新規抗CD98抗体
【解決手段】癌細胞の細胞膜由来のCD98でありかつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質(例えば、LAT1)と複合体を形成しているCD98に特異的結合能を有するヒト抗体およびその機能的断片。
【効果】上記抗体は、LAT1と癌細胞表面で二量体を形成しているCD98に結合し、CD98を発現する癌細胞をADCCやCDCによる免疫システムを用いて特異的に攻撃し、さらにLAT1を介した癌細胞のアミノ酸取り込みを阻害することにより、その増殖を抑制する。よって、この抗体またはその抗体断片を含んでなる、多種の癌に作用し、また癌に特異的で副作用のない癌の予防および治療剤が提供される。
【効果】上記抗体は、LAT1と癌細胞表面で二量体を形成しているCD98に結合し、CD98を発現する癌細胞をADCCやCDCによる免疫システムを用いて特異的に攻撃し、さらにLAT1を介した癌細胞のアミノ酸取り込みを阻害することにより、その増殖を抑制する。よって、この抗体またはその抗体断片を含んでなる、多種の癌に作用し、また癌に特異的で副作用のない癌の予防および治療剤が提供される。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本特許出願は、先に出願された日本国における特許出願である特願2006−105013号(出願日:2006年4月6日)に基づく優先権の主張を伴うものである。特願2006−105013号における全開示内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【発明の背景】
【0002】
本発明は、独立行政法人科学技術振興機構の「アミノ酸輸送蛋白抗体抗癌薬」に関する新技術開発委託に係る開発の成果に係る発明である。
【0003】
発明の分野
本発明は、癌細胞の細胞膜に由来し、かつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質と複合体を形成しているCD98に対し、特異的結合能を有するモノクローナル抗体、およびそれを用いた腫瘍増殖抑制または癌治療の医薬用途に関する。
【0004】
背景技術
癌(悪性腫瘍)は、わが国における死亡原因の第一位を占める。その患者数は年々増加してきており、有効性および安全性の高い薬剤や治療法の開発が強く望まれている。これまでの抗癌剤は、しばしば、癌細胞を特異的に殺す能力が低く、正常な細胞にも作用し、多くの薬物有害反応が起きていた。近年、癌細胞に高発現している分子(癌関連抗原)を標的とした抗癌剤の開発が進んでおり、白血病、乳癌、肺癌などにおいて有効な治療手段となってきている。
【0005】
細胞の細胞膜上に発現している癌関連抗原に対して特異的に結合する抗体は、抗体依存性細胞性細胞傷害活性(antibody dependent cell cytotoxicity(ADCC))や補体依存性細胞傷害活性(complement-dependent cell-mediated cytotoxicity(CDC))等の免疫反応を介して癌細胞を攻撃し、あるいは、癌細胞の増殖に必要な細胞増殖シグナル伝達を抑え癌治療に有用であることが示されてきた。
【0006】
しかしながら、抗体が治療に使われている癌種は、乳癌、難治性慢性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病等限られた癌種であり、また、一つの抗体で多様な癌種の治療に用いることができる抗体は未だにない。そのため、多種の癌細胞に強く結合し抗癌活性を持つ抗体の取得が求められていた。
【0007】
CD98(4F2)は、多種の癌細胞で高発現していることが知られている529アミノ酸残基からなる約80kDaのtype II膜貫通糖タンパク鎖である。これは、アミノ酸輸送活性をもつ約40kDaのタンパク質とジスルフィド結合によりヘテロ二量体を形成し、細胞膜上に発現している。CD98に結合すると考えられているアミノ酸輸送タンパクとしては6種が知られている。CD98は、リンパ球の活性化抗原として同定されたが、細胞増殖シグナル伝達、インテグリンの活性化、細胞融合など多くの生物学的機能に関与すると考えられている(Haynes B. F et al., J. Immunol., (1981), 126, 1409-1414、Lindsten T. et al., Mol. Cell Biol., (1988), 8, 3820-3826、Teixeira S. et al., Eur. J. Biochem., (1991), 202, 819-826、L.A.Diaz Jr. et al., J Biol Regul Homeost Agents., (1998) 12, 25-32)。
【0008】
癌細胞は増殖の優位性を確保する為に様々な仕組みを有している。例えば、癌細胞が、増殖に必要な必須アミノ酸を周辺細胞に対して優先的に取り込むために中性アミノ酸トランスポーターを過剰発現しているのもその一つと考えられる。近年、癌細胞に特異的に高く発現しているアミノ酸トランスポーターL-type amino acid transporter 1(LAT1)がクローニングされた(Kanai et al., J. Biol. Chem. (1998), 273, 23629-23632)。LAT1は、CD98と複合体を形成し、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、ヒスチジン等の大型の側鎖を持つ中性アミノ酸をナトリウムイオン非依存的に輸送する。またLAT1は、脳、胎盤、骨髄、精巣を除く殆どの正常組織では発現が低いか認められないが、大腸癌、胃癌、乳癌、膵癌、腎癌、喉頭癌、食道癌、肺癌等のヒト悪性腫瘍組織でCD98と共に発現が亢進していることが知られている(Yanagida et al., Biochem. Biophys. Acta, (2001), 1514, 291-302)。LAT1の発現を低下させ、アミノ酸取り込みを抑制すると、腫瘍の増殖が抑えられることが癌移植マウスモデルで報告されており(特開2000−157286号公報)、LAT1の活性を抑えることは癌の治療法に有望であると考えられる。
【0009】
ヒトCD98に対する抗体については、ヒトCD98発現細胞株をマウス等の非ヒト哺乳動物に免疫することにより作製されたマウスモノクローナル抗体が報告されている(前掲Haynes et al、Masuko T. et al., Cancer Res., (1986), 46, 1478-1484、およびFreidman AW. et al., Cell. Immunol., (1994), 154, 253-263)。しかし、これら抗CD98抗体がLAT1のアミノ酸取り込みを抑制するかどうかについては知られていない。さらに、LAT1の細胞内領域の抗体は取得されているが、生細胞膜上のLAT1に結合できる抗体は報告されていない。したがって、癌細胞膜上に発現しているCD98あるいはLAT1に結合し、LAT1のアミノ酸取り込みを抑制する抗体が取得されれば、広範囲にわたる癌の優れた治療薬になると考えられる。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは今般、癌細胞の細胞膜由来のCD98でありかつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質と複合体を形成しているCD98に特異的結合能を有する抗体を得ることに成功し、当該抗体が、癌細胞の増殖を抑制する作用を有することから、この性質を用い医薬組成物の有効成分、より具体的には腫瘍の予防または治療剤の有効成分として有用であるとの知見を得た。本発明は係る知見にもとづくものである。
【0011】
よって、本発明は、癌細胞の細胞膜由来のCD98でありかつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質と複合体を形成しているCD98に特異的結合能を有するヒト抗体およびその機能的断片の提供をその目的としている。
【0012】
さらに本発明は、上記の本発明によるヒト抗体およびその機能的断片を有効成分とする医薬組成物または腫瘍の予防または治療剤の提供をその目的としている。
【0013】
そして本発明によるヒト抗体およびその機能的断片は、癌細胞の細胞膜由来のCD98でありかつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質と複合体を形成しているCD98に特異的結合能を有することを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明による医薬組成物または腫瘍の予防または治療剤は、上記本発明によるヒト抗体またはその機能断片を有効成分として含んでなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のヒトCD98/ヒトLAT1発現CT26細胞株に対する結合性を示す図である。
【図2A】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のヒトCD98発現L929細胞株に対する結合性を示す図である。
【図2B】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のヒトCD98発現L929細胞株に対する結合性を示す図である。
【図3】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のツニカマイシン処理K562ヒト細胞株に対する結合性を示す図である。
【図4A】ヒト抗CD98モノクローナル抗体の各種マウス・ヒトキメラCD98発現L929細胞株に対する結合性を示す図である。
【図4B】ヒト抗CD98モノクローナル抗体の各種マウス・ヒトキメラCD98発現L929細胞株に対する結合性を示す図である。
【図5】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のT24ヒト膀胱癌細胞株のアミノ酸取り込み抑制活性を示す図である。
【図6A】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のヒト末梢血T細胞、B細胞、単球細胞に対する結合性を示す図である。
【図6B】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のヒト末梢血T細胞、B細胞、単球細胞に対する結合性を示す図である。
【図7】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のPHA活性化ヒト末梢血T細胞、B細胞に対する結合性を示す図である。
【図8】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のヒト大動脈内皮細胞(HAEC)とヒト大腸癌細胞株(DLD−1)に対する結合性を示す図である。
【図9A】ヒト抗CD98モノクローナル抗体の各種がん細胞株に対する結合性を示す図である。
【図9B】ヒト抗CD98モノクローナル抗体の各種がん細胞株に対する結合性を示す図である。
【図10A】ヒト抗CD98モノクローナル抗体の各種がん細胞株に対する結合性を示す図である。
【図10B】ヒト抗CD98モノクローナル抗体の各種がん細胞株に対する結合性を示す図である。
【図11】ヒト抗CD98モノクローナル抗体K3、3-69-6、C2IgG1を、腫瘍細胞を移植したヌードマウスに投与したときの、個々のマウスでの腫瘍塊の大きさを示す図である。
【図12】90mm3に成長した腫瘍を有する担癌マウスに対し、ヒト抗CD98モノクローナル抗体C2IgG1を100μg/マウス個体で3回隔日投与したときの腫瘍の大きさを測定した結果を示す図である。
【図13】ヒト抗CD98モノクローナル抗体K3、C2IgG1のサル細胞株COS-7に対する交叉反応性を示す図である。
【図14】バーキットリンパ腫細胞株Ramosを移植した担癌マウスにおいて、腫瘍が30〜140mm3に成長してからヒト抗CD98モノクローナル抗体C2IgG1およびRituximabを100mg/マウス個体でそれぞれ3回/週投与したときの腫瘍の大きさを測定した結果を示す図である。
【図15】HPLCで測定した、ヒト抗CD98モノクローナル抗体C2IgG1NSアミノ酸改変抗体の精製後の凝集体含有率を示す図である。
【図16A】ヒト抗CD98モノクローナル抗体K3とC2IgG1、およびC2IgG1の各アミノ酸改変抗体の、ヒトCD98あるいはヒトLAT1強制発現L929細胞に対する結合性を示す図である。
【図16B】ヒト抗CD98モノクローナル抗体K3とC2IgG1、C2IgG1の各アミノ酸改変抗体の、ヒト大腸癌細胞株(DLD-1)、バーキットリンパ腫細胞株(Ramos)、ヒト大腸癌細胞株(Colo205)、およびヒト大動脈内皮細胞(HAEC)、に対する結合性を示す図である。
【発明の具体的説明】
【0016】
微生物の寄託
本発明により提供されるヒト抗体の可変領域をコードする核酸配列を含むプラスミドベクターC2IgG1/pCR4およびK3/pCR4は、平成18年3月14日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 茨城県つくば市東1丁目1番1中央第6)にそれぞれFERM BP−10551(識別のための表示:C2IgG1/pCR4)および、FERM BP−10552(識別のための表示:K3/pCR4)として寄託されている。
【0017】
定義
本明細書または図面においてアミノ酸を表記するために用いられるアルファベットの一文字は、各々次に示すアミノ酸を意味する。(G)グリシン、(A)アラニン、(V)バリン、(L)ロイシン、(I)イソロイシン、(S)セリン、(T)スレオニン、(D)アスパラギン酸、(E)グルタミン酸、(N)アスパラギン、(Q)グルタミン、(K)リジン、(R)アルギニン、(C)システイン、(M)メチオニン、(F)フェニルアラニン、(Y)チロシン、(W)トリプトファン、(H)ヒスチジン、(P)プロリン。またDNAを表記するために用いられるアルファベットの一文字の意味は、各々次に示す。(A)アデニン、(C)シトシン、(G)グアニン、(T)チミン。
【0018】
CD98およびそのモノクローナル抗体
本発明によるヒトモノクローナル抗体およびその機能的断片(以下、特にことわらない限り、本明細書において「本発明による抗体」と略す)が特異的結合能を有するCD98は、上述のとおり、529アミノ酸残基からなるtype II膜貫通糖タンパク鎖であり、アミノ酸輸送活性を有するタンパク質と細胞膜上でヘテロ二量体を形成しているものである。ここで、アミノ酸輸送活性を有するタンパク質の好ましい具体例としては、LAT1が挙げられる。また、本発明の好ましい態様によれば、CD98はヒトCD98である。なお、ヒトCD98のタンパク質の一次構造は公知であり(配列番号66;GenBank/EMBL/DDBJ accession No. AB018010)、また、ヒトLAT1のタンパク質も公知である(配列番号68;GenBank/EMBL/DDBJ accession no. AB018009)。
【0019】
本発明による抗体は、癌細胞の細胞膜由来のCD98でありかつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質と複合体を形成しているCD98に特異的結合能を有し、他方、ヒト正常細胞、例えば正常ヒト血管内皮細胞、正常ヒト末梢血単球、およびリンパ球に結合しない。結合能を有する癌細胞の例としては、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、黒色腫、脳腫瘍、リンパ腫、膀胱癌、膵臓癌、多発性骨髄腫、腎細胞癌、白血病、T細胞リンパ腫、胃癌、膵臓癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、頭頚部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、きょう膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫またはウィルムス腫瘍等を構成する癌細胞が挙げられ、より具体的には、大腸癌細胞株(DLD-1、Colo205、SW480、SW620、LOVO、LS180、およびHT29)、肺癌細胞株(H226)、前立腺癌細胞株(DU145)、メラノーマ細胞株(G361、SKMEL28、CRL1579)、非ホジキンリンパ腫株(Ramos)、膀胱癌細胞株(T24)、乳癌細胞株(MCF、MDA-MB-231)、膵臓癌細胞株(HS766T)、多発性骨髄腫細胞株(IM9)、赤芽球系白血病株(K562)が挙げられる。本発明による抗体は、このような多様多種な癌細胞に結合能を有する点で有利である。
【0020】
本発明による抗体の、癌細胞への特異的な結合能は、本発明による抗体の有用性を高いものとする。すなわち、後記するように、本発明の好ましい態様の抗体は、LAT1を介した細胞内へのアミノ酸取り込みを有意に阻害するため、癌細胞にのみ結合することは有利であり、さらに本発明による抗体を、他の薬剤と結合させてそれを癌細胞へ送達するためのターゲティング剤として有利に用いることが出来る。
【0021】
また、本発明による抗体は抗腫瘍活性を有する。本発明の好ましい態様による抗体は、LAT1を介した細胞内へのアミノ酸取り込みを有意に阻害する性質を有する。従って、本発明による抗体の抗腫瘍活性は、ADCCおよびCDCによる免疫システムを用いて特異的に傷害することに加え、このようなアミノ酸取り込み阻害によってもたらされるものと考えられる。本発明のより具体的な態様によれば、本発明による抗体は、膀胱癌細胞株T24細胞のアミノ酸取り込みを有意に阻害する。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による抗体は、後記する(a)配列番号29および31、(b)配列番号41および47、および(c)配列番号43および47のいずれかの二配列を、重鎖可変領域および軽鎖可変領域として有する。さらに、別の態様によれば、本発明による抗体は、プラスミドベクターK3/pCR4(FERM BP−10552)またはC2IgG1/pCR4(FERM BP−10551)に含まれる、ベクターpCR4に由来する配列以外の配列によってコードされる配列を可変領域として有する。この態様による抗体の可変領域のアミノ酸配列は、上記のいずれかのプラスミドベクターから得られる、ベクターpCR4に由来する配列を含まないBg1II−BsiWI断片(軽鎖可変領域)およびSalI−NheI断片(重鎖可変領域)によってコードされるものである。
【0023】
本発明による抗体の機能的断片とは、本発明による抗体が特異的に結合する抗原に対して、特異的に結合する抗体の断片を意味し、より具体的にはF(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、disulphide−linked FV、Single−Chain FV(scFV)およびこれらの重合体等が挙げられる(D.J.King.,Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies.,1998 T.J.International Ltd)。このような抗体断片は慣用法、例えばパパイン、ペプシン等のプロテアーゼによる抗体分子の消化、あるいは公知の遺伝子工学的手法により得ることができる。
【0024】
本発明において、「ヒト抗体」とは、ヒト由来の抗体遺伝子の発現産物である抗体を意味する。ヒト抗体は、後述のようにヒト抗体遺伝子座を導入し、ヒト由来抗体を産生する能力を有するトランスジェニック動物に抗原を投与することにより得ることができる。該トランスジェニック動物としてマウスが挙げられ、ヒト抗体を産生し得るマウスの作出方法は、例えば、国際公開WO02/43478号公報に記載されている。
【0025】
本発明による抗体には、抗体を構成する重鎖および/または軽鎖の各々のアミノ酸配列において一若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する重鎖および/または軽鎖からなるモノクローナル抗体も包含される。本発明による抗体のアミノ酸配列中への、このようなアミノ酸の部分的改変(欠失、置換、挿入、付加)は、そのアミノ酸配列をコードする塩基配列を部分的に改変することにより導入することができる。この塩基配列の部分的改変は、既知の部位特異的変異導入法(Site specific mutagenesis)を用いて常法により導入することができる(Proc Natl Acsd Sci USA.,1984 Vol815662;Sambrook et al.,Molecular Cloning A Laboratory Manual(1989)Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。
【0026】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による抗体は、軽鎖117番目におけるイソロイシンが他のアミノ酸残基、例えば、メチオニン、アスパラギン、ロイシンまたはシステインに置換されたものとされる。このような抗体の好ましい例としては、(d)配列番号43および77、(e)配列番号43および79、(f)配列番号43および81、ならびに(g)配列番号43および83のいずれかの二配列を、重鎖可変領域および軽鎖可変領域として有するものがある。
【0027】
本発明による抗体には、いずれのイムノグロブリンクラスおよびサブクラスを有する抗体も包含されるが、本発明の好ましい態様によれば、ヒトイムノグロブリンクラスおよびサブクラスを有する抗体であり、好ましいクラス、サブクラスはイムノグロブリンG(IgG)、特にIgG1であり、好ましい軽鎖はκである。
【0028】
また、本発明による抗体には、当業者に周知である遺伝子工学的改変(例えば、EP 0 314 161公報)により異なるサブクラスのものに変換されたものも包含される。すなわち、本発明による抗体の可変領域をコードするDNAを用いて、遺伝子工学的手法により元のサブクラスとは異なるサブクラスの抗体を得ることができる。
【0029】
ADCCは、Macrophage, NK細胞、好中球などの表面に発現しているFc Receptorを介して、抗体の定常領域と結合することにより細胞を認識し、認識した細胞が活性化することにより誘導される、細胞障害活性を意味し、一方、CDCは抗体が抗原と結合することによって、活性化された補体系によって引き起こされる細胞障害活性を意味し、これらの活性は、抗体のサブクラスによってその活性の強弱が異なること、そしてそれは抗体の定常領域の構造の違いに起因することが明らかにされている(Charles A. Janeway et. al. Immunobiology, 1997, Current Biology Ltd/Garland Publishing Inc.)。
【0030】
従って、例えば、本発明による抗体のサブクラスを、IgG2またはIgG4に変換することにより、Fcレセプターに対する結合度の低い抗体を取得することができる。逆に、本件発明の抗体のサブクラスをIgG1またはIgG3に変換することにより、Fcレセプターに対する結合度の高い抗体を取得することができる。上記ADCCおよびCDC活性を期待する場合は抗体サブクラスがIgG1であることが望ましい。
【0031】
異なるサブクラスの抗体をIgG1に変換する場合、例えば抗体産生ハイブリドーマから可変領域だけを単離し、ヒトIgG1の定常領域を含むベクター、例えばN5KG1-Val Larkベクター(IDEC Pharmaceuticals, N5KG1(US patent 6001358)に導入することにより作製することができる。
【0032】
さらに、本発明による抗体の定常領域のアミノ酸配列を遺伝子工学的に改変すること、あるいはそのような配列を有する定常領域配列と結合することにより、Fcレセプターに対する結合度を変化させること(Janeway CA. Jr. and Travers P.(1997),Immunobiology, Third Edition, Current Biology Ltd./Garland Phulishing Inc.参照)、あるいは補体に対する結合度を変化させること(Mi-Hua Tao, et al. 1993. J.Exp.Med参照)は可能である。例えば、重鎖定常部分のEUナンバリングシステム(Sequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242 を参照)における331番目のプロリン(P)をコードする配列CCCをセリン(S)をコードするTCCに変異させプロリンをセリンに置換することにより補体に対する結合度を変化させることができる。
【0033】
例えば、仮に、本発明による抗体が、単独では細胞死誘導活性がない場合、Fcレセプターを介した抗体依存性細胞障害活性(ADCC)や補体依存性細胞傷害活性(CDC)による抗腫瘍活性を有する抗体が望ましいが、抗体単独で細胞死誘導活性がある場合はFcレセプターとの結合度が低い抗体がより望ましい場合もある。
【0034】
また免疫抑制剤について考えた場合、T細胞と抗原提示細胞の結合のみを立体的に阻害する場合などADCC活性或いはCDC活性を有さない抗体が望ましい。また、ADCC活性或いはCDC活性が毒性の原因となりうる場合、毒性の原因となる活性をFc部分の変異あるいはサブクラスを変更することにより回避した抗体が望ましい場合もある。
【0035】
以上を考慮し、必要であれば異なるサブクラスに遺伝子工学的に改変することにより、本発明による抗体を、ADCCまたはCDCにより癌細胞を特異的に傷害させうるものとすることができる。
【0036】
本発明の別の好ましい態様によれば、本発明による抗体は、ヒトCD98のアミノ酸配列(配列番号66)中の連続または不連続の少なくとも8個のアミノ酸残基によって構成されるエピトープを認識するものであることが好ましい。本発明のより好ましい態様によれば、本発明による抗体は、ヒトCD98のアミノ酸配列中の371〜529アミノ酸の領域の一部分に結合性を有するか、または1〜371アミノ酸の領域の一部分に結合性を有するものであることが好ましい。
【0037】
本発明の別の態様によれば、本発明による抗体として、ヒトCD98およびサルCD98に対して交叉反応を示す性質を有する抗体が提供される。このような抗体は、ヒトCD98とサルCD98において、同一または極めて類似したエピトープ構造を認識するものと想定され、ヒトに対する臨床試験に先立ちサルを実験動物とした種々の試験が可能であるという利点を有する。
【0038】
CD98抗体の作製
本発明による抗体は、例えば、以下に述べる方法によって製造することができる。
ヒトCD98/ヒトLAT1若しくはその一部、または抗原の抗原性を高めるための適当な物質(例えば、bovine serum albumin等)との結合物、またはヒトCD98/ヒトLAT1を細胞表面に多量に発現している細胞を、必要に応じて免疫賦活剤(Freund’s Adjuvant等)とともに、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ等の非ヒト哺乳動物に免疫する、またはヒトCD98/ヒトLAT1を組み込んだ発現ベクターを非ヒト哺乳動物に投与することにより免疫感作を行う。本発明による抗体は、免疫感作動物から得た抗体産生細胞と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマを調製し、ハイブリドーマをクローン化し、免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを選択することによって取得することができる。
【0039】
以下にさらに具体的に本発明による抗体の作製法について詳述するが、抗体の作製法はこれに制限されず、例えば脾細胞以外の抗体産生細胞およびミエローマを使用することもできる。
【0040】
抗原としては、CD98をコードするDNAを動物細胞用発現ベクターに組み込み、該発現ベクターを動物細胞に導入し、取得した形質転換株そのものを使用できる。
【0041】
CD98は多くの癌細胞表面でLAT1とヘテロ二量体を形成しているため、LAT1をコードするDNAを同様に発現ベクターに組み込み、CD98とLAT1が共発現している形質転換株を抗原として用いることでLAT1のアミノ酸取り込みを阻害する抗体の取得が期待できる。
【0042】
動物細胞用発現ベクターとしては例えばpEGF-N1(ベクトン・ディキンソン・バイオサイエンス・クロンテック社製)などのベクターを用いることができ、適当な制限酵素で挿入部位を開裂し、同一酵素で開裂されたヒトCD98あるいはヒトLAT1を連結することにより、目的遺伝子導入用ベクターが調製できる。そして、調製した発現ベクターを例えばL929細胞(American Type Culture Collection No.CCL-1)といった細胞を宿主として導入することにより、ヒトCD98およびヒトLAT1を高発現した細胞を作製できる。
宿主への遺伝子の導入方法は公知であり、任意の方法(例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等)が挙げられる。
【0043】
こうして作製した形質転換細胞はCD98抗体を作製するための免疫原とすることができる。さらに、発現ベクターそのものを免疫原とすることもできる。
【0044】
ヒトCD98は、公知の塩基配列またはアミノ酸配列に基づいて、遺伝子組換え技術のほか、化学的合成法、細胞培養方法等のような技術的分野において知られる方法を適宜用いることにより製造することができる。そしてこのようにして得られたヒトCD98タンパクを抗原としてCD98抗体を作製することも可能である。ヒトCD98の部分配列は、後述する技術的分野において知られる方法に従って、遺伝子組換え技術または化学的合成法により製造することもできるし、またヒトCD98をタンパク分解酵素等を用いて適切に切断することにより製造することができる。
【0045】
上述のようにして得た抗原を、以下のように免疫する。すなわち、作製した抗原を、抗原性を高めるための適当な物質(例えば、bovine serum albumin等)、および必要に応じて免疫賦活剤(Freundの完全若しくは不完全adjuvant等)とともに混合し、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ等の非ヒト哺乳動物に免疫する。また好ましくは、再配列されていないヒト抗体遺伝子を保持し、免疫感作により当該免疫原に特異的なヒト抗体を産生する非ヒト動物を用いることにより、本発明の抗体はヒト抗体であってもよい。この場合、ヒト抗体産生動物としては、例えば富塚らの文献[Tomizuka et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000 Vol 97:722]に記載されているヒト抗体産生トランスジェニックマウスが挙げられる。
【0046】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの調製は、ケーラーおよびミルシュタインらの方法(Nature.,1975 Vol.256:495−497)およびそれに準じて行うことができる。即ち、前述の如く免疫感作された動物から取得される脾臓、リンパ節、骨髄または扁桃等、好ましくはリンパ節または脾臓に含まれる抗体産生細胞と、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギまたはヒト等の哺乳動物に由来する自己抗体産生能のないミエローマ細胞とを、細胞融合させることにより調製される。細胞融合は例えば、ポリエチレングリコール(例えば分子量1500〜6000)等の高濃度ポリマー溶液中、通常約30〜40℃、約1〜10分間、抗体産生細胞とミエローマ細胞を混合することによって行うことができる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンのスクリーニングは、ハイブリドーマを、例えばマイクロタイタープレート中で培養し、増殖の見られたウェル中の培養上清の免疫抗原に対する反応性を、例えばELISA等の酵素免疫測定法、ラジオイムノアッセイ、蛍光抗体法などの免疫学的方法を用いて測定することにより行なうことができる。
【0047】
ハイブリドーマからのモノクローナル抗体の製造は、ハイブリドーマをインビトロで培養して培養上清から単離することができる。また、マウス、ラット、モルモット、ハムスターまたはウサギ等の腹水中等でのインビボで培養し、腹水から単離することもできる。また、ハイブリドーマ等の抗体産生細胞からモノクローナル抗体をコードする遺伝子をクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主(例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳類細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞など)に導入し、遺伝子組換え技術を用いて組換型抗体を調製することができる(P.J.Delves.,ANTIBODY PRODUCTION ESSENTIAL TECHNIQUES.,1997 WILEY、P.Shepherd and C.Dean.,Monoclonal Antibodies.,2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS,J.W.Goding.,Monoclonal Antibodies:principles and practice.,1993 ACADEMIC PRESS)。さらに、トランスジェニック動物作製技術を用いて目的抗体の遺伝子が内在性遺伝子に組み込まれたトランスジェニックなウシ、ヤギ、ヒツジまたはブタを作製し、そのトランスジェニック動物のミルク中からその抗体遺伝子に由来するモノクローナル抗体を大量に取得することも可能である。ハイブリドーマをインビトロで培養する場合には、培養する細胞種の特性、試験研究の目的および培養方法等の種々条件に合わせて、ハイブリドーマを増殖、維持および保存させ、培養上清中にモノクローナル抗体を産生させるために用いられるような既知栄養培地または既知の基本培地から誘導調製されるあらゆる栄養培地を用いて実施することが可能である。
【0048】
産生されたモノクローナル抗体は、当該分野において周知の方法、例えばプロテインAカラムによるクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、硫安塩析法、ゲル濾過、アフィニティクロマトグラフィー等を適宜組み合わせることにより精製することができる。
【0049】
抗体の医薬用途
本発明による抗体は、まず、その癌細胞の細胞膜由来のCD98でありかつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質と複合体を形成しているCD98への特異的結合能ゆえ、治療用薬剤とコンジュゲートすることによって、癌細胞への薬物の送達またはミサイル療法等の治療目的に使用可能な複合体を形成できる。
【0050】
抗体へ結合させる治療用薬剤の例としては、特に限定されないが、例えば、ヨード(131Iodine:131I,125Iodine 125I)、イットリウム(90Yttrium:90Y)、インジウム(111Indium:111In)、テクネチウム(99mTechnetium:99mTc)等の放射核種(J.W.Goding.,Monoclonal Antibodies:principles and practice.,1993 ACADEMIC PRESS)、緑膿菌毒素(Pseudomonas exotoxin)、ジフテリアトキシン(diphtheria toxin)、リシン(Ricin)のような細菌毒素、およびメトトレキセート(Methotrexate)、マイトマイシン(mitomycin)、カリキアマイシン(Calicheamicin)などの化学療法剤(D.J.King.,Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies.,1998 T.J.International Ltd、M.L.Grossbard.,Monoclonal Antibody−Based Therapy of Cancer.,1998 Marcel Dekker Inc)等が挙げられ、より好ましくは、ラジカル生成を誘導するセレン化合物が挙げられる。
【0051】
抗体と治療用薬剤の結合は共有または非共有結合(例えばイオン結合)のいずれでもよい。例えば、抗体分子中の反応性基(例えばアミノ基、カルボキシル基、水酸基等)または配位性基を利用し、必要に応じてより反応性の基を結合するかまたは反応性の基に変換した後、該反応性基と反応して結合を形成しうる官能基(細菌毒素、化学療法剤の場合)または該配位性基との間で錯体を形成しうるイオン性基(放射性核種の場合)をもつ治療用薬剤と抗体とを接触させることによって、本発明の複合体を得ることができる。あるいは複合体の形成に際してビオチン−アビジン系の利用も可能であろう。
【0052】
また、治療用薬剤がタンパク質またはペプチドである場合は、遺伝子工学的手法により抗体と前記タンパク質またはペプチドとの融合タンパク質として生産することも可能である。
【0053】
また、本発明による抗体は抗腫瘍活性を有することから、それ自体を抗腫瘍剤として用いることが出来る。さらに、医薬組成物、とりわけ腫瘍の予防または治療剤の有効成分として用いることが出来る。
【0054】
