撮像装置、表示方法、および、プログラム
【課題】3Dモデリングのための撮影効率を向上させる。
【解決手段】ファインダ表示処理部213は、第1撮像部110の撮像画像をファインダ画像とするファインダ画面上で指定された領域と、第2撮像部120の撮像画像とでステレオマッチングをおこない、三角測量によって被写体までの最近距離を測距するとともに、被写体までの最遠距離を指定する。ファインダ表示処理部213は、最近距離における有効範囲候補と、最遠距離における有効範囲候補を特定し、各有効範囲候補が重複する範囲を測定可能範囲、各有効候補範囲の差分となる範囲を測定不明範囲として特定する。ファインダ表示処理部213は、測定不明範囲に含まれる画像部分を第2撮像部120の撮像画像で探索し、該当する画像部分が存在する場合、当該部分を測定可能範囲に加え、このような測定可能範囲と測定不明範囲が識別可能なファインダ画面を表示部310に表示する。
【解決手段】ファインダ表示処理部213は、第1撮像部110の撮像画像をファインダ画像とするファインダ画面上で指定された領域と、第2撮像部120の撮像画像とでステレオマッチングをおこない、三角測量によって被写体までの最近距離を測距するとともに、被写体までの最遠距離を指定する。ファインダ表示処理部213は、最近距離における有効範囲候補と、最遠距離における有効範囲候補を特定し、各有効範囲候補が重複する範囲を測定可能範囲、各有効候補範囲の差分となる範囲を測定不明範囲として特定する。ファインダ表示処理部213は、測定不明範囲に含まれる画像部分を第2撮像部120の撮像画像で探索し、該当する画像部分が存在する場合、当該部分を測定可能範囲に加え、このような測定可能範囲と測定不明範囲が識別可能なファインダ画面を表示部310に表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、表示方法、および、プログラムに関し、特に、ステレオカメラを用いたモデリングに好適な撮像装置、表示方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータグラフィクスによる3次元(3D)表現が多く用いられるようになり、よりリアリティのある3D表現が求められている。このような要求に対し、実際の立体物をカメラで撮像して3Dモデリングデータを作成する手法が確立している。この場合、立体物の3次元的位置を認識するため、視差に相当する光軸のズレが設定された、いわゆる複眼カメラ(ステレオカメラ)が用いられる。(例えば、特許文献1)。
【0003】
このようなステレオカメラでは、光軸位置の異なる2つの撮像部を用いているため、各撮像部の画角には、一方の撮像部からしか写らない部分、すなわち、2つの撮像部の画角で重なり合わない部分(以下、「非オーバーラップエリア」とする)が存在する。この場合において、モデリング対象としている被写体が非オーバーラップエリアにかかっていると、当該被写体の形状測定を正確におこなうことができない。つまり、2つの撮像部の画角で重なる部分(以下、「オーバーラップエリア」とする)に被写体が収まっていなければ、3Dモデリングのために必要となる正確な形状測定をおこなうことができない。
【0004】
ここで、デジタルカメラによってステレオカメラを構成した場合、背面モニタなどにファインダ画像を表示することになるが、表示される画像は、通常、一方の撮像部によって撮像されたものが用いられる。よって、オーバーラップエリアに被写体が収まるようフレーミングしているか撮影時に確認することができなかった。
【0005】
一方で、撮像部間(レンズ間)の距離(すなわち、基線長)や撮像パラメータ(ズーム倍率など)に基づいてオーバーラップエリアを特定する手法が提案されている(例えば、特許文献2)。このような手法を応用すれば、被写体がオーバーラップエリアに収まっているか否かを撮影者が認識できる動作を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−3122号公報
【特許文献2】特開2006−121229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、オーバーラップエリアの範囲は被写体までの距離によって変化する。したがって、より正確にオーバーラップエリアを特定するには被写体の奥行きを考慮した測距をおこなう必要がある。しかしながら、特許文献2の手法では、被写体までの距離を特段考慮していないため、3Dモデリングのために立体物を撮像する際、オーバーラップエリアの特定が不正確となる場合がある。
【0008】
また、カメラのAF(Auto Focus:オートフォーカス)による焦点距離に基づいて被写体までの距離を推定することができるが、被写体の奥行きを考慮した場合、被写界深度分の誤差が生じることがある。このため、被写体の奥行きを考慮した距離推定をおこなうには、AFによる測距結果に被写界深度分の誤差を反映させる必要があるが、被写界深度を決定する要因は複雑であるため、被写体の奥行きに相当する誤差を正確に反映させることは極めて困難である。
【0009】
さらに、従来の手法では、オーバーラップエリア(形状測定可能な部分)と非オーバーラップエリア(形状測定不可の部分)の2分類で判別することしかできない。この場合、3Dモデリング対象となる被写体は立体物であるため、実際には形状測定が可能であるにもかかわらず形状測定不可と判別されたり、実際には形状測定不可であるにもかかわらず形状測定可能と判別されたりする問題がある。
【0010】
例えば、被写界深度分の誤差が被写体の奥行きに相当する分より大きく設定されてしまうと、実際には被写体が非オーバーラップエリアにかかっていても形状測定可能であると判別され、そのまま撮影されてしまうことがある。この場合、非オーバーラップエリアにかかっている部分のモデリングデータを生成することができないので、撮影のやり直しなどを強いられてしまう。
【0011】
一方、被写界深度分の誤差が被写体の奥行きに相当する分よりも小さく設定されてしまうと、実際には被写体がオーバーラップエリア内に収まっているにもかかわらず形状測定不可と判別されてしまうことがある。この場合、実際はそのままの撮影で成功するにもかかわらず、撮影条件の見直しなどといった本来は必要のない無駄な作業を撮影者に強いることになる。
【0012】
すなわち、被写体の奥行きを考慮すると被写界深度分の誤差が生じるような場合、AFによる測距では精度が不十分であるといえ、上記のような問題が顕著となってしまう。つまり、被写体の奥行きを考慮した正確な測距がなされないと、オーバーラップエリアの特定が不正確となり、その結果、撮影効率を著しく低下させてしまうことがある。
【0013】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、3Dモデリングのための撮影をより効率的におこなうことのできる撮像装置、表示方法、および、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる撮像装置は、
ステレオカメラを構成する2つの撮像手段と、
一方の前記撮像手段で得られた第1の撮像画像をファインダ画像としてファインダ画面を表示するファインダ表示手段と、
前記ファインダ画像上で指定された領域に基づいて、少なくとも前記ステレオカメラから被写体までの最近距離を三角測量で測距する測距手段と、
前記ステレオカメラから被写体までの最遠距離を指定する最遠距離指定手段と、
前記2つの撮像手段それぞれの撮像範囲が重なる範囲を有効範囲候補として特定する有効範囲候補特定手段と、
前記第1の撮像画像上で、前記最近距離における前記有効範囲候補と、前記最遠距離における前記有効範囲候補を特定し、各有効範囲候補が重複する範囲を有効範囲として特定し、各有効候補範囲の差分となる範囲を暫定有効範囲として特定する有効範囲特定手段と、
前記暫定有効範囲に含まれる画像部分を他方の前記撮像手段で得られた第2の撮像画像で探索し、該当する画像部分が存在する場合、当該部分を前記有効範囲に加える有効範囲拡張手段と、を備え、
前記ファインダ表示手段は、少なくとも、前記有効範囲と前記暫定有効範囲とが識別可能な前記ファインダ画面を表示する、
ことを特徴とする。
【0015】
上記撮像装置において、
前記測距手段は、前記第1の撮像画像で指定された領域の画像と前記第2の撮像画像との間でステレオマッチングをおこなうことで、該第2の撮像画像上で当該領域に相当する領域を特定して前記三角測量をおこなうことが望ましい。
【0016】
上記撮像装置において、
前記有効範囲拡張手段は、前記暫定有効範囲の画像と前記第2の撮像画像との間でステレオマッチングをおこなうことで、前記有効範囲に加える部分を探索することが望ましい。
【0017】
上記撮像装置において、
前記最遠距離指定手段は、前記測距手段によって測距された前記最近距離に基づいて前記最遠距離を指定してもよい。
【0018】
上記撮像装置において、
前記測距手段は、前記第1の撮像画像上で指定された領域に基づいて、前記最遠距離を測距してもよく、この場合、
前記最遠距離指定手段は、前記測距手段が測距した最遠距離を指定することができる。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点にかかる表示方法は、
ステレオカメラを構成する2つの撮像手段を備える撮像装置において、一方の前記撮像手段で得られた第1の撮像画像をファインダ画像としたファインダ画面を表示する場合に、フレーミングの良否を認識可能なファインダ表示をおこなう表示方法であって、
前記ファインダ画像上で指定された領域に基づいて、少なくとも前記ステレオカメラから被写体までの最近距離を三角測量で測距する測距ステップと、
前記ステレオカメラから被写体までの最遠距離を指定する最遠距離指定ステップと、
前記2つの撮像手段それぞれの撮像範囲が重なる範囲を有効範囲候補として特定する有効範囲候補特定ステップと、
前記第1の撮像画像上で、前記最近距離における前記有効範囲候補と、前記最遠距離における前記有効範囲候補を特定し、各有効範囲候補が重複する範囲を有効範囲として特定し、各有効候補範囲の差分となる範囲を暫定有効範囲として特定する有効範囲特定ステップと、
前記暫定有効範囲に含まれる画像部分を他方の前記撮像手段で得られた第2の撮像画像で探索し、該当する画像部分が存在する場合、当該部分を前記有効範囲に加える有効範囲拡張ステップと、
少なくとも、前記有効範囲と前記暫定有効範囲とが識別可能な前記ファインダ画面を表示するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点にかかるプログラムは、
ステレオカメラを構成する2つの撮像手段と、一方の前記撮像手段で得られた第1の撮像画像をファインダ画像としてファインダ画面を表示するファインダ表示手段と、を備える撮像装置を制御するコンピュータに、
前記ファインダ画像上で指定された領域に基づいて、少なくとも前記ステレオカメラから被写体までの最近距離を三角測量で測距する機能と、
前記ステレオカメラから被写体までの最遠距離を指定する機能と、
前記2つの撮像手段それぞれの撮像範囲が重なる範囲を有効範囲候補として特定する機能と、
前記第1の撮像画像上で、前記最近距離における前記有効範囲候補と、前記最遠距離における前記有効範囲候補を特定し、各有効範囲候補が重複する範囲を有効範囲として特定し、各有効候補範囲の差分となる範囲を暫定有効範囲として特定する機能と、
前記暫定有効範囲に含まれる画像部分を他方の前記撮像手段で得られた第2の撮像画像で探索し、該当する画像部分が存在する場合、当該部分を前記有効範囲に加える機能と、
少なくとも、前記有効範囲と前記暫定有効範囲とが識別可能な前記ファインダ画面を表示する機能と、
を実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、3Dモデリングのための撮影をより効率的におこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態にかかるデジタルカメラの外観構成を示す図である。
【図2】図1に示したデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した制御部によって実現される機能を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる「3Dモデリング用撮像処理」を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4に示した「3Dモデリング用撮像処理」にかかる動作などを説明するための図であり、(a)は、本発明の実施形態で想定する撮影場面の例を示し、(b)および(c)は、「3Dモデリング用撮像処理」で表示されるAF枠指定画面の表示例を示す。
【図6】図4に示す「3Dモデリング用撮像処理」で実行される「高精度測距処理」を説明するためのフローチャートである。
【図7】図4に示す「3Dモデリング用撮像処理」で実行される「ファインダ表示処理」を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態にかかるデジタルカメラにおける撮像範囲を説明するための図であり、(a)は、画角が広い場合の撮像範囲の例を示し、(b)は、画角が狭い場合の撮像範囲の例を示す。
【図9】図8に例示した撮像範囲と距離の関係を説明するための図であり、(a)は、被写体の最近距離および最遠距離による測定可能範囲と測定不可範囲の関係を模式的に示し、(b)は、この場合において被写体が測定可能範囲内にある状況を示し、(c)は、被写体の一部が測定不可範囲にかかっている状況を示す。
【図10】図9で示した撮像範囲と距離との関係を撮像画像上にあてはめる動作を説明するための図であり、(a)は、ファインダ画像として用いられている撮像部における測定可能範囲、測定不可範囲、最近距離、最遠距離の関係を模式的に示し、(b)は、最近距離における測定可能範囲を撮像画像上にあてはめた場合の例を示し、(c)は、最遠距離における測定可能範囲を撮像画像上にあてはめた場合の例を示し、(d)は、これらに基づいて特定される測定可能範囲、測定不明範囲、測定不可範囲の例を示す。
【図11】図7に示した「ファインダ表示処理」にかかる動作を説明するための図であり、(a)は、測定不明範囲を使ったステレオマッチングの対象となる画像の例を示し、(b)は、ステレオマッチングによってマッチングされた部分の例を示し、(c)は、拡張された測定可能範囲の例を示す。
【図12】図7に示した「ファインダ表示処理」にかかる動作を説明するための図であり、(a)は、第2撮像部でも被写体の全体が撮像されている場合のファインダ表示の例を示し、(b)は、第2撮像部では被写体の一部が撮像されていない場合の撮像画像の例を示し、(c)は、この場合のファインダ表示の例を示す。
