説明

椅子

【課題】複雑なリンク機構を用いることなく簡易な構成で座を可動に構成し、且つ、着席後における足元の空間を大きく確保できる椅子を提供する。
【解決手段】前側部分5fが下方に屈曲し得る座5を座姿勢可変機構6を介して支柱4に支持する。座姿勢可変機構6は、支柱4の上端部の前方にて座5の前側部分5fに連結され、かつ、座5の前側部分5fを傾動方向に回動自在に支持する傾動支持機構9と、座5の後側部分5rを支柱4の上方に支持し、かつ、座5の後側部分5rを上方に付勢する付勢機構10とを有する。未着座時には座5の後側部分5rが略水平に保たれ前側部分5fが下方へ屈曲した姿勢になっている。その状態から座5の後側部分5rに着座することにより、座付勢機構6の付勢力に抗して後側部分5rが押し下げられ、その動きに連動して前側部分5fが略水平姿勢に変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、講義室等の床に固定して設置される椅子に関し、より詳細には、不使用時に座を屈曲させてその前後幅を小さくすることができる椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
講義室等の床に固定して設置される椅子のなかには、不使用時に、椅子全体を前方に傾倒させると同時に、座を後方に引き上げるようにして起立させた状態で収納できるように構成したものがある。この種の椅子は、床に固定されたベースと座とを連結する前脚をリンク要素として含む4節リンク機構によって、椅子全体の前後への回動とそれに連動した座の動きを実現している(特許文献1、2参照)。
【0003】
この種の椅子は、椅子全体を前方に傾倒させた不使用状態と着席のために起こした使用状態とに可変であるため、不使用時のみならず使用時においても、着席者が腰を浮かせながら椅子を前傾させることにより、椅子の後方に通路を確保することができるという利点を有している。
しかし、座の姿勢を変化させるためのリンク機構を構成する椅子の前脚が座の先端近傍と床に固定されたベースとの間に掛け渡された状態で存在するため、着席者の足が椅子の前脚に当たるなどしてリンク機構が邪魔になり、さらには、着席時における足元の空間を狭めてしまい、着席者に不自由な着席姿勢を強いる原因になっていた。
【0004】
そこで、座を屈曲可能に構成するとともに、座の姿勢を変化させるための機構を全て支柱の上部に配置してなる椅子が提案された(特許文献3参照)。この椅子は、着席時に足元に広い空間を確保することができるという利点に加えて、使用者が着席する際、座が屈曲してその前後幅が縮小した状態になっているため、椅子の前に机が設置されている状況においても、机と座との間に広い空間を確保して、使用者が足を踏み入れ易くできるという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2927712号公報
【特許文献2】特許第3803642号公報
【特許文献3】特開2009−172087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の椅子は、椅子を不使用状態から使用状態に変化させる途中の段階では座面が水平にならないため、着席しにくいという欠点を有している。すなわち、特許文献1及び2記載の椅子は、不使用状態においては椅子の座が略垂直に起立した姿勢になっており、椅子を完全に起こして使用状態にしなければ座面が水平にならない。また、特許文献3記載の椅子は、不使用状態においては椅子の座が三角屋根形状に屈曲した姿勢になっており、屈曲している座の頂上を完全に押し下げて使用状態にしなければ座面が水平にならない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、複雑なリンク機構を用いることなく、簡単な構成で座を屈曲可能に構成するとともに、不使用状態においても略水平に保たれた座面を有する座りやすい椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の椅子は、床に固定されるベースと、当該ベースにその下端部が支えられて床に立設される支柱と、当該支柱の上方に設けられた座と、を有する椅子であって、
前記座は、その前側部分が後側部分に対して下方に傾動自在に形成されるとともに、座姿勢可変機構を介して前記支柱に支持されており、
前記座姿勢可変機構は、
前記支柱の上端部の前方にて前記座の前側部分に連結され、かつ、前記座の前側部分を傾動方向に回動自在に支持する傾動支持機構と、
前記座の後側部分を前記支柱の上方に支持しつつ上方に付勢する付勢機構と、を有し、