従って、本発明による抗体または医薬組成物は、ヒトCD98/ヒトLAT1を発現している細胞に起因する可能性を有する種々の疾患または症状の治療または予防への適用が可能である。その疾患または症状としては、各種悪性腫瘍が挙げられ、腫瘍の例としては、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、黒色腫、脳腫瘍、リンパ腫、膀胱癌、膵臓癌、多発性骨髄腫、腎細胞癌、白血病、T細胞リンパ腫、胃癌、膵臓癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、頭頚部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、きょう膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫またはウィルムス腫瘍等であり、本発明の抗体を適用する際の腫瘍は1種類に限られず、複数種類の腫瘍が併発したものでもよい。また、本発明のヒトモノクローナル抗体は、原発性の局所癌に罹患している患者の延命にも適用可能である。また、CD98が発現している免疫担当細胞に対して本発明の医薬組成物を選択的に作用させることができる。
【0055】
本発明による抗体、または治療用薬剤と結合した抗体を含有する医薬は、医薬組成物として提供されることが好ましい。
【0056】
このような医薬組成物には、治療上有効量の治療用薬剤が含まれ、経口、非経口投与用の種々の形態に製剤化される。ここで、治療上有効量とは、所与の症状や投与計画について治療効果を与える量をいう。
【0057】
本発明の組成物は、抗体に加えて、生理学的に許容され得る製剤上の添加物、例えば希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、酸化防止剤、等張化剤、付形剤および担体のうち1種または複数を含むことができる。また、他の抗体または抗生物質のような他の薬剤との混合物とすることもできる。
【0058】
適切な担体には、生理的食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水グルコース液、および緩衝生理食塩水が含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに当該分野において周知であるアミノ酸、糖類、界面活性剤等の安定化剤、表面への吸着防止剤を含んでいてもよい。
【0059】
製剤の形態としては、凍結乾燥製剤(この場合上記のような緩衝水溶液を添加することにより再構成して使用可能である。)、徐放製剤、腸溶性製剤、注射剤または点滴剤などを含む製剤を、治療目的、治療計画に応じて選択可能である。
【0060】
投与経路は、適宜決定されてよいが、例えば経口経路、並びに静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内の注射または配薬を含む非経腸的経路が考えられる。あるいは、患者の患部に直接本発明の組成物を接触させる方法も可能である。
【0061】
投与量は、動物を用いた試験、臨床試験の実施により適宜決定されるが、一般に患者の状態若しくは重篤度、年齢、体重、性別などが考慮されるべきである。通常、経口投与では、成人に対して、1日約0.01mg〜1000mgであり、これらを1回、または数回に分けて投与することができる。また、非経口投与では、1回約0.01mg〜1000mgを皮下注射、筋肉注射または静脈注射によって投与することができる。
【0062】
本発明は、本発明による抗体または医薬組成物を用いた上記疾患の予防または治療法をも包含し、さらに本発明は本発明の抗体の上記疾患の予防または治療剤の製造への使用をも包含する。
【0063】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による抗体は、水またはそれ以外の薬理学的に許容し得る溶液に溶解した無菌性溶液または懸濁液のアンプルとして使用に供される。また、無菌粉末製剤(本発明の分子を凍結乾燥するのが好ましい)をアンプルに充填しておき、使用時に薬理学的に許容し得る溶液で希釈してもよい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に記載される態様に限定されるものではない。
【0065】
実施例1:ヒトCD98またはヒトLAT1発現ベクターの調製
ヒトCD98(hCD98, GenBank/EMBL/DDBJ accession no. AB018010;配列番号65)およびヒトLAT1(hLAT1, GenBank/EMBL/DDBJ accession no. AB018009;配列番号67)のDNAを保持するプラスミドベクターpcDNA3.1-hCD98およびpcDNA3.1-hLAT1を鋳型としてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。完全長ヒトCD98 cDNAの5’末端にEcoRI配列を、その3’末端にNotI配列と終止コドンを付加する為、プライマー5’-CCG GAA TTC CCA CCA TGA GCC AGG ACA CCG AGG TGG ATA TGA -3’(配列番号59)および5’-AAG GAA AAA AGC GGC CGC TCA TCA GGC CGC GTA GGG GAA GCG GAG CAG CAG-3’(配列番号60)を使用し、KOD-PlusDNAポリメラーゼ(東洋紡社製)およびhCD98cDNA(約20ng)を鋳型として、94℃15秒、55℃30秒および68℃1分30秒間、30サイクルのPCR反応を行った。修飾されたhCD98配列をEcoRI−NotI断片として単離し、そして同一酵素で開裂されたpTracer-EF/Bsdベクター(インビトロジェン社製)にライゲートした。得られたプラスミドを鋳型としてCD98 v2 U(5’-AGT CTC TTG CAA TCG GCT AAG AAG AAG AGC ATC CGT GTC ATT CTG -3’(配列番号61))プライマーとCD98 v2 L(5’- CAG AAT GAC ACG GAT GCT CTT CTT CTT AGC CGA TTG CAA GAG ACT -3’ (配列番号62))プライマーを用いて、hCD98DNAの591と594番目(配列番号65における702番目および705番目)のAをGに変えた。得られたプラスミドからEcoRI−hCD98-NotI断片を調製し、同一酵素で開裂されていたpEF6myc-His/Bsd(インビトロジェン社製)ベクターに連結した。得られたプラスミドをpEF6/hCD98と命名した。
【0066】
同様に、完全長ヒトLAT1 cDNAの5’末端にEcoRI配列を、その3’末端にKpnI配列を付加するためにプライマー5’- CCG GAA TTC CCA CCA TGG CGG GTG CGG GCC CGA AGC GGC-3’(配列番号63)および5’-CGG GGT ACC GTC TCC TGG GGG ACC ACC TGC ATG AGC TTC-3’(配列番号64)を使用し、KOD-Plus DNAポリメラーゼおよびhLAT1cDNA(約20ng)を鋳型として、94℃15秒;55℃、30秒;および68℃、1分30秒間、30サイクルのPCR反応を行った。修飾されたhLAT1配列をEcoRI−KpnI断片として単離し、そして同一酵素で開裂されたpEGFP-N1(クローンテック社製)ベクターにライゲートした。さらに、得られたプラスミドをEcoRI−NotI断片として単離し、そして同一酵素で開裂されたpEF1V5His/Neo(インビトロジェン社製)ベクターにライゲートした。得られたプラスミドをpEF1/hLAT1-EGFPと命名した。
【0067】
実施例2:hCD98/hLAT1発現細胞の調製
hCD98/hLAT1発現細胞の作製は、実施例1で作製された発現ベクターpEF6/hCD98およびpEF1/hLAT1-EGFP(hLAT1-E)をインビトロジェン社製LipofectamineとPlus試薬を用いて、Colon26(CT26)細胞とL929細胞(American Type Culture Collection No.CCL-1)に導入した。遺伝子導入はマニュアルの方法に従い行った。遺伝子導入された細胞を細胞培養用プレート(6ウェルプレート、ベクトンディッキンソン社製)を用い、37℃、5%炭酸ガス下で24時間培養した後、CT26細胞株の場合、ブラストサイジン(5μg/mL)とG418(500μg/mL)入り培地で、L929細胞株の場合、ブラストサイジン(5μg/mL)とG418(1mg/mL)入り培地で、さらに3日間培養した。次に、RPE蛍光標識マウス抗ヒトCD98抗体(ベクトンディッキンソン社製、Ca.No.556076)を用いたFACS VantageでhLAT1-EとCD98陽性細胞を分離した。同様な方法で、hCD98発現L929細胞あるいはhLAT1-E発現L929細胞を調製した。
【0068】
実施例3:ヒト抗体産生マウスの作製
免疫に用いたマウスは、内因性Ig重鎖およびκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体の遺伝的背景を有しており、かつ、ヒトIg重鎖遺伝子座を含む14番染色体断片(SC20)およびヒトIgκ鎖トランスジーン(KCo5)を同時に保持する。このマウスはヒトIg重鎖遺伝子座を持つ系統Aのマウスと、ヒトIgκ鎖トランスジーンを持つ系統Bのマウスとの交配により作製した。系統Aは、内因性Ig重鎖およびκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体であり、子孫伝達可能な14番染色体断片 (SC20)を保持するマウス系統であり、例えば富塚らの報告(Tomizuka. et al., Proc Natl Acad Sci USA., 2000 Vol97:722)に記載されている。また、系統Bは内因性Ig重鎖およびκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体であり、ヒトIgκ鎖トランスジーン(KCo5)を保持するマウス系統(トランスジェニックマウス)であり、例えばFishwildらの報告(Nat Biotechnol., 1996 Vol14:845)に記載されている。
【0069】
系統Aの雄マウスと系統Bの雌マウス、あるいは系統Aの雌マウスと系統Bの雄マウスの交配により得られる子マウスを富塚らの報告(Tomizuka et al., Proc Natl Acad Sci USA., 2000 Vol97:722)に記載された方法で解析し、血清中にヒトIg重鎖およびκ軽鎖が同時に検出される個体(ヒト抗体産生マウス)を選抜し(Ishida&Lonberg, IBC's 11th Antibody Engineering, Abstract 2000;Ishida, I. et al., Cloning & Stem Cells 4, 85-96 (2002))、以下の免疫実験に用いた。免疫実験には、上記マウスの遺伝的背景を改変したマウスなど(石田 功 (2002) 実験医学 20, 6846851)も用いた。
【0070】
実施例4:ヒトモノクローナル抗体の作製
モノクローナル抗体の作製は、単クローン抗体実験操作入門(安東民衛ら著作、講談社発行1991)等に記載されるような一般的方法に従って行った。
【0071】
免疫原であるhCD98/hLAT1として、実施例2で調製したhCD98/hLAT1−E発現CT26細胞、およびhCD98発現が確認されたヒト大腸癌細胞株Colo205細胞を用いた。
【0072】
被免疫動物は、実施例3で作製したヒト免疫グロブリンを産生するヒト抗体産生マウスを用いた。
【0073】
hCD98/hLAT1−E発現CT26細胞を用いた場合、5×106細胞をRIBIアジュバント(コリクサ社製)と混合し腹腔内に初回免疫した。初回免疫から7、24日目に5×106細胞/マウスを腹腔内に追加免疫した。さらに以下に述べる脾臓細胞の取得3日前に細胞を同様にして免疫した。
【0074】
Colo205細胞を用いた場合、5×106細胞を腹腔内に初回免疫した。初回免疫から14日目に5×106細胞/マウスを腹腔内に追加免疫し、3日後に以下に述べる脾臓細胞を取得した。
【0075】
免疫されたマウスから脾臓を外科的に取得し、回収した脾臓細胞をマウスミエローマSP2/0(ATCC No.CRL1581)と5:1で混合し、融合剤としてポリエチレングリコール1500(Roche社製)を用いて細胞融合させて、多数のハイブリドーマを作製した。ハイブリドーマの選択は、10%のウシ胎児血清(Fetal Calf Serum, FCS)とヒポキサンチン(H)、アミノプテリン(A)、チミジン(T)を含有するHAT含有DMEM培地(ギブコ社製)中で培養することにより行った。さらに、HT含有DMEM培地を用いて限界希釈法によりシングルクローンにした。培養は、96ウェルマイクロタイタープレート(ベクトンディッキンソン社製)中で行った。目的ヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンの選択(スクリーニング)および各々のハイブリドーマが産生するヒトモノクローナル抗体の特徴付けは、後述する蛍光活性化セルソーター(FACS)により測定することにより行った。
【0076】
ヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングは以下のように行なった。すなわち、以下に述べるFACS解析により、ヒト免疫グロブリンμ鎖(hIgμ)、γ鎖(hIgγ)およびヒト免疫グロブリン軽鎖κ(hIgκ)を有し、かつhCD98/hLAT1−E発現CT26細胞に特異的な反応性を有するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを200個以上得た。
【0077】
なお、本明細書における実施例にあっては、結果として示した表または図中において、ヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンを、記号を用いて命名した。以下のハイブリドーマクローンはシングルクローンを表わす:4-35-14(C2)、4-32-9(K3)、7-95-8、10-60-7、3-69-6、5-80-1(以上hCD98/hLAT1-E発現CT26細胞を免疫原とするクローン)、1-40-1(以上Colo205細胞を免疫原とするクローン)。
【0078】
実施例5:各モノクローナル抗体のサブクラス同定
実施例4で取得した各モノクローナル抗体のサブクラスの同定をFACS解析で行った。2×106/mlのColo205細胞を、1mM EDTA、0.1%NaN3、5%FCS含有PBSのSB(staining buffer)に浮遊させた。細胞浮遊液を96ウェル丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した(50μl/ウェル)。さらに、実施例4で培養したハイブリドーマの培養上清(50μl)を加えて撹拌し、氷温下30分間反応させてから、遠心分離(2000rpm、4℃、2分)して上清を除去した。ペレットを100μl/ウェルのSBで1回洗浄した後、FITC蛍光標識ウサギ抗ヒトIgμ F(ab')2抗体(ダコサイトメーション社製)をSBで50倍、あるいはRPE蛍光標識ヤギ抗ヒトIgγ F(ab')2抗体(SuthernBiotech社製)をSBで200倍、あるいはRPE蛍光標識ウサギ抗ヒトIgκ F(ab')2抗体(ダコサイトメーション社製)をSBで200倍希釈して加え、氷温下30分間反応させた。SBで1回洗浄した後、300μlのSBに懸濁し、FACS(FACSCan、ベクトンディッキンソン社製)で抗体の結合を示す蛍光強度を測定した。得られた抗体の一部の結果を表1に示す。C2は重鎖がμ鎖で軽鎖がκ鎖で、K3, 3-69-6, 7-95-8, 10-60-7, 1-40-1、および5-80-1は何れも重鎖がγ鎖で軽鎖がκ鎖であった。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例6:モノクローナル抗体をコードする遺伝子の調製および組換え抗体発現ベクターの構築
C2, K3, 7-95-8, 10-60-7, 3-69-6または1-40-1の各抗体遺伝子のクローニングと発現ベクターの構築を以下の方法で実施した。
【0081】
(1)抗体遺伝子のcDNAクローニングと発現ベクターの作製
ハイブリドーマを10%FCS含有DMEM培地(ギブコ社製)で培養し、遠心分離により細胞を集めた後、ISOGEN(ニッポンジーン社製)を添加し、取扱説明書にしたがってTotal RNAを抽出した。抗体cDNAの可変領域のクローニングは、SMART RACE cDNA amplification Kit(クローンテック社製)を用い、添付の説明書にしたがって行った。
5μgのtotal RNAを鋳型として、1st strand cDNAを作製した。
(a) 1st strand cDNA の合成
Total RNA 5μg/3μl、5’CDS 1μl、およびSMART oligo 1μlからなる組成の反応液を70℃で2分間インキュベートした後、5×Buffer 2μl、DTT 1μl、DNTP mix 1μl、そしてSuperscript II 1μlを加え42℃で15時間インキュベートした。さらに、100μlのTricine Bufferを加えた後、72℃で7分間インキュベートし、1st strand cDNAを取得した。
(b) PCRによる重鎖遺伝子、軽鎖遺伝子の増幅および組換え抗体発現ベクターの構築
cDNAの増幅には、東洋紡社のKOD-Plusを用いた。
cDNA 15μl、10xKOD-Plus Buffer 5μl、dNTP mix 5μl、KOD-Plus 1μl、25mM MgSO4 3μl、プライマー1、およびプライマー2からなる組成の反応液を再蒸留水にて最終容量50μlとし、PCRに供した。
【0082】
K3、1-40-1, 3-69-6, C2に関し、具体的に実験例を示せば、以下のとおりである。
【0083】
K3
軽鎖の増幅のために、UMPとhk-2(5’- GTT GAA GCT CTT TGT GAC GGG CGA GC -3’(配列番号1) )プライマーを用い、94℃5秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、続いて、94℃5秒、70℃10秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、さらに、94℃5秒:68℃10秒:72℃3分のサイクルを25回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液1μlを鋳型とし、NUMPとhk5(5’- AGG CAC ACA ACA GAG GCA GTT CCA GAT TTC -3’ (配列番号2)) プライマーを用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kit(キアゲン社製)により精製した。精製されたPCR産物をpCR4Blunt-TOPOベクター(インビトロジェン社製)に連結し、添付説明書に従いサブクローニングした。次にT3(5’-ATT AAC CCT CAC TAA AGG GA-3’ (配列番号3))とhk5をプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、DNPL15Bglp(5’- AGA GAG AGA GAT CTC TCA CCA TGG AAG CCC CAG CTC AGC TTC TCT -3’ (配列番号4))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた軽鎖遺伝子を鋳型としてDNPL15Bglp と202LR(5’- AGA GAG AGA GCG TAC GTT TAA TCT CCA GTC GTG TCC CTT GGC -3’ (配列番号5)) プライマーを用い、94℃15秒、55℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、約400bpの断片をQIAquick gel extraction kit(キアゲン社製)により精製した。軽鎖増幅cDNA断片をBglII、BsiWIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val Larkベクター(IDEC Pharmaceuticals, N5KG1(US patent 6001358)の改変ベクター)に導入した。得られたベクターをN5KG1-Val K3Lと命名した。
【0084】
重鎖の増幅のために、UMPとIgG1p(5’- TCT TGT CCA CCT TGG TGT TGC TGG GCT TGT G -3’(配列番号6))プライマーを用い、94℃5秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、続いて、94℃5秒、70℃10秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、さらに、94℃5秒、68℃10秒、72℃3分のサイクルを25回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液1μlを鋳型とし、NUMPとIgG2p(5’- TGC ACG CCG CTG GTC AGG GCG CCT GAG TTC C -3’(配列番号7))を用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にT3とhh2(5’- GCT GGA GGG CAC GGT CAC CAC GCT G -3’(配列番号8))をプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、K3HcSalI(5’- AGA GAG AGA GGT CGA CCA CCA TGG GGT CAA CCG CCA TCC TCG CCC TCC TC -3’(配列番号9))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた重鎖遺伝子を鋳型としてK3HcSalIとF24HNhe(5’- AGA GAG AGA GGC TAG CTG AGG AGA CGG TGA CCA GGG TTC -3’ (配列番号10))を用い、94℃15秒、55℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、約450bpの断片をQIAquick gel extraction kitにより精製した。重鎖増幅cDNA断片をSalI、NheIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val K3Lに導入した。挿入部分のDNA塩基配列を決定して、PCR増幅して挿入された配列に鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。得られたベクターをN5KG1-Val K3IgG1と命名した。N5KG1-Val K3IgG1を後述するFreeStyle293細胞に遺伝子導入することにより得られた組み換え体K3抗体がK3ハイブリドーマ由来の抗体と同じであるかの確認は、hCD98/hLAT1発現細胞株への結合活性を調べることにより行った。
【0085】
1-40-1
重鎖の増幅のために、UMPとIgG1pプライマーを用い、94℃5秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、続いて、94℃5秒、70℃10秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、さらに、94℃5秒、68℃10秒、72℃3分のサイクルを25回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液1μlを鋳型とし、NUMPとIgG2pプライマーを用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にT3とhh2をプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、205HP5SalI(5’- AGA GAG AGA GGT CGA CCA CCA TGG AGT TTG GGC TGA GCT GGG TTT -3’(配列番号11))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた重鎖遺伝子を鋳型として205HP5SalIとF24Hnheプライマーを用い、94℃15秒、55℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、約450bpの断片をQIAquick gel extraction kitにより精製した。重鎖増幅cDNA断片をSalI、NheIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val Larkベクターに導入した。得られたベクターをN5KG1-Val 1-40-1Hと命名した。
【0086】
軽鎖の増幅のために、UMPとhk-2プライマーを用い、94℃5秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、続いて、94℃5秒、70℃10秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、さらに、94℃5秒、68℃10秒、72℃3分のサイクルを25回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液1μlを鋳型とし、NUMPとhk5を用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にT3とhk5をプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、A27RN202(5’- AGA GAG AGA GCG TAC GTT TGA TTT CCA CCT TGG TCC CTT GGC -3’ (配列番号12))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた軽鎖遺伝子を鋳型としてDNPL15Bglp とA27RN202を用い、94℃15秒、55℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、約400bpの断片をQIAquick gel extraction kitにより精製した。軽鎖増幅cDNA断片をBglII、BsiWIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val 1-40-1Hベクターに導入した。挿入部分のDNA塩基配列を決定して、PCR増幅して挿入された配列に鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。得られたベクターをN5KG1-Val 1-40-1IgG1と命名した。N5KG1-Val 1-40-1IgG1を後述するFreeStyle293細胞に遺伝子導入することにより得られた組み換え体1-40-1抗体が1-40-1ハイブリドーマ由来の抗体と同じであるかの確認は、hCD98/hLAT1発現細胞株への結合活性を調べることにより行った。
【0087】
3-69-6
軽鎖の増幅のために、UMPとhk-2プライマーを用い、94℃15秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、続いて、94℃15秒、70℃10秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、さらに、94℃15秒、68℃15秒、72℃3分のサイクルを25回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液2μlを鋳型とし、NUMPとhk5を用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にM13Foward(-20) primer (5’-GTA AAA CGA CGG CCA G -3’(配列番号13))、M13 Reverse primer(5’- CAG GAA ACA GCT ATG AC-3’ (配列番号14))とhk5(5’- AGG CACACA ACA GAG GCAG TTCCAGA TTT C -3’(配列番号2))をプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、A27_F (5’- AGA GAG AGA GAT CTC TCA CCA TGG AAA CCC CAG CGCAGC TTC TCT TC-3’(配列番号15))と39_20_L3Bsi (5’- AGA GAG AGA GCG TAC GTT TGA TCT CCA GCT TGG TCC CCT G-3’ (配列番号16))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた軽鎖遺伝子を鋳型としてA27_Fと39_20_L3Bsiを用い、94℃30秒、55℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、約400bpの断片をQIAquick gel extraction kitにより精製した。軽鎖増幅cDNA断片をBglII、BsiWIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val Larkベクターに導入した。得られたベクターをN5KG1-Val 3-69-6Lと命名した。
【0088】
重鎖の増幅のために、UMPとIgG1p (5’- TCT TGT CCA CCT TGG TGT TGC TGG GCT TGT G-3’(配列番号6))プライマーを用い、94℃15秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、続いて、94℃15秒:70℃10秒:72℃3分のサイクルを5回繰り返し、さらに、94℃15秒、68℃15秒、72℃3分のサイクルを30回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液2μlを鋳型とし、NUMPとIgG2p (IgG1.3.4)(5’- TGC ACG CCG CTG GTCAGG GCG CCT GAG TTC C-3’ (配列番号7))を用いて、94℃30秒、55℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4 Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にM13F,M13RとIgG2pをプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、Z3HP5Sal(5’- AGA GAG AGA GGT CGA CCCACCATG GAC TGG AGCATC CTT TT-3’(配列番号17))とF24HNhe(5’- AGA GAG AGA GGC TAG CTG AGG AGA CGG TGA CCA GGG TTC -3’(配列番号10))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた重鎖遺伝子を鋳型としてZ3HP5SalFとF24HNheを用い、94℃30秒、55℃30秒、68℃1分秒のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、約450bpの断片をQIAquick gel extraction kitにより精製した。重鎖増幅cDNA断片をSalI、NheIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val 3-69-6Lベクターに導入した。挿入部分のDNA塩基配列を決定して、PCR増幅して挿入された配列に鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。得られたベクターをN5KG1-Val 3-69-6IgG1と命名した。N5KG1-Val 3-69-6IgG1を後述するFreeStyle293細胞に遺伝子導入することにより得られた組み換え体3-69-6抗体が3-69-6ハイブリドーマ由来の抗体と同じであるかの確認は、hCD98/hLAT1発現細胞株への結合活性を調べることにより行った。
【0089】
C2IgG1
ハイブリドーマ産生C2のサブクラスはIgMであるため、同じgerm line由来のIgGから想定される可変領域を含むように設計したプライマーを用いたPCRによりC2抗体可変領域を単離した(C2 IgG1)。
【0090】
軽鎖の増幅のために、UMPとhk-2プライマーを用い、94℃5秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、続いて、94℃5秒、70℃10秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、さらに、94℃5秒、68℃10秒、72℃3分のサイクルを25回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液1μlを鋳型とし、NUMPとhk5を用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にM13F,M13Rとhk5をプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、C2-1 Lc Bgl II F (5’- AGA GAG AGA GAT CTC TCA CCA TGG AAA CCC CAG CGCAGC TTC TCT TC -3’(配列番号18))とC2-1 Lc BsiWI R (5’-AGA GAG AGA GCG TAC GTT TGA TAT CCA CTT TGG TCC CAG GG -3’(配列番号19))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた軽鎖遺伝子を鋳型としてC2-1 Lc Bgl II F とC2-1 Lc BsiWI Rを用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、約400bpの断片をQIAquick gel extraction kitにより精製した。軽鎖増幅cDNA断片をBglII、BsiWIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val Larkベクターに導入した。得られたベクターをN5KG1-Val C2Lと命名した。
【0091】
重鎖の増幅のために、UMPとM655R(5’- GGC GAA GAC CCG GAT GGC TAT GTC-3’ (配列番号20))プライマーを用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液1μlを鋳型とし、NUMPとM393R(5’-AAA CCC GTG GCC TGG CAG ATG AGC -3’(配列番号21))を用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にM13Foward (-20)primer(5’-GTA AAA CGA CGG CCA G -3’(配列番号13))、M13 Reverse primer(5’- CAG GAA ACA GCT ATG AC-3’(配列番号14))とM393Rをプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、C2hcSalIF(5’- AGA GAG AGA GGT CGA CCA CCA TGA AGCACC TGT GGT TCT TCC TCC TGC T -3’(配列番号22))とC2hcNheI(5’- AGA GAG AGA GGC TAG CTG AGG AGA CGG TGA CCA GGG TTC CCT GG -3’(配列番号58))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた重鎖遺伝子を鋳型としてC2hcSalIFとC2hcNheIを用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃30秒のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、約450bpの断片をQIAquick gel extraction kitにより精製した。重鎖増幅cDNA断片をSalI、NheIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val C2Lベクターに導入した。挿入部分のDNA塩基配列を決定して、PCR増幅して挿入された配列に鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。得られたベクターをN5KG1-Val C2IgG1と命名した。
【0092】
C2IgG1NS
上述のようにクローニングしたC2IgG1遺伝子において重鎖のフレーム領域に本来のgerm lineでは認められない変異が入っていた。そこで、本来のgerm lineの配列を持つC2の可変領域配列を以下の方法により単離した。
【0093】
上で得られたベクターN5KG1-Val C2IgG1を鋳型としてC2hc NS F(5’- CGT CCA AGA ACC AGT TCT CCC TGA AGC TGA-3’(配列番号23))プライマーとC2hc NS R(5’- TCA GCT TCA GGG AGA ACT GGT TCT TGG ACG-3’(配列番号24))プライマーを用いて、C2抗体重鎖の290と299番目のGとTを其々AとCに変え、N5KG1-Val C2IgG1NSを作製した。N5KG1-Val C2IgG1とN5KG1-Val C2IgG1NSを後述するFreeStyle293細胞に遺伝子導入することにより得られた組み換え体C2IgG1とC2IgG1NS抗体がC2ハイブリドーマ由来のIgM抗体と特異性が同じであるかの確認は、hCD98/hLAT1発現細胞株への結合活性を調べることにより行った。C2IgG1とC2IgG1NSの結合活性は、ほぼ同じであった。
