説明

有機化合物吸着除去剤

【課題】アルデヒド類、カルボン酸類、アミン類から選ばれる少なくとも一種以上のガス状有機化合物を含むガスの、一般生活における温湿度領域で長期にわたって満足すべき除去性能を発現することができ、かつ、環境汚染への影響が低い有機化合物吸着除去剤を提供すること。
【解決手段】有機化合物吸着分解剤が、少なくとも銀化合物を担持した鉄化合物粒子を含有し、前記銀化合物の担持量が銀化合物と鉄化合物粒子の合計量に対して0.1〜50重量%であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒド類、カルボン酸類、アミン類の吸着性能に優れた有機化合物吸着除去剤に関し、更に詳しくは、常温で長期にわたって吸着性能を維持できる有機化合物吸着除去剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の室内や自動車の車内等におけるタバコ臭の除去を主目的として、空気清浄機や脱臭剤が広く用いられている。これらは、タバコ臭の主成分であるアセトアルデヒド、あるいは、シックハウスの原因物質であるホルムアルデヒド等の吸着除去等を目的とするものであり、多くの吸着剤の検討がなされている。その中でも、活性炭は各種有機物質を吸着する材料として古くから知られているが、低分子で高極性の有機物(例えば、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド等)は十分吸着することができず、上述の用途に用いる場合は、活性炭にアミン類やアスコルビン酸等を担持させて吸着能を高めたものが用いられている。
【0003】
このように、アミン類を担持させたものとしては、例えば、アニリンを用いたものや(例えば特許文献1参照)、エタノール系アミン等を用いたものが開示されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭56−53744号公報
【特許文献2】特開昭60−202735号公報
【0004】
しかしながら、アミン類を担持させる技術は、担持アミン類の状態は不安定であることから、熱的および経時的な化学変化による失活が起こりやすく、長期にわたって満足すべき除去性能を発現することが困難であるという問題がある。また、アスコルビン酸においても、吸湿すると空気中で容易に酸化分解され、失活してしまい性能劣化が起こるという問題がある。
【0005】
一方、アルデヒド類ガスを除去する方法として、酸化鉄等の金属酸化物を用いる方法が近年注目を集めている。前記金属酸化物として、例えば、酸化鉄、銀を担持したアルミナがある(例えば非特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、かかる酸化鉄、もしくは 銀担持アルミナは、十分な除去活性を得るためには、高温条件が必要であり、一般生活における温湿度領域では、除去活性が低く、十分な除去性能が得られないという問題がある。
【非特許文献1】Applied Catalysis B: Environmental, Vol.8, pp.405-415(1996)
【0007】
また、銀酸化物粒子とマンガン酸化物粒子からなるマンガン酸化物含有物、および、酸化鉄によるホルムアルデヒドの分解除去が開示されている(例えば特許文献3参照)。しかしながら、かかるマンガン酸化物含有物は、PRTR第一種指定化学物質であるマンガン酸化物が含有されており、環境汚染の懸念があるという問題がある。また、開示されている酸化鉄(Fe2O3)のみでは、一般生活における温湿度領域では活性が低く、十分な除去性能を得られないという問題がある。
【特許文献3】特開2000−79157号公報
【0008】
また、吸着性多孔質担体に銀及び/又は銀化合物を担持して成ることを特徴とする悪臭物質除去用触媒が開示されている(例えば特許文献4参照)。しかしながら、かかる悪臭物質除去用触媒における、銀及び/又は銀化合物の担持体としては、ゼオライト、アルミナ等の吸着性多孔質体であり、担持体としての鉄酸化物に関する言及は一切なされておらず、また、担持体がゼオライト、アルミナでは一般生活における温湿度領域における活性が低く、十分な除去性能を得られないという問題がある。
【特許文献4】特開平7−155611号公報
【0009】