【図13】本発明の実施形態2を説明するための図であり、(a)および(b)は、実施形態2におけるAF枠指定画面の表示例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明にかかる実施形態を、図面を参照して以下に説明する。本実施形態では、本発明をデジタルスチルカメラ(以下、デジタルカメラ)によって実現した場合を例示する。本実施形態にかかるデジタルカメラ1は、一般的なデジタルスチルカメラが有する機能を備えているものとするが、図1に示すように、撮像にかかる構成を2つ備えた、いわゆる複眼カメラ(ステレオカメラ)とする。
【0024】
このような複眼カメラの構成を有するデジタルカメラ1は、通常の撮像機能に加え、撮像した画像を用いて3次元モデリング(3Dモデリング)をおこなう機能を有しているものとする。
【0025】
このようなデジタルカメラ1の構成を、図2を参照して説明する。図2は、本発明の実施形態にかかるデジタルカメラ1の構成を示すブロック図である。本実施形態にかかるデジタルカメラ1の概略的構成は、図示するように、撮像動作部100、データ処理部200、インタフェース(I/F)部300、などである。
【0026】
撮像動作部100は、デジタルカメラ1による撮像時の動作をおこなうものであり、図2に示すように、第1撮像部110、第2撮像部120、などから構成される。
【0027】
第1撮像部110および第2撮像部120は、デジタルカメラ1の撮像動作をおこなう部分である。上述したように、本実施形態にかかるデジタルカメラ1は複眼カメラであるため、第1撮像部110と第2撮像部120とを有する構成であるが、第1撮像部110と第2撮像部120は同一の構成である。以下、第1撮像部110についての構成には110番台の参照符号、第2撮像部120についての構成には120番台の参照符号をそれぞれ付すこととし、これらの参照符号において1桁目が同値となるものは同一の構成であることを示す。
【0028】
図2に示すように、第1撮像部110(第2撮像部120)は、光学装置111(121)やイメージセンサ部112(122)などから構成されている。
【0029】
光学装置111(121)は、例えば、レンズ、絞り機構、シャッタ機構、などを含み、撮像にかかる光学的動作をおこなう。すなわち、光学装置111(121)の動作により、入射光が集光されるとともに、焦点距離、絞り、シャッタスピードなどといった、画角やピント、露出などにかかる光学的要素の調整がなされる。
【0030】
なお、光学装置111(121)に含まれるシャッタ機構はいわゆるメカニカルシャッタであり、イメージセンサの動作のみでシャッタ動作をおこなう場合には、光学装置111(121)にシャッタ機構が含まれていなくてもよい。また、光学装置111(121)は、後述する制御部210による制御によって動作する。
【0031】
イメージセンサ部112(122)は、光学装置111(121)によって集光された入射光に応じた電気信号を生成する、例えば、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Complementally Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化物半導体)などのイメージセンサから構成される。イメージセンサ部112(122)は、光電変換をおこなうことで、受光に応じた電気信号を発生してデータ処理部200に出力する。
【0032】
上述したように、第1撮像部110と第2撮像部120は同一の構成である。より詳細には、レンズの焦点距離fやF値、絞り機構の絞り範囲、イメージセンサのサイズや画素数、画素の配列や面積、などといった各仕様がすべて同一である。
【0033】
このような第1撮像部110と第2撮像部120を有するデジタルカメラ1は、図1に示すように、光学装置111に構成されたレンズと光学装置121に構成されたレンズとが、デジタルカメラ1の外面における同一面上に形成された構成とする。
【0034】
ここでは、シャッタボタンが上になる方向でデジタルカメラ1を水平にした場合に、中心位置が水平方向で同一線上となるよう2つのレンズ(受光部)が配置されるものとする。より詳細には、第1撮像部110の光軸と第2撮像部120の光軸が平行(輻輳角が0)で、かつ、エピポーラ線が一致している状態である。つまり、第1撮像部110と第2撮像部120とを同時に動作させた場合、同一被写体についての画像が撮像されることになるが、各画像における光軸位置が横方向にずれている画像となる。
【0035】
データ処理部200は、第1撮像部110および第2撮像部120による撮像動作によって生成された電気信号を処理し、撮像画像を示すデジタルデータを生成するとともに、撮像画像に対する画像処理などをおこなう。図2に示すように、データ処理部200は、制御部210、画像処理部220、画像メモリ230、画像出力部240、記憶部250、外部記憶部260、などから構成される。
【0036】
制御部210は、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)などのプロセッサや、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置(メモリ)、などから構成され、後述する記憶部250などに格納されているプログラムを実行することで、デジタルカメラ1の各部を制御する。また、本実施形態では、所定のプログラムを実行することで、後述する各処理にかかる機能が制御部210によって実現される。本実施形態では、3Dモデリングにかかる処理についても制御部210にておこなわれるものとするが、制御部210とは独立した専用プロセッサなどがおこなう構成であってもよい。
【0037】
画像処理部220は、例えば、ADC(Analog-Digital Converter:アナログ−デジタル変換器)、バッファメモリ、画像処理用のプロセッサ(いわゆる、画像処理エンジン)などから構成され、イメージセンサ部112および122によって生成された電気信号に基づいて、撮像画像を示すデジタルデータを生成する。
【0038】
すなわち、イメージセンサ部112(122)から出力されたアナログ電気信号をADCがデジタル信号に変換して順次バッファメモリに格納すると、バッファされたデジタルデータに対し、画像処理エンジンがいわゆる現像処理などをおこなうことで、画質の調整やデータ圧縮などをおこなう。
【0039】
画像メモリ230は、例えば、RAMやフラッシュメモリなどの記憶装置から構成され、画像処理部220によって生成された撮像画像データや、制御部210によって処理される画像データなどを一時的に格納する。
【0040】
画像出力部240は、例えば、RGB信号の生成回路などから構成され、画像メモリ230に展開された画像データをRGB信号などに変換して表示画面(後述する表示部310など)に出力する。
【0041】
記憶部250は、例えば、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどの記憶装置から構成され、デジタルカメラ1の動作に必要なプログラムやデータなどを格納する。本実施形態では、制御部210などが実行する動作プログラムや処理に必要となるパラメータや演算式などが記憶部250に格納されているものとする。
【0042】
外部記憶部260は、例えば、メモリカードなどといった、デジタルカメラ1に着脱可能な記憶装置から構成され、デジタルカメラ1で撮像した画像データや生成された3Dモデリングデータなどを格納する。
【0043】
インタフェース部300は、デジタルカメラ1とその使用者あるいは外部装置とのインタフェースにかかる構成であり、図2に示すように、表示部310、外部インタフェース(I/F)部320、操作部330、などから構成される。
【0044】
表示部310は、例えば、液晶表示装置などから構成され、デジタルカメラ1を操作するために必要な種々の画面や、撮影時のライブビュー画像、撮像画像、3Dモデリングデータ、などを表示出力する。本実施形態では、画像出力部240からの画像信号(RGB信号)などに基づいて撮像画像等の表示出力がおこなわれる。
【0045】
外部インタフェース部320は、例えば、USB(Universal Serial Bus)コネクタやビデオ出力端子などから構成され、画像データや3Dモデリングデータなどを外部のコンピュータ装置へ転送したり、撮像画像や3Dモデリング画像などを外部のモニタ装置に表示出力したりする。
【0046】
操作部330は、デジタルカメラ1の外面上に構成されている各種ボタンなどによって構成され、デジタルカメラ1の使用者による操作に応じた入力信号を生成して制御部210に入力する。操作部330を構成するボタンとして、例えば、シャッタ動作を指示するためのシャッタボタンや、デジタルカメラ1のもつ動作モードを指定するためのモードボタン、3Dモデリングをおこなうための設定をはじめとした各種設定をおこなうための十字キーや機能ボタン、などが含まれているものとする。
【0047】
ここで、本実施形態では、記憶部250に格納されている動作プログラムを制御部210が実行することで、後述する各処理が実現されるが、この場合に制御部210によって実現される機能を、図3を参照して説明する。
【0048】
図3は、制御部210によって実現される機能を示した機能ブロック図である。ここでは、複眼カメラによって撮像された画像から被写体画像を抽出する機能を実現するために必要な機能構成を示す。この場合、図示するように、制御部210は、動作モード処理部211、撮像制御部212、ファインダ表示処理部213、3Dモデリング部214、などとして機能する。
【0049】
動作モード処理部211は、表示部310との協働により、デジタルカメラ1が有する各種動作モードをデジタルカメラ1のユーザに指定させるために必要な画面表示や指定された動作モード毎の設定画面表示などをおこなう他、操作部330との協働により、ユーザが指定した動作モードを認識し、当該動作モードの実行に必要なプログラムや演算式などを記憶部250から読み出し、制御部210の主記憶装置(メモリ)にロードする。
【0050】
本実施形態では、デジタルカメラ1での撮影後に撮像画像から3Dモデリングをおこなう動作モード(3Dモデリングモード)がユーザによって指定されるものとし、以下に説明する制御部210の各機能構成は、3Dモデリングモードが指定されたことに応じて動作モード処理部211がロードしたプログラムを実行することで実現される機能構成である。
【0051】
撮像制御部212は、撮像動作部100(第1撮像部110、第2撮像部120)を制御することでデジタルカメラ1での撮像動作を実行する。この場合、撮像制御部212は、例えば、一般的なデジタルカメラにおいておこなわれている、測光、合焦、自動露出、撮像時の画面表示、などのような撮像にかかる各種の処理と制御をおこなう。
【0052】
ファインダ表示処理部213は、3Dモデリングモード下での撮像動作時に特有のファインダ表示処理をおこなう。すなわち、本実施形態にかかるデジタルカメラ1は、いわゆるコンパクトタイプのデジタルスチルカメラであり、撮像動作部100で得られた動画像を表示部310に表示出力することでファインダ表示をおこなうものであるが、3Dモデリングモード下では、第1撮像部110と第2撮像部120の双方で捉えられるように被写体をフレーミングしなければ被写体の形状測定をおこなうことができないので、ファインダ表示処理部213は、当該条件を満たすフレーミングとなっているかを撮影者が認識できるようなファインダ表示をおこなう。
【0053】
3Dモデリング部214は、第1撮像部110と第2撮像部120によって撮像された左右画像間で照合をおこなうことにより3Dモデリングをおこなう。この場合、3Dモデリング部214は、例えば、差の2乗和を評価式とするSSD(Sum of Squared Difference)を用いたテンプレート照合により特徴点を抽出し、抽出した特徴点をドロネー分割することによりポリゴンを生成して3Dモデリングをおこなう。
【0054】
以上が制御部210によって実現される機能である。なお、本実施形態では、制御部210がプログラムを実行することによる論理的処理で上述した各機能が実現されるものとするが、これらの機能を、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)などのハードウェアによって構成してもよい。この場合、図3に示した機能のうち、画像処理にかかる機能については、画像処理部220によって実現されてもよい。
【0055】
以上説明したデジタルカメラ1の構成は、本発明を実現するために必要な構成であり、デジタルカメラとしての基本機能や種々の付加機能に用いられる構成は必要に応じて備えられているものとする。
【0056】
(実施形態1)
このような構成のデジタルカメラ1による動作を以下に説明する。ここでは、デジタルカメラ1の動作モードのうち、上述した「3Dモデリングモード」が選択された場合の動作例を示す。この場合、デジタルカメラ1によって撮像をおこない、その撮像画像から3Dモデリングをおこなう。
【0057】
この場合、例えば、人物、動物、美術品、その他種々の立体物を被写体としてデジタルカメラ1で撮像し、その撮像画像から被写体を3次元的な画像として表すための3Dモデリングデータを生成する。このような3Dモデリングデータの生成を目的として「3Dモデリングモード」が選択された場合、デジタルカメラ1では「3Dモデリング用撮像処理」が実行される。
【0058】
この「3Dモデリング用撮像処理」を、図4に示すフローチャートを参照して説明する。「3Dモデリング用撮像処理」は、デジタルカメラ1のユーザが操作部330を操作することで、3Dモデリングモードを選択したことを契機に開始される。この場合、動作モード処理部211が、記憶部250に格納されているプログラムなどをロードすることで、図3に示した各機能構成が実現され、以下の処理が実行される。
【0059】
処理が開始されると、撮像制御部212が第1撮像部110および第2撮像部120の駆動を開始することで(ステップS11)、各撮像部の撮像動作によって左右画像に相当するライブビュー画像が取得される(ステップS12)。
【0060】
ここで、図1に示すように、本実施形態にかかるデジタルカメラ1においては、被写体に向かって左側に第1撮像部110のレンズが配置され、被写体に向かって右側に第2撮像部120のレンズが配置されているものとする。この場合におけるレンズ間の距離(基線長)が肉眼での視差に相当するので、第1撮像部110によって得られる撮像画像が左目の視野に相当する画像(左目画像)となり、第2撮像部120によって得られる撮像画像が右目の視野に相当する画像(右目画像)となる。以下、第1撮像部110によって得られた撮像画像を「撮像画像CP1」とし、第2撮像部120によって得られた撮像画像を「撮像画像CP2」とする。
