説明

播種機の繰出装置

【課題】
繰出ロールの清掃ブラシが固定式であると、繰出溝の奥底に詰まった夾雑物に届かず、掃除し難く、繰出溝に蓄積する夾雑物により繰出溝の容量が減ってしまい、設定した量の種子が播種されなくなる。
【解決手段】
回転周面に繰出溝1を形成した繰出ロール2を繰出室3に軸装4回転して、種子を上側のホッパ5から供給室6を経て前記各繰出溝1へ勘合させながら下側の排出室7へ繰出す播種機において、前記繰出ロール2の排出室7に、繰出溝1幅の方向に亘って複数個の単位ブラシ8を並べて、各スプリング9によって独立的に弾発させて繰出溝1内へ押込可能の清掃ブラシ10を設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に種子を繰り出して播種する播種機の繰出装置に関するものであり、繰出装置の繰出溝に蓄積する種子や肥料などの粒状体や屑物を除去しながら作業を行うものである。
【背景技術】
【0002】
回転周面に複数の繰出溝を形成した繰出ロールを回転することによって、種子収容のホッパから供給される種子を各繰出溝に嵌合させて繰り出し、圃場に設定量ずつ播種する技術(例えば、特許文献1参照)が周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−136629号公報(第6頁、図5)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術には、繰出ロールの繰出溝に入り込み、溝内の夾雑物を除去する清掃ブラシが設けられているが、この清掃ブラシは固定式であり、繰出溝の奥底に付着、乃至詰まった夾雑物に届かず、掃除し難くなる。この状態のままでは、繰出溝に蓄積する夾雑物により繰出溝の容量が減ってしまい、設定した量の種子が播種されなくなる問題がある。
【0005】
また、清掃ブラシで取り切れない細かい夾雑物は、繰出溝の内部に残り易いため、作業終了後に掃除を行う際に繰出溝の中を手作業で掃除する必要があり、メンテナンス性が悪くなる問題がある。
【0006】
さらに、繰出溝に詰まりが生じているかどうかは、作業者が圃場に播種された種子を見なければ判らず、繰出溝の詰まりに気付かずに作業を進めてしまうと、播種量が極端に少ない場所や播種されない場所を生じ、作業者が手作業で播種し直さねばならず、作業者の労力が増大する問題がある。
【0007】
本発明は、これらの問題を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、回転周面に繰出溝1を形成した繰出ロール2を繰出室3に軸装4回転して、種子を上側のホッパ5から供給室6を経て前記各繰出溝1へ嵌合させながら下側の排出室7へ繰出す播種機において、前記繰出ロール2の排出室7に、繰出溝1幅の方向に亘って複数個の単位ブラシ8を並べて、各スプリング9によって独立的に弾発させて繰出溝1内へ押込可能の清掃ブラシ10を設けて構成する播種機の繰出装置とする。
【0009】
播種作業時は、ホッパ5に種子を収容させておき、繰出ロール2を駆動回転して、この供給室6部等のシャッタを開けて種子作用を行わせる。繰出ロール2の回転によって、周面に形成の繰出溝1が上側の供給室6に対向する毎に、ホッパ5から流下される籾種等の種子が前記繰出溝1内に収容されて、回転方向へ繰出される。
【0010】
この繰出溝1が繰出室3の下側部に回転されると、前記繰出溝1に収容していた種子を排出室7へ排出落下させて各繰出溝1毎の数粒の種子をまとめて播種する。この繰出溝1から種子を排出させた繰出ロール2の回転周面は、排出室7の回転方向後半部に位置する清掃ブラシ10の摺接によって清掃される。
【0011】
各繰出溝1内部に残留、乃至付着した種子はもとより、コーティング剤や、異物等が、掻き出され、繰出ロール2の回転周面から掃き落される。
特に、この清掃ブラシ10は、繰出溝1の横幅方向に沿って並設された複数の単位ブラシ8が、各スプリング9によって繰出ロール2面に向けて独立的に弾発されているため、繰出溝1に嵌合する清掃ブラシ10は、各単位ブラシ8毎に繰出溝1の溝底部に深い位置まで嵌合して掃除作動することができ、この溝底部に付着する異物の掃出を良好に維持させる。
【0012】