上述のとおり、一般生活における温湿度領域で、長期にわたってアルデヒド類、カルボン酸類、アミン類から選ばれる少なくとも一種以上のガス状有機化合物を含むガスを除去する有機化合物吸着除去剤において、環境汚染への影響が低く、かつ、その除去性能を維持できる有機化合物吸着除去剤は見当たらないのが現状である。ここで言う、一般生活における温湿度領域とは、温度範囲でおおよそ−30〜50℃、湿度範囲でおおよそ20〜95RH%のことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来技術の課題を背景になされたものであり、アルデヒド類、カルボン酸類、アミン類から選ばれる少なくとも一種以上のガス状有機化合物を含むガスの、一般生活における温湿度領域で長期にわたって満足すべき除去性能を発現することができ、かつ、環境汚染への影響が低い有機化合物吸着除去剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、(1)アルデヒド類、カルボン酸類、アミン類から選ばれる少なくとも一種以上のガス状有機化合物を含むガスを除去する有機化合物吸着除去剤において、前記有機化合物吸着除去剤が少なくとも銀化合物を担持した鉄化合物粒子を含有し、前記銀化合物の担持量が銀化合物と鉄化合物粒子の合計量に対して0.1〜50重量%であり、(2)前記鉄化合物粒子がBET比表面積50m2/g以上の鉄酸化物であることを特徴とする(1)に記載の有機化合物吸着除去剤であり、(3)前記銀化合物粒子が銀酸化物であることを特徴とする(1)(2)のいずれかに記載の有機化合物吸着除去剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるアルデヒド類、カルボン酸類、アミン類から選ばれる少なくとも一種以上のガス状有機化合物を含むガスを除去する有機化合物吸着除去剤は、少なくとも銀化合物を担持した鉄化合物粒子を含有し、前記銀化合物の担持量が銀化合物と鉄化合物粒子の合計量に対して0.1〜50重量%であるため、一般生活における温湿度領域での高い除去性能、かつ、長期にわたって満足すべき除去性能を発現することが可能であり、また、環境汚染への影響が少ないという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、アルデヒド類、カルボン酸類、アミン類から選ばれる少なくとも一種以上のガス状有機化合物を含むガスを除去する有機化合物吸着除去剤において、前記有機化合物吸着除去剤が少なくとも銀化合物を担持した鉄化合物粒子を含有することが好ましい。銀化合物を担持していない鉄化合物粒子では一般生活における温湿度領域において十分な除去性能は実現できない。しかしながら、鉄化合物粒子に銀化合物を担持させると、その相乗効果により非常に高い除去性能を実現することができることを本発明者は見出した。相乗効果のメカニズムは明確ではないが、次の(1)〜(4)のように推測される。つまり、最初に、(1)ガス状有機化合物が鉄化合物粒子上に捕捉される、さらに、(2)鉄化合物粒子上に捕捉されたガス状有機化合物が鉄の電子授受作用により活性化され分解されやすい状態になる、最後に、(3)そのごく近傍に位置する銀化合物により、鉄化合物粒子上で活性化されたガス状有機化合物が分解される、その際、(4)銀化合物においても、担持体である鉄化合物粒子からの電子授受作用を受け、その分解力が向上していると考えられる。
【0014】
銀化合物の担持量については、銀化合物と鉄化合物粒子の合計量に対して0.1〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜30重量%である。銀化合物の担持量が50重量%より大きいと、鉄化合物粒子が銀化合物により被覆され、前記相乗効果のメカニズムおける(1)、および、(2)が阻害されてしまい、相乗効果が小さくなり、その結果、十分な除去性能が実現できなくなる。一方で、銀化合物の担持量が0.1重量%より小さいと、銀化合物が少な過ぎるため、前記相乗効果のメカニズムにおける(3)の影響が小さくなり、結果として、十分な除去性能が実現できなくなる。
【0015】
本発明における鉄化合物粒子は鉄酸化物であることが好ましい。鉄酸化物であれば、低温での高い除去性能を実現することができることを本発明者は見出したからである。鉄酸化物の種類については、特に定めないが、FeO、Fe34、Fe23等の酸化鉄、α−FeOOH、β−FeOOH、γ−FeOOH等のオキシ水酸化鉄、Fe(OH)3等の水酸化鉄、K2FeO4等の鉄酸塩化合物等、もしくは、それらの複合体、および、異種金属と鉄との複合酸化物等が挙げられる。