【0061】
第1撮像部110および第2撮像部120によって得られた左右画像は、画像処理部220によって処理され、順次画像メモリ230に展開される。ファインダ表示処理部213は、画像メモリ230に展開された左右画像のうち、第1撮像部110によって得られた撮像画像(左目画像)のみを取得して表示部310に表示することでファインダ表示をおこなう(ステップS13)。ここでのファインダ表示は、撮影者が被写体を捉えることができるようにするための通常のファインダ表示である。
【0062】
ここで、本実施形態では、例えば、図5(a)に示すような撮影場面を想定する。すなわち、3Dモデリングデータの取得対象となる立体物を被写体TGとし、この被写体TGをステレオカメラであるデジタルカメラ1で撮影することで、被写体TGの3次元位置や形状を測定して3Dモデリングデータを生成する。この場合、ステップS13のファインダ表示では、図5(a)に示すように、第1撮像部110によって得られた被写体TGを示す撮像画像が表示部310に表示される。
【0063】
このような通常のファインダ表示をおこなうと、ファインダ表示処理部213は、当該ファインダ画面上にAF枠を表示するとともに、被写体の最も近い位置に相当するAF枠の指定を促すメッセージを示したAF枠指定画面(図5(b))を表示部310に表示する(ステップS14)。ここでは、ファインダ画面上に9点のAF枠が表示されるものとする。AF枠は、AFによる測距位置を撮影者が指定するためのものであり、一般的なデジタルカメラで通常用いられている既知の技術によって実現される。
【0064】
ここで、撮影者は、操作部330の十字キーなどを操作することで、例えば、図5(c)に示すように、デジタルカメラ1までの距離が最も近くなる被写体TG上の位置に相当するAF枠を指定し、測距動作の開始を指示するためにシャッタボタン(操作部330)の半押し操作をおこなう。このような操作がなされると(ステップS15:Yes)、撮像制御部212が撮像動作部100を制御し、少なくとも第1撮像部110を構成しているフォーカス用レンズを可動範囲内で走査させ、指定されたAF枠で画像コントラストが最も高くなるフォーカス位置を探索する。すなわち、いわゆるコントラストAFによって、指定されたAF枠で合焦するようフォーカス動作をおこなう(ステップS16)。
【0065】
デジタルカメラによる通常の撮影においては、このようなコントラストAFによる測距によってフォーカスを合わせることになるが、立体物である被写体TGの3Dモデリングデータを生成することを目的としている本例の場合、コントラストAFによる測距では精度が十分でない場合があるので、より高精度な測距をおこなうための「高精度測距処理」が実行される(ステップS100)。この「高精度測距処理」を、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0066】
処理が開始されると、ファインダ表示処理部213は、撮像画像CP1上で指定されたAF枠内の画像と、撮像画像CP2との間でステレオマッチングをおこなうことで、指定されたAF枠に相当する位置を撮像画像CP2上で探索する(ステップS101)。ここでは、デジタルカメラ1に最も近い被写体TG上の位置がAF枠によって指定されているので、同じ位置が視差に相当するズレをもって両画像上で特定されることになる。
【0067】
ここでおこなわれるステレオマッチングは、立体画像生成分野において通常おこなわれている既知の技術を用いるものであり、例えば、正規化相関法や方向符号相関法などといった任意の手法が採用しうる。また、ステップS16でおこなったコントラストAFにより、精度が低いながらもおよその距離レンジが得られているので、ステップS101のステレオマッチング動作における探索範囲を当該距離レンジで限定することで、ステレオマッチングにかかる処理の高速化を図ることができる。
【0068】
ステレオマッチングにより、撮像画像CP1と撮像画像CP2の双方で、デジタルカメラ1からの距離が最も近い被写体TG上の位置が特定されると、ファインダ表示処理部213は、三角測量の手法によって測距をおこなう(ステップS102)。つまり、ステレオマッチングによって判明した当該位置の視差、現在の画角(レンズ焦点距離)、基線長などを要素として三角測量の演算をおこなうことで、指定されたAF枠に相当する被写体TG上の位置までの距離が演算される。このような三角測量による測距は、通常、ステップS16でおこなったコントラストAFによる測距よりも高精度のものとなる。ファインダ表示処理部213は、このようにして算出した距離を、被写体TGまでの最近距離D1とする(ステップS103)。
【0069】
ここで、被写体TGは立体物であるため、デジタルカメラ1に対して奥行きがある。よって、被写体TG全体の正確な3Dモデリングデータを生成するには、被写体TGの奥行きに相当する距離を考慮する必要がある。この場合、ステップS16でおこなったようなコントラストAFなどによる測距では、そのときの画角(レンズ焦点距離)や絞りによって生じる被写界深度の影響により、被写体TGの奥行きに相当する最遠距離までは正確に測距できない。
【0070】
よって、本実施形態では、三角測量によって得られた、より精度の高い距離情報を基準にして、被写体TGの奥行き範囲を指定する(ステップS104)。ここでは、ステップS101〜ステップS103の処理で得られた最近距離D1に、例えば、所定の乗数を乗じることで被写体TGの奥行き範囲を指定する。ここで採用する乗数は任意であり、例えば、固定値であってもよく、あるいは、撮影者が数値を選択するものであってもよい。乗数の指定に際しては、例えば、そのときの画角や最近距離D1などに基づいて、画角内に収まる被写体TGの大きさの上限などを推定することができるので、その大きさに相当する奥行き範囲となる乗数を演算により求めて指定してもよい。
【0071】
ファインダ表示処理部213は、最近距離D1にこのような乗数を乗じることで得られた距離を、デジタルカメラ1から最も遠い被写体TG上の位置までの距離であることを示す最遠距離D2とし(ステップS105)、「3Dモデリング用撮像処理」(図4)のフローに戻る。
【0072】
「3Dモデリング用撮像処理」では、3Dモデリングにおける形状測定を確実におこなえるフレーミングであるか認識可能なファインダ表示をおこなうための「ファインダ表示処理」が引き続き実行される(ステップS200)。この「ファインダ表示処理」を図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0073】
処理が開始されると、ファインダ表示処理部213は、撮像制御部212に問い合わせることで、現在の撮像パラメータを取得する(ステップS201)。ここで取得される撮像パラメータは、主に現在の画角を特定するものであり、例えば、レンズの焦点距離(ズーム値)などである。
【0074】
ここで画角にかかる撮像パラメータが必要となるのは、第1撮像部110および第2撮像部120の撮像範囲が画角によって異なるためである。図8は、デジタルカメラ1を上から見た場合の撮像範囲を模式的に示したものであり、図8(a)は、画角が比較的広い(すなわち、レンズ焦点距離が広角側)場合の撮像範囲の例を示し、図8(b)は、画角が比較的狭い(すなわち、レンズ焦点距離が望遠側)場合の撮像範囲の例を示したものである。
【0075】
図8に示したように、第1撮像部110と第2撮像部120によるステレオカメラとして構成されたデジタルカメラ1では、第1撮像部110の撮像範囲と第2撮像部120の撮像範囲が重なる部分(オーバーラップエリア)にある被写体については3Dモデリングのための形状測定をおこなうことができる(以下、「測定可能範囲」とする)が、重ならない部分(非オーバーラップエリア)にある被写体については、第1撮像部110あるいは第2撮像部120のいずれかにしか写らないため、形状測定をおこなうことができない(以下、「測定不可範囲」とする)。
【0076】
被写体のフレーミングが、オーバーラップエリアか非オーバーラップエリアであるかの2分類で判別することは従来もあったが、3Dモデリングを目的としている場合、立体物が被写体となるため、その奥行きを考慮する必要がある。すなわち、例えば、図9(a)に示すように、オーバーラップエリア(測定可能範囲)と非オーバーラップエリア(測定不可範囲)の関係は距離によって変化するため、本実施形態における被写体TGの場合、最近距離D1と最遠距離D2とが同じ分類に属するとは限らない。
【0077】
この場合において、本実施形態では、ファインダ画像として、第1撮像部110によって得られた撮像画像CP1を用いているので、例えば、図9(b)に示すように、最近距離D1から最遠距離D2の範囲で被写体TGがすべて測定可能範囲に収まるようフレーミングされている場合も、図9(c)に示すように、最近距離D1から最遠距離D2の範囲で被写体TGの一部が測定不可範囲にかかるようにフレーミングされている場合も、第1撮像部110の撮像範囲内に被写体TGがあるため、図9(c)に示した状態となっていることを、撮影者がファインダ画面から認識することができない。
【0078】
よって、本実施形態では、図9(c)に例示するような状態となっていることをファインダ画面で撮影者が認識できるよう、ステップS202以降の処理をおこなう。上述のように、本実施形態では、第1撮像部110で得られた撮像画像CP1をファインダ画像としているので、以下、第1撮像部110の撮像範囲について、図10(a)に示したような測定可能範囲、測定不可範囲、最近距離D1、最遠距離D2の関係を例に説明する。
【0079】
ファインダ表示処理部213は、最近距離D1での測定可能範囲を演算し(ステップS202)、演算した範囲を、図10(b)に示すように、撮像画像CP1上にあてはめる。ここでは、ステップS201で取得した撮像パラメータが示す画角、三角測量によって得られている最近距離D1、基線長、などを要素とした演算によって測定可能範囲を求めることができる。より詳細には、図10(a)に示したような最近距離D1を示す線分上における測定可能領域と測定不可領域の1次元上の比率を求め、測定可能領域に相当する1次元範囲を、2次元画像である撮像画像CP1上に適用する。
【0080】
次に、ファインダ表示処理部213は、同様の処理により、最遠距離D2での測定可能範囲を演算し(ステップS203)、演算した範囲を、図10(c)に示すように、撮像画像CP1上にあてはめる。
【0081】
ここで、図10(a)に示すように、線分D1上における測定可能範囲の割合と、線分D2上における測定可能範囲の割合は異なる。すなわち、図10(b)に示すような、撮像画像CP1に割り当てた最近距離D1での測定可能範囲(以下、「有効範囲候補AD1」とする)よりも、図10(c)に示すような、最遠距離D2での測定可能範囲(以下、「有効範囲候補AD2」とする)の方が広い。
【0082】
この場合、有効範囲候補AD1と有効範囲候補AD2とが重複する領域(すなわち、有効範囲候補AD1)は、確実に形状測定をおこなうことができる。よって、本実施形態では、このような領域を「測定可能範囲AA」(有効範囲)とする(ステップS204、図10(d))。
【0083】
一方、有効範囲候補AD2と有効範囲候補AD1との差分となる領域は、デジタルカメラ1からの距離によって形状測定をおこなえる場合とおこなえない場合がある。よって、本実施形態では、このような領域を「測定不明範囲BB」(暫定有効範囲)とする(ステップS205、図10(d))。
【0084】
また、上記の条件のいずれにも属さない領域では形状測定を全くおこなうことができないので、本実施形態では、このような領域を「測定不可範囲CC」とする(ステップS206、図10(d))。
【0085】
つまり、本実施形態では、従来の2分類だけでなく、測定不明範囲を加えて判別をおこなうことができるようになる。ここで、測定不明範囲BBに被写体TGがかかる場合、当該部分までの距離などによって測定可否が分かれる。この判別を、撮像画像CP2とのステレオマッチングによっておこなう。
【0086】
この場合、ファインダ表示処理部213は、図11(a)に示すように、撮像画像CP1上での測定不明範囲BBの画像と撮像画像CP2との間でステレオマッチングをおこなう(ステップS207)。なお、ここでのステレオマッチングでは、各撮像画像の解像度を落とすことで処理の高速化を図ってもよい。
【0087】
ここで、例えば、図11(a)に示すように、撮像画像CP2においても被写体TGのすべてが写っているようなフレーミングであれば、図11(b)に示すように、撮像画像CP1上で測定不明範囲BBにかかっている被写体TGの部分がマッチングすることになる。
【0088】
このような部分は一致度が高いので、ファインダ表示処理部213は、ステップS207のステレオマッチングにより、一致度が所定の閾値以上となる画像部分をマッチング領域とし、図11(c)に示すように、当該領域を測定可能範囲AAに取り込む(ステップS208)。この場合、当該領域は測定不明範囲BBからは除外されたことになる。
【0089】
ファインダ表示処理部213は、このようにして更新した測定可能範囲AA、測定不明範囲BB、測定不可範囲CCが識別可能となるようなファインダ表示をおこなって(ステップS209)、「3Dモデリング用撮像処理」(図4)のフローに戻る。この場合のファインダ表示の例を図12(a)に示す。
【0090】
ここでは、例えば、測定可能範囲AAに相当する表示領域は通常の表示とし、測定不明範囲BBに相当する表示領域は通常表示よりも輝度を落とし、測定不可領域CCに相当する表示領域はさらに輝度を落とすようなファインダ表示とする。このようなファインダ表示であれば、通常の表示がなされている領域に被写体TGが収まるようにフレーミングすることで、被写体TGの形状測定が確実におこなえることになる。
【0091】
一方、例えば、図12(b)に示すように、撮像画像CP2では被写体TGのすべてが写っていないようなフレーミングである場合、このような撮像画像CP2で測定不明範囲BBの画像のステレオマッチングをおこなってもマッチングする領域を見つけることができない。この場合、図11(c)で例示したような測定可能範囲AAの拡張はおこなわれないので、図12(c)に示すようなファインダ表示となる。
【0092】
すなわち、撮像画像CP1上で輝度を落とした表示領域に被写体TGの一部がかかっているように表示される。したがって、撮影者は、このようなファインダ表示から、被写体TGの形状測定をおこなうことができないフレーミングであることを認識することができる。
