説明

放熱機能付き旋回型アーム及び水平多関節型ロボット

【課題】アームの旋回移動を妨げることなくモータなどの発熱体から伝達される熱を効率よく放熱する機能を有する放熱機能付き旋回型アーム、及び該旋回型アームを備える水平多関節型ロボットを提供する。
【解決手段】回転軸としての軸心C2を中心として旋回移動する熱伝導性の材料からなるアームの筐体20に伝達される熱を放熱する機能を有する放熱機能付き旋回型アームには、その旋回移動方向に面する側面部20Sに同アームの筐体20の旋回軌跡と非平行な突条からなる複数の放熱フィン20Fが設けられている。各放熱フィン20Fは、上下方向に対して筐体の長さH1よりも短い長さH2に形成されており、天板23と放熱フィン20Fの上端F2との間にはそれぞれ突条の突出方向と交差する方向に空気を流通させる高さが通路幅H3の流通路が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回移動されるアームを備える産業用機械などに採用されて発熱体から伝達される熱を放熱する機能を有する放熱機能付き旋回型アーム、及び該旋回型アームを備える水平多関節型ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
上記産業用機械、中でも産業用ロボットとしては、垂直多関節型ロボット、水平多関節型ロボット(スカラロボット)など、複数のアームが順に回動可能に連結されたロボットが用いられることが少なくない。これらのロボットは、各アームを、連結部を介して支持する他のアーム等の支持部に対して適切な角度に変化させることに基づく旋回移動により、それらロボットの先端部を基台に対して相対移動させている。
【0003】
一方近年は、生産性向上の要求に対応するために、こうしたロボットには、高い位置決め精度を維持しつつ、その動作の高速化や非稼働時間の短縮化が求められている。そこで、モータの回転速度を上昇させてアームの旋回速度を高速化させるなどの動作性能の向上を図ったり、非稼働時間の短縮化のために単位時間当たりのモータの稼動時間を長くさせてアームの移動が頻繁に行なわれるようにするなどの工夫が図られている。
【0004】
ところが、モータの回転速度の上昇はモータの発熱量を増加させ、モータの稼動時間の延長は単位時間当たりの発熱量の増加とともに冷却時間の短縮化を招いている。すなわち、モータはその温度が急速に上昇するようになり、その温度上昇が自然な冷却能力を上回ることで、モータの性能や寿命を維持するために予め定められている所定の温度範囲をも超えやすくなる。そして、このように所定の温度範囲を超えた場合、そのままモータの駆動を継続することは好ましくないためにその温度を低下させる必要が生じ、結局、回転速度を低下させたり、停止時間を長くするなど、モータの動作性能、ひいてはアームの旋回速度や移動回数が規制されることとなる。さらに、アームはその温度上昇によりわずかながら膨張するが、その温度上昇がモータ近傍などに局所的に生じると、アームの一部のみにその応力が集中してアーム全体が湾曲するなど予想し難い変形を生じ、位置決め精度を低下させる要因ともなる。
【0005】
そこで従来は、例えば特許文献1に見られるように、アームの位置決め精度を維持しつつ旋回速度や移動回数に規制が生じることを抑制すべく、モータの温度上昇そのものを抑制するようにした産業用ロボットなども提案されている。この産業用ロボットでは、そのアームに設置された駆動源としてのモータの周囲にアルミパイプを巻回し、そのアルミパイプ内に流通される圧縮空気にてモータが冷却されるようにしている。これによりモータの冷却が効率的かつ確実に行なわれ、モータの温度上昇を要因とするアームの旋回速度や移動回数の規制、及びその予想し難い変形等も抑制されるようになる。
【特許文献1】特開2008−6535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のような産業用ロボットでは、連結部(関節部)が回動するアーム間に上記アルミパイプが配管される構造となることから、この連結部を含めた同アームの構造が複雑になるとともに、同連結部の回動がこのパイプにより制約されることにもなりかねない。また、上記モータの冷却を行うためのパイプやこれに圧縮空気を供給する空気回路等が設けられるため、産業用ロボットとしてのメンテナンス負担が増加するとともに、空気回路等を構成する部品数の増加に伴う、同産業用ロボットとしての信頼性
の低下も無視できないものとなる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、アームの旋回移動を妨げることなくモータなどの発熱体から伝達される熱を効率よく放熱する機能を有する放熱機能付き旋回型アーム、及び該旋回型アームを備える水平多関節型ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放熱機能付き旋回型アームは、回転軸を中心として旋回移動する熱伝導性の材料からなるアームに伝達される熱を放熱する機能を有するものであって、前記アームには、その旋回移動方向に面する側面に同アームの旋回軌跡と非平行な突条からなる複数の放熱フィンが設けられるとともに、該放熱フィンには、前記突条の突出方向と交差する方向に空気を流通させる流通路が設けられていることを要旨とする。
【0009】
このような構成によれば、アームの旋回移動方向に面する移動方向側面に突条に設けられた放熱フィンの流通路により雰囲気(空気)が同流通路に沿ってアームの長さ方向に流通されるようになる。これにより、放熱フィンがない場合にはアームの表面をすべるように逃げるにすぎない雰囲気(空気)の流れを放熱フィンにより捉えてアームの冷却効率が上げられる。すなわち、モータなどの発熱体の発した熱が伝えられるアームは、その旋回移動によりその放熱フィンに強制的に空気が流通されるようになり放熱量が増加しアームの温度上昇が抑制されるようになる。
【0010】
また、旋回移動するアームは回転軸(基端側)からの距離(長さ)によって旋回移動方向の面を流れる空気の量が変化するとともに同面には気圧の差も生じるようになるが、放熱フィンの流通路によって空気が相対的に気圧の高いほうから低いほうへ流れるようになる。例えば、旋回方向正面にあっては、移動速度が相対的に速いことにより基端側に対して相対的に気圧の高くなる先端側から同流通路を通って基端方向に空気が流れ、先端よりも空気の流れの少ない基端側の空気の流れを増加させる。また、旋回方向背面にあっても、移動速度が相対的に速いことにより相対的に気圧が低くなる先端側に前記流通路を通って基端方向からの空気が流れこみ、このときも基端側の空気の流れが増加される。これによって、相対的に空気流量の少ないアームの基端部の空気の流れを増加させることによりアーム全体の放熱量を増加させてアーム全体の温度上昇を抑制するとともに、温度上昇される際の上昇率を鈍化させることで熱をアームに拡散させて局所的な温度上昇を抑制するようにしている。これにより、モータの温度が所定の温度範囲を越えて回転速度や動作時間などのいわゆる動作性能の制限が要求されるようなことが抑制されるようになり、アームの高速移動や移動回数に制限の生じることが抑制されるようになる。
【0011】
さらに、アームの温度上昇が鈍化されることから局所的な温度上昇が抑制され、局所的な温度上昇により生じた局所的な膨張によりアームに予測し難い湾曲やたわみが生じて基端と先端との相対的な位置関係が不定的にずれることなども抑制されるようになりアーム先端の位置決め精度の低下も抑制されるようになる。
【0012】
この放熱機能付き旋回型アームは、前記アームの旋回移動方向に面する側面には、同側面を含んで前記複数の放熱フィンを囲むカバーが設けられていることによって、同側面とこのカバーとの間に空間が形成され、前記アームのこの空間から前記回転軸の軸方向への少なくとも一方向には、同空間から突出された状態で前記旋回移動方向に面する側面に連絡される凸部がさらに設けられてなることを要旨とする。
【0013】
アームの移動方向側面には複数の放熱フィンを囲うカバーによりそのカバーとの間に複数の放熱フィンを含む空間が形成され、その空間よりも回転軸の軸方向には移動方向側面
と連絡している凸部が形成されている。このような構成によれば、アームが旋回したときには凸部により空気への与圧もしくは減圧が生じることになり、その与圧もしくは減圧された空気が同凸部と連絡する移動方向側面を通じて前記空間内に伝達される。これにより、前記空間内の空気が流動するようになり、放熱フィンを通じてのアームからの放熱が促進されるようになる。
