説明

散布装置

【課題】繰出しロールの周面への接触精度・状態を高めて、特に、微粒子物である薬剤の漏れ防止を確立させた薬剤散布に有効な散布装置を提供すること、また、散布部からのホッパ部の分離脱着がワンタッチ操作で行うことができるように改善された散布装置を提供する。
【解決手段】繰出しロール1aを有する散布部1の上にホッパ部2を取り付けて構成されている散布装置Aであって、ホッパ部2に設けられている落下口18と繰出しロール1の繰出し凹部5とを連通部材17を介して連通させ、連通部材17は、繰出しロール1aに相当する大きさを有する略ブロック状を成して落下口18と繰出し凹部5とを連通する連通口20を備え、かつ、繰出しロール1aの回転周面に沿わせた広範囲にて面接触させるロール密接円弧部21を備えていることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクターなどの自走式作業機の後部に取り付けられて、肥料(粒状物)、石灰(粉粒物)、そして薬剤(微粒子物)などの散布物を田畑などの圃場に散布する散布装置に係り、特に、薬剤の散布に有効な散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクターなどの自走式作業機の後部に取り付けられて、肥料(粒状物)、薬剤(微粒子物)などの散布物を田畑などの圃場に散布する散布装置は、散布モータによって駆動回転する繰出しロール(分配ロール)を備えている散布部、この散布部の上に取り付けられて薬剤が収容されるホッパ部、散布部において繰出しロールの下方に位置して開口されている散布口(落下口)から土壌表面近くにわたり取り付けられる散布ホース(導管)を備えて構成されている(例えば、特許文献1〜特許文献3などを参照)。
そして、散布装置は、トラクターなどの自走式作業機の後部に三点リンク機構によって取り付けられ、出力軸(PTO)からユニバーサルジョイントを介して回転動力が伝達される耕耘ロータリーの上などに搭載されることで、ホッパ部内の散布物が繰出しロールの回転によって定量繰出されながら、散布管を通して圃場の土俵などに定量散布されるようになっている。
【0003】
ところで、繰出しロールが回転可能に内設されている散布部には、繰出しロールの円周上半部側と下半部側を仕切るように、植毛材などを束ねたブラシ部材が備えられている。このブラシ部材は、植毛材の先端を繰出しロールの周面に接触させた状態で、繰出しロールの断面(輪切り断面)の上半部両側に位置して配設されている。
これにより、ホッパ部の底部に開口されている落下口から繰出しロールの円周上半部側に吐出されてくる薬剤などの散布物が、円周下半部側に零れることなく、繰出しロールの周面に設けられている各繰出し凹部によって定量されつつ、繰出しロールの回転によって円周下半部側に繰出されて散布ホールを通して圃場の土俵などに定量散布されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭61−10776号公報
【特許文献2】特開2006−20507号公報
【特許文献3】特開2006−174818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、散布物である薬剤の場合は、微粒子物であるが故に、植毛材などを束ねてなるブラシ部材では繰出しロールの円周下半部側(散布口および散布ホース側)への漏れを確実に防ぐことができないものであった。
つまり、散布ロールの周面に対するブラシ部材の接触は、束ねられた植毛材の先端総合の点接触または線接触であるために、散布ロールの周面との間や植毛材の間などに僅かな隙間が生じ易く、その僅かな隙間から薬剤が漏れ出し、無駄になることが多かった。
例えば、田畑への散布中に、田畑の縁などに差し掛かり、散布モータを止めて散布を一時中断させた状態でトラクターをUターンさせる際などにおいて、ブラシ部材によって仕切られている散布ロールの上半部側に繰出されずに残っている薬剤が僅かな隙間から漏れ出し、田畑脇の土壌に落下してしまうなどの無駄になること多く、使用者からその改善が求められていた。