【0094】
C2IgμG1
上述のC2IgG1に用いた方法であると、重鎖と軽鎖の結合部位の形が本来のIgMと異なる可能性があるため、以下の配列転換を行なった。すなわち、IgGのγ鎖とIgMのμ鎖のCH1定常領域にある共通な配列(GCL配列)から可変領域側方向に隣接する26アミノ酸をμ鎖配列とし、GCL配列から定常領域側全てをγ鎖にコンバートした(C2 IgμG1)。以上の配列転換を以下の方法により行なった。
【0095】
C2 cDNAの重鎖の増幅のために、UMPとM655Rプライマーを用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液1μlを鋳型とし、NUMPとM393Rを用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4 Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にM13Foward(-20)primer(5’-GTA AAA CGA CGG CCA G -3’(配列番号13))、M13 Reverse primer(5’- CAG GAA ACA GCT ATG AC-3’(配列番号14))とM393Rをプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、C2hcSalIF(5’- AGA GAG AGA GGT CGA CCA CCA TGA AGCACC TGT GGT TCT TCC TCC TGC T -3’(配列番号22))とMu-GCL-Gamma L(5’- CAC CGG TTC GGG GAA GTA GTC CTT GAC GAG GCA GCA AAC GGC CAC GCT GCT CGT-3’(配列番号25))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた重鎖遺伝子を鋳型としてC2hcSalIFとMu-GCL-Gamma Lを用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅産物をC2Vμと命名した。次にN5KG1-Val Larkベクターを鋳型としてMu-GCL-Gamma U(5’-ACG AGCAGC GTG GCC GTT GGC TGC CTC GTCAAG GAC TAC TTC CCC GAA CCG GTG -3’(配列番号26))とhIgG1 BamHI L(5’- CGC GGA TCC TCA TCA TTT ACC CGG AGA CAG GGA GAG GCT-3’(配列番号27))を用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃90秒のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅産物をCγ1と命名した。C2VμとCγ1の3倍希釈液を各5μl入れ、プライマー無しで94℃15秒、55℃30秒、68℃2分のサイクルを3回繰り返した。この反応液を99℃5分間加熱後10倍希釈し、5μlを鋳型としてC2hcSalIFとhIgG1 BamHI Lを用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃2分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅cDNA断片をSalI、SmaIで消化し、同一酵素で解裂されていた前記C2軽鎖遺伝子が入ったN5KG1-Val Larkベクターに導入した。挿入部分のDNA塩基配列を決定して、PCR増幅して挿入された配列に鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。得られたベクターをN5KG1-Val C2IgμG1と命名した。C2IgμG1抗体の結合活性は、N5KG1-Val C2IgμG1を後述するFreeStyle293細胞に遺伝子導入することにより得られた組み換え体のhCD98/hLAT1発現細胞株への結合活性を調べることにより行った。
【0096】
K3、1-40-1、3-69-6の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むDNA配列、並びに重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むアミノ酸配列は、それぞれ以下の配列番号の配列であった。
【0097】
<K3重鎖可変領域核酸配列>(配列番号28)
AGAGAGAGAGGTCGACCACCATGGGGTCAACCGCCATCCTCGCCCTCCTCCTGGCTGTTCTCCAAGGAGTCTGTGCCGAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGGAGCAGAAGTGAAAAAGCCCGGGGAGTCTCTGAAGATCTCCTGTAAGGGTTCTGGATACAGGTTTACCGACTACTGGATCGGCTGGGTGCGCCAGATGCCCGGGAAAGGCCTGGAGTGGATGGGGATCTTCTATCCTGGTGACTCTGATGCCAGATACAGCCCGTCCTTCCAAGGCCAGGTCACCATCTCAGCCGACAAGTCCATCAACACCGCCTACCTGCAGTGGAGCAGCCTGAAGGCCTCGGACACCGCCATGTATTATTGTGCGAGACGGCGAGATATAGTGGGAGGTACTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
【0098】
<K3重鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号29)
MGSTAILALLLAVLQGVCAEVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYRFTDYWIGWVRQMPGKGLEWMGIFYPGDSDARYSPSFQGQVTISADKSINTAYLQWSSLKASDTAMYYCARRRDIVGGTDYWGQGTLVTVSS
【0099】
<K3軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号30)
AGAGAGAGAGATCTCTCACCATGGAAGCCCCAGCTCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCTACTTAGACTGGTACCAACAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTAGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTACTGTCAGCAGCGTAGCAACTGGATCACCTTCGGCCAAGGGACACGACTGGAGATTAAA
【0100】
<K3軽鎖可変領域>(配列番号31)
MEAPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLDWYQQKPGQAPRLLIYDASSRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWITFGQGTRLEIK
【0101】
<1-40-1重鎖可変領域核酸配列>(配列番号32)
AGAGAGAGAGGTCGACCACCATGGAGTTTGGGCTGAGCTGGGTTTTCCTTGTTGCTATTTTAAAAGGTGTCCAGTGTGAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGTGTGGTACGGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTTGATGATTATGGCATGACCTGGGTCCGCCAAGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCTACTATTAGTTGGAATGGTGGTGGCACAGGTTATGCAGACTCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAACTCCCTGTATCTGCAAATGAACAGTCTGAGAGCCGAGGACACGGCCTTGTATTACTGTGCGGGATATTGTATTATTACCGGCTGCTATGCGGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
【0102】
<1-40-1重鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号33)
MEFGLSWVFLVAILKGVQCEVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMTWVRQAPGKGLEWVSTISWNGGGTGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCAGYCIITGCYADYWGQGTLVTVSS
【0103】
<1-40-1軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号34)
AGAGAGAGAGATCTCTCACCATGGAAGCCCCAGCTCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCTACTTAGCCTGGTACCAACAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCAACAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTAGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTACTGTCAGCAGCGTAGCAACTGGTGGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAA
【0104】
<1-40-1軽鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号35)
MEAPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWWTFGQGTKVEIK
【0105】
<3-69-6重鎖可変領域核酸配列>(配列番号36)
GTCGACCCACCATGGACTGGACCTGGAGCATCCTTTTCTTGGTGGCAGCAGCAACAGGTGCCCACTCCCAGGTTCAACTGGTGCAGTCTGGAGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGGCCTCAGTGAAGGTCTCCTGTAAGGCTTCTGGTTACACCTTTACCAGCTATGGTATCAGCTGGATGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGATGGATCAGCGCTTACAATGGTAATACGAACTATGTACAGAAGTTCCAGGACAGAGTCACCATGACCAGAGACACATCCACGAGCACAGCCTACATGGAGCTGAGGAGCCTGAGATCTGACGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGAGAGATCGGGGCAGCAATTGGTATGGGTGGTTCGACCCCTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
【0106】
<3-69-6重鎖可変領域>(配列番号37)
RRPTMDWTWSILFLVAAATGAHSQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYGISWMRQAPGQGLEWMGWISAYNGNTNYVQKFQDRVTMTRDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCARDRGSNWYGWFDPWGQGTLVTVSS
【0107】
<3-69-6の軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号38)
AGATCTCTCACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTACTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTTGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCGTACACTTTTGGCCAGGGGACCAAGCTGGAGATCAAA
【0108】
<3-69-6の軽鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号39)
RSLTMETPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSYTFGQGTKLEIK
【0109】
C2重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むDNA、並びに重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むアミノ酸配列をそれぞれ以下に示す。
【0110】
<C2IgG1重鎖可変領域核酸配列>(配列番号40)
GTCGACCACCATGAAGCACCTGTGGTTCTTCCTCCTGCTGGTGGCGGCTCCCAGATGGGTCCTGTCCCAGCTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTGGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCTCCATCAGCAGTAGTAGTTACTACTGGGGCTGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGAGTATCTATTATAGTGGGAGTACCTACTACAACCCGTCCCTCAAGAGTCGAGTCACCATATCCGTAGACACGTCCAAGAGCCAGTTCTTCCTGAAGCTGAGCTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTGTGTATTACTGTGCGAGACAAGGGACGGGGCTCGCCCTATTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
【0111】
<C2IgG1重鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号41)
STTMKHLWFFLLLVAAPRWVLSQLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKSQFFLKLSSVTAADTAVYYCARQGTGLALFDYWGQGTLVTVSS
【0112】
<C2IgG1NS重鎖可変領域核酸配列>(配列番号42)
GTCGACCACCATGAAGCACCTGTGGTTCTTCCTCCTGCTGGTGGCGGCTCCCAGATGGGTCCTGTCCCAGCTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTGGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCTCCATCAGCAGTAGTAGTTACTACTGGGGCTGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGAGTATCTATTATAGTGGGAGTACCTACTACAACCCGTCCCTCAAGAGTCGAGTCACCATATCCGTAGACACGTCCAAGAACCAGTTCTCCCTGAAGCTGAGCTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTGTGTATTACTGTGCGAGACAAGGGACGGGGCTCGCCCTATTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
【0113】
<C2IgG1NS重鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号43)
STTMKHLWFFLLLVAAPRWVLSQLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARQGTGLALFDYWGQGTLVTVSS
【0114】
<C2IgμG1重鎖可変領域からヒトIgG1との結合部位核酸配列>
(配列番号44)
GTCGACCACCATGAAGCACCTGTGGTTCTTCCTCCTGCTGGTGGCGGCTCCCAGATGGGTCCTGTCCCAGCTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTGGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCTCCATCAGCAGTAGTAGTTACTACTGGGGCTGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGAGTATCTATTATAGTGGGAGTACCTACTACAACCCGTCCCTCAAGAGTCGAGTCACCATATCCGTAGACACGTCCAAGAGCCAGTTCTTCCTGAAGCTGAGCTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTGTGTATTACTGTGCGAGACAAGGGACGGGGCTCGCCCTATTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGGGAGTGCATCCGCCCCAACCCTTTTCCCCCTCGTCTCCTGTGAGAATTCCCCGTCGGATACGAGCAGCGTGGCCGTT
【0115】
<C2IgμG1重鎖可変領域からヒトIgG1との結合部位アミノ酸配列>
(配列番号45)
STTMKHLWFFLLLVAAPRWVLSQLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKSQFFLKLSSVTAADTAVYYCARQGTGLALFDYWGQGTLVTVSSGSASAPTLFPLVSCENSPSDTSSVAV
【0116】
<C2IgG1とC2IgμG1の軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号46)
AGATCTCTCACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTTCTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTCGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCACCTATATTCACTTTCGGCCCTGGGACCAAAGTGGATATCAAA
【0117】
<C2IgG1とC2IgμG1の軽鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号47)
RSLTMETPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPIFTFGPGTKVDIK
【0118】
上記各抗体配列の内、K3およびC2IgG1の軽鎖可変領域と重鎖可変領域(すなわち、配列番号28および30並びに配列番号40および46の配列の核酸)をpCR4Blunt-TOPOベクターに導入したものを、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託し、それぞれFERM BP−10552(識別のための表示:K3/pCR4)およびFERM BP−10551(識別のための表示:C2IgG1/pCR4)の寄託番号が付されている。
【0119】
上記各抗体可変領域は重鎖および軽鎖部分に加え結合および単離に用いる制限酵素認識配列を含んでおり、各抗体の軽鎖可変領域を単離する場合はBglIIとBsiWIを、重鎖可変領域を単離する場合はSalIとNheIのそれぞれの制限酵素を用いることにより、単離できる。以下にpCR4Blunt-TOPOベクターに挿入した各抗体可変領域と制限酵素認識部位などを含んだ遺伝子配列を示す。
【0120】
<K3/pCR4>(配列番号48)
AGAGAGAGAGATCTCTCACCATGGAAGCCCCAGCTCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCTACTTAGACTGGTACCAACAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTAGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTACTGTCAGCAGCGTAGCAACTGGATCACCTTCGGCCAAGGGACACGACTGGAGATTAAACGTACGCTCTCTCTCTAGAGAGAGAGGTCGACCACCATGGGGTCAACCGCCATCCTCGCCCTCCTCCTGGCTGTTCTCCAAGGAGTCTGTGCCGAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGGAGCAGAAGTGAAAAAGCCCGGGGAGTCTCTGAAGATCTCCTGTAAGGGTTCTGGATACAGGTTTACCGACTACTGGATCGGCTGGGTGCGCCAGATGCCCGGGAAAGGCCTGGAGTGGATGGGGATCTTCTATCCTGGTGACTCTGATGCCAGATACAGCCCGTCCTTCCAAGGCCAGGTCACCATCTCAGCCGACAAGTCCATCAACACCGCCTACCTGCAGTGGAGCAGCCTGAAGGCCTCGGACACCGCCATGTATTATTGTGCGAGACGGCGAGATATAGTGGGAGGTACTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGCTAGCCTCTCTCTCT
【0121】
<C2IgG1/pCR4>(配列番号49)
AGAGAGAGAGATCTCTCACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTTCTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTCGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCACCTATATTCACTTTCGGCCCTGGGACCAAAGTGGATATCAAACGTACGCTCTCTCTCTAGAGAGAGAGGTCGACCACCATGAAGCACCTGTGGTTCTTCCTCCTGCTGGTGGCGGCTCCCAGATGGGTCCTGTCCCAGCTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTGGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCTCCATCAGCAGTAGTAGTTACTACTGGGGCTGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGAGTATCTATTATAGTGGGAGTACCTACTACAACCCGTCCCTCAAGAGTCGAGTCACCATATCCGTAGACACGTCCAAGAGCCAGTTCTTCCTGAAGCTGAGCTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTGTGTATTACTGTGCGAGACAAGGGACGGGGCTCGCCCTATTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGCTAGCCTCTCTCTCT
【0122】
実施例7:組換え型抗体の作製
実施例6で構築した組換え型抗体発現ベクターを宿主細胞に導入し、組換え型抗体発現細胞を作製した。発現のための宿主細胞としてCHO細胞の dhfr欠損株(ATCC CRL-9096)を用いた。宿主細胞へのベクターの導入はエレクトロポレーションにより実施した。抗体発現ベクター約2μgを制限酵素で線状化し、Bio-Rad electrophoreterをもちいて350V、500μFの条件で、4x106個のCHO細胞に遺伝子を導入し、96well culture plateに播種した。発現ベクターの選択マーカーに対応した薬剤を添加して培養を継続した。コロニーを確認した後、実施例4に示した方法によって、抗体発現株を選別した。選別した細胞からの抗体精製は、実施例8にしたがって行った。また、組換え型抗体発現ベクターを添付説明書に従いFreeStyle293細胞(インビトロジェン社製)へ導入し、組み換え型抗体を発現させた。
【0123】
実施例8:抗体の精製
ヒトIgG抗体を含むハイブリドーマ培養上清の調製は、以下の方法にて行った。抗体産生ハイブリドーマをウシインシュリン(5μg/ml、ギブコ社製)、ヒトトランスフェリン(5μg/ml、ギブコ社製)、エタノールアミン(0.01 mM、シグマ社製)、亜セレン酸ナトリウム(2.5x10-5mM、シグマ社製)含有eRDF培地(極東製薬社製)に馴化した。組織培養フラスコで培養し、ハイブリドーマの生細胞率が90%になった時点で培養上清を回収した。回収した上清は、10μmと0.2μmのフィルター(ゲルマンサイエンス社製)に供し、ハイブリドーマ等の雑排物を除去した。抗体を含む培養上清をProtein A(アマシャム)を用い、吸着緩衝液としてPBS、溶出緩衝液として20mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.0)を用いてアフィニティー精製した。溶出画分は50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を添加してpH6.0付近に調整した。調製された抗体溶液は、透析膜(10,000カット、Spectrum Laboratories社製)を用いてPBSに置換し、孔径0.22μmのメンブランフィルターMILLEX-GV(ミリポア社製)でろ過滅菌し、精製抗体を得た。精製抗体の濃度は、280nmの吸光度を測定し、1mg/mlを1.45 Optimal densityとして算出した。
【0124】
実施例9:各モノクローナル抗体の特異性
実施例4で取得した各モノクローナル抗体の反応性の検討を実施例5に明記してあるFACS解析と同法で行った。実施例2で調製した細胞株をStaining Buffer(SB)で2x106/ml に調製し、その細胞浮遊液を96ウェル丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した(50μl/ウェル)。実施例4から実施例8で調製した各組み換え体抗体をSBで5μg/mlに調製し、50μlを各ウェルに加え撹拌した。陰性コントロールは、KMマウスで作製した抗dinitrophenyl(DNP)ヒトIgG1抗体を使用した。氷温下30分間反応させてから、遠心分離(2000rpm、4℃、2分)して上清を除去した。ペレットを100μl/ウェルのSBで1回洗浄した後、200倍希釈したRPE蛍光標識ウサギ抗ヒトIgκ F(ab‘)2抗体(ダコサイトメーション社製)を50μl/ウェル加え、氷温下30分間反応させた。SBで1回洗浄した後、300μlのSBに懸濁し、FACSで抗体の結合を示す蛍光強度を測定した。
【0125】
その結果、いずれの抗体もhCD98/hLAT1−E発現CT26細胞(図1)またはhCD98/hLAT1−E発現L929細胞(図2)に対し強い結合活性を有し、一方、CT26細胞およびL929細胞への結合活性は観察されなかった。さらに、いずれの抗体もhLAT1-E発現L929細胞には結合せず、hCD98発現L929細胞には結合することから、C2、K3、7-95-8、10-60-7、3-69-6、1-40-1抗体の結合部位はhCD98に位置することが判った(図2)。
【0126】
実施例10:各モノクローナル抗体の抗原結合に関係するhCD98タンパクの領域
各モノクローナル抗体の結合に重要なhCD98分子の領域を検討した。
【0127】
まず、ツニカマイシン処置K562細胞株への反応性で調べた。2x105のK562細胞を6ウェルプレートに播種し(4ml/ウェル)、5μg/mlのツニカマイシン(シグマ社製)存在下、非存在下で72時間37℃、5%CO2下で培養した。この条件で約80KdaであるhCD98の分子量が、N-link糖鎖がとれた場合の理論値約60kDaになることをウエスタンブロットで確認した。培養後、細胞を回収し2x106/mlの細胞株をStaining Buffer(SB)に浮遊させた。細胞浮遊液を96−well丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した(50μl/ウェル)。SBで5μg/mLに調製された各組み換え体抗体を50μl/ウェル加え、氷温下30分間反応させた。陰性コントロールは抗DNPヒトIgG1抗体を用いた。SBで1回洗浄した後、RPE蛍光標識ヤギ抗ヒトIgγ F(ab‘)2抗体(SuthernBiotech社製)をSBで200倍希釈して加え、氷温下30分間インキュベートした。SBで1回洗浄した後、300μlのFACS緩衝液に懸濁し、FACSで抗体の結合を示す蛍光強度を測定した。
【0128】
その結果、何れの抗体もツニカマイシン非処置のK562より、処置細胞の結合活性が低下することは観察されなかった(図3)。以上の結果より、各抗体の結合部位はN-link糖鎖でないことが判り、これらモノクローナル抗体はhCD98の抗体であることが強く示唆された。さらに、各モノクローナル抗体の結合に重要なhCD98の領域を実施例11で検討した。
【0129】
実施例11:各抗体の結合反応に重要なヒトCD98タンパクの領域
各抗体はマウスCD98(mCD98)に交叉反応性を示さないため、mCD98とhCD98を人工的に結合したキメラCD98を利用し、各抗体の結合反応に重要なヒトCD98タンパクの領域を検討した。
【0130】
キメラCD98は以下の様に作製した。mCD98とhCD98の配列情報より、EcoRIhCD98U(5’-CCG GAA TTC cCa cCa TGA GCC AGG ACA CCG AGG TGG ATA TGA-3’ (配列番号50))、NotIhCD98(5’- AAG GAA AAA AGC GGC CGC TCA TCA GGC CGC GTA GGG GAA GCG GAG CAG CAG-3’ (配列番号51))、EcoRI mCD98 (5’- CCG GAA TTC CCA CCA TGA GCC AGG ACA CCG AAG TGG ACA TGA AA-3’ (配列番号52))、 NotImCD98L(5’-AAG GAA AAA AGC GGC CGC TCA TCA GGC CAC AAA GGG GAA CTG TAA CAG CA-3’ (配列番号53))、cCD98D2-F(5’- TCA TTC TGG ACC TTA CTC CCA ACT ACC-3’ (配列番号54))、cCD98D2-R(5’- GGT AGT TGG GAG TAA GGT CCA GAA TGA-3’ (配列番号55))、cCD98 D3-F(5’- TGC TCT TCA CCC TGC CAG GGA CCC CTG TTT T-3’ (配列番号56))、cCD98 D3-R(5’- AAA ACA GGG GTC CCT GGC AGG GTG AAG AGC A-3’ (配列番号57))を合成した。PCRを行うにあたり鋳型として用いたのは、mCD98(GenBank/EMBL/DDBJ accession no.U25708)およびヒトCD98をコードするcDNAを保持するプラスミドベクターpcDNA3.1-mCD98および実施例1で作製したpEF6/hCD98である。
【0131】
cDNAの増幅には、東洋紡社のKOD-Plusを用いた。cDNA 15μl、10xKOD-Plus Buffer 5μl、dNTP mix 5μl、KOD-Plus 1μl、25mM MgSO4 3μl、FプライマーおよびRプライマーからなる組成の反応液を再蒸留水にて最終容量50μlとし、PCRに供した。
【0132】
cDNA1とFプライマー1とRプライマー1、または、cDNA2とFプライマー2とRプライマー2、を用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃90秒(94℃15秒、55℃30秒、68℃50秒)のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅産物を其々P1、P2と命名した。次にP1とP2の2〜3倍希釈液を各5μl入れ、プライマー無しで94℃15秒、55℃30秒、68℃2分のサイクルを3回繰り返した。この反応液を99℃5分間加熱後5〜10倍希釈し、5μlを鋳型としてFプライマー1とRプライマー2を用い、94℃15秒、60(55℃)℃30秒、68℃2分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。
【0133】
キメラCD98-1, キメラCD98-2, キメラCD98-3は、それぞれ、(cDNA1 : Fプライマー1 : Rプライマー1; cDNA2とFプライマー2 : Rプライマー2)の以下の組み合わせ(pEF6/hCD98 : EcoRIhCD98U : cCD98D2-R; pcDNA3.1-mCD98 : cCD98D2-F : NotImCD98L)、(pEF6/hCD98:EcoRIhCD98U:cCD98D3-R; pcDNA3.1-mCD98 : cCD98D3-F : NotImCD98L)、(pcDNA3.1-mCD98 :EcoRImCD98U : cCD98D2-R; pEF6/hCD98 : cCD98D2-F : NotIhCD98L)で作製した。各PCR増幅cDNA断片をEcoRI、NotIで消化し、同一酵素で解裂されていたpEF6myc-His/Bsdベクター(インビトロジェン社製)に連結した。挿入部分のDNA塩基配列を決定し、PCR増幅して挿入された配列が、鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。実施例2と同法で各ベクターを実施例1で作製したpEF1/hLAT1-EGFPベクターと共に L929細胞に発現し、実施例10と同法のFACS解析で各FITC標識抗体の結合を調べた。その結果(図4)、K3, 7-95-8, 10-60-7, 3-69-6,抗体は、市販のFITC標識抗ヒトCD98抗体(クローンUM7F8、ベクトンディッキンソン社製 Ca.No.556076)と同様 キメラCD98-3を発現したL929細胞にのみ結合しhCD98の372アミノ酸残基から530アミノ酸残基の領域がこれら抗体の結合に重要であることが示唆された。一方、C2抗体と1-40-1中和抗体は、キメラCD98-2にのみ強く結合し、hCD98の104アミノ酸残基-371アミノ酸残基がこれら抗体の結合に重要であることが判った。
【0134】
実施例12:各モノクローナル抗体のアミノ酸取込み抑制活性
各モノクローナル抗体がヒト膀胱癌細胞株T24細胞のアミノ酸の取り込みに影響するかを基質としてロイシンを用い、基質の取り込み実験を金井らの方法(Kim et al., Biochim. Biophys. Acta 1565: 112-122, 2002)に準じて、以下のように行った。1x105のT24細胞株を24−穴培養プレートに播種し、10%FCS入りMEM培地(SIGMA ALDRICH社製)で37℃、5%CO2下で2日間培養した。培養後培地を除き、200μg/mLの抗体を含むHBSS(-)(Na+-free)を0.25mL/穴加え、37℃、5%CO2下でさらに10分間培養した。C2, K3, 7-95-8, 10-60-7, 3-69-6、1-40-1, 抗DNPヒト抗体は、組み換え体抗体を、5-80-1はハイブリドーマ由来の抗体を使用した。その後、上清を除き、1μMの14C-Leu (MORAVEK BIOCHEMICALS社製)を含むHBSS(-)(Na+-free)を0.5mL/穴加え1分間培養した。氷冷HBSS(-)(Na+-free)溶液で3回洗浄後、0.1N水酸化ナトリウムを0.5mL/穴添加し細胞を回収した。回収された溶液中の14C-Leu量は、Liquid scintillation counter model LSC-5100 (ALOKA社製)で測定した。各細胞の14C-Leu取込み量は、回収した溶液中のタンパク質濃度をBCA法で測定し、タンパク質量で標準化した。その結果(図5)、1-40-1, K3, C2IgG1、10-60-7, 3-69-6は、コントロール抗体(DNPヒト抗体)より有意にロイシンの取り込みを抑制した。以下の実験は、有意にロイシンの取り込みを抑制した1-40-1、K3、C2IgG1、10-60-7、および 3-69-6を用いて実施した。
【0135】
実施例13:各モノクローナル抗体の抗hCD98/hLAT1抗体の蛍光標識