【0014】
またカバーにより、カバーの一端側から流入された空気はカバーの他端側から流出するまで放熱フィンに沿って流れるようになり放熱フィンからの放熱が効率よく行なわれるようになる。さらに、カバーで放熱フィンが囲まれることにより、放熱フィンが直接に空気を切ることにより生じるかぜ切り音などの騒音が減少されるようになる。また、放熱フィンが外部に露出されなくなることからアームの美観が維持されるとともに、放熱フィンによりアーム表面に形成される凹凸へ部材や配線などが引っ掛かってしまうことなども防ぐことができるようになる。さらに、凸部はアームに形成される場合には部品数の減少に貢献し、別途形成されて取り付けられるような場合には軽量化することや空気の流通に応じて適宜変更することができるようにもなりアームにおける凸部の自由度が高められる。
【0015】
この放熱機能付き旋回型アームは、前記複数の放熱フィンに設けられた流通路は、それぞれ前記アームの旋回移動方向に面する側面の一辺に沿う態様で設けられていることを要旨とする。
【0016】
このような構成によれば、アームの旋回方向側面には、アームの基端から先端まで放熱フィンの流通路が直線状に連続形成され、この流通路を通じて空気が素早く流通するようになり基端側の放熱フィンへの空気の流量が増加されるようになる。その結果、アームからの放熱が好適に行われるようになる。
【0017】
この放熱機能付き旋回型アームは、前記放熱フィンに設けられた流通路は、それら放熱フィンを構成する各突条の途中を切り欠く態様で設けられていることを要旨とする。
このような構成によれば、アームの移動方向側面には、各放熱フィンの途中の流通路がアームの基端から先端まで空気の流路を形成して、この流路に沿っても空気が流通するようになり基端側への空気の流量が増加されるようになる。その結果、アームからの放熱がより好適に行われるようになる。
【0018】
この放熱機能付き旋回型アームは、前記放熱フィンを構成する各突条の途中を切り欠く態様で設けられた流通路は、隣り合う突条毎に前記回転軸の軸方向に対する切り欠き位置が異なることを要旨とする。
【0019】
このような構成によれば、各放熱フィンに形成された流通路がアーム長さ方向に斜め状や千鳥状に配列されるようになり、空気はこの流通路に沿って流通することでアームの長さ方向へ流れる。これにより、流通路を流通する空気は放熱フィンの放熱も行うようにもなり、アームからの放熱がより好適に行われるようになる。
【0020】
この放熱機能付き旋回型アームは、前記放熱フィンを構成する各突条は、前記アームの旋回移動方向に面する側面に一体成形されていることを要旨とする。
このような構成によれば、アームと放熱フィンとの間の熱伝導率を低下させること無くアームの熱が効率よく放熱フィンに伝達されて放熱されるようになる。
【0021】
この放熱機能付き旋回型アームは、前記カバーは前記回転軸の軸方向の一端面が前記アームと連結される封鎖部を有しており、前記空間は、前記複数の放熱フィン及びその流通路を含んだ状態で前記封鎖部にてその一端面が封鎖されていることを要旨とする。
【0022】
このような構成によれば、アームに蓋状にかぶせる簡易なカバーにより空間がその一端部を封鎖された場合であれ、アームの旋回移動により各放熱フィンの各流通路を通じて各放熱フィンの間に空気が流通されるようになり、放熱フィンを通じた放熱がされるようになる。
【0023】
この放熱機能付き旋回型アームは、前記封鎖部には前記空間に連通する複数の通気孔が形成されていることを要旨とする。
このような構成によれば、アームに蓋状にかぶせる簡易なカバーにより空間がその一端部を封鎖された場合であれ、封鎖されている部分に形成された空間と連通される通気孔により、空間の空気はその通気孔を通じての流通が可能になる。すなわち、アームの旋回時には各放熱フィンの流通路を通じて各放熱フィンの間に空気が流通されるとともに、アームが旋回されないときには暖められた空気により自然に生じる上昇気流により通気孔を通じた空気の排気がなされるようになり空間内の空気の流通がなされ放熱フィンを通じた放熱が好適になされるようになる。
【0024】
本発明の水平多関節型ロボットは、複数のアームが回転軸を介して水平連結された水平多関節型ロボットであって、前記複数のアームのうちの少なくとも一つのアームは、上記記載の放熱機能付き旋回型アームを有することを要旨とする。
【0025】
このような構成によれば、水平多関節型ロボットのアームにおいて、そのアームの旋回移動方向に面する移動方向側面に突条に設けられた放熱フィンの流通路により雰囲気(空気)が同流通路に沿ってアームの長さ方向に流通されるようになる。これにより、放熱フィンがない場合にはアームの表面をすべるように逃げるにすぎない雰囲気(空気)の流れを放熱フィンにより捉えてアームの冷却効率が上げられる。すなわち、モータなどの発熱体の発した熱が伝えられるアームは、その旋回移動によりその放熱フィンに強制的に空気が流通されるようになり放熱量が増加しアームの温度上昇が抑制されるようになる。
【0026】
また、旋回移動するアームは回転軸からの距離によって旋回移動方向の面を流れる空気の量が変化するとともに気圧の差も生じるようになるが、放熱フィンの流通路によって空気が相対的に気圧の高いほうから低いほうへ流れるような流れが形成されるようになる。例えば、旋回方向正面にあっては、移動速度が相対的に速いことにより相対的に気圧の高くなる先端側から同流通路を通って基端方向に空気が流れ、先端よりも空気の流れの少ない基端側の空気の流れを増加させる。また、旋回方向背面にあっても、移動速度が相対的に速いことにより相対的に気圧が低くなる先端側に前記流通路を通って基端方向からの空気が流れこみ、このときも基端側の空気の流れが増加される。これによって、相対的に空気流量の少ないアームの基端部の空気の流れを増加させることによりアーム全体の放熱量を増加させてアーム全体の温度上昇を抑制するとともに、温度上昇される際の上昇率を鈍化させることで熱をアームに拡散させて局所的な温度上昇を抑制するようにしている。これにより、モータの温度が所定の温度範囲を越えて回転速度や動作時間などのいわゆる動作性能の制限が要求されるようなことが抑制されるようになり、アームの高速移動や移動回数に制限の生じることが抑制されることとなり、水平多関節型ロボットとしての高速移動や移動回数に制限の生じることが抑制されるようになる。
【0027】
さらに、アームの温度上昇が鈍化されることから局所的な温度上昇が抑制され、局所的な温度上昇により生じた局所的な膨張によりアームに予測し難い湾曲やたわみが生じて基端と先端との相対的な位置関係が不定的にずれることなども抑制されるようになり、水平多関節型ロボットのアーム先端の位置決め精度の低下も抑制されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる放熱機能付き旋回型アームが具体化されたアームを備える水平多関節型ロボットの第1の実施形態を図面に従って説明する。
【0029】
図1は、水平多関節型ロボット(ロボット)10についての全体の斜視構造を示す斜視図である。
図1に示すように、ロボット10は、床面等に設置された基台11を有し、その上端部に回動可能に設けられた回転軸12に、第1アーム13の基端部が連結固定されている。回転軸12は、その基端が基台11内に設けられた第1モータM1によって正逆回転されることで、基台11に対して軸心C1を中心にして回動するようになっている。これにより第1アーム13は、回転軸12の軸心C1を中心にして基台11に対して水平方向に回動、すなわち水平旋回する。
【0030】
第1アーム13の先端部に設けられる支持軸14は、その先端を第2アーム15の基端部内に配置させることにより第2アーム15を回動可能に支持している。第2アーム15は、その基端部に第2モータM2が固定さており、同第2モータM2の出力軸がギア等を介して支持軸14の先端に連結されている。これにより、第2アーム15は、第2モータM2の回動により支持軸14を正逆回転させることで、その支持軸14を正逆回転させる反力によって、軸心C2を中心にして第1アーム13に対して水平方向に回動、すなわち水平旋回する。
【0031】
