説明

果柄切断機構

【課題】果柄の損傷を抑制する。
【解決手段】第1フィンガ52aの第2フィンガ52bと対向する一部に、Z’方向から見て+X’方向に凹んだ凹部152aを形成して、当該凹部を+Z’方向から覆うように切断刃64を設けるとともに、切断刃の刃先を、第1フィンガの−X端面(凹部152a以外の部分)と面一に設定する。これにより、切断刃の刃先と第2フィンガとの間に果柄を侵入させる際の、切断刃への果柄の接触を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果柄切断機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イチゴなどの果実(作物)は、機械で扱うと傷みやすいため、人手で収穫していた。また、最近においては、養液栽培などの進歩に伴い、機械による収穫の可能性がひらけてきていることから、労働時間の大幅な削減や、労力の低減を図るための収穫装置(収穫ロボット)の開発が進められている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−95348号公報
【特許文献2】特開2009−5587号公報
【特許文献3】特開2008−206438号公報
【特許文献4】特開2008−22737号公報
【特許文献5】特開2001−145411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように人手で果実を収穫する場合や、機械を用いて果実を収穫する場合のいずれにおいても、果柄を正確に切断するためには、果柄を切断する機構の切断位置(例えば切断刃の刃先近傍)に、果柄を位置決めする必要がある。しかるに、この位置決めの際に、果柄を切断する機構の一部などに果柄や果実が接触すると、果柄のスムーズな位置決めができなくなったり、果柄や果実が損傷したりするおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、果柄の切断位置に果柄をスムーズに位置決めし、果柄の損傷を抑制することが可能な果柄切断機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の果柄切断機構は、収穫対象果実の果柄を切断する果柄切断機構であって、第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向に移動可能な第1フィンガと、前記第1フィンガの前記第2方向近傍に配置され、前記第1方向に延び、前記第2方向に移動可能な第2フィンガと、前記第1、第2方向を含む面を有するプレート形状で、前記第1方向に延びる刃先を有し、前記第1フィンガに設けられた切断刃と、を備え、前記第1フィンガの前記第2フィンガと対向する一部には、前記第1、第2方向に直交する第3方向から見て前記第2方向に凹んだ凹部が形成され、前記切断刃は、前記凹部を前記第3方向から覆うように前記第1フィンガに設けられるとともに、前記刃先が、前記第1フィンガの前記第2フィンガに対向する面のうち前記凹部以外の部分と面一又は当該部分よりも前記第2フィンガから離れた位置に設定されており、前記第2フィンガの前記凹部と対向する部分には、前記第1、第2フィンガが前記第2方向に関して接近したときに前記凹部内に侵入可能な凸部が設けられ、前記第1、第2フィンガが前記第2方向に関して接近したときに、前記凸部と前記切断刃との間の、せん断力により、前記第1、第2フィンガの間に位置する前記収穫対象果実の果柄が切断される果柄切断機構である。
【0007】
これによれば、第1フィンガの第2フィンガと対向する一部に、第3方向から見て第2方向に凹んだ凹部が形成され、当該凹部を第3方向から覆うように切断刃が設けられるとともに、切断刃の刃先が、第1フィンガの第2フィンガに対向する面(凹部以外の部分)と面一又は第2フィンガから遠い位置に設定されている。これにより、切断刃の刃先と第2フィンガとの間に、第1、第2フィンガ間から果柄を侵入させる際の、切断刃への果柄の接触を抑制することができる。したがって、果柄を切断刃の刃先と第2フィンガとの間(すなわち、果柄の切断位置)にスムーズに侵入させることができるとともに、切断刃への接触による果柄の損傷を抑制することができる。また、第2フィンガの、凹部と対向する部分に、第1、第2フィンガが接近したときに凹部内に侵入可能な凸部が設けられていることから、切断刃と凸部との間のせん断力で、果柄を切断することが可能となる。
