説明

新規なヘテロ環化合物及びこれを含む有機発光素子

【課題】新規なヘテロ環化合物及びこれを含む有機発光素子を提供する。
【解決手段】下記化学式(1)で表示されるヘテロ環化合物及びこれを含む有機膜を備えた有機発光素子である:


A及びBは、各々独立して、置換または非置換のジベンゾフラン、置換または非置換のジベンゾチオフェン、置換または非置換のカルバゾール、置換または非置換のインダゾール(indazole)及び置換または非置換のフルオレンからなる群から選択される置換または非置換のヘテロ芳香族縮合多環基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の構造を有するヘテロ環化合物及びこれを含む有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置(light-emitting device)は、自発光型表示素子であって、視野角が広く、コントラストに優れるだけではなく、応答時間が速いという長所を有しているために、大きな注目を集めている。この有機発光素子の種類は、発光層(emitting layer)に無機化合物を使用する無機発光素子と、有機化合物を使用する有機発光素子とに大別され、そのうち、特に有機発光素子は、無機発光素子に比べて、輝度、駆動電圧及び応答速度特性に優れ、多色化が可能であるという点で、多くの研究がなされている。有機発光素子は、一般的にアノード/有機発光層/カソードの積層構造を有し、前記アノードと発光層との間、または、発光層とカソードとの間に、正孔注入層及び/または、正孔輸送層及び電子注入層をさらに積層して、アノード/正孔輸送層/有機発光層/カソードの構造、アノード/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/カソードなどの構造を有する。
【0003】
かような有機発光層材料として、アントラセン誘導体が広く知られている。また、電子輸送材料として、公知の物質であるAlq3をはじめ、PBD、PF-6P、PyPySPyPyなどが広く知られている。例えば、フェニルアントラセンの2量体または3量体の化合物を用いた有機発光素子が知られているが、かような化合物を用いた素子は共役系を通じて連結されたアントラセンを2つまたは3つ含んでいるために、エネルギーギャップが小さくなり、青色発光の色純度が落ちる問題点があった。
【0004】
また、かような化合物は、酸化されやすい弱点があって、不純物が生じやすくて精製面で難点があった。かような問題点を解消するために、1,9-位置がナフタレンで置換されたアントラセン化合物やフェニル基のm-位置にアリール基が置換されたジフェニルアントラセン化合物を用いた有機発光素子が知られているが、発光効率が低い短所があった。
また、ナフタレン置換されたモノアントラセン誘導体を用いた有機発光素子が知られているが、発光効率が1cd/A程度と低くて実用的ではなかった。また、フェニルアントラセン構造を有する化合物を用いた有機発光素子が知られているが、かような化合物は、m-位置がアリール基で置換されているために、耐熱性は優秀であるが、発光効率特性が2cd/A程度と低くて満足すべきレベルには達していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一側面は、改善された電気的特性、電荷輸送能及び発光能を有する新規なヘテロ環化合物を提供することである。
本発明の他の側面は、前記ヘテロ環化合物を含む有機発光素子を提供することである。
本発明のさらに他の側面は、前記有機発光素子を備えた平板表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によって、下記化学式(1)で表示されるヘテロ環化合物が提供される:
【化1】

前記化学式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々独立して、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、置換または非置換のC1-C60のアルキル基、置換または非置換のC5-C60のアリール基、C5-C60のアリール基で置換されたアミノ基、置換または非置換のC3-C60のヘテロアリール基、または、置換または非置換のC6-C60の縮合多環基を表し、
A及びBは、各々独立して、置換または非置換のジベンゾフラン、置換または非置換のジベンゾチオフェン、置換または非置換のカルバゾール、置換または非置換のインダゾール(indazole)及び置換または非置換のフルオレンからなる群から選択される置換または非置換のヘテロ芳香族縮合多環基を表す。
【0007】
前記置換または非置換のジベンゾフラン、置換または非置換のジベンゾチオフェン、置換または非置換のカルバゾール、もしくは、置換または非置換のフルオレンが、それらの2位と3位で、又は、置換または非置換のインダゾールがその5位と6位で、式(1)中のアントラセン骨格と縮合されている、或いは、前記置換または非置換のジベンゾフラン、置換または非置換のジベンゾチオフェン、置換または非置換のカルバゾール、もしくは、置換または非置換のフルオレンが、それらの1位と2位で、又は、置換または非置換のインダゾールがその6位と7位で、式(1)中のアントラセン骨格と縮合されている。
【0008】
本発明の他の具現例によれば、R1ないしR6は、各々独立して、非共有電子対、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、置換または非置換のC1-C20のアルキル基、及び下記化学式2aないし2jからなる群から選択されうる:
【化2】

前記化学式2aないし2jのうち、
Q1は、-C(R50)(R51)-、-N(R52)-、-S-または-O-で表され;
Y1、Y2及びY3は、互いに独立して、-N=、-S-、-O-または-C(R53)=で表され;
Z1、Z2、Ar12、Ar13、R50、R51、R52及びR53は、互いに独立して、水素原子、重水素、置換または非置換のC1-C20のアルキル基、置換または非置換のC5-C20のアリール基、置換または非置換のC3-C20のヘテロアリール基、置換または非置換のC6-C20の縮合多環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基及びカルボン酸基からなる群から選択され;
Ar11は、置換または非置換のC1-C20のアルキレン基、置換または非置換のC5-C20のアリーレン基、及び置換または非置換のC3-C20のヘテロアリーレン基からなる群から選択され;
pは、1ないし10の整数であり;
rは、0ないし5の整数であり;
*は、結合手を表す。
【0009】
好ましくは、R1及びR4が、上記化学式2aないし2jからなる群から選択される基であり、R2、R3、R5、R6が水素である。本発明の他の具現例によれば、式(1)のA及びBが、各々独立して、各々独立して、重水素、ハロゲン基、シアノ基、置換または非置換のC1-C20のアルキル基、及び上記化学式2aないし2jからなる群から選択される置換基を有する。
本発明の他の具現例によれば、式(1)のA及びBが、アントラセン骨格と縮合しているベンゼン環以外の部位に、置換基を有する。
本発明の他の具現例によれば、式(1)のA及びBが、ジベンゾチオフェン又はフルオレンである。
本発明の他の具現例によれば、式(1)の化合物の化合構造が、点対称である。
本発明の他の具現例によれば、前記化学式(1)の化合物が、下記化合物のうち、1つでありうる:
【化3】

