数値制御装置
【課題】軸ごとの電力を正確に算出する数値制御装置を提供する。
【解決手段】コンバータ部110の出力電力を取得するコンバータ電力取得手段300と、モータ13−1〜13−Nの出力を軸ごとに算出するモータ出力算出手段310と、コンバータ出力電力とモータ出力の全軸に関する総和との差を全損失として算出する全損失算出手段340と、モータの損失を軸ごとに算出するモータ損失算出手段320と、アンプの損失を軸ごとに算出するアンプ損失算出手段330と、モータ損失とアンプ損失との和を軸損失として軸ごとに算出する軸損失算出手段350と、軸損失の全軸に関する総和に対する、軸毎の軸損失の比率に基づいて、全損失を軸毎に分配した損失を軸ごとに求める損失分配手段360と、モータ出力と分配軸損失との和を軸電力として軸ごとに求める軸電力算出手段370とを備える。
【解決手段】コンバータ部110の出力電力を取得するコンバータ電力取得手段300と、モータ13−1〜13−Nの出力を軸ごとに算出するモータ出力算出手段310と、コンバータ出力電力とモータ出力の全軸に関する総和との差を全損失として算出する全損失算出手段340と、モータの損失を軸ごとに算出するモータ損失算出手段320と、アンプの損失を軸ごとに算出するアンプ損失算出手段330と、モータ損失とアンプ損失との和を軸損失として軸ごとに算出する軸損失算出手段350と、軸損失の全軸に関する総和に対する、軸毎の軸損失の比率に基づいて、全損失を軸毎に分配した損失を軸ごとに求める損失分配手段360と、モータ出力と分配軸損失との和を軸電力として軸ごとに求める軸電力算出手段370とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動して対象物を加工する工作機械では、消費電力改善など様々な目的で消費電力または回生電力の情報が求められている。
【0003】
特許文献1には、産業機械のモータ駆動装置において、コンバータ部の入力電圧と入力電流とを測定し、これらの値を用いてモータ駆動装置全体の消費電力を求めることが記載されている。これにより、特許文献1によれば、モータ駆動装置全体(コンバータ部、複数のインバータ部、複数のモータを合わせた全体)の消費電力を正確に算出できるとされている。
【0004】
特許文献2には、産業機械のモータ駆動装置において、モータ速度検出値とモータ電流検出値と予め設定したモータトルク定数からモータ出力を算出し、モータ電流検出値の二乗と巻線抵抗からモータ損失を算出し、モータ電流検出値と予め設定されたアンプ電力損失係数からアンプ損失を算出し、算出したモータ出力とモータ損失、アンプ損失と、予め設定したアンプ固定消費電力、周辺機器の固定消費電力を合計することで産業機械全体の消費電力を算出することが記載されている。これにより、特許文献2によれば、電力計などの特別な機器を使用することなく、産業機械全体の消費電力を計算できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−74918号公報
【特許文献2】特開2010−115063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、コンバータ部の入力電圧と入力電流との各測定値からモータ駆動装置全体の消費電力を求めることが記載されているに過ぎず、インバータ部及びモータが設けられた軸ごとの消費電力を求めることは想定されていない。
【0007】
特許文献2には、産業機械全体および軸ごとの消費電力を計算により求めることが記載されているが、それらを正確に計算することは困難である。
【0008】
すなわち、軸ごとの消費電力を正確に算出するためには、モータ損失やアンプ損失を正確に算出する必要がある。しかし、モータ損失やアンプ損失を正確に算出するために必要な、モータの巻線抵抗など予め設定する定数は、モータの温度などさまざまな条件により変化するため、予め正確に設定しておくことが困難である。特許文献2に記載の技術では、モータ電流検出値の二乗と巻線抵抗からモータ損失を算出し、モータ電流検出値と予め設定されたアンプ電力損失係数からアンプ損失を算出している。このように不正確なモータ損失やアンプ損失をモータ出力に加算して軸ごとの消費電力を算出すると、その値も不正確なものとなってしまう。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、軸ごとの電力を正確に算出することができる数値制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の1つの側面にかかる数値制御装置は、交流電力を直流電力に変換するコンバータ部と前記コンバータ部で変換された直流電力を交流電力に変換する複数のアンプと前記アンプで変換された交流電力によりそれぞれ駆動する複数のモータとを有し前記アンプ及び前記モータが軸ごとに設けられた工作機械駆動部の電力を算出する数値制御装置であって、前記コンバータ部の出力電力をコンバータ出力電力として取得するコンバータ電力取得手段と、前記モータの出力をモータ出力として軸ごとに算出するモータ出力算出手段と、前記コンバータ出力電力と前記モータ出力の全軸に関する総和との差を全損失として算出する全損失算出手段と、前記モータの損失をモータ損失として軸ごとに算出するモータ損失算出手段と、前記アンプの損失をアンプ損失として軸ごとに算出するアンプ損失算出手段と、前記モータ損失と前記アンプ損失との和を軸損失として軸ごとに算出する軸損失算出手段と、前記軸損失の全軸に関する総和に対する軸毎の前記軸損失の比率に基づいて、前記全損失を軸毎に分配した損失を分配軸損失として軸ごとに求める損失分配手段と、前記モータ出力と前記分配軸損失との和を軸電力として軸ごとに求める軸電力算出手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸毎のモータ損失やアンプ毎のアンプ損失を算出する際に発生する誤差や考慮できていない損失も考慮に入れた軸毎の軸損失を算出することが可能になるので、軸ごとの消費電力を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態にかかる数値制御装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態の変形例にかかる数値制御装置の構成を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態の変形例にかかる数値制御装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる数値制御装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態.
