説明

携帯飲料容器

【課題】表示シートの交換性、表示シート保持用の筒体の把持部利用、及び容器本体の肩部と筒体間の浸水及び意匠上の要求を満足し、容器本体の生産性をよくする。
【解決手段】容器本体2の肩部4と受け部材3とで挟持される樹脂製の筒体5とを備え、筒体5の内周に沿うように表示シートを載せ、受け部材3を外して筒体5を容器本体2に通し、受け部材3を容器本体2に下方から装着して挟持状態にすると、肩部4と筒体5との突き合わせ目が上面に生じないように肩部4が筒体5を上方から覆い、外瓶6との間に表示シートの挿入空間14を形成する筒体5の側周部分が把持部15となり、表示シートが外部から透視されるようにしつつ、肩部4を外瓶6に固着された樹脂部材12で構成することにより、外瓶6から肩部のバルジ加工を無くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空二重容器内に飲料を入れて持ち運びできる携帯飲料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の好みの表示シートで製品を飾れるようにした携帯飲料容器がある。この携帯飲料容器は、真空二重容器内に飲料を入れる容器本体と、この容器本体に下方から着脱される受け部材と、容器本体の肩部と受け部材とで挟持される樹脂製の筒体とを備えている。筒体の内周に沿うように表示シートを載せ、受け部材を外した容器本体の下方から該筒体を該容器本体に通し、該受け部材を該容器本体に装着することにより、挟持状態となる。この状態では、肩部と筒体との突き合わせ目が上面に生じないように肩部が筒体を上方から覆う。また、外瓶との間に表示シートの挿入空間を形成する筒体の側周部分は、製品を持つときの把持部となる。挿入空間に配置された表示シートは、筒体の透明樹脂部より外部から透視される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−66056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の携帯飲料容器では、容器本体の肩部が外瓶で形成されている。真空二重容器は、金属薄板製の外瓶と内瓶とを接合した二重構造になっている。筒体との間に表示シートをスムーズに挿入できる空間を形成し、筒体を肩部に突き合わせるため、外瓶の胴の外径を肩部よりも小さくして、筒体との間に表示シートをスムーズに挿入できる空間を形成している。結果的に、肩部は、容器本体の首及び胴部に対して外側に突出した部分となっている。この肩部は、外瓶の側周にバルジ加工で形成するような突出量、上下方向幅等になる。すなわち、肩部と筒体との突き合わせ目が上面に生じることは、上方から伝ってくる飲料水の浸水防止上、好ましくなく、また、隙間が上面に見えることは意匠上も好ましくない。このため、肩部と筒体との突き合わせ目が上面に生じないように肩部で筒体を上方から覆うことが求められる。さらに、外瓶との間に表示シートの挿入空間を形成する筒体の側周部分を把持部とするため、樹脂製の筒体の強度を肉厚で確保する必要がある。したがって、筒体の肉厚を小さくすることに限界があり、肩部と筒体との突き合わせ目が上面に生じないようにするには、その筒体の肉厚を上方から覆うことができる肩部の突出量等になり、バルジ加工でないと肩部を外瓶に成形することができなかった。
【0005】
しかしながら、携帯飲料容器用の外瓶に用いる金属薄板は、板厚が薄いものなので、上述のようなバルジ加工で肩部を成形すると、加工中に破れることがあった。また、バルジ加工後、真空二重容器内面のフッ素コーティング処理のように、真空二重容器の加熱を要する後工程の実施時、肩部に亀裂が生じることもあった。このように容器本体の生産性が悪いことから、その改善の要求が発生した。
【0006】
そこで、この発明の課題は、真空二重容器内に飲料を入れて持ち運びできる携帯飲料容器において、表示シートの交換性、表示シート保持用の筒体の把持部利用、及び容器本体の肩部と筒体間の浸水及び意匠上の要求を満足しながら、容器本体の生産性をよくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、この発明は、金属薄板製の外瓶を有する真空二重容器内に飲料を入れる容器本体と、この容器本体に下方から着脱される受け部材と、前記容器本体の肩部と前記受け部材とで挟持される樹脂製の筒体とを備え、前記筒体の内周に沿うように表示シートを載せ、前記受け部材を外した前記容器本体の下方から該筒体を該容器本体に通し、該受け部材を該容器本体に装着することにより挟持状態となり、この状態で、前記肩部と該筒体との突き合わせ目が上面に生じないように該肩部が該筒体を上方から覆い、前記外瓶との間に該表示シートの挿入空間を形成する該筒体の側周部分が把持部となり、かつ該挿入空間に配置された該表示シートが外部から透視される携帯飲料容器において、前記容器本体の肩部が前記外瓶に固着された樹脂部材からなる構成を採用した。