【0010】
本発明の他の側面によって、第1電極;第2電極;及び前記第1電極及び第2電極間に介在された有機層を備えた有機発光素子であって、前記有機層が請求項1の化学式(1)で表示される化合物を含む第1層を含む有機発光素子が提供される。
本発明の一具現例によれば、前記第1層が正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入及び正孔輸送能を同時に有する機能層;発光層、電子注入層、電子輸送層、または電子注入及び電子輸送能を同時に有する機能層;でありうる。
本発明の他の具現例によれば、前記第1層が発光層であり、前記化学式(1)で表示される化合物が蛍光ホストまたは蛍光ドーパントとして用いられる。
本発明の他の具現例によれば、前記発光層はアントラセン化合物、アリールアミン化合物またはスチリル化合物をさらに含みうる。
本発明の他の具現例によれば、前記発光層が、燐光化合物をさらに含みうる。
本発明の他の具現例によれば、前記第1層が青色発光層でありうる。
本発明の他の具現例によれば、前記第1層が青色発光層であり、前記化学式(1)の化合物が青色ドーパントとして用いられる。
本発明の他の具現例によれば、前記有機層が正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入層及び正孔輸送能を同時に有する機能層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層またはこれらのうち、2つ以上の組合わせをさらに含みうる。
本発明の他の具現例によれば、前記正孔注入層、前記正孔輸送層、または、前記正孔注入能及び正孔輸送能を同時に有する機能層のうち、少なくとも1つが、電荷生成物質をさらに含みうる。
本発明の他の具現例によれば、前記電子輸送層が電子輸送性有機物質及び金属含有物質を含みうる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一具現例によるヘテロ環化合物は、優秀な発光特性及び電荷輸送能を有しており、赤色、緑色、青色、白色などほぼ全カラーの蛍光及び燐光素子に適合した電子注入材または電子輸送材、又は、緑色、青色、白色蛍光素子の発光材料として有用であり、これを用いて高効率、低電圧、高輝度、長寿命の有機発光素子を製作しうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一具現例による有機発光素子の構造を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一側面によって、下記化学式(1)で表示されるヘテロ環化合物が提供される:
【化4】

前記化学式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々独立して、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、置換または非置換のC1-C60のアルキル基、置換または非置換のC5-C60のアリール基、C5-C60のアリール基で置換されたアミノ基、置換または非置換のC3-C60のヘテロアリール基、または、置換または非置換のC6-C60の縮合多環基を表し、
A及びBは、各々独立して、置換または非置換のジベンゾフラン、置換または非置換のジベンゾチオフェン、置換または非置換のカルバゾール、置換または非置換のインダゾール(indazole)及び置換または非置換のフルオレンからなる群から選択される置換または非置換のヘテロ芳香族縮合多環基を表す。
【0014】
好ましくは、前記置換または非置換のジベンゾフラン、置換または非置換のジベンゾチオフェン、置換または非置換のカルバゾール、もしくは、置換または非置換のフルオレンが、それらの2位と3位で、又は、置換または非置換のインダゾールがその5位と6位で、式(1)中のアントラセン骨格と縮合され、或いは、前記置換または非置換のジベンゾフラン、置換または非置換のジベンゾチオフェン、置換または非置換のカルバゾール、もしくは、置換または非置換のフルオレンが、それらの1位と2位で、又は、置換または非置換のインダゾールがその6位と7位で、式(1)中のアントラセン骨格と縮合されている。但し、縮合位置は、以下のとおりである。ここで、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾールは基本骨格が線対称であるので、1,2位での縮合は7,8位での縮合も含まれ、2,3位での縮合は6,7位での縮合も含まれ、3、4位での縮合は5,6位での縮合も含まれる。
【化5】

上式で、Mは、炭素、酸素、窒素、又は、硫黄である。
【0015】
上記本発明の化合物は、有機発光素子用発光材料、電子輸送材料または電子注入材料としての機能を有する。該化合物を用いて製造された有機発光素子は、保存時及び駆動時の耐久性が高い。
【0016】
本発明の一具現例によれば、式(1)のアントラセン骨格、A及びBは、各々独立してハロゲン基、シアノ基、置換または非置換のC1-C20のアルキル基、及び下記化学式2aないし2jからなる群から選択される置換基を有する:
【化6】

