核医学診断装置及び核医学診断装置における放射線検出器の識別方法
【課題】位置分解能を向上することができ、精度の高い機能画像を得る核医学診断装置を提供することを課題とする。
【解決手段】放射線を検出して検出信号を出力する複数の第1半導体放射線検出器21aと、第1半導体放射線検出器21aと極性の異なる検出信号を出力する複数の第2半導体放射線検出器21bと、対となる第1半導体放射線検出器21a、及び第2半導体放射線検出器21bにそれぞれ接続され、検出信号の極性の違いに基づいて、それらの半導体放射線検出器のうち、放射線を検出した半導体放射線検出器を識別する信号処理装置を備えることによって、上記課題を解決することができる。
【解決手段】放射線を検出して検出信号を出力する複数の第1半導体放射線検出器21aと、第1半導体放射線検出器21aと極性の異なる検出信号を出力する複数の第2半導体放射線検出器21bと、対となる第1半導体放射線検出器21a、及び第2半導体放射線検出器21bにそれぞれ接続され、検出信号の極性の違いに基づいて、それらの半導体放射線検出器のうち、放射線を検出した半導体放射線検出器を識別する信号処理装置を備えることによって、上記課題を解決することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核医学診断装置及び核医学診断装置における放射線検出器識別方法に係り、特に、陽電子放出型断層撮像(Positron Emission computed Tomography 、以下、
「PET」という。)装置及び単光子放出型断層撮像(Single Photon Emission ComputedTomography、以下、「SPECT」という。) 装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体である被検診者の体内を非破壊で撮像する技術として、放射線を用いた検査技術がある。放射線検査装置の代表的なものとして、PET装置,SPECT装置のような核医学診断装置がある。核医学診断装置では、X線CTでは得ることができない機能画像を得ることができる。医師は、作成された機能画像を基づいて、分子生物学レベルでの機能や代謝を判断できる。
【0003】
PET検査は、陽電子放出核種(15O,13N,11C,18F等)を含む放射性薬剤(以下、PET用薬剤という)を被検体に投与し、特定の部位(たとえばがん細胞)に集積したPET用薬剤に起因して、被検診者の患部から放射されるγ線を放射線検出器で検出する検査である。代表的なPET用薬剤として、フルオロ・デオキシ・グルコース(2−[F−18]fluoro-2-deoxy-D-glucose、18FDG)がある。PET用薬剤に含まれる陽電子放出核種から放射される陽電子が、近傍に存在する電子と対消滅する際に、511keVのエネルギーをもつ、一対のγ線がほぼ180°反対の方向に放射される。この一対のγ線を検出した一対の放射線検出器から出力されたそれぞれの検出信号に基づいて、PET用薬剤の集積位置、すなわち被検診者におけるがんの患部を含む機能画像(以下、PET画像という。)を作成する。
【0004】
特許文献1は、板状の半導体材料Sからなる半導体放射線検出素子の両面を薄板状の電極(アノード電極A,カソード電極C)で覆った構成を有する半導体放射線検出器を備える核医学診断装置を記載している。この半導体部材Sは、γ線と相互作用を及ぼして電荷を生成するCdTe(テルル化カドミウム),TlBr(臭化タリウム),GaAs(ガリウム砒素)等で構成され、アノード電極A及びカソード電極Cは、Pt(白金),Au(金),In(インジウム)等のいずれかの材料が用いられている。
【0005】
また、特許文献2は、半導体部材、半導体部材の対向する二面にそれぞれバイアス電極及び信号取り出し電極を備える放射線検出器を備える核医学診断装置を記載し、信号電極は隣り合うペアの半導体部材で共有する。特許文献2は、隣り合う一方の半導体部材に第1バイアス電圧を印加し、他方の半導体部材に第1バイアス電圧と同極性の異なる電圧である第2バイアス電圧を印加して、いずれの半導体部材に放射線が入射したかを判別する。バイアス電圧が異なると、半導体部材から取り出される検出信号のチャージアップ時間に差が生じるため、チャージアップの時間差に基づいて、放射線線を検出した半導体部材を判別している。
【0006】
【特許文献1】特開2005−106644号公報
【特許文献2】特開平11−281747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、特許文献2の構成を検討した結果、一対の半導体放射線検出器に同極性の異なる電圧を印加した場合、「位置分解能が低下する」との新たな課題を見出した。その検討結果を以下に説明する。半導体から出力される検出信号には、電子に起因する電荷信号、及び正孔に起因する電荷信号がある。電子と正孔はその移動度が異なるため、それぞれに起因した電荷信号が所定の値まで立ち上がるのに要する時間(以下、立ち上がり時間という。)に差が生じる。半導体部材に放射線が入射したときに出力される電荷信号の時間変化を示す模式図を図1に示す。図1のaが電子の寄与率が高い場合の電荷信号であり、図1のbが正孔の寄与率が高い場合の電荷信号である。電子の寄与率が高いと電荷信号の立ち上がりは早くなる。また、正孔の寄与率が高いと電荷信号の立ち上がりは遅くなる。2種の閾値を用いて立ち上がり時間を求める場合、立ち上がり時間はTE0〜TH0まで変動する(図1参照)。印加するバイアス電圧が低い場合の電荷信号の時間変化の模式図を図2に示す。この場合、立ち上がり時間はTE1〜TH1まで変動する。従って、ペアとなる半導体部材に同極性の異なる電圧を印加して、放射線を検出した半導体部材を識別するには、立ち上がり時間をTH0<TE1とする必要がある。電子の移動度と正孔の移動度は10倍程度異なるため、立ち上がり時間がTH0<TE1となるには、ペアとなる半導体部材の一方のバイアス電圧が、他方のバイアス電圧の10分の1以上となる必要がある。半導体部材に印加するバイアス電圧を数百Vとすることで、核医学診断装置としての測定精度(例えば、時間分解能やエネルギー分解能)を高く保つことができる。バイアス電圧が数百V以上、及び数百V以下であると計測精度は低下するため、10倍以上の電圧差の2種のバイアス電圧を印加する事は困難である。使用可能なバイアス電圧内で2種の異なる電圧を印加した場合は、TH0>TE1となり、TE1〜TH0の立ち上がり時間の場合半導体部材を識別する事が出来ない。
【0008】
そのように、隣り合うペアの半導体部材に同極性の異なる電圧を印加すると、放射線を検出した半導体部材を判別することが困難となり、位置分解能の低下につながることが判明した。
【0009】
本発明の目的は、位置分解能を向上できる核医学診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成する第1発明の特徴は、放射線を検出して検出信号を出力する複数の第1半導体放射線検出器と、第1半導体放射線検出器と極性の異なる検出信号を出力する複数の第2半導体放射線検出器と、対となる第1半導体放射線検出器、及び第2半導体放射線検出器に接続され、検出信号の極性の違いに基づいて、放射線を検出した半導体放射線検出器を識別する信号処理装置を備えることにある。
【0011】
また、前記の目的を達成する第2の発明の特徴は、放射線を検出して負の検出信号を出力する複数の第1半導体放射線検出器と、放射線を検出して正の検出信号を出力する複数の第2半導体放射線検出器と、対となる第1半導体放射線検出器、及び第2半導体放射線検出器に接続され、検出信号の極性の違いに基づいて、放射線を検出した前記半導体放射線検出器を識別する手段を備えることにある。
【0012】
第1発明及び第2発明によれば、対となる半導体放射線検出器から出力される極性の異なる検出信号に基づいて放射線を検出した半導体放射線検出器を識別するため、正孔と電子の電荷収集率の違いによる位置分解能の低下を防止でき、作成される機能画像が鮮明になる。これにより、例えば小さな癌の位置などを正確に判断できる機能画像を提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、位置分解能を向上することができ、精度の高い機能画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて実施例を説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の好適な一実施例である核医学診断装置を、図面を用いて説明する。本実施例では、核医学診断装置であるPET装置を例にとって説明する。なお、アナログASIC
(Application Specific Integrated Circuit )は、アナログ信号を処理する、特定用途向けICであり、LSIの一種である。
【0016】
図3に示すように、PET装置1は、カメラ(撮像装置)11,データ処理装置(データ蓄積装置)12,表示装置13及びベッド14を備えている。
【0017】
データ処理装置12は、記憶装置(図示せず)、同時計測装置12A、及び断層像情報作成装置12Bを有する(図4)。カメラ11が、同時計数装置12Aに接続される。同時計数装置12Aは、断層像情報作成装置12Bに接続される。断層像情報作成装置12Bが、表示装置13に接続される。
【0018】
カメラ11は、図5に示すように、ユニット支持部材46,検出器ユニット2、及び蓋11aを有する。ユニット支持部材46は、中空の円盤状(ドーナッツ状)をしており、カメラ11の周方向に検出器ユニット2を装着する窓(開口)47を有する(図5)。窓47は、装着する検出器ユニット2の数だけ設けられる。検出器ユニット2は、窓47からカメラ11の内部に挿入され、ユニット支持部材46によって支持される(図6)。検出器ユニット2を片持支持するため、ストッパとなるフランジ47を、検出器ユニット2の筐体30の、ベッド14の長手方向手前側に設ける。複数の検出器ユニット2をユニット支持部材46に装着することによって、検出器ユニット2は、ベッド14の周囲を取り囲むように配置される。カメラ11に検出器ユニット2を装着する場合は、蓋11aを取り外して、ユニット支持部材46を露出させる。検出器ユニット2は、検出器ユニット2のフランジ47がユニット支持部材46に当たるまでユニット支持部材46の窓47内に差し込んで装着される。カメラ11と検出器ユニット2のコネクタを接続することによって、カメラ11と検出器ユニット2の信号及び電源が接続される。カメラ11は、検出器ユニット2が周方向に30〜40個着脱自在に配置された構成をしており、保守点検が容易なようにされている。
【0019】
検出器ユニット2は、図7に示すように、複数の結合基板20(本実施例では10枚),電圧調整装置63,ユニット統合用の集積回路であるユニット結合FPGA(以下、
FPGAという。)31,コネクタC3,38,42,43,筐体(収納部材)30,天板30a、及び仕切り板50を備える。天板30aは、筐体30の上端にネジ等で着脱自在に取り付けられ、ユニット結合FPGA(Field Programmable Gate allay) 31、及びコネクタC3,38,42,43を備える。なお、筐体30の上部,下部とは、筐体30をカメラ11から取り出した場合のことであり、図4に示すように、筐体30がカメラ
11に備えられた場合には、上下が反転したり、上下が90°回転して左右になったり、或いは斜めになったりする。
【0020】
筐体30は、内部に、複数の結合基板20,仕切り板50、及び電圧調整装置63を収納する。結合基板20には、半導体放射線検出器21(以下、検出器21という。)が設けられているため、筐体30は、アルミニウムやアルミニウム合金といった遮光性を有する材料で構成されると共に、光が侵入する隙間をなくす構成とする。結合基板20は、それぞれの基板面が筐体30の長手方向を向いて配置され、その長手方向において並列に配置される。仕切り板50は、結合基板20と電圧調整装置63の間に配置され、電圧調整装置63で発生するノイズを遮蔽し、結合基板20(特に、検出器21及びアナログ
ASIC24)に伝わるのを防ぐ。電圧調整装置63は、コネクタ42及びコネクタ38を介して、ACDC(Alternating Current Direct Current)コンバータ(図示せず)に接続される。電圧調整装置63は、ACDCコンバータから供給される中電圧ないし高電圧を調整する機能を有する。具体的には、電圧調整装置63は、検出器21に対してマイナスの高電圧を印加するマイナス高電圧電源装置(マイナスHV電源、図9)48,別の検出器21に対してプラスの高電圧を印加するプラス高電圧電源装置(プラスHV電源、図9)49、及びASIC基板20Bに設けられたアナログASIC24,ADC25及びディジタルASIC26等に電圧を印加するASIC電圧供給電源装置としての機能を有する。電圧調整装置63は、天板30aに設けられたコネクタ43及び配線を介し、
10個のコネクタC3に接続される。コネクタC3は、ASIC基板20B(図8)、コネクタC2に接続され、結合基板20(ASIC基板20B,検出器基板20A(図8))に設けられた電源用配線を介して、アナログASIC24,ADC25,ディジタル
