説明

撮像装置

【課題】 撮像装置を机の上などに置いた場合に、机の上が精度よく水平面になっていれば、傾き表示装置が傾きゼロと表示し、仮に机の上が傾いていたとしても、撮像装置が水平方向の姿勢を保つように、手動操作で、または自動的に撮像装置に姿勢を補正することができる撮像装置を得る。
【解決手段】 撮影光学系と、この撮影光学系を介して入射する光を電気信号に変換する撮像素子101と、撮像素子101による撮像信号により被写体像を表示する表示部と、加速度センサー111と、撮影光学系、撮像素子101、表示部、加速度センサー111が組み込まれた外装カバー1と、加速度センサー111の出力から外装カバー1の傾きを算出する傾き算出手段と、傾き算出手段で算出された外装カバー1の傾きを表示する傾き表示部と、外装カバー1に突出量を調整可能に設けられている載置用の脚46,47と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換撮像素子により光学像を電気信号に変換する撮像装置、特に、撮像装置の傾きを電気的に検出し、この傾き情報に相応した傾き表示を行う傾き表示装置を備え、あるいは傾き補正装置を備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電変換撮像素子により光学像を電気信号に変換する機能を備えたデジタルカメラなどの撮像装置には、傾き表示装置を備えたものがある。この傾き表示装置は、加速度センサーやジャイロセンサー等の傾き検出手段によって傾きを検出し、この検出信号を演算処理して傾き角度を算出し、モニタ画面上に前記傾き角度に対応した表示を行うもので、一種の電子的な水準器といえるものである。この傾き表示装置を備えたカメラなどの撮像装置によれば、傾き表示装置の表示を見ながら撮像装置の姿勢を決めることができるので、例えば水平線を画面の中に精度よく水平方向に写し込もうとする場合、あるいは建物の垂直面を画面の中に精度よく垂直に写し込もうとする場合などに有効である。
なお、撮像装置本体の左右方向の傾き角度のことをロール角と呼称し、撮像画面上における左右方向の傾きとして表われる。
【0003】
特許文献1には、傾き表示装置を備えた撮像装置において、画像を水平または垂直に精度よく合わせるための傾き情報を得ることができるようにした技術が記載されている。この技術は、加速度センサーの出力から傾きを算出する手段と、算出した傾きに基づき枠とインジケータによってモニタに傾きを表示する手段とを有してなる水準器モジュールを備え、撮像装置としてのデジタルカメラのメカ駆動部の作動開始時に、水準器モジュールの制御を変更し、メカ駆動部の動作終了時には、水準器モジュールの制御を再び変更するようになっている。水準器モジュールの制御処理としては、モニタに表示している傾きを表示する手段(枠とインジケータ)を消去する、加速度センサーを省電力モードに移行する、あるいは加速度センサー出力から傾きを算出する手段の処理を停止する、という処理がある。また、加速度センサーを省電力モードから復帰させる、加速度センサー出力から傾きを算出する、モニタ上に枠とインジケータを再表示させる、という処理がある。かかる制御処理を行うことによって、メカ駆動部の動作に起因するノイズ成分の影響を緩和し、正確な傾きを得ることができるものであって、ソフトウェアによる処理が主体になっている。
【0004】
カメラなどの撮像装置の使用態様によっては、撮像装置を机の上などに置いて撮影することがある。しかし、机の上などは必ずしも水平であるとは限らず、傾いていることがある。傾いている机の上などに特許文献1に記載されているような傾き表示装置を備えた撮像装置を置くと、撮像装置が傾くため、傾き表示装置による表示が水平の表示にならず、上記傾きに対応した傾き表示をすることになる。また、この姿勢のままで撮像すると、撮像画面上において被写体が傾いた態様で撮像されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、撮像装置を机の上などに置いた場合に、机の上が精度よく水平面になっていれば、傾き表示装置が傾きゼロと表示し、仮に机の上が傾いていたとしても、撮像装置が水平方向の姿勢を保つように、手動操作で、または自動的に撮像装置に姿勢を補正することができるようにした撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る撮像装置は、撮影光学系と、この撮影光学系を介して入射する光を電気信号に変換する撮像素子と、この撮像素子による撮像信号により被写体像を表示する表示部と、加速度センサーと、前記撮影光学系、撮像素子、表示部、加速度センサーが組み込まれた外装カバーと、前記加速度センサーの出力から前記外装カバーの傾きを算出する傾き算出手段と、前記傾き算出手段で算出された外装カバーの傾きを表示する傾き表示部と、前記外装カバーに突出量を調整可能に設けられている載置用の脚と、を有することを最も主要な特徴とする。
