説明

根菜類収穫機

【課題】
機体が左右に傾斜しても引抜搬送装置で搬送中の根菜の下端不要部を切断刃に確実に接触させることのできる根菜下部切断装置を根菜類収穫機に備える。
【解決手段】
機体フレーム1の左右一側に圃場から根菜を引き抜き収穫する引抜搬送装置24を前後方向に設け、引抜搬送装置24の中途部下方に切断部材で根菜下端部の不要部分を切断する下部切断処理装置47を設けた根菜類収穫機において、引抜搬送装置24の根菜搬送方向である前後方向に対して下部切断処理装置47を左右方向に移動自在に支持し、機体の左右傾斜回動に関連して下部切断装置47を左右に移動させる構成とし、下部切断処理装置47の回転外周側に根菜の下端部が進入するスリット44aを左右中央部に形成した案内カバー44を設け、案内カバー44に接近するほど低くなる傾斜姿勢の傾斜案内板48を案内カバー44の側方に設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物を圃場から引き抜き、作物のひげ根を除去して収穫する根菜類収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の根菜類収穫機における根菜のひげ根切断装置として、回転刃の移動経路の外周にガイド輪体を設け、このガイド輪体には、傾斜外周面によって根菜の下端を切断溝に案内してひげ根を切断溝の回転刃移動経路に落し込み、傾斜外周面によって根菜の下端を受け止めてひげ根の回転刃移動経路への入り込み長さを規制しながら切断するものは、公知である。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−102227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された根菜類収穫機では、引抜搬送装置の根菜搬送経路下方の所定位置に切断刃を固定状態で配設し、根菜の下部のひげ根を切断する構成である。従って、機体が左右に傾斜回動し、引抜搬送装置で搬送中の根菜が左右に回動して搬送中心からずれ、根菜の下部が切断刃に対応せず、ニンジンの下端部のひげ根が切断されないままで後方に搬送され、作業者の手作業により根菜のひげ根を切断しなければならず、作業能率が低下するという不具合が発生することがあった。
【0005】
本発明は、このような不具合を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、機体フレーム(1)の左右一側に圃場から根菜を引き抜き収穫する引抜搬送装置(24)を前後方向に設け、該引抜搬送装置(24)の中途部下方に切断部材で根菜下端部の不要部分を切断する下部切断処理装置(47)を設けた根菜類収穫機において、前記引抜搬送装置(24)の根菜搬送方向である前後方向に対して前記下部切断処理装置(47)を左右方向に移動自在に支持し、機体の左右傾斜回動に関連して下部切断装置(47)を左右に移動させることを特徴とする根菜類収穫機とした。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記下部切断処理装置(47)の回転外周側に根菜の下端部が進入するスリット(44a)を左右中央部に形成した案内カバー(44)を設け、該案内カバー(44)に接近するほど低くなる傾斜姿勢の傾斜案内板(48)を案内カバー(44)の側方に設けたことを特徴とする請求項1記載の根菜類収穫機とした。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記下部切断処理装置(47)の中央切断刃体(47c)を回転軸心に沿う直板状の刃体で構成し、該中央切断刃体(47c)の左右両側に接続する左右切断刃体(47a,47b)を左右外側ほど大径になる傾斜状の刃体で構成し、前記案内カバー(44)の左右中央に前後方向に沿った中央スリット(44c)を形成し、該中央スリット(4)の左右両側に左右外側ほど回転軸心から外周側に遠ざかる左右傾斜面を構成して、前記下部切断処理装置(47)の左右傾斜切断刃体(47a,47b)の外周部に沿わせて配設したことを特徴とする請求項1または2記載の根菜類収穫機である。