【0093】
つまり、撮影者は、図12(a)で示したようなファインダ表示であれば、現在のフレーミングで撮影してもよいと判断できるので、この場合は、撮像動作を指示するための操作であるシャッタボタン(操作部330)の全押しをおこなう。
【0094】
この場合(ステップS17:Yes)、撮像制御部212は、第1撮像部110と第2撮像部120を制御することで撮像動作をおこなう(ステップS18)。ここでは、現在の撮像パラメータで第1撮像部110と第2撮像部120を同時に駆動させることで、左右画像となる静止画像が取得される。
【0095】
一方、図12(c)で示したようなファインダ表示であれば、現在のフレーミングで撮影しても被写体TGの形状測定をおこなえないと判断できるので、撮像指示をおこなわない。この場合、撮影者は、アングルを変えたり、レンズ焦点距離(ズーム値)を変えたりすることでフレーミングを変える。
【0096】
このような状況では、シャッタボタン(操作部330)の全押しがおこなわれない状態が継続する。このような場合(ステップS17:No、ステップS19:Yes)、フレーミングの変化により被写体TGまでの距離も変化した可能性があるため、ファインダ表示処理部213は、ステップS14以降の処理をおこなう。すなわち、AF枠指定画面を再度表示して、撮影者に被写体TGの最近位置を指定させる。
【0097】
新たなフレーミングの結果、図12(a)に示すようなファインダ表示になれば、撮像指示がなされ、ステップS18で撮像動作がおこなわれる。撮像制御部212は、この撮像で得られた左右画像を、例えば、記憶部250などに保存する(ステップS20)。
【0098】
その後、所定時間内に測距開始を指示するシャッタボタン(操作部330)の半押しがなされると(ステップS21:Yes)、ステップS13以降の処理がおこなわれ、3Dモデリングデータの生成を目的とした撮像が同様におこなわれる。
【0099】
一方、シャッタボタンの半押し操作がなされずに所定時間が経過した場合(ステップS21:No、ステップS22:Yes)、3Dモデリング部214は、ステップS20で保存された撮像画像を用いて3Dモデリングデータの生成をおこなう(ステップS23)。
【0100】
なお、本例では制御部210の処理負荷を考慮し、撮像動作をおこなわないときに3Dモデリングデータの生成をおこなうようにしたが、制御部210の処理能力に余裕がある場合や、3Dモデリングにかかる処理を制御部210とは別の専用プロセッサなどでおこなわせる場合には、撮像動作のバックグラウンドで3Dモデリングにかかる処理が並行しておこなわれるようにしてもよい。
【0101】
ここで、例えば、3Dモデリングモードの解除やデジタルカメラ1の電源オフなどといった所定の終了イベントが発生しなければ(ステップS24:No)、ステップS13以降の処理が再度おこなわれ、被写体TGの奥行きを考慮した測距動作を伴う撮像動作がおこなわれる。
【0102】
そして、終了イベントの発生により(ステップS24:Yes)、処理を終了する。
【0103】
以上のように、本実施形態にかかる処理によれば、立体物である被写体の奥行きを考慮したより正確な測距をおこなうことで、一方の撮像部による撮像画像をファインダ画像として用いている場合であっても、被写体の形状測定を確実におこなえるフレーミングであるか撮影者に認識させることができる。
【0104】
(実施形態2)
上記実施形態1では、被写体TGまでの最近距離D1を測距し、被写体TGの奥行きが反映された最遠距離D2については、最近距離D1に乗数を乗じることで求めたが、例えば、デジタルカメラ1から最も近い被写体TG上の位置と、デジタルカメラ1から最も遠い被写体TG上の位置の2つをAF枠で指定することで、最遠距離D2についても、「高精度測距処理」(図6)と同様の処理で測距するようにしてもよい。
【0105】
この場合、「3Dモデリング用撮像処理」(図4)のステップS14では、例えば、図13(a)に示すようなAF枠指定画面を表示部310に表示する。ここでは、実施形態1の場合と同様のAF枠を表示するとともに、例えば、被写体の最も近い位置と最も遠い位置の指定を促すメッセージなどを表示する。そして、撮影者は、十字キーなどの操作部330を操作することで、例えば、図13(b)に示すように、2つのAF枠を指定する。
【0106】
ファインダ表示処理部213は、指定された2つのAF枠のそれぞれについて、ステップS16のコントラストAFによる測距、および、「高精度測距処理」(ステップS100、図6)による測距をおこなうことで、最近距離D1と最遠距離D2を求める。
【0107】
このような方法によれば、最遠距離D2についても三角測量による精度の高い測距をおこなうことができるので、実施形態1で示したような、測定可能範囲AA、測定不明範囲BB、測定不可範囲CCの特定をより正確におこなうことができる。
【0108】
以上説明したように、本発明を上記実施形態の如く適用することにより、3Dモデリングのための撮影をより効率的におこなうことができる。
【0109】
この場合において、AF枠などで指定された被写体部分までの測距を、ステレオカメラによる左右画像を用いたステレオマッチングによる三角測量でおこなうので、デジタルカメラなどで一般的となっているコントラストAFよりも精度の高い測距をおこなうことができ、測定可能範囲(有効範囲)の特定をより正確におこなうことができる。
【0110】
また、3Dモデリング対象となる立体物が被写体であるため、被写体の奥行きを考慮して測定可能範囲(有効範囲)を特定するので、測定可能範囲(有効範囲)の特定をより正確におこなうことができる。
【0111】
ここで、被写体の奥行きに相当する範囲では測定可能範囲が変化するため、被写体までの最近距離における測定可能範囲と、被写体までの最遠距離における測定可能範囲の差分となる範囲は測定不明範囲(暫定有効範囲)とし、この範囲の画像と、ファインダ画像として用いていない撮像画像との間でステレオマッチングをおこない、マッチングする部分があれば当該部分を測定可能範囲(有効範囲)に加えるので、アングルや画角によって特定が困難な測定可能範囲(有効範囲)をより確実に特定することができる。
【0112】
そして、特定された測定可能範囲(有効範囲)や測定不明範囲(暫定有効範囲)などが撮影者に認識できるようにファインダ表示をおこなうので、3Dモデリングなどに必要となる形状測定などを確実におこなえる撮像範囲に被写体をフレーミングしているか撮影時に確認することができ、撮影効率を向上させることができる。
【0113】
なお、被写体の奥行きを反映した最遠距離の指定においては、測距した最近距離に基づいて指定することができ、この場合は、少ない処理負荷で、被写体の奥行きを考慮した測定可能範囲(有効範囲)の特定をおこなうことができる。
【0114】
一方、最遠距離についても、三角測量による測距によって求めてもよく、この場合は、より正確な最遠距離を用いて測定可能範囲(有効範囲)の特定をおこなうことができる。
【0115】
上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0116】
例えば、上記実施形態では、指定されたAF枠でコントラストAFによる測距をおこなってから三角測量によるより精度の高い測距をおこなうこととしたが、コントラストAFなどによる測距をおこなわずに、三角測量による測距のみであってもよい。
【0117】
また、上記実施形態1では、被写体TGまでの最近距離D1を測距し、最近距離D1を基準として最遠距離D2を指定したが、測距する対象を最遠距離とし、これを基準に最近距離を指定するようにしてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、撮像画像から3Dモデリングデータを生成する構成を含んでいる撮像装置の例を示したが、撮像装置内で3Dモデリングデータの生成をおこなわなくてもよい。すなわち、3Dモデリングデータの生成は外部装置によっておこなうようにしてもよく、この場合、撮像によって得られる3Dモデリングデータの生成に好適な撮像画像を当該外部装置に提供する構成とすればよい。
【0119】
なお、上記実施形態の撮像装置と同様の機能や構成を予め備えた撮像装置によって本発明を実現できることはもとより、ステレオカメラの構成を有しているのであれば、既存の撮像装置(デジタルカメラなど)にプログラムを適用することで、本発明にかかる撮像装置として機能させることもできる。この場合、上記実施形態で例示したデジタルカメラ1と同様の構成を備えた撮像装置のコンピュータ(CPUなどの制御部)に、上述した制御部210の機能と同様の機能を実現させるためのプログラムを実行させることで、本発明にかかる撮像装置として機能させることができる。
【0120】
なお、上記実施形態では、撮像装置の例として、デジタルスチルカメラを示したが、上記実施形態で例示したデジタルカメラ1と同様の構成を備えているものであれば撮像装置の形態は任意であり、例えば、デジタルビデオカメラなどで本発明にかかる撮像装置を実現することもできる。
【0121】
いずれの場合でも、プログラムを適用することで、既存の装置を本発明にかかる画像表示装置として機能させることができる。このようなプログラムの適用方法は任意であり、例えば、CD−ROMやメモリカードなどの記憶媒体に格納して適用できる他、例えば、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。
【符号の説明】
【0122】
1…デジタルカメラ、110…第1撮像部、111…光学装置、112…イメージセンサ部、120…第2撮像部、121…光学装置、122…イメージセンサ部、200…データ処理部、210…制御部、211…動作モード処理部、212…撮像制御部、213…ファインダ表示処理部、214…3Dモデリング部、220…画像処理部、230…画像メモリ、240…画像出力部、250…記憶部、260…外部記憶部、300…I/F(インタフェース)部、310…表示部、320…外部I/F(インタフェース)部、330…操作部、TG…被写体、CP1…(第1撮像部の)撮像画像、CP2…(第2撮像部の)撮像画像、D1…最近距離、D2…最遠距離、AA…測定可能範囲、BB…測定不明範囲、CC…測定不可範囲、AD1…(D1における)有効範囲候補、AD2…(D2における)有効範囲候補
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、表示方法、および、プログラムに関し、特に、ステレオカメラを用いたモデリングに好適な撮像装置、表示方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータグラフィクスによる3次元(3D)表現が多く用いられるようになり、よりリアリティのある3D表現が求められている。このような要求に対し、実際の立体物をカメラで撮像して3Dモデリングデータを作成する手法が確立している。この場合、立体物の3次元的位置を認識するため、視差に相当する光軸のズレが設定された、いわゆる複眼カメラ(ステレオカメラ)が用いられる。(例えば、特許文献1)。
【0003】
このようなステレオカメラでは、光軸位置の異なる2つの撮像部を用いているため、各撮像部の画角には、一方の撮像部からしか写らない部分、すなわち、2つの撮像部の画角で重なり合わない部分(以下、「非オーバーラップエリア」とする)が存在する。この場合において、モデリング対象としている被写体が非オーバーラップエリアにかかっていると、当該被写体の形状測定を正確におこなうことができない。つまり、2つの撮像部の画角で重なる部分(以下、「オーバーラップエリア」とする)に被写体が収まっていなければ、3Dモデリングのために必要となる正確な形状測定をおこなうことができない。
【0004】
ここで、デジタルカメラによってステレオカメラを構成した場合、背面モニタなどにファインダ画像を表示することになるが、表示される画像は、通常、一方の撮像部によって撮像されたものが用いられる。よって、オーバーラップエリアに被写体が収まるようフレーミングしているか撮影時に確認することができなかった。
【0005】
一方で、撮像部間(レンズ間)の距離(すなわち、基線長)や撮像パラメータ(ズーム倍率など)に基づいてオーバーラップエリアを特定する手法が提案されている(例えば、特許文献2)。このような手法を応用すれば、被写体がオーバーラップエリアに収まっているか否かを撮影者が認識できる動作を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−3122号公報
【特許文献2】特開2006−121229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、オーバーラップエリアの範囲は被写体までの距離によって変化する。したがって、より正確にオーバーラップエリアを特定するには被写体の奥行きを考慮した測距をおこなう必要がある。しかしながら、特許文献2の手法では、被写体までの距離を特段考慮していないため、3Dモデリングのために立体物を撮像する際、オーバーラップエリアの特定が不正確となる場合がある。
【0008】
また、カメラのAF(Auto Focus:オートフォーカス)による焦点距離に基づいて被写体までの距離を推定することができるが、被写体の奥行きを考慮した場合、被写界深度分の誤差が生じることがある。このため、被写体の奥行きを考慮した距離推定をおこなうには、AFによる測距結果に被写界深度分の誤差を反映させる必要があるが、被写界深度を決定する要因は複雑であるため、被写体の奥行きに相当する誤差を正確に反映させることは極めて困難である。
【0009】
さらに、従来の手法では、オーバーラップエリア(形状測定可能な部分)と非オーバーラップエリア(形状測定不可の部分)の2分類で判別することしかできない。この場合、3Dモデリング対象となる被写体は立体物であるため、実際には形状測定が可能であるにもかかわらず形状測定不可と判別されたり、実際には形状測定不可であるにもかかわらず形状測定可能と判別されたりする問題がある。
【0010】
例えば、被写界深度分の誤差が被写体の奥行きに相当する分より大きく設定されてしまうと、実際には被写体が非オーバーラップエリアにかかっていても形状測定可能であると判別され、そのまま撮影されてしまうことがある。この場合、非オーバーラップエリアにかかっている部分のモデリングデータを生成することができないので、撮影のやり直しなどを強いられてしまう。
【0011】
