説明

放電管の点灯監視方法および点灯監視装置

【課題】放電管の点灯状態を精度よく検出することができる放電管の点灯監視方法と、そのような点灯監視方法の実施が可能で回路構成および配線が簡単な点灯監視装置を得る。
【解決手段】点灯監視装置10は、バンドパスフィルタ22,28を介して点灯回路100に接続される第1のゼロクロス検出回路24および第2のゼロクロス検出回路30を含む。第1のゼロクロス検出回路24で電流波形の立ち上がりゼロクロスを検出すると、クロック回路32のクロック信号をカウントするカウンタ34をゼロクリアするためのゼロクリア信号をカウンタ34に送る。ゼロクリアされたカウンタ34でクロック信号がカウントされ、第2のゼロクロス検出回路30で電圧波形の立ち下がりゼロクロスを検出して送られるラッチ信号によって、カウントデータがラッチされる。このラッチデータから、電流波形と電圧波形の位相差が検出され、ナトリウム灯の点灯状態が把握される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電管の点灯監視方法および点灯監視装置に関し、特にたとえば、ナトリウム灯や蛍光灯などの放電管の点灯監視方法および点灯監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電管の点灯を監視するための装置として、たとえばエレベータ内の蛍光灯の劣化を検出する装置が開示されている。この装置は、図9に示すように、エレベータ制御マイコン1が、蛍光灯点滅スイッチ2と蛍光灯自動診断装置6に接続されている。そして、一定時間毎の点検時間になると、エレベータ制御マイコン1からの指令により、電源4と蛍光灯3との間に接続された蛍光灯点滅スイッチ2が作動し、蛍光灯3が点灯する。蛍光灯3に流れる電流は、電流検出部5で検出され、測定データが蛍光灯自動診断装置6の異常検出部7に送られる。異常検出部7では、測定した電流のピーク値から、蛍光灯3の異常が検出される(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−261492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように放電管に流れる電流値により放電管の異常を検出する方法では、安定器出力または放電管入力の電流値が測定されるため、回路構成と配線が複雑となり、異常検出の精度はよくない。また、温度や湿度などの外部要因によって、さらに検出精度は悪化する。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、放電管の点灯状態を精度よく検出することができる放電管の点灯監視方法と、そのような点灯監視方法の実施が可能で回路構成および配線が簡単な点灯監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、放電管の点灯回路における電流波形および電圧波形を検出するステップと、電流波形のゼロクロスを検出するステップと、電圧波形のゼロクロスを検出するステップと、電流波形の立ち上がりゼロクロスと電圧波形の立ち下がりゼロクロスとの時間差または電流波形の立ち下がりゼロクロスと電圧波形の立ち上がりゼロクロスとの時間差から放電管の点灯状態を検出するステップとを含む、放電管の点灯監視方法である。
このような放電管の点灯監視方法において、クロック信号をカウントするカウンタにおいて電流波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの一方によってクロック信号のカウントがゼロクリアされ、カウンタでクロック信号がカウントされたのち、電圧波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの他方によってカウンタから出力されるカウントデータがラッチされることにより、得られたラッチデータから電流波形の立ち上がりゼロクロスと電圧波形の立ち下がりゼロクロスとの時間差または電流波形の立ち下がりゼロクロスと電圧波形の立ち上がりゼロクロスとの時間差を検出することができる。
なお、クロック信号をカウントする場合、放電管の点灯回路の断線により電流波形が検出されないとき、クロック信号のカウントがゼロクリアされないためにカウンタがオーバーフローしたときに生じるキャリー信号によりカウンタのゼロ出力がラッチされる。
また、クロック信号をカウントするカウンタにおいて電圧波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの一方によってクロック信号のカウントがゼロクリアされ、カウンタでクロック信号がカウントされたのち、電流波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの他方によってカウンタから出力されるカウントデータがラッチされることにより、得られたラッチデータから電圧波形の立ち上がりゼロクロスと電流波形の立ち下がりゼロクロスとの時間差または電圧波形の立ち下がりゼロクロスと電流波形の立ち上がりゼロクロスとの時間差を検出することができる。