【0006】
なお、このような薬剤漏れを防ぐための手法として、ブラシ部材に替えて、同ブラシ部材の厚さ(束ねられた植毛材の厚さ)に相当する厚みを有するなどの帯状のゴム部材を、前記したように、繰出しロールの断面(輪切り断面)の上半部両側に位置させて配設することが考えられる。このような形態とすることで、ブラシ部材に比べて、薬剤漏れを防ぐ抑止効果は高められるものの、繰出しロールの周面に対する接触は、ゴム部材の厚さであって、完全に防ぐことができない。
【0007】
また、従来技術では、散布部に対するホッパ部の取り付けが、ボルトとナットによる固着によって行われているなどから、散布作業の終了後やシーズン終了後においてメンテナンスを行う際に、数ヶ所のボルト・ナットを取り外して散布部からホッパ部を分離しなければならないといった面倒で手間の掛かる分離脱着作業を必要とするなど、取扱い上においても改善が求められていた。
【0008】
そこで、本発明は、前記課題を解消するために創案されたものであり、繰出しロールの周面への接触精度・状態を高めて、特に、微粒子物である薬剤の漏れ防止を確立させた薬剤散布に有効な散布装置を提供すること、また、散布部からのホッパ部の分離脱着がワンタッチ操作で行うことができるように改善された散布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明では、繰出しロールを有する散布部と、この散布部の上に取り付けられて散布物が収容されるホッパ部と、を備えて構成されている散布装置であって、
前記ホッパ部の底部に設けられている落下口と前記繰出しロールの周面に設けられている繰出し凹部とを連通部材を介して連通させてなり、前記連通部材は、前記繰出しロールの筒方向の長さとその直径に相当する大きさを有する略ブロック状を成し、前記落下口と前記繰出しロールの前記繰出し凹部とを連通する連通口を備え、かつ、前記繰出しロールの回転周面に沿わせた広範囲にて面接触させるロール密接円弧部を備えていることを特徴とする。
ここで、前記ロール密接円弧部の円弧内面は、前記繰出しロールの周面に面接触させた状態で繰出しロールの回転を妨げない滑りが得られるように、滑らかに表面加工処理が施されていることが好適である。
また、前記連通部材が弾性材からなることが好適で、好ましくは弾性ゴム、特に好ましくは天然ゴムからなることが好適である。
【0010】
このような構成によれば、繰出しロールの回転周面に沿わせた面接触にて宛がわれる。例えば、繰出しロールの断面(輪切り断面)の上半部側周面に包囲するように面接触にて宛がわれるロール密接円弧部を有する連通部材を介してホッパ部の落下口と繰出しロールの繰出し凹部とを連通させたことで、ホップ部内の散布物、特に、微粒子物の薬剤を繰出し凹部にて定量しつつ、繰出しロールに回転による定量散布を確実に維持しながら、繰出しロールの周面との間に生じる僅かな隙間の発生を抑えることができる。
また、繰出しロールの周面に面接触にて宛がわれる連通部材のロール密接円弧部は滑らかに表面加工処理が施されていることで、繰出しロールとの摩擦抵抗を抑えて、該繰出しロールの回転を円滑に保つことができる。つまり、繰出しロールの周面との間に薬剤が漏れる僅かな隙間の発生を抑えながら、繰出しロールの回転を円滑に保つ。
また、連通部材が、弾性材からなることで、ロール密接円弧部を繰出しロールの周面に弾性的に面接触させることができる。そして、弾性材として天然ゴムを選択することで、繰出しロールとの接触による静電気の発生を抑えることができる。
【0011】
また、前記散布部は、前記ホッパ部の前記落下口と前記連通部材の前記連通口とを連絡する開口部を有する平面視で略四角形状のホッパ取付上面部を備え、前記ホッパ部は、前記ホッパ取付上面部と略同じ平面視形状にて該ホッパ取付上面部の上に載置される連結下面部を備えて、この連結下面部と前記ホッパ取付上面部との重なり合う一辺縁部側に、抜き挿しまたは引掛け自在に係止させる係止手段を備えるとともに、対向する他辺縁部側には同他辺縁部を重合方向に掛脱自在に締付ける締付け手段を備えていることを特徴とする。