【0008】
肩部を外瓶に固着する樹脂部材に形成し、外瓶の最大外径を樹脂部材の肩部よりも小さくすることにより、外瓶の側周から肩部のバルジ加工を無くすことができる。したがって、この発明の構成によれば、真空二重容器内に飲料を入れて持ち運びできる携帯飲料容器において、表示シートの交換性、表示シート保持用の筒体の把持部利用、及び容器本体の肩部と筒体間の浸水及び意匠上の要求を従来と同じく満足しながら、容器本体の生産性をよくすることができる。
【0009】
樹脂部材には、他の部分を設けることもでき、樹脂部材の着色により製品の意匠設計の自由度を高めることができる。
【0010】
例えば、前記樹脂部材の前記肩部よりも低く内径側によった側周部分に、前記筒体の内周との間を密封するためのパッキンを保持するパッキン溝が形成されている構成を採用することができる。肩部の側周から突き合わせ目に伝ってきた飲料水が挿入空間に浸水することをパッキンで防ぐことができ、また、外瓶からパッキン溝が無くなるので、外瓶の成形も容易になる。
【0011】
例えば、前記真空二重容器の容器口を閉塞する栓体が螺着される雌ねじ部と、前記雌ねじ部から上方に延長され前記容器口の内外に亘る飲み口部とが前記樹脂部材に一体成形されている構成を採用することができる。外瓶に雌ねじ部を成形することが無くなり、成形自由度の高い樹脂部材に雌ねじ部を成形する方が雌ねじ部の設計自由度が高まる。
【発明の効果】
【0012】
上述のように、この発明は、真空二重容器内に飲料を入れて持ち運びできる携帯飲料容器において、表示シートの交換性、表示シート保持用の筒体の把持部利用、及び容器本体の肩部と筒体間の浸水及び意匠上の要求を従来と同じく満足しながら、前記容器本体の肩部が前記外瓶に固着された樹脂部材からなる構成を採用することにより、外瓶から肩部のバルジ加工を無くし、容器本体の生産性をよくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る携帯飲料容器の側面を図中左半分に示し、鉛直平面上の断面を図中右半分に示した半断面図
【図2】図1の肩部及び受け部材による筒体の挟持構造を示す部分拡大図
【図3】第2実施形態に係る携帯飲料容器の肩部及び受け部材による筒体の挟持構造を示す部分拡大図
【図4】第3実施形態に係る携帯飲料容器の肩部及び受け部材による筒体の挟持構造を示す部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の第1実施形態に係る携帯飲料容器は、図1に示すように、真空二重容器1内に飲料を入れる容器本体2と、この容器本体2に下方から着脱される受け部材3と、容器本体2の肩部4と受け部材3とで挟持される樹脂製の筒体5とを備える。
【0015】
真空二重容器1は、金属薄板製の外瓶6及び内瓶7を有する。外瓶6は、外瓶6の側周を成す胴部材8と、底板部材9とを接合して構成されている。なお、この発明において、側周とは、水平面に容器本体を立てた状態での任意の部材における上下軸回りの全周に亘る側面部分をいう。
【0016】
真空二重容器1の内面を形成する内瓶7の内面には、フッ素コーティング処理が施されている。胴部材8は、任意の水平断面が円環状に形成されている。胴部材8の側周に底キャップ部材10が強制嵌合されている。底キャップ部材10は、底板部材9及び図示省略のチップ管を外から覆っている。真空二重容器1の上面に開放された容器口には、環状の飲み口部材11が着脱可能に嵌着されている。
【0017】
容器本体2は、真空二重容器1及び真空二重容器1から非分離に機能する部材とからなる。図示例の容器本体2は、真空二重容器1と、真空二重容器1の下部に固着された底キャップ部材10と、外瓶6の胴部材8に固着された樹脂部材12とからなる。
【0018】
受け部材3は、底キャップ部材10の内周部に螺合により着脱可能になっている。
【0019】
