説明

板状部材収納用ラック、板状部材移載設備、及び板状部材収納方法

【課題】板状部材を起立姿勢で安定して搬送することと、ラック内に収納された板状部材を起立姿勢で安定して保持することとを両立する。
【解決手段】ラック12が、複数の板状部材2を収納する収納空間33、及び板状部材2を配列方向と交差する水平な搬入方向に搬入させるための搬入口34を有するラック本体32と、複数の板状部材2の上縁部をそれぞれ支持する複数の上側支持部61と、複数の上側支持部61の下方に設けられ、起立させられた複数の板状部材2の下縁部を支持する下側支持部63と、配列方向において複数の上側支持部61の端及び下側支持部63の端より外側に設けられ、搬入口34から収納空間33内に搬入される板状部材2の下縁部を収容する下縁部収容部64と、を備え、1つの上側支持部61は、搬入され下縁部収容部64によってその下縁部が収容された板状部材2の上縁部を該板状部材2が傾いた状態で支持することが可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部材を収納するためのラック、該ラックを備えた板状部材移載設備、及び該ラックに板状部材を収納するための方法に関し、特に、太陽光パネルや液晶パネル及びこれらの基板であるガラス板等、大型且つ大重量の板状部材を収納するためのラック及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光パネルの生産工場等、板状の部材を処理するための複数の処理装置が設置された工場においては、ある処理装置から次の処理装置へと板状部材をコンベアで搬送する際、複数の板状部材を一時的に蓄えておく設備が設けられる場合がある。この設備は、複数の板状部材を収納するラック又はカセットと、ラック又はカセットとコンベヤとの間で板状部材を移載するストッカ又はロボットとを備える。この設備の後段に設けられた処理装置は、複数の板状部材を同時に処理するためのものである場合があり、この処理装置による処理を始める前には、ラック又はカセットに収納された複数の板状部材がまとめてその処理装置へと搬送される。
【0003】
特許文献1は、板状部材としての半導体ウエハをカセットに収納したり、カセットに収納されたウエハを取り出したりするロボットを開示している。ロボットのアームの先端部には、ウエハが載置されるエンドエフェクタが取り付けられており、アームを作動してエンドエフェクタを移動させることにより、ウエハの収納及び取出しが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−522238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のロボットは、半導体ウエハといった小型且つ軽量の板状部材を対象としており、板状部材を倒伏させてカセットに収納してもそのこと自体は問題とならない。しかし、太陽光パネル等の大型且つ大重量の板状部材をラック内で倒伏させて下側から数点で支持すると、その板状部材が自重により撓んで破損するおそれがあり、また、破損を免れたとしても、ラック内に収容した板状部材同士の上下間隔を大きくせざるを得なくなる。このため、大型且つ大重量の板状部材は起立姿勢でラック内に収納されることが好ましく、これにより、倒伏姿勢としたときと比べて、撓みが小さくなるとともに、板状部材同士の間隔を小さくしてラックの収容可能枚数が多くなる。ただし、大型の板状部材をラック内に起立姿勢で収納するには、板状部材をラック内で回転変位させるのは煩雑となるため、板状部材をラックに搬入する前の段階で起立させておく必要がある。
【0006】
搬入時に板状部材が完全に直立していると、不意に外力が板状部材に作用したときに、板状部材が簡単に倒れてしまう。他方、板状部材が起立しつつもやや傾倒した姿勢でラックに収納されていると、板状部材が自重により撓んでしまう。板状部材が撓んでいると、例えば複数の板状部材を収納しているラックを後段に設けられた処理装置に搬送するような場合に、安定した搬送作業を行いにくい。このため、従来、収納された板状部材を後段の処理装置に搬送する過程においては、工場作業員が人力に頼って板状部材を運搬する必要が生じている。
【0007】
そこで本発明は、板状部材を起立姿勢で安定してラックに搬入することと、ラック内に収納された板状部材を起立姿勢で安定して保持することとを両立させることが可能な板状部材収納用ラック、板状部材移載設備、及び板状部材収納方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、本発明に係る板状部材収納用ラックは、複数の板状部材を起立させ且つその板厚方向に隣り合うように配列方向に並べて収納する収納空間、及び前記収納空間内に板状部材を前記配列方向と交差する水平な搬入方向に搬入させるための搬入口を有するラック本体と、前記収納空間に前記搬入方向から見て前記配列方向に配置され、前記複数の板状部材の上縁部をそれぞれ支持する複数の上側支持部と、前記収納空間に前記複数の上側支持部の下方に設けられ、前記起立させられた複数の板状部材の下縁部を支持する下側支持部と、前記収納空間に、前記配列方向において前記複数の上側支持部の端及び前記下側支持部の端より外側に設けられ、前記搬入口から前記収納空間内に搬入される板状部材の下縁部を収容する下縁部収容部と、を備え、少なくとも1つの前記上側支持部は、前記搬入され前記下縁部収容部によってその下縁部が収容された前記板状部材の上縁部を該板状部材が傾いた状態で支持することが可能なように構成されている。
【0009】
前記構成によれば、下縁部収容部は下側支持部よりも配列方向において上側支持部から遠ざかって配置されている。このため、板状部材の上縁部を上側支持部に支持した場合において、下縁部が下側支持部に支持されているときには、下縁部収容部に収容されているときと比べ、板状部材の傾斜が小さくなって板状部材はより鉛直に近い姿勢で起立する。搬入時には板状部材の下縁部を下縁部収容部に収容させることにより、板状部材がやや傾倒した姿勢となるため、搬入作業を安定して行うことができる。収納空間内への搬入完了後の板状部材を下側支持部に支持させることにより、板状部材を鉛直に起立した姿勢に近づけることができる。このように鉛直に起立する姿勢に近づけることにより、収納空間内に収納された板状部材の撓みが抑えられるなど、板状部材を安定して保持することができるようになる。
【0010】
前記上側支持部と前記搬入方向から見て前記配列方向において前記上側支持部と同位置に設けられた拘束部材を更に備え、前記拘束部材は、板状部材の下縁部が前記下縁部収容部に収容されているときには当該板状部材と非係合となり且つ板状部材の下縁部が前記下側支持部に支持されているときには当該板状部材の上縁部を拘束するように、前記ラック本体に設けられていてもよい。これにより、板状部材の下縁部が下側支持部に支持された状態において、板状部材の上縁部をラック本体に設けた拘束部材で拘束することができる。よって、ラック本体に収納された板状部材を更に安定して保持することができる。
【0011】
前記拘束部材は、前記配列方向に互いに離れた一対の拘束片を有し、前記下側支持部に支持されている板状部材の上縁部が、前記一対の拘束片の間に形成される拘束溝に嵌まり込んで前記一対の拘束片によって拘束されてもよい。また、前記一対の拘束片が、互いに対向する対向面をそれぞれ有し、一対の前記対向面の少なくとも一方の下端部は、前記拘束溝の前記配列方向における寸法が下方に向かうに従って大きくなるよう、テーパ面を形成していてもよい。これにより、板状部材の上縁部を拘束溝内に導入しやすくなり、板状部材の上縁部の拘束を確実に行わせることができる。
【0012】
前記下縁部収容部が、前記下側支持部よりも低く配置されていてもよい。これにより、下縁部収容部に収容されているときに拘束部材と板状部材とを非係合にし、且つ下側支持部に支持されているときに拘束部材により板状部材を拘束する構造を簡易に実現することができる。
【0013】
前記下側支持部が、板状部材の下縁部が係合する溝を有していてもよい。これにより、板状部材の下縁部を下側支持部に支持するときに、当該下縁部を溝に係合させることができる。よって、ラック本体に収納された板状部材を更に安定して保持することができる。
【0014】
前記下側支持部は、前記収納空間が許容する板状部材の収納可能枚数と対応する数だけ設けられ、当該収納可能枚数に対応する数の下側支持部が前記配列方向に連続する2つ以上の下側支持部からなる1つ以上のグループに分かれており、前記グループと前記下縁部収容部とが1対1で対応するように設けられていてもよい。これにより、ラック本体の収納許容枚数と同数の下縁部収容部を設けなくてもよくなる。このため、ラック本体及び収納空間が配列方向においてコンパクトになる。
【0015】
昇降自在に設けられた支持体を備え、前記支持体を前記下縁部収容部内に位置させて前記搬入口から前記周能空間内に搬入される板状部材の下縁部を該支持体に支持させ、その後、前記収納空間内に搬入された板状部材を下から持ち上げ、板状部材の下縁部が前記支持体に支持されている状態から前記下側支持部に支持されている状態へと変更させるよう前記支持体を移動させる姿勢変更機構、を更に備えていてもよい。これにより、姿勢変更機構を作動させることにより、収納空間内に搬入された板状部材の下縁部を下縁部収容部に収容されている状態から下側支持部に支持されている状態へと自動的に変更することができる。