一方、被写界深度分の誤差が被写体の奥行きに相当する分よりも小さく設定されてしまうと、実際には被写体がオーバーラップエリア内に収まっているにもかかわらず形状測定不可と判別されてしまうことがある。この場合、実際はそのままの撮影で成功するにもかかわらず、撮影条件の見直しなどといった本来は必要のない無駄な作業を撮影者に強いることになる。
【0012】
すなわち、被写体の奥行きを考慮すると被写界深度分の誤差が生じるような場合、AFによる測距では精度が不十分であるといえ、上記のような問題が顕著となってしまう。つまり、被写体の奥行きを考慮した正確な測距がなされないと、オーバーラップエリアの特定が不正確となり、その結果、撮影効率を著しく低下させてしまうことがある。
【0013】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、3Dモデリングのための撮影をより効率的におこなうことのできる撮像装置、表示方法、および、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる撮像装置は、
ステレオカメラを構成する2つの撮像手段と、
一方の前記撮像手段で得られた第1の撮像画像をファインダ画像としてファインダ画面を表示するファインダ表示手段と、
前記ファインダ画像上で指定された領域に基づいて、少なくとも前記ステレオカメラから被写体までの最近距離を三角測量で測距する測距手段と、
前記ステレオカメラから被写体までの最遠距離を指定する最遠距離指定手段と、
前記2つの撮像手段それぞれの撮像範囲が重なる範囲を有効範囲候補として特定する有効範囲候補特定手段と、
前記第1の撮像画像上で、前記最近距離における前記有効範囲候補と、前記最遠距離における前記有効範囲候補を特定し、各有効範囲候補が重複する範囲を有効範囲として特定し、各有効候補範囲の差分となる範囲を暫定有効範囲として特定する有効範囲特定手段と、
前記暫定有効範囲に含まれる画像部分を他方の前記撮像手段で得られた第2の撮像画像で探索し、該当する画像部分が存在する場合、当該部分を前記有効範囲に加える有効範囲拡張手段と、を備え、
前記ファインダ表示手段は、少なくとも、前記有効範囲と前記暫定有効範囲とが識別可能な前記ファインダ画面を表示する、
ことを特徴とする。
【0015】
上記撮像装置において、
前記測距手段は、前記第1の撮像画像で指定された領域の画像と前記第2の撮像画像との間でステレオマッチングをおこなうことで、該第2の撮像画像上で当該領域に相当する領域を特定して前記三角測量をおこなうことが望ましい。
【0016】
上記撮像装置において、
前記有効範囲拡張手段は、前記暫定有効範囲の画像と前記第2の撮像画像との間でステレオマッチングをおこなうことで、前記有効範囲に加える部分を探索することが望ましい。
【0017】
上記撮像装置において、
前記最遠距離指定手段は、前記測距手段によって測距された前記最近距離に基づいて前記最遠距離を指定してもよい。
【0018】
上記撮像装置において、
前記測距手段は、前記第1の撮像画像上で指定された領域に基づいて、前記最遠距離を測距してもよく、この場合、
前記最遠距離指定手段は、前記測距手段が測距した最遠距離を指定することができる。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点にかかる表示方法は、
ステレオカメラを構成する2つの撮像手段を備える撮像装置において、一方の前記撮像手段で得られた第1の撮像画像をファインダ画像としたファインダ画面を表示する場合に、フレーミングの良否を認識可能なファインダ表示をおこなう表示方法であって、
前記ファインダ画像上で指定された領域に基づいて、少なくとも前記ステレオカメラから被写体までの最近距離を三角測量で測距する測距ステップと、
前記ステレオカメラから被写体までの最遠距離を指定する最遠距離指定ステップと、
前記2つの撮像手段それぞれの撮像範囲が重なる範囲を有効範囲候補として特定する有効範囲候補特定ステップと、
前記第1の撮像画像上で、前記最近距離における前記有効範囲候補と、前記最遠距離における前記有効範囲候補を特定し、各有効範囲候補が重複する範囲を有効範囲として特定し、各有効候補範囲の差分となる範囲を暫定有効範囲として特定する有効範囲特定ステップと、
前記暫定有効範囲に含まれる画像部分を他方の前記撮像手段で得られた第2の撮像画像で探索し、該当する画像部分が存在する場合、当該部分を前記有効範囲に加える有効範囲拡張ステップと、
少なくとも、前記有効範囲と前記暫定有効範囲とが識別可能な前記ファインダ画面を表示するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点にかかるプログラムは、
ステレオカメラを構成する2つの撮像手段と、一方の前記撮像手段で得られた第1の撮像画像をファインダ画像としてファインダ画面を表示するファインダ表示手段と、を備える撮像装置を制御するコンピュータに、
前記ファインダ画像上で指定された領域に基づいて、少なくとも前記ステレオカメラから被写体までの最近距離を三角測量で測距する機能と、
前記ステレオカメラから被写体までの最遠距離を指定する機能と、
前記2つの撮像手段それぞれの撮像範囲が重なる範囲を有効範囲候補として特定する機能と、
前記第1の撮像画像上で、前記最近距離における前記有効範囲候補と、前記最遠距離における前記有効範囲候補を特定し、各有効範囲候補が重複する範囲を有効範囲として特定し、各有効候補範囲の差分となる範囲を暫定有効範囲として特定する機能と、
前記暫定有効範囲に含まれる画像部分を他方の前記撮像手段で得られた第2の撮像画像で探索し、該当する画像部分が存在する場合、当該部分を前記有効範囲に加える機能と、
少なくとも、前記有効範囲と前記暫定有効範囲とが識別可能な前記ファインダ画面を表示する機能と、
を実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、3Dモデリングのための撮影をより効率的におこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態にかかるデジタルカメラの外観構成を示す図である。
【図2】図1に示したデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した制御部によって実現される機能を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる「3Dモデリング用撮像処理」を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4に示した「3Dモデリング用撮像処理」にかかる動作などを説明するための図であり、(a)は、本発明の実施形態で想定する撮影場面の例を示し、(b)および(c)は、「3Dモデリング用撮像処理」で表示されるAF枠指定画面の表示例を示す。
【図6】図4に示す「3Dモデリング用撮像処理」で実行される「高精度測距処理」を説明するためのフローチャートである。
【図7】図4に示す「3Dモデリング用撮像処理」で実行される「ファインダ表示処理」を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態にかかるデジタルカメラにおける撮像範囲を説明するための図であり、(a)は、画角が広い場合の撮像範囲の例を示し、(b)は、画角が狭い場合の撮像範囲の例を示す。
【図9】図8に例示した撮像範囲と距離の関係を説明するための図であり、(a)は、被写体の最近距離および最遠距離による測定可能範囲と測定不可範囲の関係を模式的に示し、(b)は、この場合において被写体が測定可能範囲内にある状況を示し、(c)は、被写体の一部が測定不可範囲にかかっている状況を示す。
【図10】図9で示した撮像範囲と距離との関係を撮像画像上にあてはめる動作を説明するための図であり、(a)は、ファインダ画像として用いられている撮像部における測定可能範囲、測定不可範囲、最近距離、最遠距離の関係を模式的に示し、(b)は、最近距離における測定可能範囲を撮像画像上にあてはめた場合の例を示し、(c)は、最遠距離における測定可能範囲を撮像画像上にあてはめた場合の例を示し、(d)は、これらに基づいて特定される測定可能範囲、測定不明範囲、測定不可範囲の例を示す。
【図11】図7に示した「ファインダ表示処理」にかかる動作を説明するための図であり、(a)は、測定不明範囲を使ったステレオマッチングの対象となる画像の例を示し、(b)は、ステレオマッチングによってマッチングされた部分の例を示し、(c)は、拡張された測定可能範囲の例を示す。
【図12】図7に示した「ファインダ表示処理」にかかる動作を説明するための図であり、(a)は、第2撮像部でも被写体の全体が撮像されている場合のファインダ表示の例を示し、(b)は、第2撮像部では被写体の一部が撮像されていない場合の撮像画像の例を示し、(c)は、この場合のファインダ表示の例を示す。
【図13】本発明の実施形態2を説明するための図であり、(a)および(b)は、実施形態2におけるAF枠指定画面の表示例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明にかかる実施形態を、図面を参照して以下に説明する。本実施形態では、本発明をデジタルスチルカメラ(以下、デジタルカメラ)によって実現した場合を例示する。本実施形態にかかるデジタルカメラ1は、一般的なデジタルスチルカメラが有する機能を備えているものとするが、図1に示すように、撮像にかかる構成を2つ備えた、いわゆる複眼カメラ(ステレオカメラ)とする。
【0024】
このような複眼カメラの構成を有するデジタルカメラ1は、通常の撮像機能に加え、撮像した画像を用いて3次元モデリング(3Dモデリング)をおこなう機能を有しているものとする。
【0025】
このようなデジタルカメラ1の構成を、図2を参照して説明する。図2は、本発明の実施形態にかかるデジタルカメラ1の構成を示すブロック図である。本実施形態にかかるデジタルカメラ1の概略的構成は、図示するように、撮像動作部100、データ処理部200、インタフェース(I/F)部300、などである。
【0026】
撮像動作部100は、デジタルカメラ1による撮像時の動作をおこなうものであり、図2に示すように、第1撮像部110、第2撮像部120、などから構成される。
【0027】
第1撮像部110および第2撮像部120は、デジタルカメラ1の撮像動作をおこなう部分である。上述したように、本実施形態にかかるデジタルカメラ1は複眼カメラであるため、第1撮像部110と第2撮像部120とを有する構成であるが、第1撮像部110と第2撮像部120は同一の構成である。以下、第1撮像部110についての構成には110番台の参照符号、第2撮像部120についての構成には120番台の参照符号をそれぞれ付すこととし、これらの参照符号において1桁目が同値となるものは同一の構成であることを示す。
【0028】
図2に示すように、第1撮像部110(第2撮像部120)は、光学装置111(121)やイメージセンサ部112(122)などから構成されている。
【0029】
光学装置111(121)は、例えば、レンズ、絞り機構、シャッタ機構、などを含み、撮像にかかる光学的動作をおこなう。すなわち、光学装置111(121)の動作により、入射光が集光されるとともに、焦点距離、絞り、シャッタスピードなどといった、画角やピント、露出などにかかる光学的要素の調整がなされる。
【0030】
なお、光学装置111(121)に含まれるシャッタ機構はいわゆるメカニカルシャッタであり、イメージセンサの動作のみでシャッタ動作をおこなう場合には、光学装置111(121)にシャッタ機構が含まれていなくてもよい。また、光学装置111(121)は、後述する制御部210による制御によって動作する。
【0031】
イメージセンサ部112(122)は、光学装置111(121)によって集光された入射光に応じた電気信号を生成する、例えば、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Complementally Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化物半導体)などのイメージセンサから構成される。イメージセンサ部112(122)は、光電変換をおこなうことで、受光に応じた電気信号を発生してデータ処理部200に出力する。
【0032】
上述したように、第1撮像部110と第2撮像部120は同一の構成である。より詳細には、レンズの焦点距離fやF値、絞り機構の絞り範囲、イメージセンサのサイズや画素数、画素の配列や面積、などといった各仕様がすべて同一である。
【0033】
このような第1撮像部110と第2撮像部120を有するデジタルカメラ1は、図1に示すように、光学装置111に構成されたレンズと光学装置121に構成されたレンズとが、デジタルカメラ1の外面における同一面上に形成された構成とする。
【0034】
ここでは、シャッタボタンが上になる方向でデジタルカメラ1を水平にした場合に、中心位置が水平方向で同一線上となるよう2つのレンズ(受光部)が配置されるものとする。より詳細には、第1撮像部110の光軸と第2撮像部120の光軸が平行(輻輳角が0)で、かつ、エピポーラ線が一致している状態である。つまり、第1撮像部110と第2撮像部120とを同時に動作させた場合、同一被写体についての画像が撮像されることになるが、各画像における光軸位置が横方向にずれている画像となる。
【0035】
データ処理部200は、第1撮像部110および第2撮像部120による撮像動作によって生成された電気信号を処理し、撮像画像を示すデジタルデータを生成するとともに、撮像画像に対する画像処理などをおこなう。図2に示すように、データ処理部200は、制御部210、画像処理部220、画像メモリ230、画像出力部240、記憶部250、外部記憶部260、などから構成される。
【0036】
制御部210は、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)などのプロセッサや、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置(メモリ)、などから構成され、後述する記憶部250などに格納されているプログラムを実行することで、デジタルカメラ1の各部を制御する。また、本実施形態では、所定のプログラムを実行することで、後述する各処理にかかる機能が制御部210によって実現される。本実施形態では、3Dモデリングにかかる処理についても制御部210にておこなわれるものとするが、制御部210とは独立した専用プロセッサなどがおこなう構成であってもよい。
【0037】