【0007】
本発明に係る撮像装置において、撮影光学系と撮像素子を有する鏡胴ユニットを備え、この鏡胴ユニットは外装カバーに位置決めして固定されている構成にしてもよい。
本発明に係る撮像装置において、載置用の脚は複数あり、複数の載置用の脚の一つが外装カバーからの突出量を調整可能に設けられている構成にしてもよい。
本発明に係る撮像装置において、突出量を調整可能な脚は、外装カバーから露出したダイヤル操作部材の回転操作により突出量を調整可能に設けられている構成にしてもよい。
【0008】
本発明に係る撮像装置において、突出量を調整可能な脚はねじ部を備え、このねじ部はモータによって回転駆動されるねじ部材と噛み合い、前記調整可能な脚が回転駆動されることにより、前記モータ側のねじ部材に対する前記調整可能な脚のねじ部の摺接位置が移動して、外装カバーに対する前記調整可能な脚の突出量が調整可能となっている構成にしてもよい。
【0009】
本発明に係る撮像装置において、突出量を調整可能な脚は、モータ側のねじ部材がモータによって回転駆動されることにより、前記モータ側のねじ部材に対する前記調整可能な脚のねじ部の摺接位置が移動して、外装カバーに対する前記調整可能な脚の突出量が調整可能となっていてもよい。
【0010】
本発明に係る撮像装置において、前記モータは、加速度センサーの出力から傾き算出手段により算出した外装カバーの傾きがゼロになるように、制御部によって回転が制御される構成にしてもよい。
本発明に係る撮像装置において、制御部は、対応するモードを選択したときにのみ、突出量を調整可能な脚の突出量制御を行う構成にしてもよい。
【0011】
本発明に係る撮像装置において、傾き表示部は、突出量を調整可能な脚のモータによる突出量制御と同時に傾き表示部による外装カバーの傾き表示を行う構成にしてもよい。
本発明に係る撮像装置において、外装カバーの水平と撮像素子の水平とが一致するように調整され、外装カバーが水平の姿勢で傾き表示部が傾きゼロと表示するように調整されているとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カメラなどの撮像装置を机の上などに置いて撮影する場合に、机の上面が傾いていると撮像装置の外装カバーの姿勢も傾くので、外装カバーが傾いていることを傾き表示部が表示する。外装カバーに設けられている載置用の脚は外装カバーからの突出量を調整可能に設けられているため、この載置用の脚の突出量を調整することにより、上記傾き表示部で表示される外装カバーの傾きがゼロとなるように補正することができる。
【0013】
撮像装置を載置する机の上面などが精度の良い水平面になっていたとしても、載置用の脚の突出量によっては、上記机の上面などに載置された撮像装置は姿勢が傾くことになる。しかし、上記のように、傾き表示部が傾きゼロを表示するように上記載置用の脚の突出量を調整することにより、外装カバーの傾きがゼロとなるように補正することができる。
【0014】
上記載置用の脚の突出量調整は、手動操作で行うこともできるし、モータの制御によって自動的に行うこともできる。自動的に行うようにしておけば、撮像装置を載置する面の水平度を意識しなくても自動的に水平の姿勢を保った状態で撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る撮像装置の実施例であるデジタルカメラの例を前側から示す外観斜視図である。
【図2】前記実施例を後ろ側から示す外観斜視図である。
【図3】前記実施例に係る撮像装置内部のシステム構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明に適用される傾き表示画像の例を示す正面図である。
【図5】前記傾き表示画像による異なる表示態様を示す正面図である。
【図6】本発明に係る撮像装置に組み込まれるレンズユニットの例を正面側から示す斜視図である。
【図7】前記実施例中の外装カバーを示す背面図である。
【図8】前記実施例における突出量を調整可能な脚および撮像素子の様子を示す背面図である。
【図9】前記実施例の表示部に表示されるモード選択画面の例を示す画像図である。
【図10】前記実施例を後ろ側下方から示す斜視図である。
【図11】前記実施例における傾き調整機構を図10に示す線A−Aに沿った断面で示す背面図である。
【図12】前記傾き調整機構の異なる作動態様を図11に準じて示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0016】