【0016】
前記姿勢変更機構が、前記ラック本体の下部に設けられ、前記上側支持部及び前記下側支持部に支持された板状部材を前記配列方向に移動させることが可能に構成されていてもよい。これにより、板状部材を収納空間に搬入するための機構と、収納空間に搬入された板状部材の姿勢を変更するための機構とが共通化され、板状部材収納用ラックの構成が簡素なものとなる。
【0017】
前記姿勢変更機構は、前記支持体を上下方向に移動させる第1駆動部と、前記支持体を前記配列方向に移動させる第2駆動部とを有していてもよい。これにより、収納空間内に収納された板状部材の下縁部を支持体で支持した状態として第1駆動部を動作させることにより、板状部材を下から持ち上げ、当該板状部材の下縁部を下縁部収容部から解放することができる。次いで、第2駆動部を動作させることにより板状部材の下縁部を配列方向に移動させることができる。更に、第1駆動部を動作させることにより、持ち上げられた板状部材を降ろし、降ろした板状部材の下縁部を下側支持部に支持させることができる。
【0018】
前記ラック本体の底部をスライド可能に支持する基台、を更に備えていてもよい。これにより、板状部材を収納したラック本体を移動させることができる。上記のとおり板状部材は収納空間内に安定して保持されるため、板状部材に振動が生じるおそれは低減されており、板状部材を簡便且つ安全に搬送することができる。
【0019】
また、本発明に係る板状部材移載設備は、前記板状部材収納用ラックと、前記板状部材収納用ラックに板状部材を搬入し又は前記板状部材収納用ラックから板状部材を搬出する移載装置と、を備える。
【0020】
また、本発明に係る板状部材収納方法は、複数の板状部材を起立させ且つその板厚方向に隣り合うように配列方向に並べて収納する収納空間、及び前記収納空間内に板状部材を前記配列方向と交差する水平な搬入方向に搬入させるための搬入口を有するラック本体と、前記収納空間に前記搬入方向から見て前記配列方向に配置され、前記複数の板状部材の上縁部をそれぞれ支持する複数の上側支持部と、前記収納空間に前記複数の上側支持部の下方に設けられ、前記起立させられた複数の板状部材の下縁部を支持する下側支持部と、前記収納空間に、前記配列方向において前記複数の上側支持部の端及び前記下側支持部の端より外側に設けられ、前記搬入口から前記収納空間内に搬入される板状部材の下縁部を収容する下縁部収容部と、を備える板状部材収納用ラックに板状部材を収納するための方法であって、起立させた板状部材の上縁部を前記上側支持部に支持させかつ当該板状部材の下縁部を前記下縁部収容部に収容させるようにして当該板状部材を、前記挿入口を介して前記収納空間内へと前記搬入方向に沿って搬入し、前記収納空間内に収納された板状部材を前記下縁部収容部から持ち上げ、該持ち上げた板状部材の下縁部を前記配列方向に移動させ、該移動させた板状部材を降ろして板状部材の下縁部を前記下側支持部に支持させる。
【0021】
前記板状部材移載設備及び方法によれば、前記板状部材収納用ラックと同様にして、板状部材を起立姿勢で安定して搬送することと、ラック内に収納された板状部材を起立姿勢で安定して保持することとを両立することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、板状部材を起立姿勢で安定して搬送することと、ラック内に収納された板状部材を起立姿勢で安定して保持することとを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る移載設備を示す模式的平面図である。
【図2】図1に示す移載設備の斜視図である。
【図3】図2に示す左側のラックの一部を示す分解斜視図である。
【図4】図2に示す移載設備を後方から見て示す図である。
【図5】図2に示す左側のラックの一部を搬入方向から見て示す側面図である。
【図6】図5に示すラックの一部の平面図である。
【図7】図5の部分拡大図である。
【図8】図6のVIII−VIII線に沿って切断して示すラック本体の断面図である。
【図9】下側支持部の斜視図である。
【図10】図5の部分拡大図である。
【図11】移載設備の制御系の構成を示す構成図である。
【図12】ガラス板をラックに収納するときの各アクチュエータの動作タイミングを示すタイミング図である。
【図13】ガラス板をラックに搬入する準備が整った状態を示す斜視図である。
【図14】収納空間内でガラス板を姿勢を変更するときのガラス板の下縁部の動作を示す作用図であり、(a)が搬入が完了した直後の状態、(b)がガラス板を下から持ち上げた状態、(c)がガラス板を配列方向に移動させた状態、(d)がガラス板を降ろして下側支持部に支持させた状態をそれぞれ示している。
【図15】収納空間内でガラス板を姿勢を変更するときのガラス板の上縁部の動作を示す作用図であり、(a)が搬入が完了した直後の状態、(b)がガラス板を下から持ち上げた状態、(c)がガラス板を配列方向に移動させた状態、(d)がガラス板を降ろして下側支持部に支持させた状態をそれぞれ示している。
【図16】変形例に係るラックの一部を示す分解斜視図である。
【図17】変形例に係る拘束部材を示す図である。
【図18】変形例に係る支持収容部を示す図である。
【図19】変形例に係る支持収容部を示す図である。
【図20】変形例に係る支持収容部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。全図面中、同一又は相当の要素には同一の符号を付してその重複する説明を省略する。
【0025】
[移載設備]
図1に示すように、本実施形態に係る移載設備10は、例えば、板状部材の一例である太陽光パネルを生産する工場1に設けられる。このような工場1には、太陽光パネルの基板となるガラス板2を処理するための複数の処理装置3,4(図1では2つのみを例示)が設置される。
【0026】
移載設備10は、処理装置3による処理を終えたガラス板2を搬送するコンベア5に付設され、コンベア5から搬送されたガラス板2を一時的に収納する。コンベア5は、処理装置から平行に延在する一対の桁6の間に架け渡された複数のホイール軸7を有し、これらホイール軸7は、桁6の延在方向に沿って間隔をおいて設けられている。処理装置3で処理されたガラス板2は1枚ずつホイール軸7上に載置される。ホイール軸7が回転駆動されると、ガラス板2が桁の延在方向に搬送される。ガラス板2は、隣接する2つのホイール軸7a,7bの間に設けられたストッパ8に当接することにより、所定の停止位置で位置決めされて停止する。
【0027】
移載設備10は、トラックロボット11及びラック12を備えている。トラックロボット11は停止位置で停止しているガラス板2を受け取り、ガラス板2を起立させてラック12内に搬入する。ラック12はトラックロボット11により搬入されたガラス板2を起立した状態で収納する。トラックロボット11はラック12に収納されたガラス板2を搬出することもできる。本実施形態のラック12はラックロボット13を備えており、ラックロボット13はトラックロボット11と協働してガラス板2の搬入及び搬出を行う。
【0028】
移載設備10の後段に設けられた処理装置4は、一般に、複数のガラス板2を同時に処理する装置であり、例えば加熱処理や貼合せ処理を行うための釜から成る。移載設備10のラック12に収納された複数のガラス板2は、処理装置4による処理を始める前に、まとめて処理装置4へと搬送される。
【0029】
本実施形態の移載設備10では、後述するように、ガラス板2の下縁部を支持する下側支持部63(図5参照)と、下縁部を収容する下縁部収容部64(図5参照)を備え、ガラス板2をラック12に搬入するときには下縁部収容部64にガラス板2の下縁部を収容させることによってガラス板2をやや傾倒した起立姿勢とし、ガラス板2をラック12に搬入した後に下側支持部63にガラス板2の下縁部を支持させることによってガラス板2をより直立に近い起立姿勢とすることができる。このため、ガラス板2を安定して搬入することと、ガラス板2を安定して保持することとが両立され、ガラス板2を後段の処理装置4に搬送する際に、複数のガラス板2をラック12の本体32ごと安定して搬送可能になる。これにより、搬送作業を迅速且つ容易に行うことができる。以降、かかる構成及び作用について詳細に説明する。
【0030】
図2は図1に示す移載設備10の斜視図である。図2及び図4では、説明の便宜のため、右側のラック12のラック本体の図示を省略する。図2に示すように、工場1の床面には、前後方向に延在するガイドレール14が設置され、ガイドレール14には、トラックロボット11のベース21の底部が前後にスライド可能に支持されている。ベース21の前上部には、エンドエフェクタ23が左右方向の軸線回りに揺動可能に連結されている。このエンドエフェクタ23は、ベース21に揺動可能に連結されて左右方向に延びるビーム24に3本のファング25を左右方向に等間隔をおいて取り付けて成る。各ファング25は長尺の平板状であり、その基端部がビーム24の後面に固定されている。エンドエフェクタ23には、3本のファング25を左右方向に架け渡すようにして、リフトバー26が設けられている。リフトバー26は、各ファング25の一対の平面のうちビーム24に固定される側と反対側の表面25aに沿ってスライド可能である。リフトバー26の表面からは、左右方向に並ぶ複数の支持ブロック27が突出している。なお、各ファング25の表面25aには長手方向に間隔をおいて複数のコロ28が転動自在に設けられ、各コロ28の表面の一部がファング25の表面25aから突出している。ベース21の後上部には、左右方向に延在するローラビーム29が固定されている。ローラビーム29には、複数のローラ30が左右方向に間隔をおいて前後方向の軸線回りに回動可能に設けられており、ローラ30は、その外周面の軸線方向中間部において、周方向に全周に亘って延びる溝を有している。
