説明

柱と梁の接合構造

【課題】応力の伝達を鋼管柱のみで行うのではなく、柱全体として行うことができる柱と梁の接合構造を提供することである。
【解決手段】柱と梁の接合構造は、柱主筋5とフープ筋6とからなる補強鉄筋3が配筋され、かつコンクリート4が充填された鋼管柱1に鉄骨梁2が接続され、該鉄骨梁2が接続された鋼管柱1の内側面にコッター部材8が突設され、該コッター部材8がフープ筋6の側面に形成された凹部7に挿入されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は柱と梁の接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の柱と梁の接合構造においてダイアフラムを用いずに梁を接合するには、図8の(1)に示すように、鋼管柱22の肉厚を厚く(増厚)して、内部にコンクリート23を充填していた。また、その他の柱と梁の接合構造としては、例えば特開2005−220597号の発明が知られている。
【特許文献1】特開2005−220597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の柱と梁の接合構造においては鋼管柱にコンクリートを充填しても、梁接合部の応力伝達には充填コンクリートがほとんど寄与せず、鋼管のみで負担する応力状態となっているため接合部の構造性能の向上を図ることができなかった。特に、接続される梁の幅が小さい場合は、図8の(2)に示すように、鋼管柱の面外変形を抑えることが困難となって梁端部に応力が集中してしまうため、大梁の持っている耐力も十分に発揮することができなかった。また、鋼管柱のみで応力の伝達を行うため十分な接合部耐力と剛性とを確保するには相当量の鋼管厚を確保しなければならなかった。
【0004】
本願発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、応力の伝達を鋼管柱のみで行うのではなく、柱全体として行うことができる柱と梁の接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための柱と梁の接合構造は、主筋とフープ筋とからなる補強鉄筋が配筋され、かつコンクリートが充填された鋼管柱に鉄骨梁が接続され、該鉄骨梁が接続された鋼管柱の内側面にコッター部材が突設され、該コッター部材がフープ筋の側面に形成された凹部に挿入されてなることを特徴とする。またコッター部材は鋼板の両面に鉄筋を設けた鉄筋付鋼板、鋼板の両面にリブを設けたリブ付鋼板、頭付スタッドのいずれかを含むものである。
【発明の効果】
【0006】
鋼管柱のみでなく、コッター部材から充填コンクリートおよび補強鉄筋を介して応力の伝達ができるため鋼管柱の増厚量を大幅に抑えることができる。またコッター部材を鋼管柱の内側面の中央部に設けているため、梁応力による鋼管柱の面外変形を抑えることができる。また鋼管柱の面外応力を抑えることが梁端部の応力集中を緩和するため、従来の増厚ダイアフラムに比べて梁耐力を効率よく発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本願発明の柱と梁の接合構造の実施の形態について説明する。各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。
【0008】
図1〜図3は鋼管柱1の四側面に鉄骨梁2が接合された柱と梁の接合構造であり、鋼管柱1内に補強鉄筋3が配筋されるとともに、コンクリート4が充填されて構成されている。この補強鉄筋3は柱主筋5と、この柱主筋5に配筋されたフープ筋6とからなり、該フープ筋6の側面中央部に内側へ窪んだ凹部7が形成されている。この凹部7にはコッター部材8が挿入されて鋼管柱1と補強鉄筋3およびコンクリート4との一体化を図っている。
【0009】
このフープ筋6の側面中央部には内側に窪んだ凹部7が形成されており、図4の(1)に示すように、4本のC形鉄筋9、10を用いて形成されている。これは二本のC形鉄筋9を縦側にして適宜間隙をもって背中合わせ(開口側を外側に向けて)に並べるとともに、他の二本のC形鉄筋10を、前記二本のC形鉄筋9と交差させて横側に適宜間隙をもって背中合わせ(開口側を外側に向けて)に並べ、各C形鉄筋9、10の先端部同士を重ね継ぎ手すると、4つの凹部7と4つの小フープ11とからなるフープ筋6が形成される。この重ね継ぎ手は、図面においては横方向(左右)で行っているが、もちろん上下で行うこともできる。
【0010】
そして、この4つの小フープ11に柱主筋5を挿入すると、該柱主筋5に適宜間隔をもってフープ筋6が配筋された補強鉄筋3が形成され、各フープ筋6の側面には凹部7が形成されている。この凹部7は鋼管柱1の内側に突設されたコッター部材8が挿入されるため、補強鉄筋3は鋼管柱1の上面から挿入することができる。
【0011】
また図4の(2)は、他のフープ筋12を示したものであり、一本の鉄筋で側面中央部に凹部7を形成したものであり、端部は上記と同じ方法で接合するものとする。
【0012】
前記のコッター部材8は、図5に示すように、鉄骨梁2が接合される鉄骨柱1の内側面の中央部に突設されるものであり、鋼板15の両面に6本(片面3本ずつ)の異形鉄筋16を設けて形成されている。なお鉄筋量は取り付ける鉄骨梁2の大きさによって適宜決定する。これによりコンクリート4との付着が強固になるため、鉄骨柱1とコンクリート4と補強鉄筋3との一体化が図れる。
【0013】
このコッター部材8は、上記の他に、図6に示すように、鋼板15の両面にリブを設けたリブ付鋼板17や頭付スタッド18であってもよく、これらもフープ筋6の凹部7に挿入される。
【0014】
また図7の(1)は三方向に鉄骨梁2が接合された柱と梁の接合構造19、同図の(2)は二方向に鉄骨梁2が接合された柱と梁の接合構造20をそれぞれ示したものであり、鉄骨梁2が接合された箇所にのみコッター部材8が突設され、このコッター部材8がフープ筋6の凹部7に挿入されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】柱と梁の接合構造の横断面図である。
【図2】柱と梁の接合構造の縦断面図である。
【図3】柱と梁の接合構造の斜視図である。
【図4】(1)および(2)はフープ筋の平面図である。
【図5】コッター部材の斜視図である。
【図6】(1)および(2)は他のコッター部材の斜視図である。
【図7】(1)および(2)は柱と梁の接合構造の横断面図である。
【図8】(1)および(2)は従来の柱と梁の接合構造の横断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1、22 鋼管柱
2 鉄骨梁
3 補強鉄筋
4、23 コンクリート
5 柱主筋
6、12 フープ筋
7 凹部
8 コッター部材
9、10 C形鉄筋
11 小フープ
13 鉄筋
14 フープ
15 鋼板
16 異形鉄筋
17 リブ付鋼板
18 頭付スタッド
19、20 柱と梁の接合構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主筋とフープ筋とからなる補強鉄筋が配筋され、かつコンクリートが充填された鋼管柱に鉄骨梁が接続され、該鉄骨梁が接続された鋼管柱の内側面にコッター部材が突設され、該コッター部材がフープ筋の側面に形成された凹部に挿入されてなることを特徴とする柱と梁の接合構造。
【請求項2】
コッター部材は鋼板の両面に鉄筋を設けた鉄筋付鋼板、鋼板の両面にリブを設けたリブ付鋼板、頭付スタッドのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の柱と梁の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−291803(P2007−291803A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123339(P2006−123339)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】