また、このような清掃ブラシ10は部分的に摩耗、損傷することがあるが、この摩耗、損傷した部分の単位ブラシ8のみ交換することも可能で、清掃性、及びメンテナンス性を良好に維持して、正確で、円滑な播種を行わせる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記繰出ロール(2)下側の排出室(3)部に、この繰出ロール(2)の下側後半部を覆うブラシプレート(11)を設け、このブラシプレート(11)には、前記単位ブラシ(8)をのぞませて上下揺動させる切欠口(12)を形成したことを特徴とする請求項1に記載の播種機の繰出装置とする。
【0014】
前記繰出ロール2の回転によって、この回転周面の各繰出溝1に嵌合される種子が排出室7へ繰出されて、この繰出後の繰出溝1内に清掃ブラシが嵌合摺接して掃除作用が行われる。
【0015】
このとき、単位ブラシ8がブラシプレート11の切欠口12から上側部の繰出溝1側へ突出して、この繰出溝1の底部の深部まで摺接して、掃除作用を有効に行わせる。
そして、この各単位ブラシ8の上下揺動の基部はブラシプレート11で覆って、上側から降りかかる種子や、摩埃、異物等が各単位ブラシ8間の上下揺間隙部等に介入するのを防止して、各単位ブラシ8の上下揺動を円滑に行わせる。
【0016】
また、このブラシプレート11の上面をできるだけ広く形成したり、または上下に傾斜する傾斜面の形態とする場合は、これら繰出溝1から掃き出した異物等の落下排出を速かに行わせて、各単位ブラシ8の間隙部への介入をより少くすることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記排出室(7)の繰出溝(1)の開放開始位置には、各繰出溝(1)の溝口部を開閉可能の溝口シャッタ(13)を設け、この溝口シャッタ(13)を、前記繰出ロール(2)の回転と一体回転の回転カム(14)によって開閉作動して、点播形態に播種することを特徴とする請求項1または2に記載の播種機の繰出装置とする。
【0018】
前記のとおり、繰出ロール2の回転によって、各繰出溝1に嵌合された種子が下側の排出室7側へ繰出される。この繰出溝1が排出室7へ下動して開放するときは、外周部が溝口シャッタ13で溝口部が覆われていて、繰出溝1内の種子が排出室7へ排出落下されないように保持されている。
【0019】
そして、この繰出ロール2と一体的に回転する回転カム14によって溝口シャッタ13が外方へ押開かれると、前記繰出溝1内に収容保留されていた種子が一斉に揃って排出落下される。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記繰出ロール(2)を軸装(4)する繰出室(3)と、この上側の種子収容のホッパ(5)との間の供給室(6)の外周部に、この供給室(6)部を加熱する加熱装置(15)を設けたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の播種機の繰出装置とする。
【0021】
前記繰出ロール2の回転によって、この繰出溝1に嵌合されて繰出される種子は、ホッパ5から供給室6を経て繰出溝1内へ流入される間に、この供給室6の外周部に設けられた加熱装置15によって加熱されて、水分蒸発され乾燥される。
【0022】
従って、この供給室6を流下される種子は乾燥通路室内を落下されるため、相互に付着し難く、種子相互間の独立性を維持した状態で、繰出溝1内へ嵌合されて、この繰出溝1から排出室7への繰出排出作用を円滑に行わせる。
【0023】
このような種子の繰出作用は、種子の表面をコーティング剤で被覆した形態のカルパー種子や、コーティング剤の繋ぎに焼石灰を混合する鉄粉コーティング種子を用いる場合において、一層効果的になる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の発明の効果は、繰出しロール2の回転周面に清掃ブラシ10を接触させ、この清掃ブラシ10をスプリング9によって上下動させることにより、繰出溝1が通過する際に、清掃ブラシ10が繰出溝1の内部に接触する構造となるため、繰出溝1に溜まった粒状体の破片等の夾雑物を清掃ブラシ10で除去することができるので、繰出溝1に常に設定量の粒状体が投入され、粒状体の供給量が少ない場所や粒状体が供給されない場所が生じることが防止される。
【0025】
また、清掃ブラシ10を複数に分割して単位ブラシ8として各々スプリング9で独立的に弾発する構成したことにより、摩耗が激しい部分の単位ブラシ8だけを交換すればいいので、清掃ブラシ10の摩耗の偏りが生じやすい作業環境であっても耐久性を向上することができる。