また、この発明は、放電管の点灯回路における電流波形を入力するための電流波形入力部と、放電管の点灯回路における電圧波形を入力するための電圧波形入力部と、電流波形入力部から入力された電流波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスを検出するための第1のゼロクロス検出回路と、電圧波形入力部から入力された電圧波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスを検出するための第2のゼロクロス検出回路と、クロック信号を出力するためのクロック回路と、クロック回路から出力されるクロック信号をカウントしてカウントデータを出力し、第1のゼロクロス検出回路で検出された電流波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの一方により前記クロック信号のカウントがゼロクリアされるカウンタと、第2のゼロクロス検出回路で検出された電圧波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの他方によりカウンタから出力されるカウントデータをラッチするデータラッチ回路とを含む、放電管の点灯監視装置である。
このような放電管の点灯監視装置において、カウンタから出力されるカウントデータをラッチするためのラッチ信号として、第2のゼロクロス検出回路の出力信号またはカウンタのキャリー信号をデータラッチ回路に入力するためのOR回路を含んでいてもよい。
また、この発明は、放電管の点灯回路における電流波形を入力するための電流波形入力部と、放電管の点灯回路における電圧波形を入力するための電圧波形入力部と、電流波形入力部から入力された電流波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスを検出するための第1のゼロクロス検出回路と、電圧波形入力部から入力された電圧波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスを検出するための第2のゼロクロス検出回路と、クロック信号を出力するためのクロック回路と、クロック回路から出力されるクロック信号をカウントしてカウントデータを出力し、第2のゼロクロス検出回路で検出された電圧波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの一方によりクロック信号のカウントがゼロクリアされるカウンタと、第1のゼロクロス検出回路で検出された電流波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの他方によりカウンタから出力されるカウントデータをラッチするデータラッチ回路とを含む、放電管の点灯監視装置である。
【0007】
本発明者は、ナトリウム灯の点灯時や消灯時における点灯回路の電流および電圧の波形を調べたところ、放電管の状態に応じて、電流と電圧に一定の位相関係があることを見出した。このような測定結果から、放電管の点灯回路における電流波形と電圧波形の位相差を検出することにより、放電管の点灯状態を把握することができることがわかった。そこで、放電管の点灯回路における電流波形と電圧波形の位相差を得るために、電流波形の立ち上がりゼロクロスと電圧波形の立ち下がりゼロクロスとの時間差または電流波形の立ち下がりゼロクロスと電圧波形の立ち下がりゼロクロスの時間差が検出される。
たとえば、電流波形の立ち上がりゼロクロスと電圧波形の立ち下がりゼロクロスとの時間差を検出するために、クロック回路から出力されるクロック信号がカウンタでカウントされる。そして、電流波形の立ち上がりゼロクロスでカウンタをゼロクリアしてクロック信号のカウントを開始し、電圧波形の立ち下がりゼロクロスでカウンタから出力されるカウントデータをラッチすることにより、得られたラッチデータから電流波形の立ち上がりゼロクロスと電圧波形の立ち下がりゼロクロスとの時間差を知ることができる。
なお、電流波形と電圧波形の位相差を検出するためには、電流波形の立ち下がりゼロクロスでカウンタをゼロクリアしてクロック信号のカウントを開始し、電圧波形の立ち上がりゼロクロスでカウンタから出力されるカウントデータをラッチしてもよい。また、電圧波形の立ち上がりゼロクロスでカウンタをゼロクリアしてクロック信号のカウントを開始し、電流波形の立ち下がりゼロクロスでカウンタから出力されるカウントデータをラッチしてもよい。さらに、電圧波形の立ち下がりゼロクロスでカウンタをゼロクリアしてクロック信号のカウントを開始し、電流波形の立ち上がりゼロクロスでカウンタから出力されるカウントデータをラッチしてもよい。
なお、電流波形の立ち上がりゼロクロスおよび電圧波形の立ち上がりゼロクロスをカウンタのゼロクリアおよびカウントデータのラッチのタイミングとしたり、電流波形の立ち下がりゼロクロスおよび電圧波形の立ち下がりゼロクロスをカウンタのゼロクリアおよびカウントデータのラッチのタイミングとすると、電流波形と電圧波形とが同位相となった場合の検出ができなくなるため好ましくない。
