の堆積判定が禁止される。
【0034】
一方、ステップS2において、排気絞り弁18が閉弁中でないと判定されると、ステップS3に移り、差圧センサ34により差圧ΔPが検出される。そして、ステップS4において、電子制御装置40の堆積判定手段が差圧センサ34で検出された差圧ΔPに基づいてPMフィルタ22にPMが堆積しているか否かを判定し、PMフィルタ22にPMが堆積していると判定されると、上述したPMフィルタ22の再生制御が行われる。そして、ステップS4において堆積判定手段による判定が行われた後にENDに移る。
【0035】
上記実施形態の内燃機関の排気浄化装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、電子制御装置40の禁止手段により、排気絞り弁18の閉弁中は、堆積判定手段によるPMフィルタの堆積判定を禁止するようにしている。具体的に、禁止手段は、差圧センサ34による差圧ΔPの検出を禁止することにより、堆積判定手段による判定を禁止するといった態様を採用している。これにより、PMフィルタ22におけるPMの堆積を誤判定するおそれがなく、PMフィルタ22の再生を適正な頻度で行うことができる。
【0036】
(2)上記実施形態では、電子制御装置40の禁止手段が、開閉制御手段による排気絞り弁の駆動信号「ON」の出力から所定期間t1の経過以降で且つ排気絞り弁の駆動信号「OFF」の出力から所定期間t3及び所定期間t4の経過以前を排気絞り弁の閉弁中として、堆積判定手段による判定を禁止している。これにより、開閉制御手段の制御により排気絞り弁が実際に作動するまでの応答遅れを是正することができるので、禁止手段は堆積判定手段による判定の禁止をより有効に行うことができる。さらに、図6に示すように、排気圧力が少しでも上昇しているとき、すなわち排気絞り弁18が少しでも閉じているときには、差圧ΔPの検出値に影響があるが、上記構成を採用することによりこの影響をより確実に排除することができる。
【0037】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、排気絞り弁18が少しでも閉じた状態のときを排気絞り弁18の閉弁中としたが、排気絞り弁18が全閉状態の期間、すなわち図4(b)の排気絞り制御モードではモード2の期間を排気絞り弁18の閉弁中とするようにしてもよい。また、排気絞り弁18の開度が所定量閉じた状態(例えば開度50%以下の状態)を閉弁中とするようにしてもよい。
【0038】
・上記実施形態では、排気絞り弁18は、開弁状態と閉弁状態との切換えにより排気通路14の流路断面積を変更するようにしているが、排気絞り弁18を開度が任意に設定自在な弁で構成するようにしてもよい。そして、このような場合にも、排気絞り弁18が少しでも閉じた状態を排気絞り弁18の閉弁中としてもよいし、排気絞り弁18が完全に閉じた状態を排気絞り弁18の閉弁中としてもよいし、排気絞り弁18が所定量以上閉じた状態を排気絞り弁18の閉弁中としてもよい。また、このように排気絞り弁18の開度調整を自在とすることにより、ウエイストゲート20を省略してもよい。
【0039】
・上記実施形態では、燃料噴射弁16からのポスト噴射等により、未燃燃料成分の供給を行うようにしているが、排気通路14におけるPMフィルタ22の上流に添加弁を設け、その添加弁から未燃燃料成分を供給するように構成してもよい。
【0040】
・上記実施形態では、電子制御装置40の駆動信号に基づいて開閉を行う電磁式のウエイストゲート弁21を用いたが、排気絞り弁18の上流側と下流側との圧力が所定の圧力値を超えると自動的に開いて圧力調整を行う自己調圧式のウエイストゲート弁を用いるようにしてもよい。
【0041】
・上記実施形態では、排気絞り弁18が実際に閉じている状態のときを排気絞り弁18の閉弁中としたが、排気絞り弁18の実際の作動状態に拘わらず、開閉制御手段による排気絞り弁18の駆動信号が「ON」であるときを排気絞り弁18の閉弁中としてもよい。この場合、駆動信号の「ON」「OFF」切り替えと同時に堆積判定手段による判定の禁止と禁止の解除とを切り替えればよいので、禁止制御動作が簡略化される。
【0042】
・上記実施形態では、排気絞り弁18がPMフィルタ22の再生制御の際にのみ閉弁状態となるようにしているが、寒冷地などで上記実施形態の内燃機関が採用された自動車を使用する際には、内燃機関の駆動を開始した直後に排気絞り弁を閉じることにより、内燃機関の暖気を行うようにしてもよい。そして、内燃機関の駆動を開始した直後において排気絞り弁を閉じているときに堆積判定手段による判定を禁止してもよい。
【0043】