ASIC26及び検出器21に接続されている。
【0021】
結合基板20の構造を、図8、及び図9を用いて説明する。結合基板20は、検出器基板20A、及びASIC基板20Bを有する。検出器基板20AとASIC基板20Bは、ネジ等により着脱自在に接続される。
【0022】
検出器基板20Aは、図8(a)、及び図8(b)に示すように、基板本体20a,検出器21,コネクタC1、及び基板本体20a内に設けられた信号線(図示せず)及び電源配線(図示せず)を有する。検出器21は、基板本体20aの両面にそれぞれ格子状に設置される。検出器21は、基板本体20aの片面において、カメラ11の周方向(ベッド14の長手方向に直角)に16個配置され、カメラ11の半径方向に4個配置される
(基板本体20aの各片面に合計64個の検出器21をそれぞれ配置)。複数の検出器ユニット2をベッド14の周囲に配置することによって、ベッド14を取り囲む検出器21の配列が、ベッド14の長手方向と交差する方向において、複数層(本実施例では4層)形成されることになる。ベッド14の長手方向と交差する方向において複数層の検出器
21が配置されるため、その交差する方向でいずれの検出器21によっても検出されずにカメラ11の外部に達するγ線の割合が著しく減少し、カメラ11の検出感度が向上する。検出器ユニット2を周方向に極力密に配置するためには、フランジ47の、上記半径方向での内側部分をフランジ47から取り除くとよい。一対のユニット支持部材46を対向させて設置し、検出器ユニット2の両端部をそれらのユニット支持部材46で保持してもよい。本実施例は、ベッド14上の被検者から放出されたγ線は、図8の下方から上方
(矢印32の方向、すなわち、カメラ11の半径方向)に進行する。本実施例では、検出器21は、カメラ11の周方向に16個配置される構造としたが、それに限定されない。結合基板20は、検出器基板20A及びASIC基板20Bが筐体30の周方向を向いて配置され、その周方向において並列に配置する構成としても良い。複数の電源配線および複数の信号線は基板本体20a内で多層構造となっている。各検出器21に接続される電源配線及び信号線はコネクタC1に接続される。
【0023】
検出器21は、図8(c)に示すように、薄板状の半導体単結晶によって構成される検出素子211を並列配置した構造となっている。検出素子211にはCdTe(テルル化カドミウム)が用いられる。また、検出素子211は、TlBr(臭化タリウム)及び
GaAs(ガリウム砒素)等を用いてもよい。検出器21は、検出素子211の対向する二面にそれぞれアノード電極A及びカソード電極Cを備える。検出器21の各検出素子
211及び各電極は、基板本体20aに対して垂直に配置される。
【0024】
図9に示すように、1個の検出器21aと1個の検出器21bは、対となって配置され、一つのアナログ信号処理回路33にそれぞれ接続される。つまり、1個のアナログ信号処理回路33は、対となる検出器21a,21bから出力されるγ線検出信号を入力して処理する。検出器基板20Aに含まれる全検出器21の半数が検出器21aとなり残りの検出器21が検出器21bとなる。マイナスHV電源48は、各検出器21aの各カソード電極Cに接続され、プラスHV電源49は、各検出器21bのアノード電極Aに接続される。つまり、電圧調整装置63は、対となる検出器21a及び21bに、極性の異なる電圧を別々に印加する。マイナスHV電源48に接続された各検出器21aは、カソード電極Cがバイアス電極となり、アノード電極Aが信号取り出し電極となる。プラスHV電源49に接続された各検出器21bは、カソード電極Cが信号取り出し電極となり、アノード電極Aがバイアス電極となる。対となる検出器21a,21bに設けられたそれぞれの信号取り出し電極は、電気的に互いに接続され、1本の配線を介してコネクタC1に接続される。
【0025】
ASIC基板20Bは、図8(a)及び図8(b)に示すように、基板本体20b,コンデンサ22,抵抗23,アナログASIC(アナログ集積回路)24,アナログ/デジタル変換器(以下、ADCという)25,デジタルASIC(デジタル集積回路)26,コネクタC1,コネクタC2、及び基板本体20b内に設けられた電源配線(図示せず)及び信号線(図示せず)を備える。コンデンサ22及び抵抗23は、基板本体20bの片面にそれぞれ34個ずつ設けられている。つまり、1つの基板本体20bに、全検出器
21の半分の数のコンデンサ22及び抵抗23が設置されている。アナログASIC24は、基板本体20bのそれぞれの片面に2個ずつ配置されている。デジタルASIC26は、基板本体20bの片面に1個配置される。コンデンサ22,抵抗23,アナログ
ASIC24,ADC25、及びデジタルASIC26を電気的に接続するため、基板本体20b内には、基板本体20aと同様に複数の電源配線及び複数の信号線が設けられている。これらの配線は、基板本体20b内で積層構造となっている。コネクタC1は、各コンデンサ22に接続される信号線にそれぞれ接続される。コネクタC1は、検出器基板20Aに含まれる電源配線及び信号線と、ASIC基板20Bに含まれる電源配線及び信号線を電気的に接続する(詳細は図9参照)。検出器21は、信号線により、コネクタC1,コンデンサ22を介して、アナログASIC24に接続される。コンデンサ22、及びチャージアンプ24aは、1対の検出器21a,21bで共有される。コネクタC1とコンデンサ22を接続する信号線に、他端が接地された抵抗23が接続される。コネクタC2は、コネクタC3を介してASIC基板20Bの各信号線とFPGA31を電気的に接続する。また、コネクタC1及びC2は、電源配線用のコネクタを含んでいる。
【0026】
アナログASIC24は、図9に示すように、複数のアナログ信号処理回路33を備える。一対の検出器21a,21bに対して一つのアナログ信号処理回路33が設けられる。対となる検出器21a,21bは、それぞれから出力される検出信号をアナログ信号処理回路33に伝える配線を共有する。アナログ信号処理回路33は、チャージアンプ(前置増幅器)24a,バンドパスフィルタ24b,極性反転アンプ24c,24g,ピークホールド回路24d,24e,ファーストアンプ24f、及びタイミングピックオフ回路24h,24iを有する。チャージアンプ24aは、信号線により、コンデンサ22を介してコネクタC1に接続される。対となる検出器21a,21bは、それぞれから出力される検出信号をチャージアンプ24aに伝える配線を共有する。極性反転アンプ24c及び24gは、入力されたγ線検出信号の極性を反転する。ピークホールド回路24d及び24eは、入力されるγ線検出信号の極性がプラスの場合、γ線検出信号に基づいてγ線検出信号の最大値、つまり検出したγ線のエネルギーに比例したγ線検出信号の波高値を保持する。また、マイナスの極性を有するγ線検出信号が入力された場合、ピークホールド回路24d及び24eは、γ線検出信号入力前の0Vを出力し続ける。タイミングピックオフ回路24h及び24iは、入力されるγ線検出信号の極性がプラスの場合、γ線検出信号に基づいてタイミング信号を生成し、そのタイミング信号を時刻決定回路35
(35h,35iを含む)に出力する。マイナスの極性を有するγ線検出信号を入力したタイミングピックオフ回路24h及び24iは、タイミング信号を生成しないため、時刻決定回路35へタイミング信号を出力しない。タイミングピックオフ回路24hに接続される時刻決定回路は時刻決定回路35hであり、タイミングピックオフ回路24iに接続される時刻決定回路は時刻決定回路35iである。チャージアンプ24aは、一方でバンドパスフィルタ24bに接続され、他方でファーストアンプ24fに接続される。バンドパスフィルタ24bは、一方で極性反転アンプ24cを介してピークホールド回路24dに接続され、他方で、ピークホールド回路24eに接続される。ファーストアンプ24fは、極性反転アンプ24gを介してタイミングピックオフ回路24hに接続され、また、タイミングピックオフ回路24iに接続される。なお、バンドパスフィルタ24b,極性反転アンプ24c、及びピークホールド回路24d,24eが低速信号処理系(スロー系)である。ファーストアンプ24f,タイミングピックオフ回路24h,24i及び極性反転アンプ24gが高速信号処理系(ファースト系)である。
【0027】
低速信号処理系は、スイッチ27を介してADC25に接続される。ADC25が、デジタルASIC26に接続される。高速信号処理系は、信号配線を介して、デジタル
ASIC26に接続される。
【0028】
デジタルASIC26は、図9に示すように、パケットデータ生成装置34、及びデータ転送装置(データ送信装置)37を備える。パケットデータ生成装置34は、複数の時刻決定回路(時刻情報生成装置)35h,35i、及びADC制御回路(ADC制御装置)36を含んでいる。時刻決定回路35h,35iは、一対の検出器21a,21bに対してそれぞれ1個設けられる。一枚の結合基板20には、時刻決定回路35h,35iがそれぞれ64個備えられる。時刻決定回路35h,35iが、ADC制御装置36を介して、データ転送装置37に接続される。データ転送装置37は、FPGA31及びコネクタ38を介してデータ処理装置12に接続される。
【0029】
次に、被検診者のPET検査を行う際のPET装置1の動作について説明する。
【0030】
PET検査を行う前に、まず、あらかじめ注射によりPET用薬剤を被検体である被検診者に投与する。被検診者に投与されたPET用薬剤は、被検診者の悪性腫瘍(がんの患部)に集まる。PET用薬剤を投与された被検診者をベッド14に寝かせる。ベッド14に横たわる被検診者の体内からは、PET用薬剤に起因して発生した多数のγ線があらゆる方向に放出される。1つの陽電子の消滅によって発生する一対のγ線は、ほぼ反対方向に放出され、検出器21で検出(γ線のエネルギーが吸収)される。
【0031】
検出器21aでγ線を検出した場合について考える。
【0032】
検出器21aに設けられる信号取り出し電極(アノード電極A)は抵抗23を介して接地され、バイアス電極(カソード電極C)はマイナスHV電源48に接続される。このため、検出器21aの半導体部材Sにはマイナスの電圧(例えば−500Vの電圧)が印加される。検出器21aがγ線を検出すると、検出器21aの信号取り出し電極からマイナスの極性を有するγ線検出信号であるマイナスの電荷信号が出力される。マイナスの電荷信号は、コンデンサ22を介してチャージアンプ24aに入力される。チャージアンプ
24aは、入力されたマイナスの電荷信号をプラスの電圧信号(以下、電圧信号(+)という。)に変換する。チャージアンプ24aから出力される電圧信号(+)は、バンドパスフィルタ24b及びファーストアンプ24fに入力される。
【0033】
バンドパスフィルタ24bは、入力した電圧信号(+)を増幅し、波形整形する。バンドパスフィルタ24bから出力された電圧信号(+)は、ピークホールド回路24e及び極性反転アンプ24cに入力される。ピークホールド回路24eは、その電圧信号(+)に基づいて電圧信号(+)の最大値、つまり検出したγ線のエネルギーに比例したγ線検出信号の波高値(アナログのデータ)を保持する。極性反転アンプ24cは、電圧信号
(+)をマイナスの電圧信号(以下、電圧信号(−)という。)に変換し、ピークホールド回路24dに出力する。電圧信号(−)を入力したピークホールド回路24dは、信号入力前の0Vを出力し続ける。
【0034】
チャージアンプ24aから電圧信号(+)を入力したファーストアンプ24fは、電圧信号(+)を増幅する。増幅された電圧信号(+)は、タイミングピックオフ回路24i及び極性反転アンプ24gに入力される。タイミングピックオフ回路24iは、電圧信号(+)に基づいてタイミング信号を生成し、このタイミング信号を時刻決定回路35iに出力する。極性反転アンプ24gは、電圧信号(+)を電圧信号(−)に変換し、タイミングピックオフ回路24hに出力する。電圧信号(−)を入力したタイミングピックオフ回路24hは、タイミング信号を生成しないため、時刻決定回路35hにタイミング信号を出力しない。タイミングピックオフ回路24h,24i、及び極性反転アンプ24gを含めて信号処理装置という。信号処理装置は、入力した電圧信号の極性の違いに基づいて、これらの電圧信号を分けして出力する機能を有する。つまり、信号処理装置は、γ線検出信号である電圧信号を入力すると、対となる検出器21a及び検出器21bのうち放射線を検出した検出器を識別してタイミング信号を生成し、そのタイミング信号を時刻決定回路35i又は時刻決定回路35hのいずれか一方に出力する。
【0035】
時刻決定回路35iは、図示されていない500MHzのクロック発生装置(水晶発信器)からのクロック信号を入力している。時刻決定回路35iは、タイミング信号を入力した時のクロック信号に基づいてγ線の検出時刻(時刻情報)を決定する。PET装置1における検出時刻の決定は、LET(Leading Edge Trigger)方式またはCFD