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記下部切断処理装置(47)の中央切断刃体(47c)を、内周側の刃体と所定間隙を空けた外周側の刃体とで構成し、内周側の刃体と外周側の刃体とを接続して一体構成することを特徴とする請求項1または2記載の根菜類収穫機である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によると、機体が左右方向に傾斜回動すると連動して下部切断処理装置(47)が引抜搬送装置(24)の根菜搬送方向である前後方向に対して左右方向に傾斜回動する構成としたことにより、機体の左右傾斜に伴い根菜が傾斜姿勢となっても、根菜の下端部を下部切断処理装置(47)に対向させて接触させることができるので、根菜の不要な下端部を確実に切断除去することができ、手作業業による下端部の切断作業が省略されて、作業者の労力が軽減される。
【0011】
請求項2記載の発明によると、請求項1記載の発明の効果に加えて、案内カバー(44)に接近するほど低くなる傾斜姿勢の傾斜案内板(48)を案内カバー(44)の左右両側に設けたことにより、機体が左右に傾斜したり揺動したりする際に、左右傾斜案内板(48,48)で根菜下部の不要部分が下部切断処理装置(47)から左右両側に移動することを防止できるので、根菜の下端不要部が確実に切断除去されるため、作業能率が向上する。
【0012】
また、案内カバー(44)の左右中央部に前後方向のスリット(44a)を形成し、このスリット(44a)に根菜の下端部が進入することにより、根菜の左右方向への移動がいっそう規制されると共に根菜の泥を落しながら後方へ案内することができるので、根菜の下端不要部が下部切断処理装置(47)に弾き飛ばされ、切断されないまま後方へ搬送されることが防止され、根菜の下端不要部の切断精度が向上する。
【0013】
そして、案内カバー(44)のスリット(44a)から根菜に付着した泥を下方に落下排出することができるので、下部切断処理装置(47)が泥土と接触して早く摩耗することが防止され、耐久性が向上すると共に、下部切断処理装置(47)内に溜まった泥土を取り除く作業が不要となり、メンテナンス性が向上する。
【0014】
請求項3記載の発明によると、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、ガイドカバー(44)の左右中央に前後方向に沿った中央スリット(44c)を形成し、この中央スリット(44c)の左右両側に左右外側ほど回転軸心から外周側に遠ざかる左右傾斜面を構成して下部切断処理装置(47)の左右傾斜切断刃体(47a,47b)の外周部に沿って設けたことにより、下部切断処理装置(47)とガイドカバー(44)とを近接させることができるので、根菜の下部が中央スリット(44c)から逃げにくくなり、根菜の下端不要部の切断精度が向上する。
【0015】
請求項4記載の発明によると、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、下部切断処理装置(47)の中央切断刃体(47c)を内周側の刃体と所定間隙を空けた外周側の刃体とで構成し、内周側の刃体と外周側の刃体とを接続したことにより、中央切断刃体(47c)の厚みが増して摩耗しにくくなり、耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】根菜類収穫機の側面図
【図2】根菜類収穫機の平面図
【図3】根菜類収穫機の背面図
【図4】ひげ根切断装置の正面図
【図5】ひげ根切断装置の側面図
【図6】ひげ根切断装置の切断刃の平面図
【図7】ひげ根切断装置の別実施例の正面図
【図8】ひげ根切断装置の別実施例の側面図
【図9】ひげ根切断装置の切断刃の別実施例の正面図
【図10】(a)ひげ根切断装置の別実施例の正面図、(b)ひげ根切断装置の別実施例の側面図
【図11】ひげ根切断装置の別実施例の側面図
【図12】ひげ根切断装置の別実施例の正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について説明する。
まず、図1〜図3に基づき本発明を実施する根菜類収穫機の全体構成について説明する。
【0018】