前記化学式2aないし2jのうち、 Q1は、-C(R50)(R51)-、-N(R52)-、-N(-*)-、-S-または-O-で表され; Y1、Y2及びY3は、互いに独立して、-N=、-N(-*)-、-S-、-O-または-C(R53)=で表され; Z1、Z2、Ar12、Ar13、R50、R51、R52及びR53は、互いに独立して、水素原子、重水素、置換または非置換のC1-C20のアルキル基、置換または非置換のC5-C20のアリール基、置換または非置換のC3-C20のヘテロアリール基、置換または非置換のC6-C20の縮合多環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基及びカルボン酸基からなる群から選択され; Ar11は、置換または非置換のC1-C20のアルキレン基、置換または非置換のC5-C20のアリーレン基、及び置換または非置換のC3-C20のヘテロアリーレン基からなる群から選択され;
pは、1ないし10の整数であり;rは、0ないし5の整数であり;
*は結合手を表す。
【0017】
好ましくは、R1及びR4が、上記化学式2aないし2jからなる群から選択される基であり、R2、R3、R5、R6が水素又は重水素である。
【0018】
好ましくは、前記化学式(1)の化合物の構造が、点対称である化合物である。前記点対称とは、式(1)のアントラセン骨格の点対称中心を基準に、例えば、R6とR3とが同一であり、R1とR4とが同一であり、R13とR10とが同一であり、X1とX3とが同一である場合を意味する。
【0019】
式(1)のA、Bは、各々独立して、重水素、ハロゲン基、シアノ基、置換または非置換のC1-C20のアルキル基、及び上記化学式2aないし2jからなる群から選択される置換基を有していてよい。該置換基を有する場合、式(1)のアントラセン骨格と縮合されているベンゼン環以外の部位に有していてもよい。
【0020】
好ましくは、式(1)のA、Bが、ジベンゾチオフェン又はフルオレンである。
【0021】
以下、本発明の化学式で用いられた基のうち、代表的な基の定義をみれば、次の通りである(置換基を限定する炭素数は非制限的なものであって、置換基の特性を限定しない)。前記化学式で、非置換のC1-C60アルキル基は、直鎖又は分枝状であり、その非制限的な例としては、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、iso-アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノナニル、ドデシルなどが挙げられ、前記アルキル基のうち、1つ以上の水素原子は、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、燐酸基やその塩、またはC1-C10のアルキル基、C1-C10のアルコキシ基、C2-C10のアルケニル基、C2-C10のアルキニル基、C6-C16のアリール基、またはC4-C16のヘテロアリール基で置換しうる。
【0022】
前記化学式で、非置換のC2-C60のアルケニル基は、前記アルキル基に1つ以上の炭素二重結合を含有していることを意味する。例えば、エテニル、プロペニル、ブテニルなどがある。これら非置換されたアルケニル基のうち、少なくとも1つ以上の水素原子は、前述した置換されたアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
前記化学式で、非置換のC2-C60のアルキニル基は、前記定義されたようなアルキル基に1つ以上の炭素三重結合を含有していることを意味する。例えば、アセチレン、プロピレン、フェニルアセチレン、ナフチルアセチレン、イソプロピルアセチレン、t-ブチルアセチレン、ジフェニルアセチレンなどがある。これらアルキニル基のうち、少なくとも1つ以上の水素原子は、前述した置換されたアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0023】
前記化学式で、C3-C60のシクロアルキル基は、C3-C60の環状のアルキル基を意味し、前記シクロアルキル基のうち、1つ以上の水素原子は、前述したC1-C60のアルキル基の置換基と同じ置換基で置換可能である。
【0024】
前記化学式で、C1-C60のアルコキシ基とは、-OA(ここで、Aは、前述したようなC1-C60のアルキル基である)の構造を有する基であって、その非制限的な例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、ペントキシなどが挙げられる。これらアルコキシ基のうち、少なくとも1つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0025】
前記化学式中、C5-C60のアリール基は、1つ以上の環を含むカルボサイクリック芳香族基を意味し、2以上の環を有する場合、互いに融合されたり、単一結合などを通じて連結されうる。アリールという用語は、フェニル、ナフチル、アントラセニルのような芳香族系を含む。また、前記アリール基のうち、1つ以上の水素原子は、前述したC1-C60のアルキル基の置換基と同じ置換基で置換可能である。
【0026】
置換または非置換のC5-C60のアリール基の例としては、フェニル基、C1-C10のアルキルフェニル基(例えば、エチルフェニル基)、ハロフェニル基(例えば、o-、m-及びp-フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基)、シアノフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ビフェニル基、ハロビフェニル基、シアノビフェニル基、C1-C10のアルキルビフェニル基、C1-C10のアルコキシビフェニル基、o-、m-、及びp-トリル基、o-、m-及びp-クメニル基、メシチル基、フェノキシフェニル基、(α,α-ジメチルベンゼン)フェニル基、(N,N'-ジメチル)アミノフェニル基、(N,N'-ジフェニル)アミノフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、ハロナフチル基(例えば、フルオロナフチル基)、C1-C10のアルキルナフチル基(例えば、メチルナフチル基)、C1-C10のアルコキシナフチル基(例えば、メトキシナフチル基)、シアノナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントラキノリル基、メチルアントリル基、フェナントリル基、トリフェニレン基、ピレニル基、クリセニル基、エチル-クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネリル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基などが挙げられる。
【0027】
前記化学式中、C3-C60のヘテロアリール基は、N,O,PまたはSのうちから選択された1、2または3個のヘテロ原子を含み、2以上の環を有する場合、これらは互いに融合されたり、単一結合などを通じて連結されうる。非置換のC4-C60のヘテロアリール基の例としては、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、ピリジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、カルバゾリル基、インドリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ジベンゾチオフェン基などが挙げられる。また前記ヘテロアリール基のうち、1つ以上の水素原子は、前述したC1-C60のアルキル基の置換基と同じ置換基で置換可能である。
【0028】
前記化学式中、C5-C60のアリールオキシ基とは、-OA1で表示される基であって、この際、A1は、前記C5-C60のアリール基である。前記アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基などが挙げられる。前記アリールオキシ基のうち、1つ以上の水素原子は、前述したC1-C60のアルキル基の置換基と同じ置換基で置換可能である。
【0029】
前記化学式中、C5-C60のアリールチオ基は、-SA1で表示される基であって、この際、A1は、前記C5-C60のアリール基である。前記アリールチオ基の例としては、ベンゼンチオ基、ナフチルチオ基などが挙げられる。前記アリールチオ基のうち、1つ以上の水素原子は、前述したC1-C60のアルキル基の置換基と同じ置換基で置換可能である。
【0030】
前記化学式中、非置換のC6-C60の縮合多環基とは、1つ以上の芳香族環及び/または1つ以上の非芳香族環が互いに融合された2以上の環を含む置換基を意味し、全体として芳香性を有していないという点で、アリール基またはヘテロアリール基と区別される。
【0031】
本発明の化合物は、下記式で示すとおり、公知の薗頭カップリング(Sonogashira coupling)、鈴木カップリング(Suzuki coupling)及び環化(cyclization)反応を経て製造することができる。
【化7】