画像処理部220は、例えば、ADC(Analog-Digital Converter:アナログ−デジタル変換器)、バッファメモリ、画像処理用のプロセッサ(いわゆる、画像処理エンジン)などから構成され、イメージセンサ部112および122によって生成された電気信号に基づいて、撮像画像を示すデジタルデータを生成する。
【0038】
すなわち、イメージセンサ部112(122)から出力されたアナログ電気信号をADCがデジタル信号に変換して順次バッファメモリに格納すると、バッファされたデジタルデータに対し、画像処理エンジンがいわゆる現像処理などをおこなうことで、画質の調整やデータ圧縮などをおこなう。
【0039】
画像メモリ230は、例えば、RAMやフラッシュメモリなどの記憶装置から構成され、画像処理部220によって生成された撮像画像データや、制御部210によって処理される画像データなどを一時的に格納する。
【0040】
画像出力部240は、例えば、RGB信号の生成回路などから構成され、画像メモリ230に展開された画像データをRGB信号などに変換して表示画面(後述する表示部310など)に出力する。
【0041】
記憶部250は、例えば、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどの記憶装置から構成され、デジタルカメラ1の動作に必要なプログラムやデータなどを格納する。本実施形態では、制御部210などが実行する動作プログラムや処理に必要となるパラメータや演算式などが記憶部250に格納されているものとする。
【0042】
外部記憶部260は、例えば、メモリカードなどといった、デジタルカメラ1に着脱可能な記憶装置から構成され、デジタルカメラ1で撮像した画像データや生成された3Dモデリングデータなどを格納する。
【0043】
インタフェース部300は、デジタルカメラ1とその使用者あるいは外部装置とのインタフェースにかかる構成であり、図2に示すように、表示部310、外部インタフェース(I/F)部320、操作部330、などから構成される。
【0044】
表示部310は、例えば、液晶表示装置などから構成され、デジタルカメラ1を操作するために必要な種々の画面や、撮影時のライブビュー画像、撮像画像、3Dモデリングデータ、などを表示出力する。本実施形態では、画像出力部240からの画像信号(RGB信号)などに基づいて撮像画像等の表示出力がおこなわれる。
【0045】
外部インタフェース部320は、例えば、USB(Universal Serial Bus)コネクタやビデオ出力端子などから構成され、画像データや3Dモデリングデータなどを外部のコンピュータ装置へ転送したり、撮像画像や3Dモデリング画像などを外部のモニタ装置に表示出力したりする。
【0046】
操作部330は、デジタルカメラ1の外面上に構成されている各種ボタンなどによって構成され、デジタルカメラ1の使用者による操作に応じた入力信号を生成して制御部210に入力する。操作部330を構成するボタンとして、例えば、シャッタ動作を指示するためのシャッタボタンや、デジタルカメラ1のもつ動作モードを指定するためのモードボタン、3Dモデリングをおこなうための設定をはじめとした各種設定をおこなうための十字キーや機能ボタン、などが含まれているものとする。
【0047】
ここで、本実施形態では、記憶部250に格納されている動作プログラムを制御部210が実行することで、後述する各処理が実現されるが、この場合に制御部210によって実現される機能を、図3を参照して説明する。
【0048】
図3は、制御部210によって実現される機能を示した機能ブロック図である。ここでは、複眼カメラによって撮像された画像から被写体画像を抽出する機能を実現するために必要な機能構成を示す。この場合、図示するように、制御部210は、動作モード処理部211、撮像制御部212、ファインダ表示処理部213、3Dモデリング部214、などとして機能する。
【0049】
動作モード処理部211は、表示部310との協働により、デジタルカメラ1が有する各種動作モードをデジタルカメラ1のユーザに指定させるために必要な画面表示や指定された動作モード毎の設定画面表示などをおこなう他、操作部330との協働により、ユーザが指定した動作モードを認識し、当該動作モードの実行に必要なプログラムや演算式などを記憶部250から読み出し、制御部210の主記憶装置(メモリ)にロードする。
【0050】
本実施形態では、デジタルカメラ1での撮影後に撮像画像から3Dモデリングをおこなう動作モード(3Dモデリングモード)がユーザによって指定されるものとし、以下に説明する制御部210の各機能構成は、3Dモデリングモードが指定されたことに応じて動作モード処理部211がロードしたプログラムを実行することで実現される機能構成である。
【0051】
撮像制御部212は、撮像動作部100(第1撮像部110、第2撮像部120)を制御することでデジタルカメラ1での撮像動作を実行する。この場合、撮像制御部212は、例えば、一般的なデジタルカメラにおいておこなわれている、測光、合焦、自動露出、撮像時の画面表示、などのような撮像にかかる各種の処理と制御をおこなう。
【0052】
ファインダ表示処理部213は、3Dモデリングモード下での撮像動作時に特有のファインダ表示処理をおこなう。すなわち、本実施形態にかかるデジタルカメラ1は、いわゆるコンパクトタイプのデジタルスチルカメラであり、撮像動作部100で得られた動画像を表示部310に表示出力することでファインダ表示をおこなうものであるが、3Dモデリングモード下では、第1撮像部110と第2撮像部120の双方で捉えられるように被写体をフレーミングしなければ被写体の形状測定をおこなうことができないので、ファインダ表示処理部213は、当該条件を満たすフレーミングとなっているかを撮影者が認識できるようなファインダ表示をおこなう。
【0053】
3Dモデリング部214は、第1撮像部110と第2撮像部120によって撮像された左右画像間で照合をおこなうことにより3Dモデリングをおこなう。この場合、3Dモデリング部214は、例えば、差の2乗和を評価式とするSSD(Sum of Squared Difference)を用いたテンプレート照合により特徴点を抽出し、抽出した特徴点をドロネー分割することによりポリゴンを生成して3Dモデリングをおこなう。
【0054】
以上が制御部210によって実現される機能である。なお、本実施形態では、制御部210がプログラムを実行することによる論理的処理で上述した各機能が実現されるものとするが、これらの機能を、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)などのハードウェアによって構成してもよい。この場合、図3に示した機能のうち、画像処理にかかる機能については、画像処理部220によって実現されてもよい。
【0055】
以上説明したデジタルカメラ1の構成は、本発明を実現するために必要な構成であり、デジタルカメラとしての基本機能や種々の付加機能に用いられる構成は必要に応じて備えられているものとする。
【0056】
(実施形態1)
このような構成のデジタルカメラ1による動作を以下に説明する。ここでは、デジタルカメラ1の動作モードのうち、上述した「3Dモデリングモード」が選択された場合の動作例を示す。この場合、デジタルカメラ1によって撮像をおこない、その撮像画像から3Dモデリングをおこなう。
【0057】
この場合、例えば、人物、動物、美術品、その他種々の立体物を被写体としてデジタルカメラ1で撮像し、その撮像画像から被写体を3次元的な画像として表すための3Dモデリングデータを生成する。このような3Dモデリングデータの生成を目的として「3Dモデリングモード」が選択された場合、デジタルカメラ1では「3Dモデリング用撮像処理」が実行される。
【0058】
この「3Dモデリング用撮像処理」を、図4に示すフローチャートを参照して説明する。「3Dモデリング用撮像処理」は、デジタルカメラ1のユーザが操作部330を操作することで、3Dモデリングモードを選択したことを契機に開始される。この場合、動作モード処理部211が、記憶部250に格納されているプログラムなどをロードすることで、図3に示した各機能構成が実現され、以下の処理が実行される。
【0059】
処理が開始されると、撮像制御部212が第1撮像部110および第2撮像部120の駆動を開始することで(ステップS11)、各撮像部の撮像動作によって左右画像に相当するライブビュー画像が取得される(ステップS12)。
【0060】
ここで、図1に示すように、本実施形態にかかるデジタルカメラ1においては、被写体に向かって左側に第1撮像部110のレンズが配置され、被写体に向かって右側に第2撮像部120のレンズが配置されているものとする。この場合におけるレンズ間の距離(基線長)が肉眼での視差に相当するので、第1撮像部110によって得られる撮像画像が左目の視野に相当する画像(左目画像)となり、第2撮像部120によって得られる撮像画像が右目の視野に相当する画像(右目画像)となる。以下、第1撮像部110によって得られた撮像画像を「撮像画像CP1」とし、第2撮像部120によって得られた撮像画像を「撮像画像CP2」とする。
【0061】
第1撮像部110および第2撮像部120によって得られた左右画像は、画像処理部220によって処理され、順次画像メモリ230に展開される。ファインダ表示処理部213は、画像メモリ230に展開された左右画像のうち、第1撮像部110によって得られた撮像画像(左目画像)のみを取得して表示部310に表示することでファインダ表示をおこなう(ステップS13)。ここでのファインダ表示は、撮影者が被写体を捉えることができるようにするための通常のファインダ表示である。
【0062】
ここで、本実施形態では、例えば、図5(a)に示すような撮影場面を想定する。すなわち、3Dモデリングデータの取得対象となる立体物を被写体TGとし、この被写体TGをステレオカメラであるデジタルカメラ1で撮影することで、被写体TGの3次元位置や形状を測定して3Dモデリングデータを生成する。この場合、ステップS13のファインダ表示では、図5(a)に示すように、第1撮像部110によって得られた被写体TGを示す撮像画像が表示部310に表示される。
【0063】
このような通常のファインダ表示をおこなうと、ファインダ表示処理部213は、当該ファインダ画面上にAF枠を表示するとともに、被写体の最も近い位置に相当するAF枠の指定を促すメッセージを示したAF枠指定画面(図5(b))を表示部310に表示する(ステップS14)。ここでは、ファインダ画面上に9点のAF枠が表示されるものとする。AF枠は、AFによる測距位置を撮影者が指定するためのものであり、一般的なデジタルカメラで通常用いられている既知の技術によって実現される。
【0064】
ここで、撮影者は、操作部330の十字キーなどを操作することで、例えば、図5(c)に示すように、デジタルカメラ1までの距離が最も近くなる被写体TG上の位置に相当するAF枠を指定し、測距動作の開始を指示するためにシャッタボタン(操作部330)の半押し操作をおこなう。このような操作がなされると(ステップS15:Yes)、撮像制御部212が撮像動作部100を制御し、少なくとも第1撮像部110を構成しているフォーカス用レンズを可動範囲内で走査させ、指定されたAF枠で画像コントラストが最も高くなるフォーカス位置を探索する。すなわち、いわゆるコントラストAFによって、指定されたAF枠で合焦するようフォーカス動作をおこなう(ステップS16)。
【0065】
デジタルカメラによる通常の撮影においては、このようなコントラストAFによる測距によってフォーカスを合わせることになるが、立体物である被写体TGの3Dモデリングデータを生成することを目的としている本例の場合、コントラストAFによる測距では精度が十分でない場合があるので、より高精度な測距をおこなうための「高精度測距処理」が実行される(ステップS100)。この「高精度測距処理」を、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0066】
処理が開始されると、ファインダ表示処理部213は、撮像画像CP1上で指定されたAF枠内の画像と、撮像画像CP2との間でステレオマッチングをおこなうことで、指定されたAF枠に相当する位置を撮像画像CP2上で探索する(ステップS101)。ここでは、デジタルカメラ1に最も近い被写体TG上の位置がAF枠によって指定されているので、同じ位置が視差に相当するズレをもって両画像上で特定されることになる。
【0067】
ここでおこなわれるステレオマッチングは、立体画像生成分野において通常おこなわれている既知の技術を用いるものであり、例えば、正規化相関法や方向符号相関法などといった任意の手法が採用しうる。また、ステップS16でおこなったコントラストAFにより、精度が低いながらもおよその距離レンジが得られているので、ステップS101のステレオマッチング動作における探索範囲を当該距離レンジで限定することで、ステレオマッチングにかかる処理の高速化を図ることができる。
【0068】
ステレオマッチングにより、撮像画像CP1と撮像画像CP2の双方で、デジタルカメラ1からの距離が最も近い被写体TG上の位置が特定されると、ファインダ表示処理部213は、三角測量の手法によって測距をおこなう(ステップS102)。つまり、ステレオマッチングによって判明した当該位置の視差、現在の画角(レンズ焦点距離)、基線長などを要素として三角測量の演算をおこなうことで、指定されたAF枠に相当する被写体TG上の位置までの距離が演算される。このような三角測量による測距は、通常、ステップS16でおこなったコントラストAFによる測距よりも高精度のものとなる。ファインダ表示処理部213は、このようにして算出した距離を、被写体TGまでの最近距離D1とする(ステップS103)。
【0069】
ここで、被写体TGは立体物であるため、デジタルカメラ1に対して奥行きがある。よって、被写体TG全体の正確な3Dモデリングデータを生成するには、被写体TGの奥行きに相当する距離を考慮する必要がある。この場合、ステップS16でおこなったようなコントラストAFなどによる測距では、そのときの画角(レンズ焦点距離)や絞りによって生じる被写界深度の影響により、被写体TGの奥行きに相当する最遠距離までは正確に測距できない。
【0070】
よって、本実施形態では、三角測量によって得られた、より精度の高い距離情報を基準にして、被写体TGの奥行き範囲を指定する(ステップS104)。ここでは、ステップS101〜ステップS103の処理で得られた最近距離D1に、例えば、所定の乗数を乗じることで被写体TGの奥行き範囲を指定する。ここで採用する乗数は任意であり、例えば、固定値であってもよく、あるいは、撮影者が数値を選択するものであってもよい。乗数の指定に際しては、例えば、そのときの画角や最近距離D1などに基づいて、画角内に収まる被写体TGの大きさの上限などを推定することができるので、その大きさに相当する奥行き範囲となる乗数を演算により求めて指定してもよい。
