説明

掘削機械の表示システム及びその制御方法。

【課題】本発明の課題は、案内画面に表示される表示対象面と掘削機械との位置関係を容易に把握することができる掘削機械の表示システム及びその制御方法を提供することにある。
【解決手段】掘削機械の表示システムでは、上部境界線Laの位置と下部境界線Lbの位置とが算出される。上部境界線Laは、表示対象面78の断面の上端の高さ位置を示す。下部境界線Lbは、表示対象面78の断面の下端の高さ位置を示す。掘削機械の現在位置Poと、上部境界線Laあるいは下部境界線Lbとの上下方向の位置関係によって、表示範囲の基準点Pbが設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機械の表示システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの掘削機械と目標面との位置関係を示す案内画面を表示する表示システムが知られている。目標面は、設計地形を構成する複数の設計面から作業対象として選択された平面である。例えば、特許文献1に開示されている表示システムは、油圧ショベルのバケットの位置及び姿勢と、目標面の位置及び勾配などの検出データから、バケットと目標面との相対位置関係を演算する。そして、表示システムは、側面視におけるバケットと目標面との模式図をモニタ上に表示する。このとき、表示システムは、目標面とバケットの先端との間の距離に応じて、画像の表示スケールを変更する。また、油圧ショベルの車体及び作業機と目標面との全体が同一画面に含まれる程度の縮尺に固定して上記の画像をモニタ上に表示してもよいことも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−123476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の表示システムのように、目標面と作業機との間の距離に応じて、画像の表示スケールが変更される場合、目標面と作業機とが過度に小さく表示されてしまい、目標面と作業機との位置関係を把握することが困難になる可能性がある。また、掘削機械と目標面との全体が同一画面に含まれる程度の縮尺に固定して画像をモニタ上に表示する場合にも、目標面と作業機とが大きく離れているときには、目標面と掘削機械とが、過度に小さく表示されてしまう。このため、目標面と掘削機械との位置関係を把握することが困難になる。
【0005】
本発明の課題は、案内画面に表示される表示対象面と掘削機械との位置関係を容易に把握することができる掘削機械の表示システム及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る掘削機械の表示システムは、案内画面を表示するシステムである。案内画面は、掘削機械の現在位置と、掘削対象の目標地形の一部を示す表示対象面の側面視における断面とを示す。掘削機械の表示システムは、記憶部と、位置検出部と、演算部と、表示部とを備える。記憶部は、表示対象面の位置を示す地形データを記憶する。位置検出部は、掘削機械の現在位置を検出する。演算部は、地形データに対して案内画面として表示する所定の表示範囲を設定する。演算部は、地形データと掘削機械の現在位置とに基づいて、上部境界線の位置と下部境界線の位置とを算出する。上部境界線は、表示対象面の断面の上端の高さ位置を示す。下部境界線は、表示対象面の断面の下端の高さ位置を示す。演算部は、掘削機械の現在位置と、上部境界線あるいは下部境界線との上下方向の位置関係によって、表示範囲の所定の基準点を設定する。表示部は、表示範囲に含まれる表示対象面の側面視における断面と掘削機械の現在位置とを示す案内画面を表示する。
【0007】
本発明の第2の態様に係る掘削機械の表示システムは、第1の態様に係る掘削機械の表示システムであって、演算部は、掘削機械の現在位置が上部境界線と下部境界線との間に位置するときには、表示範囲の所定の基準点を上部境界線と下部境界線との間の所定位置に設定する。
【0008】
本発明の第3の態様に係る掘削機械の表示システムは、第1の態様に係る掘削機械の表示システムであって、演算部は、掘削機械の現在位置が上部境界線よりも上方に位置するときには、基準点を所定位置よりも上方に設定する。演算部は、掘削機械の現在位置が下部境界線よりも下方に位置するときには、基準点を所定位置よりも下方に設定する。
【0009】
本発明の第4の態様に係る掘削機械の表示システムは、第3の態様の掘削機械の表示システムであって、演算部は、掘削機械の現在位置が上部境界線よりも上方に位置するときには、表示範囲の基準点を所定位置から上方に掘削機械の現在位置と上部境界線との間の距離を追加した位置に設定する。また、演算部は、掘削機械の現在位置が下部境界線よりも下方に位置するときには、表示範囲の基準点を所定位置から下方に掘削機械の現在位置と下部境界線との間の距離を追加した位置に設定する。
【0010】
本発明の第5の態様に係る掘削機械は、第1から第4の態様のいずれかの掘削機械の表示システムを備える。
【0011】
本発明の第6の態様に係る掘削機械の表示システムの制御方法は、案内画面を表示する表示システムの制御方法である。案内画面は、掘削機械の現在位置と、掘削対象の目標地形の一部を示す表示対象面の側面視における断面とを示す。この制御方法は以下のステップを備える。第1ステップでは、掘削機械の現在位置を検出する。第2ステップでは、表示対象面の位置を示す地形データに対して案内画面として表示する所定の表示範囲を設定する。第3ステップでは、地形データと掘削機械の現在位置とに基づいて、上部境界線の位置と下部境界線の位置とを算出する。上部境界線は、表示対象面の側面視における断面の上端の高さ位置を示す。下部境界線は、表示対象面の側面視における断面の下端の高さ位置を示す。第4ステップでは、掘削機械の現在位置と、上部境界線あるいは下部境界線との上下方向の位置関係によって、表示範囲の所定の基準点を設定する。第5ステップでは、表示範囲に含まれる表示対象面の側面視における断面と掘削機械の現在位置とを示す案内画面を表示する。
【0012】
本発明の第7の態様に係る掘削機械の表示システムの制御方法は、第6の態様に係る掘削機械の表示システムの制御方法であって、第4ステップにおいて、掘削機械の現在位置が上部境界線と下部境界線との間に位置するときには、表示範囲の所定の基準点を上部境界線と下部境界線との間の所定位置に設定する。
【0013】