また、電流波形のゼロクロスでカウンタのゼロクリアを行い、電圧波形のゼロクロスでカウントデータのラッチを行う場合、電圧波形のゼロクロス検出信号とカウンタのオーバーフロー時に出力されるキャリー信号のいずれかでラッチを行うことができる。キャリー信号が出力されるときには、カウンタにおけるクロック信号のカウント数は0であるため、ラッチされたカウントデータは0となる。たとえば、電流波形のゼロクロスによりカウンタをゼロクリアし、電圧波形のゼロクロスでカウントデータをラッチする装置においては、放電管の点灯回路の断線などの理由により電流波形が検出されない場合、カウンタがゼロクリアされないため、カウンタはオーバーフローし、ラッチされたカウントデータは0となる。
電圧波形のゼロクロスでカウンタのゼロクリアを行い、電流波形のゼロクロスによりカウントデータをラッチする装置においては、電流波形が検出されないと、カウントデータがラッチされず、カウンタは電圧波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスによってゼロクリアが繰り返されるため、ラッチデータは出力されない。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、放電管の点灯回路における電流波形の立ち上がりゼロクロスと電圧波形の立ち下がりゼロクロスとの時間差または電流波形の立ち下がりゼロクロスと電圧波形の立ち上がりゼロクロスとの時間差を検出することにより、電流波形と電圧波形の位相差を知ることができ、この位相差から放電管の点灯状態を把握することができる。このような電流波形と電圧波形の位相差は、放電管の点灯状態によって一定の関係があるため、温度や湿度などの外部要因によらず、正確に放電管の点灯状態を知ることができる。また、放電管の点灯回路の電流波形と電圧波形とを測定すればよいため、クロック回路やカウンタなどで簡単な回路構成とすることができる。さらに、高速道路の照明灯などのように、高い位置にある放電管であっても、低所にある安定器の前段に回路を接続すればよく、配線作業を容易に行うことができる。
【0009】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
放電管の点灯状態と点灯回路における電流および電圧との関係を把握するために、ナトリウム灯の点灯回路の電流波形および電圧波形をオシロスコープで測定した。電流波形および電圧波形の測定は、電源と安定器との間において行った。
【0011】
まず、点灯回路の電源を安定器に接続したのち、ナトリウム灯が点灯する前の電流および電圧を測定し、その波形を図1に示した。また、ナトリウム灯が点灯しているときの電流および電圧を測定し、その波形を図2に示した。また、ナトリウム灯を点灯後、徐々に電圧を下げて、消灯する直前の電流および電圧を測定し、その波形を図3に示した。このとき、電流と電圧とは、ほぼ同位相となっていた。さらに電圧を下げて、ナトリウム灯が消灯したときの電流および電圧を測定し、その波形を図4に示した。このとき、電流と電圧とは、図1に示す点灯前の状態に似た位相関係となっていた。また、安定器とナトリウム灯とを接続する導線を外し、断線した状態における電流および電圧を測定し、その波形を図5に示した。このとき、電流と電圧とは、図1に示す点灯前の電流および電圧とほぼ同じ位相関係となっていた。
【0012】
これらの実測した電流および電圧の波形から、ナトリウム灯の点灯状態と電流および電圧の位相との関係がわかる。したがって、ナトリウム灯の点灯回路における電流と電圧の位相関係を検出することにより、ナトリウム灯の点灯状態を把握することができる。
【0013】
そこで、ナトリウム灯の点灯回路における電流と電圧の位相関係を検出して点灯状態を知るために、たとえば図6に示すような放電管の点灯監視装置が用いられる。点灯監視装置10は、ナトリウム灯の点灯回路100に取り付けられる。点灯回路100は、電源102を有し、電源102は導線104,106を介して安定器108に接続される。安定器108はナトリウム灯110に接続され、電源102から安定器108に電力が供給されることにより、ナトリウム灯110が点灯する。
【0014】
点灯監視装置10は、装置を作動させるための装置電源回路12を含み、装置電源回路12はトランス14を介して点灯回路100の導線104,106に接続される。また、点灯回路100の一方の導線104には、電流波形を検出するために、抵抗16が接続される。この抵抗16の電源102側が、コンデンサ18を介して、点灯監視装置10のグランド端子に接続される。
【0015】
抵抗16の安定器108側は、コンデンサ20を介して、バンドパスフィルタ22に接続される。ここでは、抵抗16に生じる電圧波形が導線104を流れる電流波形と同じであることから、抵抗16に生じる電圧を検出することにより、電流波形の検出を行っている。したがって、抵抗16の安定器108側が、電流波形入力部となる。さらに、バンドパスフィルタ22は、第1のゼロクロス検出回路24に接続される。また、点灯回路100の導線106は、コンデンサ26を介して、バンドパスフィルタ28に接続される。この部分は、点灯回路100の電圧波形の検出を行うための電圧波形入力部となる。バンドパスフィルタ28は、第2のゼロクロス回路30に接続される。
