説明

施肥作業機

【課題】水田や蓮根田等の足場の悪い圃場での施肥作業負担が軽減され、機体の前後バランスが良好で機体の前後長をコンパクトに形成できる施肥作業機を提供することを課題とする。
【解決手段】走行部6を有する走行機体1と、走行機体1の後方に連結され作業者が乗車する搭乗部2と、肥料を施肥する施肥部24と、施肥部24に肥料を供給する肥料供給部27とを備え、圃場を走行しながら肥料を施肥する施肥作業機において、走行機体1側に肥料供給部27を設け、搭乗部2の後部側に施肥部24を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は圃場を走行する施肥作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
水田や蓮根田等の足場の悪い圃場での作業負担を軽減させるため、走行部を有する走行機体と、走行機体の後方に連結され作業者が乗車する搭乗部と、肥料を施肥する施肥部と、施肥部に肥料を供給する肥料供給部とを備え、圃場を走行しながら肥料を施肥する特許文献1に示す施肥作業機が公知になっている。
【特許文献1】特開2004−57082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記文献の施肥作業機は、走行機体の後方に設けられた搭乗部のさらに後方に施肥部及び肥料供給部とを備えた施肥装置が連結されているため、機体が後方バランスになり、走行時の安定性が低いという課題がある他、機体の前後長をコンパクトに形成することが困難であるという課題がある。
本発明は上記課題を解決し、水田や蓮根田等の足場の悪い圃場での施肥作業負担が軽減され、機体の前後バランスが良好で機体の前後長をコンパクトに形成できる施肥作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本発明の施肥作業機は、第1に、走行部6を有する走行機体1と、走行機体1の後方に連結され作業者が乗車する搭乗部2と、肥料を施肥する施肥部24と、施肥部24に肥料を供給する肥料供給部27とを備え、圃場を走行しながら肥料を施肥する施肥作業機において、走行機体1側に肥料供給部27を設け、搭乗部2の後部側に施肥部24を設けたことを特徴としている。
【0005】
第2に、搭乗部2の後部に左右方向のツールバー22を固設し、該ツールバー22に、施肥部24と、搭乗部2の各側方にそれぞれ位置する左右一対のフロート37,37とを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
以上のように構成される本発明の施肥作業機によれば、肥料供給部を走行機体側に設け、施肥部を走行機体の後方に連結された搭乗部の後部側に設けることにより、機体の前後バランスが向上するとともに、肥料供給部及び施肥部を走行機体側に設けたものと比較して走行機体側の重量が軽量化されて走行部が圃場の填まり込むことが防止できるので水田や蓮根田等の足場の悪い圃場における作業効率が向上する他、機体の前後長をコンパクトに形成することが可能になる。
【0007】
また、搭乗部の各側方にフロートを配置することにより、機体の左右バランスが向上する。くわえて、フロートが施肥部を設置するツールバーに設けられるため、フロートを設けることによる部品点数の増加を最小限に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1,2は本発明を適用した作業機の側面図及び平面図である。作業機は、走行機体1と、走行機体1の後方に連結された搭乗部2と、施肥装置3と、バランスウェイト4とを備え、水田や蓮根田等の水分を多く含む足場の悪い圃場での施肥作業や代掻作業等をするためのものである。
【0009】
上記走行機体2は、左右一対の車輪6,6(走行部)と、エンジン7と、エンジン7の動力を車輪6及び後述する施肥ポンプ27に変速伝動する変速機(図示しない)が内蔵されたミッションケース8と、ミッションケース8が載置固定される前後方向の主フレーム9と、主フレーム9の後方に配置される前後方向の縦フレーム11と、縦フレーム11の前端部上方から左右方向に延設される横フレーム12とを備えている。
【0010】
主フレーム9、縦フレーム11及び横フレーム12は、走行機体1のフレーム部を構成している。縦フレーム11の前端部が主フレーム9の後端部中央にボルト固定されることにより、縦フレーム11が主フレーム9に対して強固に固定される。縦フレーム11の前端部上面には溶接等により上下方向の支持体13が固着され、この支持体13の上端に横フレーム12の左右方向中央部分が強固に固定されている。
【0011】