【0016】
前記鉄化合物粒子のBET比表面積は、50m2/g以上であることが好ましい。BET比表面積が50m2/g以上であれば、低温での高い除去性能を実現することができることを本発明者は見出したからである。より好ましくは100m2/g以上である。最も好ましくは150m2/g以上である。BET比表面積の上限は特に限定するものではないが、1000m2/g以下であることが好ましい。この範囲を超えると、除去性能はほとんど変化しない一方で、製造が非常に困難になるという不都合が生じるからである。
【0017】
本発明における鉄化合物粒子の製造方法は特に定めず、一般的な製造方法が適用できるが、好ましくは、二価、もしくは、三価の鉄塩水溶液に酸化剤を添加した後、アルカリ化合物を用いて沈殿物を生成し、これを溶液と分離した後、乾燥させる方法である。高温での焼成処理が必要でないため、比較的簡便に製造できるという利点を有するからである。
【0018】
本発明における銀化合物は銀酸化物であることが好ましい。銀化合物が金属銀、硫化銀、塩化銀等の酸化物でない場合は、低温での高い除去性能を実現することができないが、銀化合物が銀酸化物であれば、低温での高い除去性能を実現することができることを本発明者は見出したからである。銀酸化物の種類については、特に定めないが、Ag2O、AgO等の酸化物、もしくは、それらの複合体が挙げられる。
【0019】
本発明における銀化合物を担持した鉄化合物粒子の製造方法は特に限定されず、一般的な製造方法が適用できる。好ましくは、鉄酸化物粒子を銀塩水溶液中に懸濁させながら、塩基性水溶液を添加して製造する方法である。高温での焼成処理が必要でないため生成した銀酸化物が金属銀に還元され失活することがないうえに、簡便に製造できるという利点を有するからである。また、塩基性水溶液を添加する前に銀塩水溶液中に界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤を添加すれば、生成する酸化銀の粒径が小さくなり、結果として、均一に、かつ、高分散した状態で酸化銀を鉄酸化物粒子上に担持することができることを本発明者は見出したからである。添加する界面活性剤としては、特に定めないが、シクロデキストリン、ポリビニルアルコール等のヒドロキシル基を多く含有するものが好ましい。ヒドロキシル基の水素原子と銀酸化物の酸素原子との水素結合作用が、銀酸化物同士の凝集を防ぐことを本発明者は見出したからである。
【実施例】
【0020】
以下、実施例によって本発明の作用効果をより具体的に示す。下記実施例は本発明方法を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0021】
(BET比表面積の測定方法)
有機化合物吸着除去剤を約100mg採取し、120℃で12時間真空乾燥の後、秤量した。自動比表面積装置ジェミニ2375(マイクロメリティックス社製)を使用し、液体窒素の沸点(−195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02〜0.95の範囲で徐々に高めながら40点測定し、上記サンプルの吸着等温線を作製した。相対圧0.02〜0.15での結果をBETプロットし、重量当りのBET比表面積[m2/g]を求めた。
【0022】
(ホルムアルデヒド除去性能の測定方法)
有機化合物吸着除去剤100mgを、両側をグラスフィルターで挟んで内径15mmφのガラスカラムに充填した。これにホルムアルデヒド2ppmを含む25℃、50RH%の空気を1L/分で連続的に流通させた。試料の雰囲気温度は25℃とした。試料の入口・出口側のガスを一定時間毎にサンプリングし、ガスクロマトグラフにてホルムアルデヒド濃度を測定し、その比から除去率を算出した。この除去率が20%以下になるまで流通、濃度測定を続けた。ホルムアルデヒド供給量(濃度、流量、温度から計算)に対する除去率の曲線を積分することによりホルムアルデヒド吸着量[mg]を求め、これを試料の重量で割ることにより、吸着容量[mg/g]を算出した。
【0023】
(酢酸除去性能の測定方法)
