説明

放射線画像処理装置、放射線画像処理方法及びプログラム

【課題】突発的な電源断が発生した場合でも、重要な放射線画像の消失を可能な限り防止できるようにする。
【解決手段】センサ120で生成された各放射線画像を第1の記憶部111に一時的に記憶し、第1の記憶部111に記憶されている各放射線画像に対して画像解析部112で画像解析処理を行なう。そして、重要度判定部113において、画像解析部112による画像解析処理の結果に基づいて前記各放射線画像に対して重要度を付与し、画像転送部114において、重要度判定部113による重要度に基づいて、第1の記憶部111に記憶されている放射線画像を第2の記憶部115に転送する。そして、重要度判定部113では、画像転送部114により転送された放射線画像に基づいて、第1の記憶部111に記憶されている未転送の放射線画像の重要度を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体に放射線を照射して撮影された複数の放射線画像の処理を行なう放射線画像処理装置及び放射線画像処理方法、並びに、当該放射線画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、X線に代表される放射線を用いて撮影された放射線画像を処理する放射線画像処理装置が実現されている。
【0003】
近年、放射線画像処理装置の一例として、医療用に用いられるX線画像診断装置(X線画像処理装置)では、従来のアナログ撮影による診断からデジタル画像を用いて診断を行なう方式が普及してきている。このようなデジタル方式のX線画像診断装置では、X線発生装置から照射されたX線が被検体(被写体)を透過し、センサによりX線画像の画像データに変換される。こうして撮影されたX線画像の画像データは、X線画像診断装置に内蔵された半導体メモリに一時的に蓄積される。そして、このX線画像の画像データに対して画像処理や画像解析が必要に応じて行なわれた後、X線画像診断装置に具備又は接続されたモニタに表示されて、診断や治療に利用されている。
【0004】
さらに、センサの高解像度化や高フレームレート化が進み、撮影されるX線画像のデータの容量も大きくなっている。
【0005】
その一方、従来の技術においては、不揮発性記憶手段にデータを書き込む際にデータに重要度に応じてデータを書き込む順序を決定するものがある(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−132464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術において、X線画像の画像データの画像サーバへの転送は、撮影完了後に行なわれるため、撮影中に電源断などのトラブルが発生した場合、それまでに撮影していたX線画像の画像データを消失してしまうことになる。
【0008】
撮影中の電源断の可能性は排除できず、かつ予測不可能であるため、このようなリスクを完全に回避するためには、撮影と同時にX線画像の画像データを不揮発性の記憶手段にバックアップする必要がある。
【0009】
しかしながら、撮影と同時にX線画像の画像データを不揮発性の記憶手段にバックアップするためには、RAIDやディスクアレイといった高速で高価な記憶手段が必要となり、コストの面で問題となる。
【0010】
これらのことから、限られたコストが要求される場合は、すべてのX線画像の画像データを撮影と同時にバックアップすることは難しい。そこで、撮影中の限定的、選択的なX線画像のバックアップが必要となってくる。
【0011】
この場合、撮影中にバックアップするX線画像を限定しなければならないので、このバックアップするX線画像の選択方法が重要となる。
【0012】
また、撮影中にバックアップするX線画像を人為的にリアルタイムに選択することは、実際には難しいため、バックアップするX線画像は自動的に適切に選択されることが望まれる。
【0013】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、突発的な電源断が発生した場合でも、重要な放射線画像の消失を可能な限り防止することを実現する放射線画像処理装置、放射線画像処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の放射線画像処理装置は、被写体に照射された放射線を検出するセンサによって得られる放射線画像を処理する放射線画像処理装置であって、前記センサから得られた放射線画像を第1の記憶手段に記憶させる制御手段と、前記第1の記憶手段に記憶されている放射線画像に対して画像解析処理を行なう画像解析手段と、前記画像解析処理の結果に基づいて、前記放射線画像に対して重要度を付与する重要度判定手段とを有し、前記制御手段は、前記重要度判定手段による重要度に基づいて、前記第1の記憶手段に記憶されている放射線画像を第2の記憶手段に記憶させ、前記重要度判定手段は、前記第2の記憶手段に記憶された放射線画像に基づいて、前記第1の記憶手段に記憶されている放射線画像の重要度を更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、突発的な電源断が発生した場合でも、重要な放射線画像の消失を可能な限り防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明に係る放射線画像処理装置の諸実施形態について説明する。