【0032】
本発明の前記化合物の具体的な例として、下記表1ないし表2の1Aないし14Gbの化合物が挙げられる。しかし、本発明の化合物が、これら化合物に限定されるものではない。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【0033】
好ましい化合物の例として、以下のものが挙げられる。
【化8】

【0034】
本発明の一具現例による有機発光素子は、第1電極、第2電極、及び前記第1電極及び第2電極間に介在された有機層を備え、前記有機層は、前記化学式(1)で表示されるヘテロ環化合物を含む第1層を含む。
【0035】
前記第1層は、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入及び正孔輸送能を同時に有する機能層;発光層、電子注入層、電子輸送層、または電子注入及び電子輸送能を同時に有する機能層;でありうる。
【0036】
または、前記第1層が発光層であり、前記化学式(1)で表示される化合物は、蛍光ホストまたは蛍光ドーパントとして用いられる。
【0037】
本発明の一具現例によれば、前記有機層は、発光層、正孔輸送層及び電子輸送層を含み、前記第1層は、発光層であり、前記発光層は公知のアントラセン化合物、アリールアミン化合物またはスチリル化合物をさらに含みうる。
前記アントラセン化合物、アリールアミン化合物またはスチリル化合物のうち、1つ以上の水素原子は、前述したC1-C60のアルキル基の置換基と同じ置換基で置換可能である。前記アリールアミンは、C5-C60のアリール基で置換されたアミノ基を意味する。
【0038】
本発明の一具現例による有機発光素子の有機層は、発光層、正孔輸送層及び電子輸送層を含み、前記第1層は、発光層であり、該発光層は、公知の燐光化合物をさらに含みうる。
本発明の一具現例による有機発光素子の第1層は、青色発光層でありうる。前記有機発光素子の第1層が青色発光層である場合、前記化学式(1)の化合物は、青色ドーパントとして用いられる。
【0039】
一方、前記第1電極はアノードであり、前記第2電極はカソードであるが、これと反対の場合ももちろん可能である。
【0040】
例えば、本発明の一具現例による有機発光素子は、第1電極/正孔注入層/発光層/第2電極、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/第2電極または、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極構造を有することができる。または、前記有機発光素子は、第1電極/正孔注入能及び正孔輸送能を同時に有する単一膜/発光層/電子輸送層/第2電極または、第1電極/正孔注入能及び正孔輸送能を同時に有する単一膜/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極構造を有することができる。または、前記有機発光素子は、第1電極/正孔輸送層/発光層/電子注入及び電子輸送能を同時に有する単一膜/第2電極、第1電極/正孔注入層/発光層/電子注入及び電子輸送能を同時に有する単一膜/第2電極、または、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入及び電子輸送能を同時に有する単一膜/第2電極構造を有することができる。
【0041】
本発明の一具現例による有機発光素子は、前面発光型、背面発光型など多様な構造で適用可能である。
【0042】
本発明の一具現例による有機発光素子の前記有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入層及び正孔輸送能を同時に有する機能層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層またはこれらのうち、2つ以上の組合わせをさらに含みうるが、これに制限されるものではない。前記正孔注入層、前記正孔輸送層、または、前記正孔注入能及び正孔輸送能を同時に有する機能層のうち、少なくとも1つは、本発明の一具現例によるヘテロ環化合物、公知の正孔注入材料及び公知の正孔輸送材料以外に、膜の伝導率などを向上させるために、電荷生成物質をさらに含みうる。
【0043】
前記電荷生成物質は、例えば、p-ドーパントでありうる。前記p-ドーパントの非制限的な例としては、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)及び2,3,5,6-テトラフルオロ-テトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)のようなキノン誘導体;タングステン酸化物及びモリブデン酸化物のような金属酸化物;及び下記化合物100のようなシアノ基-含有化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化9】

【0044】
前記正孔注入層、前記正孔輸送層、または、前記正孔注入能及び正孔輸送能を同時に有する機能層が前記電荷生成物質をさらに含む場合、前記電荷生成物質は、前記層中に均一に分散され得る。
【0045】
本発明の一具現例による有機発光素子の電子輸送層は、電子輸送性有機化合物及び金属含有物質を含みうる。前記電子輸送性有機化合物の非制限的な例としては、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン);及び下記化合物101及び102のようなアントラセン系化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化10】

【0046】
前記金属-含有物質は、Li錯体を含みうる。前記Li錯体の非制限的な例としては、リチウムキノレート(LiQ)または下記化合物103などが挙げられる:
【化11】

【0047】
以下、本発明による有機発光素子の製造方法を図1に示された有機発光素子を参照して説明する。図1の有機発光素子は、基板(図示せず)、第1電極(アノード)、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及び第2電極(カソード)を備えている。
【0048】
まず、基板上部に高い仕事関数を有する第1電極用物質を蒸着法またはスパッタリング法などによって形成して第1電極を形成する。前記第1電極は、アノードまたはカソードでありうる。ここで、基板としては、通常の有機発光素子で用いられる基板を用いるが、機械的強度、熱的安定性、透明性、表面平滑性、取扱容易性及び防水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板が望ましい。第1電極用物質としては、伝導性に優れた酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、Al、Ag、Mgなどが用いられ、透明電極または反射電極として形成されうる。
【0049】
次いで、前記第1電極上部に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法(Langmuir-Blodgett)のような多様な方法を用いて、正孔注入層(HIL)を形成しうる。
真空蒸着法によって正孔注入層を形成する場合、その蒸着条件は、正孔注入層の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層の構造及び熱的特性などによって異なるが、一般的に蒸着温度100ないし500℃、真空度10-8ないし10-3torr、蒸着速度0.01ないし100Å/secの範囲で適切に選択することが望ましい。
【0050】
スピンコーティング法によって正孔注入層を形成する場合、そのコーティング条件は、正孔注入層の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層の構造及び熱的特性によって異なるが、約2000rpmないし5000rpmのコーティング速度、コーティング後の溶媒の除去のための熱処理温度は、約80℃ないし200℃の温度範囲で適切に選択することが望ましい。
【0051】
前記正孔注入層物質としては、公知の正孔注入材料が用いられるが、例えば、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、m-MTDATA[4,4’,4''-tris(3-methylphenylphenylamino)triphenylamine]、NPB(N,N'-ジ(1-ナフチル)-N,N'-ジフェニルベンジジン(N,N'-di(1-naphthyl)-N,N'-diphenylbenzidine))、TDATA、2T-NATA、Pani/DBSA(Polyaniline/Dodecylbenzenesulfonic acid:ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PEDOT/PSS(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)/Poly(4-styrenesulfonate):ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート))、Pani/CSA(Polyaniline/Camphorsulfonic acid:ポリアニリン/カンファースルホン酸)またはPANI/PSS(Polyaniline)/Poly(4-styrenesulfonate):ポリアニリン)/ポリ(4-スチレンスルホネート))などが用いられるが、これらに限定されない。
【化12】

