説明

携帯型動力作業機

【課題】ハンドルに振動が伝達され難く、作業者の操作の負担になり難い携帯型動力作業機を提供すること。
【解決手段】エンジン10と、作業部20と、メインパイプ30と、シャフト35と、ハンドル40とを備えた携帯型動力作業機1であって、一端がエンジン10に対して第1の防振機構53を介して接続される第1の保持部50と、一端がメインパイプ30に対して第2の防振機構73を介して接続される第2の保持部70と、第1の保持部50と第2の保持部70との間に保持されるスライドパイプ80と、スライドパイプ80に支持されるハンドルホルダ90とを備え、ハンドル40はハンドルホルダ90に支持されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型動力作業機に関し、特に携帯型動力作業機に設けられたハンドルの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯型動力作業機として、例えば刈払機等のように、エンジン等の駆動部が内蔵された本体部に、該駆動部によって駆動する例えば刈刃等の作業部がパイプに挿通されたシャフトを介して設けられているものが知られている。このような携帯型動力作業機では、パイプに対して作業者によって把持されるハンドルが設けられることで、その操作性が高められている。そして、このようなハンドルは、防振部材を備えることにより、駆動部や作業部からの振動が伝わり難くなるように構成されているものがある。
【0003】
例えば特許文献1にはカッター刃を回転駆動するエンジンを備えた刈払機が示されている。該刈払機では、エンジンカバーにクラッチハウジングが固着されている。そして、クラッチハウジングの先端に設けられる円筒部内には、防振ゴムを介して中間筒が挿嵌され、該中間筒内にエンジンとカッター刃とを連結するシャフト及びパイプの後端部が挿嵌されており、さらにパイプには、防振ゴムが配置されたハンドル支持部を介してハンドルが支持されている。
【0004】
このような刈払機によれば、確かにエンジン(クラッチハウジングの先端)とパイプとの間及びパイプとハンドルとの間に防振ゴムを備えているため、作業時における作業具の断続的な衝撃やエンジンの振動などがハンドルに伝達することをある程度は減少させることができるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−46087号公報(請求項1、段落番号0037〜0042、図2,3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された刈払機のように、単にクラッチハウジングの先端や、パイプとハンドルとの間に防振ゴムを配置したのみでは、作業中に生じる大きな振動等を緩衝しきれないため、作業者に伝達される振動を十分に減少させることができず、長時間の作業を行った場合などに作業者に負担がかかり作業効率の低下を招く虞があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題を一例として、ハンドルに振動が伝達され難く、作業者の操作の負担になり難い携帯型動力作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、本発明による携帯型動力作業機は、駆動部と、該駆動部の動力によって駆動する作業部と、前記駆動部と前記作業部との間に配置されたメインパイプと、該メインパイプ内に挿通され前記駆動部の動力を前記作業部に伝達するシャフトと、前記駆動部と前記作業部との間に配置されたハンドルとを備えた携帯型動力作業機であって、一端が前記駆動部に対して第1の防振機構を介して接続される第1の保持部と、一端が前記メインパイプに対して第2の防振機構を介して接続される第2の保持部と、前記第1の保持部及び前記第2の保持部に保持されるハンドル支持部とを備え、前記ハンドルは前記ハンドル支持部に支持されていることを特徴とする。
【0009】
ハンドルに伝達される振動は主に駆動部及び作業部によって発生するものである(また、これらの振動がメインパイプを経由して伝達されることもある)。上記のように、駆動部に対して第1の防振機構を介して接続された第1の保持部と、メインパイプに対して第2の防振機構を介して接続された第2の保持部とによって第1のフローティング機構を構成し、この第1のフローティング機構に対して、さらに別部材であるハンドル支持部を接続することにより第2のフローティング機構が構成されることになる。
