説明

昇降窓構造

【課題】 昇降パネルが上下する窓構造であって、昇降パネルの下枠から雨水が室内側に廻り込むのを防止した窓構造の提供を目的とする。
【解決手段】 躯体の窓開口部に対して昇降パネルが上昇すると当該窓開口部を閉じ、昇降パネルが下降すると当該窓開口部を開く窓構造であって、当該窓開口部の下側に外側パネルと内側パネルとにて、その間に昇降パネルの収納部を形成し、昇降パネルの下枠は水平方向に延在した外側凹部と内側凹部を有し、外側パネルは開口上端部付近に、前記外側凹部に入り込む外側垂下片を有し、内側パネルは開口上端部付近に前記内側凹部に入り込む内側垂下片を有し、前記外側凹部の底部高さが前記内側凹部の底部高さよりも低いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降パネルが躯体の窓開口部を昇降する窓構造に関し、特に昇降パネルの下枠と窓開口部下側に設けた昇降パネル収納部との納まり構造に係る。
【背景技術】
【0002】
引き違い障子にあっては、外側障子と内側障子との召合せ部にクレセントを設けることで、外側障子が内側障子に寄せ付けられ、耐風圧性や水密性を確保することができる。
しかし、引き違い障子は、障子を片側に寄せて開口する構造であるために障子の開口幅に制限があり窓の開放感に劣る。
そこで、開口部の下であって外壁と内壁との間にガラス戸の収納スペースを設けた昇降パネルタイプの窓構造が提案されている(特許文献1)。
このような昇降窓にあっては、開口部を広く採ることができ開放感に優れる。
しかし、昇降パネルが開口部を閉じた際に、この昇降パネルの下枠と躯体の外側パネルとの間から雨水が浸入しやすく、また、耐風圧性を確保するのが難しい問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−179787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、昇降パネルが上下する窓構造であって、昇降パネルの下枠から雨水が室内側に廻り込むのを防止した窓構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る昇降窓構造は、躯体の窓開口部に対して昇降パネルが上昇すると当該窓開口部を閉じ、昇降パネルが下降すると当該窓開口部を開く窓構造であって、当該窓開口部の下側に外側パネルと内側パネルとにて、その間に昇降パネルの収納部を形成し、昇降パネルの下枠は水平方向に延在した外側凹部と内側凹部を有し、外側パネルは開口上端部付近に、前記外側凹部に入り込む外側垂下片を有し、内側パネルは開口上端部付近に前記内側凹部に入り込む内側垂下片を有し、前記外側凹部の底部高さが前記内側凹部の底部高さよりも低いことを特徴とする。
【0006】
昇降パネルとして上枠と下枠及び左右の縦枠で枠体を形成し、この枠体にガラス等のパネルを組み込んだ構造を採用した場合に昇降パネルが上昇し、窓開口部を閉じた際に、上枠と左右の縦枠は躯体側の上レール及び左右の縦レール(スライドレール)とで嵌合支持ができる。
これに対して昇降パネルの下枠は、躯体の開口部下側に設けた外側パネルと内側パネルとの上端部付近に位置することになるために躯体側には、昇降パネルの下枠に嵌合させるための下レール部を設けることができない。
そこで本発明は、昇降パネルの下枠に外側凹部と内側凹部を設け、外側パネルの外側垂下片及び内側パネルの内側垂下片を引っ掛ける構造を採用した。
【0007】
本発明において、前記外側凹部は、浸入した雨水の排水部を有し、当該排水部の下方に、昇降パネル収納部の垂直方向に沿った雨水誘導リブを有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る窓構造にあっては、昇降パネルの下枠に設けた外側凹部に躯体の外側パネルに設けた外側垂下片を入り込ませ、昇降パネルの下枠に設けた内側凹部に躯体の内側パネルに設けた内側垂下片を入り込ませたので、この引っ掛け構造により耐風圧性を確保することができる。
この際に、下枠の外側凹部の底部の高さを内側凹部の底部の高さよりも低く設定したので、仮に外側凹部に雨水が浸入しても室内側に廻り込むのを防止できる。
また、昇降パネルの下枠に設けた外側凹部に雨水の排水部を設け、その下方に雨水誘導リブを設けると速やかに雨水が屋外に排水され、さらに室内への浸入を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】昇降パネルの下枠と収納部の上部付近の拡大図を示す。