【0052】
前記正孔注入層の厚さは、約100Åないし10000Å、望ましくは、100Åないし1000Åでありうる。前記正孔注入層の厚さが前記範囲を満足する場合、駆動電圧の上昇なしに、優秀な正孔注入特性が得られる。
【0053】
次いで、前記正孔注入層上に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法のような多様な方法を用いて正孔輸送層(HTL)を形成しうる。真空蒸着法及びスピンコーティング法によって、正孔輸送層を形成する場合、その蒸着条件及びコーティング条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0054】
また、前記正孔輸送層物質は、公知の正孔輸送層物質が用いられるが、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、NPB、N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ジフェニル-[1、1-ビフェニル]-4,4'-ジアミン(TPD)などの芳香族縮合環を有するアミン誘導体などを使用しうる。
【化13】

【0055】
前記正孔輸送層の厚さは、約50Åないし1000Å、望ましくは、100Åないし600Åでありうる。前記正孔輸送層の厚さが前述したような範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに優秀な正孔輸送特性が得られる。
【0056】
次いで、前記正孔輸送層上に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法のような方法を用いて発光層(EML)を形成しうる。真空蒸着法及びスピンコーティング法により発光層を形成する場合、その蒸着条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0057】
前記発光層は、前述したような化学式(1)で表示されるヘテロ環化合物を含みうる。例えば、化学式(1)で表示されるヘテロ環化合物は、ホストまたはドーパントとして用いられる。好ましくは、化学式(1)で表示されるヘテロ環化合物は、ドーパントとして使用される。前記ドーパントの場合、公知の蛍光ホスト又は公知の燐光ホストを使用しうる。
【0058】
例えば、公知のホストとしては、下記に示す、Alq3、CBP(4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル)、PVK(ポリ(n-ビニルカルバゾール))、9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン(ADN)、TCTA、TPBI(1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(1,3,5-tris(N-phenylbenzimidazole-2-yl)benzene))、TBADN(3-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン)、E3、DSA(ジスチリルアリーレン)などが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【化14】

【0059】
一方、公知の赤色ドーパントとして、PtOEP、Ir(piq)3、Btp2Ir(acac)、DCJTBなどが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【化15】

【0060】
また、公知の緑色ドーパントとして、Ir(ppy)3(ppy=フェニルピリジン)、Ir(ppy)2(acac)、Ir(mpyp)3、C545Tなどが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【化16】

【0061】
一方、青色ドーパントとして、前述したような化学式(1)で表示されるヘテロ環化合物を使用するか、または公知の青色ドーパントとして、下記のF2Irpic、(F2ppy)2Ir(tmd)、Ir(dfppz)3、ter-フルオレン(fluorene)、4,4'-ビス(4-ジフェニルアミノスチリル)ビフェニル(DPAVBi)、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレン(TBP)などが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【化17】

【0062】
前記ドーパントの含有量は、発光層形成材料100重量部(すなわち、ホストとドーパントとの総重量を、100重量とする)を基準として、0.1ないし20重量部、特に0.5〜12重量部であることが望ましい。ドーパントの含有量が前記範囲を満足するならば、濃度消光現象が実質的に防止されうる。
【0063】
前記発光層の厚さは、約100Åないし1000Å、望ましくは、200Åないし600Åでありうる。前記発光層の厚さが前記範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに優秀な発光特性が得られる。
【0064】
発光層が燐光ドーパントを含む場合、三重項励起子、または、正孔が電子輸送に拡散される現象を防止するために、正孔阻止層(HBL)を発光層上に形成しうる(図1には、図示されていない)。この際、使用可能な正孔阻止層物質は、特に制限されず、公知の正孔阻止層物質のうちから任意に選択して利用しうる。例えば、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、Balq、BCPなどが用いられる。
前記正孔阻止層の厚さは、約50Åないし1000Å、望ましくは、100Åないし300Åでありうる。前記正孔阻止層の厚さが前記範囲である場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに、三重項励起子または正孔の電子輸送層への拡散防止が可能である。
【0065】
次いで、電子輸送層(ETL)を真空蒸着法、またはスピンコーティング法、キャスト法などの多様な方法を用いて形成する。真空蒸着法及びスピンコーティング法により電子輸送層を形成する場合、その条件は使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0066】
前記電子輸送層物質は、前述したような化学式(1)で表示されるヘテロ環化合物でありうる。または公知の電子輸送層形成材料のうちから任意に選択されうる。例えば、その例としては、キノリン誘導体、特に以下に示す、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、TAZ、Balqのような公知の材料を使用できるが、これらに限定されるものではない。
【化18】