【0031】
トラックロボット11は、ベース21を前後方向に移動させるサーボモータ等のトラックアクチュエータ91(図11参照)、エンドエフェクタ23を揺動させるサーボモータ等のフリップアクチュエータ92(図11参照)、リフトバー26をファング25の延在方向に沿って移動させる空圧式のリフトアクチュエータ93(図11参照)、及びローラ30を回転させるサーボモータ等のローラアクチュエータ94(図11参照)を備えている。フリップアクチュエータ92の動作により、ファング25はビーム24から前方に水平に延在した姿勢(図1二点鎖線参照)となったり、ビーム24から上方に起立した姿勢(図1実線参照)となったりする。リフトバー26は、その移動時において左右方向に延在する姿勢を維持する。なお、ガイドレール14、ファング25及びローラビーム29は、アクチュエータ91,93,94をそれぞれ収容するために中空であってもよい。
【0032】
上記トラックロボット11によれば、エンドエフェクタ23の揺動によって、コンベア5(図1参照)により停止位置まで搬送された倒伏姿勢のガラス板2を、エンドエフェクタ23で下から掬い上げて受け取り、リフトバー26の支持ブロック27上に起立させることができる。ベース21の移動によって、起立させたガラス板2を前後方向に搬送することができる。リフトバー26の下降によって、ガラス板2の下端部をローラ30上に載せ変えることができ、ローラ30の回転によって、ローラ30上のガラス板2を左方又は右方にスライド移動させることができる。これにより、ガラス板2を、起立させた状態にして、ガイドレール14を挟むように配置された左右方向のラック12のうちのいずれかに、搬入することができる。
【0033】
[ラック]
図2に示すように、ラック12は、工場1の床面上に設置される基台31と、基台31上に支持されるラック本体32とを備える。基台31は前後方向に長尺であり、複数のラック本体32(図示例では6つ)が基台31上で前後方向に列を成すように設けられている。ラック本体32は、その内部に収納空間33を有し、また、トラックロボット11と面する側面に搬入口34を有している。収納空間33内には、複数のガラス板2を起立させ且つその板厚方向に隣り合うようにして前後方向(配列方向)に並べて収納することができる。搬入口34は、トラックロボット11から送られてくるガラス板2を、配列方向とは交差する水平の左方向又は右方向(搬入方向)に沿って収納空間33内に搬入させるための開口である。また、収納空間33内に収容されたガラス板2は搬入口34を介して搬出される。左側に配置されるラック12に着目すると、左方向が搬入方向となる。
【0034】
(骨組み構造)
基台31は、複数の脚36を介して工場1の床面に支持されるベッド部35を備え、ベッド部35は床面上方に水平に配置される。本実施形態のベッド部35は、矩形井桁状の骨組み構造を成している。具体的には、ベッド部35は、前後方向に平行に延びる一対の梁37を備えている。一対の梁37の上面には、左右方向に延びる複数の横桁38が前後方向に間隔をおいて固定されている。これら横桁38の上面側且つ一対の梁37の間には、複数の縦桁39が左右方向に間隔をおいて設けられている。各縦桁39は、複数の横桁38と直交し、交差する横桁38の上面に固定されている。また、各横桁38の左端部は左側の梁37から左方に突出し、各横桁38の右端部は右側の梁37から右方に突出している。脚36はこの横桁38の端部から下方に延在している。
【0035】
図3はラック12の分解斜視図である。図3に示すように、本実施形態のラック本体32は、直方体の籠状又は檻状の骨組み構造を成している。具体的には、ラック本体32は、前後に延びる複数の底縦桁40を備えている。各底縦桁40の前端部及び後端部それぞれに上方に延びる柱41が連結され、ラック本体32の前部及び後部には複数の柱41が柵状に左右方向に並べられている。これら柱41の下部には、左右方向に延びる前後一対の梁42が、左右方向に並んだ柱41を貫くようにして配設されている。前後方向に対向する一対の柱41の上端部には、前後方向に延びる上縦桁43が平面視で底縦桁41と重なるようにして架け渡されている。上縦桁43の上面側には、複数の上横桁44が前後方向に間隔をおいて設けられている。各横桁44は、左右方向に延びて複数の上縦桁43と直交しており、交差する上縦桁43の上面に固定されている。上横桁44の下面には、柱41に連結された上縦桁43とは別に、追加の上縦桁43が複数設けられている。これにより、柱41の本数が過剰とならずに、ラック本体32の上部に上側支持部61及び拘束部材75等の多種の部材を取付け可能となる。一対の梁42の下面には、前後方向に延びる左右一対のフォークポケット45が架け渡されている。これらフォークポケット45は筒状に形成されている。
【0036】
上記骨組み構造を成すラック本体32内に収納空間33が形成されている。ラック本体32は収納空間33の左部及び右部を開放しており、これによりラック本体32に搬入口34が形成されている。具体的には、収納空間33を開放する矩形状の開口が、トラックロボット11に面する側の端縁を前後方向に延びる2本の縦桁40a,43aと、これら縦桁40a,43aの前端部同士及び後端部同士をそれぞれ上下方向に繋ぐ2本の柱41a,41bとによって規定されており、当該開口が搬入口34としての役割を果たす。
【0037】
図4に示すように、底縦桁40をベッド部35上に支持させることによって、ラック本体32が基台31に取り付けられる。このとき、底縦桁40のうち左右の端縁に配置された底縦桁40a,40bは、その前端部及び後端部がベッド部35の横桁38上に支持される。その間の底縦桁40cは、前後方向の全体に亘ってベッド部35の縦桁39上に支持される。前述のとおりベッド部35の縦桁39は横桁38上に固定されることから、縦桁39の上面は、横桁38の上面よりも縦桁39の高さH39分だけ上方に位置する。このため、底縦桁40a,40bの下面は底縦桁40cの下面よりも前記高さH39分だけ下方に位置し、これにより縦桁39及び横桁38間の高さのズレが相殺される。
【0038】
このベッド部35の縦桁39及び横桁38間に高さのズレを生じさせたことにより、ラック本体32の柱41とベッド部35の横桁38との間にはスペースが形成されることとなる。このスペースの高さは、ベッド部35の縦桁39の高さH39と、縦桁39上に支持された底縦桁40cの高さH40cとの和に相当し、このような高さを有したスペース内にフォークポケット45が無理なく配置される。ラック本体32がベッド部35に取外し可能に支持されている状態においては、フォークリフト9(図1参照)のフォーク9a(図1参照)をフォークポケット45内に差し込んで上動させることにより、ラック本体32をベッド部35から上方向に容易に取り外すことができる。
【0039】
(ラックロボット)
図3及び図4に示すように、ベッド部35の一対の梁37の下面側には、並進機構46を介してラックロボット13のベース47が設けられている。ラックロボット13のベース47は、長尺のバー状に形成され、その長手方向が左右方向に向けられている。並進機構46は、例えばラック及びピニオンから成り、この場合、前後方向に延びる左右一対のラックギヤが各梁37の下面に取り付けられ、ベース47の上面の左右端部に各ラックギヤと噛合する左右一対のピニオンが取り付けられる。ベース47は中空に形成され、ベース47内には並進機構46を駆動するサーボモータ等のスロットアクチュエータ96(図11参照)が収容される。スロットアクチュエータ95が動作すると、並進機構46が駆動され、ラックロボット13のベース47が一対の梁37の下面側を前後方向に移動する。
【0040】
ベース47の前面側には、ローラビーム48が上下方向に移動可能に取り付けられている。ローラビーム48は左右方向に延びる基部49を有し、基部49の左右両端部からは左右一対の連結部50が下方に延びている。ベース47の左右端部からも、左右一対のハウジング52が下方に延びており、連結部50はハウジング52と前後に重なるようにして設けられる。ハウジング52内には上下方向に延びるボールねじ及びこれに螺合するナットを有して成るボールねじ機構53と、ボールねじを回転駆動するサーボモータ等のリフトアクチュエータ97(図11参照)とが収容されており、連結部50はボールねじ機構53のナットと連結されている。リフトアクチュエータ97が動作すると、ボールねじが回転駆動されてナットが上下方向に移動し、これにより連結部50を有するローラビーム48が上下方向に移動する。