以下、本発明に係る撮像装置の実施例について図面を参照しながら説明する。図示の実施例は、本発明に係る撮像装置をデジタルカメラに適用した例である。
【0017】
図1、図2において、撮像装置であるデジタルカメラの外装カバー1の上面2には、撮影時に押下するシャッタースイッチ(レリーズスイッチ)SW1、電源スイッチSW2、各種モードを切り換えるモードダイヤルスイッチSW3が配設されている。また、撮像装置の正面5には、ストロボ発光部6、後で詳述する撮影光学系を含む鏡胴ユニット8が設けられている。
【0018】
撮像装置の背面10には、被写体の画像を表示しまたモード情報などを表示する、例えば液晶表示素子(LCD)などの電子ビューパネルからなる表示部(以下「LCDモニタ」という)11、ズーム[テレ]スイッチSW4、ズーム[ワイド]スイッチSW5、上スイッチSW6、右スイッチSW7、メニュー/OKスイッチSW8、左スイッチSW9、下スイッチSW10、ディスプレイスイッチSW11、セルフ/削除スイッチSW12、再生スイッチSW13が設けられている。また、撮影被写体に対する焦点制御が完了して焦点が合ったことの確認ランプとして機能し、また、ストロボ発光器のメインコンデンサが充電中であることを点灯表示する合焦確認・ストロボ充電確認共用LED表示部21が設けられている。前記各スイッチSW1〜13はユーザーが操作するスイッチであり、操作キーユニットを構成している。
【0019】
なお、本発明に係る撮像装置の実施例としてのデジタルカメラの外観は、必ずしも図1,図2に示す外観に限定されるものではなく、これとは異なる外観を呈していても構わない。
撮像装置としてのデジタルカメラの各部の機能及び作用は公知であるので、その詳細な説明は省略することとし、次に、撮像装置内部のシステム構成を図3に基づき、また、図1,図2を併せて参照しながら説明する。
【0020】
図3において、撮像素子101は、光学画像を光電変換するための例えばCCD(電荷結合素子)を用いて構成される固体撮像素子である。CCDの代わりにCMOS(相補型金属酸化物半導体)等による撮像素子を用いてもよい。撮像素子101による撮像信号の処理手段としてのフロントエンドIC(以下「F/E−IC」という)102を備えている。F/E−IC102は、画像ノイズ除去のため相関二重サンプリングを行う相関二重サンプリング部(CDS)1021と、利得調整を行う利得制御部(AGC)1022と、アナログ−デジタル変換を行うA/D(アナログ−デジタル)変換部1023と、駆動タイミング信号を発生するタイミング信号発生部(TG)1024とを有するIC(集積回路)として構成されている。
【0021】
前記タイミング信号発生部1024には、第1CCD信号処理ブロック1041から垂直同期信号VDおよび水平同期信号HDが供給され、タイミング信号発生部1024は、CPUブロック1043より出力される信号によって撮像素子101およびF/E−IC102に対して駆動タイミング信号を出力するようになっている。
【0022】
撮像装置は、内部のシステム構成の重要な部分をなすデジタルスチルカメラプロセッサ(以下「プロセッサ」という)104を備えている。プロセッサ104は、F/E−IC102を介して入力される撮像素子101からの出力画像データに、ホワイトバランス設定およびガンマ設定を行い、かつ、F/E−IC102のタイミング信号発生部(TG)1024に垂直同期信号VDおよび水平同期信号HDを供給する第1CCD信号処理ブロック1041と、フィルタリング処理により、画像データの輝度データ・色差データへの変換を行う第2CCD信号処理ブロック1042と、装置各部の動作を制御する中央処理ユニット(CPU)ブロック1043と、制御に必要なデータ等を一時的に保存するためのローカルSRAM(スタティックランダムアクセスメモリ)1044と、PC(パーソナルコンピュータ)等の外部機器とUSB通信を行うためのUSBブロック1045と、PC等の外部機器とシリアル通信を行うためのシリアルブロック1046と、JPEG圧縮/伸張を行うJPEGコーデック(JPEG−CODEC)ブロック1047と、画像データのサイズを補間処理により拡大/縮小するリサイズ(RESIZE)ブロック1048と、画像データをLCDモニタ11やTV(テレビジョン)受像機等の外部表示機器に表示させるためのビデオ信号に変換するTV信号表示ブロック1049と、撮影された画像データを記録するためのメモリカードの制御を行うメモリカードコントローラブロック10410とを有している。これらの各ブロックは、バスラインを介して相互に接続されている。
【0023】
