説明

木質複合材の製造方法、及び木質複合材

【課題】樹脂と複合化していながら良好な木質感が維持され且つ高い耐久性を有する木質複合材が得られる木質複合材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明方法は、含水率が10質量%以下である第一の木質基材を用意する工程、前記第一の木質基材に、重量平均分子量1000以下の熱硬化性樹脂を含有し、且つ粘度が200mPa・s以下、固形分率が70質量%以上である第一液を含浸させる工程、前記第一の木質基材に、前記熱硬化性樹脂の硬化剤を含有する第二液を含浸させる工程、及び前記第一液及び第二液が含浸している前記第一の木質基材を加熱・加圧する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質複合材の製造方法、及びこの方法で製造される木質複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
木材の物理的特性を改善するための手法として、従来、木材を化学修飾する手法、木材成分を変性させる手法、木材の細胞壁に樹脂を含浸させる手法などが検討されてきた。これらの中でも、特に木材の細胞壁に樹脂を含浸させる手法は含浸型WPC化処理とよばれている。含浸型WPC化処理は木材の硬度や寸法安定性を向上させることで木材の耐久性を向上させるために有効であり、一部実用化もされている。
【0003】
含浸型WPC化処理では、木材の細胞壁中及び細胞壁内孔に樹脂が注入され、この樹脂が硬化することで木材と樹脂が複合化する。この含浸型WPC化処理では、木材中の道管や細胞壁内孔などの空隙が樹脂で充填され、更に細胞壁中にも樹脂がある程度含浸するため、木材の耐久性が向上する。含浸型WPC化処理は、木材への樹脂の含浸の仕方によって、次の二種類の手法に分類される。第一の手法では、ビニル系モノマーや不飽和ポリエステル、アクリル系オリゴマーなどが細胞壁中及び細胞壁内孔に含浸し、放射線照射や触媒加熱などの処理によって重合反応が生じる。第二の手法では、メラミン系、フェノール系等の樹脂が主に細胞壁中に含浸してから、熱により硬化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平07−121521号公報
【特許文献2】特公平06−081684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の含浸型WPC化処理における第一の手法では、木材に存在する道管や細胞壁内孔などの空隙が樹脂で充填され、更に細胞壁中にも樹脂がある程度含浸するため、木材の耐久性が大きく向上し得る。しかし、道管中が樹脂で充填されるため、処理後の木材には木質感が少なくなり、外観が樹脂に近くなってしまうといった問題があった。
【0006】
従来の含浸型WPC化処理における第二の手法では、樹脂が主に細胞壁中に含浸するため、木材が本来有する外観があまり損なわれない。しかし、樹脂が細胞壁中に含浸するためには樹脂の粘度が低くなければならないため、溶媒によって希釈された固形分率の低い樹脂が木材に含浸することになる。このため、木材の樹脂含浸率を充分に高くすることが難しくなり、木材には充分な耐久性が付与されにくかった。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、樹脂と複合化していながら良好な木質感が維持され且つ高い耐久性を有する木質複合材が得られる木質複合材の製造方法、及び木質複合材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る木質複合材の製造方法は、熱硬化性樹脂の硬化物と複合化している第一の木質基材を備える木質複合材を製造する方法であって、含水率が10質量%以下である第一の木質基材を用意する工程、前記第一の木質基材に、重量平均分子量1000以下の熱硬化性樹脂を含有し、且つ粘度が200mPa・s以下、固形分率が70質量%以上である第一液を含浸させる工程、前記第一の木質基材に、前記熱硬化性樹脂の硬化剤を含有する第二液を含浸させる工程、及び前記第一液及び第二液が含浸している前記第一の木質基材を加熱・加圧する工程を含む。
【0009】
本発明においては、前記木質複合材が第二の木質基材を備えると共に前記第一の木質基材が前記第二の木質基材に接合しており、前記第一の木質基材が接合される前の前記第二の木質基材の密度が0.7g/cm以上であり、前記第二の木質基材に前記第一の木質基材を接合してから、前記第一の木質基材に前記第一液及び第二液を含浸させ、これに続いて前記第一の木質基材を加熱・加圧してもよい。
【0010】
本発明においては、前記第一の木質基材に前記第一液及び前記第二液を含浸させた後に前記第一の木質基材を加熱・加圧してから、前記第一の木質基材に研磨処理又はブラッシング処理を施してもよい。
【0011】
本発明に係る木質複合材は、前記方法で製造され、且つ前記第一の木質基材の密度が0.8g/cm以上である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、樹脂と複合化していながら良好な木質感が維持され且つ高い耐久性を有する木質複合材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態で製造される木質複合材は、第一の木質基材と、第二の木質基材とを備える。第一の木質基材は熱硬化性樹脂の硬化物と複合化しており、更に第一の木質基材は第二の木質基材に接合している。この木質複合材の製造にあたっては、第一の木質基材、第二の木質基材、第一液、及び第二液が使用される。尚、木質複合材は第二の木質基材を備えなくてもよい。例えば木質複合材は、熱硬化性樹脂の硬化物と複合化している第一の木質基材のみで構成されてもよい。
【0014】