【0041】
ローラビーム48には、複数の出没部51が左右方向に間隔をおいて設けられ、出没部51の前面には、前後方向の軸線周りに回転するローラ54が設けられている。各ローラ54の軸線方向中央部には、周方向に全周に亘って溝54a(図14参照)が形成されている。出没部51は中空に形成され、出没部51内にはローラ54を駆動するローラアクチュエータ98(図11参照)が収容されている。ローラアクチュエータ98が動作すると、各ローラ54が同速で同方向に回転駆動される。
【0042】
図4の左側には、ローラビーム48が可動範囲の下限まで移動して退避位置に位置する状態を示し、図4の右側には退避位置に位置していたローラビーム48が上動して搬入位置に位置する状態を示している。なお、ローラビーム48の可動範囲の上限は、図4の右側に示す搬入位置よりも上方にあり、ローラビーム48は搬入位置よりも上方の姿勢変更位置(図14(b)参照)まで移動可能である。
【0043】
各出没部51は基部49から上方に突出して設けられているが、いずれの出没部51もベッド部35の梁37と縦桁39の間、又は隣り合う2つの縦桁39の間に配置される。このため、ローラビーム48を搬入位置に位置させると、出没部51及びローラ54がベッド部35と干渉することなくベッド部35の上方に突出する。ローラビーム48を搬入位置に位置させると、ローラビーム48に取り付けられたローラ54はトラックロボット11のローラ30と上下方向において同じ位置に位置する。よって、ガラス板2がトラックロボット11から搬入されると、その下端部が上下にガタつくことなくローラ54上に載って支持される。ローラ54を回転させると、ローラ54上のガラス板2がスライド移動する。
【0044】
ローラビーム48を退避位置に位置させると、出没部51及びローラ54が横桁38の下面よりも下方に位置する。このため、出没部51及びローラ54をベッド部35又はラック本体32と衝突させずに、ラックロボット13を前後方向に移動させることができる。退避位置に位置させても、ラックロボット13は基台31に天吊りとなっているので、床面の保全作業を容易に行うことができる。
【0045】
(支持部)
図5はラック12を搬入方向から見て示す側面図である。図5に示すように、ラック12は、起立させられた各ガラス板2の上縁部を支持する複数の上側支持部61と、起立させられた各ガラス板2の下縁部を支持又は収容する支持収容部62とを備えている。本実施形態の支持収容部62には、各上側支持部61の下方に設けられた下側支持部63と、ガラス板2の配列方向において上側支持部61の端及び下側支持部63の端よりも外側(本実施形態では後側)に設けられ、搬入口34から収納空間33に搬入されるガラス板2の下縁部を収容する下縁部収容部64とが含まれる。上側支持部61及び下側支持部63は、収納空間33内に収容されるべきガラス板2の枚数に応じて設けられる。本実施形態では、下縁部収容部64もガラス板2の収容可能枚数に応じて設けられている。
【0046】
図6はラック12の部分平面図、図7は図5の部分拡大図である。図6及び図7に示すように、複数の上側支持部61は、1以上の上縦桁43の下面に設けられた複数の支持ローラ71によって構成されている。本実施形態では、支持ローラ71が、搬入口34を規定する上縦桁43aと、これに隣接する上縦桁43bと、搬入口34とは反対側の端縁の上縦桁に隣接する上縦桁43cとの3つの上縦桁に設けられている。各上縦桁43a,43b,43cにおいて、収容されるべきガラス板2の枚数よりも1個多い数の支持ローラ71が、前後方向に等間隔をおいて1列に並べられている。
【0047】
各支持ローラ71は、上縦桁43の下面から下方に延びる軸72と、軸72の外周側に設けられた円筒状の回転部材73とを有する。前後方向に隣り合う2つの回転部材73の間にはクリアランス74が形成されることとなり、各クリアランス74は、ガラス板2の板厚よりも僅かに大きい前後方向の寸法を有している。起立させられたガラス板2の上縁部がこのクリアランス74内に受容されると、ガラス板2の上縁部が当該クリアランス74を規定する一対の回転部材73の外周面によって挟み込まれて支持される。1つのクリアランス74には1枚のガラス板2を受容することができ、ラック本体32は、左右方向(搬入方向)に見て前後方向(配列方向)に並ぶように形成されたクリアランス74の個数と同数のガラス板2を収容することができる。本実施形態では、クリアランス74の一つ一つ、及び各クリアランス74を規定する隣り合う2つの回転部材(支持ローラ)の一組一組が1つの上側支持部61としての役割を果たしている。
【0048】
図8は図6のVIII−VIII線に沿って切断して示すラック本体32の断面図である。図8に示すように、上縦桁43の下面には、各ガラス板2の上縁部を拘束する拘束部材75が固定されている。本実施形態の拘束部材75は、左右方向に延在する断面U状のブラケット76を備える。ブラケット76は、上縦桁43の下面に接合されたベース壁77と、ベース壁77の前後の縁部から下方に延びる一対の側壁78,79とを有している。これら側壁78,79の内面にはそれぞれ拘束片80,81が接合されている。各拘束片80,81は帯状に形成され、左右方向に延在している。拘束片80,81は、互いに対向する対向面82,83を有しており、これら対向面82,83の間には左右方向に延びる拘束溝84が形成されている。拘束部材75は、拘束溝84の前後方向の中心線が前述したクリアランス74の前後方向の中心線と一致するようにして配置されている。
【0049】
拘束片80,81の下端部80a,81aは、側壁78,79の下端から下方に突出している。これら対向面82,83は、下端部において、互いに離れるようにして傾斜したテーパ面82a,83aを形成している。拘束溝84の前後方向の寸法は、テーパ面82a,83aを形成していない部分においては、ガラス板2の板厚と同程度であり、前述のクリアランス74よりも僅かに大きい。また、拘束溝84の下端部84aはテーパ面82a,83aにより規定されるため、この下端部84aの前後方向の寸法は、下方に向かうに従って大きくなっている。拘束溝84の下方末端では、クリアランス74の前後方向の寸法よりも大きい。
【0050】
図6に示すように、拘束部材75は、少なくとも隣り合う2本の上縦桁43,43の下面側を左右方向に架け渡すようにして設けられている。そして、複数の拘束部材75が、前後に2列を成し、且つ千鳥状に配列されている。この千鳥配列によって、拘束部材75が支持ローラ71よりも前後に大きい外形寸法を有していても、少なくとも1つの拘束部材75を1枚のガラス板2に対応させて設置することと、ラック本体32の前後方向のサイズ大型化を避けることとを両立させることができる。
【0051】
図9は支持収容部62の斜視図、図10は図5の部分拡大図である。図9及び図10に示すように、支持収容部62は、底縦桁40の上面に固定されたパッド85によって構成され、起立させられたガラス板2の下端部はこのパッド85上に支持される。パッド85は、高い摩擦係数を有し且つ耐熱性を有する材料、例えばPEEK樹脂、シリコンゴム及びテフロン(登録商標)から製造されることが好ましい。パッド85上にガラス板2が支持されているときには、大重量のガラス板2の自重によって摩擦力が発生する。この摩擦力が大きくなるような材料を用いることによりガラス板2を安定して保持することができる。また、処理装置4にラック本体32ごと搬送してガラス板2の熱処理を行っても劣化しない。
【0052】
パッド85には、下側支持部63と、下側支持部63よりも低く配置される下縁部収容部64とが、前後方向において交互に並ぶようにして設けられている。各下側支持部63は、下方に凹んだ左右方向に延びる第1溝86を有している。この第1溝86の前後方向の中心面は、支持ローラ71により形成されるクリアランス74の前後方向の中心面と一致する。各下縁部収容部64も、下方に凹んだ左右方向に延びる第2溝87を有しており、第1溝86及び第2溝87を規定する面はガラス板2の下縁部を支持可能な第1底面86a及び第2底面87aをそれぞれ成し、第2底面87aは第1底面86aよりも下側に位置する。
【0053】
[制御系]
図11に示すように、移載設備10は、コンベア5、トラックロボット11及びラックロボット13を制御する制御装置100を備えている。制御装置100は、例えば、マイクロコンピュータで構成され、そのI/Oで構成される入力部101、その内部メモリで構成される記憶部102、そのCPUで構成される演算部103、及びそのI/Oで構成される出力部104を有している。
【0054】