(Constant Fraction Discriminator) 方式で行われる。時刻決定回路35iは、時刻情報をADC制御装置36へ出力する。ADC制御装置36は、時刻決定回路35iから時刻情報を入力すると、γ線を検出した検出器21aを特定する検出器IDを認識する。すなわち、ADC制御装置36は、時刻決定回路35iに対応する検出器IDを記憶しているため、γ線を検出した検出器21aを特定できる。これは、時刻決定回路35iが検出器21aに対応する数だけ設けられているため可能となる。時刻決定回路35iから時刻情報が入力されると、ADC制御装置36は該当する検出器ID(この場合、検出器21aに該当する検出器ID)を特定する。ADC25とADC制御装置36は、ADC制御信号伝送用の1本の配線、及び波高値情報伝送用の1本の信号線で接続される。また、ADC制御装置36とスイッチ27は、制御信号伝送用の1組の配線で接続される。ADC制御装置36は、切替制御信号をスイッチ27に出力し、スイッチ27の可動端子が、いずれかのアナログ信号処理回路33に接続されるように、スイッチ27を制御する。具体的には、ADC制御装置36は、特定した検出器IDに基づいて、スイッチ27に切替制御信号を出力し、スイッチ27の可動端子を、特定した検出器IDに対応するアナログ信号処理回路33に接続するように、スイッチを制御する。スイッチ27の切り替えが終了すると、ADC制御装置36はADC25にデータ取得指令を出力する。ADC25は、その取得指令に基づいて該当するアナログ信号処理回路33のピークムホールド回路24eから入力したアナログの波高値信号をデジタルの波高値情報に変換して出力する。この波高値情報は、ADC制御回路36に入力される。ADC制御回路36は、時刻情報及び検出器IDに波高値情報を付加してパケット情報を生成する。ADC制御回路36は、ADC25を制御するADC制御装置としての機能、検出器ID情報(検出器位置情報)を特定する検出器認識装置としての機能、スイッチ27の切り替えを制御するスイッチ制御装置としての機能、及び検出器ID情報,時刻情報、及び波高値情報を統合する情報統合装置としての機能を有する。情報統合装置はそれらの3つの情報を含むデジタル情報である統合情報(パケット情報)を出力する。ADC制御回路36から出力されたパケット情報データは、データ転送装置37に出力される。
【0036】
検出器21bでγ線を検出した場合について考える。
【0037】
検出器21bの信号取り出し電極(カソード電極C)は抵抗23を介して接地され、バイアス電極(アノード電極A)はプラスHV電源49に接続される。このため、検出器
21bの半導体部材Sにはプラスの電圧(例えば+500Vの電圧)が印加される。検出器21bがγ線を検出すると、その信号取り出し電極からプラスの極性を有するγ線検出信号であるプラス電荷信号が出力される。検出器21bから出力されるプラスの電荷信号は、コンデンサ22を介してチャージアンプ24aに入力され、ここで電圧信号(−)に変換される。ピークホールド回路24eは、バンドパスフィルタ24bから電圧信号(−)を入力するため、0Vを出力する。ピークホールド回路24dは、その電圧信号(−)が極性反転アンプ24cで電圧信号(+)に反転されるため、波高値を保持する。タイミングピックアップ回路24iは、電圧信号(−)を入力するため、タイミング信号を生成しない。タイミングピックアップ回路24hは、電圧信号(−)が極性反転アンプ24gで電圧信号(+)に反転されるため、タイミング信号を生成する。時刻決定回路35hは、入力したタイミング信号に基づいて時刻情報を生成する。ADC制御装置36は、時刻決定回路35hから入力した時刻情報に基づいて、γ線を検出した検出器21bを特定する検出器IDを特定する。ADC制御装置36は、スイッチ27を介してピークホールド回路24eから波高値情報を受け取ると、時刻情報及び検出器IDに波高値情報を付加してパケット情報を生成し、そのパケット情報をデータ転送装置37に出力する。
【0038】
データ転送装置37は、各ADC制御回路36から出力されたそれぞれのパケット情報を、例えば定期的に、検出器ユニット2に設けられているFPGA31に送信する。
FPGA31は、それらのデジタル情報をコネクタ38に接続された情報伝送用配線を介してデータ処理装置12に送信する。
【0039】
データ処理装置12に入力されたパケット情報は、まず同時計数回路12Aに入力される。同時計測装置12Aは、パケット情報、特に検出時刻情報及び検出器ID情報に基づいて同時計測処理を行い、511KeVの一対のγ線の検出位置を特定し、データ処理装置12の記憶装置に記憶する。同時計数処理は、設定時間の時間窓で511KeVのγ線を2個検出したときは、これらのγ線を、1つの陽電子の消滅により発生した一対のγ線とみなす処理である。同時計数装置12Aは、時間窓内で検出されたγ線検出信号が3つ以上ある(γ線を検出した検出器21が3つ以上ある)場合に、それらのγ線検出信号の波高値情報等を用いて3つ以上ある検出器21のうち最初にγ線が入射された2つの検出器21を特定する。特定された一対の検出器21が同時計測されて1つの計数値が生成される。断層像情報作成装置12Bは、同時計測で得た計数値及び検出器21の位置情報を用いて、放射性薬剤の集積位置、すなわち悪性腫瘍位置を含む機能画像を作成して、表示装置13に表示する。
【0040】
本実施例によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)本実施例は、対になる検出器21a,21bがそれぞれ極性の異なるγ線検出信号を出力し、それらの検出器から出力された各γ線検出信号を処理する1つのアナログ信号処理回路(信号処理装置)33が、それらの極性の違いに基づいて対となった検出器21a,21bのうちで、γ線を検出した検出器を確実に識別できる。γ線検出信号の極性の違いを利用したその識別は、立ち上がり時間が異なる電子に起因するγ線検出信号及び正孔に起因するγ線検出信号のそれぞれによっても確実に行える。そのため、対となった検出器21a,21bのうちγ線を検出した検出器を確実に識別できることは、位置分解能を向上させる。これは、空間分解能の向上につながり、さらに精度の高い機能画像を作成することができる。
(2)本実施例は、上述した検出器21a,21bから出力されたγ線検出信号の極性の違いに基づいて、γ線を検出した検出器21が検出器21a,21bのどちらであるかを識別しているため、検出器21内で散乱されたγ線に起因するγ線検出信号を機能画像の作成に利用する場合であっても、正確に検出器を判別することが可能となる。散乱されたγ線に起因するγ線検出信号は、波高値が低く、ホトピーク付近のエネルギーのγ線に起因したγ線検出信号と比較して立ち上がり時間が長くなるため、検出器に対して同極性の異なるバイアス電圧を印加し、検出信号の立ち上がり時間の違いによって検出器を識別する従来の方法では、散乱されたγ線を有効なデータとして利用することが困難であった。本実施例によれば、散乱されたγ線(低いエネルギーのγ線)も有効なデータとして利用できるため、実効的な検出感度向上につながり、検査時間を短縮できる。また、空間分解能が向上する。
(3)本実施例は、対となる検出器21a,21bは、それぞれ信号取り出し電極から出力されたγ線検出信号を伝送する信号線を共有化しているため、基板本体20a,20b内に設ける信号線の数を半分に減らすことができる。それぞれの基板本体は、電源配線層,アース層、及び信号線層等の複数の層で構成される。信号線の数が減ると各基板本体内の積層数を減らすことができ、各基板本体の厚さを薄くできる。つまり、ベッド14の長手方向における検出器21相互間の間隔を狭くできる。これにより、検出器21の稠密配置が可能となる。従って、PET装置1としても実効的な検出感度が向上すると共に空間分解能も向上する。
(4)本実施例は、信号線の本数を低減できるため、複数の信号線が接続される共通のコネクタC1のピン数を減らすことができ、信号線間容量を大幅に低減できる。このため、検出器21の浮遊容量を低減できる。浮遊容量の低減は、アナログASIC24の増幅信号のノイズを減少させ、波高値の揺らぎを減少させる。このため、エネルギー分解能が向上する。また、アナログASIC24内のファースト系信号の揺らぎも減少するため、タイミングピックオフの揺らぎが減少し、時間分解能が向上する。エネルギー分解能の向上により体内散乱線の除去能力が上がり、画質の向上や定量性が向上する。また、時間分解能の向上により、同時計測の時間窓(同時と判定する時間差)を小さく出来るの偶発的に同時と判断されたランダム事象を低減可能となり、画質の向上や定量性の向上をもたらす。
(5)本実施例では、γ線検出信号を伝送する信号線を共有しているため、ASIC基板20に設けられるコンデンサ22及び抵抗23も、対となる二つの検出器21a,21bで共有化できる。これにより、コンデンサ22、及び抵抗23の数を減らすことができ、検出器21とアナログASIC24の距離が短くなり、信号線長を短くすることができる。信号線長が短くなれば浮遊容量が低減され、上記(2)と同様に画質及び定量性の更なる向上が図れる。
(6)本実施例では、対となる検出器から出力される検出信号は、共通の信号線を介してアナログASIC24に入力される。つまり、対となる検出器でアナログASIC24のIOピンを共有することができるため、アナログASIC24のIOピン数を低減する事ができる。または、IOピン数を増やさずに処理するチャンネル数を増大できる。
(7)本実施例では、対となる検出器21a,21bから出力される各γ線検出信号を1つのアナログ信号処理回路33で処理できる。このため結合基板20に含まれるアナログ信号処理回路33の個数を低減でき、アナログASIC24の個数を低減できる。換言すれば、1つのアナログASIC24で処理できるチャンネル数が増大する。
(8)上記効果(6)及び(7)のように、処理するチャンネル数を増大されると、一つのアナログASIC24で処理できる検出器21の個数を増やすことができる。つまり、アナログASIC24の個数を減らさない場合、より小さな検出器21を用いることが可能となり、位置分解能が向上する。特に、筐体30の周方向に配置する検出器21を小型化できると、周方向における位置分解能が向上し、機能画像の画質が更に向上する。
(9)本実施例では、対となる検出器21a,21bでコンデンサ22,チャージアンプ24a,バンドパスフィルタ24b、及びファーストアンプ24f等の回路素子を共有化している。このため、結合基板20内の回路素子の数を減らすことができ、発熱量を低減することができる。特に、チャージアンプ24aの発熱量は大きいため、チャージアンプ24aの個数低減による発熱量の低減効果は非常に大きい。また、検出器を用いた核医学診断装置の消費電力に占めるアナログASIC24の発熱量は大きく、アナログASIC24の発熱量の低減はPET装置1の消費電力の低減に大きく貢献する。発熱量が低減できればPET装置1の冷却装置も簡素化できる。
(10)本実施例は、1つのアナログASIC24に対して1つのADC25を設け、アナログASIC24とASC25との間にスイッチ27を設けている。そのため、1つのアナログASIC24に対して1つずつADC25を設ける必要がなく、ASIC基板20Bの回路構成を著しく単純化できる。統合情報を生成する情報統合装置も、1つのアナログASIC24に対して1つ設ければよく、デジタルASIC26の回路構成が単純化できる。また、検出器IDを特定するADC制御装置も1つのアナログASIC24に対して1つでよく、デジタルASIC26の回路構成が単純化できる。
(11)本実施例は、対となる検出器21a,21bのうち一方の検出器に+500Vのバイアス電圧を印加し、他方の検出器に−500Vのバイアス電圧を印加している。そのため、アース部分と+500Vを印加する電源配線の間、及びアース部分と−500Vを印加する電源配線との間の電圧差が小さいため、その耐電圧構造を簡素化できる。アース部分は、基板本体内に設けられたアナログアース,デジタルアース及び筐体等である。
(12)本実施例は、検出器と同じ個数のタイミングピックオフ回路を設け、タイミングピックオフ回路24hが時刻決定回路35hに接続され、タイミングピックオフ回路24iが時刻決定回路35iに接続される。このような構成を有すため、対となる検出器21a及び検出器21bを電気的に接続し、それぞれから出力されるγ線検出信号を信号処理装置に伝える配線を共有した場合であっても、時刻決定回路35h、及び時刻決定回路35iは、対となる検出器21a及び21bがγ線を検出した時刻情報をそれぞれ決定することができる。
(13)本実施例は、検出器と同じ個数のタイミングピックオフ回路を設け、タイミングピックオフ回路24hに接続される時刻決定回路35h、及びタイミングピックオフ回路24iに接続される時刻決定回路35iがADC制御装置36に接続されるため、ADC制御装置36は、γ線を検出した検出器を特定することができる。
(14)本実施例は、対となる検出器21a及び21bからそれぞれ出力されるγ線検出信号を入力して波高値を測定する波高値測定手段として、γ線検出信号の極性を反転させる極性反転アンプ24c,極性反転アンプ24に接続されるピークホールド回路24d、及び入力されたγ線検出信号で波高値を測定するピークホールド回路24eを備えている。このような構成を備えるため、対となる検出器21a及び検出器21bを電気的に接続して、それぞれから出力されるγ線検出信号を波高値測定手段に伝える配線を共有した場合であっても、ピークホールド回路24d及びピークホールド回路24eは、それぞれのγ線検出信号の波高値を測定することができる。