【0010】
前記ハンドル支持部は、前記第1の保持部の他端に対して第3の防振機構を介し、前記第2の保持部の他端に対して第4の防振機構を介し、前記第1の保持部と前記第2の保持部との間に保持されていることを特徴とする。
【0011】
上記のように、駆動部に対して第1の防振機構を介して接続された第1の保持部と、パイプに対して第2の防振機構を介して接続された第2の保持部とによって第1のフローティング機構を構成し、この第1のフローティング機構において、第3の防振機構及び第4の防振機構によって構成される第2のフローティング機構を介してハンドル支持部を接続することにより、ハンドル支持部及びこれに支持されるハンドルは、2重のフローティング機構によって防振されることになる。
【0012】
また、前記ハンドル支持部は、前記第1の保持部及び前記第2の保持部に保持される中間部材と、該中間部材に支持され前記ハンドルを支持するハンドルホルダとからなり、前記中間部材は、前記ハンドルホルダの前記中間部材に対する回動を規制する回動規制機構を備え、前記ハンドルホルダは、前記第1の保持部と前記第2の保持部との間を移動可能に支持されていることを特徴とする。
【0013】
中間部材に対してハンドルホルダを移動させる際に、中間部材に設けられた回動規制機構により、中間部材の移動は回動規制機構に規制されることになる。これにより、ハンドルホルダは中間部材に対して回転移動してしまうことがなく、第1の保持部と第2の保持部との間において所定の移動のみが可能となるので、ハンドルホルダを移動させる際に、作業者の煩わしさが低減される。
【0014】
また、前記ハンドル支持部には吊りバンドを掛止するための吊り部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
ハンドル支持部に吊り部が設けられているため、吊り部はハンドル支持部の前後の移動にともなって移動することになり、ハンドルによる携帯型動力作業機の支持位置とベルトによる支持位置との相対距離は一定であり変わってしまうことがない。これにより、作業者の体格に合わせてハンドル支持部を移動させるのと同時に携帯型動力作業機を操作し易い位置に吊り部が移動し、作業者は良好に作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ハンドルに振動が伝達され難く、作業者の操作の負担になり難い携帯型動力作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る携帯型動力作業機の斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る携帯型動力作業機の左側(作業者が携帯したときに作業者からみた左側)からの部分拡大図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る携帯型動力作業機の上側からの部分拡大図である。
【図4】図3におけるA−A断面図である。
【図5】図4におけるB−B断面図である。
【図6】図4におけるC−C断面図である。
【図7】図4におけるD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。なお、本発明は、駆動部と作業部との間にシャフトが挿通されたメインパイプを有する携帯型動力作業機に広く適用可能であるが、ここでは本発明を刈払機に適用した場合の一例について説明する。
【0019】
図1に示すように、刈払機1は、例えば駆動部としてのエンジン10と、該エンジン10の動力によって回転駆動する刈刃による作業部20と、エンジン10と作業部20との間に配置されたメインパイプ30と、該メインパイプ30内に挿通されエンジン10の動力を作業部20に伝達するシャフト35(図4参照)と、エンジン10と作業部20との間に配置されたハンドル40とを有して構成される。ここで、ハンドル40は、エンジン10に支持された第1の保持部50とメインパイプ30に固定されたパイプホルダ60に支持された第2の保持部70とによって支持されるハンドル支持部によって支持されるものであり、該ハンドル支持部は、中間部材としてのスライドパイプ80と該スライドパイプ80に摺動可能に支持されたハンドルホルダ90によって構成される。
【0020】