入力部101は、ガラス板センサ105、ガラスマップセンサ106、スロット校正センサ107、ロボット位置合わせセンサ108及びガラスロールインセンサ109からの検出信号を入力する。ガラス板センサ105は、トラックロボット11に設けられ、トラックロボット11のエンドエフェクタ23にガラス板2が存在するか否かを検出する。ガラスマップセンサ106は、ラックロボット13に設けられ、ラックロボット13が前後方向に移動している間に、収納空間33内においてガラス板2で占有されていない領域を探知する。スロット校正センサ107は、ラックロボット13に設けられ、ラックロボット13が前後方向に移動している間に、収納空間33内にガラス板2を適正に搬入可能にするためにラックロボット13が停止すべき前後方向の位置を探知する。ロボット位置合わせセンサ108は、トラックロボット11及び/又はラックロボット13に設けられ、トラックロボット11のローラ30がラックロボット13のローラ54と左右方向に整列しているか否かを検出する。ガラスロールインセンサ109は、トラックロボット11及びラックロボット13に設けられ、左右方向に整列したローラ30,54上をスライド移動するガラス板2がどの位置にあるのかを検知する。これらセンサ105〜109には、光透過型センサ、光反射型センサ及び超音波測距センサ等を用いることができる。
【0055】
記憶部102は、コンベア5、トラックロボット11及びラックロボット13を制御するためのプログラムを記憶している。演算部103は、入力部101への入力を記憶部102に記憶されているプログラムを実行して処理し、出力部104を介してアクチュエータの動作を制御する。
【0056】
出力部104に接続されたアクチュエータには、コンベア5のホイール軸7を駆動するコンベアアクチュエータ90と、前述したトラックロボット11のトラックアクチュエータ91、フリップアクチュエータ92、リフトアクチュエータ93及びローラアクチュエータ94と、前述したラックロボット13のスロットアクチュエータ96、リフトアクチュエータ97及びローラアクチュエータ98とが含まれる。以降に説明する各アクチュエータの作動及び停止は、制御装置100により制御される。
【0057】
[収納方法]
図12は、1枚のガラス板2をラック12に収納するときのコンベア5、トラックロボット11及びラックロボット13の各アクチュエータの動作タイミングの一例を示すタイミング図である。図12に示す動作を繰り返し行うことにより、ガラス板2を1枚ずつ順次ラック12に収納することができる。
【0058】
(ガラス板の受取り準備)
ガラス板2をラック12に収納するにあたっては、コンベア5のコンベアアクチュエータ90を作動させ、ホイール軸7上で水平に倒伏しているガラス板2を停止位置まで搬送する(図12中符号C1参照,図1参照)。ガラス板2がストッパ8に当接して停止位置に到達すると、コンベアアクチュエータ90を停止させる。これにより、コンベア5側において、ガラス板2をトラックロボット11に渡す準備が整うこととなる。
【0059】
これと同時的に、トラックロボット11のトラックアクチュエータ91を作動させ、ベース21を前方に移動させる(図12中符号T1参照,図1二点鎖線参照)。ベース21を後方に移動させるにあたっては、リフトバー26を予め上昇させ、且つエンドエフェクタ23をファング25が前方に向けて水平に延びる姿勢となる水平位置に予め位置させておく(図12中符号T7,T8参照)。このような状態でベース21を後方に移動させると、ファング25が停止位置で停止しているガラス板2よりも下方であって、そのガラス板2を支持する複数のホイール軸7の間のスペースに挿入されていく。ベース21を可動範囲の前端位置まで移動させてそこで停止させることにより、トラックロボット11側において、ガラス板2を受け取る準備が整うこととなる。
【0060】
(収納箇所の決定)
また、ガラス板2をラック12に収納するにあたっては、当該ガラス板2を収納空間33内のどの収納位置に収納するのか、より具体的にいえば、どの上側支持部61に上縁部を支持させ、どの支持収容部62に下縁部を収容及び支持させるのかを決める。このとき、ラックロボット13のスロットアクチュエータ96を作動させ、ラックロボット13を前後に移動させる(図12中符号R1参照)。ラックロボット13を前後方向に移動させるにあたっては、予めローラビーム48を退避位置まで下降させているため(図12中符号R6参照,図4左側参照)、ローラビーム48及びローラ54がラック12又は収納済のガラス板2と干渉するおそれはない。
【0061】
制御装置100は、ラックロボット13を前後方向に移動させている間、ガラスマップセンサ106からの検出信号を参照し、収納空間33内においてガラス板2で占有されていない空間領域を探知する。制御装置100は、かかる空間領域を検知すると、スロット校正センサ108からの検出信号を参照し、かかる空間領域の周辺でガラス板2の収納位置、より具体的にいえば、空きのクリアランス74が存在する位置を精緻に探知する。かかる位置を検知すると、スロットアクチュエータ96を停止させ、ラックロボット13の移動を停止させる。
【0062】
次いで、ラックロボット13のリフトアクチュエータ97を作動させ、ラックロボット13のローラビーム57を搬入位置まで上昇させる(図12中符号R2参照)。これにより、ラックロボット13側において、ガラス板2を収納空間33内に搬入する準備が整うこととなる。このラックロボット13の動作は、前述したコンベア5及びトラックロボット11の動作と同時的に実行される。
【0063】
(ガラス板の受取り、ガラス板の収納位置への搬送)
前述したコンベア5側におけるガラス板2を渡す準備、及びトラックロボット11側におけるガラス板2の受取り準備が整い、且つラックロボット13の前後方向の移動が完了しているときには、トラックロボット11のフリップアクチュエータ92を作動させ、ファング25が起立していくようエンドエフェクタ23を揺動する(図12中符号T2参照)。この揺動を続けるに従って、ガラス板2の平面がコロ28の表面で支持され、また、ガラス板2のトラックロボット11に面した縁部が支持ブロック27で支持される。そして、この状態を維持しつつ、ガラス板2がコンベア5から離隔してファング25と共に起立していく。これによりガラス板2がコンベア5からトラックロボット11のエンドエフェクタ23に移載されたこととなる。
【0064】
そして、一旦フリップアクチュエータ92を停止し、エンドエフェクタ23の揺動を中断してエンドエフェクタ23を所定の搬送位置で停止させる(図2参照)。水平位置に位置するエンドエフェクタ23の角度位置を0度、ファング25が完全に直立したときのエンドエフェクタ23の角度位置を90度とすると、搬送位置に位置するエンドエフェクタ23の角度位置は30度から50度の範囲内にある。
【0065】
ファング25を水平位置から搬送位置まで揺動させていく途中の時点で、トラックアクチュエータ91を作動させ、ベース21を後方へ移動させる(図12中符号T3参照)。このように揺動の最中にベース21を移動させると、タクトタイムの短縮が見込まれるほか、ガラス板2に前方に向かう慣性力が作用してガラス板2がファング25及び支持ブロック27に押し付けられ、エンドエフェクタ23でガラス板2を安定して保持することができる。
【0066】
制御装置100は、ベース21を後方に移動させている間、ロボット位置合わせセンサ108を参照する。そして、ロボット位置合わせセンサ108からの入力に基づいて、トラックロボット11のローラ30がラックロボット13のローラ54と左右方向に整列するときに、トラックロボット11のトラックアクチュエータ91を停止させ、ベース21の後方移動を停止させる。
【0067】
ベース21の移動が終了すると、フリップアクチュエータ92を作動させ、ファング25が起立していくようエンドエフェクタ23の揺動を再開する(図12中符号T4参照,図13参照)。そして、フリップアクチュエータ92を停止し、エンドエフェクタ23を搬入位置で停止させる。搬入位置に位置するエンドエフェクタ23の角度位置は75度から85度の範囲内にある。このとき、ガラス板2の下縁部が支持ブロック27上に支持される。ガラス板2は完全に直立した姿勢とはならないが、直立した姿勢から水平位置寄りにやや傾倒するようにして起立している。ガラス板2が傾倒していると、ガラス板2には、その自重により、ローラ30に支持された下縁部を支点として前方に回転させようとするモーメントが作用する。ガラス板2の前方に向けられた面はコロ28の表面に当接し、回転モーメントがエンドエフェクタ23によって支持される。
【0068】
このようにエンドエフェクタ23の揺動が終了すると、リフトアクチュエータ93を作動させ、リフトバー26を下降させる(図12中符号T5参照,図13参照)。このとき、ガラス板2は、下縁部が支持ブロック27に支持され且つ前方に向けられた面がコロ28の表面に支持された状態を維持しながら、リフトバー26と共にファング25の表面25aを伝うようにして下降していく。ガラス板2の下降時には、コロ28が転動するため、ガラス板2の前方に向けられた面をエンドエフェクタ23で支持してガラス板2を安定して下降させることができ、且つ当該面に擦り傷が付くのを防ぐことができる。
【0069】
リフトバー26が可動範囲の下限まで移動すると、リフトアクチュエータ93を停止し、リフトバー26を停止させる。下降の過程において、ガラス板2の下縁部がローラ30の溝内に受容されて、この溝を規定する周面で支持される(図13参照)。これにより、トラックロボット11側において、ガラス板2を収納空間33内に搬入する準備が整うこととなる。
【0070】
(ガラス板の収納空間への搬入)
トラックロボット11側及びラックロボット13側の双方においてガラス板2の搬入準備が整うと、トラックロボット11のローラアクチュエータ94及びラックロボット13のローラアクチュエータ97を作動させ、トラックロボット11のローラ30及びラックロボット13のローラ54を互いに同方向に同速で同時的に回転させる(図12中符号T6及びR3参照)。