各抗体の蛍光標識化は以下の方法で行った。蛍光物質Fluorescein isothiocyanate (FITC, シグマ社製)を付属の説明書に従い、実施例4から実施例8で調製した各組み換え体抗体に結合させた。200mMの炭酸ナトリウム緩衝液(pH8.3〜8.5)で1〜2mg/mlの抗体に、ジメチルフォルムアミドに溶かしたFITCを抗体分子の20〜40倍量添加し、撹拌しながら室温2〜3時間反応させた。PBSで平衡化したゲルろ過カラム(NAP5、アマシャム・ファルマシア・バイオテック社製)に混合液を供し、抗体に未結合のFITCを除去した。この条件で抗体1分子に約3つのFITCが結合した。蛍光標識された抗体は何れもhCD98の発現が確認されているヒト大腸癌細胞株DLD-1細胞株に結合した。
【0136】
実施例14:各モノクローナル抗体のヒト末梢血由来T細胞、B細胞、単球細胞と正常ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)への反応性
単球細胞、活性化T細胞、培養した正常内皮細胞ではCD98が発現していることが知られている。そこで、各抗体のヒト末梢血由来T細胞、B細胞、単球細胞とヒト大動脈内皮細胞(HAEC)への反応性を調べた。ヒト末梢血由来細胞は以下の方法で調製した。1mlヘパリン(ノボ社製)入りヒト末梢血10mlをPBSで2倍に希釈し、20mlのFicoll-Paque PLUS液(アマシャム・ファルマシア・バイオテック社製)上に重層し、1500 rpmで30分間遠心後回収した。PBSで2回洗浄し単核球細胞を調製した。一部の単核球細胞は、10μg/mlのPhytohaemagglutinin(シグマ社製、PHA)、10%FCS、0.1mM非必須アミノ酸溶液(ギブコ社製)、5.5x10-6M 2-メルカプトエタノール(ギブコ社製)、Penicillin/Streptomycin/Glutamine(ギブコ社製)入りRPMI培地(ギブコ社製)で5%CO2、37℃下72時間培養した。PHA刺激によりヒト末梢血由来T細胞、B細胞に活性化マーカーであるCD25発現が観察された(FITC標識抗ヒトCD25抗体(ベクトンディッキンソン社製 Ca.555431)を用いたFACS解析)。調製された各細胞はStaining Buffer(SB)に2x106/mlで浮遊させ、細胞浮遊液を96-ウェル丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した(50μl/ウェル)。実施例13で作製された各々のFITC標識抗体を5μg/mlの濃度で抗ヒトCD3抗体(ベクトンディッキンソン社製 Ca.No.555340)あるいは抗ヒトCD14抗体(ベクトンディッキンソン社製 Ca.No.347497)あるいは抗ヒトCD19抗体(イムノテック社製Ca.No.IM1285)と共に氷温下30分間反応させた。陽性コントロールとして市販のFITC標識抗ヒトCD98抗体(クローンUM7F8)、陰性コントロールはFITC標識抗DNPヒトIgG1抗体を用いた。SBで1回洗浄した後、300μlのFACS緩衝液に懸濁し、FACSで各抗体の反応性を調べた。
【0137】
その結果、C2IgG1以外の抗体はUM7F8と同様の結合様式を示し、単球細胞、活性化T細胞、活性化B細胞に有意に結合した(図6および図7)。一方、C2IgG1は、いずれの細胞に対し有意な結合は観察されなかった(図6および図7)。
【0138】
HAEC(Cambrex社製)は、添付説明書に従い培養し、継代数が4回以内の細胞を用いた。培養したHAECに対するC2IgG1、K3、7-95-8、10-60-7、3-69-6、および1-40-1抗体の反応性を、上記と同法にて調べた。3.2ng/ml〜50μg/mlの濃度で各抗体反応させた結果、K3、7-95-8、10-60-7、3-69-6、1-40-1はHAECに結合したが、C2IgG1は、HAECに結合しなかった(図8)。
【0139】
一方、同条件下でヒト大腸癌細胞株DLD-1へ反応させると何れの抗体もある条件下(本実施例では、3μg/ml以下の抗体濃度)では、UM7F8よりDLD-1癌細胞特異性が高いことが判った(図8)。特にC2IgG1は、癌特異性の高い抗体であることが強く示唆された。以下の実験は、C2IgG1、K3、3-69-6を用いて実施した。
【0140】
実施例15:がん細胞株に対する各モノクローナル抗体の反応性
C2IgG1、K3、および3-69-6の大腸癌細胞株(DLD-1)、肺癌細胞株(H226)、前立腺癌細胞株(DU145)、メラノーマ細胞株(G361、SKMEL28、CRL1579)、非ホジキンリンパ腫株(Ramos)、膀胱癌細胞株(T24)、乳癌細胞株(MCF、MDA-MB-231)、膵臓癌細胞株(HS766T)、多発性骨髄腫細胞株(IM9)、赤芽球系白血病株(K562、図3参照)に対する各抗体の反応性の検討を実施例9と同法のFACS解析で行った。細胞株をStaining Buffer(SB)で2x106/mlに調製し、その細胞浮遊液を96ウェル丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した(50μl/ウェル)。5μg/mlに調製された抗体あるいはFITC標識抗体を50μl/ウェル加え、氷温下30分間反応させた。陰性コントロールは抗DNPヒトIgG1抗体あるいはFITC標識抗DNPヒトIgG1抗体を用いた。SBで1回洗浄した後、RPE蛍光標識ヤギ抗ヒトIgγ F(ab')2抗体(SuthernBiotech社製)をSBで200倍希釈したもの50μlを加え、氷温下30分間インキュベートした。FITC標識抗体の場合は、この操作は実施しなかった。SBで1回洗浄した後、300μlのFACS緩衝液に懸濁し、FACSで各細胞の平均蛍光強度を測定した。
【0141】
その結果、何れの抗体も各種癌細胞株に結合活性を有する抗体であることがわかった(図9、図10)。また、何れの抗体もColo205、SW480、 SW620、 LOVO、 LS180、および HT29のヒト大腸癌細胞株に強く結合した。
【0142】
実施例16:マウス癌モデルでのK3、C2IgG1、3-69-6の抗腫瘍効果
実施例4から実施例8で調製された組み換え体モノクローナル抗体K3、C2IgG1、および3-69-6の抗腫瘍効果を、以下に記載する方法に従ってマウス癌モデルを用いて検討した。
【0143】
5週令のBalb/cヌードマウス(日本クレア(株)社より購入)を各個体の体重をもとに5匹を1群として群分けした。100μlのPBSに5×106の大腸癌細胞Colo205と5μgの抗体を混合したものを腹部皮下に移植した。移植後2日目、4日目、6日目に100μg/100μlの溶媒(1%マウス血清入りPBS)に溶解させた抗体をマウス腹腔内に投与し、腫瘍の大きさを測定した。抗体の陰性コントロールとして溶媒を使用した。
【0144】
以上の実験の結果は、図11に示される通りであった。図中の各折れ線は個別のマウスのデータを示す。コントロール群は、5日目には総ての個体で癌細胞株の生着が観察され、12日目の腫瘍の平均体積(長径x短経x短経x0.5で算出)±SEは、165.55±31.71mm3であった。一方、C2IgG1群は、1個体のみコントロール群と同様な腫瘍増殖を示したが(12日目に腫瘍塊が169.44 mm3)、他の個体はC2IgG1抗体投与により強い抗腫瘍活性が観察され、28日目のコントロール群の腫瘍塊の平均体積±SEは1977.64±442.04で、C2IgG1抗体投与群は775.31±622.47であり、C2IgG1抗体は有意にColo205癌細胞由来腫瘍の増殖を抑制した(p<0.01)。K3群と3-69-6群は総ての個体で30日以上経過しても癌の生着は観察されなかった。また、各群の平均体重は、コントロール群のみ低下した(移植30日目にはK3群より約20%低下)。
【0145】
これらの結果より、K3、C2IgG1、および3-69-6は、癌細胞増殖抑制活性を有する抗体であることが観察された。
【0146】
実施例17:マウス同系担癌モデルに対するC2IgG1モノクローナル抗体の抗腫瘍効果
実施例4から実施例8で調製された組み換え体モノクローナル抗体C2IgG1の抗腫瘍効果を、以下に記載する方法に従ってマウス同系癌モデルを用いて検討した。
【0147】
実施例2で調製したhCD98/hLAT1−E発現CT26細胞 5×106cellsを移植したBalb/c (雌)を、腫瘍の体積から5匹ずつの2群に分けた。腫瘍体積が約90mm3(長径x短経x短経x0.5で算出)に成長した時点(0日目)と、3日目、5日目に100μg/100μlの溶媒(1%マウス血清入りPBS)のC2IgG1をマウス腹腔内に投与した。Controlは溶媒を投与した。その結果、C2IgG1は有意に生着腫瘍の増殖を強く抑制する活性があることが観察された(図12)。
【0148】
実施例18:C2IgG1およびK3抗体のサル細胞への交叉反応性
C2IgG1、およびK3のサル細胞(COS-7細胞)への交叉反応性をFACS解析で調べた。2x106/mlの細胞をStaining Buffer(SB)に浮遊させた。細胞浮遊液を96−well丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した(50μl/ウェル)。SBで5μg/mLに調製された抗体を50μl加え、氷温下30分間反応させた。陰性コントロールはDNPヒトIgG1抗体を用いた。SBで1回洗浄した後、SBで200倍希釈したRPE蛍光標識ヤギ抗ヒトIgγ F(ab‘)2抗体(SuthernBiotech社製)を50μl/ウェルを加え、氷温下30分間反応させた。SBで1回洗浄した後、300μlのFACS緩衝液に懸濁し、FACSで抗体の結合を示す蛍光強度を測定した。その結果、何れの抗体もCOS-7細胞株に結合し、C2IgG1、K3はサル細胞に交叉反応性を有する抗体であることがわかった(図13)。
【0149】
実施例19:マウス担癌モデルに対するC2IgG1の効果
C2IgG1の抗腫瘍活性を、以下に記載する方法に従ってマウス担癌モデルを用いて検討した。
【0150】
6週令のBalb/c-SCIDマウス(日本クレア(株)社より購入)の背部皮下に、バーキットリンパ腫細胞株Ramos(ATCCより購入)を3×106/マウス個体で移植した。移植13日後に、生着した腫瘍の大きさを測定し、腫瘍の大きさが30〜140mm3の担癌マウスを6匹1群として群分けした。担癌マウスの腹腔内に、C2IgG1を100mg/マウス個体(200mlのPBSに溶解したもの)をそれぞれ3回/週で投与した。陽性コントロールとしてRituximab(全薬工業株式会社)、陰性コントロールとして、PBSを使用した。腫瘍体積および体重を週3回測定した。腫瘍塊の長径、短径、高さを測定し、(長径)×(短径)×(高さ)÷2の値を腫瘍体積とした。
【0151】
結果を図14に示す。C2IgG1投与により、腫瘍移植後16日目から有意な腫瘍増殖抑制効果が認められた。
【0152】
実施例20:C2IgG1NSアミノ酸改変体
C2IgG1およびC2IgG1NSはともに組換え抗体を調製した際に凝集体含量が高い。そこで、配列番号47で表されるC2IgG1NSの軽鎖可変領域配列において、翻訳開始コドンATGに相当する5番目のM(メチオニン)を1位アミノ酸とし、そこから数えて117番目のI(イソロイシン)をその他のアミノ酸に置換した改変体の作製を行った。
【0153】
C2IgG1NS/ I117Nベクターの調製
軽鎖117位イソロイシンをアスパラギンに置換したC2IgG1NS / I117Nを調製することを目的とし、実施例6で調製したN5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として、GeneEditorTM in vitro Site-Directed Mutagenesis System(プロメガ社 No.Q9280)を用いた部位特異的変異導入法により、アミノ酸置換体をコードする各種の変異DNAを調製した。
【0154】
変異導入用オリゴヌクレオチド(5’末端リン酸化済み)として、C2NS Lc 117I/HYND-p:(5’-TCAGTATGGT AGCTCACCTN ATTTCACTTT CGGCCCTGGG ACC-3’(N=A・T・G・C)(配列番号69))を用いた。目的の変異導入用オリゴヌクレオチドと上記キット付属のSelection Oligonucleotideを鋳型DNAとアニーリングさせて変異導入鎖を合成した後、GeneEditorTM Antibiotic Selection Mix存在下では変異体のみが増殖することを利用して変異体を選択した。より具体的には、dsDNAテンプレートをアルカリ条件下(0.2M NaOH、0.2mM EDTA(最終濃度))室温で5分間インキュベートした後、2M酢酸アンモニウム(pH4.6)を10分の1容量加えて中和してからエタノール沈殿により回収した。アルカリ変性処理した鋳型DNAに、変異導入用オリゴヌクレオチドと新しい抗生物質耐性獲得用Selection Oligonucleotide(Bottom Select Oligo、5’末端リン酸化 5´-CCGCGAGACC CACCCTTGGA GGCTCCAGAT TTATC-3´(配列番号85))、及び、キット添付のアニーリングバッファーを加えた後、75℃で5分間保温し、37℃にゆっくり下げることによりアニーリングを行なった。次に、変異鎖の合成と連結のために、キット付属のSynthesis 10×buffer、T4 DNA Polymerase、及びT4 DNA ligaseを加えて、37℃で90分反応を行なった。GeneEditorTM Antibiotic Selection Mix存在下でコンピテントセルBMH 71-18 mutSに形質転換して培養した形質転換体大腸菌よりプラスミドDNAを調製し、更にそのDNAをエレクトロポレーション法により、ElectroMAX.DH10B Cells (インビトロジェン社No.18290-015) を形質転換後、GeneEditorTM Antibiotic Selection Mixを含むLBプレートに播種した。プレートに生じた形質転換体を培養して、プラスミドDNAを精製しDNA塩基配列を解析した。DNA塩基配列の結果、目的とするアミノ酸変異が導入されたC2IgG1NS変異体の発現ベクターを取得した。得られた1アミノ酸置換変異体蛋白を発現するプラスミドDNAをN5KG1-Val C2IgG1NS/I117Nベクターと命名した。
【0155】
C2IgG1NS/ I117Cベクターの調製
軽鎖117位イソロイシンをシステインに置換したC2IgG1NS / I117Cを調製することを目的とし、実施例6で調製したN5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として、GeneEditorTM in vitro Site-Directed Mutagenesis System(プロメガ社 No.Q9280)を用いた部位特異的変異導入法により、アミノ酸置換体をコードする各種の変異DNAを調製した。
【0156】
変異導入用オリゴヌクレオチド(5’末端リン酸化済み)として、C2NS Lc 117I/GRC-p(5’-TCAGTATGGT AGCTCACCTB GTTTCACTTT CGGCCCTGGG ACC-3’(B=C・G・T)(配列番号70))を用いた。目的の変異導入用オリゴヌクレオチドと上記キット付属のSelection Oligonucleotideを鋳型DNAとアニーリングさせて変異導入鎖を合成した後、GeneEditorTM Antibiotic Selection Mix存在下では変異体のみが増殖することを利用して変異体を選択した。より具体的には、dsDNAテンプレートをアルカリ条件下(0.2M NaOH、0.2 mM EDTA(最終濃度))室温で5分間インキュベートした後、2M酢酸アンモニウム(pH4.6)を10分の1容量加えて中和してからエタノール沈殿により回収した。アルカリ変性処理した鋳型DNAに、変異導入用オリゴヌクレオチドと新しい抗生物質耐性獲得用Selection Oligonucleotide(Bottom Select Oligo、5’末端リン酸化 5´-CCGCGAGACC CACCCTTGGA GGCTCCAGAT TTATC-3´(配列番号85))、及び、キット添付のアニーリングバッファーを加えた後、75℃で5分間保温し、37℃にゆっくり下げることによりアニーリングを行なった。次に、変異鎖の合成と連結のために、キット付属のSynthesis 10×buffer、T4 DNA Polymerase、及びT4 DNA ligaseを加えて、37℃で90分反応を行なった。GeneEditorTM Antibiotic Selection Mix存在下でコンピテントセルBMH 71-18 mutSに形質転換して培養した形質転換体大腸菌よりプラスミドDNAを調製し、更にそのDNAをエレクトロポレーション法により、ElectroMAX.DH10B Cells (インビトロジェン社 No.18290-015) を形質転換後、GeneEditorTM Antibiotic Selection Mixを含むLBプレートに播種した。プレートに生じた形質転換体を培養して、プラスミドDNAを精製しDNA塩基配列を解析した。DNA塩基配列の結果、目的とするアミノ酸変異が導入されたC2IgG1NS変異体の発現ベクターを取得した。得られた1アミノ酸置換変異体蛋白を発現するプラスミドDNAをN5KG1-Val C2IgG1NS/I117Cベクターと命名した。
【0157】
C2IgG1NS/ 117ILベクターの調製
軽鎖117位イソロイシンをロイシンに置換したC2IgG1NS / I117Lを、実施例6で調製したN5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として以下の方法により調製した。
【0158】
DNAの増幅には、東洋紡社のKOD-Plusを用いた。cDNA 1μl、10xKOD-Plus Buffer 5μl、dNTP mix 5μl、KOD-Plus 1μl、25mM MgSO4 2μl、FプライマーおよびRプライマーからなる組成の反応液を再蒸留水にて最終容量50μlとし、PCRに供した。
【0159】
C2NS Lc 117IL R(5’-GGTCCCAGGG CCGAAAGTGA ATAGAGGTGA GCTACCATAC TGCTG -3’(配列番号71))を合成し、C2NS Lc 117IL R とC2-1 Lc Bgl II F (5’- AGA GAG AGA GAT CTC TCA CCA TGG AAA CCC CAG CGCAGC TTC TCT TC -3’(配列番号18))を用い、N5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅産物をC2NSI117L−Fと命名した。次に、C2NS Lc 117IL F(5’- GCAGTATGGT AGCTCACCTC TATTCACTTT CGGCCCTGGG ACC -3’(配列番号72))とC2NS EcoRI R(5’- CCGGAATTCA ACACTCTCCC CTGTTGAAGC TCTTTGTGAC GG -3’(配列番号73))を用い、N5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅産物をC2NSI117L−Rと命名した。次にC2NSI117L−FとC2NSI117L−Rの2倍希釈液を各5μl入れ、プライマー無しで94℃15秒、55℃30秒、68℃60秒のサイクルを3回繰り返した。この反応液を99℃5分間加熱後5倍希釈し、5μlを鋳型としてC2-1 Lc Bgl II FプライマーとC2NS EcoRI Rプライマーを用い、94℃15秒、55℃30秒、68℃60秒のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅cDNA断片をBglII、EcoRIで消化し、同一酵素で解裂されていた前記C2重鎖遺伝子が入ったN5KG1-Val Larkベクターに導入した。挿入部分のDNA塩基配列を決定して、PCR増幅して挿入された配列に鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。得られた1アミノ酸置換変異体蛋白を発現するプラスミドDNAをN5KG1-Val C2IgG1NS/I117Lベクターと命名した。
【0160】
C2IgG1NS/ 117IMベクターの調製
軽鎖117位イソロイシンをメチオニンに置換したC2IgG1NS / I117Mを、実施例6で調製したN5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として以下の方法により調製した。
【0161】
DNAの増幅には、東洋紡社のKOD-Plusを用いた。cDNA 1μl、10xKOD-Plus Buffer 5μl、dNTP mix 5μl、KOD-Plus 1μl、25mM MgSO4 2μl、FプライマーおよびRプライマーからなる組成の反応液を再蒸留水にて最終容量50μlとし、PCRに供した。
【0162】
C2NS Lc 117IM R(5’- GGTCCCAGGG CCGAAAGTGA ACATAGGTGA GCTACCATAC TGCTG -3’(配列番号74))を合成し、C2NS Lc 117IM R とC2-1 Lc Bgl II F (5’- AGA GAG AGA GAT CTC TCA CCA TGG AAA CCC CAG CGCAGC TTC TCT TC -3’(配列番号18))を用い、N5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅産物をC2NSI117M−Fと命名した。次に、C2NS Lc 117IM F(5’- GCAGTATGGT AGCTCACCTA TGTTCACTTT CGGCCCTGGG ACC -3’(配列番号75))とC2NS EcoRI R(5’- CCGGAATTCA ACACTCTCCC CTGTTGAAGC TCTTTGTGAC GG -3’(配列番号76))を用い、N5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅産物をC2NSI117M−Rと命名した。次にC2NSI117M−FとC2NSI117M−Rの2倍希釈液を各5μl入れ、プライマー無しで94℃15秒、55℃30秒、68℃60秒のサイクルを3回繰り返した。この反応液を99℃5分間加熱後5倍希釈し、5μlを鋳型としてC2-1 Lc Bgl II FプライマーとC2NS EcoRI Rプライマーを用い、94℃15秒、55℃30秒、68℃60秒のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅cDNA断片をBglII、EcoRIで消化し、同一酵素で解裂されていた前記C2重鎖遺伝子が入ったN5KG1-Val Larkベクターに導入した。挿入部分のDNA塩基配列を決定して、PCR増幅して挿入された配列に鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。得られた1アミノ酸置換変異体蛋白を発現するプラスミドDNAをN5KG1-Val C2IgG1NS/I117Mベクターと命名した。
【0163】
C2IgG1NSアミノ酸改変体の作製
実施例7で示した方法により、C2IgG1NS/ I117Lベクター、C2IgG1NS/ I117Mベクター、C2IgG1NS/ I117N、C2IgG1NS/ I117Cベクターを添付説明書に従いFreeStyle293細胞(インビトロジェン社製)へ導入し、組み換え型抗体を発現させた。抗体の精製は実施例8に示した方法を一部改良して行った。6日目の培養上清を回収し、Steriflip-GP(MILLIPORE,SCGP00525)でfiltrationすることにより細胞等の雑排物を除去した。抗体を含む培養上清をProtein A(アマシャム)を用い、吸着緩衝液としてPBS、溶出緩衝液として20mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.4)を用いてアフィニティー精製した。溶出画分は200mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を添加してpH5.5付近に調整した。調製された抗体溶液は、vivaspin6(10KMW cut VIVASCIENCE,VS0601)を用いて濃縮(3000rpm)し、さらにPBSを添加し遠心することによりPBSに置換された精製抗体を取得した。精製抗体の濃度は、280nmの吸光度を測定し、1mg/mlを1.45 Optimal densityとして算出した。
【0164】
C2IgG1NSアミノ酸改変体の凝集体含有率の測定
得られたアミノ酸改変抗体10ug(0.1mg/ml)を用いて、各精製抗体の凝集体含有率を測定した。
【0165】
抗体溶液の凝集体含有率は、高速液体クロマトグラフ装置(島津社製)及びTSK−G3000 SWカラム(東ソー社製)と、溶媒として20mMリン酸ナトリウム、500mM NaCl pH7.0を用いて分析を行った。溶出位置をゲルろ過HPLC用分子量マーカー(オリエンタル酵母社)(Cat No.40403701)と比較することで、抗体蛋白の単量体とそれ以上の凝集体のピークを同定して、それぞれのピーク面積から凝集体の含有率を算出した。
【0166】
結果を図15に示す。図15によれば、上述のアミノ酸の改変により、凝集体含有率が減少することが明らかとなる。
【0167】
C2IgG1NSアミノ酸改変体の凝集体含量の測定
実施例14および15の方法に従い、C2IgG1NSアミノ酸改変体の腫瘍細胞株、ヒトCD98/ヒトLAT1強制発現株、およびHAECに対する反応性を、FACSにより解析した。
【0168】
結果を図16Aおよび図16Bに示す。上述のアミノ酸改変抗体、特にC2IgG1NS/I117Lは、ヒトCD98とLAT1を強制発現させたL929細胞に結合し、無処置のL929に対しては結合しなかった(図16A)。また、これらのアミノ酸改変抗体は、HAECに結合せず、colo205、Ramos、およびDLD−1といった各種癌細胞に対して結合性を示した(図16B)。
【0169】
これらの結果は図2Aおよび図8に示されたC2IgG1の結合特性と同様であることから、上述のアミノ酸改変抗体、特にC2IgG1NS/I117Lは、凝集体含有率が低く、癌細胞に対してC2IgG1と同様の結合特異性を有し、かつC2IgG1と同様の抗腫瘍活性が期待できる抗体であるといえる。
【0170】
<C2IgG1NSアミノ酸改変体の重鎖可変領域アミノ酸配列(C2IgG1重鎖可変領域アミノ酸配列と同一)>(配列番号43)
STTMKHLWFFLLLVAAPRWVLSQLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKSQFFLKLSSVTAADTAVYYCARQGTGLALFDYWGQGTLVTVSS
【0171】
<C2IgG1NSアミノ酸改変体の重鎖可変領域核酸配列(C2IgG1NS重鎖可変領域核酸配列と同一)>(配列番号42)
GTCGACCACCATGAAGCACCTGTGGTTCTTCCTCCTGCTGGTGGCGGCTCCCAGATGGGTCCTGTCCCAGCTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTGGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCTCCATCAGCAGTAGTAGTTACTACTGGGGCTGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGAGTATCTATTATAGTGGGAGTACCTACTACAACCCGTCCCTCAAGAGTCGAGTCACCATATCCGTAGACACGTCCAAGAACCAGTTCTCCCTGAAGCTGAGCTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTGTGTATTACTGTGCGAGACAAGGGACGGGGCTCGCCCTATTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
【0172】
<C2IgG1NS/117ILの軽鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号77)
RSLTMETPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPLFTFGPGTKVDIK
【0173】
<C2IgG1NS/117ILの軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号78)
AGATCTCTCACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTTCTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTCGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCACCTCTATTCACTTTCGGCCCTGGGACCAAAGTGGATATCAAA
【0174】
<C2IgG1NS/117IMの軽鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号79)
RSLTMETPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPMFTFGPGTKVDIK
【0175】
<C2IgG1NS/117IMの軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号80)
AGATCTCTCACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTTCTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTCGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCACCTATGTTCACTTTCGGCCCTGGGACCAAAGTGGATATCAAA
【0176】
<C2IgG1NS/117INの軽鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号81)
RSLTMETPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPNFTFGPGTKVDIK
【0177】
<C2IgG1NS/117INの軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号82)
AGATCTCTCACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTTCTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTCGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCACCTAATTTCACTTTCGGCCCTGGGACCAAAGTGGATATCAAA
【0178】
<C2IgG1NS/117ICの軽鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号83)
RSLTMETPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPCFTFGPGTKVDIK
【0179】
<C2IgG1NS/117ICの軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号84)
AGATCTCTCACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTTCTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTCGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCACCTTGTTTCACTTTCGGCCCTGGGACCAAAGTGGATATCAAA
【関連出願の参照】
【0001】
本特許出願は、先に出願された日本国における特許出願である特願2006−105013号(出願日:2006年4月6日)に基づく優先権の主張を伴うものである。特願2006−105013号における全開示内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【発明の背景】
【0002】
本発明は、独立行政法人科学技術振興機構の「アミノ酸輸送蛋白抗体抗癌薬」に関する新技術開発委託に係る開発の成果に係る発明である。
【0003】
発明の分野
本発明は、癌細胞の細胞膜に由来し、かつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質と複合体を形成しているCD98に対し、特異的結合能を有するモノクローナル抗体、およびそれを用いた腫瘍増殖抑制または癌治療の医薬用途に関する。
【0004】
背景技術
癌(悪性腫瘍)は、わが国における死亡原因の第一位を占める。その患者数は年々増加してきており、有効性および安全性の高い薬剤や治療法の開発が強く望まれている。これまでの抗癌剤は、しばしば、癌細胞を特異的に殺す能力が低く、正常な細胞にも作用し、多くの薬物有害反応が起きていた。近年、癌細胞に高発現している分子(癌関連抗原)を標的とした抗癌剤の開発が進んでおり、白血病、乳癌、肺癌などにおいて有効な治療手段となってきている。
【0005】
細胞の細胞膜上に発現している癌関連抗原に対して特異的に結合する抗体は、抗体依存性細胞性細胞傷害活性(antibody dependent cell cytotoxicity(ADCC))や補体依存性細胞傷害活性(complement-dependent cell-mediated cytotoxicity(CDC))等の免疫反応を介して癌細胞を攻撃し、あるいは、癌細胞の増殖に必要な細胞増殖シグナル伝達を抑え癌治療に有用であることが示されてきた。
【0006】
しかしながら、抗体が治療に使われている癌種は、乳癌、難治性慢性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病等限られた癌種であり、また、一つの抗体で多様な癌種の治療に用いることができる抗体は未だにない。そのため、多種の癌細胞に強く結合し抗癌活性を持つ抗体の取得が求められていた。
【0007】
CD98(4F2)は、多種の癌細胞で高発現していることが知られている529アミノ酸残基からなる約80kDaのtype II膜貫通糖タンパク鎖である。これは、アミノ酸輸送活性をもつ約40kDaのタンパク質とジスルフィド結合によりヘテロ二量体を形成し、細胞膜上に発現している。CD98に結合すると考えられているアミノ酸輸送タンパクとしては6種が知られている。CD98は、リンパ球の活性化抗原として同定されたが、細胞増殖シグナル伝達、インテグリンの活性化、細胞融合など多くの生物学的機能に関与すると考えられている(Haynes B. F et al., J. Immunol., (1981), 126, 1409-1414、Lindsten T. et al., Mol. Cell Biol., (1988), 8, 3820-3826、Teixeira S. et al., Eur. J. Biochem., (1991), 202, 819-826、L.A.Diaz Jr. et al., J Biol Regul Homeost Agents., (1998) 12, 25-32)。
【0008】
癌細胞は増殖の優位性を確保する為に様々な仕組みを有している。例えば、癌細胞が、増殖に必要な必須アミノ酸を周辺細胞に対して優先的に取り込むために中性アミノ酸トランスポーターを過剰発現しているのもその一つと考えられる。近年、癌細胞に特異的に高く発現しているアミノ酸トランスポーターL-type amino acid transporter 1(LAT1)がクローニングされた(Kanai et al., J. Biol. Chem. (1998), 273, 23629-23632)。LAT1は、CD98と複合体を形成し、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、ヒスチジン等の大型の側鎖を持つ中性アミノ酸をナトリウムイオン非依存的に輸送する。またLAT1は、脳、胎盤、骨髄、精巣を除く殆どの正常組織では発現が低いか認められないが、大腸癌、胃癌、乳癌、膵癌、腎癌、喉頭癌、食道癌、肺癌等のヒト悪性腫瘍組織でCD98と共に発現が亢進していることが知られている(Yanagida et al., Biochem. Biophys. Acta, (2001), 1514, 291-302)。LAT1の発現を低下させ、アミノ酸取り込みを抑制すると、腫瘍の増殖が抑えられることが癌移植マウスモデルで報告されており(特開2000−157286号公報)、LAT1の活性を抑えることは癌の治療法に有望であると考えられる。
【0009】
ヒトCD98に対する抗体については、ヒトCD98発現細胞株をマウス等の非ヒト哺乳動物に免疫することにより作製されたマウスモノクローナル抗体が報告されている(前掲Haynes et al、Masuko T. et al., Cancer Res., (1986), 46, 1478-1484、およびFreidman AW. et al., Cell. Immunol., (1994), 154, 253-263)。しかし、これら抗CD98抗体がLAT1のアミノ酸取り込みを抑制するかどうかについては知られていない。さらに、LAT1の細胞内領域の抗体は取得されているが、生細胞膜上のLAT1に結合できる抗体は報告されていない。したがって、癌細胞膜上に発現しているCD98あるいはLAT1に結合し、LAT1のアミノ酸取り込みを抑制する抗体が取得されれば、広範囲にわたる癌の優れた治療薬になると考えられる。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは今般、癌細胞の細胞膜由来のCD98でありかつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質と複合体を形成しているCD98に特異的結合能を有する抗体を得ることに成功し、当該抗体が、癌細胞の増殖を抑制する作用を有することから、この性質を用い医薬組成物の有効成分、より具体的には腫瘍の予防または治療剤の有効成分として有用であるとの知見を得た。本発明は係る知見にもとづくものである。