第一の木質基材の材質は木質材であれば特に制限されないが、樹脂が含浸しやすく、樹脂の硬化阻害を引き起こすような成分の含有量が少なく、更に含浸している樹脂の硬化中に割れなどの欠点が生じにくいような材質であることが好ましい。第一の木質基材の材質の好ましい具体例としては、床材の表面材に広く用いられている広葉樹であるブナ、ナラ、カバ、ウォールナット、針葉樹であるスギ、ヒノキ、マツなどが挙げられる。第一の木質基材は例えばこれらの木質材から形成される単板(木質単板)であってよい。
【0015】
第一の木質基材の厚みは、特に制限されないが、0.2〜4.0mmの範囲であることが好ましい。第一の木質基材の密度は0.2〜0.7g/cmであることが好ましい。
【0016】
第二の木質基材の材質も木質材であれば特に制限されないが、密度の高い材質であることが好ましく、特に第二の木質基材の密度が0.7g/cm以上であることが好ましい。第二の木質基材の密度が第一の木質基材よりも高いと、第二の木質基材に起因して木質複合材の硬度が低下することが抑制される。第二の木質基材の密度上限は特に制限されないが、一般的には1.4g/cm程度が好ましい。
【0017】
このような密度が0.7g/cm以上の第二の木質基材の具体例としては、ユーカリ、ラミン、メランチ、チーク、マカンバ、クルイン、アカガシなどの密度が高い材料から形成された合板や、高密度のパーティクルボード、MDF、ハードボードなどが例示される。
【0018】
第二の木質基材の厚みは特に制限されないが、第一の基材厚みに応じて、例えば9〜12mmの間で適宜設定される。第一の木質基材と第二の木質基材とを合計した厚みは、例えば木質複合材が一般的な木質材床材として使用される場合には10〜15mmの範囲であることが好ましく、12mm程度がより好ましい。
【0019】
第一液は、重量平均分子量1000以下の熱硬化性樹脂を含有し、且つこの第一液の粘度が200mPa・s以下、固形分率が70質量%以上である。
【0020】
この熱硬化性樹脂の重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフ(GPC)分析(カラム:TSKgelSuper HM-H,溶離液:クロロホルム)により測定される。この重量平均分子量1000以下の熱硬化性樹脂は、木材中の水酸基との間で化学結合を生じる樹脂であることが好ましい。このような熱硬化性樹脂としては、特に限定はされないが、重合度が低く、湿気硬化型であるイソシアネート系やエポキシ系の樹脂などが好ましい。イソシアネート系樹脂としては、MDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系ポリイソシアネート等が挙げられる。熱硬化性樹脂の重量平均分子量の下限は特に制限されず、低いほど好ましいが、実際上の下限は50である。
【0021】
第一液は、粘度調整などのために、熱硬化性樹脂以外の成分を含有してもよい。例えば第一液は、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラエトキシシラン等のシラノール類、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジメチルスルホキシドなどを含有してもよい。
【0022】
第一液の粘度は、この第一液が第一の木質基材に含浸する時点において200mPa・s以下であればよい。例えば第一液が第一の木質基材に含浸する際に、第一液が加温されることによってその粘度が200mPa・s以下となっていてもよい。第一液の粘度の下限は特に制限されず、低いほど好ましいが、通常20mPa・s程度である。
【0023】
第一液の固形分率の上限は特に制限されず、固形分率が100質量%、すなわち第一液が熱硬化性樹脂のみで構成されていてもよい。
【0024】
第二液は、第一液中の熱硬化性樹脂と熱硬化反応を生じる硬化剤を含有する。硬化剤は、熱硬化性樹脂との組み合わせによって適宜選択されるが、例えば水酸基を2つ以上有する化合物が挙げられる。水酸基を2つ以上有する化合物としては、例えばポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル系ポリオール;ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール等のポリエステル系ポリオール;エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、グリセリンなどのポリオール;セラック、タンニンなどの天然樹脂塗料などが挙げられる。
【0025】
この第二液の粘度も200mPa・s以下が好ましいが、この範囲に限定されない。第二液の粘度の下限値も限定されないが通常20mPa・s程度である。また,第二液の固形分率(硬化剤の濃度)も特に制限されない。第二液の固形分率が100質量%、すなわち第二液が硬化剤のみで構成されていてもよいし、20〜80質量%の範囲でもよい。
【0026】
第二液は、粘度調整などのために、硬化剤以外の成分を含有してもよい。例えば第二液は、水;メタノール、エタノール、アセトン、イソプロパノール、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンなどの種々の有機溶剤などを含有してもよい。また第二液は、ビスフェノール型、グリシジルエーテル型などの反応性希釈剤を含有してもよい。
【0027】
本実施形態では、木質複合材を製造するにあたり、第一の木質基材に第一液と第二液とを、この順番に含浸させる。第一の木質基材に第一液と第二液を含浸させるための手法としては、第一の木質基材に第一液と第二液を塗布する方法が挙げられる。第一液と第二液の塗布方法としては、エアスプレー、ロールコート、カーテンフローコートなどが例示される。
【0028】
第一液が第一の木質基材に塗布される場合、第一の木質基材への第一液の塗布量は、固形分量で100〜200g/mの範囲となることが好ましい。すなわち、第一の木質基材に第二液が含浸することで、第一の木質基材と第二の木質基材との積層方向への投影面積に対する、第一の木質基材中の熱硬化性樹脂の量が、100〜200g/mの範囲となることが好ましい。