筒体5の内側に図示省略の表示シートを載せる下受け部13が形成されている。筒体5は、透明樹脂の射出成形により形成されている。筒体5の内周に沿うように表示シートを巻いて載せ、受け部材3を外した容器本体2の下方から筒体5を容器本体2に通し、受け部材3を容器本体2の底キャップ部材10に装着することにより、筒体5が挟持状態となる。この状態で、肩部4と筒体5との突き合わせ目が上面に生じないように肩部4が筒体5を上方から覆い、外瓶6との間に表示シートの挿入空間14を形成する筒体5の側周部分が把持部15となり、かつ挿入空間14に配置された表示シートが透明の把持部15越しに外部から透視される。
【0020】
肩部4は、樹脂部材12に形成されている。肩部4は、樹脂部材12のうち、筒体5と上下方向に突き当たる領域の内径側の境界d上から外径側の部分からなる。肩部4と筒体5との突き合わせ目は、容器本体2の側面に生じる。この肩部4は、外瓶6の胴部材8に形成するならば、バルジ加工を要する外径D、上下方向幅、及び胴部材8の両端から離れた位置となっている。
【0021】
例えば、図示例では、肩部4の外径Dは、外瓶6の側周最上部、及び該最上部と同外径で樹脂部材12よりも低い部分に形成された円筒部から13mmの径方向突出量にすることができる。胴部材8を形成する金属薄板として、板厚0.3mmのステンレス薄板を用ることができる。樹脂部材12は、任意に着色して射出成形することができる。真空二重容器1の正規の飲料容量は、250ml〜350mlにすることができる。外瓶6の側周最上部の外径は、60mm以下にすることができる。肩部4は、胴部材8の外瓶6の側周最上部から下向きに20mm〜35mmの範囲に形成することができる。
【0022】
樹脂部材12の内周には、図2に拡大図示するように、強制嵌合用の凹部16とパッキン受け部17とが形成されている。外瓶6の側周には、凹部16が下方から強制嵌合される周方向の突条部18と、パッキン受け部17と共にパッキン19を圧縮する周方向のパッキン押さえ部20と、真空二重容器1の容器口を閉塞する栓体21を螺着するための雌ねじ部22とが突出させられている。
【0023】
樹脂部材12と外瓶6との間には、飲料水が上方から伝ってくることがある。表示シートや筒体5の透明部が浸水で汚されないよう、パッキン19で密封されている。外瓶6の突条部18と樹脂部材12の凹部16とは、強制嵌合により上下のみ掛かり合う任意の水平断面で円環状の単純な形態に形成されている。強制嵌合により圧縮状態に介在させられたパッキン19によって樹脂部材12の外瓶6に対する回転トルクが増大させられている。すなわち、樹脂部材12の回り止め性が強制嵌合による摩擦のみの場合と比して高められている。
【0024】
樹脂部材12の肩部4よりも低く内径側によった側周部分に、パッキン23を保持するパッキン溝24が形成されている。パッキン23は、筒体5を肩部4に突き当てた状態で筒体5の内周との間を密封し、肩部4の側周から突き合わせ目に伝ってきた飲料水が挿入空間14に浸水することを防ぐ。
【0025】
また、図1に示す状態から、受け部材3を外し、筒体5を肩部4に突き当て、挿入空間14に表示シートを配し、真空二重容器1内が空で、栓体21を装着し、筒体5の把持部15を持ち、上下逆様の容器本体2を考えたとき、パッキン23と筒体5の摩擦により筒体5が容器本体2に対してずり動かないようになっている。これにより、通常、真空二重容器1を空にして行う清掃時の分解や表示シートの交換時、誤って上下逆様で受け部材3を外しても、筒体5から容器本体2が不意に落下することを防止できる。
【0026】
上述のように、第1実施形態は、表示シートの交換性、表示シート保持用の筒体5の把持部15としての利用、及び容器本体2の肩部4と筒体5間の浸水及び意匠上の要求を満足しながら、樹脂部材12に肩部4を形成したので、外瓶6から肩部のバルジ加工を無くし、容器本体2の生産性をよくすることができる。
【0027】
なお、図2に拡大図示するように、前記の突条部18、パッキン押さえ部20、雌ねじ部22と肩部4の境界内径dとを比較すれば明らかなように、外瓶6の側周の最大外径(図示ではパッキン押さえ部20のところ)は、いずれも樹脂部材12の肩部4よりも小さくすることができる。このため、外瓶6の側周を成す胴部材8に対するパッキン押さえ部20等の加工は、ヘラ加工で形成することができる。外瓶6にバルジ加工部は存在しない。
【0028】