本発明の第8の態様に係る掘削機械の表示システムの制御方法は、第6の態様に係る掘削機械の表示システムの制御方法であって、第4ステップにおいて、掘削機械の現在位置が上部境界線よりも上方に位置するときには、基準点を所定位置よりも上方に設定し、掘削機械の現在位置が下部境界線よりも下方に位置するときには、基準点を所定位置よりも下方に設定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、目標面と掘削機械とが過度に小さく表示されることが抑えられる。このため、オペレータは、目標面と掘削機械との位置関係を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】油圧ショベルの斜視図。
【図2】油圧ショベルの構成を模式的に示す図。
【図3】油圧ショベルが備える制御系の構成を示すブロック図。
【図4】設計地形データによって示される設計地形を示す図。
【図5】走行モードの案内画面を示す図。
【図6】バケットの先端の現在位置を求める方法を示す図。
【図7】粗掘削モードの案内画面を示す図。
【図8】繊細掘削モードの案内画面を示す図。
【図9】表示範囲最適化制御の処理を示すフローチャート。
【図10】表示範囲最適化制御の処理を示すフローチャート。
【図11】表示部上の表示エリアの例を示す図。
【図12】表示範囲の短辺の大きさを示す表。
【図13】作業機のリーチ長さが最大となるときの作業機の姿勢を示す図。
【図14】表示範囲の例を示す図。
【図15】始点と終点との位置の一例を示す図。
【図16】表示対象面線の一例と表示範囲の基準点の設定方法を示す図。
【図17】始点と終点との位置の一例を示す図。
【図18】始点と終点との位置の一例を示す図。
【図19】表示対象面線と表示範囲の基準点の設定方法を示す図。
【図20】繊細掘削モードの案内画面における表示範囲の基準点の設定方法を示す図。
【図21】繊細掘削モードの案内画面における画像の変化を示す図。
【図22】走行モード及び粗掘削モードの案内画面における画像の変化を示す図。
【図23】走行モード及び粗掘削モードの案内画面における表示範囲の基準点の設定方法を示す図。
【図24】走行モード及び粗掘削モードの案内画面における画像の変化を示す図。
【図25】走行モード及び粗掘削モードの案内画面における表示範囲の基準点の設定方法を示す図。
【図26】走行モード及び粗掘削モードの案内画面における画像の変化を示す図。
【図27】走行モード及び粗掘削モードの案内画面における画像の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.構成
1−1.油圧ショベルの全体構成
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る掘削機械の表示システムについて説明する。図1は、表示システムが搭載される掘削機械の一例としての油圧ショベル100の斜視図である。油圧ショベル100は、車両本体1と作業機2とを有する。車両本体1は、上部旋回体3と運転室4と走行装置5とを有する。上部旋回体3は、図示しないエンジンや油圧ポンプなどの装置を収容している。運転室4は上部旋回体3の前部に載置されている。運転室4内には、後述する表示入力装置38及び操作装置25が配置される(図3参照)。走行装置5は履帯5a,5bを有しており、履帯5a,5bが回転することにより油圧ショベル100が走行する。
【0017】
作業機2は、車両本体1の前部に取り付けられており、ブーム6とアーム7とバケット8とブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを有する。ブーム6の基端部は、ブームピン13を介して車両本体1の前部に揺動可能に取り付けられている。アーム7の基端部は、アームピン14を介してブーム6の先端部に揺動可能に取り付けられている。アーム7の先端部には、バケットピン15を介してバケット8が揺動可能に取り付けられている。
【0018】
図2は、油圧ショベル100の構成を模式的に示す図である。図2(a)は油圧ショベル100の側面図であり、図2(b)は油圧ショベル100の背面図である。図2(a)に示すように、ブーム6の長さ、すなわち、ブームピン13からアームピン14までの長さは、L1である。アーム7の長さ、すなわち、アームピン14からバケットピン15までの長さは、L2である。バケット8の長さ、すなわち、バケットピン15からバケット8のツースの先端までの長さは、L3である。
【0019】
図1に示すブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とは、それぞれ油圧によって駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ10はブーム6を駆動する。アームシリンダ11は、アーム7を駆動する。バケットシリンダ12は、バケット8を駆動する。ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12などの油圧シリンダと図示しない油圧ポンプとの間には、比例制御弁37が配置されている(図3参照)。比例制御弁37が後述する作業機コントローラ26によって制御されることにより、油圧シリンダ10−12に供給される作動油の流量が制御される。これにより、油圧シリンダ10−12の動作が制御される。
【0020】
図2(a)に示すように、ブーム6とアーム7とバケット8には、それぞれ第1〜第3ストロークセンサ16−18が設けられている。第1ストロークセンサ16は、ブームシリンダ10のストローク長さを検出する。後述する表示コントローラ39(図3参照)は、第1ストロークセンサ16が検出したブームシリンダ10のストローク長さから、後述する車両本体座標系のZa軸(図6参照)に対するブーム6の傾斜角θ1を算出する。第2ストロークセンサ17は、アームシリンダ11のストローク長さを検出する。表示コントローラ39は、第2ストロークセンサ17が検出したアームシリンダ11のストローク長さから、ブーム6に対するアーム7の傾斜角θ2を算出する。第3ストロークセンサ18は、バケットシリンダ12のストローク長さを検出する。表示コントローラ39は、第3ストロークセンサ18が検出したバケットシリンダ12のストローク長さから、アーム7に対するバケット8の傾斜角θ3を算出する。
【0021】