【0029】
第二液が第一の木質基材に塗布される場合、第一の木質基材への第二液の塗布量は、固形分で5〜100g/mの範囲となることが好ましい。すなわち、第一の木質基材に第二液が含浸することで、第一の木質基材と第二の木質基材との積層方向への投影面積に対する、第一の木質基材中の硬化剤の量が、5〜100g/mの範囲となることが好ましい。
【0030】
第一の木質基材に第一液が含浸する際、第一の木質基材の含水率は10質量%以下に調整される。第一の木質基材の含水率は、例えば第一の木質基材に予め加熱処理が施されることで調整される。
【0031】
大気中における木材の含水率は、気候条件にもよるが、通常は15質量%前後である。それに対し、第一の木質基材の含水率が10質量%以下であると、第一液が第一の木質基材に非常に含浸しやすくなり、このため第一の木質基材の樹脂含有量が向上する。また、第一の木質基材に含浸した熱硬化性樹脂が第一の木質基材中の水分と反応することが抑制され、更に木材中の水酸基への水分の吸着も抑制される。これにより、熱硬化性樹脂間の反応が促進されると共に、熱硬化性樹脂と第一の木質基材との反応も促進される。これらのことによって、木質複合材の硬度、耐水性、及び耐汚染性が向上し、これにより木質複合材の耐久性が大きく向上する。第一の木質基材の含水率は低いほど好ましく、特に5質量%以下であることが好ましい。可能であれば第一の木質基材の含水率は0質量%であってもよい。
【0032】
第一液及び第二液が第一の木質基材に更に含浸しやすくなるために、第一液及び第二液が第一の木質基材に含浸する前に第一の木質基材に適宜の前処理が施されてもよい。この前処理としては、例えば第一の木質基材にプレヒートを施すことで内部の空気を除去する処理、第一の木質基材の表面に機械加工を施すなどして通道性を向上する処理、第一の木質基材を加圧圧縮してから加圧力を解除して元の形状に回復させることでこの回復力を利用して樹脂の含浸性を向上する処理などが挙げられる。また第一液及び第二液にも、加熱による低粘度化などの処理が施されてもよい。
【0033】
第一液及び第二液は、第一の木質基材が第二の木質基材と接合されていない状態で第一の木質基材に含浸してもよく、第一の木質基材が第二の木質基材と接合してから第一の木質基材に含浸してもよい。
【0034】
第一の木質基材が第二の木質基材と接合してから第一液及び第二液が第一の木質基材に含浸する場合には、例えばまず第一の木質基材が第二の木質基材に接着剤などで接着されて接合する。接着剤としては、特に限定されないが、例えば酢酸ビニル樹脂エマルション接着剤、水性高分子・イソシアネート系接着剤など、一般的な突板複合材用途に用いられる接着剤が挙げられる。続いて、第一の木質基材の第二の木質基材側とは反対側の面上に第一液及び第二液が順次塗布されるなどして、第一の木質基材に第一液及び第二液が含浸する。続いて熱盤などにより、第一の木質基材が第二の木質基材と共に、第一の木質基材と第二の木質基材の積層方向に加圧されると共に加熱される。これにより木質複合材が得られる。この場合、第一の木質基材が加熱加圧される際にはこの第一の木質基材が熱により可塑化されているため、加圧には第一の木質基材が選択的に圧縮変形され、これにより木質複合材の表面硬度が大幅に向上し得る。
【0035】
第一の木質基材が第二の木質基材と接合されていない状態で第一液及び第二液が第一の木質基材に含浸する場合には、例えばまず第一の木質基材の、第二の木質基材と重なることになる面とは反対側の面上に第一液及び第二液が順次塗布されるなどして、第一の木質基材に第一液及び第二液が含浸する。一方、第二の木質基材の、第一の木質基材と重なることになる面上に、接着剤が塗布される、続いて、第二の木質基材と第一の木質基材とが重ねられ、この状態で、熱盤などにより、第一の木質基材が第二の木質基材と共に、第一の木質基材と第二の木質基材の積層方向に加圧されると共に加熱される。これにより木質複合材が得られる。この場合、一回の加熱加圧工程で、第一の木質基材と熱硬化性樹脂とが複合化すると同時に第一の木質基材と第二の木質基材とが接合される。
【0036】
尚、熱硬化性樹脂の硬化物と複合化された第一の木質基材のみで木質複合材が構成される場合には、例えば第一液及び第二液が第一の木質基材に含浸した後、第一の木質基材のみが加熱加圧されることで、木質複合材が得られる。
【0037】
上記のようにして木質複合材が製造されると、第一の木質基材に第一液が含浸する際、この第一液が含有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量が1000以下であり且つこの第一液の粘度が200mPa・s以下であることから、第一液が第一の木質基材に非常に含浸しやすくなる。更に第一液の固形分率が70質量%以上であれば、第一の木質基材がより多くの熱硬化性樹脂を含有し得るようになる。これにより、例えば0.55g/cmという一般的な木材と同程度の密度を有し、且つ厚みが0.5mm以上ある第一の木質基材に第一液が含浸することで、第一の木質基材の樹脂含有量が100g/m以上となることが可能となり、また重量割合でいえば第一の木質基材に熱硬化性樹脂を25質量%以上の割合で含有させることが可能となる。
【0038】
また、第一の木質基材に第一液が含浸すると、第一の木質基材の可塑性が高くなって圧縮されやすくなる。この第一の木質基材に更に第二液が含浸し、その後に第一の木質基材が加熱加圧されることで、第一の木質基材が加圧によって容易に圧縮されて緻密化する。更に第一の木質基材中の熱硬化性樹脂と硬化剤との反応が熱により急激に促進されて、第一の木質基材と熱硬化性樹脂の硬化物とが複合化する。このため、第一の木質基材は緻密化した状態で熱硬化性樹脂の硬化物と複合化し、これにより第一の木質基材の硬度や耐水性が高くなり、第一の木質基材の耐久性が高くなる。
【0039】