【0067】
前記電子輸送層の厚さは、約100Åないし1000Å、望ましくは、100Åないし500Åでありうる。前記電子輸送層の厚さが、前述したような範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに優秀な電子輸送特性が得られる。
【0068】
また電子輸送層上に陰極から電子の注入を容易にする機能を有する物質である電子注入層(EIL)が積層されうる。
電子注入層としては、LiF、NaCl、CsF、Li2O、BaOのような電子注入層の形成材料として公知の任意の物質が用いられる。前記電子注入層の蒸着条件及びコーティング条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
前記電子注入層の厚さは、約1Åないし100Å、望ましくは、5Åないし90Åでありうる。前記電子注入層の厚さが前述したような範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに、優秀な電子注入特性が得られる。
【0069】
最後に、電子注入層上に真空蒸着法やスパッタリング法などの方法を用いて、第2電極を形成しうる。前記第2電極は、カソードまたはアノードとして用いられる。前記第2電極形成用物質としては、低い仕事関数を有する金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を使用しうる。具体例としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)などが挙げられる。また、前面発光素子を得るために、ITO、IZOを用いた透明カソードを用いてもよい。
【0070】
本発明による有機発光素子は、多様な形態の平板表示装置、例えば、受動マトリックス有機発光表示装置及び能動マトリックス有機発光表示装置に備えられうる。特に、能動マトリックス有機発光表示装置に備えられる場合、基板側に備えられた第1電極は、画素電極として、薄膜トランジスタのソース電極またはドレイン電極と電気的に連結されうる。また、前記有機発光素子は、両面に画面を表示する平板表示装置に備えられうる。
【0071】
また、本発明の一具現例による有機発光素子の有機層が複数個の有機層からなる場合、前記有機層の1つ以上の層は、前記化学式(1)で表示されるヘテロ環化合物を用いて蒸着方法で形成するか、または溶液に製造された化学式(1)の化合物をコーティングする湿式方法でも形成されうる。
【0072】
以下、本発明を化合物の望ましい合成例及び実施例を具体的に例示するが、本発明が下記実施例に限定されることを意味するものではない。
【0073】
[代表合成ルート]
表5ないし表20に示す、化合物1Aないし14Gbの化合物を、以下に示すとおり、園頭カップリング及び鈴木カップリングを用い、最後の段階で環化反応を進行させて合成し、各化合物についてLC-MSとNMRを測定した。なお、化合物の名称は、表1〜表2の縦軸に示す出発物質と、横軸に示す出発物質の組合せを示す。
【化19】

【0074】
代表的合成例 化合物8Aの合成
以下に、代表的な合成例として、化合物8Aの合成方法を示す。他の化合物は、表1〜表2に示す各出発物質を用い、本合成例と同様の方法で合成した。
【化20】

【0075】
中間体1-a の合成
フラスコに3-ヨード-9-フェニル-9H-カルバゾール22g、Pd(PPh3)42.8g(0.04eq)、CuI 914mg(0.08eq)を入れて真空環境にした後、N2雰囲気を作った。ここに、THF200mLを入れて攪拌した。次いで、ここにトリエチルアミン10mL(1.2eq)とTMS-アセチレン10.0g(1.2eq)を徐々に滴加した後、N2、室温条件で2時間攪拌した。溶媒を回転蒸発器を用いて除去し、Et2O 200mLと水150mLとで2回反応物を抽出した。集められた有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、溶媒を蒸発させて得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して中間体1-a 20g(収率99%)を得た。生成された化合物をLC-MSで確認した。 C23H21N1Si1:M+339.14
【0076】
中間体1-bの合成
中間体1-a 4.2gをTHF 50mLに溶かして、THF(1.0M)中のテトラブチルアンモニウムフルオリド 30mL(3eq)を一滴ずつ滴加した後、30分攪拌した。反応液に水50mLを加え、エチルエーテル50mLで3回抽出した。集められた有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、溶媒を蒸発させて得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して、中間体1-b 3.5g(収率95%)を得た。生成された化合物をLC-MSで確認した。C20H13N1:M+ 267.10
【0077】
中間体2-aの合成
1,4-ジブロモ-2,5-ジヨード-ベンゼン2.56g(0.48eq)、Pd(PPh3)4 1.06g(0.07eq)、CuI 350mg(0.14eq)を入れて真空環境にした後、N2雰囲気を作った。ここにTHF 50mLを入れて攪拌した。次いで、トリエチルアミン4.0mL(2.2eq)と中間体1-b3.5g(1eq)とを徐々に滴加した後、N2、室温条件で2時間攪拌した。溶媒を回転蒸発器を用いて除去し、反応液に水50mLを加えてエチルエーテル50mLで3回抽出した。集められた有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、溶媒を蒸発させて得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して中間体2-a 6.32g(収率63%)を得た。生成された化合物をLC-MSで確認した。C47H27Br2N2:M+766.04
【0078】
中間体2-cの合成
2-a 5.0g、2-b(Aldrichより入手可能) 3.27g(2.2eq)、Pd(PPh3)4 750mg(0.10eq)、K2CO3 9.0g(10eq)をTHF100mLと蒸溜水30mLとに溶かした。120℃に昇温して還流しつつ24時間攪拌した。反応液を室温に冷やした後、水100mLとジエチルエーテル100mLで3回抽出した。集められた有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、溶媒を蒸発して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して中間体2-c 5.1g(収率81%)を得た。生成された化合物をLC-MSで確認した。C70H40N2S2:M+972.26
【0079】
化合物8Aの合成
2-c 3gをメチレンクロライド50mLに溶かしてトリフルオロ酢酸8.6mL(40eq)を徐々に滴加し、1時間室温攪拌した。次いで、水100mLとジエチルエーテル100mLとを反応液に添加して3回抽出した。集められた有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、溶媒を蒸発して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して化合物8A 2.7g(収率90%)を得た。生成された化合物をLC-MSで確認した。C70H40N2S2:M+972.26
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
【表6】