第2アーム15の先端部には、上下回転軸筒15Aが設けられている。上下回転軸筒15Aは、上下回転軸16を回転可能に、かつ、上下方向に移動可能に支持している。上下回転軸16は、第2アーム15内に備えられた回転モータM3の正逆回転によって自らの軸心C3を中心にして正逆回転される。また、上下回転軸16は、第2アーム15内に備えられた昇降モータM4の正逆回転によって、上下方向に昇降移動される。上下回転軸16の下端部17には、ツール、例えば被搬送物を把持するハンドや被加工物を加工するハンド等の取り付けが可能になっている。そして、ロボット10は、下端部17に取り付けられた各ツールによって、部品を搬送したり、部品を加工したりするようになっている。
【0032】
次に、第2アーム15の構造について図2〜図4を参照して説明する。図2は、第2アーム15の下部構造を示す斜視図であり、図3は、図2の3−3線による断面構造を示す断面図であり、図4は第2アームの筐体の詳細構造を示す図であり、(a)は上面構造を示す上面図、(b)は正面構造を示す正面図、(c)は側面構造を示す側面図である。
【0033】
第2アーム15は、図2に示すように、その下部に第2アーム15の水平方向に伸びる高い剛性を備えた筐体20と、筐体20を上方から覆い同筐体20に嵌合し結合される樹脂材料からなるカバー21とを有している。筐体20は、図2及び図3に示されように、略長方形の箱状の鋳物として形成されている。筐体20の底板22には前後一対の軸穴22A,22Bが形成されており、軸穴22Aには前記支持軸14の先端が挿通され、同軸穴22Bには前記上下回転軸16が挿通される。底板22にて一対の軸穴22A,22Bの間には、樹脂材料からなる台状の凸部29が、同底板22から下方向に突出される態様にて設けられている。凸部29は、第2アーム15の長さ方向である基端部から先端部に向かって左側の旋回移動方向(図2にて手前側)に面する左側面29Lを有し、同じく向かって右側の旋回移動方向(図2にて奥側)に面する右側面29Rを有している。
【0034】
筐体20は、底板22に相対向する上面としての天板23を有している。天板23には、前記軸穴22Aと相対向する位置に前記支持軸14の先端を回動可能に支持する軸受23Aが形成されており、前記軸穴22Bと相対向する位置に前記上下回転軸16を回動及び上下動可能に支持する図示しない軸受けなどが形成されている。すなわち、筐体20は、支持軸14を底板22の軸穴22Aを通じて天板23の軸受23Aで支持することで、
第1アーム13に対して水平方向に延びるように同第1アーム13に連結されている。
【0035】
軸受23Aの上部には、第2モータM2がその本体24Aに固定されているフランジ24Fを介して図示しないボルトなどにより固定されている。すなわち、第2モータM2はその本体24Aがフランジ24Fを介して筐体20にも固定されつつ、その出力軸は筐体20に対して回動可能になっている。第2モータM2の本体24A及びそのフランジ24Fは、金属などの熱伝導率の高い材料から構成されており、第2モータM2が駆動により生じた熱量は、フランジ24Fを介して軸受23A、及び筐体20に伝達される。そして筐体20に伝達された熱量は、天板23の軸受23A周囲から天板23の先端部や側面部20S、さらには底板22へと伝達され、すなわち筐体20全体に拡散される。また天板23には、第2モータM2の他にも回転モータM3や昇降モータM4、図示しない電気回路もしくは機械構造等の発熱体が備えられており、それらから天板23に伝達された熱量も天板23や側面部20S、さらには底板22へと伝達されながら筐体20の全体に拡散される。筐体20に伝達された熱量は、それが伝達された各部の表面からの自然な放熱により筐体20において減少される。しかし自然な放熱では、筐体20の温度や形状、その周囲を流通する空気の流量などによりその放熱量が制限され、第2モータM2などの発熱体から筐体20に伝達される熱量がその放熱量よりも多い場合には、筐体20には熱量が蓄積されるようになる。筐体20の温度が熱量の蓄積に伴って上昇したとき、筐体20との温度差が小さくなった第2モータM2などからは筐体20への熱量の移動が減少されるようになり、これにより第2モータM2などにも熱量が蓄積されそれらの温度も上昇されるようになる。
【0036】
筐体20は、第2アーム15の旋回移動方向に面する側面部20Sを有している。側面部20Sは、第2アーム15の基端部から先端部に向かって左側の旋回移動方向(図3にて右側)に面する左側面部SL(図4(a)参照)と、第2アーム15の基端から先端に向かって右側の旋回移動方向(図3にて左側)に面する右側面部SRとを有している。側面部20Sは、図4に示されるように、その全周に軸心C2の軸方向(上下方向)に延びる突条の放熱フィン20Fが複数形成されている。各放熱フィン20Fは、筐体20に一体成形された鋳物であって筐体20に連続的に接合されており(図3参照)、筐体20からの熱量が断面などにより阻害されること無く効率よく移動されるようになっている。すなわち、側面部20Sは、その表面積を増加させる放熱フィン20Fにより外気との接触機会が増加され、そこに伝達された熱量が効率よく外気に放熱されるようになる。なお本実施形態では、放熱フィン20Fにおいて、その底板22側の端部を下端F1とし、天板23側の端部を上端F2としている。そして、上下方向(軸心C2の軸方向)には、放熱フィン20Fの下端F1は底板22と略並ぶ位置に形成され、放熱フィン20Fの上端F2は天板23の手前(下方)の位置に形成されている。すなわち各放熱フィン20Fは、側面部20Sの上下方向の長さH1に対しては上側が通路幅H3の長さだけ切り欠かれた態様とされることで同放熱フィン20Fに交差する流通路が形成され、その流通路の通路幅H3だけ側面部20Sの上下方向の長さH1よりも短い長さH2に形成されている。
【0037】
筐体20には、筐体20内や天板23上に設けられた第2モータM2などや電気回路及び機械構造を外部環境にある飛沫、粉塵から保護するカバー21が上方から装着される。カバー21は、可塑性の樹脂材料からなり、筐体20よりも高い高さの有蓋四角筒状に形成されている。詳述すると、カバー21は、筐体20の上方から覆いかぶせたときに筐体20の天板23とそこに備えられた第2モータM2などを覆うカバー本体21Aと、筐体20の側面部20Sを囲うようにして覆うカバー本体21Aに対して拡開形成されたスカート部25と、カバー本体21Aとスカート部25とを繋ぐ段差面26とを有している。すなわち、カバー本体21Aの下端の当接端27とスカート部25との間の段差面26が、スカート部25をカバー本体21Aに対して拡開させている。カバー本体21Aの当接端27は、筐体20の天板23に当接することによりカバー21を筐体20に対して所定
の位置に設置させ、スカート部25が側面部20Sを囲う高さを規定している。
【0038】
なお本実施形態ではスカート部25の下端は底板22、すなわち放熱フィン20Fの下端F1と同じ高さ位置になるようになっている。また、段差面26がスカート部25を拡開させる距離は放熱フィン20Fの側面部20Sからの突出長Lと略同じ長さにされており、スカート部25はその内側に側面部20Sと各放熱フィン20Fとを含んだ通路空間を形成するようになる。さらに、各放熱フィン20Fはその上端F2が天板23の手前で通路幅H3だけ切り欠かれた態様の流通路を有しているので、それら流通路が前記通路空間においてスカート部25、段差面26、側面部20Sにより囲まれた態様となる。
【0039】
また、カバー本体21Aには、上端から段差面26まで延設された凹部21Bが形成されカバー21の剛性を高くするようにしている。凹部21Bと段差面26とが交わる位置には接合部28が形成されているとともに、カバー21の接合部28に対応する筐体20の天板23の位置には、ネジ受部20Bが形成されている。そして、接合部28のねじ穴28Hを挿通される図示しないねじがネジ受部20Bに螺合されることで、接合部28とネジ受部20Bとが固着され、カバー21が筐体20に接合されるようになっている。
【0040】
次に、筐体20(第2アーム15)における放熱機能について図5を参照して説明する。図5は第2アーム15を模式的に示した模式図であり、(a)は第2アーム15の上面図であり、(b)は(a)に示す筐体20の左側面部にかかる部分の部分断面図であり、(c)は(a)に示す5c−5c線断面構造を示す断面図であり、(d)は(a)に示す筐体20の右側面部にかかる部分の部分断面図である。なお、説明の便宜上、図5においては、カバー21を簡略化もしくはその一部を省略して描画している。
【0041】