【0011】
よって、本発明は、癌細胞の細胞膜由来のCD98でありかつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質と複合体を形成しているCD98に特異的結合能を有するヒト抗体およびその機能的断片の提供をその目的としている。
【0012】
さらに本発明は、上記の本発明によるヒト抗体およびその機能的断片を有効成分とする医薬組成物または腫瘍の予防または治療剤の提供をその目的としている。
【0013】
そして本発明によるヒト抗体およびその機能的断片は、癌細胞の細胞膜由来のCD98でありかつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質と複合体を形成しているCD98に特異的結合能を有することを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明による医薬組成物または腫瘍の予防または治療剤は、上記本発明によるヒト抗体またはその機能断片を有効成分として含んでなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のヒトCD98/ヒトLAT1発現CT26細胞株に対する結合性を示す図である。
【図2A】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のヒトCD98発現L929細胞株に対する結合性を示す図である。
【図2B】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のヒトCD98発現L929細胞株に対する結合性を示す図である。
【図3】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のツニカマイシン処理K562ヒト細胞株に対する結合性を示す図である。
【図4A】ヒト抗CD98モノクローナル抗体の各種マウス・ヒトキメラCD98発現L929細胞株に対する結合性を示す図である。
【図4B】ヒト抗CD98モノクローナル抗体の各種マウス・ヒトキメラCD98発現L929細胞株に対する結合性を示す図である。
【図5】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のT24ヒト膀胱癌細胞株のアミノ酸取り込み抑制活性を示す図である。
【図6A】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のヒト末梢血T細胞、B細胞、単球細胞に対する結合性を示す図である。
【図6B】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のヒト末梢血T細胞、B細胞、単球細胞に対する結合性を示す図である。
【図7】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のPHA活性化ヒト末梢血T細胞、B細胞に対する結合性を示す図である。
【図8】ヒト抗CD98モノクローナル抗体のヒト大動脈内皮細胞(HAEC)とヒト大腸癌細胞株(DLD−1)に対する結合性を示す図である。
【図9A】ヒト抗CD98モノクローナル抗体の各種がん細胞株に対する結合性を示す図である。
【図9B】ヒト抗CD98モノクローナル抗体の各種がん細胞株に対する結合性を示す図である。
【図10A】ヒト抗CD98モノクローナル抗体の各種がん細胞株に対する結合性を示す図である。
【図10B】ヒト抗CD98モノクローナル抗体の各種がん細胞株に対する結合性を示す図である。
【図11】ヒト抗CD98モノクローナル抗体K3、3-69-6、C2IgG1を、腫瘍細胞を移植したヌードマウスに投与したときの、個々のマウスでの腫瘍塊の大きさを示す図である。
【図12】90mm3に成長した腫瘍を有する担癌マウスに対し、ヒト抗CD98モノクローナル抗体C2IgG1を100μg/マウス個体で3回隔日投与したときの腫瘍の大きさを測定した結果を示す図である。
【図13】ヒト抗CD98モノクローナル抗体K3、C2IgG1のサル細胞株COS-7に対する交叉反応性を示す図である。
【図14】バーキットリンパ腫細胞株Ramosを移植した担癌マウスにおいて、腫瘍が30〜140mm3に成長してからヒト抗CD98モノクローナル抗体C2IgG1およびRituximabを100mg/マウス個体でそれぞれ3回/週投与したときの腫瘍の大きさを測定した結果を示す図である。
【図15】HPLCで測定した、ヒト抗CD98モノクローナル抗体C2IgG1NSアミノ酸改変抗体の精製後の凝集体含有率を示す図である。
【図16A】ヒト抗CD98モノクローナル抗体K3とC2IgG1、およびC2IgG1の各アミノ酸改変抗体の、ヒトCD98あるいはヒトLAT1強制発現L929細胞に対する結合性を示す図である。
【図16B】ヒト抗CD98モノクローナル抗体K3とC2IgG1、C2IgG1の各アミノ酸改変抗体の、ヒト大腸癌細胞株(DLD-1)、バーキットリンパ腫細胞株(Ramos)、ヒト大腸癌細胞株(Colo205)、およびヒト大動脈内皮細胞(HAEC)、に対する結合性を示す図である。
【発明の具体的説明】
【0016】
微生物の寄託
本発明により提供されるヒト抗体の可変領域をコードする核酸配列を含むプラスミドベクターC2IgG1/pCR4およびK3/pCR4は、平成18年3月14日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 茨城県つくば市東1丁目1番1中央第6)にそれぞれFERM BP−10551(識別のための表示:C2IgG1/pCR4)および、FERM BP−10552(識別のための表示:K3/pCR4)として寄託されている。
【0017】
定義
本明細書または図面においてアミノ酸を表記するために用いられるアルファベットの一文字は、各々次に示すアミノ酸を意味する。(G)グリシン、(A)アラニン、(V)バリン、(L)ロイシン、(I)イソロイシン、(S)セリン、(T)スレオニン、(D)アスパラギン酸、(E)グルタミン酸、(N)アスパラギン、(Q)グルタミン、(K)リジン、(R)アルギニン、(C)システイン、(M)メチオニン、(F)フェニルアラニン、(Y)チロシン、(W)トリプトファン、(H)ヒスチジン、(P)プロリン。またDNAを表記するために用いられるアルファベットの一文字の意味は、各々次に示す。(A)アデニン、(C)シトシン、(G)グアニン、(T)チミン。
【0018】
CD98およびそのモノクローナル抗体
本発明によるヒトモノクローナル抗体およびその機能的断片(以下、特にことわらない限り、本明細書において「本発明による抗体」と略す)が特異的結合能を有するCD98は、上述のとおり、529アミノ酸残基からなるtype II膜貫通糖タンパク鎖であり、アミノ酸輸送活性を有するタンパク質と細胞膜上でヘテロ二量体を形成しているものである。ここで、アミノ酸輸送活性を有するタンパク質の好ましい具体例としては、LAT1が挙げられる。また、本発明の好ましい態様によれば、CD98はヒトCD98である。なお、ヒトCD98のタンパク質の一次構造は公知であり(配列番号66;GenBank/EMBL/DDBJ accession No. AB018010)、また、ヒトLAT1のタンパク質も公知である(配列番号68;GenBank/EMBL/DDBJ accession no. AB018009)。
【0019】
本発明による抗体は、癌細胞の細胞膜由来のCD98でありかつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質と複合体を形成しているCD98に特異的結合能を有し、他方、ヒト正常細胞、例えば正常ヒト血管内皮細胞、正常ヒト末梢血単球、およびリンパ球に結合しない。結合能を有する癌細胞の例としては、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、黒色腫、脳腫瘍、リンパ腫、膀胱癌、膵臓癌、多発性骨髄腫、腎細胞癌、白血病、T細胞リンパ腫、胃癌、膵臓癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、頭頚部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、きょう膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫またはウィルムス腫瘍等を構成する癌細胞が挙げられ、より具体的には、大腸癌細胞株(DLD-1、Colo205、SW480、SW620、LOVO、LS180、およびHT29)、肺癌細胞株(H226)、前立腺癌細胞株(DU145)、メラノーマ細胞株(G361、SKMEL28、CRL1579)、非ホジキンリンパ腫株(Ramos)、膀胱癌細胞株(T24)、乳癌細胞株(MCF、MDA-MB-231)、膵臓癌細胞株(HS766T)、多発性骨髄腫細胞株(IM9)、赤芽球系白血病株(K562)が挙げられる。本発明による抗体は、このような多様多種な癌細胞に結合能を有する点で有利である。
【0020】
本発明による抗体の、癌細胞への特異的な結合能は、本発明による抗体の有用性を高いものとする。すなわち、後記するように、本発明の好ましい態様の抗体は、LAT1を介した細胞内へのアミノ酸取り込みを有意に阻害するため、癌細胞にのみ結合することは有利であり、さらに本発明による抗体を、他の薬剤と結合させてそれを癌細胞へ送達するためのターゲティング剤として有利に用いることが出来る。
【0021】
また、本発明による抗体は抗腫瘍活性を有する。本発明の好ましい態様による抗体は、LAT1を介した細胞内へのアミノ酸取り込みを有意に阻害する性質を有する。従って、本発明による抗体の抗腫瘍活性は、ADCCおよびCDCによる免疫システムを用いて特異的に傷害することに加え、このようなアミノ酸取り込み阻害によってもたらされるものと考えられる。本発明のより具体的な態様によれば、本発明による抗体は、膀胱癌細胞株T24細胞のアミノ酸取り込みを有意に阻害する。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による抗体は、後記する(a)配列番号29および31、(b)配列番号41および47、および(c)配列番号43および47のいずれかの二配列を、重鎖可変領域および軽鎖可変領域として有する。さらに、別の態様によれば、本発明による抗体は、プラスミドベクターK3/pCR4(FERM BP−10552)またはC2IgG1/pCR4(FERM BP−10551)に含まれる、ベクターpCR4に由来する配列以外の配列によってコードされる配列を可変領域として有する。この態様による抗体の可変領域のアミノ酸配列は、上記のいずれかのプラスミドベクターから得られる、ベクターpCR4に由来する配列を含まないBg1II−BsiWI断片(軽鎖可変領域)およびSalI−NheI断片(重鎖可変領域)によってコードされるものである。
【0023】
本発明による抗体の機能的断片とは、本発明による抗体が特異的に結合する抗原に対して、特異的に結合する抗体の断片を意味し、より具体的にはF(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、disulphide−linked FV、Single−Chain FV(scFV)およびこれらの重合体等が挙げられる(D.J.King.,Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies.,1998 T.J.International Ltd)。このような抗体断片は慣用法、例えばパパイン、ペプシン等のプロテアーゼによる抗体分子の消化、あるいは公知の遺伝子工学的手法により得ることができる。
【0024】
本発明において、「ヒト抗体」とは、ヒト由来の抗体遺伝子の発現産物である抗体を意味する。ヒト抗体は、後述のようにヒト抗体遺伝子座を導入し、ヒト由来抗体を産生する能力を有するトランスジェニック動物に抗原を投与することにより得ることができる。該トランスジェニック動物としてマウスが挙げられ、ヒト抗体を産生し得るマウスの作出方法は、例えば、国際公開WO02/43478号公報に記載されている。
【0025】
本発明による抗体には、抗体を構成する重鎖および/または軽鎖の各々のアミノ酸配列において一若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する重鎖および/または軽鎖からなるモノクローナル抗体も包含される。本発明による抗体のアミノ酸配列中への、このようなアミノ酸の部分的改変(欠失、置換、挿入、付加)は、そのアミノ酸配列をコードする塩基配列を部分的に改変することにより導入することができる。この塩基配列の部分的改変は、既知の部位特異的変異導入法(Site specific mutagenesis)を用いて常法により導入することができる(Proc Natl Acsd Sci USA.,1984 Vol815662;Sambrook et al.,Molecular Cloning A Laboratory Manual(1989)Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。
【0026】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による抗体は、軽鎖117番目におけるイソロイシンが他のアミノ酸残基、例えば、メチオニン、アスパラギン、ロイシンまたはシステインに置換されたものとされる。このような抗体の好ましい例としては、(d)配列番号43および77、(e)配列番号43および79、(f)配列番号43および81、ならびに(g)配列番号43および83のいずれかの二配列を、重鎖可変領域および軽鎖可変領域として有するものがある。
【0027】
本発明による抗体には、いずれのイムノグロブリンクラスおよびサブクラスを有する抗体も包含されるが、本発明の好ましい態様によれば、ヒトイムノグロブリンクラスおよびサブクラスを有する抗体であり、好ましいクラス、サブクラスはイムノグロブリンG(IgG)、特にIgG1であり、好ましい軽鎖はκである。
【0028】
また、本発明による抗体には、当業者に周知である遺伝子工学的改変(例えば、EP 0 314 161公報)により異なるサブクラスのものに変換されたものも包含される。すなわち、本発明による抗体の可変領域をコードするDNAを用いて、遺伝子工学的手法により元のサブクラスとは異なるサブクラスの抗体を得ることができる。
【0029】
ADCCは、Macrophage, NK細胞、好中球などの表面に発現しているFc Receptorを介して、抗体の定常領域と結合することにより細胞を認識し、認識した細胞が活性化することにより誘導される、細胞障害活性を意味し、一方、CDCは抗体が抗原と結合することによって、活性化された補体系によって引き起こされる細胞障害活性を意味し、これらの活性は、抗体のサブクラスによってその活性の強弱が異なること、そしてそれは抗体の定常領域の構造の違いに起因することが明らかにされている(Charles A. Janeway et. al. Immunobiology, 1997, Current Biology Ltd/Garland Publishing Inc.)。
【0030】
従って、例えば、本発明による抗体のサブクラスを、IgG2またはIgG4に変換することにより、Fcレセプターに対する結合度の低い抗体を取得することができる。逆に、本件発明の抗体のサブクラスをIgG1またはIgG3に変換することにより、Fcレセプターに対する結合度の高い抗体を取得することができる。上記ADCCおよびCDC活性を期待する場合は抗体サブクラスがIgG1であることが望ましい。
【0031】
異なるサブクラスの抗体をIgG1に変換する場合、例えば抗体産生ハイブリドーマから可変領域だけを単離し、ヒトIgG1の定常領域を含むベクター、例えばN5KG1-Val Larkベクター(IDEC Pharmaceuticals, N5KG1(US patent 6001358)に導入することにより作製することができる。
【0032】
さらに、本発明による抗体の定常領域のアミノ酸配列を遺伝子工学的に改変すること、あるいはそのような配列を有する定常領域配列と結合することにより、Fcレセプターに対する結合度を変化させること(Janeway CA. Jr. and Travers P.(1997),Immunobiology, Third Edition, Current Biology Ltd./Garland Phulishing Inc.参照)、あるいは補体に対する結合度を変化させること(Mi-Hua Tao, et al. 1993. J.Exp.Med参照)は可能である。例えば、重鎖定常部分のEUナンバリングシステム(Sequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242 を参照)における331番目のプロリン(P)をコードする配列CCCをセリン(S)をコードするTCCに変異させプロリンをセリンに置換することにより補体に対する結合度を変化させることができる。
【0033】
例えば、仮に、本発明による抗体が、単独では細胞死誘導活性がない場合、Fcレセプターを介した抗体依存性細胞障害活性(ADCC)や補体依存性細胞傷害活性(CDC)による抗腫瘍活性を有する抗体が望ましいが、抗体単独で細胞死誘導活性がある場合はFcレセプターとの結合度が低い抗体がより望ましい場合もある。
【0034】
また免疫抑制剤について考えた場合、T細胞と抗原提示細胞の結合のみを立体的に阻害する場合などADCC活性或いはCDC活性を有さない抗体が望ましい。また、ADCC活性或いはCDC活性が毒性の原因となりうる場合、毒性の原因となる活性をFc部分の変異あるいはサブクラスを変更することにより回避した抗体が望ましい場合もある。
【0035】
以上を考慮し、必要であれば異なるサブクラスに遺伝子工学的に改変することにより、本発明による抗体を、ADCCまたはCDCにより癌細胞を特異的に傷害させうるものとすることができる。
【0036】
本発明の別の好ましい態様によれば、本発明による抗体は、ヒトCD98のアミノ酸配列(配列番号66)中の連続または不連続の少なくとも8個のアミノ酸残基によって構成されるエピトープを認識するものであることが好ましい。本発明のより好ましい態様によれば、本発明による抗体は、ヒトCD98のアミノ酸配列中の371〜529アミノ酸の領域の一部分に結合性を有するか、または1〜371アミノ酸の領域の一部分に結合性を有するものであることが好ましい。
【0037】
本発明の別の態様によれば、本発明による抗体として、ヒトCD98およびサルCD98に対して交叉反応を示す性質を有する抗体が提供される。このような抗体は、ヒトCD98とサルCD98において、同一または極めて類似したエピトープ構造を認識するものと想定され、ヒトに対する臨床試験に先立ちサルを実験動物とした種々の試験が可能であるという利点を有する。
【0038】
CD98抗体の作製
本発明による抗体は、例えば、以下に述べる方法によって製造することができる。
ヒトCD98/ヒトLAT1若しくはその一部、または抗原の抗原性を高めるための適当な物質(例えば、bovine serum albumin等)との結合物、またはヒトCD98/ヒトLAT1を細胞表面に多量に発現している細胞を、必要に応じて免疫賦活剤(Freund’s Adjuvant等)とともに、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ等の非ヒト哺乳動物に免疫する、またはヒトCD98/ヒトLAT1を組み込んだ発現ベクターを非ヒト哺乳動物に投与することにより免疫感作を行う。本発明による抗体は、免疫感作動物から得た抗体産生細胞と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマを調製し、ハイブリドーマをクローン化し、免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを選択することによって取得することができる。
【0039】
以下にさらに具体的に本発明による抗体の作製法について詳述するが、抗体の作製法はこれに制限されず、例えば脾細胞以外の抗体産生細胞およびミエローマを使用することもできる。
【0040】
抗原としては、CD98をコードするDNAを動物細胞用発現ベクターに組み込み、該発現ベクターを動物細胞に導入し、取得した形質転換株そのものを使用できる。
【0041】
CD98は多くの癌細胞表面でLAT1とヘテロ二量体を形成しているため、LAT1をコードするDNAを同様に発現ベクターに組み込み、CD98とLAT1が共発現している形質転換株を抗原として用いることでLAT1のアミノ酸取り込みを阻害する抗体の取得が期待できる。
【0042】
動物細胞用発現ベクターとしては例えばpEGF-N1(ベクトン・ディキンソン・バイオサイエンス・クロンテック社製)などのベクターを用いることができ、適当な制限酵素で挿入部位を開裂し、同一酵素で開裂されたヒトCD98あるいはヒトLAT1を連結することにより、目的遺伝子導入用ベクターが調製できる。そして、調製した発現ベクターを例えばL929細胞(American Type Culture Collection No.CCL-1)といった細胞を宿主として導入することにより、ヒトCD98およびヒトLAT1を高発現した細胞を作製できる。
宿主への遺伝子の導入方法は公知であり、任意の方法(例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等)が挙げられる。
【0043】
こうして作製した形質転換細胞はCD98抗体を作製するための免疫原とすることができる。さらに、発現ベクターそのものを免疫原とすることもできる。
【0044】
ヒトCD98は、公知の塩基配列またはアミノ酸配列に基づいて、遺伝子組換え技術のほか、化学的合成法、細胞培養方法等のような技術的分野において知られる方法を適宜用いることにより製造することができる。そしてこのようにして得られたヒトCD98タンパクを抗原としてCD98抗体を作製することも可能である。ヒトCD98の部分配列は、後述する技術的分野において知られる方法に従って、遺伝子組換え技術または化学的合成法により製造することもできるし、またヒトCD98をタンパク分解酵素等を用いて適切に切断することにより製造することができる。
【0045】
上述のようにして得た抗原を、以下のように免疫する。すなわち、作製した抗原を、抗原性を高めるための適当な物質(例えば、bovine serum albumin等)、および必要に応じて免疫賦活剤(Freundの完全若しくは不完全adjuvant等)とともに混合し、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ等の非ヒト哺乳動物に免疫する。また好ましくは、再配列されていないヒト抗体遺伝子を保持し、免疫感作により当該免疫原に特異的なヒト抗体を産生する非ヒト動物を用いることにより、本発明の抗体はヒト抗体であってもよい。この場合、ヒト抗体産生動物としては、例えば富塚らの文献[Tomizuka et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000 Vol 97:722]に記載されているヒト抗体産生トランスジェニックマウスが挙げられる。
【0046】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの調製は、ケーラーおよびミルシュタインらの方法(Nature.,1975 Vol.256:495−497)およびそれに準じて行うことができる。即ち、前述の如く免疫感作された動物から取得される脾臓、リンパ節、骨髄または扁桃等、好ましくはリンパ節または脾臓に含まれる抗体産生細胞と、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギまたはヒト等の哺乳動物に由来する自己抗体産生能のないミエローマ細胞とを、細胞融合させることにより調製される。細胞融合は例えば、ポリエチレングリコール(例えば分子量1500〜6000)等の高濃度ポリマー溶液中、通常約30〜40℃、約1〜10分間、抗体産生細胞とミエローマ細胞を混合することによって行うことができる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンのスクリーニングは、ハイブリドーマを、例えばマイクロタイタープレート中で培養し、増殖の見られたウェル中の培養上清の免疫抗原に対する反応性を、例えばELISA等の酵素免疫測定法、ラジオイムノアッセイ、蛍光抗体法などの免疫学的方法を用いて測定することにより行なうことができる。
【0047】
ハイブリドーマからのモノクローナル抗体の製造は、ハイブリドーマをインビトロで培養して培養上清から単離することができる。また、マウス、ラット、モルモット、ハムスターまたはウサギ等の腹水中等でのインビボで培養し、腹水から単離することもできる。また、ハイブリドーマ等の抗体産生細胞からモノクローナル抗体をコードする遺伝子をクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主(例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳類細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞など)に導入し、遺伝子組換え技術を用いて組換型抗体を調製することができる(P.J.Delves.,ANTIBODY PRODUCTION ESSENTIAL TECHNIQUES.,1997 WILEY、P.Shepherd and C.Dean.,Monoclonal Antibodies.,2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS,J.W.Goding.,Monoclonal Antibodies:principles and practice.,1993 ACADEMIC PRESS)。さらに、トランスジェニック動物作製技術を用いて目的抗体の遺伝子が内在性遺伝子に組み込まれたトランスジェニックなウシ、ヤギ、ヒツジまたはブタを作製し、そのトランスジェニック動物のミルク中からその抗体遺伝子に由来するモノクローナル抗体を大量に取得することも可能である。ハイブリドーマをインビトロで培養する場合には、培養する細胞種の特性、試験研究の目的および培養方法等の種々条件に合わせて、ハイブリドーマを増殖、維持および保存させ、培養上清中にモノクローナル抗体を産生させるために用いられるような既知栄養培地または既知の基本培地から誘導調製されるあらゆる栄養培地を用いて実施することが可能である。
【0048】
産生されたモノクローナル抗体は、当該分野において周知の方法、例えばプロテインAカラムによるクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、硫安塩析法、ゲル濾過、アフィニティクロマトグラフィー等を適宜組み合わせることにより精製することができる。
【0049】
抗体の医薬用途
本発明による抗体は、まず、その癌細胞の細胞膜由来のCD98でありかつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質と複合体を形成しているCD98への特異的結合能ゆえ、治療用薬剤とコンジュゲートすることによって、癌細胞への薬物の送達またはミサイル療法等の治療目的に使用可能な複合体を形成できる。
【0050】
抗体へ結合させる治療用薬剤の例としては、特に限定されないが、例えば、ヨード(131Iodine:131I,125Iodine 125I)、イットリウム(90Yttrium:90Y)、インジウム(111Indium:111In)、テクネチウム(99mTechnetium:99mTc)等の放射核種(J.W.Goding.,Monoclonal Antibodies:principles and practice.,1993 ACADEMIC PRESS)、緑膿菌毒素(Pseudomonas exotoxin)、ジフテリアトキシン(diphtheria toxin)、リシン(Ricin)のような細菌毒素、およびメトトレキセート(Methotrexate)、マイトマイシン(mitomycin)、カリキアマイシン(Calicheamicin)などの化学療法剤(D.J.King.,Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies.,1998 T.J.International Ltd、M.L.Grossbard.,Monoclonal Antibody−Based Therapy of Cancer.,1998 Marcel Dekker Inc)等が挙げられ、より好ましくは、ラジカル生成を誘導するセレン化合物が挙げられる。
【0051】
抗体と治療用薬剤の結合は共有または非共有結合(例えばイオン結合)のいずれでもよい。例えば、抗体分子中の反応性基(例えばアミノ基、カルボキシル基、水酸基等)または配位性基を利用し、必要に応じてより反応性の基を結合するかまたは反応性の基に変換した後、該反応性基と反応して結合を形成しうる官能基(細菌毒素、化学療法剤の場合)または該配位性基との間で錯体を形成しうるイオン性基(放射性核種の場合)をもつ治療用薬剤と抗体とを接触させることによって、本発明の複合体を得ることができる。あるいは複合体の形成に際してビオチン−アビジン系の利用も可能であろう。
【0052】
また、治療用薬剤がタンパク質またはペプチドである場合は、遺伝子工学的手法により抗体と前記タンパク質またはペプチドとの融合タンパク質として生産することも可能である。
【0053】
また、本発明による抗体は抗腫瘍活性を有することから、それ自体を抗腫瘍剤として用いることが出来る。さらに、医薬組成物、とりわけ腫瘍の予防または治療剤の有効成分として用いることが出来る。
【0054】
従って、本発明による抗体または医薬組成物は、ヒトCD98/ヒトLAT1を発現している細胞に起因する可能性を有する種々の疾患または症状の治療または予防への適用が可能である。その疾患または症状としては、各種悪性腫瘍が挙げられ、腫瘍の例としては、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、黒色腫、脳腫瘍、リンパ腫、膀胱癌、膵臓癌、多発性骨髄腫、腎細胞癌、白血病、T細胞リンパ腫、胃癌、膵臓癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、頭頚部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、きょう膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫またはウィルムス腫瘍等であり、本発明の抗体を適用する際の腫瘍は1種類に限られず、複数種類の腫瘍が併発したものでもよい。また、本発明のヒトモノクローナル抗体は、原発性の局所癌に罹患している患者の延命にも適用可能である。また、CD98が発現している免疫担当細胞に対して本発明の医薬組成物を選択的に作用させることができる。
【0055】
本発明による抗体、または治療用薬剤と結合した抗体を含有する医薬は、医薬組成物として提供されることが好ましい。
【0056】
このような医薬組成物には、治療上有効量の治療用薬剤が含まれ、経口、非経口投与用の種々の形態に製剤化される。ここで、治療上有効量とは、所与の症状や投与計画について治療効果を与える量をいう。
【0057】
本発明の組成物は、抗体に加えて、生理学的に許容され得る製剤上の添加物、例えば希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、酸化防止剤、等張化剤、付形剤および担体のうち1種または複数を含むことができる。また、他の抗体または抗生物質のような他の薬剤との混合物とすることもできる。
【0058】
適切な担体には、生理的食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水グルコース液、および緩衝生理食塩水が含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに当該分野において周知であるアミノ酸、糖類、界面活性剤等の安定化剤、表面への吸着防止剤を含んでいてもよい。
【0059】
製剤の形態としては、凍結乾燥製剤(この場合上記のような緩衝水溶液を添加することにより再構成して使用可能である。)、徐放製剤、腸溶性製剤、注射剤または点滴剤などを含む製剤を、治療目的、治療計画に応じて選択可能である。
【0060】
投与経路は、適宜決定されてよいが、例えば経口経路、並びに静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内の注射または配薬を含む非経腸的経路が考えられる。あるいは、患者の患部に直接本発明の組成物を接触させる方法も可能である。
【0061】
投与量は、動物を用いた試験、臨床試験の実施により適宜決定されるが、一般に患者の状態若しくは重篤度、年齢、体重、性別などが考慮されるべきである。通常、経口投与では、成人に対して、1日約0.01mg〜1000mgであり、これらを1回、または数回に分けて投与することができる。また、非経口投与では、1回約0.01mg〜1000mgを皮下注射、筋肉注射または静脈注射によって投与することができる。
【0062】
本発明は、本発明による抗体または医薬組成物を用いた上記疾患の予防または治療法をも包含し、さらに本発明は本発明の抗体の上記疾患の予防または治療剤の製造への使用をも包含する。
【0063】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による抗体は、水またはそれ以外の薬理学的に許容し得る溶液に溶解した無菌性溶液または懸濁液のアンプルとして使用に供される。また、無菌粉末製剤(本発明の分子を凍結乾燥するのが好ましい)をアンプルに充填しておき、使用時に薬理学的に許容し得る溶液で希釈してもよい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に記載される態様に限定されるものではない。
【0065】
実施例1:ヒトCD98またはヒトLAT1発現ベクターの調製
ヒトCD98(hCD98, GenBank/EMBL/DDBJ accession no. AB018010;配列番号65)およびヒトLAT1(hLAT1, GenBank/EMBL/DDBJ accession no. AB018009;配列番号67)のDNAを保持するプラスミドベクターpcDNA3.1-hCD98およびpcDNA3.1-hLAT1を鋳型としてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。完全長ヒトCD98 cDNAの5’末端にEcoRI配列を、その3’末端にNotI配列と終止コドンを付加する為、プライマー5’-CCG GAA TTC CCA CCA TGA GCC AGG ACA CCG AGG TGG ATA TGA -3’(配列番号59)および5’-AAG GAA AAA AGC GGC CGC TCA TCA GGC CGC GTA GGG GAA GCG GAG CAG CAG-3’(配列番号60)を使用し、KOD-PlusDNAポリメラーゼ(東洋紡社製)およびhCD98cDNA(約20ng)を鋳型として、94℃15秒、55℃30秒および68℃1分30秒間、30サイクルのPCR反応を行った。修飾されたhCD98配列をEcoRI−NotI断片として単離し、そして同一酵素で開裂されたpTracer-EF/Bsdベクター(インビトロジェン社製)にライゲートした。得られたプラスミドを鋳型としてCD98 v2 U(5’-AGT CTC TTG CAA TCG GCT AAG AAG AAG AGC ATC CGT GTC ATT CTG -3’(配列番号61))プライマーとCD98 v2 L(5’- CAG AAT GAC ACG GAT GCT CTT CTT CTT AGC CGA TTG CAA GAG ACT -3’ (配列番号62))プライマーを用いて、hCD98DNAの591と594番目(配列番号65における702番目および705番目)のAをGに変えた。得られたプラスミドからEcoRI−hCD98-NotI断片を調製し、同一酵素で開裂されていたpEF6myc-His/Bsd(インビトロジェン社製)ベクターに連結した。得られたプラスミドをpEF6/hCD98と命名した。
【0066】
同様に、完全長ヒトLAT1 cDNAの5’末端にEcoRI配列を、その3’末端にKpnI配列を付加するためにプライマー5’- CCG GAA TTC CCA CCA TGG CGG GTG CGG GCC CGA AGC GGC-3’(配列番号63)および5’-CGG GGT ACC GTC TCC TGG GGG ACC ACC TGC ATG AGC TTC-3’(配列番号64)を使用し、KOD-Plus DNAポリメラーゼおよびhLAT1cDNA(約20ng)を鋳型として、94℃15秒;55℃、30秒;および68℃、1分30秒間、30サイクルのPCR反応を行った。修飾されたhLAT1配列をEcoRI−KpnI断片として単離し、そして同一酵素で開裂されたpEGFP-N1(クローンテック社製)ベクターにライゲートした。さらに、得られたプラスミドをEcoRI−NotI断片として単離し、そして同一酵素で開裂されたpEF1V5His/Neo(インビトロジェン社製)ベクターにライゲートした。得られたプラスミドをpEF1/hLAT1-EGFPと命名した。