なお、以下に示す本発明に係る放射線画像処理装置の諸実施形態の説明においては、放射線としてX線を適用したX線画像処理装置(X線画像診断装置)の例を示すが、本発明においてはこれに限定されない。本発明の放射線としては、X線に限らず、例えば、α線、β線、γ線なども含まれるものとし、これらの放射線を用いて撮影された放射線画像を処理する装置も本発明に含まれるものとする。
【0017】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態について説明を行なう。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るX線画像処理システム(放射線画像処理システム)の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、X線画像処理システムは、X線画像処理装置100と、X線発生装置210と、モニタ220と、タッチパネル230と、キーボード/スイッチ240を有して構成されている。また、X線画像処理装置100は、コントローラ110と、センサ120を備えて構成されている。
【0019】
X線発生装置210は、コントローラ110の制御に基づいて、被写体(被検体)300にX線211を照射する。
【0020】
X線画像処理装置100のコントローラ110は、X線画像処理システムの動作を統括的に制御するものである。コントローラ110には、X線発生装置210、センサ120、モニタ220、タッチパネル230及びキーボード/スイッチ240が接続されている。そして、コントローラ110は、必要に応じて、X線画像処理システムの各構成部(X線発生装置210、センサ120、モニタ220、タッチパネル230及びキーボード/スイッチ240)を制御する。
【0021】
また、コントローラ110は、図1に示すように、CPU110aと、メモリ110bと、画像メモリ110cと、ハードディスク110dと、バス110eを有して構成されている。CPU110aは、例えばメモリ110bに記憶されているプログラム及びデータ等を読み出し、これらに基づいてX線画像処理システム全体の制御を行なう。メモリ110bには、例えば、CPU110aに、後述の図3及び図4に示す処理、並びに、その他のX線画像処理システムの制御に必要なプログラム及びデータ等が記憶されている。画像メモリ110cは、例えば揮発性の記憶媒体からなり、センサ120で生成された各X線画像(各放射線画像)の画像データを一時的に記憶する第1の記憶手段に相当するものである。なお、画像メモリ110cはハードディスクなどの不揮発性の記憶媒体であってもよい。ハードディスク110dは、各X線画像(各放射線画像)の画像データをバックアップデータとして記憶するための不揮発性の記憶媒体である第2の記憶手段に相当するものである。また、バス110eは、各デバイス110a〜110d間を通信可能に接続するものである。
【0022】
X線画像処理装置100のセンサ120は、コントローラ110の制御に基づいて、X線発生装置210から照射され、被写体300を透過してきたX線211を検出してX線画像の生成を行なう。特に、本実施形態におけるセンサ120は、被写体300にX線211を連続的に照射して、連続して撮影された複数の放射線画像を生成する際に好適なものである。
【0023】
モニタ220は、コントローラ110の制御に基づいて、センサ120により撮影されたX線画像や、操作UI等を表示する表示装置である。タッチパネル230は、モニタ220に装着され、当該モニタ220に構成されたボタンの押下を検出するポインティングデバイスである。キーボード/スイッチ240は、X線画像処理システムに対して操作入力を行なう際に操作されるキーボード及びスイッチである。
【0024】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るX線画像処理装置100のコントローラ110の機能的にみた構成の一例を示すブロック図である。
本実施形態においては、例えば、図1に示すCPU110a及びメモリ110bのプログラムから、図2に示す画像解析部112、重要度判定部113及び画像転送部114が構成される。また、図1に示す画像メモリ110cから図2に示す第1の記憶部111が構成され、図1に示すハードディスク110dから図2に示す第2の記憶部115が構成される。