【0071】
ファインダ表示処理部213は、最近距離D1にこのような乗数を乗じることで得られた距離を、デジタルカメラ1から最も遠い被写体TG上の位置までの距離であることを示す最遠距離D2とし(ステップS105)、「3Dモデリング用撮像処理」(図4)のフローに戻る。
【0072】
「3Dモデリング用撮像処理」では、3Dモデリングにおける形状測定を確実におこなえるフレーミングであるか認識可能なファインダ表示をおこなうための「ファインダ表示処理」が引き続き実行される(ステップS200)。この「ファインダ表示処理」を図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0073】
処理が開始されると、ファインダ表示処理部213は、撮像制御部212に問い合わせることで、現在の撮像パラメータを取得する(ステップS201)。ここで取得される撮像パラメータは、主に現在の画角を特定するものであり、例えば、レンズの焦点距離(ズーム値)などである。
【0074】
ここで画角にかかる撮像パラメータが必要となるのは、第1撮像部110および第2撮像部120の撮像範囲が画角によって異なるためである。図8は、デジタルカメラ1を上から見た場合の撮像範囲を模式的に示したものであり、図8(a)は、画角が比較的広い(すなわち、レンズ焦点距離が広角側)場合の撮像範囲の例を示し、図8(b)は、画角が比較的狭い(すなわち、レンズ焦点距離が望遠側)場合の撮像範囲の例を示したものである。
【0075】
図8に示したように、第1撮像部110と第2撮像部120によるステレオカメラとして構成されたデジタルカメラ1では、第1撮像部110の撮像範囲と第2撮像部120の撮像範囲が重なる部分(オーバーラップエリア)にある被写体については3Dモデリングのための形状測定をおこなうことができる(以下、「測定可能範囲」とする)が、重ならない部分(非オーバーラップエリア)にある被写体については、第1撮像部110あるいは第2撮像部120のいずれかにしか写らないため、形状測定をおこなうことができない(以下、「測定不可範囲」とする)。
【0076】
被写体のフレーミングが、オーバーラップエリアか非オーバーラップエリアであるかの2分類で判別することは従来もあったが、3Dモデリングを目的としている場合、立体物が被写体となるため、その奥行きを考慮する必要がある。すなわち、例えば、図9(a)に示すように、オーバーラップエリア(測定可能範囲)と非オーバーラップエリア(測定不可範囲)の関係は距離によって変化するため、本実施形態における被写体TGの場合、最近距離D1と最遠距離D2とが同じ分類に属するとは限らない。
【0077】
この場合において、本実施形態では、ファインダ画像として、第1撮像部110によって得られた撮像画像CP1を用いているので、例えば、図9(b)に示すように、最近距離D1から最遠距離D2の範囲で被写体TGがすべて測定可能範囲に収まるようフレーミングされている場合も、図9(c)に示すように、最近距離D1から最遠距離D2の範囲で被写体TGの一部が測定不可範囲にかかるようにフレーミングされている場合も、第1撮像部110の撮像範囲内に被写体TGがあるため、図9(c)に示した状態となっていることを、撮影者がファインダ画面から認識することができない。
【0078】
よって、本実施形態では、図9(c)に例示するような状態となっていることをファインダ画面で撮影者が認識できるよう、ステップS202以降の処理をおこなう。上述のように、本実施形態では、第1撮像部110で得られた撮像画像CP1をファインダ画像としているので、以下、第1撮像部110の撮像範囲について、図10(a)に示したような測定可能範囲、測定不可範囲、最近距離D1、最遠距離D2の関係を例に説明する。
【0079】
ファインダ表示処理部213は、最近距離D1での測定可能範囲を演算し(ステップS202)、演算した範囲を、図10(b)に示すように、撮像画像CP1上にあてはめる。ここでは、ステップS201で取得した撮像パラメータが示す画角、三角測量によって得られている最近距離D1、基線長、などを要素とした演算によって測定可能範囲を求めることができる。より詳細には、図10(a)に示したような最近距離D1を示す線分上における測定可能領域と測定不可領域の1次元上の比率を求め、測定可能領域に相当する1次元範囲を、2次元画像である撮像画像CP1上に適用する。
【0080】
次に、ファインダ表示処理部213は、同様の処理により、最遠距離D2での測定可能範囲を演算し(ステップS203)、演算した範囲を、図10(c)に示すように、撮像画像CP1上にあてはめる。
【0081】
ここで、図10(a)に示すように、線分D1上における測定可能範囲の割合と、線分D2上における測定可能範囲の割合は異なる。すなわち、図10(b)に示すような、撮像画像CP1に割り当てた最近距離D1での測定可能範囲(以下、「有効範囲候補AD1」とする)よりも、図10(c)に示すような、最遠距離D2での測定可能範囲(以下、「有効範囲候補AD2」とする)の方が広い。
【0082】
この場合、有効範囲候補AD1と有効範囲候補AD2とが重複する領域(すなわち、有効範囲候補AD1)は、確実に形状測定をおこなうことができる。よって、本実施形態では、このような領域を「測定可能範囲AA」(有効範囲)とする(ステップS204、図10(d))。
【0083】
一方、有効範囲候補AD2と有効範囲候補AD1との差分となる領域は、デジタルカメラ1からの距離によって形状測定をおこなえる場合とおこなえない場合がある。よって、本実施形態では、このような領域を「測定不明範囲BB」(暫定有効範囲)とする(ステップS205、図10(d))。
【0084】
また、上記の条件のいずれにも属さない領域では形状測定を全くおこなうことができないので、本実施形態では、このような領域を「測定不可範囲CC」とする(ステップS206、図10(d))。
【0085】
つまり、本実施形態では、従来の2分類だけでなく、測定不明範囲を加えて判別をおこなうことができるようになる。ここで、測定不明範囲BBに被写体TGがかかる場合、当該部分までの距離などによって測定可否が分かれる。この判別を、撮像画像CP2とのステレオマッチングによっておこなう。
【0086】
この場合、ファインダ表示処理部213は、図11(a)に示すように、撮像画像CP1上での測定不明範囲BBの画像と撮像画像CP2との間でステレオマッチングをおこなう(ステップS207)。なお、ここでのステレオマッチングでは、各撮像画像の解像度を落とすことで処理の高速化を図ってもよい。
【0087】
ここで、例えば、図11(a)に示すように、撮像画像CP2においても被写体TGのすべてが写っているようなフレーミングであれば、図11(b)に示すように、撮像画像CP1上で測定不明範囲BBにかかっている被写体TGの部分がマッチングすることになる。
【0088】
このような部分は一致度が高いので、ファインダ表示処理部213は、ステップS207のステレオマッチングにより、一致度が所定の閾値以上となる画像部分をマッチング領域とし、図11(c)に示すように、当該領域を測定可能範囲AAに取り込む(ステップS208)。この場合、当該領域は測定不明範囲BBからは除外されたことになる。
【0089】
ファインダ表示処理部213は、このようにして更新した測定可能範囲AA、測定不明範囲BB、測定不可範囲CCが識別可能となるようなファインダ表示をおこなって(ステップS209)、「3Dモデリング用撮像処理」(図4)のフローに戻る。この場合のファインダ表示の例を図12(a)に示す。
【0090】
ここでは、例えば、測定可能範囲AAに相当する表示領域は通常の表示とし、測定不明範囲BBに相当する表示領域は通常表示よりも輝度を落とし、測定不可領域CCに相当する表示領域はさらに輝度を落とすようなファインダ表示とする。このようなファインダ表示であれば、通常の表示がなされている領域に被写体TGが収まるようにフレーミングすることで、被写体TGの形状測定が確実におこなえることになる。
【0091】
一方、例えば、図12(b)に示すように、撮像画像CP2では被写体TGのすべてが写っていないようなフレーミングである場合、このような撮像画像CP2で測定不明範囲BBの画像のステレオマッチングをおこなってもマッチングする領域を見つけることができない。この場合、図11(c)で例示したような測定可能範囲AAの拡張はおこなわれないので、図12(c)に示すようなファインダ表示となる。
【0092】
すなわち、撮像画像CP1上で輝度を落とした表示領域に被写体TGの一部がかかっているように表示される。したがって、撮影者は、このようなファインダ表示から、被写体TGの形状測定をおこなうことができないフレーミングであることを認識することができる。
【0093】
つまり、撮影者は、図12(a)で示したようなファインダ表示であれば、現在のフレーミングで撮影してもよいと判断できるので、この場合は、撮像動作を指示するための操作であるシャッタボタン(操作部330)の全押しをおこなう。
【0094】
この場合(ステップS17:Yes)、撮像制御部212は、第1撮像部110と第2撮像部120を制御することで撮像動作をおこなう(ステップS18)。ここでは、現在の撮像パラメータで第1撮像部110と第2撮像部120を同時に駆動させることで、左右画像となる静止画像が取得される。
【0095】
一方、図12(c)で示したようなファインダ表示であれば、現在のフレーミングで撮影しても被写体TGの形状測定をおこなえないと判断できるので、撮像指示をおこなわない。この場合、撮影者は、アングルを変えたり、レンズ焦点距離(ズーム値)を変えたりすることでフレーミングを変える。
【0096】
このような状況では、シャッタボタン(操作部330)の全押しがおこなわれない状態が継続する。このような場合(ステップS17:No、ステップS19:Yes)、フレーミングの変化により被写体TGまでの距離も変化した可能性があるため、ファインダ表示処理部213は、ステップS14以降の処理をおこなう。すなわち、AF枠指定画面を再度表示して、撮影者に被写体TGの最近位置を指定させる。
【0097】
新たなフレーミングの結果、図12(a)に示すようなファインダ表示になれば、撮像指示がなされ、ステップS18で撮像動作がおこなわれる。撮像制御部212は、この撮像で得られた左右画像を、例えば、記憶部250などに保存する(ステップS20)。
【0098】
その後、所定時間内に測距開始を指示するシャッタボタン(操作部330)の半押しがなされると(ステップS21:Yes)、ステップS13以降の処理がおこなわれ、3Dモデリングデータの生成を目的とした撮像が同様におこなわれる。
【0099】
一方、シャッタボタンの半押し操作がなされずに所定時間が経過した場合(ステップS21:No、ステップS22:Yes)、3Dモデリング部214は、ステップS20で保存された撮像画像を用いて3Dモデリングデータの生成をおこなう(ステップS23)。
【0100】
なお、本例では制御部210の処理負荷を考慮し、撮像動作をおこなわないときに3Dモデリングデータの生成をおこなうようにしたが、制御部210の処理能力に余裕がある場合や、3Dモデリングにかかる処理を制御部210とは別の専用プロセッサなどでおこなわせる場合には、撮像動作のバックグラウンドで3Dモデリングにかかる処理が並行しておこなわれるようにしてもよい。
【0101】
ここで、例えば、3Dモデリングモードの解除やデジタルカメラ1の電源オフなどといった所定の終了イベントが発生しなければ(ステップS24:No)、ステップS13以降の処理が再度おこなわれ、被写体TGの奥行きを考慮した測距動作を伴う撮像動作がおこなわれる。
【0102】
そして、終了イベントの発生により(ステップS24:Yes)、処理を終了する。
【0103】
以上のように、本実施形態にかかる処理によれば、立体物である被写体の奥行きを考慮したより正確な測距をおこなうことで、一方の撮像部による撮像画像をファインダ画像として用いている場合であっても、被写体の形状測定を確実におこなえるフレーミングであるか撮影者に認識させることができる。
【0104】
(実施形態2)
上記実施形態1では、被写体TGまでの最近距離D1を測距し、被写体TGの奥行きが反映された最遠距離D2については、最近距離D1に乗数を乗じることで求めたが、例えば、デジタルカメラ1から最も近い被写体TG上の位置と、デジタルカメラ1から最も遠い被写体TG上の位置の2つをAF枠で指定することで、最遠距離D2についても、「高精度測距処理」(図6)と同様の処理で測距するようにしてもよい。
【0105】
この場合、「3Dモデリング用撮像処理」(図4)のステップS14では、例えば、図13(a)に示すようなAF枠指定画面を表示部310に表示する。ここでは、実施形態1の場合と同様のAF枠を表示するとともに、例えば、被写体の最も近い位置と最も遠い位置の指定を促すメッセージなどを表示する。そして、撮影者は、十字キーなどの操作部330を操作することで、例えば、図13(b)に示すように、2つのAF枠を指定する。
【0106】
ファインダ表示処理部213は、指定された2つのAF枠のそれぞれについて、ステップS16のコントラストAFによる測距、および、「高精度測距処理」(ステップS100、図6)による測距をおこなうことで、最近距離D1と最遠距離D2を求める。
【0107】
このような方法によれば、最遠距離D2についても三角測量による精度の高い測距をおこなうことができるので、実施形態1で示したような、測定可能範囲AA、測定不明範囲BB、測定不可範囲CCの特定をより正確におこなうことができる。
【0108】
以上説明したように、本発明を上記実施形態の如く適用することにより、3Dモデリングのための撮影をより効率的におこなうことができる。
【0109】
この場合において、AF枠などで指定された被写体部分までの測距を、ステレオカメラによる左右画像を用いたステレオマッチングによる三角測量でおこなうので、デジタルカメラなどで一般的となっているコントラストAFよりも精度の高い測距をおこなうことができ、測定可能範囲(有効範囲)の特定をより正確におこなうことができる。
【0110】
また、3Dモデリング対象となる立体物が被写体であるため、被写体の奥行きを考慮して測定可能範囲(有効範囲)を特定するので、測定可能範囲(有効範囲)の特定をより正確におこなうことができる。
【0111】
ここで、被写体の奥行きに相当する範囲では測定可能範囲が変化するため、被写体までの最近距離における測定可能範囲と、被写体までの最遠距離における測定可能範囲の差分となる範囲は測定不明範囲(暫定有効範囲)とし、この範囲の画像と、ファインダ画像として用いていない撮像画像との間でステレオマッチングをおこない、マッチングする部分があれば当該部分を測定可能範囲(有効範囲)に加えるので、アングルや画角によって特定が困難な測定可能範囲(有効範囲)をより確実に特定することができる。