実施の形態にかかる数値制御装置2について図1を用いて説明する。図1は、数値制御装置2の構成を示すとともに、数値制御装置2の制御対象である工作機械駆動部1の構成も示すブロック図である。なお、図1中の実線は電力供給経路を表し、破線矢印は信号伝達経路を表す。
【0015】
数値制御装置2は、工作機械駆動部1を制御する。また、数値制御装置2は、工作機械駆動部1の電力を算出する。
【0016】
工作機械駆動部1は、1つのコンバータ部110および、それに連なるN個の軸としてアンプ12−1〜12−Nとモータ13−1〜13−Nを軸毎に有する。なお、部材番号におけるハイフン「−」の後の番号は、軸の番号に対応させてある。
【0017】
コンバータ部110は、電力変換回路111及びコンバータ電力測定手段112を有する。工場電源100から供給される三相交流電力は、コンバータ部110の電力変換回路111で直流電力であるコンバータ出力電力に変換され、各軸のアンプ12−1〜12−Nに供給される。
【0018】
コンバータ部110のコンバータ電力測定手段112は、電力変換回路111により変換されたコンバータ出力電力を測定する。各軸のアンプ12−1〜12−Nは、コンバータ部110から供給される直流電力を所望の三相交流電力に変換し、対応するモータ13−1〜13−Nに供給する。各軸のモータ13−1〜13−Nは、対応するアンプ12−1〜12−Nから供給された三相交流電力により駆動する。
【0019】
なお、本実施の形態では、工作機械駆動部1には1つのコンバータ部110とそれにアンプ12−1〜12−N及びモータ13−1〜13−Nが軸毎に連なる構成となっているが、工作機械駆動部1にはその構成が複数備わっていても良い。例えば、工作機械駆動部1には複数のコンバータと各コンバータにアンプ12−1〜12−N及びモータ13−1〜13−Nが軸毎に連なる構成となっていてもよい。
【0020】
また、本実施の形態では、コンバータ電力測定手段112がコンバータ部110に含まれているが、独立した電力計又は電圧計・電流計を用いて、コンバータ出力電力又はコンバータ出力電圧・コンバータ出力電流を計測しても良い。電圧計・電流計によりコンバータ出力電圧・コンバータ出力電流を測定した場合、後述するコンバータ電力取得手段300は、電圧計から出力されたコンバータ出力電圧と電流計から出力されたコンバータ出力電流とを取得し、コンバータ出力電圧とコンバータ出力電流とをかけてコンバータ出力電力を求めることでコンバータ出力電力を取得しても良い。
【0021】
数値制御装置2は、回転速度測定手段200、モータ電流測定手段210、コンバータ電力取得手段300、モータ出力算出手段310、モータ損失算出手段320、アンプ損失算出手段330、全損失算出手段340、軸損失算出手段350、損失分配手段360、及び軸電力算出手段370を有する。
【0022】
回転速度測定手段200は、モータの回転速度をモータ回転速度として測定し、モータ電流測定手段210は、モータに流れる電流をモータ電流として測定する。
【0023】
次に、コンバータ電力取得手段300は、コンバータ電力測定手段112から出力されたコンバータ出力電力Wcを取得する。なお、コンバータ電力測定手段112がコンバータ出力電圧・コンバータ出力電流を出力する場合、コンバータ電力取得手段300は、コンバータ出力電圧・コンバータ出力電流を取得し、コンバータ出力電圧とコンバータ出力電流との積をコンバータ出力電力Wcとして算出することでコンバータ出力電力Wcを取得する。
【0024】
次に、モータ出力算出手段310は、回転速度測定手段200により測定されたモータ毎のモータ回転速度と、モータ電流測定手段210により測定されたモータ毎のモータ電流とを用いて、モータ毎のモータ出力を算出する。具体的には、下記の式1に示すように、モータnのモータ回転数ωnとモータnのモータ電流Imn、および予め設定されたモータnのモータトルク定数Tnの積をモータ出力Wmnとして算出する。
【0025】
Wmn=ωn×(Imn×Tn)・・・(式1)
【0026】
次に、モータ損失算出手段320は、モータ電流測定手段210により測定されたモータ毎のモータ電流を用いて、モータ毎のモータ損失を算出する。具体的には、下記の式2に示すように、モータnのモータ固定消費電力Lfmnおよび、モータnのモータ巻線抵抗Rmnを予め設定しておき、モータnのモータ電流Imnの二乗とモータ巻線抵抗Rmnとの積と、モータnのモータ固定消費電力Lfmnとの和をモータnのモータ損失Lmnとして算出する。なお、本実施の形態ではモータ電流の二乗とモータ巻線抵抗との積と、モータ固定消費電力との和をモータ損失としたが、モータ固定消費電力が小さい場合、モータ電流の二乗とモータ巻線抵抗との積のみをモータ損失としても良い。
【0027】
Lmn=(Imn2×Rmn)+Lfmn・・・(式2)
【0028】
次に、アンプ損失算出手段330は、モータ電流測定手段210により測定されたモータ毎のモータ電流を用いて、アンプ毎のアンプ損失を算出する。具体的には、下記の式3に示すように、アンプnのアンプ固定消費電力Lfanおよび、アンプnのアンプ損失係数Kan、アンプnのアンプ電気抵抗Ranを予め設定しておき、モータnのモータ電流Imnの二乗とアンプnのアンプ電気抵抗Ranとの積と、モータnのモータ電流Imnとアンプnのアンプ損失係数Kanとの積の絶対値と、アンプnのアンプ固定消費電力Lfanとの和をアンプnのアンプ損失Lanとして算出する。なお、モータ電流Imnとアンプ損失係数Kanの積の絶対値をとるのは、力行時においても回生時においても損失は全て正の値にするためである。また、本実施の形態では、モータ電流の二乗とアンプ電気抵抗との積と、モータ電流とアンプ損失係数との積の絶対値と、アンプ固定消費電力との和をアンプ損失としたが、モータ電流の二乗とアンプ電気抵抗との積が小さい場合には、モータ電流の二乗とアンプ電気抵抗との積を無視しても良い。また、モータ電流とアンプ損失係数との積の絶対値が小さい場合には、モータ電流とアンプ損失係数との積の絶対値を無視しても良い。また、アンプ固定消費電力が小さい場合には、アンプ固定消費電力を無視しても良い。
【0029】
Lan=(Imn2×Ran)+|Imn×Kan|+Lfan・・・(式3)
【0030】
次に、全損失算出手段340は、コンバータ電力取得手段300から出力されたコンバータ出力電力と、モータ出力算出手段310から出力されたモータ毎のモータ出力とを用いて、工作機械駆動部1全体の損失を算出する。具体的には、下記の式4に示すように、コンバータ出力電力Wcとモータnのモータ出力Wmnの全モータ総和との差を全損失Lとして算出する。ここでNはコンバータ部110により電力供給される軸数である。