ここで、前記係止手段は、重なり合う前記一辺縁部のうち、その一方側に横向きに備えられる雌側係止部と、他方側に横向きに備えられて前記雌側係止部に抜き挿し自在に係止される雄側係止部とから構成され、前記締付け手段は、重なり合う前記他辺縁部のうち、その一方側に備えられる引掛け部と、他方側に備えられて前記引掛け部に引掛ける環状の掛け部を有する締付け操作部とから構成されていることが好適なものとなる。
【0012】
このような構成によれば、散布部の上にホッパ部を取り付けるとき、ホッパ取付上面部に連結下面部を重ね合わせ、一辺縁部側の横向きの雌側係止部に対して、同じく横向きの雄側係止部を嵌め合せ係止させることで、ホッパ部が浮き上らないように重なり合うホッパ取付上面部と連結下面部との一辺縁部側を連結させることができる。そして、ホッパ取付上面部と連結下面部との他辺縁部側の一方側に備えられている引掛け部に対して、他方側に備えられている締付け操作部の掛け部を引掛けて締付け操作部を締め付けることで、ホッパ部が浮き上らないように重なり合うホッパ取付上面部と連結下面部との他辺縁部側を連結させることができる。
つまり、ホッパ取付上面部と連結下面部にそれぞれ備えられている雄雌係止部の雌側係止部に対する係脱可能な嵌め合わせ連結と、引掛け部に対する締付け操作部の掛け部の締付け掛脱可能な連結によって散布部の上にホッパ部を分離掛脱自在に取り付け載置することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、連通部材に設けた連通路によってホッパ部の落下口と繰出しロールの繰出し凹部を連通させ、かつ、ロール密接円弧部を繰出しロールの回転周面に沿わせた広範囲にて面接触させた構造を採用している。つまり、回転ロールの円周上半部側において、定量散布速度にて回転する繰出しロールの回転によって落下口の真下に順次位置する繰出し凹部のみが落下口と連通状態となり、他の繰出し凹部を含めた周面はロール密接円弧部による広範囲の面接触状態と成し得ることで、繰出しロールの周面との間に僅かな隙間も発生しない高い接触精度・状態を保つことができる。
これにより、微粒子物の薬剤の漏れを確実に防ぐことができる。
【0014】
また、流通部材が弾性材であることで、ロール密接円弧部の繰出しロールの周面に対する面接触状態を弾性的に接触させることができる。これにより、微粒子物の薬剤が漏れないように、繰出しロールの周面との接触状態を長期にわたり継続的に保つことができる。
また、弾性材として、例えば、天然ゴムを選択することで、繰出しロールとの接触による静電気の発生を防ぐ静電気抑止効果が得られ、静電気の発生によって生じる繰出し凹部の凹み内面への薬剤の付着、ひいては、薬剤の繰出し凹部への堆積によって繰出し凹部の体積が減少して定量散布に支障を来たすなどの問題を防ぐことができる。これにより、繰出し凹部による定量散布を長期にわたり継続的に保つことができる。つまり、散布場所によって散布量が少ない、散布量が多すぎるなどの散布のバラツキをなくし、均一に散布することができる信頼性の高い散布装置を提供することができる。
【0015】
また、本発明によれば、散布部の上にホッパ部を取り付けるとき、ホッパ取付上面部と連結下面部にそれぞれ備えられている雄雌係止部の雌側係止部に対する係脱可能な嵌め合わせ連結と、引掛け部に対する締付け操作部の掛け部の締付け掛脱可能な連結によって散布部の上にホッパ部を分離脱着可能に取り付け載置することができる。
これにより、散布作業の終了後やシーズン終了後などにおけるメンテナンスの際に行う散布部のホッパ部からの脱着作業を簡易に、ワンタッチ操作で行うことができる。よって、従来技術のボルトとナットによる固着に比べて、分離脱着などに対する取扱い性の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施例に係る散布装置を既設散布装置とともにトラクター後部の耕耘ロータリー上に搭載させた状態を示す側面図である。