5Lのテドラーバッグ中に酢酸ガス100ppmを含む25℃、50RH%の空気、有機化合物吸着除去剤30mgを封入した。中に入っている有機化合物吸着除去剤と酢酸を含む空気が十分に接触、反応するように、テドラーバッグを適宜振った。なお、テドラーバッグ周囲の雰囲気温度は25℃とした。3時間後のテドラーバッグ内の酢酸ガス濃度をFID付きガスクロマトグラフにて測定し、反応前後の酢酸の濃度変化から酢酸除去量[mg]を求め、これを試料の重量で割ることにより、除去容量[mg/g]を算出した。
【0024】
(トリメチルアミン除去性能の測定方法)
5Lのテドラーバッグ中にトリメチルアミンガス100ppmを含む25℃、50RH%の空気、有機化合物吸着除去剤30mgを封入した。中に入っている有機化合物吸着除去剤とトリメチルアミンを含む空気が十分に接触、反応するように、テドラーバッグを適宜振った。なお、テドラーバッグ周囲の雰囲気温度は25℃とした。3時間後のテドラーバッグ内のトリメチルアミンガス濃度をFID付きガスクロマトグラフにて測定し、反応前後のトリメチルアミンガスの濃度変化からトリメチルアミン除去量[mg]を求め、これを試料の重量で割ることにより、除去容量[mg/g]を算出した。
【0025】
(実施例1)
塩化第2鉄六水和物(ナカライテスク社製)13.5gを60mlのイオン交換水に溶解させ、30%過酸化水素水(ナカライテスク社製)5.0g添加した後、15分間撹拌した。その後、炭酸アンモニウム(ナカライテスク社製)12.0gを含有する水溶液100mlをゆっくりと添加した。添加後、1時間撹拌した。得られた溶液を濾別し、イオン交換水で濾液が中性になるまで水洗した後、120℃、窒素気流下で一昼夜乾燥したところ、赤褐色の鉄化合物粒子Aが得られた。得られた鉄化合物粒子AのBET比表面積は212m2/gであった。
硝酸銀(ナカライテスク社製)23.0mgを60mlのイオン交換水に溶解させ、上記で得られた鉄化合物粒子A3.0gを添加し、よく撹拌した。さらに、2%水酸化ナトリウム水溶液542mgをゆっくりと添加し、終夜撹拌した。得られた溶液を濾別し、イオン交換水で濾液が中性になるまで水洗した後、60℃、窒素気流下で一昼夜乾燥したところ、0.5重量%銀化合物を担持した鉄化合物粒子を含有する有機化合物除去剤が得られた。得られた有機化合物除去剤について、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した。
【0026】
(実施例2)
硝酸銀(ナカライテスク社製)231mgを120mlのイオン交換水に溶解させ、実施例1で得られた鉄化合物粒子A3.0gを添加し、よく撹拌した。さらに、2%水酸化ナトリウム水溶液5.0gをゆっくりと添加し、終夜撹拌した。得られた溶液を濾別し、イオン交換水で濾液が中性になるまで水洗した後、60℃、窒素気流下で一昼夜乾燥したところ、5重量%銀化合物を担持した鉄化合物粒子を含有する有機化合物除去剤が得られた。得られた有機化合物除去剤について、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した。
【0027】
(実施例3)
硝酸銀(ナカライテスク社製)1.88gを300mlのイオン交換水に溶解させ、実施例1で得られた鉄化合物粒子A3.0gを添加し、よく撹拌した。さらに、2%水酸化ナトリウム水溶液30gをゆっくりと添加し、終夜撹拌した。得られた溶液を濾別し、イオン交換水で濾液が中性になるまで水洗した後、60℃、窒素気流下で一昼夜乾燥したところ、30重量%銀化合物を担持した鉄化合物粒子を含有する有機化合物除去剤が得られた。得られた有機化合物除去剤について、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した。
【0028】
(実施例4)
硫酸第2鉄n水和物(ナカライテスク社製)14.3gを100mlの水に溶解させ、炭酸水素ナトリウム(ナカライテスク社製)6.4gを含有する水溶液100mlをゆっくりと添加した。添加後、1時間撹拌した。得られた溶液を濾別し、イオン交換水で濾液が中性になるまで水洗した後、120℃、窒素気流下で一昼夜乾燥した後、空気下300℃条件で3時間焼成処理を施した。黒褐色の鉄化合物粒子Bが得られた。得られた鉄化合物粒子BのBET比表面積は72m2/gであった。
硝酸銀(ナカライテスク社製)231mgを120mlのイオン交換水に溶解させ、上記で得られた鉄化合物粒子B3.0gを添加し、よく撹拌した。さらに、2%水酸化ナトリウム水溶液5.0gをゆっくりと添加し、終夜撹拌した。得られた溶液を濾別し、イオン交換水で濾液が中性になるまで水洗した後、60℃、窒素気流下で一昼夜乾燥したところ、5重量%銀化合物を担持した鉄化合物粒子を含有する有機化合物除去剤が得られた。得られた有機化合物除去剤について、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した。