【0041】
本実施例では、筐体30が遮光性を有する構成としたが、筐体30以外の手段によって遮光性が確保される場合は、筐体30は遮光性を有する必要はない。この場合、遮光用の面材(パネル)等は不用となり、筐体30は、検出器21を着脱自在に保持する枠(枠体)として機能する。
【0042】
本実施例は、検出器基板20AとASIC基板20Bが別々になっているため、例えば、アナログASIC及びでデジタルASICをBGA(Ball Grid Allay) を介して基板本体20bにリフローでハンダ付けする際に、基板本体20bだけをハンダ付け処理でき、検出器21を高温に晒す必要がなく好ましい。また、検出器基板20AとASIC基板
20Bとを一体化して一つの基板として、コネクタC1を用いないようにすることもできる。
【0043】
本実施例では、検出器ユニット2は、筐体30の内部に、検出器基板20A及びASIC基板20Bを収容している(図6)。しかし、検出器ユニットは、図10に示すように構成してもよい。図10に示す検出器ユニット2Aは、検出器ユニット2において筺体30を筺体30bに変更した構成を有する。検出器ユニット2Aは、ASIC基板20Bが筺体30b内に収納されているが、検出器基板20Aが筺体30bの外部に位置する。全ての検出器21が筺体30bの外部に配置される。検出器ユニット2Aの他の構成は検出器ユニット2と同じである。
【0044】
実施例1では、マイナスHV電源48に接続される各検出器21a、及びプラスHV電源49に接続される各検出器21bを同一の検出器基板20A上に実装したが、それぞれ別の検出器基板に実装してもよい。この場合、検出器21aを実装する検出器基板20Aa及び検出器21bを実装する検出器基板20Abを設け、検出器基板20Aaの基板本体内にマイナス電圧を印加する電源配線(以下、電源配線(−)という。)、検出器基板
20Abの基板本体内にプラスの電圧を印加する電源配線(以下、電源配線(+)という。)を設ける。検出器基板20Aa及び検出器基板20Abは、コネクタを介して同一のASIC基板20Bに接続される。対となる検出器21a及び検出器21bは、ASIC基板20B内の基板信号線で電気的に接続されると共に、一つのアナログ信号処理回路
33に接続される。一つの検出器基板の基板本体内に、電源配線(−)の配線層及び電源配線(+)の配線層の二つの配線層を設ける必要がなくなるため、実施例1で必要であった絶縁のための配線層間距離が不要となる。また、二つの電源配線層間の絶縁構造も不要となる。これにより、検出器基板の基板本体の厚みが薄くなり、検出器の緻密実装が可能となるため、実効的なγ線の検出感度が向上し検査時間が短縮される。検出器基板20Aa、及び検出器基板20Abからの検出信号は、コネクタを介してASIC基板20Bに伝送したが、マザーボード方式を採用してもよい。
【実施例2】
【0045】
以下に、本発明の他の実施例であるPET装置について図11を用いて説明する。本実施例のPET装置1Aは、実施例1のPET装置1において、電圧調整装置63を、第1プラス高電圧電源装置(第1HV電源)52,第2プラス高電圧電源装置(第2HV電源)53、及びASIC電圧供給電源装置を備える電源装置63A(図示せず)に替えた構成を有する。第1HV電源52が各検出器21bのアノード電極Aに接続され、第2HV電源53が抵抗23に接続される。他の構成は、実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0046】
対となる検出器21a及び検出器21bに印加するバイアス電圧について説明する。検出器21aのカソード電極Cは、接地(アース)される。検出器21bのアノード電極Aは、第1HV電源52から第1バイアス電圧(例えば、+1000V)が印加される。検出器21aのアノード電極A及び検出器21bのカソード電極Cは、信号線を介して抵抗23に接続され、第2HV電源53から第1バイアス電圧(例えば、+500V)が印加される。検出器21aのアノード電極A及び検出器21bのカソード電極Cが信号取り出し電極となる。信号取り出し電極を基準として、検出器21aの半導体部材Sには−500Vの電圧が印加され、検出器21bの半導体部材Sには+500Vの電圧が印加される。そのため、本実施例の対となる検出器21a及び検出器21bは、それぞれ極性の異なる検出信号を出力する。
【0047】
本実施例も実施例1で生じた効果(1)〜(10),(12)〜(14)を得ることができる。
【0048】
以上、実施例1及び実施例2により、本発明の具体的な例を示したが、本発明はそれらの実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。本発明は、SPECT装置に適応することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】半導体部材から出力される電荷信号の時間変化を示す模式図である。
【図2】半導体部材から出力される電荷信号の時間変化を示す模式図である。
【図3】本発明の好適な一実施例であるPET装置の構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示すPET装置のカメラの、ベッドの長手方向に直交する方向における断面構造を模式的に示した図である。
【図5】図3に示すカメラの検出器ユニットの取付け状態を示した図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【図7】図4に示す検出器ユニットの構造の透視斜視図である。
【図8】本発明の好適な一実施例であるPET装置の結合基板の構成を示し、(a)は結合基板の正面図、(b)は結合基板の側面図、(c)は結合基板に含まれた半導体放射線検出器の斜視図である。
【図9】図8に示すデジタルASIC及びアナログASICの詳細構成、及び図7に示す電圧調整装置の詳細構成を示す図である。
【図10】検出器ユニットの他の構成の透視斜視図である。
【図11】本発明の他の実施例であるPET装置に用いられる検出器ユニットの構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1,1A…PET装置(陽電子放出断層撮影装置)、2…検出器ユニット、20…結合基板、20A…検出器基板、20B…ASIC基板、21,21a,21b…検出器(半導体放射線検出器)、24…アナログASIC(アナログ集積回路)、24a…チャージアンプ、24c,24g…極性反転アンプ、24h,24i…タイミングピックオフ回路、26…デジタルASIC(デジタル集積回路)、35h,35i…時刻決定回路(時刻情報生成装置)、36…ADC制御装置、46…ユニット支持部材、63…電圧調整装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、核医学診断装置及び核医学診断装置における放射線検出器識別方法に係り、特に、陽電子放出型断層撮像(Positron Emission computed Tomography 、以下、
「PET」という。)装置及び単光子放出型断層撮像(Single Photon Emission ComputedTomography、以下、「SPECT」という。) 装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体である被検診者の体内を非破壊で撮像する技術として、放射線を用いた検査技術がある。放射線検査装置の代表的なものとして、PET装置,SPECT装置のような核医学診断装置がある。核医学診断装置では、X線CTでは得ることができない機能画像を得ることができる。医師は、作成された機能画像を基づいて、分子生物学レベルでの機能や代謝を判断できる。
【0003】
PET検査は、陽電子放出核種(15O,13N,11C,18F等)を含む放射性薬剤(以下、PET用薬剤という)を被検体に投与し、特定の部位(たとえばがん細胞)に集積したPET用薬剤に起因して、被検診者の患部から放射されるγ線を放射線検出器で検出する検査である。代表的なPET用薬剤として、フルオロ・デオキシ・グルコース(2−[F−18]fluoro-2-deoxy-D-glucose、18FDG)がある。PET用薬剤に含まれる陽電子放出核種から放射される陽電子が、近傍に存在する電子と対消滅する際に、511keVのエネルギーをもつ、一対のγ線がほぼ180°反対の方向に放射される。この一対のγ線を検出した一対の放射線検出器から出力されたそれぞれの検出信号に基づいて、PET用薬剤の集積位置、すなわち被検診者におけるがんの患部を含む機能画像(以下、PET画像という。)を作成する。
【0004】
特許文献1は、板状の半導体材料Sからなる半導体放射線検出素子の両面を薄板状の電極(アノード電極A,カソード電極C)で覆った構成を有する半導体放射線検出器を備える核医学診断装置を記載している。この半導体部材Sは、γ線と相互作用を及ぼして電荷を生成するCdTe(テルル化カドミウム),TlBr(臭化タリウム),GaAs(ガリウム砒素)等で構成され、アノード電極A及びカソード電極Cは、Pt(白金),Au(金),In(インジウム)等のいずれかの材料が用いられている。
【0005】
また、特許文献2は、半導体部材、半導体部材の対向する二面にそれぞれバイアス電極及び信号取り出し電極を備える放射線検出器を備える核医学診断装置を記載し、信号電極は隣り合うペアの半導体部材で共有する。特許文献2は、隣り合う一方の半導体部材に第1バイアス電圧を印加し、他方の半導体部材に第1バイアス電圧と同極性の異なる電圧である第2バイアス電圧を印加して、いずれの半導体部材に放射線が入射したかを判別する。バイアス電圧が異なると、半導体部材から取り出される検出信号のチャージアップ時間に差が生じるため、チャージアップの時間差に基づいて、放射線線を検出した半導体部材を判別している。
【0006】
【特許文献1】特開2005−106644号公報
【特許文献2】特開平11−281747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、特許文献2の構成を検討した結果、一対の半導体放射線検出器に同極性の異なる電圧を印加した場合、「位置分解能が低下する」との新たな課題を見出した。その検討結果を以下に説明する。半導体から出力される検出信号には、電子に起因する電荷信号、及び正孔に起因する電荷信号がある。電子と正孔はその移動度が異なるため、それぞれに起因した電荷信号が所定の値まで立ち上がるのに要する時間(以下、立ち上がり時間という。)に差が生じる。半導体部材に放射線が入射したときに出力される電荷信号の時間変化を示す模式図を図1に示す。図1のaが電子の寄与率が高い場合の電荷信号であり、図1のbが正孔の寄与率が高い場合の電荷信号である。電子の寄与率が高いと電荷信号の立ち上がりは早くなる。また、正孔の寄与率が高いと電荷信号の立ち上がりは遅くなる。2種の閾値を用いて立ち上がり時間を求める場合、立ち上がり時間はTE0〜TH0まで変動する(図1参照)。印加するバイアス電圧が低い場合の電荷信号の時間変化の模式図を図2に示す。この場合、立ち上がり時間はTE1〜TH1まで変動する。従って、ペアとなる半導体部材に同極性の異なる電圧を印加して、放射線を検出した半導体部材を識別するには、立ち上がり時間をTH0<TE1とする必要がある。電子の移動度と正孔の移動度は10倍程度異なるため、立ち上がり時間がTH0<TE1となるには、ペアとなる半導体部材の一方のバイアス電圧が、他方のバイアス電圧の10分の1以上となる必要がある。半導体部材に印加するバイアス電圧を数百Vとすることで、核医学診断装置としての測定精度(例えば、時間分解能やエネルギー分解能)を高く保つことができる。バイアス電圧が数百V以上、及び数百V以下であると計測精度は低下するため、10倍以上の電圧差の2種のバイアス電圧を印加する事は困難である。使用可能なバイアス電圧内で2種の異なる電圧を印加した場合は、TH0>TE1となり、TE1〜TH0の立ち上がり時間の場合半導体部材を識別する事が出来ない。
【0008】
そのように、隣り合うペアの半導体部材に同極性の異なる電圧を印加すると、放射線を検出した半導体部材を判別することが困難となり、位置分解能の低下につながることが判明した。
【0009】
本発明の目的は、位置分解能を向上できる核医学診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成する第1発明の特徴は、放射線を検出して検出信号を出力する複数の第1半導体放射線検出器と、第1半導体放射線検出器と極性の異なる検出信号を出力する複数の第2半導体放射線検出器と、対となる第1半導体放射線検出器、及び第2半導体放射線検出器に接続され、検出信号の極性の違いに基づいて、放射線を検出した半導体放射線検出器を識別する信号処理装置を備えることにある。
【0011】
また、前記の目的を達成する第2の発明の特徴は、放射線を検出して負の検出信号を出力する複数の第1半導体放射線検出器と、放射線を検出して正の検出信号を出力する複数の第2半導体放射線検出器と、対となる第1半導体放射線検出器、及び第2半導体放射線検出器に接続され、検出信号の極性の違いに基づいて、放射線を検出した前記半導体放射線検出器を識別する手段を備えることにある。