プロセッサ104の外部には、RAW−RGB画像データすなわちホワイトバランス調整、および、γ調整が行われただけの状態のRGB画像データ、YUV画像データすなわち輝度データ・色差データ変換が行われた状態の画像データ、JPEG画像データすなわちJPEG圧縮された状態の画像データを保存するSDRAM(シンクロナスダイナミックランダムアクセスメモリ)103が配置され、このSDRAM103は、プロセッサ104に、メモリコントローラ(図示せず)、バスラインを介して接続されている。
【0024】
前記SDRAM103は、プロセッサ104で画像データに各種処理を施す際に、画像データを一時的に保存するものである。保存される画像データは、例えば、撮像素子101から、F/E−IC102を経由して取り込み、第1CCD信号処理ブロック1041で、ホワイトバランス調整、および、ガンマ調整が行われた状態のRAW−RGB画像データや、第2CCD信号処理ブロック1042で輝度データ・色差データ変換が行われた状態のYUV画像データ、JPEG・CODECブロック1047でJPEG圧縮されたJPEG画像データなどである。
【0025】
プロセッサ104の外部には、さらに、RAM等の内蔵メモリ107、制御プログラムおよびパラメータなどが格納されたROM(図示せず)が設けられ、これらもバスラインによってプロセッサ104に接続されている。内蔵メモリ107は、撮影した画像データを記憶できるようにするためのメモリである。ROMに格納される制御プログラムは、撮像装置の電源スイッチSW2が押されると、プロセッサ104のメインメモリ(図示せず)にロードされ、プロセッサ104はその制御プログラムに従って各部の動作制御を行うとともに、制御データおよびパラメータ等を内蔵メモリ107等に一時的に保存させる。
【0026】
鏡胴ユニット8は、被写体の光学画像を取り込むズームレンズ81aを有するズーム光学系81、フォーカスレンズ82aを有するフォーカス光学系82、絞り83aを有する絞りユニット83およびメカニカルシャッタ84aを有するメカニカルシャッタユニット84からなるレンズ鏡筒を備えている。なお、ズームレンズ81a、フォーカスレンズ82aおよび絞り83aは、撮影光学系を構成している。
撮影光学系の光軸をZ軸とし、このZ軸に直交する平面をX−Y平面とする。
【0027】
ズーム光学系81、フォーカス光学系82、絞りユニット83およびメカニカルシャッタユニット84は、それぞれ、ズームモータ81b、フォーカスモータ82b、絞りモータ83bおよびメカニカルシャッタモータ84bによって駆動されるようになっている。この鏡胴ユニット8の各モータ81b〜84bは、モータドライバ85によって駆動され、モータドライバ85は、プロセッサ104のCPUブロック1043によって制御される。
【0028】
鏡胴ユニット8の各レンズ系により得られる光学像を光電変換する撮像素子101を有している。撮像素子101の受光面には被写体光学像が結像され、撮像素子101は、被写体光学像を電気的画像信号に変換し、F/E−IC102に画像信号を出力する。これらの信号制御処理は、プロセッサ104の第1CCD信号処理ブロック1041から出力されるVD(垂直同期)−HD(水平同期)信号により、TG1024を介して行われる。TG1024は、前記VD−HD信号に基づき駆動タイミング信号を生成する。
【0029】
プロセッサ104は、撮像素子101からF/E―IC102を経由して得られる出力データに、ホワイトバランス調整およびガンマ調整を施す。そのために、第1CCD信号処理ブロック1941により、垂直同期信号VD、水平同期信号HDを供給し、さらに第2CCD信号処理ブロック1042により、フィルタリング処理による輝度データ・色差データへの変換を行う。
CPUブロック1043は、装置各部の動作を制御し、制御に必要なデータ等をローカルSRAM1044に一時的に保存する。
【0030】
また、プロセッサ104は、加速度センサー111から送出される傾き角度データをもとに、撮像装置の傾きを算出し、この傾き情報によって、LCDドライバ108を介してLCDモニタ11に傾き度合いを表示する(詳細は後述する)。
CPUブロック1043は、さらに、ストロボ回路114を制御することによってストロボ発光部6から照明光を発光させる。
【0031】
CPUブロック1043は、プロセッサ104のサブCPU112に接続され、サブCPU112は、操作スイッチSW1〜SW13からなる操作キーユニットに接続されている。この操作キーユニットは、ユーザーが操作するキースイッチ群からなる操作部である。また、サブCPU112は、ROM・RAMをワンチップに内蔵したCPUであり、操作キーユニットなどの出力信号を、ユーザーの操作情報としてCPUブロック1043に出力する。
【0032】