【0112】
そして、特定された測定可能範囲(有効範囲)や測定不明範囲(暫定有効範囲)などが撮影者に認識できるようにファインダ表示をおこなうので、3Dモデリングなどに必要となる形状測定などを確実におこなえる撮像範囲に被写体をフレーミングしているか撮影時に確認することができ、撮影効率を向上させることができる。
【0113】
なお、被写体の奥行きを反映した最遠距離の指定においては、測距した最近距離に基づいて指定することができ、この場合は、少ない処理負荷で、被写体の奥行きを考慮した測定可能範囲(有効範囲)の特定をおこなうことができる。
【0114】
一方、最遠距離についても、三角測量による測距によって求めてもよく、この場合は、より正確な最遠距離を用いて測定可能範囲(有効範囲)の特定をおこなうことができる。
【0115】
上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0116】
例えば、上記実施形態では、指定されたAF枠でコントラストAFによる測距をおこなってから三角測量によるより精度の高い測距をおこなうこととしたが、コントラストAFなどによる測距をおこなわずに、三角測量による測距のみであってもよい。
【0117】
また、上記実施形態1では、被写体TGまでの最近距離D1を測距し、最近距離D1を基準として最遠距離D2を指定したが、測距する対象を最遠距離とし、これを基準に最近距離を指定するようにしてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、撮像画像から3Dモデリングデータを生成する構成を含んでいる撮像装置の例を示したが、撮像装置内で3Dモデリングデータの生成をおこなわなくてもよい。すなわち、3Dモデリングデータの生成は外部装置によっておこなうようにしてもよく、この場合、撮像によって得られる3Dモデリングデータの生成に好適な撮像画像を当該外部装置に提供する構成とすればよい。
【0119】
なお、上記実施形態の撮像装置と同様の機能や構成を予め備えた撮像装置によって本発明を実現できることはもとより、ステレオカメラの構成を有しているのであれば、既存の撮像装置(デジタルカメラなど)にプログラムを適用することで、本発明にかかる撮像装置として機能させることもできる。この場合、上記実施形態で例示したデジタルカメラ1と同様の構成を備えた撮像装置のコンピュータ(CPUなどの制御部)に、上述した制御部210の機能と同様の機能を実現させるためのプログラムを実行させることで、本発明にかかる撮像装置として機能させることができる。
【0120】
なお、上記実施形態では、撮像装置の例として、デジタルスチルカメラを示したが、上記実施形態で例示したデジタルカメラ1と同様の構成を備えているものであれば撮像装置の形態は任意であり、例えば、デジタルビデオカメラなどで本発明にかかる撮像装置を実現することもできる。
【0121】
いずれの場合でも、プログラムを適用することで、既存の装置を本発明にかかる画像表示装置として機能させることができる。このようなプログラムの適用方法は任意であり、例えば、CD−ROMやメモリカードなどの記憶媒体に格納して適用できる他、例えば、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。
【符号の説明】
【0122】
1…デジタルカメラ、110…第1撮像部、111…光学装置、112…イメージセンサ部、120…第2撮像部、121…光学装置、122…イメージセンサ部、200…データ処理部、210…制御部、211…動作モード処理部、212…撮像制御部、213…ファインダ表示処理部、214…3Dモデリング部、220…画像処理部、230…画像メモリ、240…画像出力部、250…記憶部、260…外部記憶部、300…I/F(インタフェース)部、310…表示部、320…外部I/F(インタフェース)部、330…操作部、TG…被写体、CP1…(第1撮像部の)撮像画像、CP2…(第2撮像部の)撮像画像、D1…最近距離、D2…最遠距離、AA…測定可能範囲、BB…測定不明範囲、CC…測定不可範囲、AD1…(D1における)有効範囲候補、AD2…(D2における)有効範囲候補
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオカメラを構成する2つの撮像手段と、
一方の前記撮像手段で得られた第1の撮像画像をファインダ画像としてファインダ画面を表示するファインダ表示手段と、
前記ファインダ画像上で指定された領域に基づいて、少なくとも前記ステレオカメラから被写体までの最近距離を三角測量で測距する測距手段と、
前記ステレオカメラから被写体までの最遠距離を指定する最遠距離指定手段と、
前記2つの撮像手段それぞれの撮像範囲が重なる範囲を有効範囲候補として特定する有効範囲候補特定手段と、
前記第1の撮像画像上で、前記最近距離における前記有効範囲候補と、前記最遠距離における前記有効範囲候補を特定し、各有効範囲候補が重複する範囲を有効範囲として特定し、各有効候補範囲の差分となる範囲を暫定有効範囲として特定する有効範囲特定手段と、
前記暫定有効範囲に含まれる画像部分を他方の前記撮像手段で得られた第2の撮像画像で探索し、該当する画像部分が存在する場合、当該部分を前記有効範囲に加える有効範囲拡張手段と、を備え、
前記ファインダ表示手段は、少なくとも、前記有効範囲と前記暫定有効範囲とが識別可能な前記ファインダ画面を表示する、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記測距手段は、前記第1の撮像画像で指定された領域の画像と前記第2の撮像画像との間でステレオマッチングをおこなうことで、該第2の撮像画像上で当該領域に相当する領域を特定して前記三角測量をおこなう、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記有効範囲拡張手段は、前記暫定有効範囲の画像と前記第2の撮像画像との間でステレオマッチングをおこなうことで、前記有効範囲に加える部分を探索する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記最遠距離指定手段は、前記測距手段によって測距された前記最近距離に基づいて前記最遠距離を指定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記測距手段は、前記第1の撮像画像上で指定された領域に基づいて、前記最遠距離を測距し、
前記最遠距離指定手段は、前記測距手段が測距した最遠距離を指定する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
ステレオカメラを構成する2つの撮像手段を備える撮像装置において、一方の前記撮像手段で得られた第1の撮像画像をファインダ画像としたファインダ画面を表示する場合に、フレーミングの良否を認識可能なファインダ表示をおこなう表示方法であって、
前記ファインダ画像上で指定された領域に基づいて、少なくとも前記ステレオカメラから被写体までの最近距離を三角測量で測距する測距ステップと、
前記ステレオカメラから被写体までの最遠距離を指定する最遠距離指定ステップと、
前記2つの撮像手段それぞれの撮像範囲が重なる範囲を有効範囲候補として特定する有効範囲候補特定ステップと、
前記第1の撮像画像上で、前記最近距離における前記有効範囲候補と、前記最遠距離における前記有効範囲候補を特定し、各有効範囲候補が重複する範囲を有効範囲として特定し、各有効候補範囲の差分となる範囲を暫定有効範囲として特定する有効範囲特定ステップと、
前記暫定有効範囲に含まれる画像部分を他方の前記撮像手段で得られた第2の撮像画像で探索し、該当する画像部分が存在する場合、当該部分を前記有効範囲に加える有効範囲拡張ステップと、
少なくとも、前記有効範囲と前記暫定有効範囲とが識別可能な前記ファインダ画面を表示するステップと、
を含むことを特徴とする表示方法。
【請求項7】
ステレオカメラを構成する2つの撮像手段と、一方の前記撮像手段で得られた第1の撮像画像をファインダ画像としてファインダ画面を表示するファインダ表示手段と、を備える撮像装置を制御するコンピュータに、
前記ファインダ画像上で指定された領域に基づいて、少なくとも前記ステレオカメラから被写体までの最近距離を三角測量で測距する機能と、
前記ステレオカメラから被写体までの最遠距離を指定する機能と、
前記2つの撮像手段それぞれの撮像範囲が重なる範囲を有効範囲候補として特定する機能と、
前記第1の撮像画像上で、前記最近距離における前記有効範囲候補と、前記最遠距離における前記有効範囲候補を特定し、各有効範囲候補が重複する範囲を有効範囲として特定し、各有効候補範囲の差分となる範囲を暫定有効範囲として特定する機能と、
前記暫定有効範囲に含まれる画像部分を他方の前記撮像手段で得られた第2の撮像画像で探索し、該当する画像部分が存在する場合、当該部分を前記有効範囲に加える機能と、
少なくとも、前記有効範囲と前記暫定有効範囲とが識別可能な前記ファインダ画面を表示する機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
ステレオカメラを構成する2つの撮像手段と、
一方の前記撮像手段で得られた第1の撮像画像をファインダ画像としてファインダ画面を表示するファインダ表示手段と、
前記ファインダ画像上で指定された領域に基づいて、少なくとも前記ステレオカメラから被写体までの最近距離を三角測量で測距する測距手段と、
前記ステレオカメラから被写体までの最遠距離を指定する最遠距離指定手段と、
前記2つの撮像手段それぞれの撮像範囲が重なる範囲を有効範囲候補として特定する有効範囲候補特定手段と、
前記第1の撮像画像上で、前記最近距離における前記有効範囲候補と、前記最遠距離における前記有効範囲候補を特定し、各有効範囲候補が重複する範囲を有効範囲として特定し、各有効候補範囲の差分となる範囲を暫定有効範囲として特定する有効範囲特定手段と、
前記暫定有効範囲に含まれる画像部分を他方の前記撮像手段で得られた第2の撮像画像で探索し、該当する画像部分が存在する場合、当該部分を前記有効範囲に加える有効範囲拡張手段と、を備え、
前記ファインダ表示手段は、少なくとも、前記有効範囲と前記暫定有効範囲とが識別可能な前記ファインダ画面を表示する、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記測距手段は、前記第1の撮像画像で指定された領域の画像と前記第2の撮像画像との間でステレオマッチングをおこなうことで、該第2の撮像画像上で当該領域に相当する領域を特定して前記三角測量をおこなう、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記有効範囲拡張手段は、前記暫定有効範囲の画像と前記第2の撮像画像との間でステレオマッチングをおこなうことで、前記有効範囲に加える部分を探索する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記最遠距離指定手段は、前記測距手段によって測距された前記最近距離に基づいて前記最遠距離を指定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記測距手段は、前記第1の撮像画像上で指定された領域に基づいて、前記最遠距離を測距し、
前記最遠距離指定手段は、前記測距手段が測距した最遠距離を指定する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
ステレオカメラを構成する2つの撮像手段を備える撮像装置において、一方の前記撮像手段で得られた第1の撮像画像をファインダ画像としたファインダ画面を表示する場合に、フレーミングの良否を認識可能なファインダ表示をおこなう表示方法であって、
前記ファインダ画像上で指定された領域に基づいて、少なくとも前記ステレオカメラから被写体までの最近距離を三角測量で測距する測距ステップと、
前記ステレオカメラから被写体までの最遠距離を指定する最遠距離指定ステップと、
前記2つの撮像手段それぞれの撮像範囲が重なる範囲を有効範囲候補として特定する有効範囲候補特定ステップと、
前記第1の撮像画像上で、前記最近距離における前記有効範囲候補と、前記最遠距離における前記有効範囲候補を特定し、各有効範囲候補が重複する範囲を有効範囲として特定し、各有効候補範囲の差分となる範囲を暫定有効範囲として特定する有効範囲特定ステップと、
前記暫定有効範囲に含まれる画像部分を他方の前記撮像手段で得られた第2の撮像画像で探索し、該当する画像部分が存在する場合、当該部分を前記有効範囲に加える有効範囲拡張ステップと、
少なくとも、前記有効範囲と前記暫定有効範囲とが識別可能な前記ファインダ画面を表示するステップと、
を含むことを特徴とする表示方法。
【請求項7】
ステレオカメラを構成する2つの撮像手段と、一方の前記撮像手段で得られた第1の撮像画像をファインダ画像としてファインダ画面を表示するファインダ表示手段と、を備える撮像装置を制御するコンピュータに、
前記ファインダ画像上で指定された領域に基づいて、少なくとも前記ステレオカメラから被写体までの最近距離を三角測量で測距する機能と、
前記ステレオカメラから被写体までの最遠距離を指定する機能と、
前記2つの撮像手段それぞれの撮像範囲が重なる範囲を有効範囲候補として特定する機能と、
前記第1の撮像画像上で、前記最近距離における前記有効範囲候補と、前記最遠距離における前記有効範囲候補を特定し、各有効範囲候補が重複する範囲を有効範囲として特定し、各有効候補範囲の差分となる範囲を暫定有効範囲として特定する機能と、
前記暫定有効範囲に含まれる画像部分を他方の前記撮像手段で得られた第2の撮像画像で探索し、該当する画像部分が存在する場合、当該部分を前記有効範囲に加える機能と、
少なくとも、前記有効範囲と前記暫定有効範囲とが識別可能な前記ファインダ画面を表示する機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−191568(P2011−191568A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58483(P2010−58483)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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