未着座時には前記付勢機構の付勢力により前記座の後側部分が略水平に保たれ前側部分が下方に傾斜した姿勢となる状態を保持し、当該状態から前記座の後側部分に着座することにより、前記座付勢機構の付勢力に抗して前記座の後側部分が押し下げられ、その動きに連動して前記座の前側部分が略水平姿勢に変化するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
上記のように構成された椅子によれば、座の前側部分を傾動方向に回動自在に支持する傾動支持機構と座の後側部分を上方に付勢する付勢機構とからなる簡単な構成の座姿勢可変機構により座の姿勢を可変とすることができる。また、座姿勢可変機構を構成する要素のうち、支柱の前方に存在する要素が、支柱の上端部の前方にて座の前側部分に連結された傾動支持機構のみであるため、着席後における足元の空間を大きく確保することができる。そして、不使用状態においても座の後側部分は略水平に保たれているので、使用状態にしなければ座面が水平姿勢にならない従来の椅子と比較して座りやすい。
【0010】
本発明の椅子において、前記座の屈曲する部分は可撓性を有する部材で構成されていることが望ましい。
上記のように構成された椅子によれば、座の前側部分を可撓性を有する部材自体の変形により後側部分に対して屈曲自在とすることができるので、座の前側部分と後側部分とを連結する可動部品を省略できる。
【0011】
また、本発明の椅子において、前記傾動支持機構は、前記支柱の上端部より前方に延びる座支持部の先端部に設けられていることが望ましい。
上記のように構成された椅子によれば、座姿勢可変機構を構成する要素のうち、支柱の前方に存在する要素が、支柱の上端部より前方に延びる座支持部の先端部に設けられた傾動支持機構のみであるため、着席後における足元の空間を大きく確保することができる。
【0012】
また、本発明の椅子において、前記傾動支持機構は、前記座の前側部分の下面部に設けられたガイド部材と、前記座支持部の先端部に設けられた支軸とを有し、当該ガイド部材と当該支軸とが上下方向に互いに回動自在かつ当該前側部分の下面に沿って前後方向に互いに摺動自在に連結されていることが望ましい。前記ガイド部材は、前記座の前側部分の下面に沿って前後方向に延びるガイド孔を有し、当該ガイド孔に前記支軸が回動自在かつ摺動自在に挿通されていることが望ましい。
上記のように構成された椅子によれば、座の前側部分を傾動支持機構によって支持しつつ、座の前側部分を円滑に回動連動させて、座の前側部分の姿勢を変化させることができる。
【0013】
また、本発明の椅子において、前記支柱は、前記ベースに前後方向に回動自在に支持されていることが望ましい。
上記のように構成された椅子は、不使用時に、椅子全体を前方に傾倒させた状態で収納できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
(1)座の前側部分を傾動方向に回動自在に支持する傾動支持機構と座の後側部分を上方に付勢する付勢機構とからなる簡易な構成の座姿勢可変機構により座の姿勢を可変とすることができる。
(2)座姿勢可変機構が支柱の上部に配置されているので、着席後における足元の空間を大きく確保できる。
(3)不使用状態においても略水平に保たれた座面を有しているので座りやすい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の椅子の実施形態を例示する斜視図 (a)は椅子の使用状態を示す斜視図 (b)は椅子の不使用状態を示す斜視図
【図2】図1の椅子を机と共に設置した実施形態を例示する側面図 (a)は椅子の不使用状態(収納状態)を示す側面図 (b)は椅子の不使用状態(着座開始時の状態)を示す側面図 (c)は椅子の使用状態(着席時の状態)を示す側面図
【図3】図1の椅子の分解斜視図
【図4】図1の椅子の不使用状態(収納状態)を示す部分断面図
【図5】図1の椅子の不使用状態(着座開始時の状態)を示す部分断面図
【図6】図1の椅子の使用状態(着席時の状態)を示す部分断面図
【図7】本発明の椅子の別の実施形態を例示する側面図
【図8】図7の椅子の動作態様を示す側面図(a)は椅子の不使用状態(収納状態)を示す側面図 (b)は椅子の不使用状態(着座開始時の状態)を示す側面図 (c)は椅子の使用状態(着席時の状態)を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の椅子の実施形態について説明する。
図1(a)、(b)は本発明の椅子の実施形態を例示する斜視図である。図2(a)、(b)、(c)は図1の椅子を机と共に設置した実施形態を例示する側面図である。図3は図1の椅子の分解斜視図である。図4は椅子の不使用状態(収納状態)を示す部分断面図である。図5は椅子の不使用状態(着座開始時の状態)を示す部分断面図である。図6は椅子の使用状態(着席時の状態)を示す部分断面図である。この実施形態の椅子2は、大学や企業の講義室等に設置される椅子である。