USBブロック1045は、パソコン等の外部機器とUSBコネクタ(図示せず)を介してUSB通信を行い、また、シリアルブロック1046は、シリアルドライバ回路(図示せず)からRS−232Cコネクタ等のシリアル通信コネクタを介して外部機器に接続され、シリアル通信を行う。
【0033】
TV信号表示ブロック1049は、LCDドライバ108を介してLCDモニタ11に接続されるとともに、ビデオアンプ(ビデオAMP)すなわちTV信号表示ブロック1049から出力されたビデオ信号を75Ωインピーダンスに変換するためのアンプ109を介してビデオジャック(カメラをTVなどの外部表示機器に接続するためのジャック)110に接続されている。
【0034】
メモリカードコントローラブロック10410は、メモリカードスロット(図示せず)に組み込まれているカード接点に接続されている。I2C(Inter Integrated Circuit)ブロック10411は、傾き検出手段としての加速度センサー111に接続されている。
【0035】
LCDドライバ108は、LCDモニタ11を駆動すると共に、TV信号表示ブロック1049から出力されるビデオ信号をLCDモニタ11に表示させるための信号に変換する。LCDモニタ11は、モニタ用の表示装置であり、撮影前の被写体の状態を監視すること、また、撮影画像を確認すること、動作モードを選択すること、および、後述する撮像装置の傾きを表示することなどを意図して設けられており、メモリカードまたは内蔵メモリ107に記録されている画像データ、動作モードの選択画面、および、撮像装置の傾き情報などを表示することができる。
【0036】
ビデオAMP109は、TV信号表示ブロック1049から出力されるビデオ信号を75Ωインピーダンス変換するための増幅器である。ビデオジャック110は、TV受像機等の外部表示機器に接続し、この外部表示機器にビデオ信号を入力して外部表示機器に画像を表示するための接続ジャックである。
【0037】
傾き検出手段としての加速度センサー111は、前述した各回路部を構成したプリント回路基板(PCB)上に実装され、2軸X,Yのデータ(X,Y)と、温度Tのデータを検知してプロセッサ104のI2Cブロック10411に送出する。プロセッサ104は、I2Cブロック10411を介して加速度センサー111から与えられたデータをもとに、表示すべきロール角度等の傾き情報を、プロセッサ104内の例えばCPUブロック1043により演算する。したがって、プロセッサ104は傾き演算手段としても動作する。LCDモニタ11には、図2、図4、図5に示すように傾き表示画像12が一定間隔でスケールの目盛状に表示される。この傾き表示画像12を表示する部分を「傾き表示部」という。前記演算された傾き情報は、表示画像12上の当該ロール角度を示す位置に目印となるマーカMの画像を合成して表示する。表示画像12上に表示されるマーカMの位置から、加速度センサー111の傾きすなわち撮像装置の傾きがわかる。表示画像12及びこの表示画像12にロール角度等の傾き情報を表示させるための前記CPUブロック1043、さらにはこのCPUブロック1043を含むプロセッサ104は、傾き表示装置を構成している。
【0038】
直交する2軸X,Yのデータ(X,Y)の重力ゼロ時の出力データをそれぞれX0およびY0をとすると、加速度センサー111の水平に対するロール角度θは、次の(1)式で示される。
θ[deg]=180/π*arctan{(Y−Y0)/(X−X0)}…(1)
前記表示画像12には、あたかも液体を用いた気泡式水準器における気泡をイメージして疑似的に表したマーカMの表示が付加されており、表示画像12中のこのマーカMの位置を見ることによって前記傾き角度を認識できる。
【0039】
このため、プロセッサ104は、図4、図5に示すように、表示画像12上に当該角度を示すマーカMの画像を合成してLCDモニタ11に表示する。水平時には、図4に示すようにマーカMが表示画像12の中央位置13にあり、撮像装置が右上がりの時にはマーカMがその角度に応じて表示画像12の左寄りとなり、また左上がりの時にはマーカMがその角度に応じて表示画像12の右寄りとなる。
【0040】
ユーザーは、傾き表示部に表示される傾き表示画面12を見ながら、カメラを傾きのない姿勢にして撮影することができる。また、カメラを机の上などに置いたとき、傾き表示画面12を見ることによってカメラが水平の姿勢にあるかどうかを確認することができ、傾いている場合は、後で説明するように、載置用の脚の外装カバーからの突出量を調整してカメラの傾きを修整することができる。また、上記載置用の脚の突出量を傾き調整モータの駆動によって調整し、カメラの傾きを自働的に修整することができるようになっている。上記傾き調整モータは図3において符号62で示されている。傾き補正モータ62は、前記演算された傾き情報に基づき、前記CPUブロック1043がモータドライバ85を介して制御されるように構成されている。傾き調整機構については後で詳細に説明する。