【0012】
第1発明及び第2発明によれば、対となる半導体放射線検出器から出力される極性の異なる検出信号に基づいて放射線を検出した半導体放射線検出器を識別するため、正孔と電子の電荷収集率の違いによる位置分解能の低下を防止でき、作成される機能画像が鮮明になる。これにより、例えば小さな癌の位置などを正確に判断できる機能画像を提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、位置分解能を向上することができ、精度の高い機能画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて実施例を説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の好適な一実施例である核医学診断装置を、図面を用いて説明する。本実施例では、核医学診断装置であるPET装置を例にとって説明する。なお、アナログASIC
(Application Specific Integrated Circuit )は、アナログ信号を処理する、特定用途向けICであり、LSIの一種である。
【0016】
図3に示すように、PET装置1は、カメラ(撮像装置)11,データ処理装置(データ蓄積装置)12,表示装置13及びベッド14を備えている。
【0017】
データ処理装置12は、記憶装置(図示せず)、同時計測装置12A、及び断層像情報作成装置12Bを有する(図4)。カメラ11が、同時計数装置12Aに接続される。同時計数装置12Aは、断層像情報作成装置12Bに接続される。断層像情報作成装置12Bが、表示装置13に接続される。
【0018】
カメラ11は、図5に示すように、ユニット支持部材46,検出器ユニット2、及び蓋11aを有する。ユニット支持部材46は、中空の円盤状(ドーナッツ状)をしており、カメラ11の周方向に検出器ユニット2を装着する窓(開口)47を有する(図5)。窓47は、装着する検出器ユニット2の数だけ設けられる。検出器ユニット2は、窓47からカメラ11の内部に挿入され、ユニット支持部材46によって支持される(図6)。検出器ユニット2を片持支持するため、ストッパとなるフランジ47を、検出器ユニット2の筐体30の、ベッド14の長手方向手前側に設ける。複数の検出器ユニット2をユニット支持部材46に装着することによって、検出器ユニット2は、ベッド14の周囲を取り囲むように配置される。カメラ11に検出器ユニット2を装着する場合は、蓋11aを取り外して、ユニット支持部材46を露出させる。検出器ユニット2は、検出器ユニット2のフランジ47がユニット支持部材46に当たるまでユニット支持部材46の窓47内に差し込んで装着される。カメラ11と検出器ユニット2のコネクタを接続することによって、カメラ11と検出器ユニット2の信号及び電源が接続される。カメラ11は、検出器ユニット2が周方向に30〜40個着脱自在に配置された構成をしており、保守点検が容易なようにされている。
【0019】
検出器ユニット2は、図7に示すように、複数の結合基板20(本実施例では10枚),電圧調整装置63,ユニット統合用の集積回路であるユニット結合FPGA(以下、
FPGAという。)31,コネクタC3,38,42,43,筐体(収納部材)30,天板30a、及び仕切り板50を備える。天板30aは、筐体30の上端にネジ等で着脱自在に取り付けられ、ユニット結合FPGA(Field Programmable Gate allay) 31、及びコネクタC3,38,42,43を備える。なお、筐体30の上部,下部とは、筐体30をカメラ11から取り出した場合のことであり、図4に示すように、筐体30がカメラ
11に備えられた場合には、上下が反転したり、上下が90°回転して左右になったり、或いは斜めになったりする。
【0020】
筐体30は、内部に、複数の結合基板20,仕切り板50、及び電圧調整装置63を収納する。結合基板20には、半導体放射線検出器21(以下、検出器21という。)が設けられているため、筐体30は、アルミニウムやアルミニウム合金といった遮光性を有する材料で構成されると共に、光が侵入する隙間をなくす構成とする。結合基板20は、それぞれの基板面が筐体30の長手方向を向いて配置され、その長手方向において並列に配置される。仕切り板50は、結合基板20と電圧調整装置63の間に配置され、電圧調整装置63で発生するノイズを遮蔽し、結合基板20(特に、検出器21及びアナログ
ASIC24)に伝わるのを防ぐ。電圧調整装置63は、コネクタ42及びコネクタ38を介して、ACDC(Alternating Current Direct Current)コンバータ(図示せず)に接続される。電圧調整装置63は、ACDCコンバータから供給される中電圧ないし高電圧を調整する機能を有する。具体的には、電圧調整装置63は、検出器21に対してマイナスの高電圧を印加するマイナス高電圧電源装置(マイナスHV電源、図9)48,別の検出器21に対してプラスの高電圧を印加するプラス高電圧電源装置(プラスHV電源、図9)49、及びASIC基板20Bに設けられたアナログASIC24,ADC25及びディジタルASIC26等に電圧を印加するASIC電圧供給電源装置としての機能を有する。電圧調整装置63は、天板30aに設けられたコネクタ43及び配線を介し、
10個のコネクタC3に接続される。コネクタC3は、ASIC基板20B(図8)、コネクタC2に接続され、結合基板20(ASIC基板20B,検出器基板20A(図8))に設けられた電源用配線を介して、アナログASIC24,ADC25,ディジタル
ASIC26及び検出器21に接続されている。
【0021】
結合基板20の構造を、図8、及び図9を用いて説明する。結合基板20は、検出器基板20A、及びASIC基板20Bを有する。検出器基板20AとASIC基板20Bは、ネジ等により着脱自在に接続される。
【0022】
検出器基板20Aは、図8(a)、及び図8(b)に示すように、基板本体20a,検出器21,コネクタC1、及び基板本体20a内に設けられた信号線(図示せず)及び電源配線(図示せず)を有する。検出器21は、基板本体20aの両面にそれぞれ格子状に設置される。検出器21は、基板本体20aの片面において、カメラ11の周方向(ベッド14の長手方向に直角)に16個配置され、カメラ11の半径方向に4個配置される
(基板本体20aの各片面に合計64個の検出器21をそれぞれ配置)。複数の検出器ユニット2をベッド14の周囲に配置することによって、ベッド14を取り囲む検出器21の配列が、ベッド14の長手方向と交差する方向において、複数層(本実施例では4層)形成されることになる。ベッド14の長手方向と交差する方向において複数層の検出器
21が配置されるため、その交差する方向でいずれの検出器21によっても検出されずにカメラ11の外部に達するγ線の割合が著しく減少し、カメラ11の検出感度が向上する。検出器ユニット2を周方向に極力密に配置するためには、フランジ47の、上記半径方向での内側部分をフランジ47から取り除くとよい。一対のユニット支持部材46を対向させて設置し、検出器ユニット2の両端部をそれらのユニット支持部材46で保持してもよい。本実施例は、ベッド14上の被検者から放出されたγ線は、図8の下方から上方
(矢印32の方向、すなわち、カメラ11の半径方向)に進行する。本実施例では、検出器21は、カメラ11の周方向に16個配置される構造としたが、それに限定されない。結合基板20は、検出器基板20A及びASIC基板20Bが筐体30の周方向を向いて配置され、その周方向において並列に配置する構成としても良い。複数の電源配線および複数の信号線は基板本体20a内で多層構造となっている。各検出器21に接続される電源配線及び信号線はコネクタC1に接続される。
【0023】
検出器21は、図8(c)に示すように、薄板状の半導体単結晶によって構成される検出素子211を並列配置した構造となっている。検出素子211にはCdTe(テルル化カドミウム)が用いられる。また、検出素子211は、TlBr(臭化タリウム)及び
GaAs(ガリウム砒素)等を用いてもよい。検出器21は、検出素子211の対向する二面にそれぞれアノード電極A及びカソード電極Cを備える。検出器21の各検出素子
211及び各電極は、基板本体20aに対して垂直に配置される。
【0024】
図9に示すように、1個の検出器21aと1個の検出器21bは、対となって配置され、一つのアナログ信号処理回路33にそれぞれ接続される。つまり、1個のアナログ信号処理回路33は、対となる検出器21a,21bから出力されるγ線検出信号を入力して処理する。検出器基板20Aに含まれる全検出器21の半数が検出器21aとなり残りの検出器21が検出器21bとなる。マイナスHV電源48は、各検出器21aの各カソード電極Cに接続され、プラスHV電源49は、各検出器21bのアノード電極Aに接続される。つまり、電圧調整装置63は、対となる検出器21a及び21bに、極性の異なる電圧を別々に印加する。マイナスHV電源48に接続された各検出器21aは、カソード電極Cがバイアス電極となり、アノード電極Aが信号取り出し電極となる。プラスHV電源49に接続された各検出器21bは、カソード電極Cが信号取り出し電極となり、アノード電極Aがバイアス電極となる。対となる検出器21a,21bに設けられたそれぞれの信号取り出し電極は、電気的に互いに接続され、1本の配線を介してコネクタC1に接続される。
【0025】
ASIC基板20Bは、図8(a)及び図8(b)に示すように、基板本体20b,コンデンサ22,抵抗23,アナログASIC(アナログ集積回路)24,アナログ/デジタル変換器(以下、ADCという)25,デジタルASIC(デジタル集積回路)26,コネクタC1,コネクタC2、及び基板本体20b内に設けられた電源配線(図示せず)及び信号線(図示せず)を備える。コンデンサ22及び抵抗23は、基板本体20bの片面にそれぞれ34個ずつ設けられている。つまり、1つの基板本体20bに、全検出器
21の半分の数のコンデンサ22及び抵抗23が設置されている。アナログASIC24は、基板本体20bのそれぞれの片面に2個ずつ配置されている。デジタルASIC26は、基板本体20bの片面に1個配置される。コンデンサ22,抵抗23,アナログ
ASIC24,ADC25、及びデジタルASIC26を電気的に接続するため、基板本体20b内には、基板本体20aと同様に複数の電源配線及び複数の信号線が設けられている。これらの配線は、基板本体20b内で積層構造となっている。コネクタC1は、各コンデンサ22に接続される信号線にそれぞれ接続される。コネクタC1は、検出器基板20Aに含まれる電源配線及び信号線と、ASIC基板20Bに含まれる電源配線及び信号線を電気的に接続する(詳細は図9参照)。検出器21は、信号線により、コネクタC1,コンデンサ22を介して、アナログASIC24に接続される。コンデンサ22、及びチャージアンプ24aは、1対の検出器21a,21bで共有される。コネクタC1とコンデンサ22を接続する信号線に、他端が接地された抵抗23が接続される。コネクタC2は、コネクタC3を介してASIC基板20Bの各信号線とFPGA31を電気的に接続する。また、コネクタC1及びC2は、電源配線用のコネクタを含んでいる。
【0026】
アナログASIC24は、図9に示すように、複数のアナログ信号処理回路33を備える。一対の検出器21a,21bに対して一つのアナログ信号処理回路33が設けられる。対となる検出器21a,21bは、それぞれから出力される検出信号をアナログ信号処理回路33に伝える配線を共有する。アナログ信号処理回路33は、チャージアンプ(前置増幅器)24a,バンドパスフィルタ24b,極性反転アンプ24c,24g,ピークホールド回路24d,24e,ファーストアンプ24f、及びタイミングピックオフ回路24h,24iを有する。チャージアンプ24aは、信号線により、コンデンサ22を介してコネクタC1に接続される。対となる検出器21a,21bは、それぞれから出力される検出信号をチャージアンプ24aに伝える配線を共有する。極性反転アンプ24c及び24gは、入力されたγ線検出信号の極性を反転する。ピークホールド回路24d及び24eは、入力されるγ線検出信号の極性がプラスの場合、γ線検出信号に基づいてγ線検出信号の最大値、つまり検出したγ線のエネルギーに比例したγ線検出信号の波高値を保持する。また、マイナスの極性を有するγ線検出信号が入力された場合、ピークホールド回路24d及び24eは、γ線検出信号入力前の0Vを出力し続ける。タイミングピックオフ回路24h及び24iは、入力されるγ線検出信号の極性がプラスの場合、γ線検出信号に基づいてタイミング信号を生成し、そのタイミング信号を時刻決定回路35