【0071】
すると、ガラス板2が、トラックロボット11のローラ30の回転により、収容されるべきラック本体32の搬入口34に向け、搬入方向にスライド移動する。このときにおいても、ガラス板2の前方に向けられた面はコロ28の表面で支持されているため、当該面をエンドエフェクタ23で支持してガラス板2を安定してスライド移動させることができ、且つ当該面に擦り傷が付くのを防ぐことができる。
【0072】
搬入口34を規定している上縦桁43aには支持ローラ71が設けられ、底縦桁40aにはパッド85が設けられている(図5参照)。このため、ガラス板2が搬入口34に差し掛かると、ガラス板2の上縁部が、空のクリアランス74内に即座に差し込まれる。また、ガラス板2の下縁部が、当該クリアランス74の直下に位置する下側支持部63の前方に隣接した下縁部収容部64の第2溝87内に、即座に差し込まれる。このように即座にガラス板2の上縁部及び下縁部が支持されるため、ガラス板2を収納空間33内に安定して搬入していくことができる。また、第2溝87は、クリアランス74の直下にある第1溝86に対して配列方向において外側、本実施形態においては後側に配置されている。このため、下縁部が第2溝87内に受容されて上縁部がクリアランス74内に受容されている状態では、ガラス板2は完全に直立した姿勢に対し、やや前方に傾倒した起立した姿勢となる。よって、ガラス板2が搬入口34に差し掛かったときにガラス板2の姿勢が大きく変化するようなことがなく、ガラス板2が円滑に搬入口34を通過していく。
【0073】
そして、下縁部収容部64の第2底面87aは、ローラ54の溝54aを規定する周面と上下方向において僅かに下方に位置している(図14(a)参照)。よって、第2溝87に導入されて当該第2溝87を脱したガラス板2の下縁部は、ラックロボット13のローラ54のうち搬入口34に近位に配置されたローラ54の溝54a内に上下にガタつくことなく受容される。ガラス板2の下縁部は、底縦桁40上に設けられた第2溝87と、底縦桁40の間に配置されたローラ54の溝54aとを交互に通過し、下縁部収容部64に収容されていく。
【0074】
他方、拘束溝84はクリアランス74と左右方向から見て配列方向に同位置に配置されているが、ガラス板2の上縁部は拘束溝84の下端よりも下側に位置している(図8参照,図15(a)参照)。下側支持部63よりも下方に位置する下縁部収容部64にガラス板2が収容されている状況においては、ガラス板2の上縁部は拘束部材75と係合し得ない。よって、ガラス板2の上縁部は、拘束溝84の下方末端よりも更に下側をスライド移動し、左右方向に並ぶクリアランス74内に差し込まれていく。
【0075】
制御装置100は、ガラスマッピングセンサ109からの入力を参照し、ガラス板2が収納空間33内に収納される位置に達した否かを判断する。ガラス板2が収容されると、トラックロボット11のローラアクチュエータ94及びラックロボット13のローラアクチュエータ98を停止し、ガラス板2のスライド移動を停止させる。これにより、ガラス板2の収納空間33への搬入が完了する。
【0076】
なお、ガラス板2を収納空間33内に搬入し終えた後のトラックロボット11の動作に関し、次のガラス板2の搬入を続ける場合には、トラックロボット11のリフトアクチュエータ93を作動させ、リフトバー26を上昇させる(図12中符号T7)。リフトバー26が所定位置まで上昇すると、リフトアクチュエータ93を停止し、リフトバー26の移動を停止させる。次いで、フリップアクチュエータ92を作動させ、エンドエフェクタ23を倒伏させる(図12中符号T8)。エンドエフェクタ23が水平位置まで倒伏すると、フリップアクチュエータ92を停止し、エンドエフェクタ23の揺動を停止させる。
【0077】
(ガラス板の保持)
ガラス板2を収納空間33内に搬入し終えた後には、ガラス板2がより直立に近い姿勢で起立するよう、ガラス板2の姿勢を変更させる動作が実行される。
【0078】
図14は姿勢変更時のガラス板2の下端部の動作を示す作用図、図15は姿勢変更時のガラス板2の上縁部の動作を示す作用図である。姿勢変更前においては、図14(a)及び図15(a)に示すように、ガラス板2の下縁部は下縁部収容部64の第2溝87内に収容されている。ガラス板2の上縁部はクリアランス74内に受容されて当該クリアランス74を規定する一対の支持ローラ71によって支持されているものの、拘束部材75の下方末端よりも下方に位置しており拘束部材75とは非係合となっている。
【0079】
図14(b)及び図15(b)に示すように、姿勢変更に際してまず、ラックロボット13のリフトアクチュエータ97を作動させ、ローラビーム57を上昇させる(図12中符号R4参照)。ローラビーム57が姿勢変更位置まで上昇すると、リフトアクチュエータ97を停止させ、ローラビーム57の移動を停止させる。
【0080】
この上昇の過程では、ローラ54の溝54a内に受容されているガラス板2の下縁部が下から持ち上げられ、ガラス板2の下縁部が下縁部収容部64の第2溝87から上方へと解放されていく。ローラビーム57が姿勢変更位置に位置しているときには、ガラス板2の下端部はパッド85の最上面よりも上方に位置する。
【0081】
他方、ガラス板2の上縁部も上方に移動していく。これにより、ガラス板2の上縁部は、下側から拘束部材75の拘束溝84内に進入していく。拘束溝84は、前述したように下端における前後方向の寸法がクリアランス74の前後方向の寸法よりも大きいため、ガラス板2の上縁部を拘束溝84の下部に容易に進入させることができる。そして、拘束溝84の下端を通過したガラス板2の上縁部は、拘束溝84の下部において、テーパ面82a,83aにより拘束溝84の前後方向における中央部に向かうように案内され、拘束溝84の狭幅な部分にも円滑に進入する。拘束溝84の前後方向の寸法はガラス板2の板厚と同等であるため、ガラス板2の上縁部は拘束溝84内に進入した部分において、一対の拘束片80,81により前後方向に拘束される。
【0082】
次いで、図14(c)及び図15(c)に示すように、ローラビーム49の上方への移動を終えると、ラックロボット13のスロットアクチュエータ96を作動させ、ガラス板2の上縁部が受容されたクリアランス74が配置されている側である前側に向かって、ラックロボット13を移動させる(図12中符号R5参照)。ローラ54の溝54aが下側支持部63の第1溝86の上方に位置するようになるまでラックロボット13が移動すると、スロットアクチュエータ96を停止させ、ラックロボット13の前方向への移動を停止させる。
【0083】
この前方移動の過程では、ガラス板2の下縁部はローラ54の溝54aを規定する周面により支持されている一方、ガラス板2の上縁部は拘束部材75によって前後方向に拘束されているため、ガラス板2の下縁部はローラ54に支持された状態を維持しながら前方へ移動する。他方、ガラス板2の上縁部は、前後方向への移動が拘束されるとともに拘束溝84の内部を僅かに上方に移動する。これにより、ガラス板2の姿勢が、より直立に近くなるようにして変化していく。
【0084】
前方移動が完了した状態においては、下側支持部63の第1溝86は、クリアランス74及び拘束溝84の直下に位置し、ガラス板2の下縁部はこのような第1溝86の上方に位置したローラ54の溝54aに支持されている。このため、ラックロボット13のベースを停止した時点において、ガラス板2が直立に近い姿勢で起立することとなる。
【0085】
次いで、図14(d)及び図15(d)に示すように、ラックロボット13の前方移動を終えると、ラックロボット13のリフトアクチュエータ97を作動させ、ラックロボット13のローラビーム49を下降させる(図12中符号R6参照)。ローラビームが退避位置に位置するまで下降すると、ラックロボット13のリフトアクチュエータ97を停止し、ローラビーム49の下降を停止させる。これによりガラス板2の収納空間33内における姿勢変更の動作が完了する。
【0086】
この下降の過程において、ガラス板2は、大重量を有しているため、拘束部材75による拘束力に抗して自重によってローラ54の下降に追従する。このため、ガラス板2の下縁部がローラ54の溝54a内に受容されている状態が維持される。ローラビーム49の下降が続くことにより、ガラス板2の下縁部は下側支持部63の第1溝86内に上側から進入する。そして、ガラス板2の下縁部は第1溝86の第1底面86a上に支持される。その後ローラビーム49の下降が続いても、ガラス板2の下端部はローラ54から離脱して第1底面86a上に支持された状態に保持される。
【0087】
前述したように第1底面86aは、搬入時に利用された下縁部収容部64の第2底面87aよりも上方に位置する。このため、ガラス板2の下縁部が第1底面86a上に支持されている状態では、ガラス板2の上縁部を拘束溝84内に留まらせることができ、ガラス板2の上縁部が拘束部材75によって前後方向に拘束された状態に維持される。
【0088】