【0041】
撮像装置の組み立て工程において、撮像素子101を傾きのない状態として、この状態における撮像素子に対する加速度センサー111の出力が校正(キャリブレーション)される。それにより、撮像装置のロール角度がゼロの時には撮像素子101の傾きもゼロとなり、撮像素子101により撮像された画像に傾きがない状態になる。
【0042】
図6乃至図8は、鏡筒ユニット8の斜視図と、この鏡筒ユニット8を外装カバー1に取り付ける前と取り付けた後の外装カバーの背面図である。図6において、鏡胴ユニット8は、図3について既に説明したとおり、ズームレンズ81aを有するズーム光学系81、フォーカスレンズ82aを有するフォーカス光学系82、絞り83aを有する絞りユニット83およびメカニカルシャッタ84aを有するメカニカルシャッタユニット84からなるレンズ鏡筒82を備えている。これらの各光学系及びユニットは、それぞれに対応した前記モータ81b〜84bで駆動されるようになっている。鏡胴ユニット8の背面には、図8に示すように、撮像素子101が取り付けられている。
【0043】
図6に示すように、鏡胴ユニット8は、前記各光学系及びユニットを組み込んだ円筒形状のレンズ鏡胴82と、このレンズ鏡胴82を保持するとともに前記各モータ及び撮像素子101が組み込まれた箱形の基体88を有してなる。基体88の前面には左右方向の一端寄りに、前記レンズ鏡胴82の基部を保持する円形の固定枠30が一体に形成されている。基体88の前面にはまた、固定枠30とは左右方向反対側の縁部で、上下方向の中央部に、突出部33が一体に形成されている。突出部33の前面は基台88の前面と同一面になっていて、突出部33には孔32が形成されている。突出部33の付け根の部分には孔32に隣接してボス36が設けられている。
【0044】
鏡胴ユニット8は、外装カバー1にその背面側から装着される。図7に示すように、外装カバー1は鏡胴ユニット8を受け入れる円形の受け孔31を有していて、この受け孔31に鏡胴ユニット8の固定枠30が嵌め込まれる。
【0045】
外装カバー1には、その左右方向の一端寄りの位置に鏡胴ユニット8の前記孔32に嵌ることができるボス37が設けられるとともに、鏡胴ユニット8の前記ボス36が嵌るボス穴34が設けられている。鏡胴ユニット8の固定枠30が外装カバー1の受け孔31に嵌められ、また、上記孔32とボス37が嵌り合い、上記ボス36とボス穴34が嵌り合うことにより、外装カバー1に対する鏡胴ユニット8の位置決めがなされている。ボス37には図8に示すようにねじ35が締め付けられ、鏡胴ユニット8が外装カバー1に固定されている。
【0046】
撮像素子101が撮像装置の外装カバー1に対してロール角度を持ち傾きが生じてしまった場合、水平に設置された定盤の上に撮像装置を置いた場合でも、図5に示したようにマーカ(M)が表示画像12の中央位置13から一つか二つの目盛分ずれた位置になり、傾きゼロとは表示されない。そこで、水平に設置された定盤の上に撮像装置を置いたとき、加速度センサーの出力から算出された値で傾き表示部が傾きゼロと表示するように、校正(キャリブレーション)を行う。
【0047】
上記のように校正された撮像装置、例えばカメラを机の上などに置いた状態で撮影しようとするとき、机の上面が傾いていると、カメラが傾いた姿勢で撮影され、画像が傾いて撮影されることになる。そこで、本発明の撮像装置では、撮像装置を机の上などに置いた状態で撮像装置の外装カバーが傾いている場合、手動により、あるいは自動的に傾きを補正することができるようにした。この外装カバーの傾き補正機構の例を図10乃至図12に示す。
【0048】
図10乃至図12において、撮像装置の外装カバー1は、その底面48の左右方向両端部に、底面48から僅かに下方に突出した脚46,47が設けられている。脚46は円柱状の脚で、点接触的に載置面に接触する。脚47は撮像装置の前後の幅方向に長くなっていて、線接触的に載置面に接触し、撮像装置の転倒を防いでいる。脚47は外装カバー1に固定されているのに対して、脚46は外装カバー1に対して上下方向に伸縮し、外装カバー1の下面からの突出量を調整することができるようになっている。
【0049】