【0025】
前述したように、コントローラ110は、X線画像処理システムの動作を統括的に制御するものであり、センサ120は、X線発生装置210から照射され、被写体300を透過してきたX線211を検出してX線画像の生成を行なう。
【0026】
コントローラ110には、第1の記憶部(第1の記憶手段)111、画像解析部(画像解析手段)112、重要度判定部(重要度判定手段)113、画像転送部(画像転送手段)114及び第2の記憶部(第2の記憶手段)115が機能構成として含まれている。
【0027】
連続した撮影により、センサ120で生成された連続する複数の撮影画像(X線画像)は、第1の記憶部111に蓄積(記憶)される。
【0028】
画像解析部112は、第1の記憶部111に記憶されたすべての撮影画像(X線画像)の画像解析を行なう。
【0029】
重要度判定部113は、画像解析部112で得られた画像解析結果から、それぞれの撮影画像(X線画像)に対して重要度の付与を行なう。また、重要度判定部113は、画像転送部114からの要求に基づいて、転送すべき撮影画像(X線画像)のIDなどを画像転送部114に通知する。さらに、重要度判定部113は、画像転送部114から転送結果の通知を受けると、それぞれの撮影画像(X線画像)の重要度の見直しをして重要度の更新を行なう。
【0030】
画像転送部114は、第1の記憶部111に記憶されている撮影画像(X線画像)の転送可能な状態になると、重要度判定部113に転送すべき撮影画像(X線画像)を問い合わせる。そして、画像転送部114は、重要度判定部113からの転送すべき撮影画像(X線画像)の通知に基づいて、第1の記憶部111から当該転送すべき撮影画像(X線画像)を読み出して、第2の記憶部115に転送し、記憶を行なう。この際、画像転送部114は、転送結果を重要度判定部113に通知する。
【0031】
次に、図3を用いて、本実施形態に係るX線画像処理装置100の画像撮影処理について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態に係るX線画像処理装置100の画像撮影処理の一例を示すフローチャートである。
【0032】
まず、X線発生装置210からX線211が照射されると、X線211は、被写体(被検体)300である人体を透過し、センサ120によりX線強度が検出される。そして、センサ120は、検出したX線強度を量子化してX線画像の画像データへと変換し、コントローラ110は、そのX線画像の画像データを一時的に画像メモリ110c(第1の記憶部111)に転送して蓄積を行なう(ステップS301)。
【0033】
続いて、ステップS302において、CPU110a(画像解析部112)は、画像メモリ110c(第1の記憶部111)に記憶された各X線画像(各放射線画像)の画像データの画像処理を行なう。
【0034】
続いて、ステップS303において、CPU110a(画像解析部112)は、ステップS302で画像処理を行なった各X線画像の画像データに対して画像認識処理(画像解析処理)を行なう。具体的に、このステップS303では、CPU110a(画像解析部112)は、被写体300に対する撮影の目的(例えば、図5に示す血管造影や図9に示す動きに周期性のある被写体の撮影等)に応じて、各X線画像の画像データに対して画像解析処理を行なう。
【0035】
続いて、ステップS304において、CPU110a(重要度判定部113)は、ステップS303で行なわれた画像認識(画像解析)の結果から、各X線画像の重要度を判定する重要度判定処理を行なう。そして、CPU110a(重要度判定部113)は、今までの個々に割り当てたX線画像の重要度の見直しを行なって、各X線画像に対して重要度を付与する。このCPU110a(重要度判定部113)による処理は、重要度付与ステップに相当するものである。
【0036】
以上のステップS301〜S304の処理を経ることにより、本実施形態に係るX線画像処理装置100の画像撮影処理が終了する。
【0037】
次に、図4を用いて、本実施形態に係るX線画像処理装置100の画像転送処理について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態に係るX線画像処理装置100の画像転送処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態のX線画像処理装置100は、X線画像の撮影中又は撮影完了にかかわらず、転送すべきX線画像があると、図4に示す画像転送処理のフローチャートに遷移する。
【0038】