【0031】
N
L=Wc−ΣWmn・・・(式4)
n=1
【0032】
次に、軸損失算出手段350は、モータ損失算出手段320から出力されたモータ毎のモータ損失と、アンプ損失算出手段330から出力されたアンプ毎のアンプ損失とを用いて、軸毎の損失を算出する。具体的には、下記の式5に示すように、モータnのモータ損失Lmnとアンプnのアンプ損失Lanとの和を軸nの軸損失Lnとして算出する。
【0033】
Ln=Lmn+Lan・・・(式5)
【0034】
次に、損失分配手段360は、軸損失算出手段350から出力された軸毎の軸損失を用いて、全損失算出手段340から出力された全損失を軸毎に分配する。具体的には、下記の式6に示すように、軸損失の全軸総和に対する軸nの軸損失Lnの比率と、全損失Lとの積を軸nの分配軸損失Ln’として算出する。
【0035】
Ln
Ln’=─────×L・・・(式6)
N
ΣLn
n=1
【0036】
次に、軸電力算出手段370は、モータ出力算出手段310から出力されたモータ毎のモータ出力と、損失分配手段360から出力された軸毎の分配軸損失とを用いて、軸毎の軸電力を求める。具体的には、下記の式7に示すように、モータnのモータ出力Wmnと軸nの分配軸損失Ln’ との和を軸nの軸電力Wnとして算出する。
【0037】
Wn=Wmn+Ln’・・・(式7)
【0038】
以上のように、本実施の形態では、コンバータ出力電力とモータ出力の総和の差で全損失を求め、計算式により算出した軸毎の損失の比率で全損失を軸毎に分配して分配軸損失を求め、その分配軸損失とモータ出力との和を取って軸毎の軸電力を求める。これにより、軸毎のモータ損失やアンプ毎のアンプ損失を算出する際に発生する誤差や考慮できていない損失も考慮に入れた軸毎の軸損失を算出することが可能になるので、計算式により算出した軸毎の損失自体をモータ出力に加算して軸毎の軸電力を求める場合に比べて、より正確な軸毎の軸電力を算出することが可能であるため、工作機械の消費電力を改善するためのより正確な電力情報を提示することが可能となる。すなわち、軸ごとの電力を正確に算出することができる。
【0039】
なお、数値制御装置2iは、図2に示すように、出力積算手段400iをさらに備えてもよい。出力積算手段400iは、予め設定された電力積算期間にわたり、コンバータ電力取得手段300から出力されたコンバータ出力電力と、モータ出力算出手段310から出力されたモータ毎のモータ出力とをそれぞれ積算することで、電力積算期間におけるコンバータ出力電力量とモータ毎のモータ出力量とを算出することができる。
【0040】
また、数値制御装置2iは、図2に示すように、損失積算手段410iをさらに備えてもよい。損失積算手段410iは、予め設定された損失積算期間にわたり、全損失算出手段340から出力された全損失と、損失分配手段360から出力された軸毎の分配軸損失とをそれぞれ積算することで、損失積算期間における全損失量と軸毎の分配軸損失量とを算出することができる。なお、電力積算期間と損失積算期間とが同じであることが望ましい。
【0041】
また、数値制御装置2iは、図2に示すように、電力量表示手段500iをさらに備えてもよい。電力量表示手段500iは、電力および損失の時間積算値である電力量および損失量を表示する手段であり、出力積算手段400iから出力されたコンバータ出力電力量及びモータ毎のモータ出力量と、損失積算手段410iから出力された全損失量及び軸毎の分配軸損失量とを表示することができる。なお、表示する項目については、コンバータ出力電力量、モータ出力量、全損失量、分配軸損失量の全てを表示しても良いし、予め設定された項目を選択的に表示しても良い。また、モータ出力量については、全てのモータのモータ出力量を表示しても良いし、予め設定されたモータのモータ出力量を選択的に表示しても良いし、モータ出力量が大きいモータ順に予め設定された表示軸数分だけ表示しても良い。同様に、分配軸損失量についても、全ての軸の分配軸損失量を表示しても良いし、予め設定された軸の分配軸損失量を選択的に表示しても良いし、分配軸損失量が大きい軸順に予め設定された表示軸数分だけ表示しても良い。
【0042】
さらに電力量表示手段500iは、コンバータ出力電力量に対する全損失量の比率が予め設定された許容損失量比率を超えた場合、または、軸毎のモータ出力量に対する分配軸損失量が予め設定された許容軸損失量比率を超えた場合、アラーム(警告)を表示しても良い。なお、これらの場合に警告を報知する方法は、電力量表示手段500iによるアラームの表示以外に、スピーカ(図示せず)によりアラーム音などの音声で報知する方法であってもよいし、警告灯(図示せず)によりランプを点滅させることなどで報知してもよい。
【0043】
このように、図2に示す数値制御装置2iでは、コンバータ出力電力、モータ出力、全損失、分配軸損失の所定の期間にわたって積分した累積値を算出し、表示することも可能であり、工作機械の消費電力を改善するための必要な情報を提示することが可能である。さらに好ましくは、電力量あるいは損失量の大きい軸を自動で表示することも可能であるため、表示のためのわずらわしい設定を必要とせず、より重要な電力情報を自動で提示することが可能である。
【0044】
また、図2に示す数値制御装置2iでは、コンバータ出力電力量つまり全消費電力量に対する全損失量の比率が所定の値を超えた場合、または、モータ出力量つまり軸消費電力量に対する分配軸損失量の比率が所定の値を超えた場合アラームを表示すること等により、モータの絶縁劣化などモータやアンプの電力伝達に関する異常を報知することができる。そのため、モータやアンプが故障する前にモータやアンプの修理または交換を行うことをユーザに促すことができ、生産性を向上させることが可能であり、また、常に電力効率の良い条件で工作機械を使用することができるため、省エネルギな加工を実現することが可能である。
【0045】