車両本体1には、位置検出部19が備えられている。位置検出部19は、油圧ショベル100の現在位置を検出する。位置検出部19は、RTK−GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite Systems、GNSSは全地球航法衛星システムをいう。)用の2つのアンテナ21,22(以下、「GNSSアンテナ21,22」と呼ぶ)と、3次元位置センサ23と、傾斜角センサ24とを有する。GNSSアンテナ21,22は、後述する車両本体座標系Xa−Ya−ZaのYa軸(図6参照)に沿って一定距離だけ離間して配置されている。GNSSアンテナ21,22で受信されたGNSS電波に応じた信号は3次元位置センサ23に入力される。3次元位置センサ23は、GNSSアンテナ21,22の設置位置P1,P2の位置を検出する。図2(b)に示すように、傾斜角センサ24は、重力方向(鉛直線)に対する車両本体1の車幅方向の傾斜角θ4(以下、「ロール角θ4」と呼ぶ)を検出する。
【0022】
図3は、油圧ショベル100が備える制御系の構成を示すブロック図である。油圧ショベル100は、操作装置25と、作業機コントローラ26と、作業機制御装置27と、表示システム28を備える。操作装置25は、作業機操作部材31と、作業機操作検出部32と、走行操作部材33と、走行操作検出部34とを有する。作業機操作部材31は、オペレータが作業機2を操作するための部材であり、例えば操作レバーである。作業機操作検出部32は、作業機操作部材31の操作内容を検出して、検出信号として作業機コントローラ26へ送る。走行操作部材33は、オペレータが油圧ショベル100の走行を操作するための部材であり、例えば操作レバーである。走行操作検出部34は、走行操作部材33の操作内容を検出して、検出信号として作業機コントローラ26へ送る。
【0023】
作業機コントローラ26は、RAMやROMなどの記憶部35や、CPUなどの演算部36を有している。作業機コントローラ26は、主として作業機2の制御を行う。作業機コントローラ26は、作業機操作部材31の操作に応じて作業機2を動作させるための制御信号を生成して、作業機制御装置27に出力する。作業機制御装置27は比例制御弁37を有しており、作業機コントローラ26からの制御信号に基づいて比例制御弁37が制御される。作業機コントローラ26からの制御信号に応じた流量の作動油が比例制御弁37から流出され、油圧シリンダ10−12に供給される。油圧シリンダ10−12は、比例制御弁37から供給された作動油に応じて駆動される。これにより、作業機2が動作する。
【0024】
1−2.表示システム28の構成
表示システム28は、作業エリア内の目標面と油圧ショベル100の現在位置との関係を示す案内画面を表示するためのシステムである。表示システム28は、上述した第1〜第3ストロークセンサ16−18、3次元位置センサ23、傾斜角センサ24のほかに、表示入力装置38と、表示コントローラ39とを有している。
【0025】
表示入力装置38は、タッチパネル式の入力部41と、LCDなどの表示部42とを有する。表示入力装置38は、案内画面を表示する。また、案内画面には、各種のキーが表示される。オペレータは、案内画面上の各種のキーに触れることにより、表示システム28の各種の機能を実行させることができる。案内画面については後に詳細に説明する。
【0026】
表示コントローラ39は、表示システム28の各種の機能を実行する。表示コントローラ39と作業機コントローラ26とは、無線あるいは有線の通信手段により互いに通信可能となっている。表示コントローラ39は、RAMやROMなどの記憶部43や、CPUなどの演算部44を有している。記憶部43は、作業機データを記憶している作業機データ記憶部47と、設計地形データを記憶する地形データ記憶部46とを有する。作業機データは、上述したブーム6の長さL1、アーム7の長さL2、バケット8の長さL3を含む。また、作業機データは、ブーム6の傾斜角θ1、アーム7の傾斜角θ2、バケット8の傾斜角θ3のそれぞれの最小値及び最大値を含む。地形データ記憶部46には、作業エリア内の3次元の設計地形の形状及び位置を示す設計地形データが予め作成されて記憶されている。表示コントローラ39は、設計地形データや上述した各種のセンサからの検出結果などのデータに基づいて、案内画面を表示入力装置38に表示させる。具体的には、図4に示すように、設計地形は、三角形ポリゴンによってそれぞれ表現される複数の設計面74によって構成されている。なお、図4では複数の設計面のうちの1つのみに符号74が付されており、他の設計面の符号は省略されている。オペレータは、これらの設計面74のうちの1つ、或いは、複数の設計面を目標面70として選択する。表示コントローラ39は、油圧ショベル100の現在位置と目標面70との位置関係を示す案内画面を表示入力装置38に表示させる。
【0027】
2.案内画面
以下、案内画面について詳細に説明する。案内画面には、図5に示す走行モードの案内画面(以下、「走行モード画面52」と呼ぶ)と、図7及び図8に示す掘削モードの案内画面53,54とがある。走行モード画面52は、油圧ショベル100を走行させて目標面70の近くまで誘導するために油圧ショベル100の現在位置と目標面70との位置関係を示す画面である。掘削モードの案内画面53,54は、掘削作業の対象である地面が目標面70と同じ形状になるように油圧ショベル100の作業機2を誘導するために油圧ショベル100の現在位置と目標面70との位置関係を示す画面である。掘削モードの案内画面53,54は、目標面70と作業機2との位置関係を、走行モード画面52よりも詳細に示す。掘削モードの案内画面53,54は、図7に示す粗掘削モードの案内画面53(以下、「粗掘削画面53」と呼ぶ)と、図8に示す繊細掘削モードの案内画面54(以下、「繊細掘削画面54」と呼ぶ)とを有する。
【0028】
2−1.走行モード画面52
図5に走行モード画面52を示す。走行モード画面52は、作業エリアの設計地形と油圧ショベル100の現在位置とを示す上面図52aと、目標面70と油圧ショベル100と作業機2の作業可能範囲76とを示す側面図52bとを含む。
【0029】
