説明

昇降機能付き車止めブロック

【課題】車止めブロックを使って駐停車していたトラック、バスなどの自動車がうっかりブロックを外し忘れて発車した場合でもブロックを乗り越えられない駐車ブロックで、しかも設置・撤去が楽にできるものを提供する。
【解決手段】車止めブロック内にローラーを組み込み、車輪が乗り上げても車輪が空転して前進できない構造のものとし、さらにブロックにアームを取り付けて油圧による出し入れができ、あるいは手動であってもブロックの重量が直接手にかかってこない労力軽減できる車止めブロックとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックその他の自動車が駐停車中に動き出すのを阻止する車止めブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラックやトレーラー、バスなどは車両重量が重いうえに荷物や人を乗せた総重量はかなりのものとなることから、特に坂道ではブレーキの掛け具合が甘いと駐停車中に動き出してしまうことが十分考えられ、運転者は安全のため車止めブロック(以後ブロックという)を携行して走ることが多い。特に大型車の場合はブロック自体も大きく重量もあるため、運転者が車から降ろして車輪のところまで運び、使用後にも同じ作業をするのはかなり大変な作業である。
【0003】
こうした大変な作業を軽減するためには、動力を使ってブロックを車輪と路面との間に挿入する方法が考えられるが、まだ一般的にはなっていないのが現状である。これまで考えられた車止めのアイデアをみてみると、構造が複雑なものや路面に固着して使用するものが多く、簡単な構造で携行可能な小型のものは少ない。車輪の前進を阻止する車止めとしてローラーを利用すれば小型で効果的なものが可能と思われるが、支持具にローラーを付け路面に設置しておくもの(特許文献1参照)や、ローラーを取り付けた携行可能なもの(特許文献2参照)などが見受けられる。
【先行技術文献】
【特許文献1】特開2003−13625号公報
【特許文献2】実登第3106352号公報
【0004】
特許文献1「特開2003−13625号公報」で紹介されているアイデアは、ほとんどローラーのみで構成された車止めであるが、路面固定型で携行できないため使用場所が限られてしまう。特許文献2「実登第3106352号公報」紹介のものは、携行可能な小型の車止めにローラーを組み込んだもので本願発明と類似しているが、昇降機能がついていない点が本願発明との相違点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明が目指す車止めの条件としては、小型軽量で効果的、かつ自動車に積み込んでどこへでも運んでいけるものであって、しかも車輪への設置時や撤去時に大きな労力を必要としないものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために請求項1に記載のアイデアは、直方体を構成する6面のうち1面を斜面とする車止めブロックにおいて、斜面部分のブロック内部に路面と平行にローラーを組み込み、ローラーの外周面の一部を斜面上に突出、あるいは斜面上と上面上に同時に突出させることとし、ブロック移動用のアームをブロック本体に装着して、ブロック非使用時には自動車の車体に格納保持することを特徴とする昇降機能付き車止めブロックである。
【0007】
大型トラックなどは重量が重いために駐停車中にいったん動き始めるとブロックを乗り越えてしまうおそれも十分にあるために、安全面から言えばできるだけ大型のブロックの使用が要求される。しかし、あまり大きくすると車輪と路面との間に挿入する作業が大変になるため、ある程度の大きさに抑えておきたい。そこで本願発明ではブロックそのものはそれほど大きくせずに、ブロックの車輪が当たる斜面にローラーを組み込み、車輪が乗り越えようとしてもローラー上で車輪が空転して車両が前進できないようにした。それと同時に、運転者の労力を軽減するため、ブロックの挿入・撤去にあたっては人手ですべてを行なうのではなく、油圧を利用したり、手動で行なう場合も重量をアームで支えながら昇降させるなど労力を軽減して行なう方法を採用した。
【0008】