【0084】
【表7】

【0085】
【表8】

【0086】
【表9】

【0087】
【表10】

【0088】
【表11】

【0089】
【表12】

【0090】
【表13】

【0091】
【表14】

【0092】
【表15】

【0093】
【表16】

【0094】
【表17】

【0095】
【表18】

【実施例1】
【0096】
アノードとして、コーニング(Corning)15Ω/cm2(1200Å)ITOガラス基板を50mmx50mmx0.7mmサイズに切ってイソプロピルアルコールと純水とを用いて各5分間超音波洗浄した後、30分間紫外線を照射してオゾンに露出させて洗浄し、真空蒸着装置にこのガラス基板を設けた。
前記基板上に、まず正孔注入層として公知の物質である2-TNATAを真空蒸着して600Å厚に形成した後、次いで正孔輸送性化合物として公知の物質である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(以下、NPB)を300Å厚に真空蒸着して正孔輸送層を形成した。
【化21】

前記正孔輸送層上に公知の青色蛍光ホストとして公知の化合物であるDNAを使用し、青色蛍光ドーパントとして公知の化合物である1,4-ビス-(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(以下、DPVBi)を重量比98:2で同時蒸着して300Å厚に発光層を形成した。
次いで、前記発光層上に電子輸送層として本発明の化合物である6Aを300Å厚に蒸着した後、この電子輸送層上にハロゲン化アルカリ金属であるLiFを電子注入層として10Å厚に蒸着し、Alを3000Å(陰極電極)の厚さに真空蒸着してLiF/Al電極を形成することによって有機発光素子を製造した。
【実施例2】
【0097】
実施例1で、電子輸送層の形成時、前記化合物6Aの代わりに、本発明の化合物3Gaを用いたことを除いては、実施例1と同一にして有機発光素子を製作した。
【実施例3】
【0098】
実施例1で、発光層の形成時、公知のホストであるDNAを用い、公知のドーパントであるDPVBiの代わりに、本発明の化合物10Faを用いて、前記発光層上に電子輸送層として公知のAlq3を用いたことを除いては、実施例1と同一にして有機発光素子を製作した。
【実施例4】
【0099】
発光層の形成時、前記化合物10Faの代わりに、化合物11Gaを用いたことを除いては、実施例3と同一にして有機発光素子を製作した。
【実施例5】
【0100】
発光層の形成時、前記化合物10Faの代わりに、化合物4Gbを用いたことを除いては、実施例3と同一にして有機発光素子を製作した。
【実施例6】
【0101】
実施例1と同じ方法で発光層を形成する時、青色蛍光ホストとしてDNAを用いて、青色蛍光ドーパントとして本発明の化合物4Gbを用いて、電子輸送層として本発明の化合物3Gaを用いたことを除いては、実施例1と同一にして有機発光素子を製作した。
【実施例7】
【0102】
実施例1と同じ方法で発光層を形成する時、青色蛍光ホストとしてDNAを用い、青色蛍光ドーパントとして本発明の化合物11Gaを用い、電子輸送層として本発明の化合物3Gaを用いたことを除いては、実施例1と同一にして有機発光素子を製作した。
【実施例8】
【0103】
実施例1と同じ方法で発光層を形成する時、青色蛍光ホストとしてDNAを用い、青色蛍光ドーパントとして本発明の化合物10Faを用い、電子輸送層として本発明の化合物6Aを用いたことを除いては、実施例1と同一にして有機発光素子を製作した。
【0104】
比較例1
発光層の形成時、公知の青色蛍光ホストとして公知の化合物であるDNAを用い、青色蛍光ドーパントとして公知の化合物である1,4-ビス-(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(以下、DPVBi)を用い、電子輸送層として本発明の化合物6Aの代わりに、Alq3を用いたことを除いては、実施例1と同一にして有機発光素子を製作した。
【0105】
本発明による化学式(1)の構造を有する化合物を発光層のドーパントとして用い、また電子輸送層材料として有機発光装置に用いた結果、いずれも公知の物質であるDPVBiそしてAlq3と比較して、駆動電圧が0.7V以上低くなり、効率及び寿命が大幅に向上した優れたI-V-L特性を示し、輝度及び寿命改善の効果が抜群であった。実施例1、2では、本発明の化合物を電子輸送層として使用し、比較例1に対して、駆動電圧が1.0V改善し、効率が145%及び寿命が150%向上した。実施例3ないし5では、本発明の化合物をドーパントとして使用し、比較例1に対して、駆動電圧が1.0V減少、効率及び寿命が150%以上改善される効果を示した。実施例6ないし8では、本発明の化合物を電子輸送層とドーパント材料として導入し、駆動電圧が1.4V減少し、効率が150%、寿命が170%改善される結果を得た。各実施例の素子特性及び寿命結果を要約して下表21に表した。
【0106】
【表19】

【0107】
本発明について前記合成例及び実施例を参考にして説明したが、これは例示的なものに過ぎず、本発明が属する技術分野の当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他実施例が可能であるという点を理解できるである。よって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決まるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、有機発光素子関連の技術分野に好適に適用されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表示される化合物:
【化1】

[前記化学式(1)中、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々独立して、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、置換または非置換のC1-C50のアルキル基、置換または非置換のC5-C60のアリール基、C5-C50のアリール基で置換されたアミノ基、置換または非置換のC3-C60のヘテロアリール基、または、置換または非置換のC6-C60の縮合多環基を表し、
A及びBは、各々独立して、置換または非置換のジベンゾフラン、置換または非置換のジベンゾチオフェン、置換または非置換のカルバゾール、置換または非置換のインダゾール(indazole)及び置換または非置換のフルオレンからなる群から選択される置換または非置換のヘテロ芳香族縮合多環基を表す。]
【請求項2】
前記置換または非置換のジベンゾフラン、置換または非置換のジベンゾチオフェン、置換または非置換のカルバゾール、もしくは、置換または非置換のフルオレンが、それらの2位と3位で、又は、置換または非置換のインダゾールがその5位と6位で、式(1)中のアントラセン骨格と縮合されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記置換または非置換のジベンゾフラン、置換または非置換のジベンゾチオフェン、置換または非置換のカルバゾール、もしくは、置換または非置換のフルオレンが、それらの1位と2位で、又は、置換または非置換のインダゾールがその6位と7位で、式(1)中のアントラセン骨格と縮合されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R1ないしR6は、各々独立して、水素、重水素、ハロゲン基、シアノ基、置換または非置換のC1-C20のアルキル基、及び下記化学式2aないし2jからなる群から選択される基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物:
【化2】