第一液及び第二液が含浸している第一の木質基材が加熱加圧される際の加熱加圧条件は、熱硬化性樹脂の種類や、第一の木質基材の材質、含水率、厚みなどに応じて適宜設定されるが、特に処理後の第一の木質基材の密度が0.8g/cm以上となるような条件であることが好ましい。このためには、第一の木質基材の加熱温度が90〜200℃の範囲、加圧力が1〜10MPaの範囲、加熱加圧時間が30〜300秒の範囲で調整されることが好ましい。第一の木質基材に第一液が含浸し、更に第二液が含浸すると、熱硬化性樹脂の硬化反応が促進されるため、第一の木質基材に第二液が含浸してから、できるだけ速やかに第一の木質基材が加熱・加圧されることが好ましい。この第一の木質基材の加熱加圧には、例えば平板プレスやロールプレスなどが用いられるが、特にこれらに制限されない。
【0040】
加熱加圧された後の第一の木質基材には、更に研磨処理とブラッシング処理のうち少なくとも一方が施されてもよい。この場合、第一の木質基材の表面上に付着している熱硬化性樹脂が除去され、第一の木質基材の木質感が更に向上する。
【0041】
研磨処理に用いられる装置としては、例えば研磨布紙やサンディングベルトなどを備える研磨機やブラスト処理装置などが挙げられる。研磨機における研磨布紙やサンディングベルトの番手は80〜240番手(#80〜#240)であることが好ましいが、これに限られず、樹脂の種類や第一の木質基材の材質などに応じて適宜設定される。
【0042】
研磨処理においてブラスト処理装置が用いられる場合、砥粒としてはけい砂、アルミナ、ガラスビーズ、スチールショット、スチールグリッドなど適宜の粒子が用いられる。砥粒の粒子径は0.1〜0.3mmの範囲であることが好ましい。砥粒の噴射圧力は例えば0.1〜0.8MPaの範囲で調整される。これらの砥粒の種類、粒子径、噴射圧力などの処理条件は、熱硬化性樹脂の種類、第一の木質基材の材質などに応じて適宜設定される。
【0043】
ブラッシング処理には、例えばブラシロールが使用される。ブラシロールとしては例えばワイヤーブラシやグリッドブラシが用いられる。ブラッシング処理の処理回数は1〜10回程度が好ましいが、熱硬化性樹脂の種類、第一の木質基材の材質などに応じて適宜設定される。
【0044】
このようにして得られる木質複合材には、表面保護等のために、必要に応じて塗装が施されてもよい。
【0045】
以上のようにして得られる木質複合材は種々の用途に適用可能であり、例えば床材や化粧材などの建築材などして利用可能である。
【実施例】
【0046】
[実施例1]
第一の木質基材として厚み0.62mmのブナスライス単板を用意した。このブナスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このブナスライス単板の含水率は4.8質量%であった。この含水率は、非破壊式高周波木材水分計HM8−WS1(菊川鉄工所製)により測定した。第二の木質基材としては厚み9.0mm、密度0.82g/cmのユーカリ合板を用意した。
【0047】
また、第一液として、重量平均分子量370のMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート)を含有する、粘度34mPa・s、固形分率95質量%,テトラエトキシシラン(TEOS)含有量5質量%の樹脂液を用意した。第二液としては、分子量62、粘度16mPa・sのエチレングリコールを用意した。
【0048】
第一の木質基材を第二の木質基材に合成ゴムラテックス接着剤(商品名インスターボンドLB370、住友林業クレスト株式会社製)で接合した。次に、第一の木質基材の第二の木質基材とは反対側の面上に第一液をロールコーターで102g/mの塗布量で塗布した。続いて、この第一の木質基材の第二の木質基材とは反対側の面上に第二液をロールコーターで27g/mの塗布量で塗布した。続いてこの第一の木質基材を第二の木質基材と共に加熱温度150℃、加圧力10MPaの条件で60秒加熱加圧した。続いて、この第一の木質基材の第二の木質基材とは反対側の面にブラシロールを用いてブラッシング処理を2回施すことで、第一の木質基材に付着した樹脂を除去した。続いて、第一の木質基材の第二の木質基材とは反対側の面上に、ロールコーターで紫外線硬化型ウレタンアクリレート塗装を施すことで厚み30μmの塗装膜を形成した。
【0049】
[実施例2]
第一の木質基材として厚み0.82mmのブナスライス単板を用意した。このブナスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このブナスライス単板の含水率は5.4質量%であった。
【0050】
また、第二液としては、分子量76、粘度48mPa・sのプロピレングリコールを用意した。
【0051】
第一の木質基材への第二液の塗布量は23g/mとした。
【0052】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0053】
[実施例3]
第一の木質基材として厚み0.82mmのブナスライス単板を用意した。このブナスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このブナスライス単板の含水率は3.4質量%であった。
【0054】
第二液として、硬化剤として分子量90の1,4−ブタンジオールを、溶媒として1−ブタノールをそれぞれ含み、硬化剤の割合が20質量%である、粘度32mPa・sの樹脂液を用意した。
【0055】
第一の木質基材への第一液の塗布量は153g/m、第二液の塗布量は51g/mとした。
【0056】
第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度150℃、加圧力3MPa、処理時間180秒とした。
【0057】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0058】
[実施例4]
第一の木質基材として厚み1.05mmのブナスライス単板を用意した。このブナスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このブナスライス単板の含水率は7.3質量%であった。