【0029】
(比較例1)
硝酸銀(ナカライテスク社製)2.3mgを120mlのイオン交換水に溶解させ、実施例1で得られた鉄化合物粒子A3.0gを添加し、よく撹拌した。さらに、2%水酸化ナトリウム水溶液54.2mgをゆっくりと添加し、終夜撹拌した。得られた溶液を濾別し、イオン交換水で濾液が中性になるまで水洗した後、60℃、窒素気流下で一昼夜乾燥したところ、0.05重量%銀化合物を担持した鉄化合物粒子を含有する有機化合物除去剤が得られた。得られた有機化合物除去剤について、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した。
【0030】
(比較例2)
硝酸銀(ナカライテスク社製)6.60gを500mlのイオン交換水に溶解させ、実施例1で得られた鉄化合物粒子A3.0gを添加し、よく撹拌した。さらに、2%水酸化ナトリウム水溶液100gをゆっくりと添加し、終夜撹拌した。得られた溶液を濾別し、イオン交換水で濾液が中性になるまで水洗した後、60℃、窒素気流下で一昼夜乾燥したところ、60重量%銀化合物を担持した鉄化合物粒子を含有する有機化合物除去剤が得られた。得られた有機化合物除去剤について、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した。
【0031】
(比較例3)
硝酸銀(ナカライテスク社製)231mgを120mlのイオン交換水に溶解させ、α−FeOOH(戸田工業製ゲータイト、BET比表面積19m2/g)3.0gを添加し、よく撹拌した。さらに、2%水酸化ナトリウム水溶液5.0gをゆっくりと添加し、終夜撹拌した。得られた溶液を濾別し、イオン交換水で濾液が中性になるまで水洗した後、60℃、窒素気流下で一昼夜乾燥したところ、5重量%銀化合物を担持した鉄化合物粒子を含有する有機化合物除去剤が得られた。得られた有機化合物除去剤について、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した。
【0032】
実施例1〜4、比較例1〜3の有機化合物吸着除去剤に関して、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した結果を表1に示す。表1より明らかなように、本発明である実施例1〜3は、銀化合物の担持量が少ない場合(比較例1)、および、銀化合物の担持量が多い場合(比較例2)と比較して高除去性能であることが分かる。また、鉄化合物のBET比表面積が小さい場合(比較例3)も本発明である実施例2、および、4と比較して性能が低いことが分かる。
【0033】
【表1】

【0034】
(比較例4)
硝酸銀(ナカライテスク社製)231mgを120mlのイオン交換水に溶解させ、NaYゼオライト(Naイオンを対イオンとするY型ゼオライト、BET比表面積825m2/g)3.0gを添加し、よく撹拌した。さらに、2%水酸化ナトリウム水溶液5.0gをゆっくりと添加し、終夜撹拌した。得られた溶液を濾別し、イオン交換水で濾液が中性になるまで水洗した後、60℃、窒素気流下で一昼夜乾燥したところ、5重量%銀化合物を担持したNaYゼオライトを含有する有機化合物除去剤が得られた。得られた有機化合物除去剤について、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した。
【0035】
(比較例5)
硝酸銀(ナカライテスク社製)231mgを120mlのイオン交換水に溶解させ、13Xゼオライト(BET比表面積687m2/g)3.0gを添加し、よく撹拌した。さらに、2%水酸化ナトリウム水溶液5.0gをゆっくりと添加し、終夜撹拌した。得られた溶液を濾別し、イオン交換水で濾液が中性になるまで水洗した後、60℃、窒素気流下で一昼夜乾燥したところ、5重量%銀化合物を担持した13Xゼオライトを含有する有機化合物除去剤が得られた。得られた有機化合物除去剤について、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した。
【0036】
(比較例6)