【0067】
実施例2:hCD98/hLAT1発現細胞の調製
hCD98/hLAT1発現細胞の作製は、実施例1で作製された発現ベクターpEF6/hCD98およびpEF1/hLAT1-EGFP(hLAT1-E)をインビトロジェン社製LipofectamineとPlus試薬を用いて、Colon26(CT26)細胞とL929細胞(American Type Culture Collection No.CCL-1)に導入した。遺伝子導入はマニュアルの方法に従い行った。遺伝子導入された細胞を細胞培養用プレート(6ウェルプレート、ベクトンディッキンソン社製)を用い、37℃、5%炭酸ガス下で24時間培養した後、CT26細胞株の場合、ブラストサイジン(5μg/mL)とG418(500μg/mL)入り培地で、L929細胞株の場合、ブラストサイジン(5μg/mL)とG418(1mg/mL)入り培地で、さらに3日間培養した。次に、RPE蛍光標識マウス抗ヒトCD98抗体(ベクトンディッキンソン社製、Ca.No.556076)を用いたFACS VantageでhLAT1-EとCD98陽性細胞を分離した。同様な方法で、hCD98発現L929細胞あるいはhLAT1-E発現L929細胞を調製した。
【0068】
実施例3:ヒト抗体産生マウスの作製
免疫に用いたマウスは、内因性Ig重鎖およびκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体の遺伝的背景を有しており、かつ、ヒトIg重鎖遺伝子座を含む14番染色体断片(SC20)およびヒトIgκ鎖トランスジーン(KCo5)を同時に保持する。このマウスはヒトIg重鎖遺伝子座を持つ系統Aのマウスと、ヒトIgκ鎖トランスジーンを持つ系統Bのマウスとの交配により作製した。系統Aは、内因性Ig重鎖およびκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体であり、子孫伝達可能な14番染色体断片 (SC20)を保持するマウス系統であり、例えば富塚らの報告(Tomizuka. et al., Proc Natl Acad Sci USA., 2000 Vol97:722)に記載されている。また、系統Bは内因性Ig重鎖およびκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体であり、ヒトIgκ鎖トランスジーン(KCo5)を保持するマウス系統(トランスジェニックマウス)であり、例えばFishwildらの報告(Nat Biotechnol., 1996 Vol14:845)に記載されている。
【0069】
系統Aの雄マウスと系統Bの雌マウス、あるいは系統Aの雌マウスと系統Bの雄マウスの交配により得られる子マウスを富塚らの報告(Tomizuka et al., Proc Natl Acad Sci USA., 2000 Vol97:722)に記載された方法で解析し、血清中にヒトIg重鎖およびκ軽鎖が同時に検出される個体(ヒト抗体産生マウス)を選抜し(Ishida&Lonberg, IBC's 11th Antibody Engineering, Abstract 2000;Ishida, I. et al., Cloning & Stem Cells 4, 85-96 (2002))、以下の免疫実験に用いた。免疫実験には、上記マウスの遺伝的背景を改変したマウスなど(石田 功 (2002) 実験医学 20, 6846851)も用いた。
【0070】
実施例4:ヒトモノクローナル抗体の作製
モノクローナル抗体の作製は、単クローン抗体実験操作入門(安東民衛ら著作、講談社発行1991)等に記載されるような一般的方法に従って行った。
【0071】
免疫原であるhCD98/hLAT1として、実施例2で調製したhCD98/hLAT1−E発現CT26細胞、およびhCD98発現が確認されたヒト大腸癌細胞株Colo205細胞を用いた。
【0072】
被免疫動物は、実施例3で作製したヒト免疫グロブリンを産生するヒト抗体産生マウスを用いた。
【0073】
hCD98/hLAT1−E発現CT26細胞を用いた場合、5×106細胞をRIBIアジュバント(コリクサ社製)と混合し腹腔内に初回免疫した。初回免疫から7、24日目に5×106細胞/マウスを腹腔内に追加免疫した。さらに以下に述べる脾臓細胞の取得3日前に細胞を同様にして免疫した。
【0074】
Colo205細胞を用いた場合、5×106細胞を腹腔内に初回免疫した。初回免疫から14日目に5×106細胞/マウスを腹腔内に追加免疫し、3日後に以下に述べる脾臓細胞を取得した。
【0075】
免疫されたマウスから脾臓を外科的に取得し、回収した脾臓細胞をマウスミエローマSP2/0(ATCC No.CRL1581)と5:1で混合し、融合剤としてポリエチレングリコール1500(Roche社製)を用いて細胞融合させて、多数のハイブリドーマを作製した。ハイブリドーマの選択は、10%のウシ胎児血清(Fetal Calf Serum, FCS)とヒポキサンチン(H)、アミノプテリン(A)、チミジン(T)を含有するHAT含有DMEM培地(ギブコ社製)中で培養することにより行った。さらに、HT含有DMEM培地を用いて限界希釈法によりシングルクローンにした。培養は、96ウェルマイクロタイタープレート(ベクトンディッキンソン社製)中で行った。目的ヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンの選択(スクリーニング)および各々のハイブリドーマが産生するヒトモノクローナル抗体の特徴付けは、後述する蛍光活性化セルソーター(FACS)により測定することにより行った。
【0076】
ヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングは以下のように行なった。すなわち、以下に述べるFACS解析により、ヒト免疫グロブリンμ鎖(hIgμ)、γ鎖(hIgγ)およびヒト免疫グロブリン軽鎖κ(hIgκ)を有し、かつhCD98/hLAT1−E発現CT26細胞に特異的な反応性を有するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを200個以上得た。
【0077】
なお、本明細書における実施例にあっては、結果として示した表または図中において、ヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンを、記号を用いて命名した。以下のハイブリドーマクローンはシングルクローンを表わす:4-35-14(C2)、4-32-9(K3)、7-95-8、10-60-7、3-69-6、5-80-1(以上hCD98/hLAT1-E発現CT26細胞を免疫原とするクローン)、1-40-1(以上Colo205細胞を免疫原とするクローン)。
【0078】
実施例5:各モノクローナル抗体のサブクラス同定
実施例4で取得した各モノクローナル抗体のサブクラスの同定をFACS解析で行った。2×106/mlのColo205細胞を、1mM EDTA、0.1%NaN3、5%FCS含有PBSのSB(staining buffer)に浮遊させた。細胞浮遊液を96ウェル丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した(50μl/ウェル)。さらに、実施例4で培養したハイブリドーマの培養上清(50μl)を加えて撹拌し、氷温下30分間反応させてから、遠心分離(2000rpm、4℃、2分)して上清を除去した。ペレットを100μl/ウェルのSBで1回洗浄した後、FITC蛍光標識ウサギ抗ヒトIgμ F(ab')2抗体(ダコサイトメーション社製)をSBで50倍、あるいはRPE蛍光標識ヤギ抗ヒトIgγ F(ab')2抗体(SuthernBiotech社製)をSBで200倍、あるいはRPE蛍光標識ウサギ抗ヒトIgκ F(ab')2抗体(ダコサイトメーション社製)をSBで200倍希釈して加え、氷温下30分間反応させた。SBで1回洗浄した後、300μlのSBに懸濁し、FACS(FACSCan、ベクトンディッキンソン社製)で抗体の結合を示す蛍光強度を測定した。得られた抗体の一部の結果を表1に示す。C2は重鎖がμ鎖で軽鎖がκ鎖で、K3, 3-69-6, 7-95-8, 10-60-7, 1-40-1、および5-80-1は何れも重鎖がγ鎖で軽鎖がκ鎖であった。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例6:モノクローナル抗体をコードする遺伝子の調製および組換え抗体発現ベクターの構築
C2, K3, 7-95-8, 10-60-7, 3-69-6または1-40-1の各抗体遺伝子のクローニングと発現ベクターの構築を以下の方法で実施した。
【0081】
(1)抗体遺伝子のcDNAクローニングと発現ベクターの作製
ハイブリドーマを10%FCS含有DMEM培地(ギブコ社製)で培養し、遠心分離により細胞を集めた後、ISOGEN(ニッポンジーン社製)を添加し、取扱説明書にしたがってTotal RNAを抽出した。抗体cDNAの可変領域のクローニングは、SMART RACE cDNA amplification Kit(クローンテック社製)を用い、添付の説明書にしたがって行った。
5μgのtotal RNAを鋳型として、1st strand cDNAを作製した。
(a) 1st strand cDNA の合成
Total RNA 5μg/3μl、5’CDS 1μl、およびSMART oligo 1μlからなる組成の反応液を70℃で2分間インキュベートした後、5×Buffer 2μl、DTT 1μl、DNTP mix 1μl、そしてSuperscript II 1μlを加え42℃で15時間インキュベートした。さらに、100μlのTricine Bufferを加えた後、72℃で7分間インキュベートし、1st strand cDNAを取得した。
(b) PCRによる重鎖遺伝子、軽鎖遺伝子の増幅および組換え抗体発現ベクターの構築
cDNAの増幅には、東洋紡社のKOD-Plusを用いた。
cDNA 15μl、10xKOD-Plus Buffer 5μl、dNTP mix 5μl、KOD-Plus 1μl、25mM MgSO4 3μl、プライマー1、およびプライマー2からなる組成の反応液を再蒸留水にて最終容量50μlとし、PCRに供した。
【0082】
K3、1-40-1, 3-69-6, C2に関し、具体的に実験例を示せば、以下のとおりである。
【0083】
K3
軽鎖の増幅のために、UMPとhk-2(5’- GTT GAA GCT CTT TGT GAC GGG CGA GC -3’(配列番号1) )プライマーを用い、94℃5秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、続いて、94℃5秒、70℃10秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、さらに、94℃5秒:68℃10秒:72℃3分のサイクルを25回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液1μlを鋳型とし、NUMPとhk5(5’- AGG CAC ACA ACA GAG GCA GTT CCA GAT TTC -3’ (配列番号2)) プライマーを用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kit(キアゲン社製)により精製した。精製されたPCR産物をpCR4Blunt-TOPOベクター(インビトロジェン社製)に連結し、添付説明書に従いサブクローニングした。次にT3(5’-ATT AAC CCT CAC TAA AGG GA-3’ (配列番号3))とhk5をプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、DNPL15Bglp(5’- AGA GAG AGA GAT CTC TCA CCA TGG AAG CCC CAG CTC AGC TTC TCT -3’ (配列番号4))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた軽鎖遺伝子を鋳型としてDNPL15Bglp と202LR(5’- AGA GAG AGA GCG TAC GTT TAA TCT CCA GTC GTG TCC CTT GGC -3’ (配列番号5)) プライマーを用い、94℃15秒、55℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、約400bpの断片をQIAquick gel extraction kit(キアゲン社製)により精製した。軽鎖増幅cDNA断片をBglII、BsiWIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val Larkベクター(IDEC Pharmaceuticals, N5KG1(US patent 6001358)の改変ベクター)に導入した。得られたベクターをN5KG1-Val K3Lと命名した。
【0084】
重鎖の増幅のために、UMPとIgG1p(5’- TCT TGT CCA CCT TGG TGT TGC TGG GCT TGT G -3’(配列番号6))プライマーを用い、94℃5秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、続いて、94℃5秒、70℃10秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、さらに、94℃5秒、68℃10秒、72℃3分のサイクルを25回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液1μlを鋳型とし、NUMPとIgG2p(5’- TGC ACG CCG CTG GTC AGG GCG CCT GAG TTC C -3’(配列番号7))を用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にT3とhh2(5’- GCT GGA GGG CAC GGT CAC CAC GCT G -3’(配列番号8))をプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、K3HcSalI(5’- AGA GAG AGA GGT CGA CCA CCA TGG GGT CAA CCG CCA TCC TCG CCC TCC TC -3’(配列番号9))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた重鎖遺伝子を鋳型としてK3HcSalIとF24HNhe(5’- AGA GAG AGA GGC TAG CTG AGG AGA CGG TGA CCA GGG TTC -3’ (配列番号10))を用い、94℃15秒、55℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、約450bpの断片をQIAquick gel extraction kitにより精製した。重鎖増幅cDNA断片をSalI、NheIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val K3Lに導入した。挿入部分のDNA塩基配列を決定して、PCR増幅して挿入された配列に鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。得られたベクターをN5KG1-Val K3IgG1と命名した。N5KG1-Val K3IgG1を後述するFreeStyle293細胞に遺伝子導入することにより得られた組み換え体K3抗体がK3ハイブリドーマ由来の抗体と同じであるかの確認は、hCD98/hLAT1発現細胞株への結合活性を調べることにより行った。
【0085】
1-40-1
重鎖の増幅のために、UMPとIgG1pプライマーを用い、94℃5秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、続いて、94℃5秒、70℃10秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、さらに、94℃5秒、68℃10秒、72℃3分のサイクルを25回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液1μlを鋳型とし、NUMPとIgG2pプライマーを用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にT3とhh2をプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、205HP5SalI(5’- AGA GAG AGA GGT CGA CCA CCA TGG AGT TTG GGC TGA GCT GGG TTT -3’(配列番号11))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた重鎖遺伝子を鋳型として205HP5SalIとF24Hnheプライマーを用い、94℃15秒、55℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、約450bpの断片をQIAquick gel extraction kitにより精製した。重鎖増幅cDNA断片をSalI、NheIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val Larkベクターに導入した。得られたベクターをN5KG1-Val 1-40-1Hと命名した。
【0086】
軽鎖の増幅のために、UMPとhk-2プライマーを用い、94℃5秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、続いて、94℃5秒、70℃10秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、さらに、94℃5秒、68℃10秒、72℃3分のサイクルを25回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液1μlを鋳型とし、NUMPとhk5を用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にT3とhk5をプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、A27RN202(5’- AGA GAG AGA GCG TAC GTT TGA TTT CCA CCT TGG TCC CTT GGC -3’ (配列番号12))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた軽鎖遺伝子を鋳型としてDNPL15Bglp とA27RN202を用い、94℃15秒、55℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、約400bpの断片をQIAquick gel extraction kitにより精製した。軽鎖増幅cDNA断片をBglII、BsiWIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val 1-40-1Hベクターに導入した。挿入部分のDNA塩基配列を決定して、PCR増幅して挿入された配列に鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。得られたベクターをN5KG1-Val 1-40-1IgG1と命名した。N5KG1-Val 1-40-1IgG1を後述するFreeStyle293細胞に遺伝子導入することにより得られた組み換え体1-40-1抗体が1-40-1ハイブリドーマ由来の抗体と同じであるかの確認は、hCD98/hLAT1発現細胞株への結合活性を調べることにより行った。
【0087】
3-69-6
軽鎖の増幅のために、UMPとhk-2プライマーを用い、94℃15秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、続いて、94℃15秒、70℃10秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、さらに、94℃15秒、68℃15秒、72℃3分のサイクルを25回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液2μlを鋳型とし、NUMPとhk5を用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にM13Foward(-20) primer (5’-GTA AAA CGA CGG CCA G -3’(配列番号13))、M13 Reverse primer(5’- CAG GAA ACA GCT ATG AC-3’ (配列番号14))とhk5(5’- AGG CACACA ACA GAG GCAG TTCCAGA TTT C -3’(配列番号2))をプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、A27_F (5’- AGA GAG AGA GAT CTC TCA CCA TGG AAA CCC CAG CGCAGC TTC TCT TC-3’(配列番号15))と39_20_L3Bsi (5’- AGA GAG AGA GCG TAC GTT TGA TCT CCA GCT TGG TCC CCT G-3’ (配列番号16))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた軽鎖遺伝子を鋳型としてA27_Fと39_20_L3Bsiを用い、94℃30秒、55℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、約400bpの断片をQIAquick gel extraction kitにより精製した。軽鎖増幅cDNA断片をBglII、BsiWIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val Larkベクターに導入した。得られたベクターをN5KG1-Val 3-69-6Lと命名した。
【0088】
重鎖の増幅のために、UMPとIgG1p (5’- TCT TGT CCA CCT TGG TGT TGC TGG GCT TGT G-3’(配列番号6))プライマーを用い、94℃15秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、続いて、94℃15秒:70℃10秒:72℃3分のサイクルを5回繰り返し、さらに、94℃15秒、68℃15秒、72℃3分のサイクルを30回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液2μlを鋳型とし、NUMPとIgG2p (IgG1.3.4)(5’- TGC ACG CCG CTG GTCAGG GCG CCT GAG TTC C-3’ (配列番号7))を用いて、94℃30秒、55℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4 Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にM13F,M13RとIgG2pをプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、Z3HP5Sal(5’- AGA GAG AGA GGT CGA CCCACCATG GAC TGG AGCATC CTT TT-3’(配列番号17))とF24HNhe(5’- AGA GAG AGA GGC TAG CTG AGG AGA CGG TGA CCA GGG TTC -3’(配列番号10))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた重鎖遺伝子を鋳型としてZ3HP5SalFとF24HNheを用い、94℃30秒、55℃30秒、68℃1分秒のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、約450bpの断片をQIAquick gel extraction kitにより精製した。重鎖増幅cDNA断片をSalI、NheIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val 3-69-6Lベクターに導入した。挿入部分のDNA塩基配列を決定して、PCR増幅して挿入された配列に鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。得られたベクターをN5KG1-Val 3-69-6IgG1と命名した。N5KG1-Val 3-69-6IgG1を後述するFreeStyle293細胞に遺伝子導入することにより得られた組み換え体3-69-6抗体が3-69-6ハイブリドーマ由来の抗体と同じであるかの確認は、hCD98/hLAT1発現細胞株への結合活性を調べることにより行った。
【0089】
C2IgG1
ハイブリドーマ産生C2のサブクラスはIgMであるため、同じgerm line由来のIgGから想定される可変領域を含むように設計したプライマーを用いたPCRによりC2抗体可変領域を単離した(C2 IgG1)。
【0090】
軽鎖の増幅のために、UMPとhk-2プライマーを用い、94℃5秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、続いて、94℃5秒、70℃10秒、72℃3分のサイクルを5回繰り返し、さらに、94℃5秒、68℃10秒、72℃3分のサイクルを25回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液1μlを鋳型とし、NUMPとhk5を用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にM13F,M13Rとhk5をプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、C2-1 Lc Bgl II F (5’- AGA GAG AGA GAT CTC TCA CCA TGG AAA CCC CAG CGCAGC TTC TCT TC -3’(配列番号18))とC2-1 Lc BsiWI R (5’-AGA GAG AGA GCG TAC GTT TGA TAT CCA CTT TGG TCC CAG GG -3’(配列番号19))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた軽鎖遺伝子を鋳型としてC2-1 Lc Bgl II F とC2-1 Lc BsiWI Rを用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、約400bpの断片をQIAquick gel extraction kitにより精製した。軽鎖増幅cDNA断片をBglII、BsiWIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val Larkベクターに導入した。得られたベクターをN5KG1-Val C2Lと命名した。
【0091】
重鎖の増幅のために、UMPとM655R(5’- GGC GAA GAC CCG GAT GGC TAT GTC-3’ (配列番号20))プライマーを用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液1μlを鋳型とし、NUMPとM393R(5’-AAA CCC GTG GCC TGG CAG ATG AGC -3’(配列番号21))を用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にM13Foward (-20)primer(5’-GTA AAA CGA CGG CCA G -3’(配列番号13))、M13 Reverse primer(5’- CAG GAA ACA GCT ATG AC-3’(配列番号14))とM393Rをプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、C2hcSalIF(5’- AGA GAG AGA GGT CGA CCA CCA TGA AGCACC TGT GGT TCT TCC TCC TGC T -3’(配列番号22))とC2hcNheI(5’- AGA GAG AGA GGC TAG CTG AGG AGA CGG TGA CCA GGG TTC CCT GG -3’(配列番号58))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた重鎖遺伝子を鋳型としてC2hcSalIFとC2hcNheIを用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃30秒のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、約450bpの断片をQIAquick gel extraction kitにより精製した。重鎖増幅cDNA断片をSalI、NheIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val C2Lベクターに導入した。挿入部分のDNA塩基配列を決定して、PCR増幅して挿入された配列に鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。得られたベクターをN5KG1-Val C2IgG1と命名した。
【0092】
C2IgG1NS
上述のようにクローニングしたC2IgG1遺伝子において重鎖のフレーム領域に本来のgerm lineでは認められない変異が入っていた。そこで、本来のgerm lineの配列を持つC2の可変領域配列を以下の方法により単離した。
【0093】
上で得られたベクターN5KG1-Val C2IgG1を鋳型としてC2hc NS F(5’- CGT CCA AGA ACC AGT TCT CCC TGA AGC TGA-3’(配列番号23))プライマーとC2hc NS R(5’- TCA GCT TCA GGG AGA ACT GGT TCT TGG ACG-3’(配列番号24))プライマーを用いて、C2抗体重鎖の290と299番目のGとTを其々AとCに変え、N5KG1-Val C2IgG1NSを作製した。N5KG1-Val C2IgG1とN5KG1-Val C2IgG1NSを後述するFreeStyle293細胞に遺伝子導入することにより得られた組み換え体C2IgG1とC2IgG1NS抗体がC2ハイブリドーマ由来のIgM抗体と特異性が同じであるかの確認は、hCD98/hLAT1発現細胞株への結合活性を調べることにより行った。C2IgG1とC2IgG1NSの結合活性は、ほぼ同じであった。
【0094】
C2IgμG1
上述のC2IgG1に用いた方法であると、重鎖と軽鎖の結合部位の形が本来のIgMと異なる可能性があるため、以下の配列転換を行なった。すなわち、IgGのγ鎖とIgMのμ鎖のCH1定常領域にある共通な配列(GCL配列)から可変領域側方向に隣接する26アミノ酸をμ鎖配列とし、GCL配列から定常領域側全てをγ鎖にコンバートした(C2 IgμG1)。以上の配列転換を以下の方法により行なった。
【0095】
C2 cDNAの重鎖の増幅のために、UMPとM655Rプライマーを用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。さらに、この反応液の5倍希釈液1μlを鋳型とし、NUMPとM393Rを用いて、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを30回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅されたPCR産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。精製されたPCR産物をpCR4 Blunt-TOPOベクターに連結しサブクローニングした。次にM13Foward(-20)primer(5’-GTA AAA CGA CGG CCA G -3’(配列番号13))、M13 Reverse primer(5’- CAG GAA ACA GCT ATG AC-3’(配列番号14))とM393Rをプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、C2hcSalIF(5’- AGA GAG AGA GGT CGA CCA CCA TGA AGCACC TGT GGT TCT TCC TCC TGC T -3’(配列番号22))とMu-GCL-Gamma L(5’- CAC CGG TTC GGG GAA GTA GTC CTT GAC GAG GCA GCA AAC GGC CAC GCT GCT CGT-3’(配列番号25))を合成し、pCR4Blunt-TOPOベクターでサブクローニングされた重鎖遺伝子を鋳型としてC2hcSalIFとMu-GCL-Gamma Lを用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅産物をC2Vμと命名した。次にN5KG1-Val Larkベクターを鋳型としてMu-GCL-Gamma U(5’-ACG AGCAGC GTG GCC GTT GGC TGC CTC GTCAAG GAC TAC TTC CCC GAA CCG GTG -3’(配列番号26))とhIgG1 BamHI L(5’- CGC GGA TCC TCA TCA TTT ACC CGG AGA CAG GGA GAG GCT-3’(配列番号27))を用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃90秒のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅産物をCγ1と命名した。C2VμとCγ1の3倍希釈液を各5μl入れ、プライマー無しで94℃15秒、55℃30秒、68℃2分のサイクルを3回繰り返した。この反応液を99℃5分間加熱後10倍希釈し、5μlを鋳型としてC2hcSalIFとhIgG1 BamHI Lを用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃2分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅cDNA断片をSalI、SmaIで消化し、同一酵素で解裂されていた前記C2軽鎖遺伝子が入ったN5KG1-Val Larkベクターに導入した。挿入部分のDNA塩基配列を決定して、PCR増幅して挿入された配列に鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。得られたベクターをN5KG1-Val C2IgμG1と命名した。C2IgμG1抗体の結合活性は、N5KG1-Val C2IgμG1を後述するFreeStyle293細胞に遺伝子導入することにより得られた組み換え体のhCD98/hLAT1発現細胞株への結合活性を調べることにより行った。
【0096】
K3、1-40-1、3-69-6の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むDNA配列、並びに重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むアミノ酸配列は、それぞれ以下の配列番号の配列であった。
【0097】
<K3重鎖可変領域核酸配列>(配列番号28)
AGAGAGAGAGGTCGACCACCATGGGGTCAACCGCCATCCTCGCCCTCCTCCTGGCTGTTCTCCAAGGAGTCTGTGCCGAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGGAGCAGAAGTGAAAAAGCCCGGGGAGTCTCTGAAGATCTCCTGTAAGGGTTCTGGATACAGGTTTACCGACTACTGGATCGGCTGGGTGCGCCAGATGCCCGGGAAAGGCCTGGAGTGGATGGGGATCTTCTATCCTGGTGACTCTGATGCCAGATACAGCCCGTCCTTCCAAGGCCAGGTCACCATCTCAGCCGACAAGTCCATCAACACCGCCTACCTGCAGTGGAGCAGCCTGAAGGCCTCGGACACCGCCATGTATTATTGTGCGAGACGGCGAGATATAGTGGGAGGTACTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
【0098】
<K3重鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号29)
MGSTAILALLLAVLQGVCAEVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYRFTDYWIGWVRQMPGKGLEWMGIFYPGDSDARYSPSFQGQVTISADKSINTAYLQWSSLKASDTAMYYCARRRDIVGGTDYWGQGTLVTVSS
【0099】
<K3軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号30)
AGAGAGAGAGATCTCTCACCATGGAAGCCCCAGCTCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCTACTTAGACTGGTACCAACAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTAGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTACTGTCAGCAGCGTAGCAACTGGATCACCTTCGGCCAAGGGACACGACTGGAGATTAAA