【図2】同散布装置を拡大して示す正面図である。
【図3】同散布装置の要部を拡大して示す縦断正面図である。
【図4】同縦断側面図で、(a)は、シャッターが開の状態を示し、(b)は、シャッターが閉の状態を示す。
【図5】連通部材の一例を、繰出しロールとともに示す斜視図である。
【図6】ホッパ部を散布部から取り外し分離させた状態を示す要部の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施例に係る散布装置を既設散布装置とともにトラクター後部の耕耘ロータリー上に搭載させた状態を示す側面図であり、図2は、同散布装置を拡大して示す正面図であり、図3は、同散布装置の要部を示す拡大縦断正面図であり、図4は、同拡大縦断側面図である。
本実施形態に係る散布装置Aは、図1に示すように、既設散布装置(肥料や種子などを散布する既設の装置)Bとともに、該既設散布装置Bの装置機枠bを利用してトラクターCの後部に三点リンク機構Eによって取り付けられる耕耘ロータリーDの上部などに搭載されて、既設散布装置Bから肥料、種子や石灰などが畑の畝(土俵)に散布されるとき、その散布周辺の局所位置に薬剤を散布するものである。
【0019】
≪散布装置の構成≫
散布措置Aは、図1〜図3に示すように、繰出しロール(分配ロール)1aを有する散布部1と、この散布部1の上に取り付けられて薬剤が収容されるホッパ部2と、繰出しロール1aの下方に位置して開口されている数ヶ所の散布口4から畝の土壌表面近くにわたり取り付けられる数本の散布管(導出管)3を備えて構成されている。
【0020】
≪散布部の構成≫
散布部1は、図3および図4に示すように、分配漏斗1b、この分配漏斗1b内に内設される繰出しロール1a、この繰出しロール1aを駆動回転させる散布モータ1cを備えている。
繰出しロール1aは、合成樹脂材料などから形成されて、図3および図4、そして後記の図5に示すように、周面に複数の繰出し凹部5を備えている。この繰出し凹部5は、繰出しロール1aの筒方向に3列、周方向に8列それぞれ独立した等間隔おいて適宜の深さを有する略半円状に形成されている。
そして、この繰出しロール1aは、両端軸芯に角型軸部6を備えて、図2および図3に示すように、後記する支持部材7の両側支持辺部7bの間にわたり回転可能に軸止されるとともに、その一端の角型軸部6が一側支持辺部7bの外側に同軸上に取り付けられる散布モータ1cに接続されるようになっている。
【0021】
分配漏斗1bは、合成樹脂材料などによって、繰出しロール1aを緩嵌状(遊嵌状)に横架内設し得る大きさを有する上面開口の平面視で略横長矩形状に形成されており、底部数ヶ所には下向き並列で筒状に開口させた散布口4を備えている。この散布口4にはフレキシブルな散布パイプ(可撓パイプ)3の一端側が接続される。
また、分配漏斗1bは、図3および図4に示すように、両側壁面に繰出しロール1aの両端に備えられている角型軸部6を外部に突出させる切欠き部8を備えているとともに、支持部材7に図示省略のピンやネジなどの止め具を用いて吊持状に取り付けられるように形成されている。
【0022】
支持部材7は、分配漏斗1bを吊持状に支持するとともに、ホッパ部2を取り付け載置させるホッパ取付上面部9を散布部1に形成するためのものである。
この支持部材7は、分配漏斗1bの上面開口部の開口面積よりも一回りほど大きめの平面視で略横長矩形形状を呈する上面辺部7aと、この上面辺部7aの対向する短辺両縁から下向きに折り曲げ延設させた支持辺部7bとから正面視で略下向きコの字形状に形成されている(図3参照)。上面辺部7aが散布部1のホッパ取付上面部9を形成し、このホッパ取付上面部9の上にホッパ部2が取り付け載置されるようになっている。
【0023】