下縁部収容部64は下側支持部63よりも配列方向において上側支持部61から遠ざかって配置されている。このため、下縁部が下側支持部63に支持されているときには、下縁部収容部64に収容されているときと比べ、ガラス板2の傾斜が小さくなってガラス板2がより鉛直に近い姿勢で起立する。収納空間33内への搬入完了後のガラス板2を下側支持部63に支持させることにより、ガラス板2を鉛直に起立した姿勢に近づけることができる。このように鉛直に起立する姿勢に近づけることにより、収納空間33内に収納されたガラス板2の撓みが抑えられるなど、ガラス板2を安定して保持することができるようになる。
【0089】
特に、下側支持部63を構成するパッド85が、PEEK樹脂やシリコンゴム等の高い摩擦係数を有する材料から製造されている。ガラス板2は大重量であるため、ガラス板2の自重によってガラス板2の下縁部には下側支持部63との間で大きい摩擦力が発生し、ガラス板2の下縁部を強固に保持することができる。また、下側支持部63は第1溝86を有しており、この第1溝86内にガラス板2の下縁部が受容されるようにしているため、ガラス板2の下縁部は益々強固に保持されることとなる。
【0090】
このようにガラス板2の下縁部が安定して保持される状況において、ガラス板2が鉛直に近い形で起立していれば、前方又は後方に外力が作用したときに、ガラス板2が下縁部を支点にして前傾又は後傾するおそれがある。本実施形態においては、ガラス板2の上縁部を一対の支持ローラ71により支持するだけでなく、拘束部材75によって前後方向に拘束するようにもしているため、ガラス板2が鉛直に近い形で起立した状態を安定して維持することができる。
【0091】
しかも、下縁部収容部64が下側支持部63よりも下方にあるため、下縁部収容部64を利用する搬入時には、拘束部材75によるガラス板2の拘束が行われない。よって、ガラス板2を拘束するための部材を設けているにも関わらず、ガラス板2の搬入を円滑に行うことができる。また、拘束部材75の作用を発揮させたいときに発揮させ、不要のときには発揮させないようにするという作用効果が、搬入時に利用する下縁部収容部64と、搬入を終えた後に利用する下側支持部63との上下位置を異ならせるという簡易な構造によって実現される。
【0092】
そして、この姿勢の変更の動作が、ラックロボット13により自動的に行われるため、工場1の作業員に負担をかけない。しかも、このラックロボット13は、昇降可能、前後方向に移動可能且つ前後方向に向けられた軸線回りに回転可能なローラ54を有し、当該ローラ54が、ガラス板2の下縁部を支持する支持体として機能している。これにより、ラックロボット13は、ガラス板2を収納空間33に搬入するためにも用いられ、ガラス板2の姿勢を変更するためにも用いられ、更には、ガラス板2の収納箇所を探知するためにも用いられる。このように、1枚のガラス板2を収納空間33内に収納するに際し、1台のラックロボット13が多様な役割を果たすようになっており、ラック12の全体的な構成を簡素なものとすることができる。
【0093】
このようにラック12の収納空間33内では、複数のガラス板2が鉛直に近い形で起立し且つその板厚方向に隣り合うようにして配列され、上縁部及び下縁部が強固に保持される。このため、ガラス板2をラック本体32ごと搬送しても、この搬送時にガラス板2に撓みや振動が生じるのを抑えることができる。このため、ラック12に収納されたガラス板2を後段の処理装置4に搬送する作業をフォークリフト9等の荷役機械を利用して行うことができる。したがって、工場1の作業員の負担を大幅に軽減することができ、工場1の生産効率を向上させることができる。
【0094】
[骨組み構造の変形例]
ガラス板2をラック本体32ごと搬送できるようにするため、上記実施形態ではフォークリフト9のフォークが差し込まれるフォークポケット45を設けるようにしたが、同様の作用を達成するため、例えばラック本体が基台上をスライド可能であってもよい。
【0095】
この変形例においては、図16に示すように、基台131のベッド部135の左右の縁部に、前後方向に延在する左右一対のレール121が固定される。また、ラック本体132の底部をなす底縦桁のうち、左右の端縁に位置する底縦桁140,140の下面に、前端部及び後端部において、ローラ122が設けられる。ラック本体132を基台131上に支持するときに、ローラ122がレール内121で転動可能に受容される。これにより、ラック本体132がレール121に沿って基台131上を前後方向にスライド可能となる。
【0096】
また、図16に示すように、ラック112に、ガラス板2の側縁部を拘束するためのサイドクランパ123が設けられてもよい。サイドクランパ123は、左右の端縁に設けられる柱の間に架け渡される。例えばサイドクランパ123は、帯状のベースプレート123aと、シリコンゴム等の弾性(すなわち防振性)を有した緩衝部材123bとを有し、緩衝部材123bが、ベースプレート123aの平面のうち収納空間33に面する側の平面に貼り付けられる。緩衝部材123bが収納空間33内に収納されたガラス板2の側縁部に当接するようにしてサイドクランパ123を設置することにより、ガラス板2の撓み及び振動の抑制効果を高めることができる。
【0097】
このサイドクランパ123は、取外し可能に設けられ、フォークリフト9あるいは基台131上のスライド移動によってガラス板2をラック本体132ごと搬送する前に取り付けられることが好ましい。これにより、ガラス板2の収納空間33への搬入、収納空間33内での姿勢変更の動作を妨げることがない。このようにサイドクランパ123をラック112に取外し可能とするため、ラック本体132の柱41には、サイドクランパ123のベースプレート123aを係止するためのフック等の係止具124が設けられていることが好ましい。
【0098】
[拘束部材の変形例]
図17は拘束部材275の変形例を示している。図17に示すように、拘束部材275は、ラック本体232の上縦桁243を上下に貫通する貫通孔221内に上縦桁243の上側から挿通されるシャンク222を有しており、このシャンク222の下端部は上縦桁243の下面側の収納空間33内に配置されている。シャンク222の下端部には断面略矩形状の拘束片280が固定されている。拘束片280の下面には左右方向に延びる拘束溝284が形成されている。他方、上縦桁243に形成された貫通孔221は上部と下部とで径が異なっており、上部は下部よりも大きい径を有している。この大径となる貫通孔221の下部には、コイルスプリング223が収容されている。コイルスプリング223はシャンク222を外囲するよう設けられ、コイルスプリング223の軸線方向一端部は、貫通孔221の上部と下部との境界部に形成されたリング状のバネ座に固定され、軸線方向他端部は拘束片280の上面に固定されている。拘束片280及びシャンク222はコイルスプリング223により下方に付勢される。他方、シャンク222の上端部には、径方向に突出する鍔部224が形成されており、鍔部224は貫通孔221の上部よりも大きい径を有している。このため、コイルスプリング223により付勢されるシャンク222及び拘束片280は、常には、鍔部224と上縦桁243の上面とが当接することによって下方への移動が規制される。
【0099】
このような拘束部材275を有する場合においても、ガラス板2の搬入時には下縁部収容部が利用される。このとき、ガラス板2の上縁部は、拘束片280の拘束溝284よりも下方に位置する。ガラス板2の搬入を終えた後に、ガラス板2の下縁部を下側支持部に支持させることにより、ガラス板2の上縁部が上方に移動する。このとき、ガラス板2の上縁部が拘束溝284内に下側から進入し、拘束片280及びシャンク222をコイルスプリング223の付勢力に抗して上方に移動させる。ガラス板2の下縁部が下側支持部に支持されると、コイルスプリング223は圧縮された状態となる。これによりガラス板2には、コイルスプリング223の付勢力により下方に押圧される。このように本変形例においては、コイルスプリング223の付勢力を利用して起立したガラス板2を上下方向に拘束することができる。
【0100】
[下側支持部の変形例]
図18〜図20は、支持収容部362,462,562の変形例を示している。上記実施形態では、下側支持部63の第1溝86が円弧状の断面形状を有しているが、第1溝386及び第1底面386aの断面形状は上記のものに限られず、図18に示すように例えばV状であってもよい。なお、下縁部収容部64の溝87及び第2底面87aの形状についても適宜変更可能である。
【0101】
図19に示す下側支持部は、図6に示した上記実施形態と比較して、より好適な形態である。つまり、上記実施形態では、下側支持部63及び下縁部収容部64がいずれもラック12に収納されるべきガラス板2の枚数と同数だけ設けられているが、図19においては、下縁部収容部64の個数が上記実施形態と比べて減少している。具体的には、下側支持部463の個数を変化させないようにしたうえで、下縁部収容部464が、全ての下側支持部463のうちの幾つか(本実施形態では3つ)の下側支持部463に対応して1つずつ設けられる。すなわち、ガラス板2の収容可能枚数と同数(例えばNとする)の下側支持部463が、配列方向に連続する2つ以上(例えばnとする、本実施形態ではn=3)の下側支持部463からなる1つ以上の(すなわち、N/n)のグループに分かれており、当該グループと下縁部収容部464とが1対1で対応するように設けられている。これにより、下縁部収容部464の個数を当該グループに含まれる下側支持部463の逆数(1/n)分だけ減らすことができる。これにより、同一のガラス板2を収納するにあたって、収納空間33をガラス板2の配列方向においてコンパクトにすることができる。逆に言えば、収納空間33の配列方向における単位寸法当たりに収容可能なガラス板2の枚数を増加させることができる。また、図19は、上記グループの各々に2つ以上の下側支持部463が含まれている旨を、ガラス板2の配列方向に並ぶ複数の溝により、明確に図示している。このようにして、各下側支持部463が溝を有しているとの構成により、上記実施形態と同様、直立するガラス板2の下縁部を強固に支持することができるようになる。