あるいは、数値制御装置2jは、図3に示すように、電力表示手段510jを備えることができる。電力表示手段510jは電力および損失の瞬時値または時間波形を表示する手段であり、コンバータ電力取得手段300から出力されたコンバータ出力電力、モータ出力算出手段310から出力されたモータ毎のモータ出力、全損失算出手段340から出力された全損失、損失分配手段360から出力された軸毎の分配軸損失を表示することができる。なお、表示する項目についは、コンバータ出力電力、モータ出力、全損失、分配軸損失の全てを表示しても良いし、予め設定された項目を選択的に表示しても良い。また、モータ出力ついては、全てのモータのモータ出力を表示しても良いし、予め設定されたモータのモータ出力を選択的に表示しても良いし、モータ出力量が大きいモータ順にモータ出力を予め設定された表示軸数分だけ表示しても良い。同様に、分配軸損失についても、全ての軸の分配軸損失を表示しても良いし、予め設定された軸の分配軸損失を選択的に表示しても良いし、分配軸損失量が大きい軸順に分配軸損失を予め設定された表示軸数分だけ表示しても良い。
【0046】
さらに電力表示手段510jは、コンバータ出力電力に対する全損失の比率が予め設定された最大損失比率を超えた場合、または、軸毎のモータ出力に対する分配軸損失が予め設定された最大軸損失比率を超えた場合、アラーム(警告)を表示しても良い。なお、これらの場合に警告を報知する方法は、電力表示手段510jによるアラームの表示以外に、スピーカ(図示せず)によりアラーム音などの音声で報知する方法であってもよいし、警告灯(図示せず)によりランプを点滅させることなどで報知してもよい。
【0047】
このように、図3に示す数値制御装置2jでは、コンバータ出力電力、モータ出力、全損失、分配軸損失の瞬時値を算出し、その瞬時値又は時間波形を表示することも可能であり、工作機械の消費電力を改善するための必要な情報を提示することが可能である。さらに好ましくは、電力あるいは損失の大きい軸を自動で表示することも可能であるため、表示のためのわずらわしい設定を必要とせず、より重要な電力情報を自動で提示することが可能である。
【0048】
また、コンバータ出力電力つまり全消費電力に対する全損失の比率が所定の値を超えた場合、または、モータ出力つまり軸消費電力に対する分配軸損失の比率が所定の値を超えた場合アラームを表示すること等により、モータの絶縁劣化などモータやアンプの電力伝達に関する異常を通知することができる。そのため、モータやアンプが故障する前にモータやアンプの修理または交換を行うことができ、生産性を向上させることが可能であり、また、常に電力効率の良い条件で工作機械を使用することができるため、省エネルギな加工を実現することが可能である。
【0049】
なお、上記の実施の形態では、コンバータ出力電力やモータ出力電力、軸電力といったように消費電力と回生電力とを特に区別することなく電力として説明したが、力行時の電力を正、回生時の電力を負とし、損失は力行時、回生時に関わらず常に正とすることで、力行時、回生時を特に区別することなく消費電力および回生電力を算出することが可能である。
【0050】
また、上記の実施の形態の変形例では、電力量表示手段500iおよび電力表示手段510jの説明において、画面表示することのみについて説明したが、データ通信により外部機器に出力するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明にかかる数値制御装置は、電力の算出に有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 工作機械駆動部
2、2i、2j 数値制御装置
100 工場電源
110 コンバータ部
12−1〜12−N アンプ
13−1〜13−N モータ
300 コンバータ電力取得手段
310 モータ出力算出手段
320 モータ損失算出手段
330 アンプ損失算出手段
340 全損失算出手段
350 軸損失算出手段
360 損失分配手段
370 軸電力算出手段
400i 出力積算手段
410i 損失積算手段
500i 電力量表示手段
510j 電力表示手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動して対象物を加工する工作機械では、消費電力改善など様々な目的で消費電力または回生電力の情報が求められている。
【0003】
特許文献1には、産業機械のモータ駆動装置において、コンバータ部の入力電圧と入力電流とを測定し、これらの値を用いてモータ駆動装置全体の消費電力を求めることが記載されている。これにより、特許文献1によれば、モータ駆動装置全体(コンバータ部、複数のインバータ部、複数のモータを合わせた全体)の消費電力を正確に算出できるとされている。
【0004】
特許文献2には、産業機械のモータ駆動装置において、モータ速度検出値とモータ電流検出値と予め設定したモータトルク定数からモータ出力を算出し、モータ電流検出値の二乗と巻線抵抗からモータ損失を算出し、モータ電流検出値と予め設定されたアンプ電力損失係数からアンプ損失を算出し、算出したモータ出力とモータ損失、アンプ損失と、予め設定したアンプ固定消費電力、周辺機器の固定消費電力を合計することで産業機械全体の消費電力を算出することが記載されている。これにより、特許文献2によれば、電力計などの特別な機器を使用することなく、産業機械全体の消費電力を計算できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−74918号公報
【特許文献2】特開2010−115063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、コンバータ部の入力電圧と入力電流との各測定値からモータ駆動装置全体の消費電力を求めることが記載されているに過ぎず、インバータ部及びモータが設けられた軸ごとの消費電力を求めることは想定されていない。
【0007】
特許文献2には、産業機械全体および軸ごとの消費電力を計算により求めることが記載されているが、それらを正確に計算することは困難である。
【0008】