なお、作業部20における刈刃の種類としては、例えば鋼鉄製の回転刈刃や、ナイロンコード等を備えたコードカッター等が使用可能であり、特に限定されるものではない。また、ハンドル40には作業者によって把持されるグリップ41R,41Lが設けられ、一方(図示例ではグリップ41R)にエンジン10の動力を調整するためのスロットルレバー43が装着されている。以下、特に断りのない限り、便宜上、作業部20側を前側、エンジン10側を後側として説明を行う。
【0021】
エンジン10と作業部20との伝動機構については周知技術であるため詳細は省略するが、例えば実施例では、図4に示すようにエンジン10におけるクラッチケース11内部に備えられた遠心クラッチ(図示省略)により、エンジン回転数に応じてクラッチシュー(図示省略)とクラッチドラム13が断続し、エンジン回転数の高い状態ではクラッチシューとクラッチドラム13が接続し、クラッチドラム13に伝わった動力はメインパイプ30の内部に設けられたシャフト35を介して作業部20に伝達されるものである。ここで、クラッチドラム13とシャフト35の動力伝達は、軸受15により回転自在に支承されたクラッチドラム13の出力軸17にシャフト35の後端が挿嵌されて連結されてなる。なお、クラッチケース11において、クラッチドラム13の出力軸17が臨む開口11aにメインパイプ30が挿嵌されているため、出力軸17に連結されたシャフト35はメインパイプ30内を挿通されることになる。メインパイプ30内には所定の間隔で軸受33が設けられ、この軸受33によってシャフト35が支承される。
【0022】
クラッチケース11の前側には、第1の保持部50が設けられている。この第1の保持部50は、後端から前端にかけて徐々に細くなる筒形状を呈し、後端側の開口50aがクラッチケース11を囲繞し、そのまま前端までメインパイプ30を囲繞している。なお、第1の保持部50はメインパイプ30を囲繞するものの、メインパイプ30とは所定の間隙をもっているため接触はしていない。クラッチケース11と第1の保持部50とは第1の防振機構を介して接続されるもので、図5に示すように、4個の防振部材53a,53b,53c,53d(総称する場合は「防振部材53」とする)によって接続されている。この第1の防振機構は例えば円筒形状の防振ゴムやコイルスプリングなどの弾性体が使用できる。
【0023】
図示例では、防振ゴム(防振部材53)がクラッチケース11の外周において前向きに設けられた嵌合部12とこの嵌合部12に対応して第1の保持部50の後端側の内周に設けられた嵌合部52とに嵌合することで、クラッチケース11と第1の保持部50とが第1の防振機構である防振ゴムを介して接続されている。このようにクラッチケース11と第1の保持部50とを第1の防振機構を介して接続することで、駆動部10によって生じた振動が第1の保持部50に伝達し難くなっている。なお、図示例では、防振部材53a,53bが上側に設けられ、防振部材53c,53dが下側に設けられており、上側と下側とで防振部材53同士の間隔が異なっているが(例えば、上側が狭く、下側が広い)、このように防振部材53の配置を上下や左右で変えることにより、共振等が抑制されやすくなり防振機能を高めることができる。また、第1の保持部50は、例えばポリアミド樹脂やABS樹脂等の合成樹脂によって形成されているため軽量であり、また振動を伝達し難いため第1の防振機構を介して伝達される振動をさらに減衰させることができる。
【0024】
図1乃至図4に示すように、このように構成された第1の保持部50の前側には、第1の保持部50と第2の保持部70とを連結する中間部材としてのスライドパイプ80が設けられ、このスライドパイプ80のさらに前側には第2の保持部70及びパイプホルダ60が設けられる。なお、パイプホルダ60の前方には上述した作業部20がメインパイプ30を介して設けられている。
【0025】
パイプホルダ60は、図1乃至図4に示すように、全体形状が略筒形状を呈し、例えば後側より前側が細く形成される。このパイプホルダ60はメインパイプ30の略中間位置に固定されて、第2の保持部70を支持するものである。図示例によるパイプホルダ60は、メインパイプ30の外周に嵌合する内筒部61が一体的に形成されている。該内筒部61の下端はスリット状の切欠部61aになっており、該切欠部61aの幅が切欠部近傍に設けられたネジ部材等の締結部材63(図2参照)によって狭められることにより、内筒部61がメインパイプ30に強固に固定されることになる。なお、図4において、締結部材63のための孔部63aを示す。
【0026】