【0059】
第二液として、硬化剤として分子量92のグリセリンを、溶媒として蒸留水をそれぞれ含み、硬化剤の割合が50質量%である、粘度6mPa・sの樹脂液を用意した。
【0060】
第一の木質基材への第一液の塗布量は153g/m、第二液の塗布量は48g/mとした。
【0061】
第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度150℃、加圧力3MPa、処理時間180秒とした。
【0062】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0063】
[実施例5]
第一の木質基材として厚み0.62mmのナラスライス単板を用意した。このナラスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このナラスライス単板の含水率は6.2質量%であった。
【0064】
また、第一液として、重量平均分子量521のエポキシ樹脂を含有する、粘度180mPa・s、固形分率100質量%の樹脂液(コニシ株式会社製の商品名ユニエポ)を用意した。第二液としては、重量平均分子量134、粘度75mPa・sのジプロピレングリコールを用意した。
【0065】
第一の木質基材への第一液の塗布量は98g/m、第二液の塗布量は72g/mとした。
【0066】
第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度150℃、加圧力7MPa、処理時間60秒とした。
【0067】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0068】
[実施例6]
第一の木質基材として厚み0.62mmのナラスライス単板を用意した。このナラスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このナラスライス単板の含水率は4.8質量%であった。
【0069】
また、第一液として、重量平均分子量521のエポキシ樹脂を含有する、粘度180mPa・s、固形分率100質量%の樹脂液(コニシ株式会社製の商品名ユニエポ)を用意した。第二液としては、重量平均分子量192、粘度57mPa・sのトリプロピレングリコールを用意した。
【0070】
第一の木質基材への第一液の塗布量は98g/m、第二液の塗布量は78g/mとした。
【0071】
第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度150℃、加圧力7MPa、処理時間60秒とした。
【0072】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0073】
[実施例7]
第一の木質基材として厚み0.62mmのナラスライス単板を用意した。このナラスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このナラスライス単板の含水率は7.8質量%であった。
【0074】
また、第一液として、重量平均分子量521のエポキシ樹脂を含有する、粘度180mPa・s、固形分率100質量%の樹脂液(コニシ株式会社製の商品名ユニエポ)を用意した。
【0075】
第二液として、硬化剤として重量平均分子量850のポリカーボネートジオールを、溶媒としてナガセケムテックス株式会社製の商品名デナコールEX212Lをそれぞれ含み、硬化剤の割合が30質量%である、粘度102mPa・sの樹脂液を用意した。
【0076】
第一の木質基材への第一液の塗布量は98g/m、第二液の塗布量は98g/mとした。
【0077】
第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度150℃、加圧力7MPa、処理時間60秒とした。
【0078】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0079】
[実施例8]
第一の木質基材として厚み0.58mmのブナスライス単板を用意した。このブナスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このブナスライス単板の含水率は4.2質量%であった。
【0080】
第二液として、硬化剤として重量平均分子量1600のセラック(株式会社岐阜セラツク製造所製)を、溶媒としてエタノールをそれぞれ含み、硬化剤の割合が70質量%である、粘度54mPa・sの樹脂液を用意した。
【0081】
第一の木質基材への第二液の塗布量は47g/mとした。
【0082】
第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度160℃、加圧力7MPa、処理時間60秒とした。
【0083】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0084】
[実施例9]
第一の木質基材として厚み0.58mmのブナスライス単板を用意した。このブナスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このブナスライス単板の含水率は4.1質量%であった。
【0085】
第二液として、硬化剤として分子量350の没食子酸(富士化学工業株式会社製)を、溶媒として蒸留水をそれぞれ含み、硬化剤の割合が70質量%である、粘度82mPa・sの樹脂液を用意した。
【0086】
第一の木質基材への第二液の塗布量は51g/mとした。
【0087】
第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度160℃、加圧力7MPa、処理時間60秒とした。
【0088】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0089】
[実施例10]