脚46は、長さ方向上端部に、長さ方向にある程度長い範囲でウォームギヤの形と同様のねじ部61が形成され、その下に円柱面66が、その下にキー溝49が脚46の長さ方向にある程度長い範囲で形成され、キー溝49形成部の下方は円柱面となっている。上記円柱面66は外装カバー1に形成されているガイド孔52に、脚46の下端部の円柱面は外装カバー1に形成されているガイド孔53に、回転可能かつ上下に摺動可能に嵌められている。脚46がみだりに回転することのないように、上記ガイド孔52,53と、上記円柱面66、脚46の下端部の円柱面との間には適宜の機械的な抵抗が与えられている。脚46のキー溝49にはダイヤル50のキー51が嵌っている。ダイヤル50は円板状の部材で、円の中心部にキー51が形成され、脚46はダイヤル50を上下方向に貫いて上下に延びている。ダイヤル50は外装カバー1に形成された空間に位置して上下方向の移動が外装カバー1で規制されるとともに、外周面の一部が外装カバー1の側面から露呈して外装カバー1の外側から回転操作することができるようになっている。
【0050】
外装カバー1内には、脚46の上方において傾き補正モータ62が取り付けられている。傾き補正モータ62の出力軸63が下向きに脚46の中心軸線と平行になるように延び出ていて、出力軸63にはウォームギヤの形と同様のねじ部材64が嵌合等によって固着されている。ねじ部材64は脚46のねじ部61に噛み合っている。傾き補正モータ62は、図3について説明したモータドライバ85によりCPUブロック1043からの指令によって駆動される。傾き補正モータ62の回転駆動により、ねじ部材64が回転し、このねじ部材64が脚46のねじ部61に対してリードねじの働きをして、脚46が上または下に向かって移動するようになっている。脚46とダイヤル50はキー溝49とキー51で嵌り合っているため、ダイヤル50は脚46の上下方向の移動を許容する。
【0051】
脚46の上下方向の移動により外装カバー1の下面からの脚46の突出量が変動する。図11は脚46が外装カバー1から大きく突出した状態を、図12は脚46が上方に移動して外装カバー1から僅かに突出している状態を示している。前記他方の脚47は外装カバー1と一体で不動であるから、脚46の上下動で外装カバー1の水平度すなわち撮像装置の水平度を調整することができる。傾き補正モータ62は、前記加速度センサーの出力から傾き算出手段により算出した外装カバー1の傾きがゼロになるように、制御部である前記デジタルカメラプロセッサ104のCPUブロック1043によって回転が制御される。
【0052】
以上、モータ62による自働的な傾き補正について説明したが、自働的な傾き補正によることなく、ダイヤル50の回転操作によって手動による傾き補正も行うことができるようになっている。ダイヤル50を、脚46の中心軸線を中心に右または左に回転させると、キー51とキー溝49の嵌り合いによって脚46もダイヤル50と一緒に回転する。脚46の回転に伴いそのねじ部61がモータ62側のねじ部材64に対して相対回転し、モータ62のねじ部材64に対し脚46のねじ部61がリードねじの働きをして、脚46が上または下に向かって移動する。撮像装置のユーザーは、前記傾き表示部を見ながら、傾きがゼロになるようにダイヤル50を正逆回転させながら脚46の突出量を調整する。
【0053】
図10乃至図12に示す傾き調整機構は、自働でも、手動でも行うことができるようになっているため、自動調整モードかまたは手動調整モードかを選択する必要がある。また、傾きがゼロとなったときに、そのことを視覚的にまたは音声で、さらにはその両方で表示させることが望ましい。図9は、このような動作モードを選択するための表示画面の例を示す。例えば、ディスプレイスイッチSW11(図2参照)を長押しすることにより、図9に示すようなモード選択画面65が前記LCDモニタに表示されるようにする。図9に示す例では、傾き表示をしない「OFF」,傾き表示部でのみ表示する「表示のみ」、傾き表示部での表示と音声による表示を併せた「表示+音」、音声のみで表示する「音のみ」、傾き表示部での表示と自働傾き補正を併せた「表示+自動補正」、音声による傾き表示と自働傾き補正を併せた「音+自動補正」の各モードがあってこれらのモードが表示され、その中の一つを選択するようになっている。表示されているモードの一つを選択するには、図2に示されている上下ボタンSW6,SW10を押す。図9に示す例では「表示+自動補正」モードが選択されている。モードを選択して「OK:確定」ボタンを押すと、選択された動作モードに設定される。
【0054】
以上説明した本発明に係る撮像装置の実施例によれば、撮像装置を水平方向の面に載置するための脚の一つが、外装カバー1の底面からの突出量が調整可能になっているため、撮像装置の載置態様で姿勢が傾いていたとしても、上記脚の突出量を調整することにより、傾き表示部の表示が傾きゼロとなるように補正することができる。
【0055】