また図5において、通路空間において2つの放熱フィン20Fの間には上下方向に延びる縦通路が形成されており、図5(b)に示されるように、左側面部SLにおいて軸心C2に近いものを縦通路L1と示し、そこから離れる順番に縦通路L2〜L5と示し、最も軸心C2から離れたものを縦通路L6と示している。同様に、図5(d)に示されるように、右側面部SRにおいて軸心C2に近いものを縦通路R1と示し、そこから離れるにつれて順番に縦通路R2〜R5と示し、最も軸心C2から離れたものを縦通路R6と示している。さらに、左側面部SLにおいて各放熱フィン20Fの各流通路を横方向につなぐ一つの通路を横通路LCと示し、右側面部SRにおいて各放熱フィン20Fの各流通路を横方向につなぐ一つの通路を横通路RCと示す。
【0042】
図5(a)に示されるように、筐体20が軸心C2を中心に右旋回されその先端が矢印の方向に移動される場合、その左側面部SLには図5(b)に矢印で示されるような空気の流れが生じ、その右側面部SRには図5(d)に矢印で示されるような空気の流れが生じる。なお、筐体20が軸心C2を中心に左旋回されその先端が反矢印の方向に移動される場合、左側面部SLには右旋回時の右側面部SRと同様の空気の流れが生じ、右側面部SRには右旋回時の左側面部SLと同様の空気の流れが生じるだけにすぎず、その説明のほとんどが右旋回の場合と重複するのでここでは左旋回の場合の説明を省略する。
【0043】
詳述すると、右旋回される左側面部SLは、図5(b)において奥側に移動するが、縦通路L1側よりも軸心C2から離れる縦通路L6側の移動速度の方が相対的に速くなる。このとき通路空間の下方に突出された凸部29の左側面29Lも同図において奥側に移動するに伴いその左側面29Lの気圧が低下されるようになり、その左側面29Lに同通路空間の空気が流入されるような流れを生じるようになる。なおこのとき、縦通路L1側よりも縦通路L6側の移動速度の方が相対的に速くなるため、左側面29Lの気圧は縦通路L1側よりも縦通路L6側の方が相対的に低くなる。そして左側面29Lのすぐ上部にある各縦通路L1〜L6には上述のように左側面29Lの形成した気圧が伝達されるように
なる。これにより、例えば縦通路L6の気圧はもっとも低圧となることから空気が横通路LCから流入されるようになり、それに伴い横通路LCの気圧も低下されるようになる。横通路LCには複数の縦通路L1〜L6が通じていることから減圧された横通路LCには、減圧されながらも相対的に気圧の高い例えば縦通路L1から空気が流入されるようになり、これによれば縦通路L1から横通路LCを通り縦通路L6への空気の流れが形成される。すなわち例えば、図5(b)に矢印で示されるように、左側面部SLには下方に空気が吸引されることにより相対的に気圧の低い各縦通路L6〜L3に、相対的に気圧の高い各縦通路L1〜L2に下方から流入される空気が横通路LCを介して流入されるような流れが生じるようになる。なお、各縦通路L1〜L6を流れる空気が上向きに流れる(流入する)のか、下向きに流れる(流出する)のかは、左側面部の広さ、各放熱フィンの高さ、長さ、幅、アームの旋回速度、凸部の左側面の形状や突出長さなどにより変更されたり変化したりする。しかしながら、少なくとも横通路LCには縦通路L1側から縦通路L6側への流れが生じるようになる。その結果、左側面部SLにおいては、各放熱フィン20Fの周りに生じるこのような空気の流れが各放熱フィン20Fから熱を効率よく放熱させるようになる。
【0044】
一方、右旋回される右側面部SRは、図5(d)において手前側に移動するが、縦通路R1側よりも軸心C2から離れる縦通路R6側の移動速度の方が相対的に速くなる。このとき通路空間の下方に突出された凸部29の右側面29Rも同図において手前側に移動されるに伴いその右側面29Rの気圧が昇圧されるようになり、その右側面29Rから同通路空間に空気が押し込まれるような流れを生じるようになる。なおこのとき、縦通路R1側よりも縦通路R6側の移動速度の方が相対的に速くなるため、右側面29Rの気圧は縦通路R1側よりも縦通路R6側の方が相対的に高くなる。そして右側面29Rのすぐ上部にある各縦通路R1〜R6には上述のように右側面29Rの形成した気圧が伝達されるようになる。これにより例えば縦通路R6の気圧はもっとも高圧となることから空気が横通路RCへ流出されるようになり、それに伴い横通路RCの気圧も上昇されるようになる。横通路RCには複数の縦通路R1〜R6が通じていることから昇圧された横通路RCには、昇圧されながらも相対的に気圧の低い例えば縦通路R1に空気を流出させるようになり、これによれば縦通路R6から横通路RCを通り縦通路R1への空気の流れが形成される。すなわち例えば、図5(d)に矢印で示されるように、右側面部SRには下方から空気が流入されることにより相対的に気圧の高い各縦通路R6〜R3から相対的に気圧の低い各縦通路R1〜R2の下方にその空気が流出されるように横通路RCを介して流入されるような空気の流れが生じるようになる。なお、各縦通路R1〜R6を流れる空気が上向きに流れる(流入する)のか、下向きに流れる(流出する)のかは、右側面部の広さ、各放熱フィンの高さ、長さ、幅、アームの旋回速度、凸部の右側面の形状や突出長さなどにより変更されたり変化したりする。しかしながら、少なくとも横通路RCには縦通路R6側から縦通路R1側への流れが生じるようになる。その結果、右側面部SRにおいては、各放熱フィン20Fの周りに生じるこのような空気の流れが各放熱フィン20Fから熱を効率よく放熱させるようになる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の放熱機能付き旋回型アームによれば以下のような効果を得ることができる。
(1)第2アーム15の旋回移動方向に面する側面部20Sに突条に設けられた放熱フィン20Fの流通路により雰囲気(空気)が同流通路に沿って第2アーム15の長さ方向に流通されるようにした。これにより、放熱フィン20Fのない場合には第2アーム15の表面をすべるように逃げるにすぎない雰囲気(空気)の流れを放熱フィン20Fにより捉えて第2アーム15の冷却効率が上げられる。すなわち、第2モータM2などの発熱体の発した熱が伝えられる第2アーム15は、その旋回移動によりその放熱フィン20Fに強制的に空気が流通されるようになり放熱量が増加し第2アーム15の温度上昇が抑制されるようになる。
【0046】
(2)また、旋回移動する第2アーム15は回転軸としての軸心C2(基端側)からの距離(長さ)によって側面部20Sを流れる空気の量が変化するとともに同側面部20Sには気圧の差も生じるようになる。そこで、放熱フィン20Fの流通路によって空気が相対的に気圧の高いほうから低いほうへ流れるようにした。例えば、旋回方向正面(右側面部SR)にあっては、移動速度が相対的に速いことにより基端側(縦通路R11側)に対して相対的に気圧の高くなる先端側(縦通路R16側)から同流通路を通って基端方向に空気が流れ、先端よりも空気の流れの少ない基端側の空気の流れを増加させる。また、旋回方向背面(左側面部SL)にあっても、移動速度が相対的に速いことにより相対的に気圧が低くなる先端側(縦通路L16側)に前記流通路を通って基端方向からの空気が流れこみ、このときも基端側(縦通路L11側)の空気の流れが増加される。これによって、相対的に空気流量の少ない第2アーム15の基端部の空気の流れを増加させることにより同アーム全体の放熱量を増加させて同アーム全体の温度上昇を抑制するとともに、温度上昇される際の上昇率を鈍化させることで熱を同第2アーム15に拡散させて局所的な温度上昇が抑制されるようになる。これにより、第2モータM2などの温度が所定の温度範囲を越えて回転速度や動作時間などのいわゆる動作性能の制限が要求されるようなことが抑制されるようになり、第2アーム15の高速移動や移動回数に制限の生じることが抑制されるようになる。すなわち水平多関節型ロボット10としての高速移動や移動回数に制限の生じることが抑制されるようにもなる。
【0047】
(3)さらに、第2アーム15の温度上昇を鈍化されることにより局所的な温度上昇が抑制されるようにした。これにより、局所的な温度上昇により生じた局所的な膨張により第2アーム15に予測し難い湾曲やたわみが生じて基端と先端との相対的な位置関係が不定的にずれることなども抑制されるようになり第2アーム15の先端の位置決め精度の低下も抑制されるようになる。すなわち水平多関節型ロボット10のアーム先端の位置決め精度の低下も抑制されるようにもなる。
【0048】