【0008】
この場合において、前記収穫対象果実の果柄は、前記第1、第2フィンガ間に、前記第1方向一端部側から侵入し、前記第1、第2フィンガの前記第1方向一端部は、前記第1、第2フィンガが前記第2方向に関して最接近したときでも、所定の間隙が維持されることとしてもよい。
【0009】
また、本発明の果柄切断機構では、第1フィンガの凹部には、緩衝材が設けられていることとしてもよい。かかる場合には、果柄の損傷を抑制しつつ、果実を第1、第2フィンガで挟持することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の果柄切断機構は、果柄の切断位置に果柄をスムーズに位置決めし、果柄の損傷を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態のイチゴ収穫装置及び当該イチゴ収穫装置が設置された高設栽培農場の一部を示す図である。
【図2】図2(a)は、ハンド機構を+Z’方向から見た状態を示す図であり、図2(b)は、ハンド機構を−X’方向から見た状態を示す図である。
【図3】図3(a)は、第1フィンガ(切断刃及びストッパを含む)及び第2フィンガを示す斜視図であり、図3(b)は、第1フィンガを示す図であり、図3(c)は、図3(a)のB−B線断面図である。
【図4】イチゴ収穫装置の制御系を示すブロック図である。
【図5】イチゴ収穫装置の一連の処理を示すフローチャートである。
【図6】図6(a)は、イチゴの果柄が第1フィンガと第2フィンガの間に侵入した状態を示す斜視図であり、図6(b)は、図6(a)から切断刃及びストッパを取り外した状態を示す斜視図である。
【図7】図7(a)は、イチゴの果柄を切断した状態を示す斜視図であり、図7(b)は、図7(a)から切断刃及びストッパを取り外した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図7に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1には、本実施形態のイチゴ収穫装置100及び当該イチゴ収穫装置100が設置された高設栽培農場の一部が示されている。この高設栽培農場には、土耕栽培又は養液栽培によるイチゴの結実時に、イチゴが垂れ下がるように栽培するための栽培ベッド40と、この栽培ベッド40を所定高さ(例えば、1m)で支持する複数の脚43とが設けられている。この栽培ベッド40の高さは、作業者の作業性(例えば、作業者が腰をかがめたりせずに作業ができるか否か等)を考慮して設定されている。本実施形態では、栽培ベッド40の長手方向をY軸方向、短手方向をX軸方向、これらX軸及びY軸に垂直な重力方向をZ軸方向として、説明する。
【0014】
イチゴ収穫装置100は、地面上にY軸方向に沿って敷設されたレール32A,32Bと、このレール32A,32Bに沿ってY軸方向に移動する台車30と、台車30上に設けられたロボットアーム20と、ロボットアーム20の先端部に設けられた果柄切断装置としてのハンド機構10と、台車30上に設けられた、収穫したイチゴを収集するためのトレー50と、ステレオカメラ60と、を備えている。レール32A,32Bは、栽培ベッド40の長手方向(Y軸方向)の長さとほぼ同一の長さを有している。
【0015】
台車30は、2段の階段状の形状を有しており、その下側の段部30aにロボットアーム20が設けられ、上側の段部30bにトレー50が設けられている。この台車30は、駆動部106(図1では不図示、図4参照)の駆動力により、制御装置90の駆動制御部95(図1では不図示、図4参照)の指示の下、レール32A,32Bに沿って、Y軸方向に移動する。トレー50は、ウレタンなどの柔軟性を有する材料から成り、イチゴを収容可能な凹部が複数設けられている。
【0016】