また、支持部材7の両側支持辺部7bには、図2および図3に示すように、下向き開口の取付部材(型材)10が備えられている。この両側の取付部材10は、図1に示すように、装置機枠bの角パイプ材b1に取り付けられている支持枠材11に嵌め合せ載置された状態で、該支持枠材11の内側に備えられているナット12に蝶ネジ13をねじ込むことで(図2参照)、支持枠材11を介して散布部1(散布装置A)を装置機枠b上に着脱可能に固着搭載し得るようにしている。
【0024】
また、支持部材7の両側支持辺部7bには、図3および図4に示すように、後記する締付け手段14の締付け操作部14a側が備えられている。
さらに、支持部材7の上辺面部7a(散布部1のホッパ取付上辺部9)の長辺両側縁には下向きに折り曲げた下向き縁辺部16がそれぞれ備えられていて、その一側の下向き縁辺部16に後記する係止手段15の雌側係止部15aが備えられるようになっている。
【0025】
そして、本実施形態では、このように構成されている散布部1の繰出しロール1aの断面上半部側の周面に広範囲にて面接触させる連通部材17を備えている。つまり、図3および図4に示すように、ホッパ部2の底部に設けられる各落下口18と繰出しロール1aの筒方向の各繰出し凹部5とを支持部材7の開口部19を介して連通させるための連通口20を有する連通部材17を繰出しロール1aの断面上半部側に位置させて備えている。
【0026】
≪連通部材の構成≫
図5は、連通部材の一例を、繰出しロールとともに示す斜視図である。ここでは、図3および図4を適宜参照しながら説明する。
連通部材17の材質は、特に限定されるものではないが、弾性ゴムなどの所望な弾性材が好ましく、特に、繰出しロール1aとの接触による静電気の発生を抑える静電気抑止効果が得られる天然ゴム(NR70)が好ましい。本実施形態では、天然ゴム材を用いて、図5に示すように、繰出しロール1aの筒方向の長さとその直径に相当する程度の大きさを有する平面視で略矩形形状のブロック状に形成している。
そして、連通部材17には、図3および図4に示すように、ホッパ部2の落下口18と繰出しロール1aの繰出し凹部5とを連通する連通口20を備え、かつ、繰出しロール1aの回転周面に沿わせた広範囲にて該周面に面接触させるロール密接円弧部21を備えている。
【0027】
連通口20は、連通部材17の長手方向に横一列の等間隔をおいて3ヶ所に開口されている。これにより、図3に示すように、同じくホッパ部2の底部に横一列の等間隔をおいて開口される3ヶ所の落下口18と、繰出しロール1aの筒方向に等間隔をおいて設けられる3ヶ所の繰出し凹部5とを個々に連通させるようにしている。
【0028】
ロール密接円弧部21は、繰出しロール1aの周面に対する広範囲の接触によって、ホッパ部2の各落下口18から繰出しロール1aの各繰出し凹部5へと繰出しロール1aの回転に伴い収容される薬剤が、散布口4を有する分配漏斗1bの底部側に漏れないように防ぐ役目を成すものである。
このロール密接円弧部21は、図4に示すように、繰出しロール1aの断面上半部側の周面に沿って該上半部側周面を包み込むように広範囲にて接触させる半円形状に形成されている。つまり、繰出しロール1aの断面上半部側の断面形状と同一形状にてロール密接円弧部21は連通部材17に形成されている。
これにより、繰出しロール1aの周面との間に隙間がない状態(薬剤が漏れるおそれがある僅かな隙間の発生をも抑えた状態)の面接触にて当該周面に接触させるようにしている。
【0029】
また、ロール密接円弧部21の円弧内面は、適宜の加工手法によって滑らかに表面加工処理が施されている。これにより、繰出しロール1aとの摩擦抵抗を抑えて、繰出しロール1aの回転を円滑に保つようにしている。つまり、ロール密接円弧部21の広範囲における面接触状態において、接触による摩擦抵抗を受けることなく、繰出しロール1aが散布モータ1cの動力によって円滑に回転するようにしている。
【0030】
なお、図示を省略しているが、支持部材7の上面辺部7aの裏側には、ロール密接円弧部21の繰出すロール1aに対する接触状態(接触力)を調整するための調整部材がボルト止めなどによって上下動可能に備えられている。調整部材は、繰出しロール1aの筒方向の長さに相当する長さ(幅)に形成されて、ボルトなどによる4点支持によって上面辺部7aの裏面に備えられている。