パイプホルダ60の後端側には、第2の保持部70が設けられている。この第2の保持部70は、全体形状が略筒形状を呈しており、メインパイプ30が間隙をもって挿通されることで、メインパイプ30を囲繞するように配置されている。そして、前端側の形状がパイプホルダ60の後端側の形状と略同形となっており、後端側にはスライドパイプ80が連結されるための嵌合部75が形成されている。第2の保持部70は、パイプホルダ60に対して第2の防振機構を介して接続されており、メインパイプ30とは接触していない。これにより、第2の保持部70は、メインパイプ30に対してパイプホルダ60及び第2の防振機構を介して接続されることになる。なお、第2の防振機構は、例えば、図6に示すように4個の防振部材73a,73b,73c,73d(総称する場合は「防振部材73」とする)によって構成されている。防振部材は例えば円筒形状の防振ゴムやコイルスプリングなどの弾性体が使用できる。
【0027】
図示例では、防振部材73である円筒状の防振ゴムが第2の保持部70の前部開口に設けられた嵌合部72とこの嵌合部72に対応してパイプホルダ60の後端側に設けられた嵌合部62とに嵌合することで、第2の保持部70とパイプホルダ60とが第2の防振機構である防振ゴムを介して接続されている。このように第2の保持部70がパイプホルダ60に対して第2の防振機構を介して接続することで、メインパイプ30の振動が第2の保持部70に伝達し難くなっている。なお、図示例では、防振部材73a,73bが上側に設けられ、防振部材73c,73dが下側に設けられており、上側と下側とで防振部材73同士の間隔が異なっているが(例えば、上側が広く、下側が狭い)、このように防振部材73の配置を上下や左右で変えることにより、共振等が抑制されやすくなり防振機能を高めることができる。また、第2の保持部70は、例えばポリアミド樹脂やABS樹脂等の合成樹脂によって形成されているため軽量であり、また振動を伝達し難いため第2の防振機構を介して伝達される振動をさらに減衰させることができる。
【0028】
図1乃至図4に示すように、第1の保持部50と第2の保持部70との間には上述のようにスライドパイプ80が保持されている。図4及び図7に示すように、このスライドパイプ80は、所定の一様な外径を有する略筒型状を呈し、上部に回動規制機構として機能するレール上の凸部81が後端から前端まで連続して設けられる。スライドパイプ80と第1の保持部50との間及びスライドパイプ80と第2の保持部70との間はいずれも防振機構(第3の防振機構及び第4の防振機構)を介して接続されるもので、図示例では、防振部材としての防振ゴム83R、83Fによって接続されている。防振機構は防振ゴム以外にも例えばコイルスプリングなどの弾性体が使用できる。
【0029】
図示例では、第3の防振機構としての防振ゴム83Rが第1の保持部50の前部開口50bに設けられた嵌合部55に装着され、この防振ゴム83Rに対してスライドパイプ80の後端側80Rが嵌合することで、第1の保持部50とスライドパイプ80とが接続されている。これにより、防振ゴム83Rは嵌合部55の内周面とスライドパイプ80の外周面及び嵌合部55の後端面とスライドパイプ80の後端面との間隙を埋めるように介在することになる。
【0030】
また同様に、第4の防振機構としての防振ゴム83Fが第2の保持部70の後部開口70aに設けられた嵌合部75に装着され、この防振ゴム83Fに対してスライドパイプ80の前端側80Fが嵌合することで、第2の保持部70とスライドパイプ80とが接続されている。これにより、防振ゴム83Fは嵌合部75の内周面とスライドパイプ80の外周面及び嵌合部75の前端面とスライドパイプ80の前端面との間隙を埋めるように介在することになる。
【0031】
このように第1の保持部50の前端に対して第3の防振機構を介し、第2の保持部70の後端に対して第4の防振機構を介し、スライドパイプ80が保持されることで、エンジン10、作業部20及びメインパイプ30によって生じた振動がスライドパイプ80に伝達し難くなっている。なお、図示例では、防振ゴム83Rの前後方向の長さが防振ゴム83Fより大きく構成されており、これによって、より大きな振動を発生するエンジンに対してさらに防振機能を高めることができる。なお、防振ゴム83F,83Rはいずれも、上記機能を奏するために筒形状の一端側開口に軸方向に延在する環状部を有するように構成されているが、第1の保持部50及び第2の保持部70からスライドパイプ80に対する振動伝達が抑制されるという機能を奏するものであれば特に限定されるものではない。
【0032】
