説明

放熱部付き金属ベースプリント基板

【課題】 金属ベースプリント基板に放熱部の放熱面積を増加して、発熱が大きい電子部品等を実装しても効率よく放熱させることができる放熱部付き金属ベースプリント基板を提供する。
【解決手段】 放熱部付き金属ベースプリント基板1は、熱伝導率が良好な金属板2の一方面2aに絶縁性の接着剤層を介して金属箔が貼り合わされている。金属板2の他方面2bには、起立形成された複数の肉薄な板状の放熱フィン5bが並列配置され、これら複数の放熱フィンの5b各隣接間に冷却流体が流通する流通路5cが形成された放熱部5が一体に設けられ、複数の放熱フィン5bは流通方向に沿って複数の曲部を有する蛇行状に屈曲形成されている。さらに、隣接する放熱フィン5bの間に形成される底面2eの板厚を金属板2の板厚よりも小さく形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器分野で使用される金属ベースプリント基板に関し、詳しくは、電子部品等から生ずる熱を放熱するための放熱部を一体に設けた金属ベースプリント基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、小型化の要求に従い、回路部品の小型化・高密度化・高機能化が進展し、回路基板上に高密度に実装されている。これに伴い回路部品の温度が上昇しており、放熱が非常に重要となっている。放熱の手段は、従来から各種の方法が提案され、一部は実用に供されている。
【0003】
本出願人は、特開2009−54731号公報(特許文献1)において、金属ベースプリント基板に放熱部を一体に設け、電子部品等から生ずる熱を放熱部の放熱フィンを介して効率よく放熱させることができる放熱部付き金属ベースプリント基板を提案した。このような放熱フィン一体形プリント配線板として、金属板の下面に切りおこし加工により複数の突起を形成した放熱フィンを用いることが、特開平8−204294号公報(特許文献2)によって提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2009−54731号公報
【特許文献2】特開平8−204294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に示される金属ベースプリント基板は、一方面に絶縁性の接着剤層を介して金属箔が貼り合わされた金属板の他方面に、肉薄な板状の複数の放熱フィンを起立形成して放熱部を形成している。このように構成された金属ベースプリント基板によれば、電子部品等から生ずる熱を放熱部の放熱フィンを介して効率よく放熱させることができる特徴がある。しかしながら、発熱が大きい電子部品等をプリント基板に実装した場合は、放熱部の放熱面積が不足することから、十分に放熱できない問題がある。
【0006】
また、特許文献2に開示されたプリント配線板は、切りおこし加工により複数の突起を形成した放熱フィンを設けているが、上記特許文献1と同様に、発熱が大きい電子部品等をプリント基板に実装した場合には、十分に放熱できない問題がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、金属ベースプリント基板に放熱部の放熱面積を増加して、発熱が大きい電子部品等を実装しても効率よく放熱させることができる放熱部付き金属ベースプリント基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明にかかる放熱部付き金属ベースプリント基板は、熱伝導率が良好な金属板の一方面に絶縁性の接着剤層を介して金属箔が貼り合わされてなる金属ベースプリント基板であって、上記金属板の他方面には、起立形成された複数の肉薄な板状の放熱フィンが並列配置され、これら複数の放熱フィンの各隣接間に冷却流体が流通する流通路が形成された放熱部が一体に設けられ、上記複数の放熱フィンは流通方向に沿って複数の曲部を有する蛇行状に屈曲形成され、隣接する上記放熱フィンの間に形成される底面の板厚を上記金属板の板厚よりも小さく形成したことを要旨としている。
【0009】
放熱部の複数の放熱フィンは、金属板の他方面に一体に繋がっている基端部からその先端に向けて肉厚を漸減させ、上記放熱フィンの各隣接間に形成された流通路のそれぞれの断面形状を、その底面から開口側に至るに従って間隔が漸増するように形成している。
