説明

搬送システム

【課題】本発明は、大幅に搬送サイクルタイムを向上させた搬送システムを提供するものである。
【解決手段】ワーク10を直線的に搬送する搬送システム1であって、駆動機構がリニアモータ2から構成され、前記リニアモータ2の可動子5上に前記ワーク10を着脱する吸引パッド7を昇降可能にする上下機構6を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを高速に搬送する搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送システムには、製品の生産性向上のために、搬送時間を短縮することが望まれていた。そのために、従来の搬送システムには、複数台の多関節ロボットによりワークを受け渡しながら、ワークを搬送するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−111399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の搬送システムでは、ロボットアームを旋回させてワークの受け渡しを行うために、ロボットの一番根元の旋回軸駆動部に高い負荷がかかるため、旋回軸駆動部の減速機の寿命が短くなり、ロボットのメンテナンスが必要となり、稼働時間を含めたトータルとしての搬送サイクルが低下するといった問題が生じていた。
さらに、ロボットを旋回させて搬送する場合、ロボットアームのイナーシャが大きいために、高速化するには限界があり、搬送サイクルを向上させることができないといった問題が生じていた。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、大幅に搬送サイクルタイムを向上させた搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本願発明では、以下の構成にしたものである。
請求項1に記載の発明は、ワークを直線的に搬送する搬送システムであって、
駆動機構がリニアモータから構成され、前記リニアモータの可動子上に前記ワークを着脱する吸引パッドを昇降可能にする上下機構を備えたものである。
また、請求項2に記載の発明は、ワークを直線的に搬送する搬送システムであって、
駆動機構がリニアモータから構成され、前記リニアモータの可動子上に前記ワークを着脱する吸引パッドを昇降可能にする上下機構を備え、前記搬送システムが少なくとも2つ備えたものである。
また、請求項3に記載の発明は、前記搬送システムが、少なくとも2つ配置され、互いの前記搬送システムは、ワークの搬送方向に関して、前記ワークの中心を通る軸線について等間隔に配置されたものである、
請求項4に記載の発明は、前記搬送システムが、少なくとも2つ配置され、互いの前記搬送システムは、ワークの搬送方向に関して、前記ワークの略中心位置で前記ワークを受け渡すものである。
請求項5に記載の発明は、前記搬送システムが、少なくとも2つ配置され、何れか一方の前記搬送システムが前記ワークを搬送位置へ搬送している場合、他方の搬送システムは、待機位置へ移動しているものである。
請求項6に記載の発明は、前記搬送システムが、少なくとも2つ配置され、複数台の搬送システムが1台のコントローラにより制御されるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、搬送システムの駆動手段にリニアモータを用い、旋回軸を有さない構造としたことにより、ロボットのメンテナンスの必要がなくなり、連続可動が可能となる。 また、旋回機構を有さない構成として、ワークを搬送している間に、搬送していない搬送システムが待機位置へ移動するような構成としたことにより、搬送時願が短縮され、単位時間当りに搬送するワークの数も増え、サイクルタイムを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】走行台車の上面図
【図2】走行台車の正面図
【図3】リニアモータの上面図
【図4】上下駆動機構の正面図
【図5】複数台の走行台車を配置した上面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。本実施形態はワークを搬送する走行台車に適用した例について説明する。
図1に示す走行台車1の上面図および図2に示す側面図において、 リニアモータ2の可動子5上に上下駆動機構6が配置され、直動動作する。また、上下駆動機構6には、吸引パッド7が備えられている。吸引パッド7は不図示のワークを吸着して搬送する。また、上下駆動機構6とコントローラ8とはケーブル9で結線されている。
次に、動作について説明する。ワークが吸引パッド7に配置される際に、コントローラ8から上下駆動機構6に上昇指令が送信され、吸引パッド7は上昇する。ワークが吸引パッド7に載置されると、コントローラ8から吸引パッド7が吸引するように指令され、吸引パッド7は、ワークを吸引する。コントローラ8からリニアモータ2に移動するように指令され、吸引パッド7を備えた上下駆動機構6を所定の距離を移動する。ワークが移動すると、コントローラ8から吸引パッド7が吸引を解除するように指令され、ワークが取り出され、上下駆動機構6が下降するようにコントローラ8から指令される。吸引パッド7を備えた上下駆動機構6は、元の待機位置へリニアモータ2により移動される。
次に、リニアモータの詳細について、図3の上面図をもとに説明する。リニアモータ2は、可動子5と、永久磁石21と、ガイドレール22から構成されている。永久磁石21は、フレーム23の内側面に配列され、永久磁石21に空隙を介して対向するように不図示の電機子を備えた可動子5が配置されている。可動子5は移動方向に自在に支持されたカイドレール22に連結されている。このようにして、可動子5上に上下移動機構を備えたリニアモータ2が構成され、可動子5の両側面に永久磁石21を備えることにより高推力化することで、可動子5の高速移動を実現している。