(35h,35iを含む)に出力する。マイナスの極性を有するγ線検出信号を入力したタイミングピックオフ回路24h及び24iは、タイミング信号を生成しないため、時刻決定回路35へタイミング信号を出力しない。タイミングピックオフ回路24hに接続される時刻決定回路は時刻決定回路35hであり、タイミングピックオフ回路24iに接続される時刻決定回路は時刻決定回路35iである。チャージアンプ24aは、一方でバンドパスフィルタ24bに接続され、他方でファーストアンプ24fに接続される。バンドパスフィルタ24bは、一方で極性反転アンプ24cを介してピークホールド回路24dに接続され、他方で、ピークホールド回路24eに接続される。ファーストアンプ24fは、極性反転アンプ24gを介してタイミングピックオフ回路24hに接続され、また、タイミングピックオフ回路24iに接続される。なお、バンドパスフィルタ24b,極性反転アンプ24c、及びピークホールド回路24d,24eが低速信号処理系(スロー系)である。ファーストアンプ24f,タイミングピックオフ回路24h,24i及び極性反転アンプ24gが高速信号処理系(ファースト系)である。
【0027】
低速信号処理系は、スイッチ27を介してADC25に接続される。ADC25が、デジタルASIC26に接続される。高速信号処理系は、信号配線を介して、デジタル
ASIC26に接続される。
【0028】
デジタルASIC26は、図9に示すように、パケットデータ生成装置34、及びデータ転送装置(データ送信装置)37を備える。パケットデータ生成装置34は、複数の時刻決定回路(時刻情報生成装置)35h,35i、及びADC制御回路(ADC制御装置)36を含んでいる。時刻決定回路35h,35iは、一対の検出器21a,21bに対してそれぞれ1個設けられる。一枚の結合基板20には、時刻決定回路35h,35iがそれぞれ64個備えられる。時刻決定回路35h,35iが、ADC制御装置36を介して、データ転送装置37に接続される。データ転送装置37は、FPGA31及びコネクタ38を介してデータ処理装置12に接続される。
【0029】
次に、被検診者のPET検査を行う際のPET装置1の動作について説明する。
【0030】
PET検査を行う前に、まず、あらかじめ注射によりPET用薬剤を被検体である被検診者に投与する。被検診者に投与されたPET用薬剤は、被検診者の悪性腫瘍(がんの患部)に集まる。PET用薬剤を投与された被検診者をベッド14に寝かせる。ベッド14に横たわる被検診者の体内からは、PET用薬剤に起因して発生した多数のγ線があらゆる方向に放出される。1つの陽電子の消滅によって発生する一対のγ線は、ほぼ反対方向に放出され、検出器21で検出(γ線のエネルギーが吸収)される。
【0031】
検出器21aでγ線を検出した場合について考える。
【0032】
検出器21aに設けられる信号取り出し電極(アノード電極A)は抵抗23を介して接地され、バイアス電極(カソード電極C)はマイナスHV電源48に接続される。このため、検出器21aの半導体部材Sにはマイナスの電圧(例えば−500Vの電圧)が印加される。検出器21aがγ線を検出すると、検出器21aの信号取り出し電極からマイナスの極性を有するγ線検出信号であるマイナスの電荷信号が出力される。マイナスの電荷信号は、コンデンサ22を介してチャージアンプ24aに入力される。チャージアンプ
24aは、入力されたマイナスの電荷信号をプラスの電圧信号(以下、電圧信号(+)という。)に変換する。チャージアンプ24aから出力される電圧信号(+)は、バンドパスフィルタ24b及びファーストアンプ24fに入力される。
【0033】
バンドパスフィルタ24bは、入力した電圧信号(+)を増幅し、波形整形する。バンドパスフィルタ24bから出力された電圧信号(+)は、ピークホールド回路24e及び極性反転アンプ24cに入力される。ピークホールド回路24eは、その電圧信号(+)に基づいて電圧信号(+)の最大値、つまり検出したγ線のエネルギーに比例したγ線検出信号の波高値(アナログのデータ)を保持する。極性反転アンプ24cは、電圧信号
(+)をマイナスの電圧信号(以下、電圧信号(−)という。)に変換し、ピークホールド回路24dに出力する。電圧信号(−)を入力したピークホールド回路24dは、信号入力前の0Vを出力し続ける。
【0034】
チャージアンプ24aから電圧信号(+)を入力したファーストアンプ24fは、電圧信号(+)を増幅する。増幅された電圧信号(+)は、タイミングピックオフ回路24i及び極性反転アンプ24gに入力される。タイミングピックオフ回路24iは、電圧信号(+)に基づいてタイミング信号を生成し、このタイミング信号を時刻決定回路35iに出力する。極性反転アンプ24gは、電圧信号(+)を電圧信号(−)に変換し、タイミングピックオフ回路24hに出力する。電圧信号(−)を入力したタイミングピックオフ回路24hは、タイミング信号を生成しないため、時刻決定回路35hにタイミング信号を出力しない。タイミングピックオフ回路24h,24i、及び極性反転アンプ24gを含めて信号処理装置という。信号処理装置は、入力した電圧信号の極性の違いに基づいて、これらの電圧信号を分けして出力する機能を有する。つまり、信号処理装置は、γ線検出信号である電圧信号を入力すると、対となる検出器21a及び検出器21bのうち放射線を検出した検出器を識別してタイミング信号を生成し、そのタイミング信号を時刻決定回路35i又は時刻決定回路35hのいずれか一方に出力する。
【0035】
時刻決定回路35iは、図示されていない500MHzのクロック発生装置(水晶発信器)からのクロック信号を入力している。時刻決定回路35iは、タイミング信号を入力した時のクロック信号に基づいてγ線の検出時刻(時刻情報)を決定する。PET装置1における検出時刻の決定は、LET(Leading Edge Trigger)方式またはCFD
(Constant Fraction Discriminator) 方式で行われる。時刻決定回路35iは、時刻情報をADC制御装置36へ出力する。ADC制御装置36は、時刻決定回路35iから時刻情報を入力すると、γ線を検出した検出器21aを特定する検出器IDを認識する。すなわち、ADC制御装置36は、時刻決定回路35iに対応する検出器IDを記憶しているため、γ線を検出した検出器21aを特定できる。これは、時刻決定回路35iが検出器21aに対応する数だけ設けられているため可能となる。時刻決定回路35iから時刻情報が入力されると、ADC制御装置36は該当する検出器ID(この場合、検出器21aに該当する検出器ID)を特定する。ADC25とADC制御装置36は、ADC制御信号伝送用の1本の配線、及び波高値情報伝送用の1本の信号線で接続される。また、ADC制御装置36とスイッチ27は、制御信号伝送用の1組の配線で接続される。ADC制御装置36は、切替制御信号をスイッチ27に出力し、スイッチ27の可動端子が、いずれかのアナログ信号処理回路33に接続されるように、スイッチ27を制御する。具体的には、ADC制御装置36は、特定した検出器IDに基づいて、スイッチ27に切替制御信号を出力し、スイッチ27の可動端子を、特定した検出器IDに対応するアナログ信号処理回路33に接続するように、スイッチを制御する。スイッチ27の切り替えが終了すると、ADC制御装置36はADC25にデータ取得指令を出力する。ADC25は、その取得指令に基づいて該当するアナログ信号処理回路33のピークムホールド回路24eから入力したアナログの波高値信号をデジタルの波高値情報に変換して出力する。この波高値情報は、ADC制御回路36に入力される。ADC制御回路36は、時刻情報及び検出器IDに波高値情報を付加してパケット情報を生成する。ADC制御回路36は、ADC25を制御するADC制御装置としての機能、検出器ID情報(検出器位置情報)を特定する検出器認識装置としての機能、スイッチ27の切り替えを制御するスイッチ制御装置としての機能、及び検出器ID情報,時刻情報、及び波高値情報を統合する情報統合装置としての機能を有する。情報統合装置はそれらの3つの情報を含むデジタル情報である統合情報(パケット情報)を出力する。ADC制御回路36から出力されたパケット情報データは、データ転送装置37に出力される。
【0036】
検出器21bでγ線を検出した場合について考える。
【0037】
検出器21bの信号取り出し電極(カソード電極C)は抵抗23を介して接地され、バイアス電極(アノード電極A)はプラスHV電源49に接続される。このため、検出器
21bの半導体部材Sにはプラスの電圧(例えば+500Vの電圧)が印加される。検出器21bがγ線を検出すると、その信号取り出し電極からプラスの極性を有するγ線検出信号であるプラス電荷信号が出力される。検出器21bから出力されるプラスの電荷信号は、コンデンサ22を介してチャージアンプ24aに入力され、ここで電圧信号(−)に変換される。ピークホールド回路24eは、バンドパスフィルタ24bから電圧信号(−)を入力するため、0Vを出力する。ピークホールド回路24dは、その電圧信号(−)が極性反転アンプ24cで電圧信号(+)に反転されるため、波高値を保持する。タイミングピックアップ回路24iは、電圧信号(−)を入力するため、タイミング信号を生成しない。タイミングピックアップ回路24hは、電圧信号(−)が極性反転アンプ24gで電圧信号(+)に反転されるため、タイミング信号を生成する。時刻決定回路35hは、入力したタイミング信号に基づいて時刻情報を生成する。ADC制御装置36は、時刻決定回路35hから入力した時刻情報に基づいて、γ線を検出した検出器21bを特定する検出器IDを特定する。ADC制御装置36は、スイッチ27を介してピークホールド回路24eから波高値情報を受け取ると、時刻情報及び検出器IDに波高値情報を付加してパケット情報を生成し、そのパケット情報をデータ転送装置37に出力する。
【0038】
データ転送装置37は、各ADC制御回路36から出力されたそれぞれのパケット情報を、例えば定期的に、検出器ユニット2に設けられているFPGA31に送信する。
FPGA31は、それらのデジタル情報をコネクタ38に接続された情報伝送用配線を介してデータ処理装置12に送信する。
【0039】
データ処理装置12に入力されたパケット情報は、まず同時計数回路12Aに入力される。同時計測装置12Aは、パケット情報、特に検出時刻情報及び検出器ID情報に基づいて同時計測処理を行い、511KeVの一対のγ線の検出位置を特定し、データ処理装置12の記憶装置に記憶する。同時計数処理は、設定時間の時間窓で511KeVのγ線を2個検出したときは、これらのγ線を、1つの陽電子の消滅により発生した一対のγ線とみなす処理である。同時計数装置12Aは、時間窓内で検出されたγ線検出信号が3つ以上ある(γ線を検出した検出器21が3つ以上ある)場合に、それらのγ線検出信号の波高値情報等を用いて3つ以上ある検出器21のうち最初にγ線が入射された2つの検出器21を特定する。特定された一対の検出器21が同時計測されて1つの計数値が生成される。断層像情報作成装置12Bは、同時計測で得た計数値及び検出器21の位置情報を用いて、放射性薬剤の集積位置、すなわち悪性腫瘍位置を含む機能画像を作成して、表示装置13に表示する。
【0040】
本実施例によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)本実施例は、対になる検出器21a,21bがそれぞれ極性の異なるγ線検出信号を出力し、それらの検出器から出力された各γ線検出信号を処理する1つのアナログ信号処理回路(信号処理装置)33が、それらの極性の違いに基づいて対となった検出器21a,21bのうちで、γ線を検出した検出器を確実に識別できる。γ線検出信号の極性の違いを利用したその識別は、立ち上がり時間が異なる電子に起因するγ線検出信号及び正孔に起因するγ線検出信号のそれぞれによっても確実に行える。そのため、対となった検出器21a,21bのうちγ線を検出した検出器を確実に識別できることは、位置分解能を向上させる。これは、空間分解能の向上につながり、さらに精度の高い機能画像を作成することができる。
(2)本実施例は、上述した検出器21a,21bから出力されたγ線検出信号の極性の違いに基づいて、γ線を検出した検出器21が検出器21a,21bのどちらであるかを識別しているため、検出器21内で散乱されたγ線に起因するγ線検出信号を機能画像の作成に利用する場合であっても、正確に検出器を判別することが可能となる。散乱されたγ線に起因するγ線検出信号は、波高値が低く、ホトピーク付近のエネルギーのγ線に起因したγ線検出信号と比較して立ち上がり時間が長くなるため、検出器に対して同極性の異なるバイアス電圧を印加し、検出信号の立ち上がり時間の違いによって検出器を識別する従来の方法では、散乱されたγ線を有効なデータとして利用することが困難であった。本実施例によれば、散乱されたγ線(低いエネルギーのγ線)も有効なデータとして利用できるため、実効的な検出感度向上につながり、検査時間を短縮できる。また、空間分解能が向上する。
(3)本実施例は、対となる検出器21a,21bは、それぞれ信号取り出し電極から出力されたγ線検出信号を伝送する信号線を共有化しているため、基板本体20a,20b内に設ける信号線の数を半分に減らすことができる。それぞれの基板本体は、電源配線層,アース層、及び信号線層等の複数の層で構成される。信号線の数が減ると各基板本体内の積層数を減らすことができ、各基板本体の厚さを薄くできる。つまり、ベッド14の長手方向における検出器21相互間の間隔を狭くできる。これにより、検出器21の稠密配置が可能となる。従って、PET装置1としても実効的な検出感度が向上すると共に空間分解能も向上する。