【0026】
請求項2に記載の発明の効果は、請求項1記載の発明の効果に加えて、回動支持プレート83と、前記繰出ロール2の下側に切欠口12を有するブラシプレート11を設け、このブラシプレート11の下側には、回動支持プレート83を上方に付勢するトルクスプリング9を設けて構成したことにより、清掃ブラシ10が繰出しロール2の回転に合わせて前記切欠口12から繰出溝1に自動的に出入りする構成となるため、清掃ブラシ10が繰出しロール2の回転を妨げることなく繰出溝1から夾雑物を除去することができるので、繰出溝1に夾雑物が蓄積して容量が減ることが防止され、粒状体の供給精度が向上する。
【0027】
また、回動支持プレート83をブラシプレート11の下部に設けたことにより、繰出ロール2から粒状体が繰り出される際に飛散する夾雑物が清掃ブラシ上下動機構Cに降りかかることを防止できるので、清掃ブラシ上下動機Cの掃除に手間がかからず、作業者の労力が軽減される。
【0028】
そして、ブラシプレート11に形成した切欠口12の内部に清掃ブラシ10を設けたことにより、清掃ブラシ10を繰出ロール2及び繰出溝1に接触させることができるので、夾雑物の除去が適切に行われて繰出溝1の容量が減ることが防止され、粒状体の供給精度が向上する。
【0029】
請求項3に記載の発明の効果は、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、前記繰出ロール2の回転による種子の繰出作用は、所定位置まで繰出し溝1から種子が出ることを防止し、所定位置まで所定量の種子を繰出し溝1から放出させるシャッタ13を設けたことにより、種子を点播する際、種子を所定量ずつ集中させて圃場に供給することができるので、種子の供給精度が向上する。
【0030】
また、繰出しロール2の回転軸4にシャッタ13を所定のタイミングで回動させる回転カム14を設けたことにより、回転カム14がシャッタ13に当たるとき以外はシャッタ13は繰出し溝1を塞いでいるので、異なるタイミングでの種子の繰出が防止される。
【0031】
特に、点播形態で作業を行なう際、播種を行い易くすることができる。
請求項4に記載の発明の効果は、請求項1から3の何れか1項に記載の発明の効果に加えて、ホッパ5の下部で供給室6の外部に加熱装置15を配置したことにより、ホッパ5に貯留した種子を加熱して水分を蒸発させることができるので、種子が になることが防止され、種子の がホッパと繰出しロール2との間に詰まってしまうことが防止される。
【0032】
また、種子が小さな になって繰出しロール2に供給され、種子の繰出し量が多くなり過ぎることが防止されるので、種子の供給量が安定する。
そして、加熱装置15をホッパ5外部に設けたことにより、種子が過度の熱によって変質することを防止できるので、供給される種子が確実に円滑に繰出されて、播種される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】播種機の側面図。
【図2】播種機の播種装置フロート部の平面図
【図3】(A)播種機の繰出装置部の側面図、(B)播種機の清掃ブラシ部の平面図
【図4】播種機の繰出ロール部の正断面図
【図5】一部別実施例を示す繰出装置部の側面図
【図6】(A)ホッパ内の分散網部の側面図、(B)ホッパ内の分散網部の平面図、(C)分散網部の支持ロッド部の側面図
【図7】ホッパ内の分散傘部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1で示すとおり、車体16の前後方向の略中央部に作業者が搭乗する作業座席31を設け、該作業座席31の前方に車体16を操作するハンドル34を設け、該ハンドル34の操作によって左右方向に操向される左右一対の前輪17を設け、車体の後部左右両側にリアファイナルケース21を設け、該リアファイナルケース21に設ける車軸22に左右一対の後輪18を軸着する。
【0035】
そして、前記作業座席31の下部にエンジンカバー30を設け、該エンジンカバー30の内部にエンジン23を設け、該エンジン23によって駆動して走行する乗用の四輪駆動式の走行車体16を構成する。
【0036】