【0010】
放熱部の複数の放熱フィンは、流通方向に沿って略三角状、略波状、或いは、略台形状
に蛇行させて屈曲形成されている。
【0011】
流通方向に沿って複数の曲部を有する蛇行状に屈曲形成された放熱部の複数の放熱フィンは、上記曲部の頂部と谷部を上記放熱フィンの幅方向と直行する直線上に一致させて流通路の間隔をほぼ一致させ、冷却流体が隣接する上記放熱フィンの壁面によって方向転換させながら流通路を流通させようにしている。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる金属ベースプリント基板によれば、金属板の他方面に一体に起立形成された放熱部の複数の放熱フィンを、流通方向に沿って複数の曲部を有する蛇行状に屈曲形成されているので、放熱フィンの放熱面積が大きくなることから、放熱効率が向上し、金属箔によって形成される配線パターンに配設された電子部品の発熱が大きくなっても、上記放熱部から効率よく放熱することが可能となる。しかも、放熱部は、隣接する上記放熱フィンの間に形成される底面の板厚を上記金属板の板厚よりも小さく形成しているので、電子部品から発する熱が、短時間に放熱部に伝達するので、一段と放熱効率を高めることが可能となる。また、プリント基板を構成する金属板自体に一体に放熱部を形成しているので、構成が簡素になり、部品コストや製造コストを低減することが可能となる。
【0013】
複数の放熱フィンは、金属板の他方面に一体に繋がっている基端部からその先端に向けて肉厚を漸減させ、上記放熱フィンの各隣接間に形成された流通路のそれぞれの断面形状を、その底面から開口側に至るに従って間隔が漸増するように形成しているので、電子部品から発生した熱が、肉厚の厚い基端部に速やかに移動して放熱し、その後、先端に向かって移動する熱が次第に冷却されるとき、放熱フィンの肉厚が漸減しているので、放熱容量に応じて効率良く放熱させることが可能となる。また、流通路の断面形状が、底面から開口側に至るに従って間隔が漸増しているので、基端部側から放熱された熱が効率よく先端側に流れるので、放熱効率を向上させることが可能となる。
【0014】
また、放熱部の複数の放熱フィンを、流通方向に沿って略三角状、略波状、或いは、略台形状に蛇行させて屈曲形成させ、曲部の頂部と谷部を上記放熱フィンの幅方向と直行する直線上に一致させることにより、冷却流体が隣接する上記放熱フィンの壁面によって方向転換させながら流通路を流通するので、冷却流体が放熱フィンの壁面に確実に当接することから、放熱フィンから放出された熱を速やかに移動させることができ、放熱部の放熱効率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明による金属ベースプリント基板は、熱伝導率が良好な金属板の一方面に絶縁性の接着剤層を介して金属箔が貼り合わされた構成となっていて、上記金属板の他方面には、起立形成された複数の肉薄な板状の放熱フィンが並列配置され、これら複数の放熱フィンの各隣接間に冷却流体が流通する流通路が形成された放熱部が一体に設けられ、上記複数の放熱フィンは流通方向に沿って複数の曲部を有する蛇行状に屈曲形成され、隣接する上記放熱フィンの間に形成される底面の板厚を上記金属板の板厚よりも小さく形成されている。
【0016】
次に、図面を参照して本発明にかかる放熱部付き金属ベースプリント基板について詳細に説明する。
【0017】
図1乃至図3に示す金属ベースプリント基板1は、熱伝導性の良い銅、鉄、鉄−ニッケル合金、アルミニウム、あるいは表面をアルマイト処理したアルミニウムなどの金属板2をベース基材とし、この金属板2の一方面2aには、銅箔などの金属箔3を絶縁性の接着剤層(以下絶縁接着層4という)を介して張り合わせている。絶縁接着層4は、例えば、高耐熱性エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂をベース樹脂としている。さらに、高い放熱性をもたせるためには、微細粒子の無機充填剤を配合することが望ましい。上記金属箔3は、周知のように化学的なエッチング加工により所定の配線パターンが形成される。また、必要に応じて、配線パターンのランドを除いて、電気的絶縁膜からなるレジストが被覆される。
【0018】