第一の木質基材として厚み0.58mmのブナスライス単板を用意した。このブナスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このブナスライス単板の含水率は2.8質量%であった。
【0090】
第一液として、重量平均分子量521のエポキシ樹脂を含有する、粘度180mPa・s、固形分率100質量%の樹脂液(コニシ株式会社製の商品名ユニエポ)を用意した。
【0091】
第二液として、硬化剤として重量平均分子量1800のタンニン酸(富士化学工業株式会社製)を、溶媒としてアセトンをそれぞれ含み、硬化剤の割合が70質量%である、粘度135mPa・sの樹脂液を用意した。
【0092】
第一の木質基材への第一液の塗布量は98g/mとし、第二液の塗布量は50g/mとした。
【0093】
第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度160℃、加圧力7MPa、処理時間60秒とした。
【0094】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0095】
[実施例11]
第一の木質基材として厚み0.39mmのカバスライス単板を用意した。このカバスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このカバスライス単板の含水率は4.2質量%であった。
【0096】
第一液として、熱硬化性樹脂として重量平均分子量728のHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ株式会社製の商品名デュラネートTLA100)を、溶媒としてテトラエトキシシラン(TEOS)10質量%をそれぞれ含み、粘度195mPa・s、固形分率90質量%の樹脂液を用意した。
【0097】
第一の木質基材への第一液の塗布量は157g/mとし、第二液の塗布量は51g/mとした。
【0098】
第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度150℃、加圧力5MPa、処理時間180秒とした。
【0099】
加熱加圧処理後には、ブラッシング処理に代えて、第一の木質基材の第二の木質基材とは反対側の面に、粒径0.6mmのアルミナ粒子を用いて噴射圧力0.4MPaの条件でブラスト処理を1分間施した。
【0100】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0101】
[実施例12]
第一の木質基材として厚み0.39mmのカバスライス単板を用意した。このカバスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このカバスライス単板の含水率は3.5質量%であった。
【0102】
第一液として、熱硬化性樹脂として重量平均分子量728のHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ株式会社製の商品名デュラネートAE700)を、溶媒としてテトラエトキシシラン20質量%をそれぞれ含み、粘度100mPa・s、固形分率80質量%の樹脂液を用意した。
【0103】
第一の木質基材への第一液の塗布量は152g/mとし、第二液の塗布量は49g/mとした。
【0104】
第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度150℃、加圧力5MPa、処理時間180秒とした。
【0105】
加熱加圧処理後には、ブラッシング処理に代えて、第一の木質基材の第二の木質基材とは反対側の面に、粒径0.6mmのアルミナ粒子を用いて噴射圧力0.4MPaの条件でブラスト処理を1分間施した。
【0106】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0107】
[実施例13]
第一の木質基材として厚み0.81mmのスギスライス単板を用意した。このスギスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このスギスライス単板の含水率は4.2質量%であった。第二の木質基材としては厚み12.0mm、密度0.78g/cmのパーティクルボードを用意した。
【0108】
第二液として、硬化剤として重量平均分子量1600のセラック(株式会社岐阜セラツク製造所製)を、溶媒としてエタノールをそれぞれ含み、硬化剤の割合が70質量%である、粘度54mPa・sの樹脂液を用意した。
【0109】
第一液と第二液の塗布はフローコートによりおこない、第一の木質基材への第一液の塗布量は102g/mとし、第二液の塗布量は48g/mとした。
【0110】
第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度160℃、加圧力5MPa、処理時間60秒とした。
【0111】
加熱加圧処理後には、ブラッシング処理に代えて、第一の木質基材の第二の木質基材とは反対側の面に、粒径1.0mmのアルミナ粒子を用いて噴射圧力0.4MPaの条件でブラスト処理を1分間施した。
【0112】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0113】
[実施例14]
第一の木質基材として厚み0.81mmのスギスライス単板を用意した。このスギスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このスギスライス単板の含水率は4.3質量%であった。第二の木質基材としては厚み12.0mm、密度0.78g/cmのパーティクルボードを用意した。
【0114】
第一液として、重量平均分子量521のエポキシ樹脂を含有する、粘度180mPa・s、固形分率100質量%の樹脂液(コニシ株式会社製の商品名ユニエポ)を用意した。
【0115】
第二液として、硬化剤として分子量350の没食子酸(富士化学工業株式会社製)を、溶媒として蒸留水をそれぞれ含み、硬化剤の割合が70質量%である、粘度82mPa・sの樹脂液を用意した。