この台形のブロック斜面の傾斜角は、車の動きを阻止するためには大きい角度の方が車輪が乗り越えにくくてよいが、例えば路面との角度を直角に近いところまで大きくしてしまった場合、必ずしも効果が上がるとはいえない。すなわち、車輪はブロックを乗り越えにくくはなるものの、携行用のブロックでは路面に押さえつける力が働かず、ブロックはずるずると前方へ滑っていってしまう危険性をはらむ。したがって、路面を押さえつける力が働くようにブロックが車輪の下に潜り込むことができる適当な角度とし、しかも乗り越えにくい角度に設定する必要がある。この条件を満たす角度としては、概ね40〜50度が適当と思われる。
【0009】
ブロックの素材については、強度や耐久性、軽量化の観点から内部を中空にした鉄やステンレスなどの金属が適しているが、木材で製作しても大きな問題はない。
【0010】
ブロックはトラックなどの駆動輪にあてがうのが普通であるが、使用後に取り除くのを忘れて発車すると当然アームを破損する事故が発生する。ブロックにローラーを付けることにより、車輪に駆動がかかってもローラー上で車輪が空転してブロックを乗り越えるのを防止することができる。その意味で、本願発明ではアーム装着ブロックとローラーとは切り離せない一体として考えるべきものとしている。
【0011】
ローラーの材質については、やはり強度や耐久性の観点から金属性が望ましいが、力がかかる中心軸や軸受けを金属とすれば、ローラー回転部分は材質の堅い木を使用しても問題はないと思われる。
【0012】
ブロックに取り付けるアームであるが、ブロックを移動させるのに十分な強度を持たせる必要があり、鉄その他の金属製が望ましい。車輪下部への挿入ならびに撤去、車体への格納保持の方法としては、ピストン式の油圧駆動を使用する方法が楽であるが、アーム上端の支点中心に回転させたり、アームを折りたたみ式にしてワイヤーやチェーンを使って手動で昇降させる方法などでもよい。留意すべき点は、車体に格納保持していて走行中の振動などで落下しないよう鎖その他の留め具などによる固定が必要である。ブロックを操作する場所は、運転席から操作できるようにしておいてもよいが、車輪とブロックの相互関係を見ながら操作するのが望ましいので、車体のブロック格納保持場所の近くでもスイッチ操作やハンドル操作ができるようにしておく方がよい。
【0013】
アームをブロックに装着する方法としてはいくつか考えられるが、アームが定位置でブロックに固定されてしまうと角度的に路面と車輪との間にうまくフィットできない場合が出てくる。そこで、組み込んだローラーと干渉しないブロックの部位に入口が細長い形の貫通穴をあけ、そこに2本のアームを繋ぐ連結棒を通せば、ブロックの設置角度が自由に変更できブロックも自由に上下に動くことができるため、路面や車のフェンダーその他の車体付属部品の邪魔にならずにブロックの車輪への設置や格納保持がスムーズにできる。
【0014】
さらに、上記の課題を解決するために請求項2に記載のアイデアは、横倒しした三角柱の形状を有する車止めブロックにおいて、斜面部分のブロック内部に路面と平行にローラーを組み込み、ローラーの外周面の一部を斜面上に突出、あるいは斜面上と三角形の頂点上に同時に突出させた請求項1記載の昇降機能付き車止めブロックである。
【0015】
ブロックの形状を三角柱にしても、斜面の角度が上記請求項1で述べた角度に設定され路面をしっかりつかむことができるものであれば、ブロックの機能は十分果たせるものであり、ブロックの形状についてはそれほど厳しい制限は必要なく、台形や三角柱の他の形状でも上記の機能が発揮できるものであればよい。三角柱はブロックの重量を軽減できる点でむしろ優れているともいえる。
【0016】
三角柱やローラーの素材については、上述したブロック同様、鉄やステンレスなどの金属または木材を使用することで問題はない。
【発明の効果】
【0017】
運転者が駐停車後、車止めを撤去するのを忘れてエンジンをかけて発車しようとする場合、駆動輪が回転してブロックを乗り越えようとするが、ブロックにローラーが組み込んであるために車輪はローラー上で空転し、ブロックを乗り越えることはない。ローラーが組み込まれていなければ車輪がブロックを乗り越えてアームを破損することが十分考えられるが、ローラーが装着されているおかげで運転者の不注意もカバーしてくれる車止めとなっている。さらに本案では、ブロックにアームを装着して車体に取り付け、アームの昇降を油圧駆動で行なったり、アームに支えられながらブロックを手で昇降させるなど、労力の軽減がはかられている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】側面形状が台形の車止めブロックの斜視図。
【図2】車止めブロックの側面一部透視図。
【図3】車体側面下部が路面から高い位置にあるトラックの、手動によるブロック昇降の一実施例を示す側面図。(本図ほか、図4、図5ともブロック組み込みのローラーの図示省略)