実施例の一つとして示す根菜類収穫機はニンジン収穫機で、機体を走行させる走行部Aと、操縦者が搭乗する操縦部Bと、機体左右一側で圃場からニンジンを引き抜いて機体後上側に搬送するとともに茎葉部を切断してニンジンの根部を収穫する収穫部Cと、該収穫部Cの後部から落下したニンジンを受けて残葉を処理しながら機体左右他側へ搬送する引継搬送部Dと、該引継搬送部Dからニンジンを引き継いでニンジンを機体後側へ搬送し、搬送中のニンジンを補助作業者が選別する選別搬送部Eと、選別搬送部Eから排出されるニンジンを収容する収容部Fとから構成される。
【0019】
まず、走行部Aの構成について説明する。
図1〜図3で示すように、機体フレーム1の下方に機体前部側の左右駆動スプロケット2,2と機体後部側の左右従動輪3,3と、該左右駆動スプロケット2,2と左右従動輪3,3との間に取り付けた複数の転輪4,4・・・の周りに左右ベルト5,5を巻き掛けて左右のクローラ6L,6Rを構成する。そして、該左右クローラ6L,6Rの左右駆動スプロケット2,2を、エンジン7の動力が伝動されるミッションケース8から左右両側に延出させた左右ドライブシャフト9,9に取り付け、一定の左右間隔を設けて左右クローラ6L,6Rを該機体フレーム1に取り付ける。
【0020】
次に、操縦部Bの構成について説明する。
図1及び図2で示すように、前記機体フレーム1の右側上部に操縦部フレーム10を取り付け、該操縦部フレーム10には操縦座席11を取り付けると共に、機体前側に操縦パネル12を取り付ける。そして、該操縦パネル12に機体の前後進及び走行速度を切り換える変速操作レバー13を取り付けると共に、機体の左右旋回操作及び収穫部Cの作業高さを操作する昇降操作レバー14を取り付ける。
【0021】
次に、収穫部Cの構成について説明する。
図1〜図3で示すように、左右引抜フレーム15,15の機体前側に左右従動プーリ16,16を回転自在に装着し、機体後側に左右駆動プーリ17,17を装着し、該左右従動プーリ16,16と左右駆動プーリ17,17との間にニンジンを引き抜き機体後部へと搬送する左右挟持搬送ベルト18,18を巻き掛けると共に、複数のテンションローラ19…によって該左右挟持搬送ベルト18,18を張圧し、左右挟持搬送ベルト18,18の機体内側面を互いに圧接させてニンジンの引抜搬送経路Rを構成する。
【0022】
そして、前記機体フレーム1の上方に左右横軸21を回動支点として上下方向に回動自在な回動フレーム20を取り付け、該回動フレーム20の後端部に前記左右駆動プーリ17,17に駆動力を伝動する伝動ケース22を、回動支点Xを中心として上下回動自在に取り付ける。また、前記機体フレーム1と回動フレーム20とを昇降シリンダ23で連結し、該昇降シリンダ23を操縦部Bで操作可能に取り付けて引抜搬送装置24を構成する。
【0023】
また、該引抜搬送装置24の前方にニンジンの茎葉部を縦ラグ25aで引き起こす縦引起し装置25と、該縦引起し装置25が引起した茎葉部を横ラグ26aで掬い上げる横引起し装置26と、ハンドル29を回すと上下伸縮する伸縮ロッド30の下端部に引抜搬送装置24の下り過ぎを防止する回転自在なゲージ輪31を設ける。
【0024】
さらに、前記引抜フレーム15,15の機体前側下部から機体前後方向おいて略中間位置に亘って左右のソイラフレーム32,32を取り付け、該ソイラフレーム32,32の前側端部に左右の振動アーム33,33の前側端部を取り付ける。そして、前記機体フレーム1の前側にエンジン7の駆動力を受けて回転する振動シャフト34を引抜搬送装置24を設けた側に向けて延出し、該振動シャフト34と該振動アーム33,33の後側端部との間に振動アーム33,33を振動させる側面視V字形状の振動ロッド35を取り付けて伝動装置を構成する。機体内側の振動アーム33は、振動ロッド35の下端側に回動自在に取り付ける。
【0025】
そして、前記振動アーム33,33の前後方向の略中央位置にニンジンの周囲の土を切り解す左右のソイラ37,37を機体前側に向けて取り付け、振動アーム33,33の該ソイラ37,37の基部を取り付けた箇所の内側にニンジンに付着した土を落とす側面視でU字形状の左右の土落しバー38,38の基部を取り付け、該土落しバー38,38の端部側の作用部を圃場面に対して略水平姿勢に配置して、振動装置36を構成する。
【0026】