ロボットアーム20は、モータドライバにより制御される電動モータによって作動する。このロボットアーム20は、それぞれ2軸回りの回転が可能な関節部を2つ有し、1軸回りの回転が可能な機構を2つ有しているため、先端部(ハンド機構10が設けられている部分)は、台車30に対し、6自由度方向に移動可能となっている。すなわち、ハンド機構10は、X軸及びY軸により規定される面(所定面)に沿って移動して、収穫対象のイチゴに接近することができるとともに、Z軸方向への移動や、X軸、Y軸、Z軸回りの姿勢を変化させることもできる。なお、ロボットアーム20の動作は、図4の制御装置90の駆動制御部95により制御される。
【0017】
ハンド機構10は、収穫対象であるイチゴの果柄を切断して、イチゴを収穫する機構である。以下、このハンド機構10について図2に基づいて詳細に説明する。図2(a)は、図1のハンド機構10の平面図であり、図2(b)は、ハンド機構10の側面図である。なお、以下においては、図2(b)の紙面上下方向をZ’軸方向、これに垂直な方向をX’軸方向、Z’軸及びX’軸に垂直な方向をY’軸方向として説明する。
【0018】
これら図2(a)、図2(b)に示すように、ハンド機構10は、第1フィンガ52a,第2フィンガ52bと、果柄検出用カメラ54と、第1、第2フィンガ52a,52bをX’方向に沿って駆動する移動部としてのエアチャック56と、エアチャック56及び果柄検出用カメラ54を支持する支持台55と、を備える。
【0019】
図3(a)には、第1フィンガ52a、第2フィンガ52bを取り出した状態が斜視図にて示されている。図3(a)に示すように、第1、第2フィンガ52a,52bは、それぞれ、第1方向としてのY’方向に延びており、第1、第2フィンガ52a,52bは、第2方向としてのX’方向に近接して配置されている。
【0020】
第1フィンガ52aの+Y’端部近傍には、図3(a)に示すように、切断刃64と、略L字状のストッパ66とが設けられている。切断刃64は、X’Y’面を有するプレート状(薄板状)の形状を有しており、その−X’端部は、Y’方向に延びた刃先(blade edge)とされている。切断刃64は、ストッパ66とともにネジにより第1フィンガ52aに固定されている。すなわち、切断刃64としては、替刃を用いることができる。ストッパ66は、イチゴの果柄を切断刃64による切断が可能な位置にとどめておく部材である。
【0021】
図3(b)には、図3(a)の第1フィンガ52aから切断刃64及びストッパ66を取り外した状態が示されている。この図3(b)に示すように、第1フィンガ52aの、第2フィンガ52bに対向する部分には、第3方向としてのZ’方向から見て、+X’方向に凹んだ凹部152aが形成されている。凹部152aには、薄板状の緩衝材62が設けられている。緩衝材62としては、例えばゴムなどを用いることができる。なお、切断刃64は、図3(a)から分かるように、凹部152aを+Z’方向から覆うように、第1フィンガ52aに固定されている。また切断刃64のY’方向に延びる刃先は、図6(a)や図2(a)から分かるように、第1フィンガ52a(凹部152a以外の部分)の−X’端面(第2フィンガ52bに対向する面)と面一に設定されている。ここで、切断刃64は、図3(a)のB−B線断面図である図3(c)に示すように、凹部152aに設けられた緩衝材62よりも−X’方向にせり出した状態となるように、第1フィンガ52aに設けられている。また、緩衝材62に対する切断刃64のせり出し量dとして、果柄の径(直径)と同程度の量を採用している。このようにすることで、切断刃64で果柄を切断するのとほぼ同時に、第1フィンガ52a(緩衝材62)と第2フィンガ52bとによる果柄の保持が可能となる。また、上記のようなせり出し量dを設定することで、緩衝材62が、果柄切断時における第1フィンガ52aと第2フィンガ52bの接近動作を妨げることがないようになっている。
【0022】
図3(a)に戻り、第2フィンガ52bの、第1フィンガ52aの凹部152aと対向する位置には、凹部152a内に侵入可能な形状を有する凸部152bが形成されている。凸部152bは、第1フィンガ52aと第2フィンガ52bとがX’方向に関して接近した状態で、凹部152a内に侵入する(図7(b)参照)。
【0023】