【図4】車体側面下部が路面から低い位置にあるバス、乗用車等におけるブロック昇降の一実施例を示す側面図。
【図5】図4同様、車体側面下部が低い位置にある車両において、ブロックの昇降を油圧によるピストン操作で行なう場合の実施例を示す側面図。(油圧回路の図示省略)
【図6】形状が三角柱の車止めブロックの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明は上述した構造を有する車止めブロックであり、これを使用するときは次の手順により行なう。トラックなどを傾斜地に駐停車させるのにブロック1が必要と感じたときは、通常車輪9の下側にのみブロック1をあてがうが、強風下などで車両の固定が必要と認められる場合には車輪9の前後にブロック1を使用することもあり得る。図面(図3、図4、図5)に示す実施例では、便宜上2個のブロック1を同時に使用している図を示す。また、図1および図6では1個のブロック1に対しアーム3を2本使用しているが、アーム3の強度、ブロック1の重量との兼ね合いにより片側1本だけのアーム3の使用も可能である。
【0020】
図3は大型トラックなど車体10と路面との距離が長い場合の実施例である。車体10から路面までの距離が長いため車体から下方にステー5を伸ばし、その先端をアーム取り付けの支点としている。ブロック1の操作者は巻き上げ機6の取っ手を操作してワイヤー7をゆるめ、ブロック1を固定している留め具A8aを外し、ブロック1が重力で路面に達したらブロック1を手に取って車輪9と路面の間に挿入する。一方、ブロック1を車体10に格納保持するときは、これと逆の手順で行なう。まずブロック1を手に持ち、アーム3が垂直となる位置を過ぎて車輪9の反対側に斜めに位置するところまで運んで手を止め、巻き上げ機6を手動で操作してワイヤー7を巻き上げる。ブロック1とアーム3が上死点に来たところで巻き上げをやめ、留め具A8aをブロック1の貫通穴4にかけて固定する。
【0021】
図4の実施例はバスなど車体10と路面との距離が短い場合の例である。この場合もすべて手動で行なうが、まず留め具B8bを外し、ブロック1とアーム3を手に持ち直接車輪9と路面との間にあてがう。車体10に格納保持する場合はこの逆の手順で行なう。
【0022】
図5はブロック1を油圧駆動ピストン11により昇降させる装置を示すが、運転席または車輪9付近に設置したレバー(図示省略)を操作することにより、車止めを車輪9と路面との間に挿入する。車体10に格納保持する場合はこの逆をすべてレバー操作のみで行ない、手でブロック1を動かすなどの作業は必要としない。ブロック1の格納保持時には鎖などの留め具C8cでしっかりと車体10に固定する。
【0023】
図6に示す三角柱型ブロック1の使用方法については、ブロック1の形状が異なるだけで上に示す図3、図4の場合と全く同じである。ただし図6では貫通穴の図示は省略してある。図6で示すように三角ブロック1のアーム3への取り付けを固定すれば、図5のごとく油圧駆動ピストン11を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1・・・・ブロック
2・・・・ローラー
3・・・・アーム
4・・・・貫通穴
5・・・・ステー
6・・・・巻き上げ機
7・・・・ワイヤー
8a・・・留め具A
8b・・・留め具B
8c・・・留め具C
9・・・・車輪
10・・・・車体
11・・・・油圧駆動ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体を構成する6面のうち1面を斜面とする車止めブロックにおいて、斜面部分のブロック内部に路面と平行にローラーを組み込み、ローラーの外周面の一部を斜面上に突出、あるいは斜面上と上面上に同時に突出させることとし、ブロック移動用のアームをブロック本体に装着して、ブロック不使用時には自動車の車体に格納保持することを特徴とする昇降機能付き車止めブロック。
【請求項2】
三角柱を横倒しした形状の車止めブロックにおいて、斜面部分のブロック内部に路面と平行にローラーを組み込み、ローラーの外周面の一部を斜面上に突出、あるいは斜面上と三角形の頂点上に同時に突出させた請求項1記載の昇降機能付き車止めブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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