【0016】
また、点灯監視装置10は、クロック回路32を含み、クロック回路32からクロック信号が出力される。このクロック信号が、カウンタ34でカウントされる。カウンタ34には、第1のゼロクロス検出回路24が接続され、第1のゼロクロス検出回路24からの信号により、カウンタ34がゼロクリアされる。カウンタ34でカウントされたクロック信号は、たとえば8ビットカウントデータとして出力される。
【0017】
カウンタ34はデータラッチ回路36に接続され、カウンタ34から出力されるカウントデータがラッチ信号によってラッチされる。ここで、ラッチ信号として、第2のゼロクロス検出回路30の出力信号またはカウンタ34のキャリー信号が用いられる。そのために、第2のゼロクロス検出回路30およびカウンタ34のキャリー信号出力端子がOR回路38に接続され、OR回路38の出力端子がデータラッチ回路36に接続される。データラッチ回路36から出力されるラッチデータは、たとえば8ビット出力データとしてマイクロコンピュータ40に入力される。
【0018】
点灯監視装置10の各部における信号が、図7に示される。まず、50〜60Hz(商用周波数)のバンドパスフィルタ22,28によって、点灯監視装置10に入力された信号からノイズや高調波が除去される。次に、第1のゼロクロス検出回路24によって、電流波形のゼロクロスが検出され、第2のゼロクロス検出回路30によって、電圧波形のゼロクロスが検出される。このとき、電流波形においては、立ち上がりゼロクロスが検出され、電圧波形においては、立ち下がりゼロクロスが検出される。第1のゼロクロス検出回路24の出力信号は、ゼロクリア信号として、カウンタ34に送られる。また、第2のゼロクロス検出回路30の出力信号は、ラッチ信号として、OR回路38に送られる。なお、OR回路38には、カウンタ34から出力されるキャリー信号も送られる。したがって、第2のゼロクロス検出回路30の出力信号またはカウンタ34から出力されるキャリー信号のどちらかがOR回路38に入力されたとき、OR回路38からデータラッチ回路36にラッチ信号が送られる。
【0019】
カウンタ34では、クロック回路32から送られてくるクロック信号がカウントされる。ここで、第1のゼロクロス検出回路24から送られてきた信号がゼロクリア信号として用いられ、ゼロクリア信号によってクロック信号のカウントがゼロクリアされる。そののち、あらためてクロック信号のカウントが開始する。
【0020】
カウンタ34でカウントされたクロック信号は、データラッチ回路36に送られ、第2のゼロクロス検出回路30から送られてきたラッチ信号によってラッチされることにより、ラッチデータが出力される。このラッチデータにより、ゼロクリア信号が入力されてからラッチ信号が入力されるまでの時間を知ることができる。この時間は、電流波形の立ち上がりゼロクロスと電圧波形の立ち下がりゼロクロスとの時間差を示すものであるから、これにより電流波形と電圧波形との位相差を検出することができる。
【0021】
なお、導線104,106などが断線した場合、電流波形が検出されないため、第1のゼロクロス検出回路24において、電流の立ち上がりゼロクロスを検出することができない。そのため、カウンタ34にゼロクリア信号が入力されず、カウンタ34はクロック信号のカウントを続けるため、カウンタ34でオーバーフローが生じる。このとき、カウンタ34からキャリー信号が出力され、キャリー信号がOR回路38に入力される。このキャリー信号により、データラッチ回路36において、カウンタ34から出力されるカウントデータがラッチされるが、カウンタ34はオーバーフローしているため、ラッチ信号が入力された時点においてはカウンタ34におけるカウント数は0である。そのため、点灯回路100に断線が発生した場合、データラッチ回路36から出力されるラッチデータの値は0となる。
【0022】
このように、点灯回路100の電流波形と電圧波形の位相差がわかると、図1ないし図5に示す電流波形と電圧波形との関係から、ナトリウム灯の点灯状態を知ることができる。つまり、図8に示すように、出力されるラッチデータから、正常点灯(放電)と不点灯(無放電)を判別することができる。また、正常点灯の位相差と不点灯の位相差の間に中間部(位相差がほぼ0)が存在し、放電管の劣化などにより不点灯となる直前であることを判別することができる。さらに、出力データが0である場合、点灯回路100が断線状態であることがわかる。
【0023】
マイクロコンピュータ40では、このようなデータが処理され、たとえば監視センターなどにナトリウム灯の点灯状態を送信することができる。したがって、監視センターでは、送られてきた点灯状態から判断して、劣化したナトリウム灯の交換を行ったり、点灯回路の断線の修理を行ったりすることができる。
【0024】