【図2】A−A線断面図を示す。
【図3】昇降窓の断面構図を示す。
【図4】本発明に係る窓構造の外観図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図4に本発明に係る昇降窓構造を採用した昇降窓10の外側外観図を示し、図3は縦断面図、図1は昇降パネル13の下枠付近の拡大図を示す。
建築物の躯体の一部を切り抜いて開口部30を形成し、この開口部30の下側に外側パネル11と内側パネル12とで、その間に昇降パネル13の収納部Sを設けてある。
開口部30の両側から収納部Sの両側にわたって左右に上下方向の昇降レール20を有し、昇降パネル13は、この左右の昇降レール20の沿って上げ下げされる。
【0011】
昇降パネル13は、アルミサッシで製作された上枠13aと下枠13b及び左右の縦枠(図示省略する)とで形成した枠体にガラスを組み込んである。
本実施例では、ペアガラスの二重構造の例となっている。
昇降パネル13は、下部を左右のブラケット13cに支持され昇降装置21に巻装されたワイヤーにて上げ下げする。
開口部30の下側は、水平方向に設けた室外サッシ31と室内サッシ32とを有し、昇降パネル13に室内外から摺接するようになっているが、昇降がスムーズになるようにガラスと室内外サッシ32,31の間には弾性を有するタイト材32a,31aが設けられている。
【0012】
外側パネル11に取り付けた室外サッシ31は、下方向に垂下した外側垂下片31bを有し、内側パネル12に取り付けた室内サッシ32は下方向に垂下した内側垂下片32bを有する。
室内外に設けた垂下片に対応するように昇降パネル13の下枠13bには略U字断面形状からなる、外側凹部14と内側凹部15を有し、外側凹部14の底部14aの高さは、内側凹部15の底部15aの高さよりも低く設定してあり、その高低差dは5〜20mm有する。
これにより昇降パネル13のガラス面と、室外サッシ31aに取り付けたタイト材32aとの間から雨水が仮に浸入しても、外側凹部14の底部14aの高さが内側凹部15の底部15aの高さよりも低いので室内にまで雨水が廻り込むことはない。
また、室外サッシ31及び室内サッシ32に設けた垂下片31b、32bと、昇降パネルに設けた内外凹部15,14とが引っ掛け構造になっているので耐風圧性も向上する。
【0013】
図2に図1のA−A線断面図を示すように、外側凹部14は排水のための切欠き溝や孔のような排水部14bを有し、その下に収納部Sの垂直方向に沿った外側パネルの補強サッシ16に雨水誘導リブ16aを設けると雨水の排水がスムーズになる。
【符号の説明】
【0014】
10 昇降窓
11 外側パネル
12 内側パネル
13 昇降パネル
13a 上枠
13b 下枠
14 外側凹部
14b 排水部
15 内側凹部
20 昇降レール
21 昇降装置
30 開口部
31 室外サッシ
31b 外側垂下片
32 室内サッシ
32b 内側垂下片
S 収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体の窓開口部に対して昇降パネルが上昇すると当該窓開口部を閉じ、昇降パネルが下降すると当該窓開口部を開く窓構造であって、
当該窓開口部の下側に外側パネルと内側パネルとにて、その間に昇降パネルの収納部を形成し、昇降パネルの下枠は水平方向に延在した外側凹部と内側凹部を有し、外側パネルは開口上端部付近に、前記外側凹部に入り込む外側垂下片を有し、内側パネルは開口上端部付近に前記内側凹部に入り込む内側垂下片を有し、前記外側凹部の底部高さが前記内側凹部の底部高さよりも低いことを特徴とする昇降窓構造。
【請求項2】
前記外側凹部は、浸入した雨水の排水部を有し、当該排水部の下方に、昇降パネル収納部の垂直方向に沿った雨水誘導リブを有することを特徴とする請求項1記載の昇降窓構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−180627(P2010−180627A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25446(P2009−25446)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)
【Fターム(参考)】