該走行車体18の後方に、昇降シリンダ40の伸縮によって昇降回動されるリフトリンク機構41を設け、該リフトリンク機構41を介して、圃場に種子を播く播種装置19を連結する。また、前記走行車体16の前側下部には、ミッションケース24及び油圧無段変速装置26を設け、該ミッションケース24及び油圧無段変速装置26には、前記エンジン23からベルト伝動によって駆動力を伝達する。
【0037】
前記ミッションケース24の下側部の左右両側部には、夫々フロントアクスルケース27が設けられ、該左右フロントアクスルケース27の端部に、前記左右の前輪17を軸着する。そして、作業座席31及びハンドル34の下方で且つ周囲に、作業者が移動するフロアステップ35を設け、該フロアステップ35の前側に、前記ハンドル34や各種運転操作用の操作レバー等を配置するステリングポスト32を配置する。
【0038】
前記ミッションケース24の後部には、機体後方に向かって出力伝動する左右の後輪ドライブシャフト28を設け、該後輪ドライブシャフト28からリアファイナルケース21に駆動力を伝動して後輪18を駆動回転させる構成とする。これに加えて、ミッションケース24には、前記播種装置19に駆動力を供給するPTO軸29を設け、機体後部に設けるリアフレーム42の上部に設ける施肥装置33、並びに前記播種装置19などに駆動力を伝動する構成とする。
【0039】
前記播種装置19の下部には、圃場面を滑走して均すフロート46を設ける。該フロート46は、圃場面の深浅により上下回動し、上方回動量または下方回動量が一定以上になると油圧バルブ(図示省略)を作動させて前記昇降シリンダ40を伸縮作動させ、前記リフトリンク機構41を上下動させて播種装置19の播種高さを変更する、播種作業位置の左右方向中央部に設けるセンターフロート47と、この左右両側のサイドフロート48とで構成する。該左右のサイドフロート48は、センタフロート47の前端部よりも後側に配置する。
【0040】
本例では、図2で示すとおり、センターフロート47及び左右のサイドフロート48のそれぞれの左右両側の滑走均平跡の土壌面位置に播種を行なう、六条分の播種形態を示している。
【0041】
そして、図1及び図3で示すとおり、前記センタフロート47及び左右のサイドフロート48を支持する播種フレーム36を左右方向に亘って設け、該播種フレーム36の上部に六条分の種子を一条ごとに貯留する種子ホッパ5と、該種子ホッパ5から送り出される種子を所定量ずつ受けて圃場に繰り出す各条の繰出装置20と、該繰出装置20から繰り出された種子を落下案内送風機37等を配置して、播種装置19を構成する。
【0042】
前記センタフロート47及びサイドフロート48の下部には、播種後の種子が風などで移動することを防止する前後方向直線状の溝を圃場に切る左右一対の作溝器39を設ける。センタフロート47の作溝器39はセンタフロート47の後側寄りに設け、サイドフロート48の作業器39はサイドフロート47の前側寄りに設け、全ての作溝器49が左右方向に略一直線状に並ぶ構成とする。
【0043】
該播種装置19の前側には、図1で示すとおり、前記センタフロート47と左右のサイドフロート48の前側部の圃場面に接触し、圃場面の凹凸を回転力で均らして平坦に整地ロータ38を配置する。該整地ロータ38は、センタフロート47の前側を整地するセンターロータ42と、該センターロータ47の左右両側に前端部を接続する左右のロータ伝動ケース43と、該左右のロータ伝動ケース43の後端側に接続する左右のサイドフロート48の前側を整地するサイドロータ45で構成する。そして、前記左右のロータ伝動ケース43の左右どちらか一側と、同じ側の前記リアファイナルケース21の間にロータ伝動軸49を設ける。
【0044】
前記整地ロータ38は、播種装置19と共にリフトリンク機構41の上下に伴い昇降される構成とする。なお、整地ロータ38は、独立して上下位置を変更する構成としても良い。
【0045】
上記構成により、圃場面の凹凸を整地ロータ38及びフロート46で平坦に均した圃場面に播種することができるので、播種装置19の播種筒44の下端部と圃場面の距離が近くなり過ぎ、播種した際に跳ねた圃場の土が播種筒44内に入り込むことを防止できるので、入り込んだ土に種子が付着して播種されなくなることが防止され、播種精度が向上する。
【0046】
そして、播種筒44の下端部と圃場面の距離が離れ過ぎ、種子が設定よりも広範囲に播種されることを防止できるので、設定量の種子を設定範囲内に播種することができ、作物の生育が安定すると共に、播種が直線状に行われるので、生育中の農薬や肥料散布等の管理作業や収穫作業の能率が向上する。