走行モード画面52には、複数の操作キーが表示される。操作キーは、画面切換キー65を含む。画面切換キー65は、走行モード画面52と掘削モードの案内画面53,54との間の切換を実行させるためのキーである。例えば、画面切換キー65が一度押されると、走行モード画面52と、粗掘削画面53と、繊細掘削画面54とを選択するためのポップアップ画面が表示される。なお、ポップアップ画面が表示されていない通常の表示状態では、走行モード画面52と粗掘削画面53と繊細掘削画面54とのうち、現在表示されている案内画面に対応するアイコンが画面切換キー65として案内画面上に表示される。例えば、図5では、走行モード画面52が表示されているため、走行モード画面52を示すアイコンが画面切換キー65として表示されている。また、図7に示すように、粗掘削画面53が表示されているときには、粗掘削画面53を示すアイコンが画面切換キー65として表示される。
【0030】
走行モード画面52の上面図52aは、作業エリアの設計地形と油圧ショベル100の現在位置とを示す。上面図52aは、複数の三角形ポリゴンによって上面視による設計地形を表現している。具体的には、上面図52aは、グローバル座標系の水平面を投影面として設計地形を表現している。また、目標面70は、他の設計面と異なる色で表示される。なお、図5では、油圧ショベル100の現在位置が上面視による油圧ショベルのアイコン61で示されているが、他のシンボルによって示されてもよい。また、上面図52aは、油圧ショベル100を目標面70まで誘導するための情報を含む。具体的には、方位インジケータ71が表示される。方位インジケータ71は、油圧ショベル100に対する目標面70の方向を示すアイコンである。従って、オペレータは、走行モード画面52によって、油圧ショベル100を目標面70の近くまで容易に移動させることができる。
【0031】
また、走行モード画面52の上面図52aは、目標作業位置を示す情報と、油圧ショベル100を目標面70に対して正対させるための情報をさらに含んでいる。目標作業位置は、油圧ショベル100が目標面70に対して掘削を行うために最適な位置であり、目標面70の位置と後述する作業可能範囲76とから算出される。目標作業位置は、上面図52aにおいて直線72で示されている。油圧ショベル100を目標面70に対して正対させるための情報は、正対コンパス73として表示される。正対コンパス73は、目標面70に対する正対方向と油圧ショベル100を旋回させるべき方向とを示すアイコンである。オペレータは、正対コンパス73により、目標面70への正対度を確認することができる。
【0032】
走行モード画面52の側面図52bは、設計面線91と、目標面線92と、側面視による油圧ショベル100のアイコン75と、作業機2の作業可能範囲76と、目標作業位置を示す情報を含む。設計面線91は、目標面70以外の設計面74の断面を示す。目標面線92は、目標面70の断面を示す。設計面線91及び目標面線92は、図4に示すように、バケット8の先端P3の現在位置を通る平面77と設計地形との交線80を算出することにより求められる。目標面線92は、設計面線91と異なる色で表示される。なお、図5では線種を変えて、目標面線92と設計面線91とを表現している。
【0033】
作業可能範囲76は、作業機2が実際に届くことができる車両本体1の周囲の範囲を示す。作業可能範囲76は、記憶部43に記憶されている作業機データから算出される。側面図52bに示される目標作業位置は、上述した上面図52aに示される目標作業位置に相当し、三角形のアイコン81で示される。また、油圧ショベル100上の目標点が三角形のアイコン82によって示される。オペレータは、目標点のアイコン82が目標作業位置のアイコン81と合致するように油圧ショベル100を移動させる。
【0034】
以上のように、走行モード画面52は、目標作業位置を示す情報と油圧ショベル100を目標面70に対して正対させるための情報とを含む。このため、オペレータは、走行モード画面52により、目標面70に対して、作業を行うために最適な位置及び方向に油圧ショベル100を配置することができる。従って、走行モード画面52は、油圧ショベル100の位置決めをするために使用される。
【0035】
なお、上述したように、目標面線92はバケット8の先端の現在位置から算出される。表示コントローラ39は、3次元位置センサ23、第1〜第3ストロークセンサ16−18、傾斜角センサ24などからの検出結果に基づき、グローバル座標系{X,Y,Z}でのバケット8の先端の現在位置を算出する。具体的には、バケット8の先端の現在位置は、次のようにして求められる。
【0036】
まず、図6に示すように、上述したGNSSアンテナ21の設置位置P1を原点とする車両本体座標系{Xa,Ya,Za}を求める。図6(a)は油圧ショベル100の側面図である。図6(b)は油圧ショベル100の背面図である。ここでは、油圧ショベル100の前後方向すなわち車両本体座標系のYa軸方向がグローバル座標系のY軸方向に対して傾斜しているものとする。また、車両本体座標系でのブームピン13の座標は(0,Lb1,−Lb2)であり、予め表示コントローラ39の記憶部43に記憶されている。
【0037】
3次元位置センサ23はGNSSアンテナ21,22の設置位置P1,P2を検出する。検出された座標位置P1、P2から以下の(1)式よってYa軸方向の単位ベクトルが算出される。
Ya=(P1−P2)/|P1−P2|・・・(1)
図6(a)に示すように、YaとZの2つのベクトルで表される平面を通り、Yaと垂直なベクトルZ’を導入すると、以下の関係が成り立つ。
(Z’,Ya)=0・・・(2)
Z’=(1−c)Z+cYa・・・(3)
cは定数である。
(2)式および(3)式より、Z’は以下の(4)式のように表される。
Z’=Z+{(Z,Ya)/((Z,Ya)−1)}(Ya−Z)・・・(4)
さらに、YaおよびZ’と垂直なベクトルをX’とすると、X’は以下の(5)式のようのように表される。
X’=Ya⊥Z’・・・(5)
図6(b)に示すように、車両本体座標系は、これをYa軸周りに上述したロール角θ4だけ回転させたものであるから、以下の(6)式のように示される。

【0038】
・・・(6)
また、第1〜第3ストロークセンサ16−18の検出結果から、上述したブーム6、アーム7、バケット8の現在の傾斜角θ1、θ2、θ3が算出される。車両本体座標系内でのバケット8の先端P3の座標(xat、yat、zat)は、傾斜角θ1、θ2、θ3およびブーム6、アーム7、バケット8の長さL1、L2、L3を用いて、以下の(7)〜(9)式により算出される。
xat=0・・・(7)
yat=Lb1+L1sinθ1+L2sin(θ1+θ2)+L3sin(θ1+θ2+θ3)・・・(8)
zat=−Lb2+L1cosθ1+L2cos(θ1+θ2)+L3cos(θ1+θ2+θ3)・・・(9)