上記傾き補正は、手動操作によっても行うことができるし、傾き補正モータ62の制御によって自動的に行うことができる。そして、図示の実施例に係る傾き補正機構は、外装カバー1からの突出量を調整可能な脚46と、この脚46と回転方向には一体的に回転することができるダイヤル50と、傾き補正モータ62を有し、脚46に形成したねじ部61と上記モータ62で回転駆動されるねじ部材とを噛み合わせた構成になっている。したがって、ダイヤル50を回転操作すると、上記ねじ部61がリードねじの働きをしてモータ62側のねじ部材64に対し相対移動し、脚46を外装カバー1から進退させて、手動による撮像装置の傾き補正を行うことができる。また、自動補正モードでは、傾き検出手段による検出信号に基づいて傾き補正モータ62が回転制御され、モータ62側のねじ部材64が回転する。このねじ部材64がリードねじの働きをして脚46のねじ部61を移動させ、傾き検出手段による検出信号が傾きゼロとなるまで脚46を外装カバー1から進退させる。このように、機械的な切り換え操作を行わなくても、手動による補正と自動補正の両方を任意に行うことができる。
【符号の説明】
【0056】
1 外装カバー
8 鏡胴ユニット
11 LCDモニタ
12 傾き表示画像
46 載置用の脚
50 ダイヤル
61 ねじ部
62 傾き補正モータ
64 ねじ部材
101 撮像素子
111 加速度センサー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開2009−65248号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系と、
この撮影光学系を介して入射する光を電気信号に変換する撮像素子と、
この撮像素子による撮像信号により被写体像を表示する表示部と、
加速度センサーと、
前記撮影光学系、撮像素子、表示部、加速度センサーが組み込まれた外装カバーと、
前記加速度センサーの出力から前記外装カバーの傾きを算出する傾き算出手段と、
前記傾き算出手段で算出された外装カバーの傾きを表示する傾き表示部と、
前記外装カバーに突出量を調整可能に設けられている載置用の脚と、を有する撮像装置。
【請求項2】
撮影光学系と撮像素子を有する鏡胴ユニットを備え、この鏡胴ユニットは外装カバーに位置決めして固定されている請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
載置用の脚は複数あり、複数の載置用の脚の一つが外装カバーからの突出量を調整可能に設けられている請求項1または2記載の撮像装置。
【請求項4】
突出量を調整可能な脚は、外装カバーから露出したダイヤル操作部材の回転操作により突出量を調整可能に設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
突出量を調整可能な脚はねじ部を備え、このねじ部はモータによって回転駆動されるねじ部材と噛み合い、前記調整可能な脚が回転駆動されることにより、前記モータ側のねじ部材に対する前記調整可能な脚のねじ部の摺接位置が移動して、外装カバーに対する前記調整可能な脚の突出量が調整可能となっている請求項1乃至4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
突出量を調整可能な脚は、モータ側のねじ部材がモータによって回転駆動されることにより、前記モータ側のねじ部材に対する前記調整可能な脚のねじ部の摺接位置が移動して、外装カバーに対する前記調整可能な脚の突出量が調整可能となっている請求項1乃至4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項7】
モータは、加速度センサーの出力から傾き算出手段により算出した外装カバーの傾きがゼロになるように、制御部によって回転が制御される請求項5または6記載の撮像装置。
【請求項8】
制御部は、対応するモードを選択したときにのみ、突出量を調整可能な脚の突出量制御を行う請求項7記載の撮像装置。
【請求項9】
傾き表示部は、突出量を調整可能な脚のモータによる突出量制御と同時に傾き表示部による外装カバーの傾き表示を行う請求項7または8記載の撮像装置。
【請求項10】
外装カバーの水平と撮像素子の水平とが一致するように調整され、外装カバーが水平の姿勢で傾き表示部が傾きゼロと表示するように調整されている請求項1乃至9のいずれかに記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−259072(P2011−259072A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129980(P2010−129980)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】