なお、第1のゼロクロス検出回路24において、電流波形の立ち下がりゼロクロスを検出し、その検出信号をカウンタのゼロクリアを行うためのゼロクリア信号としてもよい。この場合、第2のゼロクロス検出回路30では、電圧波形の立ち上がりゼロクロスが検出され、その検出信号がカウントデータをラッチするためのラッチ信号として用いられる。
【0025】
しかしながら、第1のゼロクロス検出回路24および第2のゼロクロス検出回路30において、電流波形の立ち上がりゼロクロスおよび電圧波形の立ち上がりゼロクロスを検出したり、電流波形の立ち下がりゼロクロスおよび電圧波形の立ち下がりゼロクロスを検出すると、図3に示すように、電流波形と電圧波形とがほぼ同位相となる場合の検出ができない。そのため、第1のゼロクロス検出回路24で電流波形の立ち上がりゼロクロスが検出される場合には、第2のゼロクロス検出回路30で電圧波形の立ち下がりゼロクロスが検出され、第1のゼロクロス検出回路24で電流波形の立ち下がりゼロクロスが検出される場合には、第2のゼロクロス検出回路30で電圧波形の立ち上がりゼロクロスが検出される。
【0026】
また、第2のゼロクロス検出回路の出力信号をカウンタ34のゼロクリアを行うためのゼロクリア信号とし、第1のゼロクロス検出回路の出力信号をデータラッチ回路36に送られるラッチ信号としてもよい。この場合、図8において、正常点灯と異常不点灯の位置関係が逆になる。この場合においても、第2のゼロクロス検出回路30で電圧波形の立ち上がりゼロクロスが検出される場合には、第1のゼロクロス検出回路24で電流波形の立ち下がりゼロクロスが検出され、第2のゼロクロス検出回路30で電圧波形の立ち下がりゼロクロスが検出される場合には、第1のゼロクロス検出回路24で電流波形の立ち上がりゼロクロスが検出される。
【0027】
このように、第2のゼロクロス検出回路30の出力信号がゼロクリア信号として用いられ、第1のゼロクロス検出回路24の出力信号がデータラッチ回路36に送られるラッチ信号として用いられる場合、断線などにより電流波形が検出されないと、データラッチ回路36においてカウントデータがラッチされない。そのため、第2のゼロクロス検出回路30の出力信号により、カウンタ34がゼロクリアを繰り返し、ラッチデータが出力されない。したがって、ラッチデータが出力されない場合には、点灯回路の断線であると判断することができる。この場合、カウンタ34のキャリー信号はラッチ信号として用いられないため、OR回路38は不要であり、第1のゼロクロス検出回路24の出力信号のみがデータラッチ回路36に入力されればよい。
【0028】
この点灯監視装置10を用いた点灯監視方法では、点灯回路100における電流値や電圧値に依存せず、大小広範囲の放電管について、点灯状態を検出することができる。このような電流波形と電圧波形の位相差による点灯状態の検出方法は、蛍光灯などのようなナトリウム灯以外の放電管にも適用することができる。
【0029】
また、この点灯監視装置10は、安定器の前段の電源に接続することにより、装置自体の電源を確保することができる。そのため、たとえば高速道路の照明灯などのように、高所に器具が設置されている場合でも、安定器などは低所にあるため、高所作業の必要がなく、電源接続のみなので、点灯監視装置10の設置はきわめて容易である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ナトリウム灯が点灯する前に実測した電流波形と電圧波形とを示す波形図である。
【図2】ナトリウム灯が点灯したときに実測した電流波形と電圧波形とを示す波形図である。
【図3】ナトリウム灯が消灯する直前に実測した電流波形と電圧波形とを示す波形図である。
【図4】ナトリウム灯が消灯したときに実測した電流波形および電圧波形を示す波形図である。
【図5】ナトリウム灯に接続されている線を外して実測した電流波形および電圧波形を示す波形図である。
【図6】この発明の放電管の点灯監視装置の一例を示すブロック図である。
【図7】図6に示す点灯監視装置の各部における信号を示す図である。
【図8】電流波形および電圧波形の位相差とナトリウム灯の点灯状態とを示す図である。
【図9】従来の蛍光灯自動診断装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
10 点灯監視装置
12 装置電源回路
22 バンドパスフィルタ
24 第1のゼロクロス検出回路
28 バンドパスフィルタ
30 第2のゼロクロス検出回路
32 クロック回路
34 カウンタ
36 データラッチ回路
38 OR回路
40 マイクロコンピュータ
100 点灯回路
108 安定器
110 ナトリウム灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電管の点灯回路における電流波形および電圧波形を検出するステップ、
前記電流波形のゼロクロスを検出するステップ、
前記電圧波形のゼロクロスを検出するステップ、および
前記電流波形の立ち上がりゼロクロスと前記電圧波形の立ち下がりゼロクロスとの時間差または前記電流波形の立ち下がりゼロクロスと前記電圧波形の立ち上がりゼロクロスとの時間差から前記放電管の点灯状態を検出するステップを含む、放電管の点灯監視方法。
