説明

撮像装置

【課題】 シャッタ羽根に耐熱対策を施すことなく、安価な材料を使用しつつ、太陽光によるシャッタ羽根への損傷を軽減する。
【解決手段】 サブミラー保持部材112をシャッタ装置5の露光用開口部5dを覆うようにカメラ下方向と左右方向に面積を拡大し、シャッタ羽根に太陽光が到達しないように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像光を焦点検出装置に分離して合焦させる撮像装置に関し、特に焦点検出装置に光束を反射させるミラーを保持する保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂一眼レフカメラでは、撮像面近辺にシャッタ装置が配置されている。シャッタ装置には被写体光を遮光するためのシャッタ羽根が配置されており、シャッタ羽根の材質として特許文献1に開示されているもの、また特許文献2中に記載されている様々なものが提案されている。
【0003】
シャッタの被写体側には露光時に撮影光路から退避するミラーユニットが特許文献2に開示されているように配置され、撮影者がファインダーを覗いて、被写体を確認する際には、被写体光をファインダー部と焦点検出装置に所定の割合で分離させる半透過ミラー(以下メインミラーと呼ぶ)により反射した被写体光を観察することになる。透過した被写体光は全反射ミラー(以下サブミラーと呼ぶ)により焦点検出装置に導光される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-75353号公報
【特許文献2】特開2007-101784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献に開示された従来技術では、レンズが太陽に向けられミラーユニットのカメラ下側近辺を通過した太陽光がシャッタ羽根に焦点を結び、その状態で保持されるとシャッタ羽根が太陽光の熱で損傷し、貫通穴が開いてしまう可能性があった。そのため、シャッタ羽根の最も被写体側の羽根には金属皮膜を施すなど、耐熱対策が必要となり、コストアップの要因になっていた。また、公知の技術として測光の用途ではあるがシャッタ羽根の最も被写体側の羽根表面を白くする耐熱の効果が期待できるが、遮光性を持つシャッタ羽根の表面を白くすることもコストアップ要因になる。
【0006】
メインミラーを保持するメインミラー保持部材により有効光束以外の光線を遮光できれば望ましいが、撮影時の回避動作に必要な空間を確保するためには、メインミラー保持部材の先端位置には大きさの限界があり、カメラ下側には遮光できない領域が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、撮影光学系から入射した撮影光束50をファインダ部(106、109)への反射光と焦点検出装置への透過光へ分離させる第一の反射部材(101)と、第一の反射部材からの透過光を焦点検出装置(107)へ反射させる第二の反射部材(102)と、撮像素子(4)への被写体光入射を制御するシャッタ装置(5)とを備え、第一の反射部材(101)を保持する第一の保持部材(111)が第二の反射部材(102)を保持する第二の保持部材(112)を回動可能に保持し、露光時には退避位置へと移動可能に構成された撮像装置において、第二の保持部材(112)がシャッタ装置(5)の露光用開口部(5d)の少なくとも光軸中心よりも撮像装置下側領域を覆うように露光用開口部よりも大きな面積で構成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の本発明は、請求項1において、第二の保持部材(112)の撮影者側面はシャッタ装置(5)の露光用開口部領域(112g)と露光用開口部以外の領域とは異なる面(112h、112i)で構成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の本発明は、請求項1および請求項2において、第二の保持部材(112)のシャッタ装置(5)の露光用開口部以外の領域(112h、112i)は露光用開口部領域(112g)よりも被写体側に設けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の本発明は、請求項3において第二の保持部材(112)のシャッタ装置(5)の露光用開口部以外の領域で撮像装置下側先端部(112h)にはシャッタ装置と平行な面が設けられ、左右方向先端部(112i)には面取り形状が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シャッタ羽根部材に耐熱対策のない安価な材質を選択できコストダウンが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用したデジタル一眼レフの外観斜視図。
【図2】本発明を適用したデジタル一眼レフの断面図。
【図3】本発明を適用したミラーユニットとシャッタ装置外観図
【図4−1】図3のA-A断面図(露光状態)
【図4−2】図3のA-A断面図(撮影待機状態)
【図4−3】図3のB-B断面図(撮影待機状態)
【図5】本発明を適用したミラーユニットの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施例1]
図1は本発明を適用した一眼レフカメラの斜視図である。
【0014】
カメラ本体1の被写体側には、不図示の着脱可能な撮影レンズ(撮影光学系)を装着するためのカメラマウント2が設けられている。二段スイッチとなっているレリーズスイッチ3が操作されるとAE(自動露光調節)、AF(自動焦点調節)が開始され、撮影が行われる。レリーズボタン3を軽く押すとAEとAFが行われ、この状態から更にレリーズボタン3を押しこむと露光動作が行われる。