なお、バケット8の先端P3は、車両本体座標系のYa−Za平面上で移動するものとする。
そして、グローバル座標系でのバケット8の先端P3の座標が以下の(10)式から求められる。
P3=xat・Xa+yat・Ya+zat・Za+P1・・・(10)
図4に示すように、表示コントローラ39は、上記のように算出したバケット8の先端の現在位置と、記憶部43に記憶された設計地形データとに基づいて、3次元設計地形とバケット8の先端P3を通るYa−Za平面77との交線80を算出する。そして、表示コントローラ39は、この交線のうち目標面70を通る部分を上述した目標面線92として案内画面に表示する。
【0039】
2−2.粗掘削画面53
図7に粗掘削画面53を示す。粗掘削画面53には、上述した走行モード画面52と同様の画面切換キー65が表示される。また、粗掘削画面53は、作業エリアの設計地形と油圧ショベル100の現在位置とを示す上面図53aと、目標面70と油圧ショベル100とを示す側面図53bとを含む。
【0040】
粗掘削画面53の上面図53aは、上述した走行モード画面52の上面図52aと異なり、油圧ショベル100の旋回平面を投影面として設計地形を表現している。従って、上面図53aは、油圧ショベル100の真上から見た図であり、油圧ショベル100が傾いたときには設計面が傾くことになる。粗掘削画面53の側面図53bは、設計面線91と、目標面線92と、側面視による油圧ショベル100のアイコン75と、バケット8と目標面70との位置関係を示す情報を含む。バケット8と目標面70との位置関係を示す情報は、数値情報83とグラフィック情報84とを含む。数値情報83は、バケット8の先端と目標面線92との最短距離を示す数値である。グラフィック情報84は、バケット8の先端と目標面線92との最短距離をグラフィックで示した情報である。具体的には、グラフィック情報84は、インデックスバー84aと、インデックスバー84aのうちバケット8の先端と目標面線92との距離がゼロに相当する位置を示すインデックスマーク84bとを含む。インデックスバー84aは、バケット8の先端と目標面線92との最短距離に応じて、各インデックスバー84aが点灯するようになっている。なお、グラフィック情報84の表示のオン/オフがオペレータの操作により変更可能とされてもよい。
【0041】
以上のように、粗掘削画面53では、目標面線92と油圧ショベル100との相対位置関係と、バケット8の先端と目標面線92との最短距離を示す数値が詳細に表示される。オペレータは、目標面線92を示すラインに沿ってバケット8の先端を移動させることによって、現在の地形が3次元設計地形になるように、容易に掘削することができる。
【0042】
2−3.繊細掘削画面54
図8に、繊細掘削画面54を示す。繊細掘削画面54は、目標面70と油圧ショベル100との位置関係を粗掘削画面53よりも、より詳細に示す。繊細掘削画面54には、上述した走行モード画面52と同様の画面切換キー65が表示される。なお、図8では、繊細掘削画面54が表示されているため、繊細掘削画面54を示すアイコンが画面切換キー65として表示されている。また、繊細掘削画面54は、目標面70とバケット8とを示す正面図54aと、目標面70とバケット8とを示す側面図54bとを含む。繊細掘削画面54の正面図54aには、正面視によるバケット8のアイコン89と、正面視による目標面70の断面を示す線(以下、「目標面線93」と呼ぶ)とを含む。繊細掘削画面54の側面図54bには、側面視によるバケット8のアイコン90と、設計面線91と、目標面線92とを含む。また、繊細掘削画面54の正面図54aと側面図54bとには、それぞれ、目標面70とバケット8との位置関係を示す情報が表示される。
【0043】
正面図54aにおいて目標面70とバケット8との位置関係を示す情報は、距離情報86aと角度情報86bとを含む。距離情報86aは、バケット8の先端と、目標面線93との間のZa方向の距離を示したものである。また、角度情報86bは、目標面線93とバケット8との間の角度を示す情報である。具体的には、角度情報86bは、バケット8の複数のツースの先端を通る仮想線と目標面線93との間の角度である。
【0044】
側面図54bにおいて目標面70とバケット8との位置関係を示す情報は、距離情報87aと角度情報87bとを含む。距離情報87aは、バケット8の先端と、目標面線92との間の最短距離、すなわち目標面線92の垂線方向におけるバケット8の先端と目標面線92との間の距離を示したものである。また、角度情報87bは、目標面線92とバケット8との間の角度を示す情報である。具体的には、側面図54bに表示される角度情報87bは、バケット8の底面と目標面線92との間の角度である。
【0045】
なお、繊細掘削画面54は、バケット8の先端と目標面線92との最短距離をグラフィックで示すグラフィック情報88を含む。グラフィック情報88は、粗掘削画面53のグラフィック情報84と同様に、インデックスバー88aとインデックスマーク88bとを有する。
【0046】
以上のように、繊細掘削画面54では、目標面線92,93とバケット8との相対位置関係が表示される。オペレータは、目標面線92,93を示すラインに沿ってバケット8の先端を移動させることによって、現在の地形が3次元設計地形と同じ形状になるように、さらに容易に掘削することができる。
【0047】
3.案内画面の表示範囲最適化制御
次に、表示コントローラ39の演算部44によって実行される案内画面の表示範囲最適化制御について説明する。表示範囲最適化制御は、オペレータが目標面70と作業機2との位置関係を把握することを容易にするために、表示範囲を最適化する制御である。表示範囲は、上述した設計地形データに対して案内画面として表示する範囲を示す。すなわち、設計地形データによって表現される設計地形のうち表示範囲に含まれる部分が案内画面として表示される。なお、上述したように走行モード画面52および粗掘削画面53は、それぞれ、上面図52a,53aと側面図52b,53bとを含む。また、繊細掘削画面54は、正面図54aと側面図54bとを含む。本実施形態での表示範囲最適化制御は、各案内画面の側面図に対する表示範囲を最適化するものである。図9及び図10は、表示範囲最適化制御における処理を示すフローチャートである。
【0048】
ステップS1では、車両本体1の現在位置が検出される。ここでは、上述したように、演算部44が、位置検出部19からの検出信号に基づいて車両本体1のグローバル座標系における現在位置を算出する。