そして、金属板2の一端側2cよりも離間した他方面2bの所定位置には、放熱部5が一体に形成されている。放熱部5は、複数枚の小寸な小形フィン5aと、これに続き、同じ高さで形成された複数枚の肉薄な板状の放熱フィン5bが並列配置されている。上記小形フィン5aは、金属板2の一端側2cから放熱フィン5b側に至るに従って順次高さが大きくなるように形成されている。これら小形フィン5a及び放熱フィン5bの基端部は、図2及び図3に示すように、金属板2の他方面2bから一体に連結されている。また、放熱フィン5bの先端側はやや湾曲し、これら複数の放熱フィン5bは同一角度に形成され、しかも同一間隔に起立形成されている。さらに、放熱部5の複数枚の放熱フィン5bは、金属板2に連結された基端部が肉厚に形成され、先端部に至るに従って肉薄に形成されている。
【0019】
また、小形フィン5a及び放熱フィン5bの板厚は、金属板2の一方面から掘り起こすことによって形成しているので薄くすることが可能である。放熱フィン5bは、例えば、小型電子部品に使用する放熱部5のとしては、0.03mm乃至1.0mm程度の板厚が好適である。また、各放熱フィン5bの間隔は、0.01mm以上の任意に設定される。そして、隣接する放熱フィン5bの間に形成される底面2eの板厚は、金属板2の板厚よりも小さく形成されている。なお、各放熱フィン5bの板厚または間隔は、各々異なるように形成しても良い。さらに、放熱フィン5bの板厚を基端部が厚く、先端部に至るに従って薄く形成すると、基端部は板厚が厚いことから熱容量が大きくなり、金属板2からの熱を受け入れが容易になる。さらに、熱が先端部方向へ伝達するに従って順次放熱され、先端部では小さい熱容量であっても容易に放熱させることができる。このように、放熱フィン5bは、熱の伝達と放熱に合わせて板厚を変化させているので、放熱効率が高い放熱部5を得ることができる。
【0020】
上述した小形フィン5a及び放熱フィン5bは、図1に示すように、複数の放熱フィンの各隣接間に冷却流体が流通する流通路5cが形成されている。そして、複数の小形フィン5a及び放熱フィン5bは、フィン壁面と平行な流通方向に沿って複数の曲部を有する蛇行状に屈曲形成されている。図1に示す小形フィン5a及び放熱フィン5bは、流通方向に沿って略三角状に蛇行するように屈曲形成している。そして、屈曲した曲部の頂部と谷部は、図6に示すように、放熱フィン5bの幅方向と直行する直線L上に一致させている。このように構成することにより、複数の放熱フィンの各隣接間の間隔がほぼ一定の幅に形成される。
【0021】
このように、放熱フィン5bを蛇行させて屈曲形成させ、複数の放熱フィンの各隣接間に形成された流通路5cに、図6に示す空気の風等の冷却流体6を放熱部5の側方からフィン壁面と平行に流通させると、冷却流体6が隣接する放熱フィン5bの壁面によって方向転換させながら流通路5cを流通する。この結果、冷却流体6が放熱フィン5bの壁面に当接するので、放熱フィン5bから放出された熱が、その場に蓄積することなく速やかに押し出されて移動するので、放熱部5の放熱効率を向上させることが可能となる。
【0022】
図6に示す放熱部5は、流通路5cの両側に面した曲部の頂部は、間隔G1の寸法で離間している。このように、頂部どうしを離間させると、放熱部5の側方からフィン壁面と平行に流通させたとき、冷却流体6の一部が流通路5cを直行するように早い流速で流通する。このため、放熱フィン5bの谷部が負圧になり、その谷部に滞留する熱を速やかに引き出すことができる。
【0023】
また、図7に示すように、流通路5cの一方側に面した曲部の頂部を、他方側の谷部に間隔G2の寸法で入り込むように接近させても良い。この場合は、冷却流体6が放熱フィン5bの壁面に確実に当接させることができるので、放熱フィン5bから放出された熱を谷部から速やかに押し出されて移動するので、やはり放熱部5の放熱効率を向上させることが可能となる。
【0024】
以上説明した金属ベースプリント基板1の放熱部5は、図4に示すような方法によって製造することができる。素材となる金属板2は、熱伝導性の良く、しかも切削加工性が良好な金属板として銅やアルミニウムが好ましい。また、金属板2に板厚は、通常の電子回路において使用される0.5mm乃至数mmが好ましい。そして、金属板2の一方面2aには、予め銅箔などの金属箔3が絶縁性の接着剤層4を介して張り合わせていて、さらに、金属箔3はエッチング加工によって所定の配線パターンが形成され、金属ベースプリント基板として構成されている。放熱部5を製造する以前の状態では、電子部品は配設されていない。この金属板2は、図示しないプレス装置に載置される。その後、掘り起こし工具8によって小形フィン5a及び放熱フィン5bを起立形成する。