【0015】
図2は一眼レフカメラの主要な構成部品のレイアウトを示した断面図である。メインミラー101、サブミラー102がミラーユニットとして撮影光路中に配置された状態であり、撮影待機状態である。
【0016】
マウント2には不図示の着脱可能な撮像レンズが取付けられ、撮像レンズを通ってきた撮影光束50はミラーボックス100に回動可能に取り付けられたメインミラー101によって所定の割合で反射されピント板106が配置されたカメラ上方へと導かれる。撮影者はピント板106に結像した被写体像をペンタミラー109、不図示の接眼レンズを介して観察する。メインミラー101によって反射されない撮影光束50はメインミラー101を透過してサブミラー102によって反射されてカメラ下方にある焦点検出ユニット107へと導かれる。焦点検出ユニット107はコンデンサレンズ107a、絞り107b、2次結像レンズ107c、焦点検出センサ107d等を有している。サブミラー102に反射された撮影光束50が上記部品を介して、焦点検出センサ107dの焦点検出部に入射することで焦点検出を行う。
【0017】
メインミラー101、サブミラー102の撮影者側にはシャッタ装置5、撮像素子4が配置されている。
【0018】
図3はミラーユニットとシャッタユニットを被写体側から見た図であり、断面A-Aによる断面図が図4−1、図4−2であり、断面B-Bによる断面図が図4−3である。
【0019】
図5は撮影待機状態のミラーユニットをカメラ下方から見た斜視図である。
【0020】
図4−1、図4−2を用いてカメラ上下方向に対する本発明の形状を述べ、図4−3を用いてカメラ左右方向に対する本発明の形状を述べる。
【0021】
図4−1は露光状態におけるメインミラー101、サブミラー102の配置を表した断面図である。メインミラー101およびサブミラー102はカメラ上方に退避した状態であり、撮影画像に対して影響のない位置に退避している。
【0022】
メインミラー保持部材111は駆動レバー5eにより退避位置に保持され、サブミラー保持部材112は、サブミラー付勢バネ110によりメインミラー保持部材111へ当接するように付勢されることでメインミラー保持部材111に対して閉じた状態で保持される。サブミラー保持部材112のメインミラー保持部材111への閉じ位置はメインミラー保持部材111への当接面112aの位置により決まる。メインミラー保持部材111に対するサブミラー保持部材112の回動可能な保持方法と回動機構については公知の技術である。
【0023】
露光状態では、シャッタ装置5に配置されたシャッタ羽根5aが被写体側シャッタ部材5b、撮影者側シャッタ保持部材5cに設けられた、露光用開口部5dから退避している。撮影光束50は撮像素子4の被写体側に設けられた光学部材である光線分離用ローパスフィルター4a、赤外線カットフィルター4bを通過し、撮像素子4へ入射する。所定時間露光され、結像された光学像を電気信号に変換して出力する。なお、本実施例では撮像素子4の被写体側に設定された光学部材が光線分離用ローパスフィルターと赤外線カットフィルターとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、用途に応じて設定されてもよい。
【0024】
図4−2は撮影待機状態におけるメインミラー101、サブミラー102の配置を表した断面図である。
【0025】
サブミラー102は焦点検出ユニット107方向にメインミラー101を透過してきた撮影光束50を反射させるために所定の角度で配置可能に構成されている。サブミラー102の必要面積は撮影範囲に対する所定の範囲での焦点検出をすればよいため、撮影範囲よりも小さくて良い。一般的にサブミラーはガラス素材に反射面を蒸着して作成されるため、コストを考慮して必要最小限の面積で作成される。そのためサブミラー102のカメラ下側先端はシャッタ装置5の露光用開口部5dの領域にある。撮影待機状態におけるサブミラー102の最もシャッタ装置5に近い位置はカメラ下側先端であり、サブミラー102先端部を覆うサブミラー保持部材112の領域もシャッタ装置5に最も近くなる。撮影待機状態におけるサブミラー保持部材112のシャッタ装置5に最も近い領域に第一のシャッタ対向面112gを設けて強度を確保しつつ、シャッタ装置5との干渉を回避した形状としている。サブミラー保持部材112は被写体側シャッタ部材5bに近接するが、露光用開口部5d範囲内なので被写体側シャッタ部材5bが存在しない領域であり、シャッタ羽根5aに対しては第一のシャッタ対向面112gをシャッタ羽根5aと略平行に設定することで適切な距離を確保している。これにより撮影動作により回動動作を行った際に干渉することを回避している。
【0026】
シャッタ装置5の露光用開口部5dをサブミラー保持部材112で覆い、シャッタ羽根5aへの有害光の到達を防止するために、本発明ではサブミラー保持部材112のカメラ下側と左右方向を拡大している。
【0027】
サブミラー保持部材112の第一のシャッタ対向面112gと被写体側シャッタ部材5bの露光用開口部5dの開口部エッジ5b-1とが所定の距離以下になるとサブミラー保持部材112が撮影動作により回動動作を行った際に干渉する可能性がある。そのため、所定の距離以下になる領域からカメラ下側の領域に対しては第二のシャッタ対向面112hをシャッタ羽根5aと略平行に設ける。第二のシャッタ対向面112hは、被写体側シャッタ部材5bから撮影光軸方向に所定の距離以上になるように設定された面である。なお、所定の距離は部品精度、部品強度から設定すればよく、例えば0.50mm程度であるが、この数値に限定されるものではない。
【0028】
なお、本実施例では第二のシャッタ対向面112hをシャッタ羽根5aに対して略平行としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、シャッタ装置5に対して適切な隙間が確保されればよい。