まず、ステップS401において、CPU110a(画像転送部114)は、画像メモリ110c(第1の記憶部111)に記憶されたX線画像の転送が可能か否かの判断を行なう。この判断の結果、X線画像の転送が可能でない場合には、X線画像の転送が可能になるまで、ステップS401で待機する。
【0039】
一方、ステップS401の判断の結果、X線画像の転送が可能である場合には、ステップS402に進む。ステップS402に進むと、CPU110a(画像転送部114)は、ステップS304で行なわれた重要度判定処理の結果に基づいて、一番重要度が高いX線画像を選択する選択処理を行なう。
【0040】
続いて、ステップS403において、CPU110a(画像転送部114)は、ステップS402で選択したX線画像を、X線画像処理装置100内の不揮発性の記憶媒体であるハードディスク110d(第2の記憶部115)に転送する転送処理を行なう。
【0041】
続いて、ステップS404において、CPU110a(重要度判定部113)は、画像メモリ110c(第1の記憶部111)に記憶されている未転送のX線画像に対して、再度の重要度判定処理を行なう。このステップS404の処理は、一番重要度が高いX線画像が転送されたことにより、未転送のX線画像における重要度の見直しを行なって重要度の更新をするものである。このCPU110a(重要度判定部113)による処理は、更新ステップに相当するものである。
【0042】
次に、図3に示すX線画像処理装置100の画像撮影処理におけるステップS303の画像認識処理(画像解析処理)及びステップS304の重要度判定処理の実施例について説明する。
【0043】
図5は、本発明の第1の実施形態における画像撮影処理の実施例を示し、血管造影による画像認識処理(画像解析処理)と重要度判定処理の一例を示す模式図である。この図5を用いて、血管造影によるX線画像処理装置(X線画像診断装置)100の画像解析部112と重要度判定部113の処理について説明する。
【0044】
血管造影の撮影では、視野エリアの近くまで、即ち撮影する画像範囲の近くまで、カテーテルを挿入し、造影剤を血管内に注入する。これにより、造影剤は、血液とともに血管中を流れていく。この造影剤の流れを撮影し、血管を観察するのが血管造影である。
【0045】
図5のX線画像501、502、503、504及び505は、X線画像処理装置100のセンサ120により生成された透視画像である。また、図5には、血管506、血管506内に注入された血管造影剤507、及び、視野外の血管508が示されている。さらに、図5には、重要度判定部113による重要度のグラフ509が示されている。
【0046】
X線211を用いた撮影を開始すると、まず、視野内(画像範囲内)に血管造影剤507が到達していないため、X線画像501に示すような画像が生成される。その後、視野内(画像範囲内)の血管506に血管造影剤507が到達すると、X線画像502、503及び504のように、血管造影剤507が、視野内の血管506を通り拡散していく様子を示す画像が生成される。また、X線画像505は、血管造影剤507の先頭が視野(画像範囲)を通過して視野の範囲外(画像範囲の外)に出た様子を示す画像である。
【0047】
このようにして撮影されたX線画像501〜505から、画像解析部112は、視野内の血管506に血管造影剤507の先頭が進入してきた時を認識処理することで、X線画像501〜505の画像解析処理を行なう。具体的に、画像解析部112は、画像解析処理により、血管造影剤507の進入について、X線画像502、503及び504は進入と認識し、X線画像501及び505は、進入なしと認識する。
【0048】
重要度判定部113は、画像解析部112による画像解析結果に基づいて、視野内の血管506に血管造影剤507が進入した際のX線画像(502、503及び504)の重要度を高く設定し、重要度の更新を行なう。一方、重要度判定部113は、画像解析部112による画像解析結果に基づいて、進入なし状態のX線画像(501及び505)の重要度を低く設定し、重要度の更新を行なう。上述したように、この重要度判定部113により更新される重要度は、図5のグラフ509のようになる。
【0049】
図6は、本発明の第1の実施形態における画像撮影処理の実施例を示し、重要度判定部113による重要度の変化を示すグラフの一例を示す模式図である。この図6に示す重要度判定部113による重要度の更新は、X線画像が撮影され、当該X線画像に重要度が付与された後に行なわれる処理である。これは、それ以前に撮影されたX線画像の重要度の見直しを行なうものである。
【0050】
重要度判定部113は、X線画像が撮影され、画像解析部112による画像解析結果(画像処理及び画像認識処理の結果)に基づいて、X線画像に重要度を付与する。そして、重要度判定部113は、その後に撮影されたX線画像の画像解析結果に基づいて、それ以前に撮影されたX線画像の重要度の見直しを行ない、重要度の更新をする。