(4)第2アームの側面部20Sには複数の放熱フィン20Fを囲うカバー21によりそのカバー21との間に複数の放熱フィン20Fを含む通路空間を形成し、その通路空間よりも軸心C2の軸方向には筐体20の底板22に設けられ側面部20Sと連絡している凸部29を形成した。これにより、第2アーム15が旋回したときには凸部29により空気への与圧もしくは減圧が生じることになり、その与圧もしくは減圧された空気が同凸部29と連絡する側面部20Sを通じて通路空間内に伝達される。これにより、通路空間内の空気が流動するようになり、放熱フィン20Fを通じての第2アーム15からの放熱が促進されるようになる。
【0049】
(5)またカバー21により、カバー21の一端側から流入された空気はカバー21の他端側から流出するまで放熱フィン20Fに沿って流れるようにした。これにより放熱フィン20Fからの放熱が効率よく行なわれるようになる。
【0050】
さらにカバー21で放熱フィン20Fが囲まれることにより、放熱フィン20Fが直接に空気を切ることにより生じるかぜ切り音などの騒音が減少されるようになる。
また、放熱フィン20Fが外部に露出されなくなることからアームの美観が維持されるとともに、放熱フィンによりアーム表面に形成される凹凸へ部材や配線などが引っ掛かることなども防ぐことができるようになる。
【0051】
(6)別途形成された凸部29を筐体20に取り付けるようにした。これにより凸部29の軽量化が容易に図られるとともに、空気の流通に応じて適宜変更することができるようにもなり、第2アーム15に設けられる凸部29の形状などの自由度が高められる。
【0052】
(7)第2アーム15の側面部20Sには、第2アーム15の基端側から先端側まで放熱フィン20Fの流通路が直線状に連続形成される横通路を形成した。これにより、この流通路からなる横通路を通じて側面部20Sを横方向に空気が素早く流通するようになり基端側の放熱フィン20Fへの空気の流量が増加されるようになる。その結果、第2アーム15からの放熱が好適に行われるようになる。
【0053】
(8)筐体20の側面部20Sに放熱フィン20Fを一体成形した。これにより、第2アーム15(筐体20)と放熱フィン20Fとの間の熱伝導率を低下させること無く第2アーム15の熱が効率よく放熱フィン20Fに伝達されて放熱されるようになる。
【0054】
(9)通路空間はその上部がカバー21の段差面26により封鎖された。これによれば、第2アーム15に蓋状にかぶせる簡易なカバー21により通路空間がその上部を段差面26に封鎖された場合であれ、第2アーム15の旋回移動により各放熱フィン20Fの各流通路を通じて各放熱フィン20Fの間に空気が流通されるようになり、放熱フィン20Fを通じた放熱がされるようになる。
(第2の実施形態)
以下、本発明にかかる放熱機能付き旋回型アームが具体化されたアームを備える水平多関節型ロボットの第2の実施形態を図6に従って説明する。なお、本実施形態は、第2アーム15にてカバー21の段差面26に通路空間と連通する通気孔32が形成された点が第1の実施形態と相違するのみで、その他の構造は第1の実施形態と同様である。そこでここでは、カバー21に通気孔32が形成されている場合における筐体20の放熱機能について主に説明する。なお、説明の便宜上、第1の実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
図6は、第2アーム15を模式的に示した模式図であり、(a)は第2アーム15の上面図であり、(b)は(a)に示す筐体20の左側面部にかかる部分の部分断面図であり、(c)は(a)に示す6c−6c線断面構造を示す断面図であり、(d)は(a)に示す筐体20の右側面部にかかる部分の部分断面図である。なお、説明の便宜上、図6においては、カバー21を簡略化もしくはその一部を省略して描画している。
【0056】
図6においても、通路空間において2つの放熱フィン20Fの間には上下方向(軸心C2の軸方向)に延びる縦通路が形成されており、図6(b)に示されるように、左側面部SLにおいて軸心C2に近いものを縦通路L1と示し、そこから離れる順番に縦通路L2〜L5と示し、最も軸心C2から離れたものを縦通路L6と示している。同様に、図6(d)に示されるように、右側面部SRにおいて軸心C2に近いものを縦通路R1と示し、そこから離れるにつれて順番に縦通路R2〜R5と示し、最も軸心C2から離れたものを縦通路R6と示している。さらに、左側面部SLにおいて各放熱フィン20Fの各流通路を横方向につなぐ一つの通路を横通路LCと示し、右側面部SRにおいて各放熱フィン20Fの各流通路を横方向につなぐ一つの通路を横通路RCと示す。
【0057】
図6(a)に示されるように、筐体20が軸心C2を中心に右旋回されその先端が矢印の方向に移動される場合、その左側面部SLには図6(b)に矢印で示されるような空気の流れが生じ、その右側面部SRには図6(d)に矢印で示されるような空気の流れが生じる。なお、筐体20が軸心C2を中心に左旋回されその先端が反矢印の方向に移動される場合、左側面部SLには右旋回時の右側面部SRと同様の空気の流れが生じ、右側面部SRには右旋回時の左側面部SLと同様の空気の流れが生じるだけにすぎず、その説明のほとんどが右旋回の場合と重複するのでここでは左旋回の場合の説明を省略する。
【0058】
詳述すると、右旋回される左側面部SLは、図6(b)において奥側に移動するが、縦通路L1側よりも軸心C2から離れる縦通路L6側の移動速度の方が相対的に速くなる。
このとき通路空間の下方に突出された凸部29の左側面29Lも同図において奥側に移動するに伴いその左側面29Lの気圧が低下されるようになり、その左側面29Lに同通路空間の空気が流入していくような流れを生じるようになる。なおこのとき、縦通路L1側よりも縦通路L6側の移動速度の方が相対的に速くなるため、左側面29Lの気圧は縦通路L1側よりも縦通路L6側の方が相対的に低くなる。そして左側面29Lのすぐ上部にある各縦通路L1〜L6には上述のように左側面29Lの形成した気圧が伝達されるようになる。これにより、例えば縦通路L6の気圧は空気が下方に流出されもっとも低圧となることから空気が横通路LCから流入されるようになり、それに伴い横通路LCの気圧も低下されるようになる。横通路LCは複数の通気孔32と通じていることから減圧された横通路LCには、それら通気孔32から空気が流入されるようになり、これによれば通気孔32から横通路LCを通り縦通路L6への空気の流れが形成される。このとき例えば、縦通路L6側の気圧は相対的に低く縦通路L1側の気圧は相対的に高いことから、図6(b)に矢印で示されるように、通気孔32から横通路LCに流入された空気は縦通路L6により多く供給されるようになり横通路LCには縦通路L1側から縦通路L6側への空気の流れが生じるようになる。なお、各縦通路L1〜L6を流れる空気が上向きに流れる(流入する)のか、下向きに流れる(流出する)のかは、通気孔32の数や大きさ、左側面部の広さ、各放熱フィンの高さ、長さ、幅、アームの旋回速度、凸部の左側面の形状や突出長さなどにより変更されたり変化したりする。しかしながら、少なくとも横通路LCには縦通路L1側から縦通路L6側への流れが生じるようになる。その結果、左側面部SLにおいては、各放熱フィン20Fの周りに生じるこのような空気の流れが各放熱フィン20Fから熱を効率よく放熱させるようになる。
【0059】