【0049】
ステップS2では、表示範囲が設定される。ここでは、演算部44は、長方形の表示範囲を設定する。演算部44は、表示部42の案内画面を表示する部分(以下、「表示エリア」と呼ぶ)の画面アスペクト比から表示範囲の短辺が縦の辺と横の辺とのいずれであるのかを求める。例えば、図11(a)に示すように、表示エリアが縦長の形状である場合には、横の辺が短辺として求められる。また、図11(b)に示すように、表示エリアが横長の形状である場合には、縦の辺が短辺として求められる。なお、画面アスペクト比は表示入力装置38の図示しない記憶部に保存されており、表示コントローラ39によって読み出される。そして、演算部44は、案内画面の所定範囲が表示範囲の短辺の範囲内に収まるように案内画面を表示エリア内に表示するための縮尺を決定する。具体的には、図12に示すように、作業機2の最大リーチ長さを基準にして、表示範囲の短辺の長さが設定される。例えば、走行モード画面では、表示範囲の短辺の長さが最大リーチ長さの2倍になるように表示範囲の縮尺が設定される。粗掘削画面では、表示範囲の短辺の長さが最大リーチ長さの1.5倍になるように表示範囲の縮尺が設定される。繊細掘削画面では、表示範囲の短辺の長さが最大リーチ長さの1.2倍になるように表示範囲の縮尺が設定される。
【0050】
なお、作業機2の最大リーチ長さは作業機データから算出される。図13に示すように、最大リーチ長さは、作業機2を最大限まで延ばしたときの作業機2の長さ、すなわち、作業機2を最大限まで延ばしたときのブームピン13とバケット8の先端P3との間の長さである。図13は、作業機2の長さが最大リーチ長さLmaxとなるときの作業機2の姿勢(以下、「最大リーチ姿勢」と呼ぶ)を模式的に示している。図13に示す座標平面Yb−Zbは、上述した車両本体座標系{Xa,Ya,Za}においてブームピン13の位置を原点としたものである。最大リーチ姿勢では、アーム角θ2は最小値となる。また、バケット角θ3は、作業機2のリーチ長さが最大となるように、パラメータ最適化のための数値解析によって算出される。そして、これらの結果から最大リーチ長さLmaxが算出される。
【0051】
以上の処理により図14に示すような表示範囲55が設定される。表示範囲55の長辺の大きさは、上述した短辺の大きさと画面アスペクト比から算出される。また、表示範囲55における所定の位置が基準点Pbとして設定される。基準点Pbは、案内画面の種類ごとに固定的に設定されている。具体的には、基準点Pbは、表示範囲55の1つの角の頂点からのY軸方向の距離a1と、Z軸方向の距離b1とで表される(以下、「オフセット値」と呼ぶ)。そして、基準点Pbのオフセット値a1.b1は、走行モード画面52と粗掘削画面53と繊細掘削画面54とのそれぞれにおいて固有の値が設定されている。
【0052】
図9に戻り、ステップS3では、表示対象面線が決定される。ここでは、図15に示すように、演算部44は、地形データと作業機データと車両本体の現在位置とに基づいて、目標面線92上の側面視における断面において、始点Psと終点Peとを演算する。始点Psは、目標面線92上において車両本体1に最も近い位置である。終点Peは、始点Psから作業機2の最大リーチ長さLmax離れた位置である。具体的には、Yb−Zb平面と目標面70との交線上において始点Psと終点Peとの座標が演算される。これにより、例えば図16に示すように、目標面線92上の始点Psと終点Peとの座標が算出され、目標面線92のうち始点Psと終点Peとの間の部分が表示対象面線78として決定される。ただし、図17に示すように、車両本体1が目標面70上に位置している場合には、車両原点Poの位置(ここではバケットピン13の現在位置)が始点Psの位置として決定される。また、図18に示すように、目標面線92が最大リーチ長さLmaxよりも小さい場合には、終点Peは目標面70の外側に位置する。また、図17に示すように、始点Psから最大リーチ距離だけ離れた位置が目標面70の外側に位置する場合にも、終点Peは目標面70の外側に位置する。この場合、図19に示すように、目標面線92上の始点Psと、目標面線92に隣接する設計面線91上の終点Peとの座標が算出され、目標面線92と設計面線91とのうち始点Psと終点Peとの間の部分が表示対象面線78として決定される。
【0053】
図9に戻り、ステップS4では、走行モード画面52又は粗掘削画面53が表示部42に表示されているか否かが判断される。走行モード画面52又は粗掘削画面53が表示部42に表示されていない場合には、ステップS5へ進む。すなわち、繊細掘削画面54が表示部42に表示されている場合には、ステップS5へ進む。
【0054】
ステップS5では、表示対象面線78の始点Psと終点Peとの平均位置に基準点Pbを設定する。すなわち、図20に示すように、基準点Pbが始点Psと終点Peとの中点Pmに設定される。そして、図10に示すステップS9において、案内画面すなわち繊細掘削画面54が表示される。上述したように、基準点Pbが始点Psと終点Peとの中点Pmに設定されているため、図21(a)−(c)に示すように、繊細掘削画面54の側面図54b上では表示対象面線78が固定的に表示され、繊細掘削画面54の側面図54b上をバケット8のアイコン89が移動するように表示される。
【0055】
図9に戻り、ステップS4において走行モード画面52又は粗掘削画面53が表示部42に表示されていると判定されたときには、図10に示すステップS6へ進む。ステップS6では、図16に示すように、基準点PbのY座標が車両原点PoのY座標に設定される。
【0056】
次に、ステップS7では、車両原点PoのZ座標が上部境界線と下部境界線の間にあるか否かが判定される。上部境界線は、表示対象面線78の上端の高さ位置を示す。下部境界線は、表示対象面線78の下端の高さ位置を示す。例えば、図16に示すように、上部境界線Laは、表示対象面線78の終点Peを通るY軸に平行な線である。また、下部境界線Lbは、表示対象面線78の始点Psを通るY軸に平行な線である。車両原点PoのZ座標が上部境界線Laと下部境界線Lbの間にあると判定されたときには、ステップS8へ進む。
【0057】