【0051】
図6(a)〜図6(c)において、縦軸は重要度判定部113による重要度を示し、横軸は時間を示す。
【0052】
まず、図6(a)に示す期間[A]は、部位1の血管造影が行われ、血管造影剤507が画像視野内に流れ込んでから出て行くまでの期間を示している。この期間[A]で撮影されたX線画像は、重要度判定部113により重要度が高く設定される。
【0053】
次に、図6(b)に示す期間[B]は、部位1とは異なり、当該部位1に比べて重要度がより高い部位2の血管造影が行なわれた期間を示している。この場合、重要度判定部113は、期間[A]の間に撮影されたX線画像の重要度を低く下げて、当該期間[A]の間に撮影されたX線画像よりも期間[B]の間に撮影されたX線画像の重要度を高く設定して、重要度の更新をする。
【0054】
次に、図6(c)に示す期間[C]は、期間[A]と同じ部位の部位1の血管造影が行なわれた期間を示している。この場合、重要度判定部113は、同じ部位1の撮影であるため、期間[A]の間に撮影されたX線画像の重要度は、通常のX線画像と同じ値に設定して更新を行なう。
【0055】
次に、図7に示すX線画像処理装置100の画像転送処理の実施例について説明する。
図7は、本発明の第1の実施形態に係るX線画像処理装置100の画像転送処理の一例を示す模式図である。
【0056】
図7に示すX線画像701は、最初に撮影された画像を示している。また、図7に示すX線画像702は、重要度が高い画像を示している。また、図7に示すX線画像703は、重要度が中の画像を示している。また、図7に示すX線画像704は、重要度が低い画像を示している。
【0057】
画像転送部114(CPU110a)は、X線画像の転送が可能か否かを常に監視し、X線画像の転送が可能になった時点で一番重要度の高いX線画像を選択し、X線画像の転送を行なう。
【0058】
より具体的には、最初に撮影されたX線画像701は、撮影と同時に転送される。その後、X線画像701の転送が終了した時点で、一番重要度の高いX線画像702が選択されて、画像の転送が行なわれる。図7に示す例では、次に、X線画像の転送が可能となった時点で、重要度が高いX線画像がないため、重要度が中のX線画像703が選択されて転送されることとなる。
【0059】
図8は、本発明の第1の実施形態における画像転送処理の実施例を示し、重要度判定部113による重要度の変化を示すグラフの一例を示す模式図である。この図8に示す重要度判定部113による重要度の更新は、転送すべきX線画像を、画像メモリ110c(第1の記憶部111)から、内蔵する不揮発性の記憶媒体であるハードディスク110d(第2の記憶部115)に転送後になされる処理である。
【0060】
本実施例では、重要度判定部113が、転送したX線画像の前後数フレームのX線画像の重要度を下げる場合の例について説明する。
【0061】
図8(a)〜図8(c)において、縦軸は重要度判定部113による重要度を示し、横軸は時間を示す。また、また、X線画像802は、重要度が高い画像を示しており、X線画像801及び803は、重要度が低い画像を示している。
【0062】
図8(a)に示すグラフ1は、X線画像を転送する前の重要度を示すグラフである。
【0063】
図8(b)に示すグラフ2は、X線画像802のうち、転送画像8021の転送後に、重要度判定部113により、重要度の見直しによる更新が行なわれた際の重要度を示すグラフである。
【0064】
図8(c)に示すグラフ3は、X線画像802のうち、転送画像8022の転送後に、重要度判定部113により、重要度の見直しによる更新が行なわれた際の重要度を示すグラフである。
【0065】
まず、転送画像8021が転送されると、図8(b)のグラフ2で示すように、重要度判定部113は、転送画像8021自体の重要度を0とする。また、重要度判定部113は、転送画像8021の前後数フレーム(図8(b)に示す例では、前後4フレーム)のX線画像(801a及び802a)の重要度を下げる処理を行なう。
【0066】
次に、転送画像8022が転送されると、図8(c)のグラフ2で示すように、重要度判定部113は、転送画像8022自体の重要度を0とする。また、重要度判定部113は、転送画像8022の前後数フレーム(図8(c)に示す例では、前後4フレーム)のX線画像(802a及び802b)の重要度を下げる処理を行なう。
【0067】
本実施形態のX線画像処理装置100では、このようして、常に、重要度の高いX線画像を自動で選択して転送することで、重要なX線画像の消失を可能な限り防止し、X線画像処理装置としての信頼性を向上させている。
【0068】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態について説明を行なう。