【0100】
<K3軽鎖可変領域>(配列番号31)
MEAPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLDWYQQKPGQAPRLLIYDASSRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWITFGQGTRLEIK
【0101】
<1-40-1重鎖可変領域核酸配列>(配列番号32)
AGAGAGAGAGGTCGACCACCATGGAGTTTGGGCTGAGCTGGGTTTTCCTTGTTGCTATTTTAAAAGGTGTCCAGTGTGAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGTGTGGTACGGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTTGATGATTATGGCATGACCTGGGTCCGCCAAGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCTACTATTAGTTGGAATGGTGGTGGCACAGGTTATGCAGACTCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAACTCCCTGTATCTGCAAATGAACAGTCTGAGAGCCGAGGACACGGCCTTGTATTACTGTGCGGGATATTGTATTATTACCGGCTGCTATGCGGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
【0102】
<1-40-1重鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号33)
MEFGLSWVFLVAILKGVQCEVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMTWVRQAPGKGLEWVSTISWNGGGTGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCAGYCIITGCYADYWGQGTLVTVSS
【0103】
<1-40-1軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号34)
AGAGAGAGAGATCTCTCACCATGGAAGCCCCAGCTCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCTACTTAGCCTGGTACCAACAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCAACAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTAGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTACTGTCAGCAGCGTAGCAACTGGTGGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAA
【0104】
<1-40-1軽鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号35)
MEAPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWWTFGQGTKVEIK
【0105】
<3-69-6重鎖可変領域核酸配列>(配列番号36)
GTCGACCCACCATGGACTGGACCTGGAGCATCCTTTTCTTGGTGGCAGCAGCAACAGGTGCCCACTCCCAGGTTCAACTGGTGCAGTCTGGAGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGGCCTCAGTGAAGGTCTCCTGTAAGGCTTCTGGTTACACCTTTACCAGCTATGGTATCAGCTGGATGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGATGGATCAGCGCTTACAATGGTAATACGAACTATGTACAGAAGTTCCAGGACAGAGTCACCATGACCAGAGACACATCCACGAGCACAGCCTACATGGAGCTGAGGAGCCTGAGATCTGACGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGAGAGATCGGGGCAGCAATTGGTATGGGTGGTTCGACCCCTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
【0106】
<3-69-6重鎖可変領域>(配列番号37)
RRPTMDWTWSILFLVAAATGAHSQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYGISWMRQAPGQGLEWMGWISAYNGNTNYVQKFQDRVTMTRDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCARDRGSNWYGWFDPWGQGTLVTVSS
【0107】
<3-69-6の軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号38)
AGATCTCTCACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTACTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTTGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCGTACACTTTTGGCCAGGGGACCAAGCTGGAGATCAAA
【0108】
<3-69-6の軽鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号39)
RSLTMETPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSYTFGQGTKLEIK
【0109】
C2重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むDNA、並びに重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むアミノ酸配列をそれぞれ以下に示す。
【0110】
<C2IgG1重鎖可変領域核酸配列>(配列番号40)
GTCGACCACCATGAAGCACCTGTGGTTCTTCCTCCTGCTGGTGGCGGCTCCCAGATGGGTCCTGTCCCAGCTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTGGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCTCCATCAGCAGTAGTAGTTACTACTGGGGCTGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGAGTATCTATTATAGTGGGAGTACCTACTACAACCCGTCCCTCAAGAGTCGAGTCACCATATCCGTAGACACGTCCAAGAGCCAGTTCTTCCTGAAGCTGAGCTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTGTGTATTACTGTGCGAGACAAGGGACGGGGCTCGCCCTATTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
【0111】
<C2IgG1重鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号41)
STTMKHLWFFLLLVAAPRWVLSQLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKSQFFLKLSSVTAADTAVYYCARQGTGLALFDYWGQGTLVTVSS
【0112】
<C2IgG1NS重鎖可変領域核酸配列>(配列番号42)
GTCGACCACCATGAAGCACCTGTGGTTCTTCCTCCTGCTGGTGGCGGCTCCCAGATGGGTCCTGTCCCAGCTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTGGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCTCCATCAGCAGTAGTAGTTACTACTGGGGCTGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGAGTATCTATTATAGTGGGAGTACCTACTACAACCCGTCCCTCAAGAGTCGAGTCACCATATCCGTAGACACGTCCAAGAACCAGTTCTCCCTGAAGCTGAGCTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTGTGTATTACTGTGCGAGACAAGGGACGGGGCTCGCCCTATTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
【0113】
<C2IgG1NS重鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号43)
STTMKHLWFFLLLVAAPRWVLSQLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARQGTGLALFDYWGQGTLVTVSS
【0114】
<C2IgμG1重鎖可変領域からヒトIgG1との結合部位核酸配列>
(配列番号44)
GTCGACCACCATGAAGCACCTGTGGTTCTTCCTCCTGCTGGTGGCGGCTCCCAGATGGGTCCTGTCCCAGCTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTGGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCTCCATCAGCAGTAGTAGTTACTACTGGGGCTGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGAGTATCTATTATAGTGGGAGTACCTACTACAACCCGTCCCTCAAGAGTCGAGTCACCATATCCGTAGACACGTCCAAGAGCCAGTTCTTCCTGAAGCTGAGCTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTGTGTATTACTGTGCGAGACAAGGGACGGGGCTCGCCCTATTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGGGAGTGCATCCGCCCCAACCCTTTTCCCCCTCGTCTCCTGTGAGAATTCCCCGTCGGATACGAGCAGCGTGGCCGTT
【0115】
<C2IgμG1重鎖可変領域からヒトIgG1との結合部位アミノ酸配列>
(配列番号45)
STTMKHLWFFLLLVAAPRWVLSQLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKSQFFLKLSSVTAADTAVYYCARQGTGLALFDYWGQGTLVTVSSGSASAPTLFPLVSCENSPSDTSSVAV
【0116】
<C2IgG1とC2IgμG1の軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号46)
AGATCTCTCACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTTCTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTCGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCACCTATATTCACTTTCGGCCCTGGGACCAAAGTGGATATCAAA
【0117】
<C2IgG1とC2IgμG1の軽鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号47)
RSLTMETPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPIFTFGPGTKVDIK
【0118】
上記各抗体配列の内、K3およびC2IgG1の軽鎖可変領域と重鎖可変領域(すなわち、配列番号28および30並びに配列番号40および46の配列の核酸)をpCR4Blunt-TOPOベクターに導入したものを、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託し、それぞれFERM BP−10552(識別のための表示:K3/pCR4)およびFERM BP−10551(識別のための表示:C2IgG1/pCR4)の寄託番号が付されている。
【0119】
上記各抗体可変領域は重鎖および軽鎖部分に加え結合および単離に用いる制限酵素認識配列を含んでおり、各抗体の軽鎖可変領域を単離する場合はBglIIとBsiWIを、重鎖可変領域を単離する場合はSalIとNheIのそれぞれの制限酵素を用いることにより、単離できる。以下にpCR4Blunt-TOPOベクターに挿入した各抗体可変領域と制限酵素認識部位などを含んだ遺伝子配列を示す。
【0120】
<K3/pCR4>(配列番号48)
AGAGAGAGAGATCTCTCACCATGGAAGCCCCAGCTCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCTACTTAGACTGGTACCAACAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTAGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTACTGTCAGCAGCGTAGCAACTGGATCACCTTCGGCCAAGGGACACGACTGGAGATTAAACGTACGCTCTCTCTCTAGAGAGAGAGGTCGACCACCATGGGGTCAACCGCCATCCTCGCCCTCCTCCTGGCTGTTCTCCAAGGAGTCTGTGCCGAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGGAGCAGAAGTGAAAAAGCCCGGGGAGTCTCTGAAGATCTCCTGTAAGGGTTCTGGATACAGGTTTACCGACTACTGGATCGGCTGGGTGCGCCAGATGCCCGGGAAAGGCCTGGAGTGGATGGGGATCTTCTATCCTGGTGACTCTGATGCCAGATACAGCCCGTCCTTCCAAGGCCAGGTCACCATCTCAGCCGACAAGTCCATCAACACCGCCTACCTGCAGTGGAGCAGCCTGAAGGCCTCGGACACCGCCATGTATTATTGTGCGAGACGGCGAGATATAGTGGGAGGTACTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGCTAGCCTCTCTCTCT
【0121】
<C2IgG1/pCR4>(配列番号49)
AGAGAGAGAGATCTCTCACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTTCTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTCGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCACCTATATTCACTTTCGGCCCTGGGACCAAAGTGGATATCAAACGTACGCTCTCTCTCTAGAGAGAGAGGTCGACCACCATGAAGCACCTGTGGTTCTTCCTCCTGCTGGTGGCGGCTCCCAGATGGGTCCTGTCCCAGCTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTGGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCTCCATCAGCAGTAGTAGTTACTACTGGGGCTGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGAGTATCTATTATAGTGGGAGTACCTACTACAACCCGTCCCTCAAGAGTCGAGTCACCATATCCGTAGACACGTCCAAGAGCCAGTTCTTCCTGAAGCTGAGCTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTGTGTATTACTGTGCGAGACAAGGGACGGGGCTCGCCCTATTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGCTAGCCTCTCTCTCT
【0122】
実施例7:組換え型抗体の作製
実施例6で構築した組換え型抗体発現ベクターを宿主細胞に導入し、組換え型抗体発現細胞を作製した。発現のための宿主細胞としてCHO細胞の dhfr欠損株(ATCC CRL-9096)を用いた。宿主細胞へのベクターの導入はエレクトロポレーションにより実施した。抗体発現ベクター約2μgを制限酵素で線状化し、Bio-Rad electrophoreterをもちいて350V、500μFの条件で、4x106個のCHO細胞に遺伝子を導入し、96well culture plateに播種した。発現ベクターの選択マーカーに対応した薬剤を添加して培養を継続した。コロニーを確認した後、実施例4に示した方法によって、抗体発現株を選別した。選別した細胞からの抗体精製は、実施例8にしたがって行った。また、組換え型抗体発現ベクターを添付説明書に従いFreeStyle293細胞(インビトロジェン社製)へ導入し、組み換え型抗体を発現させた。
【0123】
実施例8:抗体の精製
ヒトIgG抗体を含むハイブリドーマ培養上清の調製は、以下の方法にて行った。抗体産生ハイブリドーマをウシインシュリン(5μg/ml、ギブコ社製)、ヒトトランスフェリン(5μg/ml、ギブコ社製)、エタノールアミン(0.01 mM、シグマ社製)、亜セレン酸ナトリウム(2.5x10-5mM、シグマ社製)含有eRDF培地(極東製薬社製)に馴化した。組織培養フラスコで培養し、ハイブリドーマの生細胞率が90%になった時点で培養上清を回収した。回収した上清は、10μmと0.2μmのフィルター(ゲルマンサイエンス社製)に供し、ハイブリドーマ等の雑排物を除去した。抗体を含む培養上清をProtein A(アマシャム)を用い、吸着緩衝液としてPBS、溶出緩衝液として20mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.0)を用いてアフィニティー精製した。溶出画分は50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を添加してpH6.0付近に調整した。調製された抗体溶液は、透析膜(10,000カット、Spectrum Laboratories社製)を用いてPBSに置換し、孔径0.22μmのメンブランフィルターMILLEX-GV(ミリポア社製)でろ過滅菌し、精製抗体を得た。精製抗体の濃度は、280nmの吸光度を測定し、1mg/mlを1.45 Optimal densityとして算出した。
【0124】
実施例9:各モノクローナル抗体の特異性
実施例4で取得した各モノクローナル抗体の反応性の検討を実施例5に明記してあるFACS解析と同法で行った。実施例2で調製した細胞株をStaining Buffer(SB)で2x106/ml に調製し、その細胞浮遊液を96ウェル丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した(50μl/ウェル)。実施例4から実施例8で調製した各組み換え体抗体をSBで5μg/mlに調製し、50μlを各ウェルに加え撹拌した。陰性コントロールは、KMマウスで作製した抗dinitrophenyl(DNP)ヒトIgG1抗体を使用した。氷温下30分間反応させてから、遠心分離(2000rpm、4℃、2分)して上清を除去した。ペレットを100μl/ウェルのSBで1回洗浄した後、200倍希釈したRPE蛍光標識ウサギ抗ヒトIgκ F(ab‘)2抗体(ダコサイトメーション社製)を50μl/ウェル加え、氷温下30分間反応させた。SBで1回洗浄した後、300μlのSBに懸濁し、FACSで抗体の結合を示す蛍光強度を測定した。
【0125】
その結果、いずれの抗体もhCD98/hLAT1−E発現CT26細胞(図1)またはhCD98/hLAT1−E発現L929細胞(図2)に対し強い結合活性を有し、一方、CT26細胞およびL929細胞への結合活性は観察されなかった。さらに、いずれの抗体もhLAT1-E発現L929細胞には結合せず、hCD98発現L929細胞には結合することから、C2、K3、7-95-8、10-60-7、3-69-6、1-40-1抗体の結合部位はhCD98に位置することが判った(図2)。
【0126】
実施例10:各モノクローナル抗体の抗原結合に関係するhCD98タンパクの領域
各モノクローナル抗体の結合に重要なhCD98分子の領域を検討した。
【0127】
まず、ツニカマイシン処置K562細胞株への反応性で調べた。2x105のK562細胞を6ウェルプレートに播種し(4ml/ウェル)、5μg/mlのツニカマイシン(シグマ社製)存在下、非存在下で72時間37℃、5%CO2下で培養した。この条件で約80KdaであるhCD98の分子量が、N-link糖鎖がとれた場合の理論値約60kDaになることをウエスタンブロットで確認した。培養後、細胞を回収し2x106/mlの細胞株をStaining Buffer(SB)に浮遊させた。細胞浮遊液を96−well丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した(50μl/ウェル)。SBで5μg/mLに調製された各組み換え体抗体を50μl/ウェル加え、氷温下30分間反応させた。陰性コントロールは抗DNPヒトIgG1抗体を用いた。SBで1回洗浄した後、RPE蛍光標識ヤギ抗ヒトIgγ F(ab‘)2抗体(SuthernBiotech社製)をSBで200倍希釈して加え、氷温下30分間インキュベートした。SBで1回洗浄した後、300μlのFACS緩衝液に懸濁し、FACSで抗体の結合を示す蛍光強度を測定した。
【0128】
その結果、何れの抗体もツニカマイシン非処置のK562より、処置細胞の結合活性が低下することは観察されなかった(図3)。以上の結果より、各抗体の結合部位はN-link糖鎖でないことが判り、これらモノクローナル抗体はhCD98の抗体であることが強く示唆された。さらに、各モノクローナル抗体の結合に重要なhCD98の領域を実施例11で検討した。
【0129】
実施例11:各抗体の結合反応に重要なヒトCD98タンパクの領域
各抗体はマウスCD98(mCD98)に交叉反応性を示さないため、mCD98とhCD98を人工的に結合したキメラCD98を利用し、各抗体の結合反応に重要なヒトCD98タンパクの領域を検討した。
【0130】
キメラCD98は以下の様に作製した。mCD98とhCD98の配列情報より、EcoRIhCD98U(5’-CCG GAA TTC cCa cCa TGA GCC AGG ACA CCG AGG TGG ATA TGA-3’ (配列番号50))、NotIhCD98(5’- AAG GAA AAA AGC GGC CGC TCA TCA GGC CGC GTA GGG GAA GCG GAG CAG CAG-3’ (配列番号51))、EcoRI mCD98 (5’- CCG GAA TTC CCA CCA TGA GCC AGG ACA CCG AAG TGG ACA TGA AA-3’ (配列番号52))、 NotImCD98L(5’-AAG GAA AAA AGC GGC CGC TCA TCA GGC CAC AAA GGG GAA CTG TAA CAG CA-3’ (配列番号53))、cCD98D2-F(5’- TCA TTC TGG ACC TTA CTC CCA ACT ACC-3’ (配列番号54))、cCD98D2-R(5’- GGT AGT TGG GAG TAA GGT CCA GAA TGA-3’ (配列番号55))、cCD98 D3-F(5’- TGC TCT TCA CCC TGC CAG GGA CCC CTG TTT T-3’ (配列番号56))、cCD98 D3-R(5’- AAA ACA GGG GTC CCT GGC AGG GTG AAG AGC A-3’ (配列番号57))を合成した。PCRを行うにあたり鋳型として用いたのは、mCD98(GenBank/EMBL/DDBJ accession no.U25708)およびヒトCD98をコードするcDNAを保持するプラスミドベクターpcDNA3.1-mCD98および実施例1で作製したpEF6/hCD98である。
【0131】
cDNAの増幅には、東洋紡社のKOD-Plusを用いた。cDNA 15μl、10xKOD-Plus Buffer 5μl、dNTP mix 5μl、KOD-Plus 1μl、25mM MgSO4 3μl、FプライマーおよびRプライマーからなる組成の反応液を再蒸留水にて最終容量50μlとし、PCRに供した。
【0132】
cDNA1とFプライマー1とRプライマー1、または、cDNA2とFプライマー2とRプライマー2、を用い、94℃15秒、60℃30秒、68℃90秒(94℃15秒、55℃30秒、68℃50秒)のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅産物を其々P1、P2と命名した。次にP1とP2の2〜3倍希釈液を各5μl入れ、プライマー無しで94℃15秒、55℃30秒、68℃2分のサイクルを3回繰り返した。この反応液を99℃5分間加熱後5〜10倍希釈し、5μlを鋳型としてFプライマー1とRプライマー2を用い、94℃15秒、60(55℃)℃30秒、68℃2分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。
【0133】
キメラCD98-1, キメラCD98-2, キメラCD98-3は、それぞれ、(cDNA1 : Fプライマー1 : Rプライマー1; cDNA2とFプライマー2 : Rプライマー2)の以下の組み合わせ(pEF6/hCD98 : EcoRIhCD98U : cCD98D2-R; pcDNA3.1-mCD98 : cCD98D2-F : NotImCD98L)、(pEF6/hCD98:EcoRIhCD98U:cCD98D3-R; pcDNA3.1-mCD98 : cCD98D3-F : NotImCD98L)、(pcDNA3.1-mCD98 :EcoRImCD98U : cCD98D2-R; pEF6/hCD98 : cCD98D2-F : NotIhCD98L)で作製した。各PCR増幅cDNA断片をEcoRI、NotIで消化し、同一酵素で解裂されていたpEF6myc-His/Bsdベクター(インビトロジェン社製)に連結した。挿入部分のDNA塩基配列を決定し、PCR増幅して挿入された配列が、鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。実施例2と同法で各ベクターを実施例1で作製したpEF1/hLAT1-EGFPベクターと共に L929細胞に発現し、実施例10と同法のFACS解析で各FITC標識抗体の結合を調べた。その結果(図4)、K3, 7-95-8, 10-60-7, 3-69-6,抗体は、市販のFITC標識抗ヒトCD98抗体(クローンUM7F8、ベクトンディッキンソン社製 Ca.No.556076)と同様 キメラCD98-3を発現したL929細胞にのみ結合しhCD98の372アミノ酸残基から530アミノ酸残基の領域がこれら抗体の結合に重要であることが示唆された。一方、C2抗体と1-40-1中和抗体は、キメラCD98-2にのみ強く結合し、hCD98の104アミノ酸残基-371アミノ酸残基がこれら抗体の結合に重要であることが判った。
【0134】
実施例12:各モノクローナル抗体のアミノ酸取込み抑制活性
各モノクローナル抗体がヒト膀胱癌細胞株T24細胞のアミノ酸の取り込みに影響するかを基質としてロイシンを用い、基質の取り込み実験を金井らの方法(Kim et al., Biochim. Biophys. Acta 1565: 112-122, 2002)に準じて、以下のように行った。1x105のT24細胞株を24−穴培養プレートに播種し、10%FCS入りMEM培地(SIGMA ALDRICH社製)で37℃、5%CO2下で2日間培養した。培養後培地を除き、200μg/mLの抗体を含むHBSS(-)(Na+-free)を0.25mL/穴加え、37℃、5%CO2下でさらに10分間培養した。C2, K3, 7-95-8, 10-60-7, 3-69-6、1-40-1, 抗DNPヒト抗体は、組み換え体抗体を、5-80-1はハイブリドーマ由来の抗体を使用した。その後、上清を除き、1μMの14C-Leu (MORAVEK BIOCHEMICALS社製)を含むHBSS(-)(Na+-free)を0.5mL/穴加え1分間培養した。氷冷HBSS(-)(Na+-free)溶液で3回洗浄後、0.1N水酸化ナトリウムを0.5mL/穴添加し細胞を回収した。回収された溶液中の14C-Leu量は、Liquid scintillation counter model LSC-5100 (ALOKA社製)で測定した。各細胞の14C-Leu取込み量は、回収した溶液中のタンパク質濃度をBCA法で測定し、タンパク質量で標準化した。その結果(図5)、1-40-1, K3, C2IgG1、10-60-7, 3-69-6は、コントロール抗体(DNPヒト抗体)より有意にロイシンの取り込みを抑制した。以下の実験は、有意にロイシンの取り込みを抑制した1-40-1、K3、C2IgG1、10-60-7、および 3-69-6を用いて実施した。
【0135】
実施例13:各モノクローナル抗体の抗hCD98/hLAT1抗体の蛍光標識
各抗体の蛍光標識化は以下の方法で行った。蛍光物質Fluorescein isothiocyanate (FITC, シグマ社製)を付属の説明書に従い、実施例4から実施例8で調製した各組み換え体抗体に結合させた。200mMの炭酸ナトリウム緩衝液(pH8.3〜8.5)で1〜2mg/mlの抗体に、ジメチルフォルムアミドに溶かしたFITCを抗体分子の20〜40倍量添加し、撹拌しながら室温2〜3時間反応させた。PBSで平衡化したゲルろ過カラム(NAP5、アマシャム・ファルマシア・バイオテック社製)に混合液を供し、抗体に未結合のFITCを除去した。この条件で抗体1分子に約3つのFITCが結合した。蛍光標識された抗体は何れもhCD98の発現が確認されているヒト大腸癌細胞株DLD-1細胞株に結合した。
【0136】
実施例14:各モノクローナル抗体のヒト末梢血由来T細胞、B細胞、単球細胞と正常ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)への反応性
単球細胞、活性化T細胞、培養した正常内皮細胞ではCD98が発現していることが知られている。そこで、各抗体のヒト末梢血由来T細胞、B細胞、単球細胞とヒト大動脈内皮細胞(HAEC)への反応性を調べた。ヒト末梢血由来細胞は以下の方法で調製した。1mlヘパリン(ノボ社製)入りヒト末梢血10mlをPBSで2倍に希釈し、20mlのFicoll-Paque PLUS液(アマシャム・ファルマシア・バイオテック社製)上に重層し、1500 rpmで30分間遠心後回収した。PBSで2回洗浄し単核球細胞を調製した。一部の単核球細胞は、10μg/mlのPhytohaemagglutinin(シグマ社製、PHA)、10%FCS、0.1mM非必須アミノ酸溶液(ギブコ社製)、5.5x10-6M 2-メルカプトエタノール(ギブコ社製)、Penicillin/Streptomycin/Glutamine(ギブコ社製)入りRPMI培地(ギブコ社製)で5%CO2、37℃下72時間培養した。PHA刺激によりヒト末梢血由来T細胞、B細胞に活性化マーカーであるCD25発現が観察された(FITC標識抗ヒトCD25抗体(ベクトンディッキンソン社製 Ca.555431)を用いたFACS解析)。調製された各細胞はStaining Buffer(SB)に2x106/mlで浮遊させ、細胞浮遊液を96-ウェル丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した(50μl/ウェル)。実施例13で作製された各々のFITC標識抗体を5μg/mlの濃度で抗ヒトCD3抗体(ベクトンディッキンソン社製 Ca.No.555340)あるいは抗ヒトCD14抗体(ベクトンディッキンソン社製 Ca.No.347497)あるいは抗ヒトCD19抗体(イムノテック社製Ca.No.IM1285)と共に氷温下30分間反応させた。陽性コントロールとして市販のFITC標識抗ヒトCD98抗体(クローンUM7F8)、陰性コントロールはFITC標識抗DNPヒトIgG1抗体を用いた。SBで1回洗浄した後、300μlのFACS緩衝液に懸濁し、FACSで各抗体の反応性を調べた。
【0137】
その結果、C2IgG1以外の抗体はUM7F8と同様の結合様式を示し、単球細胞、活性化T細胞、活性化B細胞に有意に結合した(図6および図7)。一方、C2IgG1は、いずれの細胞に対し有意な結合は観察されなかった(図6および図7)。
【0138】
HAEC(Cambrex社製)は、添付説明書に従い培養し、継代数が4回以内の細胞を用いた。培養したHAECに対するC2IgG1、K3、7-95-8、10-60-7、3-69-6、および1-40-1抗体の反応性を、上記と同法にて調べた。3.2ng/ml〜50μg/mlの濃度で各抗体反応させた結果、K3、7-95-8、10-60-7、3-69-6、1-40-1はHAECに結合したが、C2IgG1は、HAECに結合しなかった(図8)。
【0139】
一方、同条件下でヒト大腸癌細胞株DLD-1へ反応させると何れの抗体もある条件下(本実施例では、3μg/ml以下の抗体濃度)では、UM7F8よりDLD-1癌細胞特異性が高いことが判った(図8)。特にC2IgG1は、癌特異性の高い抗体であることが強く示唆された。以下の実験は、C2IgG1、K3、3-69-6を用いて実施した。
【0140】
実施例15:がん細胞株に対する各モノクローナル抗体の反応性
C2IgG1、K3、および3-69-6の大腸癌細胞株(DLD-1)、肺癌細胞株(H226)、前立腺癌細胞株(DU145)、メラノーマ細胞株(G361、SKMEL28、CRL1579)、非ホジキンリンパ腫株(Ramos)、膀胱癌細胞株(T24)、乳癌細胞株(MCF、MDA-MB-231)、膵臓癌細胞株(HS766T)、多発性骨髄腫細胞株(IM9)、赤芽球系白血病株(K562、図3参照)に対する各抗体の反応性の検討を実施例9と同法のFACS解析で行った。細胞株をStaining Buffer(SB)で2x106/mlに調製し、その細胞浮遊液を96ウェル丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した(50μl/ウェル)。5μg/mlに調製された抗体あるいはFITC標識抗体を50μl/ウェル加え、氷温下30分間反応させた。陰性コントロールは抗DNPヒトIgG1抗体あるいはFITC標識抗DNPヒトIgG1抗体を用いた。SBで1回洗浄した後、RPE蛍光標識ヤギ抗ヒトIgγ F(ab')2抗体(SuthernBiotech社製)をSBで200倍希釈したもの50μlを加え、氷温下30分間インキュベートした。FITC標識抗体の場合は、この操作は実施しなかった。SBで1回洗浄した後、300μlのFACS緩衝液に懸濁し、FACSで各細胞の平均蛍光強度を測定した。
【0141】
その結果、何れの抗体も各種癌細胞株に結合活性を有する抗体であることがわかった(図9、図10)。また、何れの抗体もColo205、SW480、 SW620、 LOVO、 LS180、および HT29のヒト大腸癌細胞株に強く結合した。
【0142】
実施例16:マウス癌モデルでのK3、C2IgG1、3-69-6の抗腫瘍効果
実施例4から実施例8で調製された組み換え体モノクローナル抗体K3、C2IgG1、および3-69-6の抗腫瘍効果を、以下に記載する方法に従ってマウス癌モデルを用いて検討した。
【0143】
5週令のBalb/cヌードマウス(日本クレア(株)社より購入)を各個体の体重をもとに5匹を1群として群分けした。100μlのPBSに5×106の大腸癌細胞Colo205と5μgの抗体を混合したものを腹部皮下に移植した。移植後2日目、4日目、6日目に100μg/100μlの溶媒(1%マウス血清入りPBS)に溶解させた抗体をマウス腹腔内に投与し、腫瘍の大きさを測定した。抗体の陰性コントロールとして溶媒を使用した。
【0144】