【0031】
≪ホッパ部の構成≫
ホッパ部2は、下半部側が底部に至るにしたがって略漏斗状に形成されており、その底部には落下口18を備えている。
落下口18は、散布ロール1aの各繰出し凹部5の筒方向における配置間隔にて等間隔の横一列に開口されて、連通部材17の連通口20を通して各繰出し凹部5に薬剤が個々に落下収容されるようにしている。
【0032】
そして、落下口18が開口されているホッパ部2の底部下面には、各落下口18を個々に開閉するためのシャッター22が備えられているとともに、散布部1のホッパ取付上面部9に重ね合わせ載置される平坦な連結下面部23をホッパ部2に備えるための下面部材24が取り付けられている。
【0033】
シャッター22は、摘み部22aを折り曲げ立ち上げた帯状板によって形成されて、下面部材24によって下から挟み込まれた状態でホッパ部1の底部下面に、各落下口18を個々に開閉するようにスライド自在にそれぞれ配されている。
これにより、3ヶ所全て落下口18を開けて3ヶ所で散布、或いは1ヶ所の落下口18を閉じて2ヶ所で散布、2ヶ所の落下口18を閉じて1ヶ所のみで散布するなどの田畑への散布状況に合わせた散布作業を可能にしている。
【0034】
下面部材24は、散布部1のホッパ取付上面部9と略同じ平面視形状に形成されている。そして、下面部材24の短辺両側縁側には、図3および図4に示すように、上向きに折り曲げられた上向き縁辺部25が備えられていて、この両側の上向き縁辺部25に締付け手段14の掛け部14b側が備えられているようになっている。
また、下面部材24の長辺一側縁部側には、下向きに折り曲げられた下向き縁辺部26が備えられていて、この下向き縁辺部26に係止手段15の雄側係止部15b側が備えられるようになっている。
【0035】
≪締付け手段及び係止手段の構成≫
図6は、ホッパ部を散布部から取り外し分離させた状態を示す要部の縦断側面図である。
締付け手段14および係止手段15は、散布部1のホッパ取付上面部9の上にホッパ部2の連結下面部23を重ね合わせ載置させた状態で、この連結下面部23をホッパ取付上面部9に分離掛脱自在に取り付けるためのものである。
【0036】
締付け手段14は、図2および図3に示すように、支持部材7の両側支持辺部7bの上部側に位置して配設される環状の掛け部27を有する締付け操作部14aと、下面部材24(ホッパ部2の連結下面部23)の両側上向き縁辺部25に配設される引掛け部14bとを備えて構成されている。
【0037】
そして、係止手段15は、図3および図4に示すように、支持部材7の下向き縁部16に横向きに配設される雌側係止部15aと、下面部材24(ホッパ部2の連結下面部23)の下向き縁辺部26に横向き(内向き突出状)に配設される雄側係止部15bとを備えて構成されている。
【0038】
このように構成されている締付け手段14および係止手段15によれば、ホッパ取付上面部9と連結下面部23との長辺一側縁部側を、雌側係止部15aに対する雄側係止部15bの嵌め合せ係止によって掛脱自在に連結することができ、そして、長辺他側縁部側を、引掛け部14bに対する締付け操作部14aの掛け部27の引掛けと締め付けによって掛脱自在に連結することができる。
【0039】
また、本実施形態では、図3および図4に示すように、散布部1のホッパ取付上面部9の要所にウレタン材などからなる介在部材28を備えている。
これにより、ホッパ部2の連結下面部23を散布部1のホッパ取付上面部9に係止手段15と締付け手段14によって連結することで、連結下面部23とホッパ取付上面部9との間の要所部分が介在部材28によって密閉状にシールされて微粒子物の薬剤が漏れないようにしている。
【0040】
また、本実施形態では、図示を省略しているが、板金加工などによって形成されるホッパ部2の板材の繋ぎ目などにコーキング材を用いた目地処理を施して、微粒子物の薬剤の漏れを防ぐようにしている。