【0047】
さらに、センタフロート47をサイドフロート48よりも機体前側に配置したことにより、圃場の深浅の検出位置が機体前側に寄るため、播種装置19が圃場の深浅に合った高さに移動してから種子の繰り出しを行うことができるので、播種精度が向上する。これに加えて、センタフロート47の前側の左右幅を広く取ることができるので、圃場の深浅の検出精度が向上する。
【0048】
図3で示すとおり、前記播種装置19は、回転周面に複数の繰出溝1を形成した繰出ロール2と、該繰出ロール2の回転周面に接触して繰出ロール2及び繰出溝1を清掃する清掃ブラシ10を設けて構成する、種子ホッパ5から落下する種子を設定量ずつ繰り出す繰出装置20を、前記種子ホッパ5と播種筒44の上下間に、各条ごとに内装する。
【0049】
各繰出装置20の播種筒44の下端部は、センタフロート47及びサイドフロート48上の案内板の内側部に臨ませて配置し、前記作溝器39が圃場面に形成する播種溝内に案内する構成とする。
【0050】
なお、播種装置19で播種する種子は、種子の発芽及び成長に必要な栄養分や酸素等を供給する成長促進剤や、種子が鳥獣による食害に遭うことを防止する鉄粉でコーティングすることが多い。しかしながら、これらのコーティング剤は乾燥や振動により崩れやすく、剥離したコーティング剤が繰出溝1に蓄積して、繰出溝1の容量を減らしてしまい、設定どおり施肥作業が妨げられる問題がある。
【0051】
前記走行車体16を走行しながら繰出ロール2を回転することにより、この繰出ロール2の各繰出溝1に種子ホッパ5から供給される種子を投入し、繰出ロール2が回転して繰出溝1が落下位置に到達すると、繰出溝1に投入された所定量の種子が重力により落下し、播種筒44に繰り出されて圃場に播種される。
【0052】
そして、繰出ロール2が回転して非繰出作用部に移動し、種子を繰り出し終えた繰出溝1が繰出ロール2の下方に設けた清掃ブラシ10に接触すると、繰出ロール2に接触している清掃ブラシ10が清掃ブラシ上下動機構Cの付勢力により繰出溝1内に入り込み、繰出溝1の奥部に残っている種子や、種子を被覆していた成長促進剤や鉄粉の残屑を掻き取り掃除する。
【0053】
また、掃除ブラシ10が清掃ブラシ上下動機構Cによって上方に付勢されて繰出ロール2に常時接触していることにより、種子ホッパ5から送り出される種子と共に降り注ぐ、剥離したコーティング剤の粒子を除去することができるので、作業後に繰出ロール2の清掃を行なう必要がなく、メンテナンス性が向上する。
【0054】
そして、清掃ブラシ10は、繰出ロール2の回転周面に形成した繰出溝1が通過する際には、清掃ブラシ上下動機構Cによって清掃ブラシ10を先端部が繰出溝1の内部に接触するまで移動させることができるので、繰出溝1の奥部に残る夾雑物を確実に除去することができ、メンテナンス性が向上すると共に、繰出溝4の容量が変わることが防止され、播種精度が向上する。
【0055】
ここにおいて、回転周面に繰出溝1を形成した繰出ロール2を繰出室3に軸装4回転して、種子を上側のホッパ5から供給室6を経て前記各繰出溝1へ嵌合させながら下側の排出室7へ繰出す播種機において、前記繰出ロール2の排出室7に、繰出溝1幅の方向に亘って複数個の単位ブラシ8を並べて、各スプリング9によって独立的に弾発させて繰出溝1内へ押込可能の清掃ブラシ10を設けて繰出装置を構成する。
【0056】
播種作業時は、ホッパ5に種子を収容させておき、繰出ロール2を駆動回転して、この供給室6部等のシャッタを開けて種子作用を行わせる。繰出ロール2の回転によって、周面に形成の繰出溝1が上側の供給室6に対向する毎に、ホッパ5から流下される籾種等の種子が前記繰出溝1内に収容されて、回転方向へ繰出される。この繰出溝1が繰出室3の下側部に回転されると、前記繰出溝1に収容していた種子を排出室7へ排出落下させて各繰出溝1毎の数粒の種子をまとめて播種する。
【0057】
この繰出溝1から種子を排出させた繰出ロール2の回転周面は、排出室7の回転方向後半部に位置する清掃ブラシ10の摺接によって清掃される。各繰出溝1内部に残留、乃至付着した種子はもとより、コーティング剤や、異物等が、掻き出され、繰出ロール2の回転周面から掃き落される。
【0058】