また、該土落しバー38,38はピアノ線などの柔軟性に富み、且つある程度の硬さを有する円柱形の弾性材で構成し、表面をポリ塩化ビニルやスポンジ、ウレタンなどの軟質材でチューブ状に構成するカバー39,39で覆う。
【0027】
そして、前記左右のソイラ37,37の前端部に圃場面に垂れている茎葉を掬い上げる左右の掬上突起40,40をその先端部が前記横引起し装置26の横ラグ26aの引起し開始位置よりも前方に位置するように配置する。また、該掬上突起40,40の前側に掬上突起40,40で掬い上げられた茎葉を引抜搬送装置24の挟持始端部に案内する左右の案内バー41,41を、平面視で「ハ」の字型となるように機体後側に向かうほど案内バー41,41同士の左右間隔が小さくなるように取り付ける。
【0028】
なお、該案内バー41,41はピアノ線などの柔軟性に富み、且つある程度の硬さを有する円柱形の弾性材で構成すると、振動幅が大きくなり、茎葉の絡み付き防止効果が向上する。
【0029】
また、前記引抜搬送通路Rの下方で且つ土落しバー38,38の後端部よりも後方部位にひげ根切断装置57を設けている。
このひげ根切断装置57は、図4に示すように、掘取フレーム20の機体左右一側(機体外側)に設けたアウターフレーム43に支持している。そして、このアウターフレーム43の下部に形成している後下り傾斜姿勢の長孔43h,43hにボルト等の固定部材43vを挿入し、上下方向及び前後方向に調節自在に取り付けている。このアウターフレーム43の機体左右他側(機体内側)に複数のスリット44a,…を形成した円弧形状のガイドカバー44を取り付けている。
【0030】
そして、このガイドカバー44の内側下方には、切断軸45を配設し、この切断軸45には所定間隔毎に切断アーム46,…を延出し、切断アーム46の外周部に正面視(または背面視)L字状に屈折した複数の切断刃47,…を設けている。
【0031】
また、図5に示すように、回転切断刃47の内側に駆動力を供給する駆動モータ52を、アウタフレーム43に固定して設け、駆動モータ52により切断軸45を駆動する構成としている。
【0032】
また、ガイドカバー44の左右両側には、図4に示すように、切断刃47の回転上側部外周に対向するように側面視で円弧状の左右傾斜案内板48,48を設けている。左右傾斜案内板48,48には正面視で中央寄りのガイドカバー44側に向けて下り傾斜となる左右傾斜案内面48a,48aを形成し、搬送中のニンジンの下端部を中央寄りのガイドカバー44に案内するようにしている。
【0033】
そして、図6に示すように、この左右傾斜案内板48,48はスリットのない板体で構成し、ガイドカバー44には前後方向に沿った複数のスリット44a,44aを形成し、スリット44a,44aの左右側方には前後方向に沿った孔部44b,…を形成している。
【0034】
しかして、ニンジンが左右にずれた状態で搬送されても複数のいずれかのスリット44a,44aにニンジンの下端部が入り込んで搬送され、ニンジンを安定して搬送することができる。また、ガイドカバー44の板面に泥が落下しても、泥を孔部44b,…によりスリット44a,44aに案内して円滑に落下排出し、泥のつまりを防止することができる。
【0035】
また、ガイドカバー44の内周面を平滑な平面として、切断刃47を接近して回転できるように構成し、ニンジンの下端部のひげ根を短くなるように切断できるようにしている。
【0036】
また、ガイドカバー44の左右一側を折曲した側板部44fに切断軸45を軸架し、サイドカバー44のスリット44a,…から離れた下方部位に切断軸45を軸架し、スリット44a,…からの泥の落下排出が円滑になるようにしている。
【0037】
また、前記左右傾斜案内板48,48と、ガイドカバー44と、切断軸45、切断アーム46、切断刃47からなるひげ根切断装置57を一体的なブロック構成とし、このひげ根切断装置57の上側外側部をアウタフレーム43に前後方向の軸49により支持し、左右揺動自在に構成している。
【0038】
しかして、車体が左右に傾斜回動すると、ひげ根切断装置57の下部に配設している切断軸45、切断アーム46、切断刃47がウエイトになって自重により左右に揺動し、ニンジンとひげ根切断装置57の垂下方向が合致し、ニンジンのひげ根の切断精度を高めることができる。