すなわち、軸ごとの消費電力を正確に算出するためには、モータ損失やアンプ損失を正確に算出する必要がある。しかし、モータ損失やアンプ損失を正確に算出するために必要な、モータの巻線抵抗など予め設定する定数は、モータの温度などさまざまな条件により変化するため、予め正確に設定しておくことが困難である。特許文献2に記載の技術では、モータ電流検出値の二乗と巻線抵抗からモータ損失を算出し、モータ電流検出値と予め設定されたアンプ電力損失係数からアンプ損失を算出している。このように不正確なモータ損失やアンプ損失をモータ出力に加算して軸ごとの消費電力を算出すると、その値も不正確なものとなってしまう。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、軸ごとの電力を正確に算出することができる数値制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の1つの側面にかかる数値制御装置は、交流電力を直流電力に変換するコンバータ部と前記コンバータ部で変換された直流電力を交流電力に変換する複数のアンプと前記アンプで変換された交流電力によりそれぞれ駆動する複数のモータとを有し前記アンプ及び前記モータが軸ごとに設けられた工作機械駆動部の電力を算出する数値制御装置であって、前記コンバータ部の出力電力をコンバータ出力電力として取得するコンバータ電力取得手段と、前記モータの出力をモータ出力として軸ごとに算出するモータ出力算出手段と、前記コンバータ出力電力と前記モータ出力の全軸に関する総和との差を全損失として算出する全損失算出手段と、前記モータの損失をモータ損失として軸ごとに算出するモータ損失算出手段と、前記アンプの損失をアンプ損失として軸ごとに算出するアンプ損失算出手段と、前記モータ損失と前記アンプ損失との和を軸損失として軸ごとに算出する軸損失算出手段と、前記軸損失の全軸に関する総和に対する軸毎の前記軸損失の比率に基づいて、前記全損失を軸毎に分配した損失を分配軸損失として軸ごとに求める損失分配手段と、前記モータ出力と前記分配軸損失との和を軸電力として軸ごとに求める軸電力算出手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸毎のモータ損失やアンプ毎のアンプ損失を算出する際に発生する誤差や考慮できていない損失も考慮に入れた軸毎の軸損失を算出することが可能になるので、軸ごとの消費電力を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態にかかる数値制御装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態の変形例にかかる数値制御装置の構成を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態の変形例にかかる数値制御装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる数値制御装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態.
実施の形態にかかる数値制御装置2について図1を用いて説明する。図1は、数値制御装置2の構成を示すとともに、数値制御装置2の制御対象である工作機械駆動部1の構成も示すブロック図である。なお、図1中の実線は電力供給経路を表し、破線矢印は信号伝達経路を表す。
【0015】
数値制御装置2は、工作機械駆動部1を制御する。また、数値制御装置2は、工作機械駆動部1の電力を算出する。
【0016】
工作機械駆動部1は、1つのコンバータ部110および、それに連なるN個の軸としてアンプ12−1〜12−Nとモータ13−1〜13−Nを軸毎に有する。なお、部材番号におけるハイフン「−」の後の番号は、軸の番号に対応させてある。
【0017】
コンバータ部110は、電力変換回路111及びコンバータ電力測定手段112を有する。工場電源100から供給される三相交流電力は、コンバータ部110の電力変換回路111で直流電力であるコンバータ出力電力に変換され、各軸のアンプ12−1〜12−Nに供給される。
【0018】
コンバータ部110のコンバータ電力測定手段112は、電力変換回路111により変換されたコンバータ出力電力を測定する。各軸のアンプ12−1〜12−Nは、コンバータ部110から供給される直流電力を所望の三相交流電力に変換し、対応するモータ13−1〜13−Nに供給する。各軸のモータ13−1〜13−Nは、対応するアンプ12−1〜12−Nから供給された三相交流電力により駆動する。
【0019】
なお、本実施の形態では、工作機械駆動部1には1つのコンバータ部110とそれにアンプ12−1〜12−N及びモータ13−1〜13−Nが軸毎に連なる構成となっているが、工作機械駆動部1にはその構成が複数備わっていても良い。例えば、工作機械駆動部1には複数のコンバータと各コンバータにアンプ12−1〜12−N及びモータ13−1〜13−Nが軸毎に連なる構成となっていてもよい。
【0020】
また、本実施の形態では、コンバータ電力測定手段112がコンバータ部110に含まれているが、独立した電力計又は電圧計・電流計を用いて、コンバータ出力電力又はコンバータ出力電圧・コンバータ出力電流を計測しても良い。電圧計・電流計によりコンバータ出力電圧・コンバータ出力電流を測定した場合、後述するコンバータ電力取得手段300は、電圧計から出力されたコンバータ出力電圧と電流計から出力されたコンバータ出力電流とを取得し、コンバータ出力電圧とコンバータ出力電流とをかけてコンバータ出力電力を求めることでコンバータ出力電力を取得しても良い。
【0021】
数値制御装置2は、回転速度測定手段200、モータ電流測定手段210、コンバータ電力取得手段300、モータ出力算出手段310、モータ損失算出手段320、アンプ損失算出手段330、全損失算出手段340、軸損失算出手段350、損失分配手段360、及び軸電力算出手段370を有する。
【0022】
回転速度測定手段200は、モータの回転速度をモータ回転速度として測定し、モータ電流測定手段210は、モータに流れる電流をモータ電流として測定する。
【0023】
次に、コンバータ電力取得手段300は、コンバータ電力測定手段112から出力されたコンバータ出力電力Wcを取得する。なお、コンバータ電力測定手段112がコンバータ出力電圧・コンバータ出力電流を出力する場合、コンバータ電力取得手段300は、コンバータ出力電圧・コンバータ出力電流を取得し、コンバータ出力電圧とコンバータ出力電流との積をコンバータ出力電力Wcとして算出することでコンバータ出力電力Wcを取得する。
【0024】
次に、モータ出力算出手段310は、回転速度測定手段200により測定されたモータ毎のモータ回転速度と、モータ電流測定手段210により測定されたモータ毎のモータ電流とを用いて、モータ毎のモータ出力を算出する。具体的には、下記の式1に示すように、モータnのモータ回転数ωnとモータnのモータ電流Imn、および予め設定されたモータnのモータトルク定数Tnの積をモータ出力Wmnとして算出する。
【0025】
Wmn=ωn×(Imn×Tn)・・・(式1)
【0026】