なお、図7(a)や図7(b)に示すように、第1フィンガ52aと第2フィンガ52bとがX’方向に関して最接近した状態では、第1フィンガ52aの+Y’端部と、第2フィンガ52bの+Y’端部との間には、間隙72が形成される。この間隙72は、イチゴの果柄の直径よりもやや大きい寸法(例えば、3mm程度)とされている。
【0024】
図2(a)、図2(b)に戻り、エアチャック56は、駆動制御部95(図4)の指示の下、第1、第2フィンガ52a,52bをX’軸方向に沿って駆動し、各フィンガ52a,52b間を接近させたり離間させたりして開閉動作を行う。具体的には、第1フィンガ52aの+X’方向への移動と第2フィンガ52bの−X’方向への移動とを同時に行うことで、第1、第2フィンガ52a,52bを開いた状態とすることができる。また、第1フィンガ52aの−X’方向への移動と第2フィンガ52bの+X’方向への移動とを同時に行うことで、第1、第2フィンガ52a,52bを閉じた状態とすることができる。
【0025】
果柄検出用カメラ54は、収穫対象のイチゴ及び当該イチゴの果柄を撮影して、当該撮影画像を、制御装置90の果柄切断位置決定部86(図4参照)に対して出力する。なお、果柄検出用カメラ54で撮影された画像は、収穫対象のイチゴの果柄の切断位置を決定するために用いられる。
【0026】
図1に戻り、ステレオカメラ60は、2つの光学系及び2つの撮像素子を用いて、XY面(所定面)に交差する方向(ここでは、Z方向)から2つの画像を同時に取得する。ステレオカメラ60は取得した画像を、制御装置90の果実3次元位置算出部84(図4参照)に対して出力する。なお、ステレオカメラ60で撮影された画像は、収穫対象のイチゴの特定、当該イチゴの3次元位置(X,Y,Z方向の位置)の特定に用いられる。
【0027】
図4には、本実施形態のイチゴ収穫装置100の制御系がブロック図にて示されている。この図4に示すように、本実施形態の制御系は、上述した各部のほか、各部を統括的に制御する制御装置90及び当該制御装置90に接続された入力装置99を含んでいる。制御装置90は、CPU、ROM、RAM等を有する情報処理装置であり、当該CPUにおいて制御プログラムが実行されることにより、図4において制御装置90のブロック中に示す各機能を実現する。具体的には、制御装置90は、果実3次元位置算出部84、果柄切断位置決定部86、及び駆動制御部95として機能する。
【0028】
果実3次元位置算出部84は、ステレオカメラ60において撮影された画像を取得し、取得した画像の画像認識を行い、当該画像認識結果(収穫対象のイチゴの3次元方向位置)を駆動制御部95に対して出力する。
【0029】
果柄切断位置決定部86は、果柄検出用カメラ54において撮影された画像を取得し、当該画像から、収穫対象のイチゴの果柄の位置を算出する。そして、果柄切断位置決定部86は、算出した果柄の位置に基づいて果柄の切断位置を決定し、当該決定結果を、駆動制御部95に対して出力する。
【0030】
駆動制御部95は、果実3次元位置算出部84及び果柄切断位置決定部86から入力された情報に基づいて、駆動部106、ロボットアーム20、エアチャック56の駆動を制御する。
【0031】
次に、上記のように構成されるイチゴ収穫装置100による処理について、図5〜図7に基づいて詳細に説明する。
【0032】
図5は、イチゴ収穫装置100による処理の一連の流れを示すフローチャートである。この図5の処理は、制御装置90の各部により実行されるものである。
【0033】
まず、図5のステップS10では、駆動制御部95が、収穫開始指示が出されたか否かを判断する。収穫開始指示は、作業者が、制御装置90に接続された入力装置99から入力するものである。駆動制御部95は、ステップS10の判断が肯定されるまで待機し、ステップS10の判断が肯定された段階で、ステップS12に移行する。
【0034】
ステップS12に移行すると、果実3次元位置算出部84が、ステレオカメラ60において撮影された画像から、収穫対象のイチゴの3次元位置を算出する。この場合、果実3次元位置算出部84は、画像からイチゴの色(赤や緑白色)を認識して、赤色果実を収穫対象のイチゴとして決定するとともに、当該収穫対象のイチゴの位置を算出する。果実3次元位置算出部84は、イチゴの3次元位置を駆動制御部95に対して出力する。
【0035】