【0039】
また、ひげ根切断装置57を軸49で軸支した垂下支持方式とし、アクチュエータを用いないで揺動するようにしたので、構成を簡素化することができる。
また、走行車体の左側部に収穫部Cを設け、走行車体における進行方向左側部のアウタフレーム43の内側部で且つ左傾斜案内板48の上側部下方部位に前後方向の軸49を設けてひげ根切断装置57を揺動自在に支持しているので、機体が右側が下り傾斜状態で多くなされる収穫作業において、ひげ根切断装置57をアウタフレーム43から離れた垂下揺動状態とし、ニンジンの垂下方向と合致させ、ひげ根の切断精度を高めることができる。
【0040】
また、アウタフレーム43の内側部で左傾斜案内板48の上側部下方部位で、且つ、ガイドカバー44の案内面より上方に前後方向の軸49を設けたので、ガイドカバー44のスリット44a,…から落下した泥が軸49に落下せず、ひげ根切断装置57の揺動状態を長期にわたり保持することができる。
【0041】
また、アウタフレーム43の内側一箇所の軸49でひげ根切断装置57を支持し、このアウタフレーム43を堀取フレーム20に上下調節自在に取り付けているので、ひげ根切断装置57の揺動機能を維持しながら容易に上下調節することができる。
【0042】
次に図7〜図9に基づく、ひげ根切断装置57の他の実施例について説明する。
ガイドカバー44の下方には切断軸45、切断アーム46及び切断刃47からなる切断装置を設け、ガイドカバー44の左右両側には、図5(B)に示すように、切断刃47の回転上側部外周に沿うように側面視で円弧状の左右傾斜案内板48,48を設け、左右傾斜案内板48,48には中央寄りのガイドカバー44側に向けて下り傾斜となる左右傾斜案内面48a,48aを形成している。
【0043】
また、左右傾斜案内板48,48の内側に設けているガイドカバー44を、左右両側部が高く中央寄りが低くなるように正面視でV字型の傾斜面を構成し、このV字型傾斜面の底部に前後に沿うように中央スリット44cを構成し、V字型の左右傾斜面に複数の左右スリット44d,…、44e,…を平行状に形成している。
【0044】
ガイドカバー44の下方には、切断軸45、切断アーム46、切断刃47からなる切断装置を設けている。この切断刃47,…を回転方向に所定間隔毎に配設し、切断刃47を正面視で左右外側が高く中央側が低くなるように傾斜している左右切断刃47a,47bで構成している。左右切断刃47a,47bの内側に切断軸45に沿うように正面視で直板状の中央切断刃47cを設け、ガイドカバー44の内周に沿って左右切断刃47a,47bが接近して回転するようにしている。
【0045】
また、左右切断刃47a,47bの内側端部に中央切断刃47cをそれぞれ接続し、この中央切断刃47c,47cを内周側と外周側に所定間隙開けてずらせて配置して、その間にスリット47dを設けている。この中央切断刃47c,47cの回転上手側端縁を切断軸45と平行な切断刃体を形成し、回転下手側ほど順次外周側に傾斜する傾斜面に構成し、切断性能の向上を図っている。
【0046】
また、図5に示すように、切断軸45に例えば回転方向所定間隔毎に3組の左右切断アーム46,…を取り付け、左右切断アーム46,…の外周部に左右3組の左右切断刃47a,47bを例えば溶接して取り付け、内周側と外周側の中央切断刃47c,47cをスリット47dを空けた状態でスポット溶接し一体化している。
【0047】
前記構成によると、中央切断刃47c,47cの刃厚を厚くし、耐久性を高めながら、スリット47cの所定間隙を維持し切断性能を高めることができる。
また、中央切断刃47c,47cを内周側と外周側にずらせて配置し、その間にスリット47dを設け、この中央切断刃47c,47cの回転上手側端縁を切断軸45と平行な切断刃体に形成し、回転下手側ほど順次外周側に傾斜する傾斜面に構成している。そして、左右傾斜案内板48,48の内側に設けているガイドカバー44における左右両側部が高く中央寄りが低くなる正面視でV字型の傾斜面の底部と、中央切断刃47c,47cとを近接して対向するように配置し、左右中央切断刃47c,47cの回転方向上手側から下手側全体に亘ってスリットを構成している。
【0048】