(4)本実施例は、信号線の本数を低減できるため、複数の信号線が接続される共通のコネクタC1のピン数を減らすことができ、信号線間容量を大幅に低減できる。このため、検出器21の浮遊容量を低減できる。浮遊容量の低減は、アナログASIC24の増幅信号のノイズを減少させ、波高値の揺らぎを減少させる。このため、エネルギー分解能が向上する。また、アナログASIC24内のファースト系信号の揺らぎも減少するため、タイミングピックオフの揺らぎが減少し、時間分解能が向上する。エネルギー分解能の向上により体内散乱線の除去能力が上がり、画質の向上や定量性が向上する。また、時間分解能の向上により、同時計測の時間窓(同時と判定する時間差)を小さく出来るの偶発的に同時と判断されたランダム事象を低減可能となり、画質の向上や定量性の向上をもたらす。
(5)本実施例では、γ線検出信号を伝送する信号線を共有しているため、ASIC基板20に設けられるコンデンサ22及び抵抗23も、対となる二つの検出器21a,21bで共有化できる。これにより、コンデンサ22、及び抵抗23の数を減らすことができ、検出器21とアナログASIC24の距離が短くなり、信号線長を短くすることができる。信号線長が短くなれば浮遊容量が低減され、上記(2)と同様に画質及び定量性の更なる向上が図れる。
(6)本実施例では、対となる検出器から出力される検出信号は、共通の信号線を介してアナログASIC24に入力される。つまり、対となる検出器でアナログASIC24のIOピンを共有することができるため、アナログASIC24のIOピン数を低減する事ができる。または、IOピン数を増やさずに処理するチャンネル数を増大できる。
(7)本実施例では、対となる検出器21a,21bから出力される各γ線検出信号を1つのアナログ信号処理回路33で処理できる。このため結合基板20に含まれるアナログ信号処理回路33の個数を低減でき、アナログASIC24の個数を低減できる。換言すれば、1つのアナログASIC24で処理できるチャンネル数が増大する。
(8)上記効果(6)及び(7)のように、処理するチャンネル数を増大されると、一つのアナログASIC24で処理できる検出器21の個数を増やすことができる。つまり、アナログASIC24の個数を減らさない場合、より小さな検出器21を用いることが可能となり、位置分解能が向上する。特に、筐体30の周方向に配置する検出器21を小型化できると、周方向における位置分解能が向上し、機能画像の画質が更に向上する。
(9)本実施例では、対となる検出器21a,21bでコンデンサ22,チャージアンプ24a,バンドパスフィルタ24b、及びファーストアンプ24f等の回路素子を共有化している。このため、結合基板20内の回路素子の数を減らすことができ、発熱量を低減することができる。特に、チャージアンプ24aの発熱量は大きいため、チャージアンプ24aの個数低減による発熱量の低減効果は非常に大きい。また、検出器を用いた核医学診断装置の消費電力に占めるアナログASIC24の発熱量は大きく、アナログASIC24の発熱量の低減はPET装置1の消費電力の低減に大きく貢献する。発熱量が低減できればPET装置1の冷却装置も簡素化できる。
(10)本実施例は、1つのアナログASIC24に対して1つのADC25を設け、アナログASIC24とASC25との間にスイッチ27を設けている。そのため、1つのアナログASIC24に対して1つずつADC25を設ける必要がなく、ASIC基板20Bの回路構成を著しく単純化できる。統合情報を生成する情報統合装置も、1つのアナログASIC24に対して1つ設ければよく、デジタルASIC26の回路構成が単純化できる。また、検出器IDを特定するADC制御装置も1つのアナログASIC24に対して1つでよく、デジタルASIC26の回路構成が単純化できる。
(11)本実施例は、対となる検出器21a,21bのうち一方の検出器に+500Vのバイアス電圧を印加し、他方の検出器に−500Vのバイアス電圧を印加している。そのため、アース部分と+500Vを印加する電源配線の間、及びアース部分と−500Vを印加する電源配線との間の電圧差が小さいため、その耐電圧構造を簡素化できる。アース部分は、基板本体内に設けられたアナログアース,デジタルアース及び筐体等である。
(12)本実施例は、検出器と同じ個数のタイミングピックオフ回路を設け、タイミングピックオフ回路24hが時刻決定回路35hに接続され、タイミングピックオフ回路24iが時刻決定回路35iに接続される。このような構成を有すため、対となる検出器21a及び検出器21bを電気的に接続し、それぞれから出力されるγ線検出信号を信号処理装置に伝える配線を共有した場合であっても、時刻決定回路35h、及び時刻決定回路35iは、対となる検出器21a及び21bがγ線を検出した時刻情報をそれぞれ決定することができる。
(13)本実施例は、検出器と同じ個数のタイミングピックオフ回路を設け、タイミングピックオフ回路24hに接続される時刻決定回路35h、及びタイミングピックオフ回路24iに接続される時刻決定回路35iがADC制御装置36に接続されるため、ADC制御装置36は、γ線を検出した検出器を特定することができる。
(14)本実施例は、対となる検出器21a及び21bからそれぞれ出力されるγ線検出信号を入力して波高値を測定する波高値測定手段として、γ線検出信号の極性を反転させる極性反転アンプ24c,極性反転アンプ24に接続されるピークホールド回路24d、及び入力されたγ線検出信号で波高値を測定するピークホールド回路24eを備えている。このような構成を備えるため、対となる検出器21a及び検出器21bを電気的に接続して、それぞれから出力されるγ線検出信号を波高値測定手段に伝える配線を共有した場合であっても、ピークホールド回路24d及びピークホールド回路24eは、それぞれのγ線検出信号の波高値を測定することができる。
【0041】
本実施例では、筐体30が遮光性を有する構成としたが、筐体30以外の手段によって遮光性が確保される場合は、筐体30は遮光性を有する必要はない。この場合、遮光用の面材(パネル)等は不用となり、筐体30は、検出器21を着脱自在に保持する枠(枠体)として機能する。
【0042】
本実施例は、検出器基板20AとASIC基板20Bが別々になっているため、例えば、アナログASIC及びでデジタルASICをBGA(Ball Grid Allay) を介して基板本体20bにリフローでハンダ付けする際に、基板本体20bだけをハンダ付け処理でき、検出器21を高温に晒す必要がなく好ましい。また、検出器基板20AとASIC基板
20Bとを一体化して一つの基板として、コネクタC1を用いないようにすることもできる。
【0043】
本実施例では、検出器ユニット2は、筐体30の内部に、検出器基板20A及びASIC基板20Bを収容している(図6)。しかし、検出器ユニットは、図10に示すように構成してもよい。図10に示す検出器ユニット2Aは、検出器ユニット2において筺体30を筺体30bに変更した構成を有する。検出器ユニット2Aは、ASIC基板20Bが筺体30b内に収納されているが、検出器基板20Aが筺体30bの外部に位置する。全ての検出器21が筺体30bの外部に配置される。検出器ユニット2Aの他の構成は検出器ユニット2と同じである。
【0044】
実施例1では、マイナスHV電源48に接続される各検出器21a、及びプラスHV電源49に接続される各検出器21bを同一の検出器基板20A上に実装したが、それぞれ別の検出器基板に実装してもよい。この場合、検出器21aを実装する検出器基板20Aa及び検出器21bを実装する検出器基板20Abを設け、検出器基板20Aaの基板本体内にマイナス電圧を印加する電源配線(以下、電源配線(−)という。)、検出器基板
20Abの基板本体内にプラスの電圧を印加する電源配線(以下、電源配線(+)という。)を設ける。検出器基板20Aa及び検出器基板20Abは、コネクタを介して同一のASIC基板20Bに接続される。対となる検出器21a及び検出器21bは、ASIC基板20B内の基板信号線で電気的に接続されると共に、一つのアナログ信号処理回路
33に接続される。一つの検出器基板の基板本体内に、電源配線(−)の配線層及び電源配線(+)の配線層の二つの配線層を設ける必要がなくなるため、実施例1で必要であった絶縁のための配線層間距離が不要となる。また、二つの電源配線層間の絶縁構造も不要となる。これにより、検出器基板の基板本体の厚みが薄くなり、検出器の緻密実装が可能となるため、実効的なγ線の検出感度が向上し検査時間が短縮される。検出器基板20Aa、及び検出器基板20Abからの検出信号は、コネクタを介してASIC基板20Bに伝送したが、マザーボード方式を採用してもよい。
【実施例2】
【0045】
以下に、本発明の他の実施例であるPET装置について図11を用いて説明する。本実施例のPET装置1Aは、実施例1のPET装置1において、電圧調整装置63を、第1プラス高電圧電源装置(第1HV電源)52,第2プラス高電圧電源装置(第2HV電源)53、及びASIC電圧供給電源装置を備える電源装置63A(図示せず)に替えた構成を有する。第1HV電源52が各検出器21bのアノード電極Aに接続され、第2HV電源53が抵抗23に接続される。他の構成は、実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0046】
対となる検出器21a及び検出器21bに印加するバイアス電圧について説明する。検出器21aのカソード電極Cは、接地(アース)される。検出器21bのアノード電極Aは、第1HV電源52から第1バイアス電圧(例えば、+1000V)が印加される。検出器21aのアノード電極A及び検出器21bのカソード電極Cは、信号線を介して抵抗23に接続され、第2HV電源53から第1バイアス電圧(例えば、+500V)が印加される。検出器21aのアノード電極A及び検出器21bのカソード電極Cが信号取り出し電極となる。信号取り出し電極を基準として、検出器21aの半導体部材Sには−500Vの電圧が印加され、検出器21bの半導体部材Sには+500Vの電圧が印加される。そのため、本実施例の対となる検出器21a及び検出器21bは、それぞれ極性の異なる検出信号を出力する。
【0047】
本実施例も実施例1で生じた効果(1)〜(10),(12)〜(14)を得ることができる。
【0048】
以上、実施例1及び実施例2により、本発明の具体的な例を示したが、本発明はそれらの実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。本発明は、SPECT装置に適応することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】半導体部材から出力される電荷信号の時間変化を示す模式図である。
【図2】半導体部材から出力される電荷信号の時間変化を示す模式図である。
【図3】本発明の好適な一実施例であるPET装置の構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示すPET装置のカメラの、ベッドの長手方向に直交する方向における断面構造を模式的に示した図である。
【図5】図3に示すカメラの検出器ユニットの取付け状態を示した図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【図7】図4に示す検出器ユニットの構造の透視斜視図である。
【図8】本発明の好適な一実施例であるPET装置の結合基板の構成を示し、(a)は結合基板の正面図、(b)は結合基板の側面図、(c)は結合基板に含まれた半導体放射線検出器の斜視図である。
【図9】図8に示すデジタルASIC及びアナログASICの詳細構成、及び図7に示す電圧調整装置の詳細構成を示す図である。
【図10】検出器ユニットの他の構成の透視斜視図である。
【図11】本発明の他の実施例であるPET装置に用いられる検出器ユニットの構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1,1A…PET装置(陽電子放出断層撮影装置)、2…検出器ユニット、20…結合基板、20A…検出器基板、20B…ASIC基板、21,21a,21b…検出器(半導体放射線検出器)、24…アナログASIC(アナログ集積回路)、24a…チャージアンプ、24c,24g…極性反転アンプ、24h,24i…タイミングピックオフ回路、26…デジタルASIC(デジタル集積回路)、35h,35i…時刻決定回路(時刻情報生成装置)、36…ADC制御装置、46…ユニット支持部材、63…電圧調整装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出して検出信号を出力する複数の第1半導体放射線検出器と、
前記第1半導体放射線検出器と極性の異なる検出信号を出力する複数の第2半導体放射線検出器と、
対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器にそれぞれ接続され、前記検出信号の極性の違いに基づいて、それらの半導体放射線検出器のうち放射線を検出した前記半導体放射線検出器を識別する信号処理装置を備えることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項2】
放射線を検出して負の検出信号を出力する複数の第1半導体放射線検出器と、