ここで、第2の実施形態に係るX線画像処理システムの概略構成は、図1に示す第1の実施形態に係るX線画像処理システムの概略構成と同様である。また、第2の実施形態に係るX線画像処理装置の機能構成は、図2に示す第1の実施形態に係るX線画像処理装置の機能構成と同様である。さらに、第2の実施形態に係るX線画像処理装置の画像撮影処理及び画像転送処理は、それぞれ、図3及び図4に示す第1の実施形態に係るX線画像処理装置の画像撮影処理及び画像転送処理のフローチャートと同様である。
【0069】
以下に、本発明の第2の実施形態における画像撮影処理の実施例を示す。
第2の実施形態における実施例として、心臓や肺などの動きに周期性のある被写体(被検体)300の診断に供するX線画像の撮影を行なう場合について説明する。
【0070】
図9は、本発明の第2の実施形態における画像撮影処理の実施例を示し、呼吸に伴う肺の伸縮動作を示すX線画像の一例を示す模式図である。
【0071】
図9において、X線画像901は、被写体(被検体)300の肺が最も収縮した状態の肺901aの画像であり、X線画像904は、肺が最も膨張した状態の肺904aの画像である。吸気を行なうことで、肺は、X線画像901に示す肺901aの状態から次第に膨張を続けて、X線画像902及び903に示す肺902a及び903aの状態を経由した後に、X線画像904に示す最も膨張した肺904aの状態となる。また、反対に、呼気を行なうことで、肺は、X線画像904に示す肺904aの状態から次第に収縮を続けて、X線画像905及び906に示す肺905a及び906aの状態を経由した後に、最も収縮した肺901aの状態に戻る。
【0072】
以上のように、呼吸を行なうことで、肺は、X線画像901に示す状態からX線画像906に示す状態までの伸縮動作を順次繰り返し、常に、周期的な自律動作を行なう。
【0073】
図10は、本発明の第2の実施形態における画像撮影処理の実施例を示し、周期性のある被写体(被検体)300の画像認識処理(画像解析処理)と重要度判定処理の一例を示す模式図である。具体的に、図10(a)には、動きに周期性のある肺を被写体(被検体)300とした際の大きさを表す周期グラフ1001が示されている。また、図10(b)には、重要度判定部113により付与する重要度を表す重要度グラフ1002が示されている。
【0074】
図10(a)に示す周期グラフ1001の1周期Tの肺の伸縮動作が、図9に示すX線画像901〜906までの肺の伸縮動作に該当する。この図10(a)に示す周期グラフ1001において、状態1003がX線画像904に示す肺が最も膨張した状態であり、状態1004がX線画像901に示す肺が最も収縮した状態を示している。
【0075】
この図10に示す内容に基づいて、周期性のある被写体(被検体)300の画像認識処理(画像解析処理)及び重要度判定処理について説明する。
【0076】
まず、本例では、肺や心臓などの周期性がある被写体(被検体)300の周期を認識するため、撮影対象領域の連続したX線画像の撮影を行なう。ここでは、例えば、図9に示すX線画像901〜906が撮影される。そして、画像解析部112は、連続して撮影されたX線画像に基づいて、その周期を認識し、X線画像の画像解析処理を行なう。
【0077】
そして、重要度判定部113は、画像解析部112による画像解析結果に基づいて、各X線画像に対して重要度を付与する。具体的に、重要度判定部113は、図10(b)の重要度グラフ1002に示すように、周期グラフ1001の最初の1周期分である1周期TにおけるX線画像の重要度を高く設定する。通常、周期性のあるX線画像は、連続したX線画像のうちの1周期分が残っていれば、残りのX線画像は当該1周期の繰り返しであるため、重要度判定部113では、その他の周期分のX線画像の重要度を低く設定する。
【0078】
本発明の各実施形態のX線画像処理装置100では、画像転送部114において、重要度判定部113による重要度に基づいて、第1の記憶部111に記憶されているX線画像の中から第2の記憶部115に転送するX線画像を選択するようにしている。更に、重要度判定部113において、画像転送部114により転送されたX線画像に基づいて、第1の記憶部111に記憶されている未転送のX線画像の重要度を更新するようにしている。
かかる構成によれば、重要なX線画像(放射線画像)を自動で選択して不揮発性の記憶媒体である第2の記憶部115に転送することができると共に、突発的な電源断が発生した場合でも、重要な放射線画像の消失を可能な限り防止することが可能となる。
【0079】