また、受け部材3と筒体5の側周下部との間に隙間25が確保されている。このため、受け部材3を筒体5の側周下部に密着させる場合と比して、受け部材3と筒体5の量産品間の寸法バラツキから、受け部材3の回転トルクが標準より大きくなる製品が生じない。係る隙間25から内側への浸水は、受け部材3に嵌着されたパッキン26により防止されている。
【0029】
また、筒体5を肩部4に突き当るまで挿入しない状態から受け部材3の螺着を開始しても、受け部材3と筒体5の側周下部の密着がないため、受け部材3で筒体5を押し上げながら60N・cm以下の軽い回転トルクで受け部材3の螺着を継続し、筒体5を肩部4に突き当てることができる。この間、パッキン26に筒体5の下端との摩擦があるため、パッキン26には、摩擦で捩れないよう、径方向を長手辺とする断面矩形状のものが採用されている。
【0030】
この発明の第2実施形態を図3に基いて説明する。以下、第1実施形態と同じに考えられる構成要素の説明を省略し、相違点を中心に述べる。図示のように、第2実施形態は、樹脂部材31の肩部32より内径側の下面部にパッキン溝33が形成され、そのパッキン溝33に嵌着されたパッキン34及び肩部32に筒体35が突き当るようになっている。第2実施形態は、パッキン34を樹脂部材31の下面部で上方へ凹入するパッキン溝33内に配したため、樹脂部材31の上下方向幅を第1実施形態よりも短くできる。このため、表示シートをより上方まで配置することができ、パッキン34が側面視で外部から見えなくなり、意匠性に優れる。
【0031】
この発明の第3実施形態を図4に基いて説明する。図示のように、第3実施形態は、栓体41が螺着される雌ねじ部42と、雌ねじ部42から上方に延長され真空二重容器43の容器口の内外に亘る飲み口部44とが樹脂部材45に一体成形されている。雌ねじ部42は、第1実施形態のようにヘラ加工による丸みをもった断面形状でなく、台形雌ねじとして形成されている。このように、外瓶46に雌ねじ部を成形することが無くなり、成形自由度の高い樹脂部材45に雌ねじ部42を成形する方が雌ねじ部の設計自由度が高まる。樹脂部材45は、真空二重容器43に対して上方から強制嵌合される。また、樹脂部材45は、雌ねじ部42でも外瓶46に密着するため、摩擦による回り止めも容易になる。パッキン溝47は、第2実施形態と同様であるが、第1実施形態のように形成することもできる。
【符号の説明】
【0032】
1,43 真空二重容器
2 容器本体
3 受け部材
4,32 肩部
5,35 筒体
6,46 外瓶
8 胴部材
9 底板部材
10 底キャップ部材
12,31,45 樹脂部材
13 下受け部
14 挿入空間
15 把持部
21,41 栓体
22,42 雌ねじ部
44 飲み口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄板製の外瓶を有する真空二重容器内に飲料を入れる容器本体と、この容器本体に下方から着脱される受け部材と、前記容器本体の肩部と前記受け部材とで挟持される樹脂製の筒体とを備え、前記筒体の内周に沿うように表示シートを載せ、前記受け部材を外した前記容器本体の下方から該筒体を該容器本体に通し、該受け部材を該容器本体に装着することにより挟持状態となり、この状態で、前記肩部と該筒体との突き合わせ目が上面に生じないように該肩部が該筒体を上方から覆い、前記外瓶との間に該表示シートの挿入空間を形成する該筒体の側周部分が把持部となり、かつ該挿入空間に配置された該表示シートが外部から透視される携帯飲料容器において、前記容器本体の肩部が前記外瓶に固着された樹脂部材からなることを特徴とする携帯飲料容器。
【請求項2】
前記樹脂部材の前記肩部よりも低く内径側によった側周部分に、前記筒体の内周との間を密封するためのパッキンを保持するパッキン溝が形成されている請求項1に記載の携帯飲料容器。
【請求項3】
前記真空二重容器の容器口を閉塞する栓体が螺着される雌ねじ部と、前記雌ねじ部から上方に延長され前記容器口の内外に亘る飲み口部とが前記樹脂部材に一体成形されている請求項1又は2に記載の携帯飲料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−97979(P2011−97979A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252719(P2009−252719)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】