ステップS8では、基準点PbのZ座標を上部境界線Laと下部境界線Lbとの平均位置に設定する。ここでは、図16に示すように、基準点PbのZ座標が、上部境界線Laと下部境界線Lbとの中点PmのZ座標に固定される。そして、ステップS9において案内画面が表示される。すなわち、走行モード画面52又は粗掘削画面53が表示される。例えば粗掘削画面53が表示される場合には、図22(a)−(c)に示すように、車両本体1が上部境界線Laと下部境界線Lbとの間で上下に移動すると、粗掘削画面53の側面図53b上では表示対象面線78が固定的に表示され、粗掘削画面53の側面図53b上を油圧ショベル100のアイコン75が上下に移動するように表示される。走行モード画面52の側面図52bも、粗掘削画面53の側面図53bと同様に表示される。
【0058】
ステップS7において車両原点PoのZ座標が上部境界線Laと下部境界線Lbの間にないと判定された場合は、ステップS10に進む。ステップS10では、車両原点PoのZ座標が上部境界線Laより上にあるか否かが判定される。ここで、図23に示すように、車両原点PoのZ座標が上部境界線Laより上にある場合には、ステップS11に進む。
【0059】
ステップS11では、基準点PbのY座標を上部境界線Laと下部境界線Lbとの平均位置に車両原点Poと上部境界線Laとの間の距離を加えた位置に設定する。すなわち、図23に示すように、始点Psと終点Peとの中点PmのZ座標に、車両原点Poと上部境界線Laとの間のZ軸方向の距離Daを加えた値を、基準点PbのZ座標に設定する。なお、図23において、「Pb’」は、車両原点PoのZ座標が上部境界線Laと下部境界線Lbとの間にある場合の基準点の位置を示している。
【0060】
そして、ステップS9において案内画面が表示される。すなわち、走行モード画面52又は粗掘削画面53が表示される。例えば粗掘削画面53が表示される場合には、図24(a)−(c)に示すように、車両本体1が上部境界線Laから上方へ移動するほど、粗掘削画面53の側面図53b上では表示対象面線78が徐々に下方へ移動するように表示される。また、粗掘削画面53の側面図53b上では油圧ショベル100のアイコン75は、上下方向の位置が固定されているように表示される(図24(b),(c)参照)。走行モード画面52の側面図52bも、粗掘削画面53の側面図53bと同様に表示される。
【0061】
ステップS10において車両原点PoのZ座標が上部境界線Laより上にないと判定された場合にはステップS12に進む。すなわち、図25に示すように、車両原点PoのZ座標が下部境界線Lbより下方にあると判定された場合にはステップS12に進む。
【0062】
ステップS12では、基準点PbのZ座標を上部境界線Laと下部境界線Lbとの平均位置から車両原点Poと下部境界線Lbとの間の距離を引いた位置に設定する。すなわち、図25に示すように、始点Psと終点Peとの中点PmのZ座標から、車両原点Poと下部境界線Lbとの間のZ軸方向の距離Dbを引いた値を、基準点PbのZ座標に設定する。
【0063】
そして、ステップS9において案内画面が表示される。すなわち、走行モード画面52又は粗掘削画面53が表示される。例えば粗掘削画面53が表示される場合には、図26(a)−(c)に示すように、車両本体1が下部境界線Lbから下方へ移動するほど、粗掘削画面53の側面図53b上では表示対象面線78が徐々に上方へ移動するように表示される。また、粗掘削画面53の側面図53b上では油圧ショベル100のアイコン75は、上下方向の位置が固定されているように表示される(図26(b),(c)参照)。走行モード画面52の側面図52bも、粗掘削画面53の側面図53bと同様に表示される。
【0064】
なお、上述したように、走行モード画面52又は粗掘削画面53が表示されているときには、基準点PbのY座標は車両原点PoのY座標に設定される(図16参照)。従って、車両本体1がY軸方向に移動する場合には、図27(a)−(c)に示すように、案内画面上では油圧ショベル100のアイコン75が固定され、表示対象面線78がY軸方向に移動するように表示される。
【0065】
4.特徴
本実施形態に係る表示システム28では、走行モード画面52及び粗掘削画面53では、図16に示すように、車両原点Poが上部境界線Laと下部境界線Lbとの間に位置するときには、表示範囲55の基準点PbのZ座標が上部境界線Laと下部境界線Lbとの間の中点PmのZ座標に固定される。このため、図22に示すように、車両原点Poが上部境界線Laと下部境界線Lbとの間で上方又は下方へ移動しても、案内画面において表示対象面線78は移動せずに、油圧ショベル100のアイコン75が上方又は下方へ移動するように表示される。そして、図24に示すように、車両原点Poが上部境界線Laよりも上方に移動すると、表示範囲55の基準点PbのZ座標が中点PmのZ座標よりも上方の位置に変更される。これにより、案内画面において表示対象面線78は下方に移動し、表示範囲55が車両本体1を追って上方へ移動するように表示される。また、図26に示すように、車両原点Poが下部境界線Lbよりも下方に移動すると、表示範囲55の基準点PbのZ座標が中点PmのZ座標よりも下方の位置に変更される。これにより、案内画面において表示対象面線78は上方に移動し、表示範囲55が車両本体1を追って下方へ移動するように表示される。これにより、目標面線92と車両本体1とが過度に小さく表示されることが抑えられる。このため、オペレータは、目標面70と車両本体1との位置関係を容易に把握することができる。
【0066】
さらに、車両原点Poの現在位置が上部境界線Laから上方に離れた距離に応じて、表示範囲55の基準点PbのZ座標が、中点PmのZ座標より上方の位置に変更される。また、車両本体1の現在位置が下部境界線Lbから下方に離れた距離に応じて、表示範囲55の基準点PbのZ座標が、中点PmのZ座標より下方の位置に変更される。これにより、案内画面をスムーズにスクロールさせることができる。
【0067】
5.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、各案内画面の内容は上記のものに限られず、適宜、変更されてもよい。また、表示コントローラ39の機能の一部、或いは、全てが、油圧ショベル100の外部に配置されたコンピュータによって実行されてもよい。また、目標作業対象は、上述したような平面に限らず、点、線、或いは3次元の形状であってもよい。表示入力装置38の入力部41は、タッチパネル式のものに限られず、ハードキーやスイッチなどの操作部材によって構成されてもよい。上記の実施形態では、作業機2は、ブーム6、アーム7、バケット8を有しているが、作業機2の構成はこれに限られない。