【0029】
サブミラー保持部材112のカメラ下側先端に第二のシャッタ対向面112hとメインミラー保持部材111への当接面112aとで決定される形状を設けることで露光用開口部5dを覆っている。
【0030】
露光用開口部5dのカメラ上方向はメインミラー保持部材111で覆われているため有害光が到達することはない。
【0031】
図4−3は断面B-Bでのメインミラー101、サブミラー102の撮影待機状態における配置を表した断面図であり、サブミラー保持部材112の第一のシャッタ対向面112g近傍を示している。
【0032】
サブミラー保持部材112の第一のシャッタ対向面112gと被写体側シャッタ部材5bの露光用開口部5dの左右方向開口部エッジ5b-2とが所定の距離以下になるとサブミラー保持部材112が撮影動作により回動動作を行った際に干渉する可能性がある。そのため所定の距離以下になる領域から外側に対してはサブミラー保持部材112に第三のシャッタ対向面112iである面取り形状を設ける。第三のシャッタ対向面112iは、被写体側シャッタ部材5bから撮影光軸方向に所定の距離以上になるように設定された面である。第三のシャッタ対向面112iはサブミラー保持部材112の左右端部に設けられる。
【0033】
なお、本実施例では第三のシャッタ対向面112iを面取り形状としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、シャッタ装置5に対して適切な隙間が確保されればよい。
【0034】
上述してきたようにサブミラー保持部材112に第二のシャッタ対向面112h、第三のシャッタ対向面112iを設けることで、シャッタ装置5の露光用開口部5dを覆いつつ、露光時の退避位置を保証することが可能となる。
【0035】
第二のシャッタ対向面112hがシャッタ羽根5aと略平行、第三のシャッタ対向面112iを面取り形状としているが、これは撮影光束50のイメージサークルに対して露光用開口部5dが横長形状であり、撮影画角以外から入射する有害光の影響をカメラ下側が受けやすく、露光用開口部5dを覆う際のオーバーラップ量をカメラ下側では多くとることが望ましいことによる。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、シャッタ装置と適切な隙間が設定されるような形状であればよい。
【符号の説明】
【0036】
1 カメラ本体
2 レンズ着脱マウント
3 レリーズボタン
4 撮像素子
4a ローパスフィルター
4b 赤外線カットフィルター
5 シャッタ装置
5a シャッタ羽根
5b 被写体側シャッタ部材
5b-1 被写体側シャッタ部材開口部エッジ
5b-2 被写体側シャッタ部材開口部エッジ
5c 影者側シャッタ部材
5d 露光用開口部
5e 駆動レバー
50 撮影光束
100 ミラーボックス
101 メインミラー
102 サブミラー
106 ピント板
107 焦点検出ユニット
107a コンデンサレンズ
107b 絞り
107c 2次結像レンズ
107d 焦点検出センサ
108 光学部材保持部材
109 ペンタミラー
110 サブミラー付勢バネ
111 メインミラー保持部材
111a 反射防止シート
112 サブミラー保持部材
112a サブミラー保持部材当接面
112f 反射防止シート
112g サブミラー保持部材第一のシャッタ対向面
112h サブミラー保持部材第二のシャッタ対向面
112i サブミラー保持部材第三のシャッタ対向面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系から入射した撮影光束50をファインダ部(106、109)への反射光と焦点検出装置への透過光へ分離させる第一の反射部材(101)と、
第一の反射部材からの透過光を焦点検出装置(107)へ反射させる第二の反射部材(102)と、
撮像素子(4)への被写体光入射を制御するシャッタ装置(5)とを備え、
第一の反射部材(101)を保持する第一の保持部材(111)が第二の反射部材(102)を保持する第二の保持部材(112)を回動可能に保持し、露光時には退避位置へと移動可能に構成された撮像装置において、
第二の保持部材(112)がシャッタ装置(5)の露光用開口部(5d)の少なくとも光軸中心よりも撮像装置下側領域を覆うように露光用開口部よりも大きな面積で構成されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
第二の保持部材(112)の撮影者側面はシャッタ装置(5)の露光用開口部領域(112g)と露光用開口部以外の領域とは異なる面(112h、112i)で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
第二の保持部材(112)のシャッタ装置(5)の露光用開口部以外の領域(112h、112i)は露光用開口部領域(112g)よりも被写体側に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
第二の保持部材(112)のシャッタ装置(5)の露光用開口部以外の領域で撮像装置下側先端部(112h)にはシャッタ装置と平行な面が設けられ、左右方向先端部(112i)には面取り形状が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−137595(P2012−137595A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289437(P2010−289437)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】