次いで、ステップS14では、駆動制御部95が、算出された収穫対象のイチゴの3次元位置に基づいて、ロボットアーム20や駆動部106を介して、ハンド機構10を収穫対象のイチゴに接近させる。
【0036】
次いで、ステップS16では、ステップS14で収穫対象のイチゴに接近した状態のハンド機構10に搭載された果柄検出用カメラ54を用いて、画像を撮影し、当該撮影画像を用いて、果柄切断位置決定部86が、収穫対象のイチゴの果柄の位置を算出する。そして、果柄切断位置決定部86は、例えば、果柄の下端から所定高さの位置を果柄切断位置として決定する。
【0037】
次いで、ステップS20では、駆動制御部95は、ロボットアーム20を駆動して、ハンド機構10を果柄切断位置まで移動する。具体的には、駆動制御部95は、収穫対象のイチゴの果柄が、第1フィンガ52a(切断刃64の刃先)と第2フィンガ52bとの間に侵入するように、ハンド機構10を直進させる。なお、切断刃64の刃先と第2フィンガ52bとの間に果柄が位置した状態が、図6(a)に示されている。また、図6(a)の状態から、切断刃64及びストッパ66を取り去った状態が図6(b)に示されている。ここで、前述のように、切断刃64の刃先は、第1フィンガ52a(凹部152a以外の部分)の−X’端面と面一に設定されている。このような構成を採用することで、図6(a)の矢印A方向に沿って、果柄が、切断刃64の刃先と第2フィンガ52bとの間に侵入するときの、果柄と切断刃64との接触を抑制することができる。すなわち、切断刃64の刃先が第1フィンガ52aの−X’端面よりも−X’方向に存在しているような場合と比較して、果柄を切断刃64と第2フィンガ52bとの間にスムーズに侵入させることができる。
【0038】
次いで、ステップS22では、駆動制御部95は、エアチャック56を制御して、一対のフィンガ52a,52bを互いに近づく方向に移動する(閉じた状態とする)ことで、果柄を果柄切断位置にて切断する。このときの第1フィンガ52a及び第2フィンガ52bの状態が、図7(a)に示されている。この図7(a)の状態では、第1フィンガ52aの凹部152a内に、第2フィンガ52bの凸部152bが侵入した状態となる。このように、凸部152bが凹部152a内に侵入する際には、凸部152bと切断刃64とによるせん断力が果柄に作用するため、当該せん断力により、果柄が切断されることとなる。
【0039】
図7(b)には、図7(a)の状態から、切断刃64及びストッパ66を取り去った状態が示されている。この図7(b)に示すように、果柄の切断が完了した状態では、切断後の果柄(切断刃64よりも下側(−Z’側))は、緩衝材62を介して、第2フィンガ52bの凸部152bと、第1フィンガ52aの凹部152aとにより挟持される。
【0040】
なお、果柄が第1、第2フィンガ52a,52bの間に侵入したにもかかわらず、切断刃64と第2フィンガ52bとの間に侵入できなかったとしても、果柄は間隙72に位置することになる。この場合、第1、第2フィンガ52a,52b間で押しつぶされることによる果柄の損傷を回避することができる。
【0041】
図5に戻り、次のステップS24では、駆動制御部95が、ロボットアーム20を駆動して、ハンド機構10をトレー50の上方に位置決めする。そして、駆動制御部95は、エアチャック56を制御して、第1、第2フィンガ52a,52bを互いに離間する方向に移動する(開いた状態とする)ことで、ハンド機構10の保持するイチゴをトレー50上に載置する。すなわち、ステップS24の処理により、イチゴの収穫が行われる。なお、トレー50は、前述のようにウレタンなどの柔軟性を有する部材から成るため、トレー50の上方からイチゴを落下させても、イチゴは損傷しないようになっている。
【0042】
次いで、ステップS26では、駆動制御部95が、収穫終了指示が出されたか否かを判断する。ここでの判断が否定された場合には、ステップS12に戻り、次のイチゴの収穫を、前述したのと同様の方法により行う。一方、ステップS26の判断が肯定された場合、すなわち、入力装置99を介して、作業者からの収穫終了指示が入力された場合には、図5の全処理を終了する。