しかして、ニンジンの下端部の多く通過する部位の中央切断刃47c,47cの耐久性を高めることができる。また、外周側の中央切断刃47cの内側面に泥の停滞するのを防止し、円滑にひげ根切断作用を継続し、耐久性を高めることができる。
【0049】
また、中央切断刃47c,47cの間には、図5(A)に示すように、回転方向上手側から下手側が角度αに沿って順次広くなるスリットを設けているので、外周側の中央切断刃47cの内側面全体の泥を掻き落とすことができる。
【0050】
次に図10(a)(b)に基づく、ひげ根切断装置57の他の実施例について説明する。
前記左右傾斜案内板48,48と、ガイドカバー44と、切断軸45、切断アーム46、切断刃47からなるひげ根切断装置57を一体的なブロック構成とし、左右両側にアウタフレーム43及びインナフレーム51を取り付けている。左右引抜フレーム15,15から伸縮調節自在の左右吊下ワイヤ54,54を吊り下げてアウタフレーム43及びインナフレーム51の上部両側を連結し、ひげ根切断装置57を吊下状態に支持している。
【0051】
前記構成によると、左右吊下ワイヤ54,54でニンジンの搬送を妨げずにひげ根切断装置57を支持し、機体の左右傾斜回動に対応してひげ根切断装置57を左右に揺動させ、切断精度を高めることができる。
【0052】
また、引抜搬送装置24の左右挟持搬送ベルト18,18の下端部から同じ長さの左右吊下ワイヤ52,52により吊下支持し、平行リンク機能を持つようにしているので、ニンジンの吊下長さと左右吊下ワイヤ52,52の長さをほぼ等しくすることができ、機体の傾斜回動時に切断刃47の中央切断刃47c,47cを水平状で左右に移動させひげ根を切断することができ、切断精度を高めることができる。
【0053】
また、ひげ根切断装置57の左右両側に設けているアウタフレーム43とインナフレーム51の下端部を、左右スプリング53,53により搬送経路の中央寄りに押圧しているので、ひげ根切断装置57の不要な左右動を抑制し、切断精度を高めることができる。
【0054】
また、左右吊下ワイヤ54,54に代えて、伸縮調節自在のロッド(図示省略)により剛体で構成し、ロッドの上端部を左右回動自在に軸支し、ひげ根切断装置57を吊下支持してもよい。このように構成すると、ひげ根切断装置57の飛び跳ね振動を防止し、ひげ根切断精度を高めることができる。
【0055】
また、左右吊下ワイヤ54,54に代えて伸縮調節自在のパイプ(図示省略)で剛体的に吊り下げ、パイプ内に電線を配線し、切断刃47の駆動用モータ52を駆動するようにすると、配線をコンパクトにし、電線の耐久性を高めることができる。
【0056】
また、スリット44aを構成しているガイドカバー44を弾性のあるバネ材で構成すると、搬送中のニンジンがガイドカバー44に衝突することにより撓み、切断刃47の外周部に接触し、切断刃47に付着している泥を落すことができ、切断性能を高めることができる。
【0057】
次に図11及び図12に基づく、ひげ根切断装置57の他の実施例について説明する。
スリット44aの形成されているガイドカバー44の左右両側には、図7に示すように、切断刃47の回転上側部外周に沿うように側面視で円弧状の左右傾斜案内板48,48を配設し、左右傾斜案内板48,48には中央寄りのガイドカバー44側に向けて下り傾斜となる左右傾斜案内面48a,48aを形成している。ガイドカバー44の下方には、切断軸45、切断アーム46、切断刃47からなる切断装置を設けている。左傾斜案内板48の側面にアウタフレーム43を取り付け、機体フレーム1にアウタフレーム43を前記実施例と同様に上下及び前後調節自在に取り付けている。
【0058】
前記ガイドカバー44のスリット44a、…の形成しているガイド面44dを切断刃47の外周部に形成するにあたり、図11に示すように、ガイド面44dを、切断刃47の最高位回転位置から前側へ45度回転した位置よりも後方に位置する後側ガイド面44daを、側面視で円弧状に構成している。また、それより前側の前側ガイド面44dbを、側面視で切断刃47の回転円周よりも上側に位置し、例えば後上り傾斜45度になるように前方上方へ突出するように形成している。
【0059】