特に、この清掃ブラシ10は、繰出溝1の横幅方向に沿って並設された複数の単位ブラシ8が、各スプリング9によって繰出ロール2面に向けて独立的に弾発されているため、繰出溝1に嵌合する清掃ブラシ10は、各単位ブラシ8毎に繰出溝1の溝底部に深い位置まで嵌合して掃除作動することができ、この溝底部に付着した異物の掃出を良好に維持させる。
【0059】
また、このような清掃ブラシ10は部分的に摩耗、損傷することがあるが、この摩耗、損傷した部分の単位ブラシ8のみ交換することも可能で、清掃性、及びメンテナンス性を良好に維持して、正確で、円滑な播種を行わせる。
【0060】
さらに、前記繰出ロール2下側の排出室3部に、この繰出ロール2の下側後半部を覆うブラシプレート11を設け、このブラシプレート11には、前記単位ブラシ8をのぞませて上下揺動させる切欠口12を形成する。
【0061】
前記繰出ロール2の回転によって、この回転周面の各繰出溝1に嵌合される種子が排出室7へ繰出されて、この繰出後の繰出溝1内に清掃ブラシが嵌合摺接して掃除作用が行われる。
【0062】
このとき、単位ブラシ8がブラシプレート11の切欠口12から上側部の繰出溝1側へ突出して、この繰出溝1の底部の深部に摺接し、掃除作用を有効に行わせる。
そして、この各単位ブラシ8の上下揺動の基部はブラシプレート11で覆って、上側から降りかかる種子や、摩埃、異物等が各単位ブラシ8間の上下揺間隙部等に介入するのを防止して、各単位ブラシ8の上下揺動を円滑に行わせる。
【0063】
また、このブラシプレート11の上面をできるだけ広く形成したり、又は上下に傾斜する傾斜面の形態とする場合は、これら繰出溝1から掃き出した異物等の落下排出を速かに行わせて、各単位ブラシ8の間隙部への介入をより少くすることができる。
【0064】
そして、前記排出室7の繰出溝1の開放開始位置には、各繰出溝1の溝口部を開閉可能の溝口シャッタ13を設け、この溝口シャッタ13を、前記繰出ロール2の回転と一体回転の回転カム14によって開閉作動して、点播形態に播種する。
【0065】
前記のとおり、繰出ロール2の回転によって、各繰出溝1に嵌合された種子が下側の排出室7側へ繰出される。この繰出溝1が排出室7へ下動して開放するときは、外周部が溝口シャッタ13で溝口部が覆われていて、繰出溝1内の種子が排出室7へ排出落下されないように保持されている。
【0066】
そして、この繰出ロール2と一体的に回転する回転カム14によって溝口シャッタ13が外方へ押開かれると、前記繰出溝1内に収容保留されていた種子が一斉に揃って排出落下される。
【0067】
また、前記繰出ロール2を軸装4する繰出室3と、この上側の種子収容のホッパ5との間の供給室6の外周部に、この供給室6部を加熱するヒータ15を設ける。
前記繰出ロール2の回転によって、この繰出溝1に嵌合されて繰出される種子は、ホッパ5から供給室6を経て繰出溝1内へ流入される間に、この供給室6の外周部に設けられたヒータ15によって加熱されて、水分蒸発され乾燥される。
【0068】
従って、この供給室6を流下される種子は乾燥通路室内を落下されるため、相互に付着し難く、種子相互間の独立性を維持した状態で、繰出溝1内へ嵌合されて、この繰出溝1から排出室7への繰出排出作用を円滑に行わせる。このような種子の繰出作用は、種子の表面をコーティング剤で被覆した形態のカルパー種子や、コーティング剤の繋ぎに焼石膏を混合した鉄粉コーティング種子を用いるとき、一層効果的になる。
【0069】
図3(A)及び(B)で示すとおり、前記ロールケース50の左右両側下部に支持ブラケット80を設け、該支持ブラケット80間にブラシプレート11を設ける。該ブラシプレート11の機体前部には切欠口12を形成し、ブラシプレート11を平面視でコの字状に形成する。
【0070】
そして、前記ブラシプレート11の下面で且つ切欠口12の左右両側に、前後方向に長いL字形状の取付板85をボルト86でそれぞれ固定し、該左右の取付板85の左右間に回動軸87を取り付ける。
【0071】
また、該回動軸87に複数の回動支持プレート(回動支持部)83を上下回動自在に設け、該各回動支持プレート83の基部側に回動支持プレート83を上方に付勢するトルクスプリング9をそれぞれ回動軸87に配置する。該回動支持プレート83の基部側には、トルクスプリング9が入り込む二又形状の間隔を形成する。
【0072】