スライドパイプ80にはハンドル40を支持するためのハンドルホルダ90が設けられる。ハンドルホルダ90は、スライドパイプ80に対して前後方向に摺動可能に支持されるスライドパイプ保持部91とハンドル40を支持するハンドル保持部95とが設けられている。スライドパイプ保持部91の内周面92は、スライドパイプ80の外径よりやや大きな内径を有する略筒形状を呈し、上部にスライドパイプ80の凸部81に対応した凹部94が連続して設けられている。これにより、図7に示すように、ハンドルホルダ90がスライドパイプ保持部91に支持される場合に、凹部94がスライドパイプ80の凸部81に嵌るため、ハンドルホルダ90のスライドパイプ80に対する回転が規制され、レールの向きに沿った前後動のみが可能となるので、ハンドルホルダ90を移動させるときに作業者の煩わしさが低減される。また、スライドパイプ保持部91の下端はスリット状の切欠部91aになっており、該切欠部91aの幅が切欠部近傍に設けられた調節部93によって狭められることにより、スライドパイプ保持部91がスライドパイプ80に強固に固定されることになる。なお、図示例における調節部93はつまみを備えたネジ部材となっている。
【0033】
ハンドル保持部95は、ハンドル40の軸部45の上部を覆う上保持部95aと下部を覆う下保持部95bとからなる。実施例では、上保持部95aとスライドパイプ保持部91とが、例えばつまみを備えたネジ部材などの調節部96によって接続され、この上保持部95aとスライドパイプ保持部91によって下保持部95bが挟持されて構成されている。調節部96は、上保持部95aとスライドパイプ保持部91とは螺合するが、下保持部95bに対しては挿通されるものであり、下保持部95bは調節部96に対して遊嵌するものである。
【0034】
横方向に延在するハンドル40の軸部45は、上保持部95aに設けられた下向きの半円筒状の凹部97aと下保持部95bに設けられた上向きの半円筒状の凹部97bとによって略円筒状に形成される嵌合筒部97に嵌合される。これにより、ハンドル40は調節部96を弛めた状態で嵌合筒部97に対して回動可能となり角度調節ができる。なお、この際、下保持部95bの下端部とスライドパイプ保持部91の上端部との間に設けられたスプリング等の付勢手段99によって、下保持部95bが上方に付勢されているため、嵌合筒部97の内周面とハンドル40の軸部45との間に適度な摩擦が生じる。このため、調節部96を弛めた場合に、勝手にハンドル40の角度がずれてしまうことが抑制される。
【0035】
図2に示すように、ハンドルホルダ90において、スライドパイプ保持部91には作業者が肩に掛けるベルト(図示省略)を掛止するための吊り部100が設けられる。この吊り部100は、前後方向に所定の間隔をあけて設けられる複数の吊り穴101と、スライドパイプ保持部91に固定するための固定部102とが設けられ、該固定部102は例えばネジ等の締着部材のための穴部である。これにより、吊り部100はハンドルホルダ90の前後の移動にともなって移動するため、ハンドル40による支持位置とベルトによる支持位置との相対距離が大きく変わってしまうことがない。これにより、作業者の体格に合わせてハンドルホルダ90を移動させるのと同時に刈払機1を操作し易い位置に吊り部100が移動し、作業者は良好に作業を行うことができる。また、例えば平地から傾斜地に作業場所を移行する場合などに、スライドパイプ80に対してハンドルホルダ90をスライドさせハンドル40の位置を移動させても、違和感が生じ難く作業効率が低下し難い。さらに、吊り部100には吊り穴が複数設けられているため、ハンドル40による支持位置とベルトによる支持位置との距離を適宜変更することが可能となっている。これにより、作業者の体格や作業状況に係わらず、作業者は良好に作業を行うことができる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、駆動部がエンジンである例を示したが、これに限定されるものではなく、モータ等の駆動手段であっても構わない。
【0037】
また、防振機構として防振ゴムを使用した例を示したが、これに限定されず、スプリング等の付勢部材や、ゴム以外の例えばゲル状材料を含む高分子などのように、発生した振動(衝撃を含む)を吸収または抑制する部材や構成であれば構わない。
【0038】