硝酸銀(ナカライテスク社製)231mgを120mlのイオン交換水に溶解させ、粉末状活性炭(木質系、BET比表面積1110m2/g)3.0gを添加し、よく撹拌した。さらに、2%水酸化ナトリウム水溶液5.0gをゆっくりと添加し、終夜撹拌した。得られた溶液を濾別し、イオン交換水で濾液が中性になるまで水洗した後、60℃、窒素気流下で一昼夜乾燥したところ、5重量%銀化合物を担持した活性炭を含有する有機化合物除去剤が得られた。得られた有機化合物除去剤について、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した。
【0037】
実施例2、比較例4〜6の有機化合物吸着除去剤に関して、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した結果を表2に示す。表2より明らかなように、本発明である実施例2は、担持体がNaYゼオライトである場合(比較例4)、担持体が13Xゼオライトである場合(比較例5)、および、担持体が活性炭である場合(比較例6)と比較して高除去性能であることが分かる。
【0038】
【表2】

【0039】
(比較例7)
硝酸銀(ナカライテスク社製)231mgを120mlのイオン交換水に溶解させ、実施例1で得られた鉄化合物粒子A3.0gを添加し、よく撹拌した。さらに、水素化ホウ素ナトリウム300mgをゆっくりと添加し、終夜撹拌した。得られた溶液を濾別し、イオン交換水で濾液が中性になるまで水洗した後、60℃、窒素気流下で一昼夜乾燥したところ、5重量%の金属銀を担持した鉄化合物粒子を含有する有機化合物除去剤が得られた。得られた有機化合物除去剤について、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した。
【0040】
(比較例8)
硝酸銀(ナカライテスク社製)231mgを120mlのイオン交換水に溶解させ、実施例1で得られた鉄化合物粒子A3.0gを添加し、よく撹拌した。さらに、2%塩化ナトリウム水溶液5.0gをゆっくりと添加し、終夜撹拌した。得られた溶液を濾別し、イオン交換水で濾液が中性になるまで水洗した後、60℃、窒素気流下で一昼夜乾燥したところ、5重量%の塩化銀を担持した鉄化合物粒子を含有する有機化合物除去剤が得られた。得られた有機化合物除去剤について、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した。
【0041】
実施例2、比較例7、8の有機化合物吸着除去剤に関して、ホルムアルデヒド除去性能、酢酸除去性能、トリメチルアミン除去性能を測定した結果を表3に示す。表3より明らかなように、本発明である実施例2は、銀化合物が金属銀である場合(比較例7)、および、銀化合物が塩化銀である場合(比較例8)と比較して高除去性能であることが分かる。
【0042】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の有機化合物吸着除去剤によれば、アルデヒド類、カルボン酸類、アミン類の吸着性能を長期間、常温で維持することができ、一般家庭用品等幅広い用途分野に利用することができ、産業界に寄与すること大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒド類、カルボン酸類、アミン類から選ばれる少なくとも一種以上のガス状有機化合物を含むガスを除去する有機化合物吸着除去剤において、前記有機化合物吸着除去剤が少なくとも銀化合物を担持した鉄化合物粒子を含有し、前記銀化合物の担持量が銀化合物と鉄化合物粒子の合計量に対して0.1〜50重量%であることを特徴とする有機化合物吸着除去剤。
【請求項2】
前記鉄化合物粒子がBET比表面積50m2/g以上の鉄酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物吸着除去剤。
【請求項3】
前記銀化合物が銀酸化物であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の有機化合物吸着除去剤。

【公開番号】特開2007−21412(P2007−21412A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208905(P2005−208905)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】