前記化学式2aないし2jのうち、
-Q1-は、-C(R50)(R51)-、-N(R52)-、-N(-*)-、-S-または-O-で表され;
Y1、Y2及びY3は、互いに独立して、-N=、-N(-*)-、-S-、-O-または-C(R53)=で表され;
Z1、Z2、Ar12、Ar13、R50、R51、R52及びR53は、互いに独立して、水素原子、重水素、置換または非置換のC1-C20のアルキル基、置換または非置換のC5-C20のアリール基、置換または非置換のC3-C20のヘテロアリール基、置換または非置換のC6-C20の縮合多環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基及びカルボン酸基からなる群から選択され;
Ar11は、置換または非置換のC1-C20のアルキレン基、置換または非置換のC5-C20のアリーレン基、及び置換または非置換のC3-C20のヘテロアリーレン基からなる群から選択され;
pは、1ないし10の整数であり;
rは、0ないし5の整数であり;
*は、結合手を表す。
【請求項5】
R1及びR4が、下記化学式2aないし2jからなる群から選択される基であり、R2、R3、R5、R6が水素または重水素である、請求項4に記載の化合物:
【化3】

前記化学式2aないし2jのうち、
Q1は、-C(R50)(R51)-、-N(R52)-、-N(-*)-、-S-または-O-で表され;
Y1、Y2及びY3は、互いに独立して、-N=、-N(-*)-、-S-、-O-または-C(R53)=で表され;
Z1、Z2、Ar12、Ar13、R50、R51、R52及びR53は、互いに独立して、水素原子、重水素、置換または非置換のC1-C20のアルキル基、置換または非置換のC5-C20のアリール基、置換または非置換のC3-C20のヘテロアリール基、置換または非置換のC6-C20の縮合多環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基及びカルボン酸基からなる群から選択され;
Ar11は、置換または非置換のC1-C20のアルキレン基、置換または非置換のC5-C20のアリーレン基、及び置換または非置換のC3-C20のヘテロアリーレン基からなる群から選択され;
pは、1ないし10の整数であり;
rは、0ないし5の整数であり;
*は、結合手を表す。
【請求項6】
式(1)のA及びBが、各々独立して、ハロゲン基、シアノ基、置換または非置換のC1-C20のアルキル基、及び下記化学式2aないし2jからなる群から選択される置換基を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物。
【化4】

Q1は、-C(R50)(R51)-、-N(R52)-、-S-または-O-で表され;
Y1、Y2及びY3は、互いに独立して、-N=、-S-、-O-または-C(R53)=で表され;
Z1、Z2、Ar12、Ar13、R50、R51、R52及びR53は、互いに独立して、水素原子、重水素、置換または非置換のC1-C20のアルキル基、置換または非置換のC5-C20のアリール基、置換または非置換のC3-C20のヘテロアリール基、置換または非置換のC6-C20の縮合多環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基及びカルボン酸基からなる群から選択され;
Ar11は、置換または非置換のC1-C20のアルキレン基、置換または非置換のC5-C20のアリーレン基、及び置換または非置換のC3-C20のヘテロアリーレン基からなる群から選択され;
pは、1ないし10の整数であり;
rは、0ないし5の整数であり;
*は、結合手を表す。
【請求項7】
式(1)のA及びBが、アントラセン骨格と縮合しているベンゼン環以外の部位に、置換基を有する、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
式(1)のA及びBが、ジベンゾチオフェン又はフルオレンである、請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
化合構造が、点対称である請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
前記化学式(1)の化合物が、下記化合物のうち、1つである請求項9に記載の化合物。
【化5】

【請求項11】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極及び第2電極間に介在された有機層と、を備えた有機発光素子であって、
前記有機層が、請求項1ないし10のうち、いずれか1項に記載の化学式(1)で表示される化合物を含む第1層を含む有機発光素子。
【請求項12】
前記第1層が、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入及び正孔輸送能を同時に有する機能層、発光層、電子注入層、電子輸送層、または電子注入及び電子輸送能を同時に有する機能層である請求項11に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記第1層が発光層であり、前記化学式(1)で表示される化合物が蛍光ホストまたは蛍光ドーパントとして用いられる請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記発光層はアントラセン、アリールアミン化合物またはスチリル化合物をさらに含む請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記第1層が発光層であり、前記発光層は、燐光化合物をさらに含む請求項11に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記第1層が青色発光層である請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記化学式(1)の化合物が青色ドーパントとして用いられる請求項16に記載の有機発光素子。
【請求項18】
前記有機層が正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入層及び正孔輸送能を同時に有する機能層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層またはこれらのうち、2つ以上の組合わせをさらに含む請求項11〜17のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項19】
前記正孔注入層、前記正孔輸送層、または、前記正孔注入能及び正孔輸送能を同時に有する機能層のうち、少なくとも1つが、電荷生成物質をさらに含む請求項18に記載の有機発光素子。
【請求項20】
前記電子輸送層が電子輸送性有機物質及び金属含有物質を含む請求項18又は19に記載の有機発光素子。

【図1】
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【公開番号】特開2013−43889(P2013−43889A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−179179(P2012−179179)
【出願日】平成24年8月13日(2012.8.13)
【出願人】(512187343)三星ディスプレイ株式會社 (73)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】95,Samsung 2 Ro,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do,Korea
【Fターム(参考)】