また、第1の防振機構や第2の防振機構として防振ゴムが4個配置されている例を示したが、これに限定されず、3個以下や5個以上であっても構わないし、また弾性係数の異なる防振ゴム組み合わせて防振機構を構成しても構わない。弾性係数の異なる弾性ゴムを組み合わせることにより、共振等が抑制されやすくなり防振機能を高めることができる。
【0039】
また、スライドパイプとして、一様な外径を有する略筒型状を呈する例を示したが、第1の保持部と第2の保持部とを連結する中間部材としての機能を有すれば特に限定されるものではなく、例えば半円筒状であっても構わないし、棒状体やこれらの組合せによって構成されるものでも構わない。
【0040】
また、回動規制機構として、スライドパイプ80に対するハンドルホルダ90の回転の規制がスライドパイプ80に設けられた凸部とスライドパイプ保持部91に設けられた凹部94との嵌合による例を示したが、これに限定される物ではない。例えば、スライドパイプに凹部を設け、該凹部に嵌合する凸部をスライドハンドル支持部に設けても良いし、これ以外にも、スライドパイプの形状を例えば楕円として、スライドハンドル支持部の内周面をこれに対応させた楕円にするなど、回転が規制される構成であれば構わない。
【0041】
また、スライドパイプは例えばステンレスやアルミニウムなどの金属によって形成されることが好ましいが、これに限定されるものではない。例えば、所定の強度を満たしており、ハンドル及びハンドル支持部から捩れの力が加わっても安全に作業機全体を支持できるものであれば、合成樹脂等を用いても構わない。
【0042】
また、第1の保持部及び第2の保持部に使用される合成樹脂として、ポリアミド樹脂及びABS樹脂を例示したが、これに限定されないことは云うまでもなく、さらに、繊維強化樹脂等の他の樹脂であっても構わないし、ステンレスやアルミニウムなどの金属によって形成されることを妨げるものでもない。
【符号の説明】
【0043】
1 携帯型動力作業機
10 エンジン(駆動部)
20 作業部
30 メインパイプ
35 シャフト
40 ハンドル
50 第1の保持部
53 防振部材(第1の防振機構)
70 第2の保持部
73 防振部材(第2の防振機構)
80 スライドパイプ(中間部材)
81 凸部(回動規制機構)
83R 防振ゴム(第3の防振機構)
83F 防振ゴム(第4の防振機構)
90 ハンドルホルダ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と、該駆動部の動力によって駆動する作業部と、前記駆動部と前記作業部との間に配置されたメインパイプと、該メインパイプ内に挿通され前記駆動部の動力を前記作業部に伝達するシャフトと、前記駆動部と前記作業部との間に配置されたハンドルとを備えた携帯型動力作業機であって、
一端が前記駆動部に対して第1の防振機構を介して接続される第1の保持部と、
一端が前記メインパイプに対して第2の防振機構を介して接続される第2の保持部と、
前記第1の保持部及び前記第2の保持部に保持されるハンドル支持部とを備え、
前記ハンドルは前記ハンドル支持部に支持されていることを特徴とする携帯型動力作業機。
【請求項2】
前記ハンドル支持部は、前記第1の保持部の他端に対して第3の防振機構を介し、前記第2の保持部の他端に対して第4の防振機構を介し、前記第1の保持部と前記第2の保持部との間に保持されていることを特徴とする請求項1記載の携帯型動力作業機。
【請求項3】
前記ハンドル支持部は、前記第1の保持部及び前記第2の保持部に保持される中間部材と、該中間部材に支持され前記ハンドルを支持するハンドルホルダとからなり、
前記中間部材は、前記ハンドルホルダの前記中間部材に対する回動を規制する回動規制機構を備え、
前記ハンドルホルダは、前記第1の保持部と前記第2の保持部との間を移動可能に支持されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の携帯型動力作業機。
【請求項4】
前記ハンドル支持部には吊りバンドを掛止するための吊り部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の携帯型動力作業機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−254706(P2011−254706A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129257(P2010−129257)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】