前述した本実施形態に係るX線画像処理装置(放射線画像処理装置)100を構成する図2(及び図1)の各構成部は、コンピュータのROM(例えばメモリ110b)などに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。また、前述した本実施形態に係るX線画像処理装置100によるX線画像処理方法(放射線画像処理方法)を示す図3及び図4の各ステップも、コンピュータのROM(例えばメモリ110b)などに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本発明に含まれる。
【0080】
具体的に、前記プログラムは、例えばCD−ROMのような記憶媒体に記録し、或いは各種伝送媒体を介し、コンピュータに提供される。前記プログラムを記録する記憶媒体としては、CD−ROM以外に、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、不揮発性メモリカード等を用いることができる。他方、前記プログラムの伝送媒体としては、プログラム情報を搬送波として伝搬させて供給するためのコンピュータネットワーク(LAN、インターネットの等のWAN、無線通信ネットワーク等)システムにおける通信媒体を用いることができる。また、この際の通信媒体としては、光ファイバ等の有線回線や無線回線などが挙げられる。
【0081】
また、本発明は、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより本実施形態に係るX線画像処理装置100の機能が実現される態様に限られない。そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して本実施形態に係るX線画像処理装置100の機能が実現される場合も、かかるプログラムは本発明に含まれる。また、供給されたプログラムの処理の全て、或いは一部がコンピュータの機能拡張ボードや機能拡張ユニットにより行われて本実施形態に係るX線画像処理装置100の機能が実現される場合も、かかるプログラムは本発明に含まれる。
【0082】
また、前述した本実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るX線画像処理システム(放射線画像処理システム)の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るX線画像処理装置(放射線画像処理装置)のコントローラの機能的にみた構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るX線画像処理装置の画像撮影処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るX線画像処理装置の画像転送処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態における画像撮影処理の実施例を示し、血管造影による画像認識処理(画像解析処理)と重要度判定処理の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における画像撮影処理の実施例を示し、重要度判定部による重要度の変化を示すグラフの一例を示す模式図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るX線画像処理装置の画像転送処理の一例を示す模式図である。
【図8】本発明の第1の実施形態における画像転送処理の実施例を示し、重要度判定部による重要度の変化を示すグラフの一例を示す模式図である。
【図9】本発明の第2の実施形態における画像撮影処理の実施例を示し、呼吸に伴う肺の伸縮動作を示すX線画像の一例を示す模式図である。
【図10】本発明の第2の実施形態における画像撮影処理の実施例を示し、周期性のある被写体(被検体)の画像認識処理(画像解析処理)と重要度判定処理の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0084】
100 X線画像処理装置(放射線画像処理装置)
110 コントローラ
110a CPU
110b メモリ
110c 画像メモリ
110d ハードディスク
110e バス
111 第1の記憶部
112 画像解析部
113 重要度判定部
114 画像転送部
115 第2の記憶部
120 センサ
210 X線発生装置(放射線発生装置)
211 X線(放射線)
220 モニタ
230 タッチパネル
240 キーボード/スイッチ
300 被写体(被検体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に照射された放射線を検出するセンサによって得られる放射線画像を処理する放射線画像処理装置であって、
前記センサから得られた放射線画像を第1の記憶手段に記憶させる制御手段と、
前記第1の記憶手段に記憶されている放射線画像に対して画像解析処理を行なう画像解析手段と、
前記画像解析処理の結果に基づいて、前記放射線画像に対して重要度を付与する重要度判定手段と