車輪6は主フレーム9に対して回転自在に支持される左右幅が広い中空状の水田車輪である。車輪6の外周面には全体に亘り所定間隔で羽根ラグ14が突出形成され、この複数の羽根ラグ14に囲繞されるように車輪6の中空部分には浮き体16が設けられている。この浮き体16によって浮力を得ることにより、走行機体1が水田等において沈み込むことが防止される。
【0012】
主フレーム9の上面にはミッションケース8が載置固定され、このミッションケース8の上部前側にはエンジン7が取付支持され、ミッションケース8の上部後側にはハンドルブラケット17が後方斜め上方に向かって延設されている。上記ハンドルブラケット17の後端部には、後方斜め上方に延びる平面視略ハの字形のハンドル18(操縦部)の前端部(基端部)が取付固定されている。なお、ハンドル18は、先端が搭乗部2の前端よりも後方に位置しており、搭乗部2にいる作業者が自然な姿勢でハンドル18を把持できるように構成されている。
【0013】
上記搭乗部2は、平面視前後方向に長い方形状に形成され、作業者が搭乗するための板状部材であり、全体が浮き体としても機能する。搭乗部2の前部中央には上下方向の軸19の下端部が回動自在に支持されている。この軸19の上端部は、リンク機構21を介して、上記縦フレーム11の後端部に連結支持されている。上記構成により圃場状態に応じて搭乗部2が走行機体1に対して所定範囲内で上下に変位する他、機体旋回時等において搭乗部2が走行機体1に対して左右揺動する。
【0014】
また、搭乗部2の後端部上面には左右方向(走行機体1の進行方向に対して略垂直方向)に延びる角柱状のツールバー22が着脱自在に取付固定(固設)されている。このツールバー22は、平面視において搭乗部2から左右両側にそれぞれ突出した状態になっており、この突出部分に取付部材23が設置される。
【0015】
取付部材23は、開口部が対向する前後のチャネル部材23a,23aと、ボルト23bとにより構成される。そして、前後のチャネル部材23a,23aにツールバー22が挟まれた状態で、ボルト23bにより2つのチャネル部材23a,23aを連結することにより、取付部材23がツールバー22の外周面に締着固定される。一方、ボルト23bを緩めることにより、ツールバー22上で取付部材23の左右位置調整ができる。
【0016】
上記施肥装置3は、肥料を施肥する施肥ノズル24(施肥部)と、肥料タンク26と、肥料タンク26の肥料を施肥ノズル24に供給する施肥ポンプ27(肥料供給部)と、肥料タンク26から施肥ポンプ27に肥料を移送する移送パイプ28と、施肥ポンプ27から施肥ノズル24に肥料を移送する施肥パイプ29とを備えている。
【0017】
施肥ノズル24は、上下方向の上部に対して下部が斜め後方に屈曲され、さらに下端部(先端部)が後方を向いている。施肥ノズル24の基端には施肥ポンプ9からの施肥パイプ29が接続され、先端から肥料を吐出することにより施肥作業を行う。
【0018】
施肥ノズル24は、前述した取付部材23を介して、ツールバー22に左右位置調整可能に取付支持される。具体的には、施肥ノズル24の基端部から後方に一体的に突出形成された上下方向の取付座31を、取付部材23から前方斜め上方に一体的に延設された固定ブラケット32にボルト固定することにより、ツールバー22への施肥ノズル24の取付けを行う。
【0019】
くわえて、取付座31には、ツールバー22取付用のボルト孔31aが上下方向に並べられて複数穿設されており、ボルト固定位置を変更することにより、ツールバー22(搭乗部2)に対して施肥ノズル24の高さ調整を行うことが可能になっている。ちなみに、通常、施肥ノズル22の先端が圃場の所定深さにまで挿入されるように、施肥ノズル22の高さ調整を行う。
【0020】
上記構成の施肥ノズル24は、搭乗部2の左右にそれぞれ2つ、計4つ配置する。内側の2つの施肥ノズル24は搭乗部2の対応する各側部の付近に配置され、外側の2つの施肥ノズル24はツールバー22の左右の対応する各端部付近に配置されている。ちなみに、各施肥ノズル24の先端は搭乗部2の後端よりも後方に位置している。
【0021】
肥料タンク26は、ミッションケース8の左斜め上方と右斜め上方にそれぞれ設置されている。各肥料タンク26は、横フレーム12の対応する左右の各端部の上面に突設された上下方向の支柱33と、この支柱33の上部から前方並びに外側方に延設された支持ステー34とを介して、走行機体1に支持固定されている。
【0022】
施肥ポンプ27は、縦フレーム11の上面に載置固定されている。
【0023】