一方、右旋回される右側面部SRは、図6(d)において手前側に移動するが、縦通路R1側よりも軸心C2から離れる縦通路R6側の移動速度の方が相対的に速くなる。このとき通路空間の下方に突出された凸部29の右側面29Rも同図において手前側に移動するに伴いその右側面29Rの気圧が昇圧されるようになり、右側面29Rから同通路空間に空気が押し込まれるような流れを生じるようになる。なおこのとき、縦通路R1側よりも縦通路R6側の移動速度の方が相対的に速くなるため、右側面29Rの気圧は縦通路R1側よりも縦通路R6側の方が相対的に高くなる。そして右側面29Rのすぐ上部にある各縦通路R1〜R6には上述のように右側面29Rの形成した気圧が伝達されるようになる。これにより、例えば縦通路R6の気圧は空気が下方から流入されもっとも高圧となることから空気が横通路RCへ流出されるようになり、それに伴い横通路RCの気圧も上昇されるようになる。横通路RCは複数の通気孔32と通じていることから横通路RCにて昇圧された空気は、それら通気孔32が流出されるようになり、これによれば縦通路R6から横通路RCを通り通気孔32への空気の流れが形成される。このとき例えば、縦通路R6側の気圧は相対的に高く縦通路R1側の気圧は相対的に低いことから、図6(d)に矢印で示されるように、縦通路R6からの空気は横通路RCを通り縦通路R1側に移動され各通気孔32に分散されて流出されるようになり横通路RCには縦通路R6側から縦通路R1側への空気の流れが生じるようになる。なお、各縦通路R1〜R6を流れる空気が上向きに流れる(流入する)のか、下向きに流れる(流出する)のかは、通気孔32の数や大きさ、右側面部の広さ、各放熱フィンの高さ、長さ、幅、アームの旋回速度、凸部の右側面の形状や突出長さなどにより変更されたり変化したりする。しかしながら、少なくとも横通路RCには縦通路R6側から縦通路R1側への流れが生じるようになる。その結果、右側面部SRにおいては、各放熱フィン20Fの周りに生じるこのような空気の流れが各放熱フィン20Fから熱を効率よく放熱させるようになる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の放熱機能付き旋回型アームによれば上述した(1)〜(9)の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(10)通路空間の上部を封鎖するカバー21の段差面26に通気孔32を形成した。これにより、第2アーム15に蓋状にかぶせる簡易なカバー21により形成された通路空
間がその上部を段差面26に封鎖された場合であれ、通気孔32を形成することによって、空気が上下方向に流通するようにもなる。すなわち、第2アーム15が旋回移動されない場合には暖められた空気により自然に生じる上昇気流により、放熱フィン20Fを通じた放熱がされるようになる。
(第3の実施形態)
以下、本発明にかかる放熱機能付き旋回型アームが具体化されたアームを備える水平多関節型ロボットの第3の実施形態を図7に従って説明する。なお、本実施形態は、流通路を構成する放熱フィンに形成される流通路が同放熱フィンの上下方向(軸心C2の軸方向)の途中にも形成される点が第1の実施形態と相違するのみで、その他の構造は第1の実施形態と同様である。そこでここでは、そのような放熱フィンが形成されている場合における筐体20の放熱機能について主に説明する。なお、説明の便宜上、第1の実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0061】
図7は、第2アーム15を模式的に示した模式図であり、(a)は第2アーム15の上面図であり、(b)は(a)に示す筐体36の左側面部にかかる部分の部分断面図であり、(c)は(a)に示す7c−7c線断面構造を示す断面図であり、(d)は(a)に示す筐体36の右側面部にかかる部分の部分断面図である。なお、説明の便宜上、図7においては、カバー21を簡略化もしくはその一部を省略して描画している。
【0062】
筐体36は、第2アーム15の基端部から先端部に向かって左側の旋回移動方向(図7(a)にて左側)に面する左側面部SLと、第2アーム15の基端から先端に向かって右側の旋回移動方向(7(a)にて右側)に面する右側面部SRとを有している。左側面部SLには、図7(b)に示されるように、上下方向(軸心C2の軸方向)に延びる突条の放熱フィン35Faと放熱フィン35Fbとが交互にそれぞれ複数形成されており、右側面部SRにも、図7(d)に示されるように、上下方向に延びる突条の放熱フィン35Faと放熱フィン35Fbとがそれぞれ交互に複数形成されている。各放熱フィン35Fa及び各放熱フィン35Fbは、筐体36に一体成形された鋳物であって筐体36に連続的に接合されており、筐体36からの熱量が断面などにより阻害されること無く効率よく移動されるようになっている。すなわち、筐体36は、その表面積を増加させる各放熱フィン35Fa,35Fbにより外気との接触機会が増加され、そこに伝達された熱量が効率よく外気に放熱されるようになる。
【0063】
なお本実施形態では、放熱フィン35Faと放熱フィン35Fbとはそれぞれ、その突条がその突条に交差する流通部により切り欠かれ複数の凸部に分割されるようなかたちに構成されている。詳述すると、放熱フィン35Faは、その下端から高さH11の第1凸部F11と、第1凸部F11に第1流通部を間に介して連続する高さH12の第2凸部F12と、第2凸部F12と筐体36の天板との間に形成される第2流通部とから構成される。また、放熱フィン35Fbは、その下端から高さH15の第3凸部F13と、第3凸部F13に第3流通部を間に介して連続する高さH16の第4凸部F14と、第4凸部F14に第4流通部を間に介して連続する高さH17の第5凸部F15とから構成される。
【0064】
そして、上下方向に垂直な横方向に隣接する放熱フィン35Faと放熱フィン35Fbとの間において、放熱フィン35Faに形成された第1及び第2流通部と放熱フィン35Fbに形成された第3及び第4流通部とが同横方向に同じ位置に配置されないようになっている。すなわち、放熱フィン35Faの第1流通部は、放熱フィン35Fbの第3流通部や第4流通部と横方向に同じ位置にならようにその位置が高さH11などにより調整されている。また、放熱フィン35Faの第2流通部は、放熱フィン35Fbの第3流通部や第4流通部と横方向に同じ位置にならようにさらにその位置が高さH12などにより調整されている。同様に放熱フィン35Fbの第3流通部は、放熱フィン35Faの第1流通部や第2流通部と横方向に同じ位置にならようにその位置が高さH15などにより調整
されている。また、放熱フィン35Fbの第4流通部は、放熱フィン35Faの第1流通部や第2流通部と横方向に同じ位置にならようにさらにその位置が高さH16などにより調整されている。すなわち、放熱フィン35Faの第1流通路の横方向には放熱フィン35Fbの第4凸部F14が配置され、第2流通路の横方向には第5凸部F15が配置される。また、放熱フィン35Fbの第3流通路の横方向には放熱フィン35Faの第1凸部F11が配置され、第4流通路の横方向には第2凸部F12が配置される。これにより、筐体36の横方向に対して、例えば第1流通路と第3流通路とが千鳥状に配置され、例えば第2流通路と第4流通路とが千鳥状に配置されている。
【0065】
次に、筐体36(第2アーム15)における放熱機能について説明する。
図7において、通路空間において放熱フィン35Faと放熱フィン35Fbとの間には上下方向に延びる縦通路が形成されており、図7(b)に示されるように、左側面部SLにおいて軸心C2に近いものを縦通路L11と示し、そこから離れる順番に縦通路L12〜L15と示し、最も軸心C2から離れたものを縦通路L16と示している。同様に、図7(d)に示されるように、右側面部SRにおいて軸心C2に近いものを縦通路R11と示し、そこから離れるにつれて順番に縦通路R12〜R15と示し、最も軸心C2から離れたものを縦通路R16と示している。さらに、本実施形態では、左側面部SLにおいて横方向に交互に並ぶ放熱フィン35Faの第1流通路と第2流通路、及び放熱フィン35Fbの第3流通路と第4流通路とが上下方向の配置位置がずらされつつも横通路を構成している。同様に、右側面部SRにおいても横方向に交互に並ぶ放熱フィン35Faの第1流通路と第2流通路、及び放熱フィン35Fbの第3流通路と第4流通路とが上下方向の配置位置がずらされつつも横通路を構成している。
【0066】
図7(a)に示されるように、筐体36が軸心C2を中心に右旋回されその先端が矢印の方向に移動される場合、その左側面部SLには図7(b)に矢印で示されるような空気の流れが生じ、その右側面部SRには図7(d)に矢印で示されるような空気の流れが生じる。なお、筐体36が軸心C2を中心に左旋回されその先端が反矢印の方向に移動される場合、左側面部SLには右旋回時の右側面部SRと同様の空気の流れが生じ、右側面部SRには右旋回時の左側面部SLと同様の空気の流れが生じるだけにすぎず、その説明のほとんどが右旋回の場合と重複するのでここでは左旋回の場合の説明を省略する。
【0067】