を有し、
前記制御手段は、前記重要度判定手段による重要度に基づいて、前記第1の記憶手段に記憶されている放射線画像を第2の記憶手段に記憶させ、
前記重要度判定手段は、前記第2の記憶手段に記憶された放射線画像に基づいて、前記第1の記憶手段に記憶されている放射線画像の重要度を更新することを特徴とする放射線画像処理装置。
【請求項2】
前記画像解析手段は、前記被写体に対する撮影の目的に応じて、前記放射線画像に対して画像解析処理を行なうことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項3】
前記画像解析手段は、前記撮影の目的が血管造影である場合、前記画像解析処理として、前記放射線画像の画像範囲内に造影剤が進入してきたこと、及び、当該造影剤が前記画像範囲を通過して当該画像範囲の外に出たことを認識する認識処理を行なうことを特徴とする請求項2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項4】
前記画像解析手段は、前記撮影の目的が動きに周期性のある被写体の撮影である場合、前記画像解析処理として、当該被写体の動きの周期を認識する認識処理を行なうことを特徴とする請求項2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項5】
前記重要度判定手段は、前記画像解析手段により前記被写体に対する撮影の目的に応じてなされた画像解析処理の結果に基づいて、前記放射線画像に対して重要度を付与すると共に、前記制御手段によって前記放射線画像が前記第2の記憶手段に記憶された後に、前記第1の記憶手段に記憶されている放射線画像のうち前記第2の記憶手段に記憶されていない放射線画像の重要度を更新することを特徴とする請求項2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項6】
前記重要度判定手段は、前記画像範囲内に前記造影剤が進入してきた際の放射線画像の重要度を、前記造影剤が前記画像範囲を通過して当該画像範囲の外に出た際の放射線画像の重要度よりも高くすることを特徴とする請求項3に記載の放射線画像処理装置。
【請求項7】
前記重要度判定手段は、前記被写体の動きの周期における最初の1周期分の放射線画像の重要度を、他の周期分の放射線画像の重要度よりも高くすることを特徴とする請求項4に記載の放射線画像処理装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1の記憶手段の中から一番重要度の高い放射線画像を選択して、前記第2の記憶手段に転送して記憶することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項9】
被写体に照射された放射線を検出するセンサによって得られる放射線画像を処理する放射線画像処理装置の放射線画像処理方法であって、
第1の記憶手段に記憶されている前記センサから得られた放射線画像に対して画像解析処理を行なう画像解析ステップと、
前記画像解析処理の結果に基づいて、前記放射線画像に対して重要度を付与する重要度付与ステップと、
前記重要度付与ステップによる重要度に基づいて、前記第1の記憶手段に記憶されている放射線画像を前記第2の記憶手段に記憶させる制御ステップと、
前記制御ステップにおいて前記第2の記憶手段に記憶された放射線画像に基づいて、前記第1の記憶手段に記憶されている放射線画像の重要度を更新する更新ステップと
を有することを特徴とする放射線画像処理方法。
【請求項10】
被写体に照射された放射線を検出するセンサによって得られる放射線画像を処理する放射線画像処理装置の放射線画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
第1の記憶手段に記憶されている前記センサから得られた放射線画像に対して画像解析処理を行なう画像解析ステップと、
前記画像解析処理の結果に基づいて、前記放射線画像に対して重要度を付与する重要度付与ステップと、
前記重要度付与ステップによる重要度に基づいて、前記第1の記憶手段に記憶されている放射線画像を前記第2の記憶手段に記憶させる制御ステップと、
前記制御ステップにおいて前記第2の記憶手段に記憶された放射線画像に基づいて、前記第1の記憶手段に記憶されている放射線画像の重要度を更新する更新ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−279191(P2008−279191A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128153(P2007−128153)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】