【請求項2】
クロック信号をカウントするカウンタにおいて前記電流波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの一方によって前記クロック信号のカウントがゼロクリアされ、前記カウンタで前記クロック信号がカウントされたのち、前記電圧波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの他方によって前記カウンタから出力されるカウントデータがラッチされることにより、得られたラッチデータから前記電流波形の立ち上がりゼロクロスと前記電圧波形の立ち下がりゼロクロスとの時間差または前記電流波形の立ち下がりゼロクロスと前記電圧波形の立ち上がりゼロクロスとの時間差が検出される、請求項1に記載の放電管の点灯監視方法。
【請求項3】
前記放電管の点灯回路の断線により前記電流波形が検出されないとき、前記クロック信号のカウントがゼロクリアされないために前記カウンタがオーバーフローしたときに生じるキャリー信号により前記カウンタのゼロ出力がラッチされる、請求項2に記載の放電管の点灯監視方法。
【請求項4】
クロック信号をカウントするカウンタにおいて前記電圧波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの一方によって前記クロック信号のカウントがゼロクリアされ、前記カウンタで前記クロック信号がカウントされたのち、前記電流波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの他方によって前記カウンタから出力されるカウントデータがラッチされることにより、得られたラッチデータから前記電圧波形の立ち上がりゼロクロスと前記電流波形の立ち下がりゼロクロスとの時間差または前記電圧波形の立ち下がりゼロクロスと前記電流波形の立ち上がりゼロクロスとの時間差が検出される、請求項1に記載の放電管の点灯監視方法。
【請求項5】
放電管の点灯回路における電流波形を入力するための電流波形入力部、
前記放電管の点灯回路における電圧波形を入力するための電圧波形入力部、
前記電流波形入力部から入力された電流波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスを検出するための第1のゼロクロス検出回路、
前記電圧波形入力部から入力された電圧波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスを検出するための第2のゼロクロス検出回路、
クロック信号を出力するためのクロック回路、
前記クロック回路から出力されるクロック信号をカウントしてカウントデータを出力し、前記第1のゼロクロス検出回路で検出された前記電流波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの一方により前記クロック信号のカウントがゼロクリアされるカウンタ、
前記第2のゼロクロス検出回路で検出された前記電圧波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの他方により前記カウンタから出力されるカウントデータをラッチするデータラッチ回路を含む、放電管の点灯監視装置。
【請求項6】
前記カウンタから出力されるカウントデータをラッチするためのラッチ信号として、前記第2のゼロクロス検出回路の出力信号または前記カウンタのキャリー信号を前記データラッチ回路に入力するためのOR回路を含む、請求項5に記載の放電管の点灯監視装置。
【請求項7】
放電管の点灯回路における電流波形を入力するための電流波形入力部、
前記放電管の点灯回路における電圧波形を入力するための電圧波形入力部、
前記電流波形入力部から入力された電流波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスを検出するための第1のゼロクロス検出回路、
前記電圧波形入力部から入力された電圧波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスを検出するための第2のゼロクロス検出回路、
クロック信号を出力するためのクロック回路、
前記クロック回路から出力されるクロック信号をカウントしてカウントデータを出力し、前記第2のゼロクロス検出回路で検出された前記電圧波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの一方により前記クロック信号のカウントがゼロクリアされるカウンタ、
前記第1のゼロクロス検出回路で検出された前記電流波形の立ち上がりゼロクロスまたは立ち下がりゼロクロスの他方により前記カウンタから出力されるカウントデータをラッチするデータラッチ回路を含む、放電管の点灯監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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