前記構成によると、ガイドカバー44の例えば後上り傾斜45度となるように前方へ突出している前側ガイド面44dbに、ニンジンの下端部がゆっくりと接触しながらガイドカバー44のスリット44a,…に進入し支持され、ニンジンの衝突による損傷を抑制することができる。また、ニンジンの下端部が前側ガイド案内面44dbに案内されている状態では切断刃47により切断されず、後側ガイド面44daの前側端部に到達して初めてニンジンのひげ根が切断されるので、ひげ根の切断位置を揃え切断性能を高めることができる。
【0060】
また、後側ガイド面44da、前側ガイド面44dbの左右両側には、左右傾斜案内板48,48をこれらに沿うように平行状に配設し、左右傾斜案内板48,48の前側端部を平面視で左右両側ほど左右外側前方に傾斜状に突出する先端案内面48a,48aを形成している。
【0061】
前記構成によると、左右傾斜案内板48,48によりニンジンの下端部をガイドカバー44のスリット44a,…に確実に案内することができる。また、左右傾斜案内板48,48の前側端部を平面視で左右両側ほど左右外側前方に傾斜状に突出する先端案内面48a,48aを形成しているので、搬送中のニンジンを左右傾斜案内板48,48に確実に取り込むことができる。
【0062】
また、ガイドカバー44の前側ガイド面44dbを弾性板体で構成し、前側ガイド面44dbの後側端部を後側ガイド面44daの前側端部に固着連結し、前側ガイド面44dbの前側端部を左右傾斜案内板48,48に連結しないように構成し、前側ガイド面44dbの前側端部にウエイト50,50を取り付けている。
【0063】
前記構成によると、ニンジンの前側ガイド面44dbへの案内時の衝撃を緩和し、ニンジンの損傷を抑制することができる。また、前側ガイド面44dbの前側端部にウエイト50,50を取り付けることにより、振幅を大きくし、ニンジンの損傷を抑制することができる。
【0064】
また、前記引抜搬送装置24の後下部には、左右挟持搬送ベルト18,18によって搬送されてきたニンジンを引き継ぎ、ニンジンの茎葉部の切断位置を揃える左右位置揃え装置58,58と、該左右位置揃え装置58,58から茎葉部を引き継いで挟持して機体後方まで搬送する左右茎葉搬送装置59,59と、茎葉部を切断する左右切断装置60,60と、該左右切断装置60,60によって切断された茎葉を左右茎葉搬送装置59,59の終端部から圃場に排出する排葉シュータ61とを設けて排葉搬送装置62を構成することにより、収穫部Cが構成される。
【0065】
次に、引継搬送部Dについて説明する。
図1〜図3で示すように、前記茎葉切断装置60,60の下方に前後残葉処理フレーム63,63を設け、該前後残葉処理フレーム63,63の左右両側の前後間に左右残葉処理ローラ64,64を回転自在に取り付ける。そして、該左右残葉処理ローラ64,64にゴムやウレタン等の弾性体で構成する残葉処理ベルト65を無端状に巻回し、該残葉処理ベルト65の上部にニンジンの根部に残った残葉を残葉処理ベルト66と共に挟み込んで回転して切除する残葉処理ローラ66を取り付けて、収穫部Cから引き継いだニンジンの残葉を処理しながら機体の左右一側から左右他側に搬送する残葉処理装置67を構成する。
【0066】
また、該残葉処理装置67の始端側で且つ機体前側に茎葉切断装置60,60よりも機体前側に落下した作物を受ける格子状の受け台68を下り傾斜姿勢で設け、機体左右一側部で且つ該受け台68よりも機体内側に汲上搬送駆動ローラ69を設けると共に、左右他側部側に汲上搬送従動ローラ70を設ける。そして、前記残葉処理装置67よりも機体前側で且つ残葉処理装置67に隣接させて、汲上搬送駆動ローラ69と汲上搬送従動ローラ70とに汲上搬送ベルト71を無端状に巻回して、前記残葉処理装置67と受け台68とからニンジンを引き継いで機体左右他側に汲上搬送する汲上搬送コンベア72が構成される。前記残葉処理装置67と上り傾斜姿勢に設ける汲上搬送コンベア72とから、汲上搬送部Dが構成される。
【0067】
次に、選別搬送部Eについて説明する。