次に、上下駆動機構の詳細について、図4をもとに説明する。上下駆動機構6は、モータ61の回転がモータ61の出力軸に取り付けられたプーリ62と入力プーリ64をベルト63を介して伝達され、入力プーリ64はボールねじ67と連結され、ボールねじ67は回転自在に軸受65で支持され、螺合するナット66で回転運動が直動に変換され、不図示の吸引パットを装着したテーブルを上下させる。また、テーブルはリニアガイド68で直動可能に案内されている。
このように、構成されたリニアモータおよび上下移動機構と、吸着パッドで構成された走行台車は、吸着パッド上にワークを載置して高速に搬送することが可能である。
次に、複数台の走行台車を配置したシステムについて図5を用いて説明する。本システムでは、ワークが紙面上左から右へ搬送されるようになっている例で説明する。
ワークを搬送するシステム構成は、ワーク10の中心を通る軸線13に対して、吸着パッド7が等間隔で、かつワーク10の重心位置近傍に配置されるように、走行台車11、12が配置される。また、ワーク10が受け渡される位置について、第1の走行台車11の吸着パッド7の搬送位置と第2の走行台車12の吸着パッド7の待機位置が、ワーク10の搬送方向に関してワーク10の重心位置近傍に配置されるように走行台車11、12が配置される。
ここで、図示しないが、ワーク10の搬送方向に関して両端には、ワーク10を載置するロボットと、ワーク10を取り出すロボットが配置され、ワーク10を載置するロボットによって、第1の走行台車11の吸引パッド7上にワーク10が載置され、ワーク10を取り出すロボットによって第2の走行台車12の吸引パッド7からワーク10が取り出される。これらのロボットには、一般的な産業用の垂直多関節ロボットでも良いし、特に、その形態は限定されるものではない。
次に、動作について説明する。不図示のロボットにより第1の走行台車11の吸引パッド7上にワーク10が載置されるように、コントローラより指令されると、上下移動機構にも吸引パッド7を上昇するように指令され、吸引パッド7上にワーク10が載置されると、吸引パッド7に吸引指令が出されるようなシーケンスで不図示のロボットからのワーク10の吸引パッド7への載置動作が行われる。
次に、ワーク10は、吸引パッド7が上下移動機構6により上昇された状態で、リニアモータ2により加減速動作により高速に直進移動する。
次に、図5に示すようにワーク7が第1の走行台車11と第2の走行台車12間で受け渡される場合、ワーク7が第1の走行台車11により受け渡し位置へ移動したら、第1の走行台車11のリニアモータ2から位置決め完了信号が不図示のコントローラへ送信され、位置決め完了信号を受け取ることで、第2の走行台車12の上下移動機構6が上昇し、ワーク10を吸引パッド7で吸引をする。吸引信号が第2の走行台車12の吸引パッド7へ送信されるとともに、第1の走行台車11の吸引パッド7へはワーク10の開放信号が送信され、吸引をやめるとともに上下移動機構6は下降するように不図示のコントローラから指令が出される。第1の走行台車11の上下移動機構6が下降位置へ移動完了信号が不図示のコントローラへ送信されると、第1の走行台車11のリニアモータ2へは初期位置への移動指令を、第2の走行台車12のリニアモータ2へはワーク10の搬送位置への移動指令を、不図示のコントローラから送信され、動作する。
このような動作を実現することで、第1の走行台車は、ワークを第2の走行台車へワークを受け渡し後、初期位置へ移動し、第2の走行台車は、ワークを搬送位置へ搬送するので、第2の走行台車がワークを搬送中に第1の走行台車が次のワークを受け取る位置へ移動する。第1の走行台車がワークを載置して搬送位置へ移動する際には、第2の走行台車は初期位置へ移動するようにどうさすることから、ワークは搬送状態の中で止まることなく、連続的に搬送され、第1の走行台車と第2の走行台車が連続的にワークを搬送することができることで搬送サイクルを2倍にすることができるものである。
尚、本実施例では、第1の走行台車および第2の走行台車を用いて説明したが、第nの走行台車といったように走行台車の台数が制限されるものではない。
【符号の説明】
【0010】
1 走行台車
2 リニアモータ
5 可動子
6 上下移動機構
7 吸引パッド
8 コントローラ
9 ケーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを直線的に搬送する搬送システムであって、
駆動機構がリニアモータから構成され、前記リニアモータの可動子上に前記ワークを着脱する吸引パッドを昇降可能にする上下機構を備えたことを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
ワークを直線的に搬送する搬送システムであって、
駆動機構がリニアモータから構成され、前記リニアモータの可動子上に前記ワークを着脱する吸引パッドを昇降可能にする上下機構を備え、前記搬送システムが少なくとも2つ備えたことを特徴とする搬送システム。
【請求項3】
前記搬送システムが、少なくとも2つ配置され、互いの前記搬送システムは、ワークの搬送方向に関して、前記ワークの中心を通る軸線について等間隔に配置されたことを特徴とする請求項2記載の搬送システム。
【請求項4】
前記搬送システムが、少なくとも2つ配置され、互いの前記搬送システムは、ワークの搬送方向に関して、前記ワークの略中心位置で前記ワークを受け渡すことを特徴とする請求項2記載の搬送システム。
【請求項5】
前記搬送システムが、少なくとも2つ配置され、何れか一方の前記搬送システムが前記ワークを搬送位置へ搬送している場合、他方の搬送システムは、待機位置へ移動していることを特徴とする請求項2記載の搬送システム。
【請求項6】
前記搬送システムが、少なくとも2つ配置され、複数台の搬送システムが1台のコントローラにより制御されることを特徴とする請求項2記載の搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−687(P2011−687A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146949(P2009−146949)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】