【0041】
なお、本発明の実施形態の具体的な構成は、前記した実施形態に限られるものではなく、請求項1から請求項5に記載の本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更などがあっても本発明に含まれるものである。
例えば、連通部材17を、天然ゴムなどの弾性材に限らず、合成樹脂材などの適宜の材料を用いて形成することができる。
【0042】
また、散布部1のホッパ取付上面部9の上に、ホッパ部2の連結下面部23を重ね合わせ載置させて連結する係止手段15として、引掛け自在に係止させる係止爪片部と係止凹部との関係によって構成することができる。
【符号の説明】
【0043】
A 散布装置
1 散布部
1a 繰出しロール
1b 分配漏斗
1c 散布モータ
2 ホッパ部
3 散布管
4 散布口
5 繰出し凹部
9 ホッパ取付上面部
14 締付け手段
14a 締付け操作部
14b 引掛け部
15 係止手段
15a 雌側係止部
15b 雄側係止部
17 連通部材
18 落下口(ホッパ部の)
19 開口部(ホッパ取付上面部の)
20 連通口
21 ロール密接円弧部
23 連結下面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰出しロールを有する散布部と、この散布部の上に取り付けられて散布物が収容されるホッパ部と、を備えて構成されている散布装置であって、
前記ホッパ部の底部に設けられている落下口と前記繰出しロールの周面に設けられている繰出し凹部とを連通部材を介して連通させてなり、
前記連通部材は、前記繰出しロールの筒方向の長さとその直径に相当する大きさを有する略ブロック状を成し、前記落下口と前記繰出し凹部を連通させる連通路を備え、かつ、前記繰出しロールの回転周面に沿わせた広範囲にて面接触させるロール密接円弧部を備えていることを特徴とする散布装置。
【請求項2】
前記ロール密接円弧部の円弧内面は、滑らかに表面加工処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の散布装置。
【請求項3】
前記連通部材が、弾性材からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の散布装置。
【請求項4】
前記散布部は、前記ホッパ部の前記落下口と前記連通部材の前記連通口とを連絡する開口部を有する平面視で略四角形状のホッパ取付上面部を備え、前記ホッパ部は、前記ホッパ取付上面部と略同じ平面視形状にて該ホッパ取付上面部の上に載置される連結下面部を備えて、この連結下面部と前記ホッパ取付上面部との重なり合う一辺縁部側に、抜き挿しまたは引掛け自在に係止せせる係止手段を備えるとともに、対向する他辺縁部側には同他辺縁部を重合方向に掛脱自在に締付ける締付け手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の散布装置。
【請求項5】
前記係止手段は、重なり合う前記一辺縁部のうち、その一方側に横向きに備えられる雌側係止部と、他方側に横向きに備えられて前記雌側係止部に抜き挿し自在に係止される雄側係止部と、から構成され、
前記締付け手段は、重なり合う前記他辺縁部のうち、その一方側に備えられる引掛け部と、他方側に備えられて前記引掛け部に引掛ける環状の掛け部を有する締付け操作部と、から構成されていることを特徴とする請求項4に記載の散布装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−125231(P2011−125231A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284412(P2009−284412)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000132828)株式会社タイショー (5)
【Fターム(参考)】