【0025】
掘り起こし工具8は、底面側の先端に移動方向と直角な刃部8aが形成されていて、その幅は、放熱部5として必要な幅に設定されている。また、この掘り起こし工具8の刃部8aは、上述した小形フィン5a及び放熱フィン5bと同形に、幅方向に沿って複数の曲部を有する略三角状に形成させている。
【0026】
そして、この掘り起こし工具8を金属板2の一方面に対して後端側が高くなるように所定の角度で傾斜させた状態で金属板2に挿入させると、掘り起こし工具8の刃部8aが金属板2の他方面2bに食い込み、まず、高さが低く肉薄な小形フィン5aが起立形成される。この小形フィン5aによって金属板2には、掘り起こし工具8の傾斜角度に等しい傾斜した被加工面2dが形成される。
【0027】
次いで、金属板2と掘り起こし工具8とを相対的に移動し、刃部8aを被加工面2dよりも上流側の掘り起こし代が得られる位置に当接させた後、掘り起こし工具8を所定の角度で矢示の方向に移動させ、先に形成した小形フィン5aを形成したときよりも深い、深さまで食い込ませることにより、次の小形フィン5aが起立形成される。このように、掘り起こし工具8によって、その前に形成される小形フィン5aの起立形成時よりも深く食い込ませて、より高い小形フィン5aの起立形成を繰り返し、刃部8aが所定の深さに達した時点で終了させる。
【0028】
その後、小形フィン5aの起立形成に続いてフィン形成工程に移行し、等しい高さを有する放熱フィン5bを形成する。すなわち、最後に形成された小形フィン5aによって形成された被加工面2dよりも上流側の掘り起こし代が得られる位置から掘り起こし工具8の刃部7aが所定の深さに達するまで移動させることにより、所定の高さを有する放熱フィン5bが起立形成される。次いで、掘り起こし工具8を被加工面2dよりも上流側の位置に移動すると共に、所定の深さに達するまで移動させる掘り起こし工程を順次繰り返すことにより、複数枚の放熱フィン5bが同一角度、かつ、同一間隔に起立形成される。そして、複数枚の放熱フィン5bの形成によって、図2及び図3に示すように、隣接する放熱フィン5bの間に金属板2の板厚よりも薄い板厚になった凹所2eが形成され、凹所2eの両側には内壁2fが形成される。
【0029】
このフィン形成工程において、掘り起こし工具8によって金属板2に放熱フィン5bを起立形成すると、放熱フィン5bは、図5に示すように、基端側の板厚が厚く先端に至るに従って漸次薄く形成される。また、放熱フィン5bの基端側は、板厚が厚くなると同時に、図3に示す矢示のように、両側方向にも膨出する。このため、放熱フィン5bの基端側が内壁2fに圧接的に接合する。この結果、例え放熱フィン5bの板厚を0.05mm程度に薄く形成しても、基端側が金属板2に保持されるので、機械的な強度を大きくすることが可能となる。また、放熱フィン5bの基端近傍の両側が金属板2と熱的に接続されるので、放熱効率を高めることが可能となる。
【0030】
一方、上記小形フィン5aとは反対側の放熱フィン5bの上流側には、図2に示すように、凹所2eの底面から金属板2の一方面に至る傾斜した被加工面2dが残されている。この被加工面2dであった傾斜面は、放熱面として作用させることができる。また、被加工面2dの後方には、金属板2が有する板厚の鍔部7が形成される。
【0031】
また、金属板2に形成された複数枚の放熱フィン5bの両側には、金属板2が有する板厚の鍔部7が形成される。この鍔部7は、掘り起こし工具6の幅を金属板2の幅よりも狭く設定することにより形成することができる。この結果、図1に示すように、放熱器1に形成される鍔部7は、放熱部5を囲むように形成される。
【0032】