次に、モータ損失算出手段320は、モータ電流測定手段210により測定されたモータ毎のモータ電流を用いて、モータ毎のモータ損失を算出する。具体的には、下記の式2に示すように、モータnのモータ固定消費電力Lfmnおよび、モータnのモータ巻線抵抗Rmnを予め設定しておき、モータnのモータ電流Imnの二乗とモータ巻線抵抗Rmnとの積と、モータnのモータ固定消費電力Lfmnとの和をモータnのモータ損失Lmnとして算出する。なお、本実施の形態ではモータ電流の二乗とモータ巻線抵抗との積と、モータ固定消費電力との和をモータ損失としたが、モータ固定消費電力が小さい場合、モータ電流の二乗とモータ巻線抵抗との積のみをモータ損失としても良い。
【0027】
Lmn=(Imn2×Rmn)+Lfmn・・・(式2)
【0028】
次に、アンプ損失算出手段330は、モータ電流測定手段210により測定されたモータ毎のモータ電流を用いて、アンプ毎のアンプ損失を算出する。具体的には、下記の式3に示すように、アンプnのアンプ固定消費電力Lfanおよび、アンプnのアンプ損失係数Kan、アンプnのアンプ電気抵抗Ranを予め設定しておき、モータnのモータ電流Imnの二乗とアンプnのアンプ電気抵抗Ranとの積と、モータnのモータ電流Imnとアンプnのアンプ損失係数Kanとの積の絶対値と、アンプnのアンプ固定消費電力Lfanとの和をアンプnのアンプ損失Lanとして算出する。なお、モータ電流Imnとアンプ損失係数Kanの積の絶対値をとるのは、力行時においても回生時においても損失は全て正の値にするためである。また、本実施の形態では、モータ電流の二乗とアンプ電気抵抗との積と、モータ電流とアンプ損失係数との積の絶対値と、アンプ固定消費電力との和をアンプ損失としたが、モータ電流の二乗とアンプ電気抵抗との積が小さい場合には、モータ電流の二乗とアンプ電気抵抗との積を無視しても良い。また、モータ電流とアンプ損失係数との積の絶対値が小さい場合には、モータ電流とアンプ損失係数との積の絶対値を無視しても良い。また、アンプ固定消費電力が小さい場合には、アンプ固定消費電力を無視しても良い。
【0029】
Lan=(Imn2×Ran)+|Imn×Kan|+Lfan・・・(式3)
【0030】
次に、全損失算出手段340は、コンバータ電力取得手段300から出力されたコンバータ出力電力と、モータ出力算出手段310から出力されたモータ毎のモータ出力とを用いて、工作機械駆動部1全体の損失を算出する。具体的には、下記の式4に示すように、コンバータ出力電力Wcとモータnのモータ出力Wmnの全モータ総和との差を全損失Lとして算出する。ここでNはコンバータ部110により電力供給される軸数である。
【0031】
N
L=Wc−ΣWmn・・・(式4)
n=1
【0032】
次に、軸損失算出手段350は、モータ損失算出手段320から出力されたモータ毎のモータ損失と、アンプ損失算出手段330から出力されたアンプ毎のアンプ損失とを用いて、軸毎の損失を算出する。具体的には、下記の式5に示すように、モータnのモータ損失Lmnとアンプnのアンプ損失Lanとの和を軸nの軸損失Lnとして算出する。
【0033】
Ln=Lmn+Lan・・・(式5)
【0034】
次に、損失分配手段360は、軸損失算出手段350から出力された軸毎の軸損失を用いて、全損失算出手段340から出力された全損失を軸毎に分配する。具体的には、下記の式6に示すように、軸損失の全軸総和に対する軸nの軸損失Lnの比率と、全損失Lとの積を軸nの分配軸損失Ln’として算出する。
【0035】
Ln
Ln’=─────×L・・・(式6)
N
ΣLn
n=1
【0036】
次に、軸電力算出手段370は、モータ出力算出手段310から出力されたモータ毎のモータ出力と、損失分配手段360から出力された軸毎の分配軸損失とを用いて、軸毎の軸電力を求める。具体的には、下記の式7に示すように、モータnのモータ出力Wmnと軸nの分配軸損失Ln’ との和を軸nの軸電力Wnとして算出する。
【0037】
Wn=Wmn+Ln’・・・(式7)
【0038】
以上のように、本実施の形態では、コンバータ出力電力とモータ出力の総和の差で全損失を求め、計算式により算出した軸毎の損失の比率で全損失を軸毎に分配して分配軸損失を求め、その分配軸損失とモータ出力との和を取って軸毎の軸電力を求める。これにより、軸毎のモータ損失やアンプ毎のアンプ損失を算出する際に発生する誤差や考慮できていない損失も考慮に入れた軸毎の軸損失を算出することが可能になるので、計算式により算出した軸毎の損失自体をモータ出力に加算して軸毎の軸電力を求める場合に比べて、より正確な軸毎の軸電力を算出することが可能であるため、工作機械の消費電力を改善するためのより正確な電力情報を提示することが可能となる。すなわち、軸ごとの電力を正確に算出することができる。
【0039】
なお、数値制御装置2iは、図2に示すように、出力積算手段400iをさらに備えてもよい。出力積算手段400iは、予め設定された電力積算期間にわたり、コンバータ電力取得手段300から出力されたコンバータ出力電力と、モータ出力算出手段310から出力されたモータ毎のモータ出力とをそれぞれ積算することで、電力積算期間におけるコンバータ出力電力量とモータ毎のモータ出力量とを算出することができる。
【0040】
また、数値制御装置2iは、図2に示すように、損失積算手段410iをさらに備えてもよい。損失積算手段410iは、予め設定された損失積算期間にわたり、全損失算出手段340から出力された全損失と、損失分配手段360から出力された軸毎の分配軸損失とをそれぞれ積算することで、損失積算期間における全損失量と軸毎の分配軸損失量とを算出することができる。なお、電力積算期間と損失積算期間とが同じであることが望ましい。
【0041】
また、数値制御装置2iは、図2に示すように、電力量表示手段500iをさらに備えてもよい。電力量表示手段500iは、電力および損失の時間積算値である電力量および損失量を表示する手段であり、出力積算手段400iから出力されたコンバータ出力電力量及びモータ毎のモータ出力量と、損失積算手段410iから出力された全損失量及び軸毎の分配軸損失量とを表示することができる。なお、表示する項目については、コンバータ出力電力量、モータ出力量、全損失量、分配軸損失量の全てを表示しても良いし、予め設定された項目を選択的に表示しても良い。また、モータ出力量については、全てのモータのモータ出力量を表示しても良いし、予め設定されたモータのモータ出力量を選択的に表示しても良いし、モータ出力量が大きいモータ順に予め設定された表示軸数分だけ表示しても良い。同様に、分配軸損失量についても、全ての軸の分配軸損失量を表示しても良いし、予め設定された軸の分配軸損失量を選択的に表示しても良いし、分配軸損失量が大きい軸順に予め設定された表示軸数分だけ表示しても良い。