放射線を検出して正の検出信号を出力する複数の第2半導体放射線検出器と、
対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器にそれぞれ接続され、検出信号の極性の違いに基づいて、それらの半導体放射線検出器のうち放射線を検出した前記半導体放射線検出器を識別する信号処理装置を備えることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項3】
対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器からのそれぞれの前記検出信号を入力する一つの増幅器と、
前記増幅器から出力されるそれぞれの前記検出信号を入力する前記信号処理装置とを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の核医学診断装置。
【請求項4】
対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器は、それぞれから出力される前記検出信号を前記信号処理装置に伝える配線を共有していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の核医学診断装置。
【請求項5】
前記信号処理装置は、
前記配線に接続され、前記第1半導体放射線検出器から入力される前記検出信号に基づいてタイミング信号を生成し、そのタイミング信号を出力する第1タイミング信号生成装置と、
前記配線に接続され、対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器から入力される前記検出信号の極性を反転する手段と、
前記極性反転手段に接続され、極性が反転された前記第2半導体放射線検出器の検出信号に基づいて、タイミング信号を生成し、そのタイミング信号を出力する第2タイミング信号生成装置を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の核医学診断装置。
【請求項6】
前記第1タイミング信号生成装置及び第2タイミング信号生成装置のうちいずれのタイミング信号生成装置が前記タイミング信号を出力したかに基づいて、対となる前記半導体放射線検出器のうち放射線を検出した前記半導体放射線検出器の位置情報を特定する検出器認識手段とを備えることを特徴とする請求項5に記載の核医学診断装置。
【請求項7】
前記第1半導体放射線検出器に正の第1バイアス電圧を印加し、
前記第2半導体放射線検出器に負の第2バイアス電圧を印加する電源装置を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の核医学診断装置。
【請求項8】
対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器は、信号取り出し電極を共有していることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の核医学診断装置。
【請求項9】
対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器に接続され、前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器からの前記検出信号に対する波高値信号を出力する波高値信号出力手段を備えることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の核医学診断装置。
【請求項10】
前記波高値信号出力手段は、
入力された前記検出信号の極性を反転する他の極性反転手段と、
前記他の極性反転手段で極性が反転された前記第2放射線検出器の検出信号に対する波高値を保持する第1ピークホールド装置と、
入力された前記第1半導体放射線検出器から出力される前記検出信号に対する波高値を保持する第2ピークホールド装置を備えることを特徴とする請求項9に記載の核医学診断装置。
【請求項11】
放射線を検出して検出信号を出力する複数の第1半導体放射線検出器と、
前記第1半導体放射線検出器と極性の異なる検出信号を出力する第2半導体放射線検出器とを備える核医学診診断装置における検出器識別方法であって、
対となる第1半導体放射線検出器及び第2半導体放射線検出器からそれぞれ出力される前記検出信号の極性の違いに基づいて、それらの半導体放射線検出器のうち放射線を検出した前記半導体放射線検出器を識別することを特徴とする検出器識別方法。
【請求項12】
請求項11に記載の検出器識別方法であって、
対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器からそれぞれ出力される前記検出信号を一つの増幅器に入力し、
前記増幅器から出力される前記検出信号の極性の違いに基づいて、それらの半導体放射線検出器のうち放射線検出器を検出した前記半導体放射線検出器を識別することを特徴とする検出器識別方法。
【請求項13】
請求項11に記載の検出器識別方法であって、
前記第1半導体放射線検出器から出力された前記検出信号に基づいて生成したタイミング信号を第1タイミング信号生成装置から出力し、
前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器から出力された前記検出信号の極性を反転し、
極性を反転した第2放射線検出器からの前記検出信号に基づいて生成したタイミング信号を第2タイミング信号生成装置から出力し、
前記第1タイミング信号生成装置及び第2タイミング信号生成装置のうちいずれのタイミング信号生成装置が前記タイミング信号を出力したかに基づいて、対となる前記半導体放射線検出器のうち放射線を検出した前記半導体放射線検出器の位置情報を特定することを特徴とする検出器識別方法。
【請求項1】
放射線を検出して検出信号を出力する複数の第1半導体放射線検出器と、
前記第1半導体放射線検出器と極性の異なる検出信号を出力する複数の第2半導体放射線検出器と、
対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器にそれぞれ接続され、前記検出信号の極性の違いに基づいて、それらの半導体放射線検出器のうち放射線を検出した前記半導体放射線検出器を識別する信号処理装置を備えることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項2】
放射線を検出して負の検出信号を出力する複数の第1半導体放射線検出器と、
放射線を検出して正の検出信号を出力する複数の第2半導体放射線検出器と、
対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器にそれぞれ接続され、検出信号の極性の違いに基づいて、それらの半導体放射線検出器のうち放射線を検出した前記半導体放射線検出器を識別する信号処理装置を備えることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項3】
対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器からのそれぞれの前記検出信号を入力する一つの増幅器と、
前記増幅器から出力されるそれぞれの前記検出信号を入力する前記信号処理装置とを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の核医学診断装置。
【請求項4】
対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器は、それぞれから出力される前記検出信号を前記信号処理装置に伝える配線を共有していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の核医学診断装置。
【請求項5】
前記信号処理装置は、
前記配線に接続され、前記第1半導体放射線検出器から入力される前記検出信号に基づいてタイミング信号を生成し、そのタイミング信号を出力する第1タイミング信号生成装置と、
前記配線に接続され、対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器から入力される前記検出信号の極性を反転する手段と、
前記極性反転手段に接続され、極性が反転された前記第2半導体放射線検出器の検出信号に基づいて、タイミング信号を生成し、そのタイミング信号を出力する第2タイミング信号生成装置を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の核医学診断装置。
【請求項6】
前記第1タイミング信号生成装置及び第2タイミング信号生成装置のうちいずれのタイミング信号生成装置が前記タイミング信号を出力したかに基づいて、対となる前記半導体放射線検出器のうち放射線を検出した前記半導体放射線検出器の位置情報を特定する検出器認識手段とを備えることを特徴とする請求項5に記載の核医学診断装置。
【請求項7】
前記第1半導体放射線検出器に正の第1バイアス電圧を印加し、
前記第2半導体放射線検出器に負の第2バイアス電圧を印加する電源装置を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の核医学診断装置。
【請求項8】
対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器は、信号取り出し電極を共有していることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の核医学診断装置。
【請求項9】
対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器に接続され、前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器からの前記検出信号に対する波高値信号を出力する波高値信号出力手段を備えることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の核医学診断装置。
【請求項10】
前記波高値信号出力手段は、
入力された前記検出信号の極性を反転する他の極性反転手段と、
前記他の極性反転手段で極性が反転された前記第2放射線検出器の検出信号に対する波高値を保持する第1ピークホールド装置と、
入力された前記第1半導体放射線検出器から出力される前記検出信号に対する波高値を保持する第2ピークホールド装置を備えることを特徴とする請求項9に記載の核医学診断装置。
【請求項11】
放射線を検出して検出信号を出力する複数の第1半導体放射線検出器と、
前記第1半導体放射線検出器と極性の異なる検出信号を出力する第2半導体放射線検出器とを備える核医学診診断装置における検出器識別方法であって、
対となる第1半導体放射線検出器及び第2半導体放射線検出器からそれぞれ出力される前記検出信号の極性の違いに基づいて、それらの半導体放射線検出器のうち放射線を検出した前記半導体放射線検出器を識別することを特徴とする検出器識別方法。
【請求項12】
請求項11に記載の検出器識別方法であって、
対となる前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器からそれぞれ出力される前記検出信号を一つの増幅器に入力し、
前記増幅器から出力される前記検出信号の極性の違いに基づいて、それらの半導体放射線検出器のうち放射線検出器を検出した前記半導体放射線検出器を識別することを特徴とする検出器識別方法。
【請求項13】
請求項11に記載の検出器識別方法であって、
前記第1半導体放射線検出器から出力された前記検出信号に基づいて生成したタイミング信号を第1タイミング信号生成装置から出力し、
前記第1半導体放射線検出器及び前記第2半導体放射線検出器から出力された前記検出信号の極性を反転し、
極性を反転した第2放射線検出器からの前記検出信号に基づいて生成したタイミング信号を第2タイミング信号生成装置から出力し、
前記第1タイミング信号生成装置及び第2タイミング信号生成装置のうちいずれのタイミング信号生成装置が前記タイミング信号を出力したかに基づいて、対となる前記半導体放射線検出器のうち放射線を検出した前記半導体放射線検出器の位置情報を特定することを特徴とする検出器識別方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−93497(P2007−93497A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285836(P2005−285836)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【特許番号】特許第3818317号(P3818317)
【特許公報発行日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【特許番号】特許第3818317号(P3818317)
【特許公報発行日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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