【0043】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、第1フィンガ52aの第2フィンガ52bと対向する一部に、+Z’(又は−Z’)方向から見て+X’方向に凹んだ凹部152aが形成され、当該凹部152aを+Z’方向から覆うように切断刃64が設けられるとともに、切断刃64の刃先が、第1フィンガ52aの−X端面(凹部152a以外の部分)と面一に設定されている。したがって、切断刃64の刃先と第2フィンガ52bとの間に果柄を侵入させる際の、切断刃64への果柄の接触を抑制することができる。これにより、果柄を切断刃64の刃先と第2フィンガ52bとの間にスムーズに侵入させることができるとともに、果柄の損傷を抑制することができる。また、本実施形態では、第2フィンガ52bの凹部152aと対向する部分に、第1、第2フィンガ52a,52bがX’方向に関して接近したときに凹部152a内に侵入可能な凸部152bが設けられていることから、上記のように、切断刃64の刃先と第1フィンガ52aの−X端面とが面一に設定されていても、問題なく、切断刃64と凸部152bとの間のせん断力で、果柄を切断することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態によると、第1、第2フィンガ52a,52bの+Y’端部は、第1、第2フィンガ52a,52bがX’方向に関して最接近したときでも、間隙72が維持される。これにより、仮に切断刃64の刃先と第2フィンガ52bとの間に果柄が侵入できず、切断刃64による切断ができなかった場合でも、間隙72に果柄が位置することになる。したがって、果柄が第1、第2フィンガ52a,52bにより押しつぶされるなどして損傷するのを、抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態によると、切断刃64は着脱自在な替刃とすることができるので、メンテナンス性を向上することが可能となる。また、本実施形態では切断刃64として替刃を用いても、上述した果柄損傷抑制の効果を得ることができる点で有効である。
【0046】
また、本実施形態では、第1フィンガ52aの凹部152aに、緩衝材62が設けられているので、果柄切断後のイチゴを確実に保持することが可能となる。
【0047】
なお、上記実施形態では、本発明の果柄切断機構が、ハンド機構に採用された場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、第1フィンガ52aと第2フィンガ52bとを人手で移動させるような、果実切断用のハサミに作用することも可能である。
【0048】
また、上記実施形態では、切断刃64の刃先と、第1フィンガ52aの−X’端面とが、面一である場合について説明したが、これに限られるものではない。切断刃64と第2フィンガ52bとの間への果柄の侵入をスムーズにするという観点からは、切断刃64の刃先が、第1フィンガ52aの−X’端面よりも+X’側の位置(第2フィンガ52bから離れた位置)に設定されていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、果柄切断機構に、緩衝材62を設けるなどして、切断後のイチゴ(切断刃64よりも下側の果柄及びイチゴ)を保持可能とした場合について説明したが、これに限られるものではなく、果柄切断機構は、果実の保持が可能でなくてもよい。この場合、緩衝材62を設けないこととしてもよい。また、この場合には、切断刃64を第1フィンガ52aの−Z’側に設けることとしても良い。
【0050】
なお、上記実施形態では、第1、第2フィンガ52a,52bの間に間隙72を設けることとしたが、これに限らず、間隙72を設けないこととしても良い。
【0051】
なお、上記実施形態では、ステレオカメラ60を用いて、収穫対象のイチゴのZ位置を検出する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、距離センサなどを用いて、収穫対象のイチゴのZ位置を検出することとしてもよい。このように距離センサ等を用いる場合には、ステレオカメラ60に代えて、通常のカメラ(1つの光学系及び1つの撮像素子を有する)を用いることとしてもよい。
【0052】