・上記実施形態では、温度センサ32で検出される排気温度からPMフィルタ22に担持される触媒の活性を想定してPMフィルタ22の再生度合いを推定するようにしたが、差圧センサ34によって検出される差圧ΔPに基づいて、PMフィルタ22の再生度合いを推定するようにしてもよい。すなわち、差圧センサ34で検出される差圧ΔPが所定値以下となったら、PMフィルタ22が再生したと判断して、PMフィルタ22の再生制御を終了してもよい。この場合、図3で示したように、PMフィルタ22の再生制御中に排気絞り弁18の開閉が繰り返されるので、このうち排気絞り弁18の閉弁中には差圧センサ34による差圧ΔPの検出を禁止し、排気絞り弁18の開弁中には差圧センサ34による差圧ΔPの検出を行ってPMフィルタ22の再生制御の度合いを推定するようにしてもよい。
【0044】
・上記実施形態では、禁止手段が差圧センサ34による差圧ΔPの検出を禁止することにより堆積判定手段による堆積判定を禁止するようにしたが、差圧センサ34による差圧ΔPの検出は常時行って、堆積判定手段による堆積判定のみを行わないようにしてもよい。
【0045】
・上記実施形態では、差圧センサ34によってPMフィルタ22の上流側と下流側との差圧ΔPを測定するようにしたが、PMフィルタ22の上流側と下流側とにそれぞれ圧力センサを設け、これらの圧力センサで測定される検出値から差圧ΔPを算出するようにしてもよい。さらに、PMフィルタ22の上流側のみに圧力センサを設け、この圧力センサの検出値、PMフィルタ22の下流側の排気圧力の低下及び大気圧などから、PMフィルタ22の上流と下流との差圧ΔPを推定するようにしてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、PMフィルタ22に酸化触媒を担持させるようにしたが、排気通路において、酸化触媒を担持しないPMフィルタの上流側に酸化触媒コンバータを設け、この酸化触媒コンバータの触媒が発する熱によってPMフィルタに捕集されたPMを燃焼させてもよい。また、酸化触媒を担持したPMフィルタ22の上流に酸化触媒コンバータを別途設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る排気浄化装置を搭載した車載内燃機関の構成を示す模式図。
【図2】内燃機関の運転時間に対するPMの堆積量を示すタイムチャート。
【図3】(a)はPMフィルタの再生制御が実行される期間の車両速度を示すタイムチャート、(b)は同期間の排気絞り弁の状態を示すタイムチャート。
【図4】(a)は排気絞り弁の開閉制御を行う駆動信号を示すタイムチャート、(b)は排気絞りの制御モードを示すタイムチャート、(c)は排気絞り弁の開度を示すタイムチャート。
【図5】PMフィルタの堆積判定の禁止制御ルーチンを示すフローチャート。
【図6】排気圧力と差圧低下比率との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0048】
10…内燃機関、11…気筒、12…燃焼室、13…吸気通路、14…排気通路、15…吸気絞り弁、16…燃料噴射弁、17,19…アクチュエータ、18…排気絞り弁、20…ウエイストゲート、21…ウエイストゲート弁、22…PMフィルタ、31…エアフローメータ、32…温度センサ、34…差圧センサ、35…NEセンサ、36…アクセルセンサ、37…吸気絞りセンサ、40…電子制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置されて前記内燃機関から排出される粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記排気通路における前記フィルタよりも下流側に配置されて前記排気通路の流路断面積を可変とする排気絞り弁と、
前記排気絞り弁の開閉を制御する開閉制御手段と、
前記フィルタの上流側と下流側との差圧を検出する差圧検出手段と、
前記差圧検出手段の検出値に基づいて、前記フィルタに粒子状物質が堆積しているか否かを判定する堆積判定手段と、
前記開閉制御手段の制御による前記排気絞り弁の閉弁中に前記堆積判定手段による判定を禁止する禁止手段とを備えている
ことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記禁止手段は、前記差圧検出手段による差圧の検出を禁止することにより、前記堆積判定手段による判定を禁止する
ことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記禁止手段は、前記開閉制御手段が排気絞り弁を開弁状態から閉弁状態にするための制御信号を出力してから所定の第1期間の経過以降で且つ排気絞り弁を閉弁状態から開弁状態にするための制御信号を出力してから所定の第2期間の経過以前を排気絞り弁の閉弁中として、前記堆積判定手段による判定を禁止する
ことを特徴とする排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−144708(P2008−144708A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334753(P2006−334753)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】