図2、図3で示すように、操縦部Bの後部に左右選別搬送フレーム73,73を取り付け、該左右選別搬送フレーム73,73の機体前側の左右間に選別搬送駆動ローラ74を回転自在に取り付け、該選別搬送駆動ローラ74よりも機体後側に選別搬送従動ローラ75を回転自在に取り付ける。また、前記選別搬送駆動ローラ74と選別搬送従動ローラ75との間に選別搬送テンションローラ76を回転自在に取り付ける。そして、前記選別搬送駆動ローラ74と選別搬送従動ローラ75と選別搬送テンションローラ76とに複数の弾性体突起を備える弾性体ベルト77を無端状に巻回することによって、後上り傾斜姿勢の選別搬送コンベア78が構成される。さらに、該選別コンベア78を始端部が汲上搬送部Dの汲上コンベア72の終端下方に位置するように配置する。
【0068】
また、前記選別搬送従動ローラ75の回転軸にシュータ79を上下回動自在に取り付け、該シュータ79の機体左右外側にシュータ79を上下回動させる操作レバー80を取り付けることによって、選別搬送部Eが構成される。
【0069】
次に、収容部Fについて説明する。
図1〜図3で示すように、前記左右選別搬送フレーム73,73の下部に左右支持フレーム81,81を設け、該左右支持フレーム81,81に伸縮自在なダンパ82の一端を取り付ける。そして、左右選別搬送フレーム73,73の後下部にニンジンを収容するコンテナやフレコンバッグ、袋体等の収容容器83を設置する収容容器置台84を上下回動自在に且つ上り傾斜姿勢に取り付けると共に、該収容容器置台84にダンパ82の他端を取り付ける。
【0070】
また、該収容容器置台84の後端部に予備の収容容器83を設置する予備収容容器置台85を上下回動自在で且つ上り傾斜姿勢で取り付ける。さらに、前記収容容器置台84や選別搬送コンベア78や右クローラ6Rよりも機体左右他側に機体前後方向に長いニンジンを収容した収容容器83を積載する収容容器積載台86を機体内側へ折り畳み自在に取り付ける。
【0071】
そして、該収容容器積載台86の機体外側に、収容容器積載台86の上方を越えて且つ選別搬送コンベア78に向けて屈曲させた支持フレーム87を取り付け、該支持フレーム87の上に補助作業者が着座する補助作業座席88を取り付ける。そして、前記収容容器積載台86の後部に予備の収容容器83を設置する第2予備収容容器置台89を取り付けて、収容部Fが構成される。
【符号の説明】
【0072】
24 引抜搬送装置
47 下部切断処理装置
44 ガイドカバーカバー
44a スリット
44c 中央スリット
48 左右傾斜案内板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム(1)の左右一側に圃場から根菜を引き抜き収穫する引抜搬送装置(24)を前後方向に設け、該引抜搬送装置(24)の中途部下方に切断部材で根菜下端部の不要部分を切断する下部切断処理装置(47)を設けた根菜類収穫機において、前記引抜搬送装置(24)の根菜搬送方向である前後方向に対して前記下部切断処理装置(47)を左右方向に移動自在に支持し、機体の左右傾斜回動に関連して下部切断装置(47)を左右に移動させることを特徴とする根菜類収穫機。
【請求項2】
前記下部切断処理装置(47)の回転外周側に根菜の下端部が進入するスリット(44a)を左右中央部に形成した案内カバー(44)を設け、該案内カバー(44)に接近するほど低くなる傾斜姿勢の傾斜案内板(48)を案内カバー(44)の側方に設けたことを特徴とする請求項1記載の根菜類収穫機。
【請求項3】
前記下部切断処理装置(47)の中央切断刃体(47c)を回転軸心に沿う直板状の刃体で構成し、該中央切断刃体(47c)の左右両側に接続する左右切断刃体(47a,47b)を左右外側ほど大径になる傾斜状の刃体で構成し、前記案内カバー(44)の左右中央に前後方向に沿った中央スリット(44c)を形成し、該中央スリット(44c)の左右両側に左右外側ほど回転軸心から外周側に遠ざかる左右傾斜面を構成して、前記下部切断処理装置(47)の左右傾斜切断刃体(47a,47b)の外周部に沿わせて配設したことを特徴とする請求項1または2記載の根菜類収穫機。
【請求項4】
前記下部切断処理装置(47)の中央切断刃体(47c)を、内周側の刃体と所定間隙を空けた外周側の刃体とで構成し、内周側の刃体と外周側の刃体とを接続して一体構成することを特徴とする請求項1または2記載の根菜類収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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