さらに、前記各回動支持プレート83の前端部に、清掃ブラシ10をそれぞれ設け、該複数の単位ブラシ8の上端部を切欠口12の左右幅内で且つ上方に突出する配置として、清掃ブラシ上下動機構Cを構成してもよい。
【0073】
なお、回動支持プレート83の前端部以外は、前記ブラシプレート11の下方に位置する構成となる。また、回動支持プレート83の清掃ブラシ10を取り付ける側には、隣接する回動支持プレート83及び取付板85の間に空間部が形成される、プレート切欠口12を形成する。
【0074】
このとき、図4で示すとおり、前記繰出ロール2の外周面に、繰出溝1の左右幅を調節する幅調節ロール91を設け、該幅調節ロール91の雄螺子溝を切った調節回転軸92を、雄螺子溝93を切ったロール軸4と螺子溝同士を合わせて設ける。前記幅調節ロール91は、繰出ロール2とは別に調節回転軸92の回転により該調節回転軸92に沿って左右方向に移動する基部と、該基部に対して回動自在で且つ基部と共に左右方向に移動する突子部を備えている。該突子部は、繰出ロール2の繰出溝1に嵌り、繰出ロール2と一体で回転する。
【0075】
これに加えて、該調節回転軸92の雄螺子溝93を切っていない側に、調節駆動モータ94を設ける構成とする。
上記構成により、複数の回動支持プレート83がトルクスプリング9によって上方に付勢され、複数の単位ブラシ8の先端部が繰出ロール2の表面に常時接触しているため、繰出ロール2の表面に接触して夾雑物を除去することができるので、作業者が掃除が不要となり、作業者の労力が軽減されると共に、メンテナンス性が向上する。
【0076】
そして、繰出溝1が複数の清掃ブラシ10を設けた位置を通過する際は、トルクスプリング9の付勢力により各単位ブラシ8の先端部が繰出溝1の奥部に接触させられるため、繰出溝1に蓄積する種子や夾雑物を除去することができ、繰出溝1の容量が減少することが防止され、播種精度が向上する。
【0077】
また、回動支持プレート83の上部をブラシプレート11で覆い、このブラシプレート11の切欠口12から各単位ブラシ8を上方に突出させて回動支持プレート83に設けたことにより、繰出溝1から除去された種子や夾雑物が回動支持プレート83に降り注ぐことを防止できるので、回動支持プレート83の掃除に要する労力が軽減されてメンテナンス性が向上する。
【0078】
特に、回動支持プレート83と回動軸87、及びトルクスプリング9の間には、回動動作時にコーティング剤の粒子が入り込みやすいため、ブラシプレート11粒子の降り注ぎを防止することにより、回動支持プレート83の上下動が正常に行なわれ、種子や夾雑物の除去が確実になる。
【0079】
コーティング剤の中には金属や樹脂に対して高い腐食性をもつものがあるので、細かい隙間に入り込むことを防止する本構成であれば、播種装置19の耐久性も向上する。
さらに、複数の単位ブラシ8は切欠口12よりも上方に突出しているので、各単位ブラシ8の先端部が摩耗して交換が必要になった際、作業者は交換対象の清掃ブラシ10を引き上げて外すことができるので、交換作業の能率が向上する。この単位ブラシ8は、回動支持プレート83の端部に取付穴を形成し、その取付穴に挿し込む構成とする。
【0080】
また、各単位ブラシ8を取り付けた回動支持プレート83を別々に回動させることができるので、幅調節ロール91を用いて繰出ロール2の繰出溝1の左右幅を変更した際、繰出溝4の繰出作用部には従来通り清掃ブラシ6が奥部まで入り込んで種子や夾雑物を除去すると共に、幅調節ロール91に覆われた部分の単位ブラシ8は幅調節ロール91の表面に接触する構成となり、繰出溝1の左右幅を変更しても単位ブラシ8が奥部まで入り込むため、種子や夾雑物の蓄積が防止されて、播種精度が向上する。
【0081】
単位ブラシ8が繰出溝1の左右幅方向に亘って1つ設けられる構成や、複数に分けられた単位ブラシ8が連動して回動する構成では、幅調節ロール91を用いて繰出溝1の左右幅を変えてしまうと、幅調節ロール91に当たるだけで繰出溝1の奥部に入り込むことができなくなり、繰出溝1の内部に種子や夾雑物が蓄積されてしまい、播種量が設定量と異なり、播種精度が低下する。
【0082】
なお、単位ブラシ8は、複数のブラシ毛が正方形に配置される構成とすると、繰出溝1や繰出ロール2に接触して一面が摩耗しても、90度または180度角度を変えて摩耗していない面を取り付けることにより、4回まで使うことができるので、耐久性が向上する。
【0083】