詳述すると、右旋回される左側面部SLは、図7(b)において奥側に移動するが、縦通路L11側よりも軸心C2から離れる縦通路L16側の移動速度の方が相対的に速くなる。このとき通路空間の下方に突出された凸部29の左側面29Lも同図において奥側に移動するとともに、その左側面29Lの気圧が低くなるに伴い空気がその左側面29Lに流入していくような流れを生じるようになる。なおこのとき、縦通路L11側よりも縦通路L16側の移動速度の方が相対的に速くなるため、左側面29Lの気圧は縦通路L11側よりも縦通路L16側の方が相対的に低くなる。そして左側面29Lのすぐ上部にある各縦通路L11〜L16には上述のように左側面29Lの形成した気圧が伝達されるようになる。すなわち各縦通路L16〜L12の気圧は、それよりも軸心C2側に隣接する各縦通路L15〜L11の気圧よりも低くなることから、第1〜第4流通路により構成された横通路には図7(b)にて示される左向き矢印のような筐体36の先端方向への空気の流れが生じるようになる。
【0068】
すなわち縦通路L16は縦通路L15よりも気圧が低いことから縦通路L15の空気が第3流通路と第4流通路とを通り流入され、このとき空気は縦通路L15に面した放熱フィン35Fbの第3凸部F13、第4凸部F14及び第5凸部F15にも接触して熱を奪うようになる。それとともに縦通路L16の空気は下方に流出され、このときも各放熱フィン35Fa,35Fbから熱が奪われる。
【0069】
また、同様に各縦通路L15〜L12にはそれぞれ各縦通路L14〜L11から空気が流入され、それらの空気の流通に伴い各放熱フィン35Fa,35Fbから熱が奪われる。なお、各縦通路L15〜L13はそこに流入された空気が下方から流出され、各縦通路L12、L11には各縦通路L16〜L13にて流出される空気を補うための空気が下方から流入され、これら空気の流出入によっても各放熱フィン35Fa,35Fbから熱が奪われる。
【0070】
すなわち、筐体36の左側面部SLの横方向には、横通路を先端方向に向かい各第1流通路〜第4流通路を蛇行しながら流れる空気の流れが形成される。例えば、図7(b)に矢印で示されるように、左側面部SLには相対的に気圧の低い各縦通路L16〜L13に相対的に気圧の高い各縦通路L11〜L12からの空気が横通路を介して流入されるような空気の流れが生じる。なお、各縦通路L11〜L16を流れる空気が上向きに流れる(流入する)のか、下向きに流れる(流出する)のかは、左側面部の広さ、各放熱フィンの高さ、長さ、幅、アームの旋回速度、凸部の左側面の形状や突出長さなどにより変更されたり変化したりするが、少なくとも横通路には縦通路L11側から縦通路L16側への流れが生じる。その結果、左側面部SLにおいては、各放熱フィン35Fa,35Fbの周りに生じるこのような空気の流れが各放熱フィン35Fa,35Fbから熱を効率よく放熱させるようになる。
【0071】
一方、右旋回される右側面部SRは、図7(d)において手前側に移動するが、縦通路R11側よりも軸心C2から離れる縦通路R16側の移動速度の方が相対的に速くなる。このとき通路空間の下方に突出された凸部29の右側面29Rも同図において手前側に移動するとともに、その右側面29Rの気圧が高くなるに伴い空気がその右側面29Rから押し出されるような流れを生じるようになる。なおこのとき、縦通路R11側よりも縦通路R16側の移動速度の方が相対的に速くなるため、右側面29Rの気圧は縦通路R11側よりも縦通路R16側の方が相対的に高くなる。そして右側面29Rのすぐ上部にある各縦通路R11〜R16には上述のように右側面29Rの形成した気圧が伝達されるようになる。すなわち各縦通路R16〜R12の気圧は、それよりも軸心C2側に隣接する各縦通路R15〜R11の気圧よりも高くなることから、第1〜第4流通路により構成された横通路には図7(d)にて示される左向き矢印のような筐体36の先端方向への空気の流れが生じるようになる。
【0072】
すなわち縦通路R16は縦通路R15よりも気圧が高いことから縦通路R16の空気が第3流通路と第4流通路とを通り縦通路R15に流出され、このとき空気は縦通路R16に面した放熱フィン35Fbの第3凸部F13、第4凸部F14及び第5凸部F15にも接触して熱を奪うようになる。それとともに流出される空気を補うべく縦通路R16には下方から空気が流入され、このときも各放熱フィン35Fa,35Fbから熱が奪われる。
【0073】
また、同様に各縦通路R15〜R12からはそれぞれ各縦通路R14〜R11に空気が流入され、それらの空気の流通に伴い各放熱フィン35Fa,35Fbから熱が奪われる。なお、各縦通路R15〜R13には空気が下方から流入され、各縦通路R12、R11では各縦通路R16〜R13から供給される空気が下方に流出され、これら空気の流出入によっても各放熱フィン35Fa,35Fbから熱が奪われる。
【0074】
すなわち、筐体36の右側面部SRの横方向には、横通路を先端方向に向かい各第1流通路〜第4流通路を蛇行しながら流れる空気の流れが形成される。例えば、図7(d)に矢印で示されるように、右側面部SRには相対的に気圧の高い各縦通路R16〜R13から相対的に気圧の低い各縦通路R11〜R12へ横通路を介して空気が流入されるような流れが生じる。なお、各縦通路R11〜R16を流れる空気が上向きに流れる(流入する
)のか、下向きに流れる(流出する)のかは、右側面部の広さ、各放熱フィンの高さ、長さ、幅、アームの旋回速度、凸部の右側面の形状や突出長さなどにより変更されたり変化したりするが、少なくとも横通路には縦通路R16側から縦通路R11側への流れが生じる。その結果、右側面部SRにおいては、各放熱フィン35Fa,35Fbの周りに生じるこのような空気の流れが各放熱フィン35Fa,35Fbから熱を効率よく放熱させるようになる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態の放熱機能付き旋回型アームによれば上述した(1)〜(10)の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(11)第2アーム15の左側面部SLと右側面部SRに第1流通路と第3流通路、及び第2流通路と第4流通路とをそれぞれ千鳥状に形成した。これにより、千鳥状の流通路の配列によりジグザグとなる横通路が第2アーム15の基端から先端まで形成され、この流路に沿っても空気が流通するようになり基端側への空気の流量が増加されるようになる。その結果、第2アーム15からの放熱がより好適に行われるようになる。
【0076】
尚、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、凸部29を樹脂材料から形成したが、これに限らず、アルミニウムなどの金属や炭素繊維などその他の部材により形成されても、これらの部材が組み合わされて形成されてもよい。また筐体と同一の部材により構成されてもよい。これにより、台形部を形成する部材の選択自由度がたかめられる。
【0077】
・上記各実施形態では、凸部29を筐体20(36)の底板22に取り付けられたが、これに限らず、筐体に一体形成されてもよい。これにより部品点数を増加させないようにすることができる。
【0078】
・上記各実施形態では、カバー21を樹脂材料から形成したが、これに限らず、アルミニウムなどの金属や炭素繊維などその他の部材により形成されても、これらの部材が組み合わされて形成されてもよい。このようなカバー形成部材の選択自由度がアームの構成の自由度を高め、自ずとロボットの構成の自由度も高められる。
【0079】
・上記各実施形態では、側面部20Sがカバー21に囲まれたが、これに限らず、筐体の側面部の全てがカバーによって覆われず、例えば、図8及び図9に示されるように、カバーから側面部の一部が露出されてもよい。図8はカバーのみが短縮された場合であり、図9はカバーに併せて放熱フィン41Fも短縮された場合の図である。その場合には、カバーから露出された図8の露出部40や図9の露出部42が上記各実施形態における凸部29の機能を発揮するようになるので、凸部29を省略することができるようにもなる。
【0080】
・上記第各実施形態では、放熱フィン20F(35Fa,35Fb)の下端F1を底板22と略並ぶ位置に形成したが、これに限らず、放熱フィンの下端を底板よりも上方に設けてもよい。このような場合には、側面部の底板に近い部分には放熱フィンが形成されなくなるが、その部分を流通路として機能させることもできるようになる。
【0081】
・上記第各実施形態では、放熱フィン20F(35Fa,35Fb)を軸心C2の軸方向に突条に形成したが、これに限らず、放熱フィンはアームの旋回移動方向の面において同アームの旋回軌跡と非平行である方向に延びる突条に形成されてれもよい。すなわち、例えば図10に示すように、放熱フィン44Fは軸方向に対して傾斜角を有してもよい。またそれぞれの放熱フィンの傾斜角や向きが異なってもよい。これにより、アームに形成される放熱フィンの形状の自由度が高められるようになる。