【0042】
さらに電力量表示手段500iは、コンバータ出力電力量に対する全損失量の比率が予め設定された許容損失量比率を超えた場合、または、軸毎のモータ出力量に対する分配軸損失量が予め設定された許容軸損失量比率を超えた場合、アラーム(警告)を表示しても良い。なお、これらの場合に警告を報知する方法は、電力量表示手段500iによるアラームの表示以外に、スピーカ(図示せず)によりアラーム音などの音声で報知する方法であってもよいし、警告灯(図示せず)によりランプを点滅させることなどで報知してもよい。
【0043】
このように、図2に示す数値制御装置2iでは、コンバータ出力電力、モータ出力、全損失、分配軸損失の所定の期間にわたって積分した累積値を算出し、表示することも可能であり、工作機械の消費電力を改善するための必要な情報を提示することが可能である。さらに好ましくは、電力量あるいは損失量の大きい軸を自動で表示することも可能であるため、表示のためのわずらわしい設定を必要とせず、より重要な電力情報を自動で提示することが可能である。
【0044】
また、図2に示す数値制御装置2iでは、コンバータ出力電力量つまり全消費電力量に対する全損失量の比率が所定の値を超えた場合、または、モータ出力量つまり軸消費電力量に対する分配軸損失量の比率が所定の値を超えた場合アラームを表示すること等により、モータの絶縁劣化などモータやアンプの電力伝達に関する異常を報知することができる。そのため、モータやアンプが故障する前にモータやアンプの修理または交換を行うことをユーザに促すことができ、生産性を向上させることが可能であり、また、常に電力効率の良い条件で工作機械を使用することができるため、省エネルギな加工を実現することが可能である。
【0045】
あるいは、数値制御装置2jは、図3に示すように、電力表示手段510jを備えることができる。電力表示手段510jは電力および損失の瞬時値または時間波形を表示する手段であり、コンバータ電力取得手段300から出力されたコンバータ出力電力、モータ出力算出手段310から出力されたモータ毎のモータ出力、全損失算出手段340から出力された全損失、損失分配手段360から出力された軸毎の分配軸損失を表示することができる。なお、表示する項目についは、コンバータ出力電力、モータ出力、全損失、分配軸損失の全てを表示しても良いし、予め設定された項目を選択的に表示しても良い。また、モータ出力ついては、全てのモータのモータ出力を表示しても良いし、予め設定されたモータのモータ出力を選択的に表示しても良いし、モータ出力量が大きいモータ順にモータ出力を予め設定された表示軸数分だけ表示しても良い。同様に、分配軸損失についても、全ての軸の分配軸損失を表示しても良いし、予め設定された軸の分配軸損失を選択的に表示しても良いし、分配軸損失量が大きい軸順に分配軸損失を予め設定された表示軸数分だけ表示しても良い。
【0046】
さらに電力表示手段510jは、コンバータ出力電力に対する全損失の比率が予め設定された最大損失比率を超えた場合、または、軸毎のモータ出力に対する分配軸損失が予め設定された最大軸損失比率を超えた場合、アラーム(警告)を表示しても良い。なお、これらの場合に警告を報知する方法は、電力表示手段510jによるアラームの表示以外に、スピーカ(図示せず)によりアラーム音などの音声で報知する方法であってもよいし、警告灯(図示せず)によりランプを点滅させることなどで報知してもよい。
【0047】
このように、図3に示す数値制御装置2jでは、コンバータ出力電力、モータ出力、全損失、分配軸損失の瞬時値を算出し、その瞬時値又は時間波形を表示することも可能であり、工作機械の消費電力を改善するための必要な情報を提示することが可能である。さらに好ましくは、電力あるいは損失の大きい軸を自動で表示することも可能であるため、表示のためのわずらわしい設定を必要とせず、より重要な電力情報を自動で提示することが可能である。
【0048】
また、コンバータ出力電力つまり全消費電力に対する全損失の比率が所定の値を超えた場合、または、モータ出力つまり軸消費電力に対する分配軸損失の比率が所定の値を超えた場合アラームを表示すること等により、モータの絶縁劣化などモータやアンプの電力伝達に関する異常を通知することができる。そのため、モータやアンプが故障する前にモータやアンプの修理または交換を行うことができ、生産性を向上させることが可能であり、また、常に電力効率の良い条件で工作機械を使用することができるため、省エネルギな加工を実現することが可能である。
【0049】
なお、上記の実施の形態では、コンバータ出力電力やモータ出力電力、軸電力といったように消費電力と回生電力とを特に区別することなく電力として説明したが、力行時の電力を正、回生時の電力を負とし、損失は力行時、回生時に関わらず常に正とすることで、力行時、回生時を特に区別することなく消費電力および回生電力を算出することが可能である。
【0050】
また、上記の実施の形態の変形例では、電力量表示手段500iおよび電力表示手段510jの説明において、画面表示することのみについて説明したが、データ通信により外部機器に出力するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明にかかる数値制御装置は、電力の算出に有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 工作機械駆動部
2、2i、2j 数値制御装置
100 工場電源
110 コンバータ部
12−1〜12−N アンプ
13−1〜13−N モータ
300 コンバータ電力取得手段
310 モータ出力算出手段
320 モータ損失算出手段
330 アンプ損失算出手段
340 全損失算出手段
350 軸損失算出手段
360 損失分配手段
370 軸電力算出手段
400i 出力積算手段
410i 損失積算手段
500i 電力量表示手段
510j 電力表示手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を直流電力に変換するコンバータ部と前記コンバータ部で変換された直流電力を交流電力に変換する複数のアンプと前記アンプで変換された交流電力によりそれぞれ駆動する複数のモータとを有し前記アンプ及び前記モータが軸ごとに設けられた工作機械駆動部の電力を算出する数値制御装置であって、