【0068】
上記の実施形態では、第1〜第3ストロークセンサ16−18によって、ブーム6、アーム7、バケット8の傾斜角を検出しているが、傾斜角の検出手段はこれらに限られない。例えば、ブーム6、アーム7、バケット8の傾斜角を検出する角度センサが備えられてもよい。
【0069】
繊細掘削画面54での基準点Pbの座標は、始点Psと終点Peとの中点Pmに限らず他の所定の位置に設定されてもよい。同様に、走行モード画面52及び粗掘削画面53において、車両原点Poが上部境界線Laと下部境界線Lbとの間に位置するときの基準点PbのZ座標は、始点Psと終点Peとの中点PmのZ座標に限らず他の位置のZ座標に設定されてもよい。
【0070】
上記の実施形態では、車両本体1の現在位置を示す車両原点Poがバケットピン15の位置に設定されているが、車両本体1の他の位置に設定されてもよい。
【0071】
上記の実施形態では、目標面70において始点Psと終点Peとの間の部分が表示対象面線として設定されているが、目標面70の全体が表示対象面線として設定されてもよい。
【0072】
各案内画面に含まれる画面は、上記のものに限られない。例えば、繊細掘削画面54において、上述した正面図54aに代えて油圧ショベル100の上面図が表示されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、案内画面に表示される表示対象面と掘削機械との位置関係を容易に把握することができる効果を有し、掘削機械の表示システム及びその制御方法として有用である。
【符号の説明】
【0074】
19 位置検出部
28 表示システム
42 表示部
44 演算部
46 地形データ記憶部
55 表示範囲
78 表示対象面線
La 上部境界線
Lb 下部境界線
Pb 基準点
100 油圧ショベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機械の現在位置と、掘削対象の目標地形の一部を示す表示対象面とを示す案内画面を表示する掘削機械の表示システムであって、
前記表示対象面の位置を示す地形データを記憶する記憶部と、
前記掘削機械の現在位置を検出する位置検出部と、
前記地形データに対して前記案内画面として表示する所定の表示範囲を設定し、前記地形データと前記掘削機械の現在位置とに基づいて、前記表示対象面の断面の上端の高さ位置を示す上部境界線の位置と、前記表示対象面の断面の下端の高さ位置を示す下部境界線の位置を算出し、前記掘削機械の現在位置と、前記上部境界線あるいは前記下部境界線との上下方向の位置関係によって、前記表示範囲の所定の基準点を設定する演算部と、
前記表示範囲に含まれる前記表示対象面の側面視における断面と前記掘削機械の現在位置とを示す前記案内画面を表示する表示部と、
を備える掘削機械の表示システム。
【請求項2】
前記演算部は、前記掘削機械の現在位置が前記上部境界線と前記下部境界線との間に位置するときには前記表示範囲の所定の基準点を前記上部境界線と前記下部境界線との間の所定位置に設定する、
請求項1に記載の掘削機械の表示システム。
【請求項3】
前記演算部は、前記掘削機械の現在位置が前記上部境界線よりも上方に位置するときには前記基準点を前記所定位置よりも上方に設定し、前記掘削機械の現在位置が前記下部境界線よりも下方に位置するときには前記基準点を前記所定位置よりも下方に設定する、
請求項1に記載の掘削機械の表示システム。
【請求項4】
前記演算部は、前記掘削機械の現在位置が前記上部境界線よりも上方に位置するときには、前記基準点を前記所定位置から上方に前記掘削機械の現在位置と前記上部境界線との間の距離を追加した位置に設定し、前記掘削機械の現在位置が前記下部境界線よりも下方に位置するときには前記基準点を前記所定位置から下方に前記掘削機械の現在位置と前記下部境界線との間の距離を追加した位置に設定する、
請求項3に記載の掘削機械の表示システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の掘削機械の表示システムを備える掘削機械。
【請求項6】
掘削機械の現在位置と、掘削対象の目標地形の一部を示す表示対象面とを示す案内画面を表示する掘削機械の表示システムの制御方法であって、
前記掘削機械の現在位置を検出するステップと、
前記表示対象面の位置を示す地形データに対して前記案内画面として表示する所定の表示範囲を設定するステップと、
前記地形データと前記掘削機械の現在位置とに基づいて、前記表示対象面の側面視における断面の上端の高さ位置を示す上部境界線の位置と、前記表示対象面の側面視における断面の下端の高さ位置を示す下部境界線の位置を算出するステップと、
前記掘削機械の現在位置と、前記上部境界線あるいは前記下部境界線との上下方向の位置関係によって、前記表示範囲の所定の基準点を設定するステップと、
前記表示範囲に含まれる前記表示対象面の側面視における断面と前記掘削機械の現在位置とを示す前記案内画面を表示するステップと、
を備える掘削機械の表示システムの制御方法。
【請求項7】
前記表示範囲の所定の基準点を設定するステップにおいて、前記掘削機械の現在位置が前記上部境界線と前記下部境界線との間に位置するときには前記表示範囲の所定の基準点を前記上部境界線と前記下部境界線との間の所定位置に設定する、
請求項6に記載の掘削機械の表示システムの制御方法。
【請求項8】
前記表示範囲の所定の基準点を設定するステップにおいて、前記掘削機械の現在位置が前記上部境界線よりも上方に位置するときには前記基準点を前記所定位置よりも上方に設定し、前記掘削機械の現在位置が前記下部境界線よりも下方に位置するときには前記基準点を前記所定位置よりも下方に設定する、
請求項6に記載の掘削機械の表示システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−233404(P2012−233404A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171802(P2012−171802)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【分割の表示】特願2011−36201(P2011−36201)の分割
【原出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】