【0082】
・また、放熱フィンの形状は、上下方向に矩形状であることに限られず、湾曲していた
り、波打つような形であってもよい。これによっても、アームに形成される放熱フィンの形状の自由度が高められるようになる。
【0083】
・上記各実施形態では、放熱フィン20F(35Fa,35Fb)を筐体20(36)の側面部20Sなどに形成したが、これに限らず、放熱フィンを一体形成せずに、筐体の側面部に別途取り付けるようにしてもよい。これにより、アームに設けられる放熱フィンの選択自由度が高められるとともに、既存のアームにもこのような放熱機能を付加することができるようにもなる。
【0084】
・上記第3の実施形態では、第1流通路と第3流通路、及び第2流通路と第4流通路とは千鳥状に配置されたが、これに限らず、第1流通路と第3流通路、又は第2流通路と第4流通路とが直線状に配置されてもよい。そのようにすれば、各放熱フィンの途中に流通路による直線的な横通路が形成されてアームの基端から先端まで空気の流路が形成されて、この流路に沿って素早く空気が流通するようになり基端側への空気の流量が増加されるようになる。これによってもアームからの放熱がより好適に行われるようになる。
【0085】
・上記各実施形態では、凸部29は通路空間の下方に設けられたが、これに限らず、凸部は通路空間の上方に設けられてもよい。例えば、カバーのカバー本体を凸部としてもちいることもできる。これにより、凸部の構成の自由度が高められるようになる。
【0086】
・上記各実施形態では、カバー本体21Aとスカート部25とが段差面26によりつながれるかたちで一体として形成されていたが、これに限らず、スカート部はカバー本体と分離されていてもよい。このときスカート部は単独で筐体に取り付けられるようにすればよい。これにより筐体の側面部を囲うスカート部の構成の自由度が高められる。
【0087】
・上記各実施形態では、第2アーム15にはカバー21が設けられたが、これに限らず、アームの旋回移動方向に面する側面部の放熱フィンの流通路により雰囲気(空気)が同流通路に沿って流通されるのであれば、カバーが設けられなくてもよい。カバーが設けられない場合であれ、アームの表面を流れる雰囲気(空気)が放熱フィンにより捉えられてアームの冷却効率が上げられるとともに、放熱フィンの流通路にも空気が流れるようになる。これにより、アームの長さ方向への空気の流通が生じ、空気の流通量の少ない基端側の空気流量が増加されるようになり、アーム全体の放熱効率が高められる。アーム全体の放熱効率の向上により、モータなどの発熱体の発した熱がアームからその旋回移動により効率よく放熱されるようになりアームの温度上昇が抑制されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明にかかる放熱機能付きアームを具体化したアームを有する水平多関節型ロボットの第1の実施形態の斜視構造を示す斜視図。
【図2】同実施形態のアームの下方からの斜視構造を示す斜視図。
【図3】同実施形態のアームの断面構造を示す断面図。
【図4】同実施形態のアームの放熱構造を模式的に示す図であって、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は右側面図。
【図5】同実施形態のアームの放熱機能を説明する図であって、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(a)の5c−5c線断面図、(d)は背面図。
【図6】第2の実施形態のアームの放熱構造及びその機能を説明する図であって、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(a)の6c−6c線断面図、(d)は背面図。
【図7】第3の実施形態のアームの放熱構造及びその機能を説明する図であって、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(a)の7c−7c線断面図、(d)は背面図。
【図8】その他の実施形態のアームの放熱構造の正面構造を示す模式図。
【図9】その他の実施形態のアームの放熱構造の正面構造を示す模式図。
【図10】その他の実施形態のアームの放熱構造の正面構造を示す模式図。
【符号の説明】
【0089】
10…水平多関節型ロボット、11…基台、12…回転軸、13…第1アーム、14…支持軸、15…第2アーム、15A…上下回転軸筒、16…上下回転軸、17…下端部、20…筐体、20B…ネジ受部、20F…放熱フィン、20S…側面部、21…カバー、21A…カバー本体、21B…凹部、22…底板、22A,22B…軸穴、23…天板、23A…軸受、24A…本体、24F…フランジ、25…スカート部、26…封鎖部としての段差面、27…当接端、28…接合部、28H…ねじ穴、29…凸部、29L…左側面、29R…右側面、32…通気孔、35Fa,35Fb…放熱フィン、36…筐体、40,42…露出部、41F,44F…放熱フィン、C1,C2,C3…軸心、F1…下端、F2…上端、L1〜L6,L11〜L16,R1〜R6,R11〜R16…縦通路、LC…横通路、M1…第1モータ、M2…第2モータ、M3…回転モータ、M4…昇降モータ、RC…横通路、SL…左側面部、SR…右側面部、F11…第1凸部、F12…第2凸部、F13…第3凸部、F14…第4凸部、F15…第5凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心として旋回移動する熱伝導性の材料からなるアームに伝達される熱を放熱する機能を有する放熱機能付き旋回型アームであって、
前記アームには、その旋回移動方向に面する側面に同アームの旋回軌跡と非平行な突条からなる複数の放熱フィンが設けられるとともに、該放熱フィンには、前記突条の突出方向と交差する方向に空気を流通させる流通路が設けられている
ことを特徴とする放熱機能付き旋回型アーム。
【請求項2】
前記アームの旋回移動方向に面する側面には、同側面を含んで前記複数の放熱フィンを囲むカバーが設けられていることによって、同側面とこのカバーとの間に空間が形成され、前記アームのこの空間から前記回転軸の軸方向への少なくとも一方向には、同空間から突出された状態で前記旋回移動方向に面する側面に連絡される凸部がさらに設けられた
請求項1に記載の放熱機能付き旋回型アーム。
【請求項3】
前記複数の放熱フィンに設けられた流通路は、それぞれ前記アームの旋回移動方向に面する側面の一辺に沿う態様で設けられている
請求項1又は2に記載の放熱機能付き旋回型アーム。
【請求項4】
前記放熱フィンに設けられた流通路は、それら放熱フィンを構成する各突条の途中を切り欠く態様で設けられている
請求項1〜3のいずれか一項に記載の放熱機能付き旋回型アーム。
【請求項5】
前記放熱フィンを構成する各突条の途中を切り欠く態様で設けられた流通路は、隣り合う突条毎に前記回転軸の軸方向に対する切り欠き位置が異なる
請求項4に記載の放熱機能付き旋回型アーム。
【請求項6】
前記放熱フィンを構成する各突条は、前記アームの旋回移動方向に面する側面に一体成形されている
請求項1〜5のいずれか一項に記載の放熱機能付き旋回型アーム。
【請求項7】
前記カバーは前記回転軸の軸方向の一端面が前記アームと連結される封鎖部を有しており、
前記空間は、前記複数の放熱フィン及びその流通路を含んだ状態で前記封鎖部にてその一端面が封鎖されている
請求項2〜6のいずれか一項に記載の放熱機能付き旋回型アーム。
【請求項8】
前記封鎖部には前記空間に連通する複数の通気孔が形成されている
請求項7に記載の放熱機能付き旋回型アーム。
【請求項9】
複数のアームが回転軸を介して水平連結された水平多関節型ロボットであって、
前記複数のアームのうちの少なくとも一つのアームは、請求項1〜8のいずれか一項に記載の放熱機能付き旋回型アームである
ことを特徴とする水平多関節型ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−142904(P2010−142904A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322578(P2008−322578)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】