また、前記排出室7の繰出溝1の開放開始位置には、各繰出溝1の溝口部を開閉可能の溝口シャッタ13を設け、この溝口シャッタ13を、前記繰出ロール2の回転と一体回転の回転カム14によって開閉作動して、点播形態に播種する。
【0084】
図5において、前記のように繰出ロール2の回転によって、各繰出溝1に嵌合された種子が下側の排出室7側へ繰出される。この繰出溝1が排出室7へ下動して開放するときは、外周部が溝口シャッタ13で溝口部が覆われていて、繰出溝1内の種子が排出室7へ排出落下されないように保持されている。
【0085】
そして、この繰出ロール2と一体的に回転する回転カム14によって、作動アーム25が押されて、この作動アーム25と一体の溝口シャッタ13が外方へ押開かれると、前記繰出溝1内に収容保留されていた種子が一斉に揃って排出落下される。
【0086】
次に、主として図6に基づいて、前記ホッパ5内に、種子を分散させて繰出ロール2の繰出溝1内への繰込供給を円滑に行わせるための、分散網60を設ける形態において、この分散網60の中心部等を支持ロッド61で支持して、この分散網60の分散面を歪み難くして、種子の分散網60でのブリッジ現象を少くして、円滑な種子の繰出供給を行わせるものである。
【0087】
支持ロッド61の下端部は、ホッパ5に固定の支持枠62に支持させて、この上面の支持ピン63を分散網60中心部のソケット64部に嵌合させて支持し、又は、前記支持ロッド61の上端部に分散網60を一体的に取付る形態とすることもできる。分散網60外周部はボルト65で前記ホッパ5の内周部に固定することができる。
【0088】
次に、主として図7に基づいて、前記ホッパ5内に傘状形態に開度を変更自在の分散傘56を設けて、種子の繰出供給時のブリッジ現象による詰まりを防止する。分散傘56は錐形状に開閉できる傘線材57からなり、この上面に傘布58を張設しているが、この傘布58を除いた傘線材57のみから構成することもできる。上端中心部に吊下具59を有して、ホッパ5の開閉蓋55部に吊下げる形態としている。
【符号の説明】
【0089】
1 繰出溝
2 繰出ロール
3 繰出室
4 ロール軸
5 ホッパ
6 供給室
7 排出室
8 単位ブラシ
9 スプリング
10 清掃ブラシ
11 ブラシプレート
12 切欠口
13 溝口シャッタ
14 回転カム
15 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転周面に繰出溝(1)を形成した繰出ロール(2)を繰出室(3)に軸装(4)回転して、種子を上側のホッパー(5)から供給室(6)を経て前記各繰出溝(1)へ嵌合させながら下側の排出室(7)へ繰出す播種機において、前記繰出ロール(2)の排出室(7)に、繰出溝(1)幅の方向に亘って複数個の単位ブラシ(8)を並べて、各スプリング(9)によって独立的に弾発させて繰出溝(1)内へ押込可能の清掃ブラシ(10)を設けたことを特徴とする播種機の繰出装置。
【請求項2】
前記繰出ロール(2)下側の排出室(3)部に、この繰出ロール(2)の下側後半部を覆うブラシプレート(11)を設け、このブラシプレート(11)には、前記単位ブラシ(8)をのぞませて上下揺動させる切欠口(12)を形成したことを特徴とする請求項1に記載の播種機の繰出装置。
【請求項3】
前記排出室(7)の繰出溝(1)の開放開始位置には、各繰出溝(1)の溝口部を開閉可能の溝口シャッタ(13)を設け、この溝口シャッタ(13)を、前記繰出ロール(2)の回転と一体回転の回転カム(14)によって開閉作動して、点播形態に播種することを特徴とする請求項1または2に記載の播種機の繰出装置。
【請求項4】
前記繰出ロール(2)を軸装(4)する繰出室(3)と、この上側の種子収容のホッパ(5)との間の供給室(6)の外周部に、この供給室(6)部を加熱する加熱装置(15)を設けたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の播種機の繰出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−9652(P2013−9652A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145975(P2011−145975)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】