【0116】
第一液と第二液の塗布はフローコートによりおこない、第一の木質基材への第一液の塗布量は152g/mとし、第二液の塗布量は53g/mとした。
【0117】
第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度160℃、加圧力5MPa、処理時間60秒とした。
【0118】
加熱加圧処理後には、ブラッシング処理に代えて、第一の木質基材の第二の木質基材とは反対側の面に、粒径0.7mmのスチールグリッド粒子を用いて噴射圧力0.4MPaの条件でブラスト処理を1分間施した。
【0119】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0120】
[実施例15]
第一の木質基材として厚み1.07mmのブナスライス単板を用意した。このブナスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このブナスライス単板の含水率は3.9質量%であった。第二の木質基材としては厚み12.0mm、密度0.78g/cmのパーティクルボードを用意した。
【0121】
第一液として、重量平均分子量521のエポキシ樹脂を含有する、粘度180mPa・s、固形分率100質量%の樹脂液(コニシ株式会社製の商品名ユニエポ)を用意した。
【0122】
第一液と第二液の塗布はフローコートによりおこない、第一の木質基材への第一液の塗布量は152g/mとし、第二液の塗布量は48g/mとした。
【0123】
第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度150℃、加圧力7MPa、処理時間180秒とした。
【0124】
加熱加圧処理後には、ブラッシング処理に代えて、第一の木質基材の第二の木質基材とは反対側の面を、180番手(#180)の研磨布紙を備える研磨機で研磨した。
【0125】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0126】
[実施例16]
第一の木質基材として厚み0.82mmのブナスライス単板を用意した。このブナスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このブナスライス単板の含水率は2.7質量%であった。第二の木質基材としては厚み9.0mm、密度0.52g/cmのスギ合板を用意した。
【0127】
第二液としては、分子量76、粘度48mPa・sのプロピレングリコールを用意した。
【0128】
第一の木質基材への第一液の塗布量は102g/mとし、第二液の塗布量は23g/mとした。
【0129】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0130】
[実施例17]
第一の木質基材として厚み0.39mmのカバスライス単板を用意した。このカバスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このカバスライス単板の含水率は4.2質量%であった。第二の木質基材としては厚み9.0mm、密度0.52g/cmのスギ合板を用意した。
【0131】
第一液として、熱硬化性樹脂として重量平均分子量728のHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ株式会社製の商品名デュラネートTLA100)を、溶媒としてテトラエトキシシラン10質量%をそれぞれ含み、粘度195mPa・s、固形分率90質量%の樹脂液を用意した。
【0132】
第一の木質基材への第一液の塗布量は157g/mとし、第二液の塗布量は51g/mとした。
【0133】
第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度150℃、加圧力5MPa、処理時間180秒とした。
【0134】
加熱加圧処理後のブラッシング処理は施さなかった。
【0135】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0136】
[比較例1]
第一の木質基材として厚み0.62mmのブナスライス単板を用意した。このブナスライス単板には予め1mあたり500gの水を霧吹きで噴霧することで添加しておいた。このブナスライス単板の含水率は30.6質量%であった。
【0137】
第一の木質基材への第一液の塗布量は102g/mとし、第二液の塗布量は25g/mとした。
【0138】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0139】
[比較例2]
第一の木質基材として厚み0.62mmのブナスライス単板を用意した。このブナスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このブナスライス単板の含水率は2.8質量%であった。
【0140】
第一液として、熱硬化性樹脂として重量平均分子量2329のHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ株式会社製の商品名デュラネートTSE100)からなる、粘度1520mPa・s、固形分率100%の樹脂液を用意した。
【0141】
第一の木質基材への第一液の塗布量は102g/mとし、第二液の塗布量は24g/mとした。
【0142】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0143】
[比較例3]
第一の木質基材として厚み0.62mmのブナスライス単板を用意した。このブナスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このブナスライス単板の含水率は2.7質量%であった。
【0144】
第一の木質基材への第一液の塗布量は102g/mとし、第二液の塗布量は25g/mとした。