以上の実験の結果は、図11に示される通りであった。図中の各折れ線は個別のマウスのデータを示す。コントロール群は、5日目には総ての個体で癌細胞株の生着が観察され、12日目の腫瘍の平均体積(長径x短経x短経x0.5で算出)±SEは、165.55±31.71mm3であった。一方、C2IgG1群は、1個体のみコントロール群と同様な腫瘍増殖を示したが(12日目に腫瘍塊が169.44 mm3)、他の個体はC2IgG1抗体投与により強い抗腫瘍活性が観察され、28日目のコントロール群の腫瘍塊の平均体積±SEは1977.64±442.04で、C2IgG1抗体投与群は775.31±622.47であり、C2IgG1抗体は有意にColo205癌細胞由来腫瘍の増殖を抑制した(p<0.01)。K3群と3-69-6群は総ての個体で30日以上経過しても癌の生着は観察されなかった。また、各群の平均体重は、コントロール群のみ低下した(移植30日目にはK3群より約20%低下)。
【0145】
これらの結果より、K3、C2IgG1、および3-69-6は、癌細胞増殖抑制活性を有する抗体であることが観察された。
【0146】
実施例17:マウス同系担癌モデルに対するC2IgG1モノクローナル抗体の抗腫瘍効果
実施例4から実施例8で調製された組み換え体モノクローナル抗体C2IgG1の抗腫瘍効果を、以下に記載する方法に従ってマウス同系癌モデルを用いて検討した。
【0147】
実施例2で調製したhCD98/hLAT1−E発現CT26細胞 5×106cellsを移植したBalb/c (雌)を、腫瘍の体積から5匹ずつの2群に分けた。腫瘍体積が約90mm3(長径x短経x短経x0.5で算出)に成長した時点(0日目)と、3日目、5日目に100μg/100μlの溶媒(1%マウス血清入りPBS)のC2IgG1をマウス腹腔内に投与した。Controlは溶媒を投与した。その結果、C2IgG1は有意に生着腫瘍の増殖を強く抑制する活性があることが観察された(図12)。
【0148】
実施例18:C2IgG1およびK3抗体のサル細胞への交叉反応性
C2IgG1、およびK3のサル細胞(COS-7細胞)への交叉反応性をFACS解析で調べた。2x106/mlの細胞をStaining Buffer(SB)に浮遊させた。細胞浮遊液を96−well丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した(50μl/ウェル)。SBで5μg/mLに調製された抗体を50μl加え、氷温下30分間反応させた。陰性コントロールはDNPヒトIgG1抗体を用いた。SBで1回洗浄した後、SBで200倍希釈したRPE蛍光標識ヤギ抗ヒトIgγ F(ab‘)2抗体(SuthernBiotech社製)を50μl/ウェルを加え、氷温下30分間反応させた。SBで1回洗浄した後、300μlのFACS緩衝液に懸濁し、FACSで抗体の結合を示す蛍光強度を測定した。その結果、何れの抗体もCOS-7細胞株に結合し、C2IgG1、K3はサル細胞に交叉反応性を有する抗体であることがわかった(図13)。
【0149】
実施例19:マウス担癌モデルに対するC2IgG1の効果
C2IgG1の抗腫瘍活性を、以下に記載する方法に従ってマウス担癌モデルを用いて検討した。
【0150】
6週令のBalb/c-SCIDマウス(日本クレア(株)社より購入)の背部皮下に、バーキットリンパ腫細胞株Ramos(ATCCより購入)を3×106/マウス個体で移植した。移植13日後に、生着した腫瘍の大きさを測定し、腫瘍の大きさが30〜140mm3の担癌マウスを6匹1群として群分けした。担癌マウスの腹腔内に、C2IgG1を100mg/マウス個体(200mlのPBSに溶解したもの)をそれぞれ3回/週で投与した。陽性コントロールとしてRituximab(全薬工業株式会社)、陰性コントロールとして、PBSを使用した。腫瘍体積および体重を週3回測定した。腫瘍塊の長径、短径、高さを測定し、(長径)×(短径)×(高さ)÷2の値を腫瘍体積とした。
【0151】
結果を図14に示す。C2IgG1投与により、腫瘍移植後16日目から有意な腫瘍増殖抑制効果が認められた。
【0152】
実施例20:C2IgG1NSアミノ酸改変体
C2IgG1およびC2IgG1NSはともに組換え抗体を調製した際に凝集体含量が高い。そこで、配列番号47で表されるC2IgG1NSの軽鎖可変領域配列において、翻訳開始コドンATGに相当する5番目のM(メチオニン)を1位アミノ酸とし、そこから数えて117番目のI(イソロイシン)をその他のアミノ酸に置換した改変体の作製を行った。
【0153】
C2IgG1NS/ I117Nベクターの調製
軽鎖117位イソロイシンをアスパラギンに置換したC2IgG1NS / I117Nを調製することを目的とし、実施例6で調製したN5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として、GeneEditorTM in vitro Site-Directed Mutagenesis System(プロメガ社 No.Q9280)を用いた部位特異的変異導入法により、アミノ酸置換体をコードする各種の変異DNAを調製した。
【0154】
変異導入用オリゴヌクレオチド(5’末端リン酸化済み)として、C2NS Lc 117I/HYND-p:(5’-TCAGTATGGT AGCTCACCTN ATTTCACTTT CGGCCCTGGG ACC-3’(N=A・T・G・C)(配列番号69))を用いた。目的の変異導入用オリゴヌクレオチドと上記キット付属のSelection Oligonucleotideを鋳型DNAとアニーリングさせて変異導入鎖を合成した後、GeneEditorTM Antibiotic Selection Mix存在下では変異体のみが増殖することを利用して変異体を選択した。より具体的には、dsDNAテンプレートをアルカリ条件下(0.2M NaOH、0.2mM EDTA(最終濃度))室温で5分間インキュベートした後、2M酢酸アンモニウム(pH4.6)を10分の1容量加えて中和してからエタノール沈殿により回収した。アルカリ変性処理した鋳型DNAに、変異導入用オリゴヌクレオチドと新しい抗生物質耐性獲得用Selection Oligonucleotide(Bottom Select Oligo、5’末端リン酸化 5´-CCGCGAGACC CACCCTTGGA GGCTCCAGAT TTATC-3´(配列番号85))、及び、キット添付のアニーリングバッファーを加えた後、75℃で5分間保温し、37℃にゆっくり下げることによりアニーリングを行なった。次に、変異鎖の合成と連結のために、キット付属のSynthesis 10×buffer、T4 DNA Polymerase、及びT4 DNA ligaseを加えて、37℃で90分反応を行なった。GeneEditorTM Antibiotic Selection Mix存在下でコンピテントセルBMH 71-18 mutSに形質転換して培養した形質転換体大腸菌よりプラスミドDNAを調製し、更にそのDNAをエレクトロポレーション法により、ElectroMAX.DH10B Cells (インビトロジェン社No.18290-015) を形質転換後、GeneEditorTM Antibiotic Selection Mixを含むLBプレートに播種した。プレートに生じた形質転換体を培養して、プラスミドDNAを精製しDNA塩基配列を解析した。DNA塩基配列の結果、目的とするアミノ酸変異が導入されたC2IgG1NS変異体の発現ベクターを取得した。得られた1アミノ酸置換変異体蛋白を発現するプラスミドDNAをN5KG1-Val C2IgG1NS/I117Nベクターと命名した。
【0155】
C2IgG1NS/ I117Cベクターの調製
軽鎖117位イソロイシンをシステインに置換したC2IgG1NS / I117Cを調製することを目的とし、実施例6で調製したN5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として、GeneEditorTM in vitro Site-Directed Mutagenesis System(プロメガ社 No.Q9280)を用いた部位特異的変異導入法により、アミノ酸置換体をコードする各種の変異DNAを調製した。
【0156】
変異導入用オリゴヌクレオチド(5’末端リン酸化済み)として、C2NS Lc 117I/GRC-p(5’-TCAGTATGGT AGCTCACCTB GTTTCACTTT CGGCCCTGGG ACC-3’(B=C・G・T)(配列番号70))を用いた。目的の変異導入用オリゴヌクレオチドと上記キット付属のSelection Oligonucleotideを鋳型DNAとアニーリングさせて変異導入鎖を合成した後、GeneEditorTM Antibiotic Selection Mix存在下では変異体のみが増殖することを利用して変異体を選択した。より具体的には、dsDNAテンプレートをアルカリ条件下(0.2M NaOH、0.2 mM EDTA(最終濃度))室温で5分間インキュベートした後、2M酢酸アンモニウム(pH4.6)を10分の1容量加えて中和してからエタノール沈殿により回収した。アルカリ変性処理した鋳型DNAに、変異導入用オリゴヌクレオチドと新しい抗生物質耐性獲得用Selection Oligonucleotide(Bottom Select Oligo、5’末端リン酸化 5´-CCGCGAGACC CACCCTTGGA GGCTCCAGAT TTATC-3´(配列番号85))、及び、キット添付のアニーリングバッファーを加えた後、75℃で5分間保温し、37℃にゆっくり下げることによりアニーリングを行なった。次に、変異鎖の合成と連結のために、キット付属のSynthesis 10×buffer、T4 DNA Polymerase、及びT4 DNA ligaseを加えて、37℃で90分反応を行なった。GeneEditorTM Antibiotic Selection Mix存在下でコンピテントセルBMH 71-18 mutSに形質転換して培養した形質転換体大腸菌よりプラスミドDNAを調製し、更にそのDNAをエレクトロポレーション法により、ElectroMAX.DH10B Cells (インビトロジェン社 No.18290-015) を形質転換後、GeneEditorTM Antibiotic Selection Mixを含むLBプレートに播種した。プレートに生じた形質転換体を培養して、プラスミドDNAを精製しDNA塩基配列を解析した。DNA塩基配列の結果、目的とするアミノ酸変異が導入されたC2IgG1NS変異体の発現ベクターを取得した。得られた1アミノ酸置換変異体蛋白を発現するプラスミドDNAをN5KG1-Val C2IgG1NS/I117Cベクターと命名した。
【0157】
C2IgG1NS/ 117ILベクターの調製
軽鎖117位イソロイシンをロイシンに置換したC2IgG1NS / I117Lを、実施例6で調製したN5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として以下の方法により調製した。
【0158】
DNAの増幅には、東洋紡社のKOD-Plusを用いた。cDNA 1μl、10xKOD-Plus Buffer 5μl、dNTP mix 5μl、KOD-Plus 1μl、25mM MgSO4 2μl、FプライマーおよびRプライマーからなる組成の反応液を再蒸留水にて最終容量50μlとし、PCRに供した。
【0159】
C2NS Lc 117IL R(5’-GGTCCCAGGG CCGAAAGTGA ATAGAGGTGA GCTACCATAC TGCTG -3’(配列番号71))を合成し、C2NS Lc 117IL R とC2-1 Lc Bgl II F (5’- AGA GAG AGA GAT CTC TCA CCA TGG AAA CCC CAG CGCAGC TTC TCT TC -3’(配列番号18))を用い、N5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅産物をC2NSI117L−Fと命名した。次に、C2NS Lc 117IL F(5’- GCAGTATGGT AGCTCACCTC TATTCACTTT CGGCCCTGGG ACC -3’(配列番号72))とC2NS EcoRI R(5’- CCGGAATTCA ACACTCTCCC CTGTTGAAGC TCTTTGTGAC GG -3’(配列番号73))を用い、N5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅産物をC2NSI117L−Rと命名した。次にC2NSI117L−FとC2NSI117L−Rの2倍希釈液を各5μl入れ、プライマー無しで94℃15秒、55℃30秒、68℃60秒のサイクルを3回繰り返した。この反応液を99℃5分間加熱後5倍希釈し、5μlを鋳型としてC2-1 Lc Bgl II FプライマーとC2NS EcoRI Rプライマーを用い、94℃15秒、55℃30秒、68℃60秒のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅cDNA断片をBglII、EcoRIで消化し、同一酵素で解裂されていた前記C2重鎖遺伝子が入ったN5KG1-Val Larkベクターに導入した。挿入部分のDNA塩基配列を決定して、PCR増幅して挿入された配列に鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。得られた1アミノ酸置換変異体蛋白を発現するプラスミドDNAをN5KG1-Val C2IgG1NS/I117Lベクターと命名した。
【0160】
C2IgG1NS/ 117IMベクターの調製
軽鎖117位イソロイシンをメチオニンに置換したC2IgG1NS / I117Mを、実施例6で調製したN5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として以下の方法により調製した。
【0161】
DNAの増幅には、東洋紡社のKOD-Plusを用いた。cDNA 1μl、10xKOD-Plus Buffer 5μl、dNTP mix 5μl、KOD-Plus 1μl、25mM MgSO4 2μl、FプライマーおよびRプライマーからなる組成の反応液を再蒸留水にて最終容量50μlとし、PCRに供した。
【0162】
C2NS Lc 117IM R(5’- GGTCCCAGGG CCGAAAGTGA ACATAGGTGA GCTACCATAC TGCTG -3’(配列番号74))を合成し、C2NS Lc 117IM R とC2-1 Lc Bgl II F (5’- AGA GAG AGA GAT CTC TCA CCA TGG AAA CCC CAG CGCAGC TTC TCT TC -3’(配列番号18))を用い、N5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅産物をC2NSI117M−Fと命名した。次に、C2NS Lc 117IM F(5’- GCAGTATGGT AGCTCACCTA TGTTCACTTT CGGCCCTGGG ACC -3’(配列番号75))とC2NS EcoRI R(5’- CCGGAATTCA ACACTCTCCC CTGTTGAAGC TCTTTGTGAC GG -3’(配列番号76))を用い、N5KG1-Val C2IgG1NSベクターを鋳型として94℃15秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅産物をC2NSI117M−Rと命名した。次にC2NSI117M−FとC2NSI117M−Rの2倍希釈液を各5μl入れ、プライマー無しで94℃15秒、55℃30秒、68℃60秒のサイクルを3回繰り返した。この反応液を99℃5分間加熱後5倍希釈し、5μlを鋳型としてC2-1 Lc Bgl II FプライマーとC2NS EcoRI Rプライマーを用い、94℃15秒、55℃30秒、68℃60秒のサイクルを25回繰り返した。この反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR増幅産物をQIAquick gel extraction kitにより精製した。このPCR増幅cDNA断片をBglII、EcoRIで消化し、同一酵素で解裂されていた前記C2重鎖遺伝子が入ったN5KG1-Val Larkベクターに導入した。挿入部分のDNA塩基配列を決定して、PCR増幅して挿入された配列に鋳型とした遺伝子配列と相違がないことを確認した。得られた1アミノ酸置換変異体蛋白を発現するプラスミドDNAをN5KG1-Val C2IgG1NS/I117Mベクターと命名した。
【0163】
C2IgG1NSアミノ酸改変体の作製
実施例7で示した方法により、C2IgG1NS/ I117Lベクター、C2IgG1NS/ I117Mベクター、C2IgG1NS/ I117N、C2IgG1NS/ I117Cベクターを添付説明書に従いFreeStyle293細胞(インビトロジェン社製)へ導入し、組み換え型抗体を発現させた。抗体の精製は実施例8に示した方法を一部改良して行った。6日目の培養上清を回収し、Steriflip-GP(MILLIPORE,SCGP00525)でfiltrationすることにより細胞等の雑排物を除去した。抗体を含む培養上清をProtein A(アマシャム)を用い、吸着緩衝液としてPBS、溶出緩衝液として20mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.4)を用いてアフィニティー精製した。溶出画分は200mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を添加してpH5.5付近に調整した。調製された抗体溶液は、vivaspin6(10KMW cut VIVASCIENCE,VS0601)を用いて濃縮(3000rpm)し、さらにPBSを添加し遠心することによりPBSに置換された精製抗体を取得した。精製抗体の濃度は、280nmの吸光度を測定し、1mg/mlを1.45 Optimal densityとして算出した。
【0164】
C2IgG1NSアミノ酸改変体の凝集体含有率の測定
得られたアミノ酸改変抗体10ug(0.1mg/ml)を用いて、各精製抗体の凝集体含有率を測定した。
【0165】
抗体溶液の凝集体含有率は、高速液体クロマトグラフ装置(島津社製)及びTSK−G3000 SWカラム(東ソー社製)と、溶媒として20mMリン酸ナトリウム、500mM NaCl pH7.0を用いて分析を行った。溶出位置をゲルろ過HPLC用分子量マーカー(オリエンタル酵母社)(Cat No.40403701)と比較することで、抗体蛋白の単量体とそれ以上の凝集体のピークを同定して、それぞれのピーク面積から凝集体の含有率を算出した。
【0166】
結果を図15に示す。図15によれば、上述のアミノ酸の改変により、凝集体含有率が減少することが明らかとなる。
【0167】
C2IgG1NSアミノ酸改変体の凝集体含量の測定
実施例14および15の方法に従い、C2IgG1NSアミノ酸改変体の腫瘍細胞株、ヒトCD98/ヒトLAT1強制発現株、およびHAECに対する反応性を、FACSにより解析した。
【0168】
結果を図16Aおよび図16Bに示す。上述のアミノ酸改変抗体、特にC2IgG1NS/I117Lは、ヒトCD98とLAT1を強制発現させたL929細胞に結合し、無処置のL929に対しては結合しなかった(図16A)。また、これらのアミノ酸改変抗体は、HAECに結合せず、colo205、Ramos、およびDLD−1といった各種癌細胞に対して結合性を示した(図16B)。
【0169】
これらの結果は図2Aおよび図8に示されたC2IgG1の結合特性と同様であることから、上述のアミノ酸改変抗体、特にC2IgG1NS/I117Lは、凝集体含有率が低く、癌細胞に対してC2IgG1と同様の結合特異性を有し、かつC2IgG1と同様の抗腫瘍活性が期待できる抗体であるといえる。
【0170】
<C2IgG1NSアミノ酸改変体の重鎖可変領域アミノ酸配列(C2IgG1重鎖可変領域アミノ酸配列と同一)>(配列番号43)
STTMKHLWFFLLLVAAPRWVLSQLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKSQFFLKLSSVTAADTAVYYCARQGTGLALFDYWGQGTLVTVSS
【0171】
<C2IgG1NSアミノ酸改変体の重鎖可変領域核酸配列(C2IgG1NS重鎖可変領域核酸配列と同一)>(配列番号42)
GTCGACCACCATGAAGCACCTGTGGTTCTTCCTCCTGCTGGTGGCGGCTCCCAGATGGGTCCTGTCCCAGCTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTGGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCTCCATCAGCAGTAGTAGTTACTACTGGGGCTGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGAGTATCTATTATAGTGGGAGTACCTACTACAACCCGTCCCTCAAGAGTCGAGTCACCATATCCGTAGACACGTCCAAGAACCAGTTCTCCCTGAAGCTGAGCTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTGTGTATTACTGTGCGAGACAAGGGACGGGGCTCGCCCTATTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
【0172】
<C2IgG1NS/117ILの軽鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号77)
RSLTMETPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPLFTFGPGTKVDIK
【0173】
<C2IgG1NS/117ILの軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号78)
AGATCTCTCACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTTCTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTCGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCACCTCTATTCACTTTCGGCCCTGGGACCAAAGTGGATATCAAA
【0174】
<C2IgG1NS/117IMの軽鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号79)
RSLTMETPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPMFTFGPGTKVDIK
【0175】
<C2IgG1NS/117IMの軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号80)
AGATCTCTCACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTTCTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTCGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCACCTATGTTCACTTTCGGCCCTGGGACCAAAGTGGATATCAAA
【0176】
<C2IgG1NS/117INの軽鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号81)
RSLTMETPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPNFTFGPGTKVDIK
【0177】
<C2IgG1NS/117INの軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号82)
AGATCTCTCACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTTCTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTCGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCACCTAATTTCACTTTCGGCCCTGGGACCAAAGTGGATATCAAA
【0178】
<C2IgG1NS/117ICの軽鎖可変領域アミノ酸配列>(配列番号83)
RSLTMETPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPCFTFGPGTKVDIK
【0179】
<C2IgG1NS/117ICの軽鎖可変領域核酸配列>(配列番号84)
AGATCTCTCACCATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACCGGAGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTTCTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTCGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTATGGTAGCTCACCTTGTTTCACTTTCGGCCCTGGGACCAAAGTGGATATCAAA
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌細胞の細胞膜由来のCD98でありかつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質と複合体を形成しているCD98に特異的結合能を有することを特徴とする、ヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項2】
抗腫瘍活性を有する、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項3】
前記CD98が発現している細胞内へのアミノ輸送を阻害する、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項4】
正常ヒト血管内皮細胞、正常ヒト末梢血単球、およびリンパ球に結合しない、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項5】
アミノ酸輸送活性を有するタンパク質がLAT1である、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項6】
CD98がヒトCD98である、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項7】
抗体重鎖定常領域のクラスがIgGである、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項8】
配列番号29および31に記載のアミノ酸配列を、重鎖可変領域および軽鎖可変領域として有する、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項9】
可変領域のアミノ酸配列が、プラスミドベクターK3/pCR4(FERM BP−10552)またはC2IgG1/pCR4(FERM BP−10551)から得られる、ベクターpCR4に由来する配列を含まないBg1II−BsiWI断片およびSalI−NheI断片によってコードされるものである、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項10】
膀胱癌細胞T24のロイシン取り込みに対し、有意な阻害効果を有する、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項11】
ヒトCD98の1〜529アミノ酸配列(配列番号66)中の連続または不連続の少なくとも8個のアミノ酸残基によって構成されるエピトープを認識するものである、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項12】
ヒトCD98の371〜529アミノ酸の領域の一部分に結合性を有する、請求項11に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項13】
ヒトCD98の1〜371アミノ酸の領域の一部分に結合性を有する、請求項11に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項14】
前記機能的断片が、抗体の重鎖および軽鎖可変領域(VHおよびVL)、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、Fd、scFv、sdFvおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片と、
結合タンパク質、酵素、薬物、毒素、免疫モジュレーター、検出可能部分またはタグを含む異種ドメインとの結合物。
【請求項16】
プラスミドベクターK3/pCR4(FERM BP−10552)またはC2IgG1/pCR4(FERM BP−10551)に含まれる、ベクターpCR4に由来する配列以外の配列を有する核酸。
【請求項17】
請求項16に記載の核酸を含んでなる、ベクター。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片を発現する、細胞。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片を有効成分として含んでなる、医薬組成物。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片を有効成分として含んでなる、腫瘍の予防または治療剤。
【請求項21】
前記腫瘍が、LAT1と複合体を形成しているCD98を発現している癌細胞を含む腫瘍である、請求項20に記載の予防または治療剤。
【請求項22】
前記腫瘍が、大腸癌または結腸癌である、請求項20または21に記載の腫瘍の予防または治療剤。
【請求項23】
請求項17に記載のベクターを宿主に導入して該宿主を培養し、培養物から該抗体を取得することを特徴とする、抗体の製造方法。
【請求項24】
配列番号28および30に記載の配列またはその核酸配列縮重物を含む発現ベクターを宿主に導入して該宿主を培養し、培養物から該抗体を取得することを特徴とする、抗体の製造方法。
【請求項25】
宿主が、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、植物細胞、植物および哺乳動物からなる群から選択される、請求項23または24に記載の製造方法。
【請求項26】
CD98およびLAT1をコードする核酸を導入して得られたCD98/LAT1発現細胞を動物に免疫することを含んでなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片を取得する方法。
【請求項27】
導入するCD98およびLAT1が、ヒトのCD98およびヒトLAT1である、請求項26に記載の方法。
【請求項1】
癌細胞の細胞膜由来のCD98でありかつアミノ酸輸送活性を有するタンパク質と複合体を形成しているCD98に特異的結合能を有することを特徴とする、ヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項2】
抗腫瘍活性を有する、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項3】
前記CD98が発現している細胞内へのアミノ輸送を阻害する、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項4】
正常ヒト血管内皮細胞、正常ヒト末梢血単球、およびリンパ球に結合しない、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項5】
アミノ酸輸送活性を有するタンパク質がLAT1である、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項6】
CD98がヒトCD98である、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項7】
抗体重鎖定常領域のクラスがIgGである、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項8】
配列番号29および31に記載のアミノ酸配列を、重鎖可変領域および軽鎖可変領域として有する、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項9】
可変領域のアミノ酸配列が、プラスミドベクターK3/pCR4(FERM BP−10552)またはC2IgG1/pCR4(FERM BP−10551)から得られる、ベクターpCR4に由来する配列を含まないBg1II−BsiWI断片およびSalI−NheI断片によってコードされるものである、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項10】
膀胱癌細胞T24のロイシン取り込みに対し、有意な阻害効果を有する、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項11】
ヒトCD98の1〜529アミノ酸配列(配列番号66)中の連続または不連続の少なくとも8個のアミノ酸残基によって構成されるエピトープを認識するものである、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項12】
ヒトCD98の371〜529アミノ酸の領域の一部分に結合性を有する、請求項11に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項13】
ヒトCD98の1〜371アミノ酸の領域の一部分に結合性を有する、請求項11に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項14】
前記機能的断片が、抗体の重鎖および軽鎖可変領域(VHおよびVL)、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、Fd、scFv、sdFvおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片と、
結合タンパク質、酵素、薬物、毒素、免疫モジュレーター、検出可能部分またはタグを含む異種ドメインとの結合物。
【請求項16】
プラスミドベクターK3/pCR4(FERM BP−10552)またはC2IgG1/pCR4(FERM BP−10551)に含まれる、ベクターpCR4に由来する配列以外の配列を有する核酸。
【請求項17】
請求項16に記載の核酸を含んでなる、ベクター。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片を発現する、細胞。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片を有効成分として含んでなる、医薬組成物。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片を有効成分として含んでなる、腫瘍の予防または治療剤。
【請求項21】
前記腫瘍が、LAT1と複合体を形成しているCD98を発現している癌細胞を含む腫瘍である、請求項20に記載の予防または治療剤。
【請求項22】
前記腫瘍が、大腸癌または結腸癌である、請求項20または21に記載の腫瘍の予防または治療剤。
【請求項23】
請求項17に記載のベクターを宿主に導入して該宿主を培養し、培養物から該抗体を取得することを特徴とする、抗体の製造方法。
【請求項24】
配列番号28および30に記載の配列またはその核酸配列縮重物を含む発現ベクターを宿主に導入して該宿主を培養し、培養物から該抗体を取得することを特徴とする、抗体の製造方法。
【請求項25】
宿主が、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、植物細胞、植物および哺乳動物からなる群から選択される、請求項23または24に記載の製造方法。
【請求項26】
CD98およびLAT1をコードする核酸を導入して得られたCD98/LAT1発現細胞を動物に免疫することを含んでなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその機能的断片を取得する方法。
【請求項27】
導入するCD98およびLAT1が、ヒトのCD98およびヒトLAT1である、請求項26に記載の方法。
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図16A】
【図16B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図16A】
【図16B】
【公開番号】特開2009−189376(P2009−189376A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135435(P2009−135435)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【分割の表示】特願2008−508722(P2008−508722)の分割
【原出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【分割の表示】特願2008−508722(P2008−508722)の分割
【原出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】
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