放熱部5は、金属板2の一方面2aに金属箔3によって形成された配線パターンに配設される例えば集積回路9等の電子部品に対応させた位置に形成している。このような位置関係に放熱部5を設置することにより、集積回路9から発生する熱が金属板2を介して放熱部5に伝達し、放熱フィン5bの表面から空中に放熱される。このとき、集積回路9は放熱部5の中央部に集中することから、小形フィン5aの高さが低くても放熱性能には影響しない。また、放熱部5の上流側に残された被加工面2dが形成されていても放熱性能には影響しないことが実験によって明らかにされている。さらに、小形フィン5a及び放熱フィン5bの基端が金属板2の一方面に形成された凹所2eから一体に連結され、しかも、凹所2eと金属板2の一方面2aとの間の板厚が薄く形成されていることから、集積回路9から発生する熱が速やかに放熱部5に伝達するので、放熱効率が高められることも実験によって明らかにされている。電子部品としては、上記集積回路9の他に、パワートランジスタや抵抗器またはパワーモジュール等がある。
【0033】
図8は、放熱部付き金属ベースプリント基板の他の実施例を示し、金属板2の他方面2bに2個の放熱部12、13を互いに離間させて設け、これら放熱部12、13の間に底面の板厚が金属板2の板厚よりも小さく形成した平坦な凹所14が設けられている。そして、これらの第1及び第2の放熱部12、13に対応位置する金属板2の一方面2aには、各々集積回路等の発熱を伴う電子部品(図示せず)が配設される。また、2個の放熱部12、13及び凹所14の周囲となる金属板2の外縁には、鍔部7が形成されている。また、放熱部12、13の各隣接間には、冷却流体が流通する流通路12c、13cが形成されている。
【0034】
この第2の実施例による放熱部付き金属ベースプリント基板は、まず、金属板2の一端側2aよりも離間した他方面2bに第1の放熱部12を形成する。この第1の放熱部12の形成方法は、前述した方法と同様である。
【0035】
金属板2の他方面2bに形成される凹所14は、掘り起こし工具8によって、前述した放熱フィン5bを形成する方法と同様に放熱フィンを起立形成した後、掘り起こし工具8を後に形成する凹所14の底面と平行な水平方向に移動することにより、放熱フィンの基端が切削されて金属板2から離脱する。このとき発生するスクラップは、凹所14の内壁14a間に挟持することにより飛散が防止される。その後、放熱フィンを起立形成した後、掘り起こし工具8を凹所14の底面と平行な水平方向に移動して放熱フィンを切削する工程を所定回数繰り返すことにより、所定の長さの凹所14が形成される。
【0036】
このように、凹所14を形成することにより、金属ベースプリント基板1として肉薄になるため、凹所14の部位は機械的強度が低下する。しかし、2個の放熱部12、13及び凹所14の周囲となる金属板2の外縁側には、金属板2自体の板厚とした鍔部17が形成されているので、鍔部17が補強的役割を担うことから、金属ベースプリント基板1としては十分な強度が維持される。また、凹所14の板厚は、金属板2の板厚よりも薄く形成されているので、金属板2の一方面に配設した電子部品から発生する熱が速やかに他方面に伝達されると共に、放熱部12、13に伝達されるので、放熱効率を高める効果を有している。
【0037】
図9は、放熱部付き金属ベースプリント基板の変形例を示すものであり、金属ベースプリント基板20の金属板21の他方面21bに形成される放熱部23の幅を金属板21の幅と同じに設定している。このとき使用される掘り起こし工具8は、図4に示したものと同様であるが、異なる点は、掘り起こし工具8の幅を金属板21の幅と同じ、もしくは、やや大きく設定されていることである。
【0038】
図10(A)(B)は、金属ベースプリント基板の金属板の他方面に起立形成される放熱フィンの変形例を示している。図10(A)に示す金属ベースプリント基板30は、金属板31の他方面31bに起立形成された複数の肉薄な板状の放熱フィン33を並列配置することによって形成される放熱部32の複数の放熱フィン33を流通方向に沿ってほぼ正弦波状の略波状に形成されている。また、図10(B)に示す金属ベースプリント基板30は、放熱部32の複数の放熱フィン34を流通方向に沿ってほぼ台形状に形成されている。
【0039】
図10(A)に示した略波状の放熱フィン33を並列配置すると、各隣接間に冷却流体を流通させる流通路35が緩やかに蛇行するので、冷却流体を円滑に流通させることができ、放熱フィン33から放熱させる熱が滞ることなく流通路35から円滑に放出させることが可能になる。また、図10(B)に示した略台形状の放熱フィン34を並列配置すると、台形の傾斜した立ち上がり部によって冷却流体の一部が急激に方向転換され、直線的に移動する冷却流体の流れと衝突することから乱流が発生し、流通路35内の熱を淀みなく放出させることが可能になる。