なお、上記実施形態のイチゴ収穫装置100は、ロボットアーム20が搭載された台車30が、地面上に敷設されたレール32A,32Bに沿ってY軸方向に移動することで、ロボットアーム20と、固定された栽培ベッド40とのY軸方向に関する相対移動を実現する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、特開2010−57448号公報に開示されているように、栽培ベッド40をY軸方向に移動可能に構成し、ロボットアーム20を固定とすることで、ロボットアーム20と栽培ベッド40との相対移動を実現することとしてもよい。また、栽培ベッド40とロボットアーム20の両方が、Y軸方向に移動可能であってもよい。
【0053】
なお、上記実施形態では特に言及していないが、ステレオカメラ60の近傍に撮影時の光量を確保するための光源を設けることとしてもよい。また、果柄検出用カメラ54の近傍にも、光源を設けることとしてもよい。この場合、果柄検出用カメラ54の近傍には、緑色の光を照射する光源を設けることとしてもよい。緑色の光を照射する光源を設けることで、果柄や蔕など、緑色の部分の検出を高精度に行うことが可能となる。
【0054】
なお、上記実施形態では、本発明の果柄切断装置を、イチゴの果柄切断に用いる場合について説明したが、これに限らず、ブドウやモモ、ナシ、リンゴなどのその他の果物や、トマト(房取り)やナス、キュウリ、ゴーヤなどの野菜の果柄切断に用いることとしてもよい。
【0055】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 ハンド機構(果柄切断機構)
52a 第1フィンガ
52b 第2フィンガ
56 移動部(エアチャック)
62 緩衝材
64 切断刃
72 間隙
152a 凹部
152b 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫対象果実の果柄を切断する果柄切断機構であって、
第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向に移動可能な第1フィンガと、
前記第1フィンガの前記第2方向近傍に配置され、前記第1方向に延び、前記第2方向に移動可能な第2フィンガと、
前記第1、第2方向を含む面を有するプレート形状で、前記第1方向に延びる刃先を有し、前記第1フィンガに設けられた切断刃と、を備え、
前記第1フィンガの前記第2フィンガと対向する一部には、前記第1、第2方向に直交する第3方向から見て前記第2方向に凹んだ凹部が形成され、
前記切断刃は、前記凹部を前記第3方向から覆うように前記第1フィンガに設けられるとともに、前記刃先が、前記第1フィンガの前記第2フィンガに対向する面のうち前記凹部以外の部分と面一又は当該部分よりも前記第2フィンガから離れた位置に設定されており、
前記第2フィンガの前記凹部と対向する部分には、前記第1、第2フィンガが前記第2方向に関して接近したときに前記凹部内に侵入可能な凸部が設けられ、
前記第1、第2フィンガが前記第2方向に関して接近したときに、前記凸部と前記切断刃との間の、せん断力により、前記第1、第2フィンガの間に位置する前記収穫対象果実の果柄が切断されることを特徴とする果柄切断機構。
【請求項2】
前記収穫対象果実の果柄は、前記第1、第2フィンガ間に、前記第1方向一端部側から侵入し、
前記第1、第2フィンガの前記第1方向一端部は、前記第1、第2フィンガが前記第2方向に関して最接近したときでも、所定の間隙が維持されることを特徴とする請求項1に記載の果柄切断機構。
【請求項3】
前記第1フィンガの凹部には、緩衝材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の果柄切断機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−110257(P2012−110257A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260549(P2010−260549)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(508134337)シブヤ精機株式会社 (20)
【Fターム(参考)】