上記バランスウェイト4は、主フレーム9の前端部中央に固設された取付ブラケット36によって、走行機体1の前方に支持されている。走行機体1の後部には施肥ポンプ27が配置され、前方にはバランスウェイト4が設けられているため、走行機体1の前後バランスが良好に保たれる。
【0024】
上記構成の作業機によれば、水田や蓮根田等の水分を多く含んだ圃場においても、浮き体として機能する搭乗部2及び浮き体16を内部に備えた左右の車輪6が、浮力を受け且つ荷重を分散させるため、作業機が圃場に嵌まり込むことが防止される。そして、作業機は、左右の車輪6,6を回転駆動させ、施肥ポンプ27を駆動させることにより、圃場に挿入された施肥ノズル24の先端から肥料を吐出させ、代掻作業機及び施肥作業をしながら圃場を滑走(走行)できるように構成されている。
【0025】
また、肥料タンク26を走行機体1の左右に各1個づつ配置しているため、作業機の左右バランスが悪化することが防止される他、左右の肥料タンク26内の肥料を同時に消費させていくことにより、作業機の左右バランスを常に良好に保つことができる。そして、肥料タンク26から施肥ポンプ9までの距離が短いため、前述の移送パイプ28の配管が容易になる。
【0026】
さらに、ツールバー22を搭乗部2に対して着脱自在に構成したため、圃場への出入り時や圃場で代掻作業のみを行う場合等、ツールバー22が邪魔になる場合は、ツールバー22を取外すことが可能であるため、利便性が向上する。
【0027】
図3,4は本発明の他の実施例を示す作業機の側面図及び平面図である。以下、図1,2に示す作業機と異なる構成について説明する。作業機は、施肥ノズル24の他、取付部材23を介してフロート37をツールバー22に取付支持している。
【0028】
フロート37は、前後方向に延びる板状部材であり、前端部が中途部及び後端部に対して前方斜め上方に屈曲形成されており、圃場をスムーズに滑走できるようになっている。くわえて、フロート37は、上下方向の支持ロッド38の下端部から後方に一体的に延設された支持ブラケット39に上下揺動可能に支持されており、圃場の凹凸をこの上下揺動によって吸収する。
【0029】
そして、上記支持ロッド38が取付部材23から後方斜め方向に一体的に延設されたの固定部材41に挿通された状態でボルト固定されている。この際、支持ロッド38にはツールバー22取付用のボルト孔38aが上下方向に並べられて複数穿設されており、ボルト固定位置を変更できるため、ツールバー22(搭乗部2)に対してフロート37の上下位置が調整可能になっている。
【0030】
上記構成のフロート37は、搭乗部2の左右側方にそれぞれ1つづつ設けられている。左側のフロート37は、搭乗部2の左側方に設けられた2つの施肥ノズル24,24に挟まれるように配置されている。一方、右側のフロート37は、搭乗部2の右側方に設けられた2つの施肥ノズル24,24に挟まれるように配置されている。
【0031】
上記構成の作業機によれば、左右のフロート37によって機体の左右バランス及び旋回性能が向上する他、施肥ノズル24の圃場に対する上下位置が一定に保たれ、施肥深さを均一できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用した作業機の側面図である。
【図2】本発明を適用した作業機の平面図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す作業機の側面図である。
【図4】本発明の他の実施例を示す作業機の平面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 走行機体
2 搭乗部
6 車輪(走行部)
22ツールバー
24 施肥ノズル(施肥部)
27 施肥ポンプ(肥料供給部)
37 フロート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部(6)を有する走行機体(1)と、走行機体(1)の後方に連結され作業者が乗車する搭乗部(2)と、肥料を施肥する施肥部(24)と、施肥部(24)に肥料を供給する肥料供給部(27)とを備え、圃場を走行しながら肥料を施肥する施肥作業機において、走行機体(1)側に肥料供給部(27)を設け、搭乗部(2)の後部側に施肥部(24)を設けた施肥作業機。
【請求項2】
搭乗部(2)の後部に左右方向のツールバー(22)を固設し、該ツールバー(22)に、施肥部(24)と、搭乗部(2)の各側方にそれぞれ位置する左右一対のフロート(37),(37)とを設けた請求項1の施肥作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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