【0040】
以上、本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、金属ベースプリント基板としては、四角形の他、一般的なプリント基板と同様に、適宜の形状に形成しても良い。また、前述した実施例では、複数の放熱部の放熱フィンを全て平行に形成したが、放熱部毎に放熱フィンの方向を適宜の角度に異ならせても良い。さらに、金属ベースプリント基板は、金属板をベース基材としていることから、他の機構部品等を取り付けても、或いは、機構部品を取り付けるように支持部等を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明にかかる放熱部付き金属ベースプリント基板の実施例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す放熱部付き金属ベースプリント基板を示す側断面図である。
【図3】放熱部付き金属ベースプリント基板を示す断面図である。
【図4】図1に示す放熱部付き金属ベースプリント基板の放熱部を形成する工程を示す説明図である。
【図5】放熱フィンを示す要部断面図である。
【図6】放熱フィンの各隣接間に形成される流通路を流通する冷却流体の流れを示す説明図である。
【図7】放熱フィンの各隣接間に形成される流通路の変形例を示す平面図である。
【図8】本発明にかかる放熱部付き金属ベースプリント基板の他の実施例を示す斜視図である。
【図9】本発明にかかる放熱部付き金属ベースプリント基板のさらに他の実施例を示す斜視図である。
【図10】(A)(B)は、放熱フィンの変形例を要部平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 金属ベースプリント基板
2 金属板
2a 一方面
2b 他方面
3 金属箔
4 絶縁接着層
5 放熱部
5b 放熱フィン
5c 流通路
8 掘り起こし工具
8a 刃部
9 集積回路(電子部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導率が良好な金属板の一方面に絶縁性の接着剤層を介して金属箔が貼り合わされてなる金属ベースプリント基板であって、
上記金属板の他方面には、起立形成された複数の肉薄な板状の放熱フィンが並列配置され、これら複数の放熱フィンの各隣接間に冷却流体が流通する流通路が形成された放熱部が一体に設けられ、
上記複数の放熱フィンは流通方向に沿って複数の曲部を有する蛇行状に屈曲形成され、
隣接する上記放熱フィンの間に形成される底面の板厚を上記金属板の板厚よりも小さく形成したことを特徴とする放熱部付き金属ベースプリント基板。
【請求項2】
放熱部の複数の放熱フィンは、金属板の他方面に一体に繋がっている基端部からその先端に向けて肉厚を漸減させ、上記放熱フィンの各隣接間に形成された流通路のそれぞれの断面形状を、その底面から開口側に至るに従って間隔が漸増するように形成した請求項1に記載の放熱部付き金属ベースプリント基板。
【請求項3】
放熱部の複数の放熱フィンは、流通方向に沿って略三角状、略波状、或いは略台形状に蛇行させて屈曲形成された請求項1または2のいずれかに記載の放熱部付き金属ベースプリント基板。
【請求項4】
流通方向に沿って複数の曲部を有する蛇行状に屈曲形成された放熱部の複数の放熱フィンは、上記曲部の頂部と谷部を上記放熱フィンの幅方向と直行する直線上に一致させて流通路の間隔をほぼ一致させ、冷却流体が隣接する上記放熱フィンの壁面によって方向転換させながら流通路を流通させる請求項1乃至3のいずれかに記載の放熱部付き金属ベースプリント基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−171686(P2011−171686A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36734(P2010−36734)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(391039601)中村製作所株式会社 (25)
【Fターム(参考)】