前記コンバータ部の出力電力をコンバータ出力電力として取得するコンバータ電力取得手段と、
前記モータの出力をモータ出力として軸ごとに算出するモータ出力算出手段と、
前記コンバータ出力電力と前記モータ出力の全軸に関する総和との差を全損失として算出する全損失算出手段と、
前記モータの損失をモータ損失として軸ごとに算出するモータ損失算出手段と、
前記アンプの損失をアンプ損失として軸ごとに算出するアンプ損失算出手段と、
前記モータ損失と前記アンプ損失との和を軸損失として軸ごとに算出する軸損失算出手段と、
前記軸損失の全軸に関する総和に対する軸毎の前記軸損失の比率に基づいて、前記全損失を軸毎に分配した損失を分配軸損失として軸ごとに求める損失分配手段と、
前記モータ出力と前記分配軸損失との和を軸電力として軸ごとに求める軸電力算出手段と、
を備えることを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記コンバータ出力電力及び前記モータ出力の所定期間における積算値を、それぞれコンバータ出力電力量及びモータ出力量として算出する出力積算手段と、
前記全損失及び前記分配軸損失の所定期間における積算値を、それぞれ全損失量及び分配軸損失量として算出する損失積算手段と、
をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記コンバータ出力電力、前記モータ出力、前記全損失、及び前記分配軸損失のうち少なくとも1つの瞬時値又は時間波形を表示する電力表示手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記コンバータ出力電力量、前記モータ出力量、前記全損失量、及び前記分配軸損失量のうち少なくとも1つを表示する電力量表示手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記コンバータ出力電力に対する前記全損失の比率が予め設定された許容損失比率よりも大きい場合、または、前記モータ出力に対する前記分配軸損失の比率が予め設定された許容軸損失比率よりも大きい場合、警告を報知する報知手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の数値制御装置。
【請求項6】
前記コンバータ出力電力量に対する前記全損失量の比率が予め設定された許容損失量比率よりも大きい場合、または、前記モータ出力量に対する前記分配軸損失量の比率が予め設定された許容軸損失量比率よりも大きい場合、警告を報知する報知手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2又は4に記載の数値制御装置。
【請求項1】
交流電力を直流電力に変換するコンバータ部と前記コンバータ部で変換された直流電力を交流電力に変換する複数のアンプと前記アンプで変換された交流電力によりそれぞれ駆動する複数のモータとを有し前記アンプ及び前記モータが軸ごとに設けられた工作機械駆動部の電力を算出する数値制御装置であって、
前記コンバータ部の出力電力をコンバータ出力電力として取得するコンバータ電力取得手段と、
前記モータの出力をモータ出力として軸ごとに算出するモータ出力算出手段と、
前記コンバータ出力電力と前記モータ出力の全軸に関する総和との差を全損失として算出する全損失算出手段と、
前記モータの損失をモータ損失として軸ごとに算出するモータ損失算出手段と、
前記アンプの損失をアンプ損失として軸ごとに算出するアンプ損失算出手段と、
前記モータ損失と前記アンプ損失との和を軸損失として軸ごとに算出する軸損失算出手段と、
前記軸損失の全軸に関する総和に対する軸毎の前記軸損失の比率に基づいて、前記全損失を軸毎に分配した損失を分配軸損失として軸ごとに求める損失分配手段と、
前記モータ出力と前記分配軸損失との和を軸電力として軸ごとに求める軸電力算出手段と、
を備えることを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記コンバータ出力電力及び前記モータ出力の所定期間における積算値を、それぞれコンバータ出力電力量及びモータ出力量として算出する出力積算手段と、
前記全損失及び前記分配軸損失の所定期間における積算値を、それぞれ全損失量及び分配軸損失量として算出する損失積算手段と、
をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記コンバータ出力電力、前記モータ出力、前記全損失、及び前記分配軸損失のうち少なくとも1つの瞬時値又は時間波形を表示する電力表示手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記コンバータ出力電力量、前記モータ出力量、前記全損失量、及び前記分配軸損失量のうち少なくとも1つを表示する電力量表示手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記コンバータ出力電力に対する前記全損失の比率が予め設定された許容損失比率よりも大きい場合、または、前記モータ出力に対する前記分配軸損失の比率が予め設定された許容軸損失比率よりも大きい場合、警告を報知する報知手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の数値制御装置。
【請求項6】
前記コンバータ出力電力量に対する前記全損失量の比率が予め設定された許容損失量比率よりも大きい場合、または、前記モータ出力量に対する前記分配軸損失量の比率が予め設定された許容軸損失量比率よりも大きい場合、警告を報知する報知手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2又は4に記載の数値制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2012−195985(P2012−195985A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55934(P2011−55934)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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