【0145】
第一の木質基材への第一液及び第二液の塗布後には、第一の木質基材の加熱加圧処理、ブラッシング、及び塗装は施さなかった。
【0146】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0147】
[比較例4]
第一の木質基材として厚み0.62mmのナラスライス単板を用意した。このナラスライス単板には予め乾燥機で105℃で30分間加熱する処理を施しておいた。このナラスライス単板の含水率は2.4質量%であった。
【0148】
第一液として、重量平均分子量521のエポキシ樹脂を含有する、粘度180mPa・s、固形分率100質量%の樹脂液(コニシ株式会社製の商品名ユニエポ)を用意した。第二液は使用しなかった。
【0149】
第一の木質基材への第一液の塗布量は98g/mとし、第二液の塗布量は25g/mとした。
【0150】
第一液を塗布した後の第一の木質基材の加熱加圧条件は、加熱温度150℃、加圧力7MPa、処理時間60秒とした。
【0151】
それ以外の条件は実施例1の場合と同じにして、木質複合材を得た。
【0152】
[評価試験]
木質複合材における第一の木質基材の樹脂含浸率、圧縮率及び密度を調査した。
【0153】
樹脂含浸率は、全乾重量法により算出し,圧縮率について第一の木質基材の処理前の厚みに対する処理後の厚みの百分率((処理後厚み/処理前厚み)×100)を算出した。また密度は、JIS Z 2101により算出した。
【0154】
また、木質複合材における第一の木質基材のブリネル硬度を、JIS Z 2101に規定される木材の評価手法に従って測定した。
【0155】
また、24時間吸水による寸法変化率を、JIS Z2101に従って測定した。
【0156】
また、意匠性の評価のため、JIS Z8741に規定される光沢値の測定方法に基づき、木質複合材の光沢値を測定した。
【0157】
結果を表1,2に示す。
【0158】
【表1】

【0159】
【表2】

尚、比較例4では第二の樹脂液が使用されていないことから、樹脂が硬化せず、このため評価は行わなかった。
【0160】
表1に示されるように、実施例1〜17によれば、本発明は含水率が10%以下、厚さ0.2〜3.0mmの一般的な広葉樹・針葉樹に適用可能であることが確認できる。
【0161】
特に実施例1〜4では、比較例1と較べて、樹脂含浸率が非常に高く、更に寸法安定性も高いことが確認できる。このことより、乾燥状態の単板に樹脂塗布することで、木材中への樹脂含浸率を向上させることができ、耐久性を向上できることが確認できた。また、実施例1〜4では、比較例2と較べても樹脂含浸率が非常に高く、寸法安定性も高いことが確認できる。
【0162】
これにより、重量平均分子量が1000以下の熱硬化性樹脂を含有し、粘度が200mPa・s以下であり、固形分率が70質量%以上である第一液が用いられることで、第一の木質基材の樹脂含浸率が向上し、耐久性が向上することが確認された。
【0163】
一方、比較例3では加熱加圧処理が施されていないことから、樹脂の硬化が不十分であり、耐久性に劣るものであった。すなわち、実施例においては、加熱加圧処理によって熱硬化性樹脂の硬化が促進されると共に第一の木質基材が緻密化することで、耐久性が向上していることが確認された。
【0164】
また、実施例5と比較例4とを比較すると、第二液を含浸させない場合,低分子量・低粘度の樹脂を熱圧締するのみでは硬化させることが困難であることが確認できた。
【0165】
また実施例2と実施例16とを較べると、第一の木質基材の圧縮率、密度、及び硬度は、実施例2の方が高かった。これにより、実施例2のように第二の木質基材の密度が高いと、加熱加圧処理時に第二の木質基材が圧縮されにくくなって、その分、第一の木質基材が、より圧縮されて緻密化しやすくなることが確認された。
【0166】
また実施例11と実施例17とを較べると、加熱加圧処理後に実施例11のように表面処理が施されることで、第一の木質基材の表面の樹脂光沢が抑制され、木質感のある良好な意匠性が発揮されることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂の硬化物と複合化している第一の木質基材を備える木質複合材を製造する方法であって、
含水率が10質量%以下である第一の木質基材を用意する工程、
前記第一の木質基材に、重量平均分子量1000以下の熱硬化性樹脂を含有し、且つ粘度が200mPa・s以下、固形分率が70質量%以上である第一液を含浸させる工程、
前記第一の木質基材に、前記熱硬化性樹脂の硬化剤を含有する第二液を含浸させる工程、
及び前記第一液及び第二液が含浸している前記第一の木質基材を加熱・加圧する工程を含む木質複合材の製造方法。
【請求項2】
前記木質複合材が第二の木質基材を備えると共に前記第一の木質基材が前記第二の木質基材に接合しており、
前記第一の木質基材が接合される前の前記第二の木質基材の密度が0.7g/cm以上であり、前記第二の木質基材に前記第一の木質基材を接合してから、前記第一の木質基材に前記第一液及び第二液を含浸させ、これに続いて前記第一の木質基材を加熱・加圧する請求項1に記載の木質複合材の製造方法。
【請求項3】
前記第一の木質基材に前記第一液及び前記第二液を含浸させた後に前記第一の木質基材を加熱・加圧してから、前記第一の木質基材に研磨処理又はブラッシング処理を施す請求項1又は2に記載の木質複合材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法で製造され、前記第一の木質基材の密度が0.8g/cm以上である木質複合材。

【公開番号】特開2012−45852(P2012−45852A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191254(P2010−191254)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】