【0102】
また、図20に示すように、底縦桁540上にブロック状の揺動部材521を設け、この揺動部材521の揺動位置に応じて搬送時に利用される下縁部収容部564が形成される状態と、搬送を終えた後に利用される下側支持部563が形成される状態とを切り替え可能にしてもよい。揺動部材521の操作は手動で行ってもよいし、ラックロボット13の動作を利用して自動的に行ってもよい。
【0103】
なお、下側支持部63においてガラス板2が支持される第1底面が、下縁部収容部64の第2底面よりも上方に位置しているのであれば、下側支持部63は必ずしも溝を有していなくてもよい。
【0104】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、上記構成は本発明の範囲内において適宜変更可能である。また、本発明に係る移載設備は、液晶パネル等の他の板状の部材を生産する工場にも好適に設けられるし、本発明に係る板状部材は、基板であるガラス板2に限らず、完成品である太陽光パネルや液晶パネルであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、板状部材を起立姿勢で安定して搬送することと、ラック内に収納された板状部材を起立姿勢で安定して保持することとを両立させることができ、太陽光パネル及びその基板となるガラス板等、大型且つ大重量の板状部材を収納するための装置及び方法に適用すると有益である。
【符号の説明】
【0106】
2 ガラス板(板状部材)
10 移載設備
11 トラックロボット(移載装置)
12 ラック
13 ラックロボット(姿勢変更機構)
31 基台
32 ラック本体
33 収納空間
34 搬入口
61 上側支持部
62 支持収容部
63 下側支持部
64 下縁部収容部
71 支持ローラ
74 クリアランス
75 拘束部材
80,81 拘束片
82,83 対向面
82a,83a テーパ面
84 拘束溝
85 パッド
86 第1溝
86a 第1底面
87 第2溝
87a 第2底面
94 ローラアクチュエータ
96 トラックアクチュエータ(第1駆動部)
97 リフトアクチュエータ(第2駆動部)
98 ローラアクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状部材を起立させ且つその板厚方向に隣り合うように配列方向に並べて収納する収納空間、及び前記収納空間内に板状部材を前記配列方向と交差する水平な搬入方向に搬入させるための搬入口を有するラック本体と、
前記収納空間に前記搬入方向から見て前記配列方向に配置され、前記複数の板状部材の上縁部をそれぞれ支持する複数の上側支持部と、
前記収納空間に前記複数の上側支持部の下方に設けられ、前記起立させられた複数の板状部材の下縁部を支持する下側支持部と、
前記収納空間に、前記配列方向において前記複数の上側支持部の端及び前記下側支持部の端より外側に設けられ、前記搬入口から前記収納空間内に搬入される板状部材の下縁部を収容する下縁部収容部と、を備え、
少なくとも1つの前記上側支持部は、前記搬入され前記下縁部収容部にその下縁部が収容された前記板状部材の上縁部を該板状部材が傾いた状態で支持することが可能なように構成されている、板状部材収納用ラック。
【請求項2】
前記搬入方向から見て前記配列方向において前記上側支持部と同位置に設けられた拘束部材を更に備え、
前記拘束部材は、板状部材の下縁部が前記下縁部収容部に収容されているときには当該板状部材と非係合となり且つ板状部材の下縁部が前記下側支持部に支持されているときには当該板状部材の上縁部を拘束するように、前記ラック本体に設けられている、請求項1に記載の板状部材収納用ラック。
【請求項3】
前記拘束部材は、前記配列方向に互いに離れた一対の拘束片を有し、
前記下側支持部に支持されている板状部材の上縁部が、前記一対の拘束片の間に形成される拘束溝に嵌まり込んで前記一対の拘束片によって拘束される、請求項2に記載の板状部材収納用ラック。
【請求項4】
前記一対の拘束片が、互いに対向する対向面をそれぞれ有し、
一対の前記対向面の少なくとも一方の下端部には、前記拘束溝の前記配列方向における寸法が下方に向かうに従って大きくなるよう、テーパ面が形成されている、請求項3に記載の板状部材収納用ラック。
【請求項5】
前記下縁部収容部が、前記下側支持部よりも低く配置されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の板状部材収納用ラック。
【請求項6】
前記下側支持部が、板状部材の下縁部が係合する溝を有している、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の板状部材収納用ラック。
【請求項7】
前記下側支持部が、前記収納空間が許容する板状部材の収納可能枚数に対応する数だけ設けられ、当該収納可能枚数に対応する数の下側支持部が前記配列方向に連続する2つ以上の下側支持部からなる1つ以上のグループに分かれており、前記グループと前記下縁部収容部とが1対1で対応するように設けられている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の板状部材収納用ラック。
【請求項8】
昇降自在に設けられた支持体を備え、前記支持体を前記下縁部収容部内に位置させて前記搬入口から前記収納空間内に搬入される板状部材の下縁部を該支持体に支持させ、その後、前記収納空間内に搬入された板状部材を下から持ち上げ、板状部材の下縁部が前記支持体に支持されている状態から前記下側支持部に支持されている状態へと変更させるよう前記支持体を移動させる姿勢変更機構、を更に備える、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の板状部材収納用ラック。
【請求項9】
前記姿勢変更機構が、前記ラック本体の下部に設けられ、前記上側支持部及び前記下側支持部に支持された板状部材を前記配列方向に移動させることが可能に構成されている、請求項8に記載の板状部材収納用ラック。
【請求項10】
前記姿勢変更機構は、前記支持体を上下方向に移動させる第1駆動部と、前記支持体を前記配列方向に移動させる第2駆動部とを有する、請求項8又は9に記載の板状部材収納用ラック。
【請求項11】
前記ラック本体の底部をスライド可能に支持する基台、を更に備える、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の板状部材収納用ラック。
【請求項12】
請求項1に記載の板状部材収納用ラックと、
前記板状部材収納用ラックに板状部材を搬入し又は前記板状部材収納用ラックから板状部材を搬出する移載装置と、を備える、板状部材移載設備。
【請求項13】
複数の板状部材を起立させ且つその板厚方向に隣り合うように配列方向に並べて収納する収納空間、及び前記収納空間内に板状部材を前記配列方向と交差する水平な搬入方向に搬入させるための搬入口を有するラック本体と、
前記収納空間に前記搬入方向から見て前記配列方向に配置され、前記複数の板状部材の上縁部をそれぞれ支持する複数の上側支持部と、
前記収納空間に前記複数の上側支持部の下方に設けられ、前記起立させられた複数の板状部材の下縁部を支持する下側支持部と、
前記収納空間に、前記配列方向において前記複数の上側支持部の端及び前記下側支持部の端より外側に設けられ、前記搬入口から前記収納空間内に搬入される板状部材の下縁部を収容する下縁部収容部と、を備える板状部材収納用ラックに板状部材を収納するための方法であって、
起立させた板状部材の上縁部を前記上側支持部に支持させかつ当該板状部材の下縁部を前記下縁部収容部に収容させるようにして当該板状部材を、前記挿入口を介して前記収納空間内へと前記搬入方向に沿って搬入し、
前記収納空間内に収納された板状部材を前記下縁部収容部から持ち上げ、
該持ち上げた板状部材の下縁部を前記配列方向に移動させ、
該移動させた板状部材を降ろして板状部材の下縁部を前記下側支持部に支持させる、板状部材収納方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−46331(P2012−46331A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190687(P2010−190687)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】