【0017】
図2に示すように、講義室等の床Fには、複数の机1が前後方向に等間隔に固定して設置されており、各机1の後に椅子2が設置されている。机1は左右横長に形成されている。椅子2は机1に沿って複数設置されている。
【0018】
椅子2は、床Fに固定されたベース3と、ベース3に支えられて床Fに立設された支柱4とを有している。支柱4は水平断面が方形状の筒体であり、その下端部がベース3に連結されている。支柱4の上方には、座5が設けられている。座5は、座姿勢可変機構6を介して支柱4に支持されている。また、支柱4の上端部には支持フレーム7が固定されており、支持フレーム7の後部に背凭れ21が設けられている。支持フレーム7は、支柱4の上端部の左右両側に位置して前後に略水平に延びる一対の座支持部7aと、座支持部7aの後端部から上方に延びる背凭れ支持部7bとを有している。両座支持部7aの先端部には、左右に貫通する軸孔9aが各々形成されている。
【0019】
座5は、硬質の座板5Aとその表面を覆う柔らかいパッド5Bとを有している。座板5Aは前板18fと後板18rとに分割されている。前板18fと後板18rはヒンジ8を介して互いに上下に回動自在に連結されている。パッド5Bは前板18fの動きに追従する。これにより、座5の前側部分5fが後側部分5rに対して下方に傾動可能となっている。
【0020】
座5の前側部分5fの前後幅寸法は、後側部分5rの前後幅寸法よりもやや大きめに選定されている。また、座5の後側部分5rに対する前側部分5fの回動可能範囲すなわち座5の最大屈曲角度が約45°になるように座姿勢可変機構6の構造及び各部材の寸法が選定されている。また、座姿勢可変機構6が座5の姿勢を変化させる際、座5自体がリンク機構として機能することにより、後側部分5rの上下動に連動して前側部分5fが回動するように構成されている。
【0021】
座5の前側部分5fの下面には第1座受け部材(ガイド部材)13が固定して設けられている。座5の後側部分5rの下面には第2座受け部材16が固定して設けられている。第1座受け部材13の左右両側部には、座5の前側部分5fの下面に沿って前後方向に延びるガイド孔14が形成されている。第2座受け部材16の左右両側部には軸孔17が形成されている。
【0022】
座姿勢可変機構6は、傾動支持機構9と、付勢機構としてのガススプリング10とを有している。傾動支持機構9は、支柱4の上端部の前方にて座5の前側部分5fに連結され、かつ、座5の前側部分5fを傾動方向に回動自在に支持している。ガススプリング10は、座5の後側部分5rを支柱4の上方に支持しつつ上方に付勢している。
【0023】
傾動支持機構9は、座支持部7aの先端部に設けられている。この実施形態では、傾動支持機構9は、座5の前側部分5fの下面に固定して設けられた第1座受け部材13と、両座支持部7aの先端部に掛け渡して設けられた支軸12とからなる。支軸12は、第1座受け部材13を両座支持部7aの間に配置した状態で、両座支持部7aの軸孔9a及び第1座受け部材13のガイド孔14に挿通されている。第1座受け部材13は、ガイド孔14に挿通された支軸12により上下方向に回動可能かつガイド孔14に沿って摺動可能に支持されている。これにより、座5の前側部分5fが座支持部7aの先端部に、上下に回動自在かつ前側部分5fの下面に沿って前後に摺動自在に連結されている。
【0024】
ガススプリング10は、図3〜図6に示すように、シリンダ10Aとピストンロッド10Bとを有している。シリンダ10A内には、ピストンロッド10Bを突出させる方向へ付勢する加圧ガスと、ピストンロッド10Bの急峻な動きを抑制するダンパ用のオイルとが密封して収容されている。ガススプリング10は、ピストンロッド10Bを下方に向けた状態で支柱4に挿通されている。シリンダ10Aの上端部は支柱4の上端開口部4aから突出している。シリンダ10Aの上端部には、座5の後側部分5rに連結される連結部19が設けられている。ピストンロッド10Bの下端部にはベース3に連結される連結部20が設けられている。各連結部19、20には左右方向に貫通した軸孔19a、20aが形成されている。
【0025】
ガススプリング10のシリンダ10Aには、水平断面が方形状のカバー部材15が装着されている。カバー部材15は、支柱4の内壁に嵌合した状態で支柱4の軸方向にスライドする部材である。カバー部材15の上端部には左右に貫通した連結孔15aが形成されている。そして、カバー部材15をシリンダ10Aに装着した状態で、シリンダ10Aの軸孔19aとカバー部材15の連結孔15aとに回動軸22を挿通し、その回動軸22を第2座受け部材16の左右の軸孔17に掛け渡して連結することにより、第2座受け部材16がガススプリング10及びカバー部材15の上端部に前後に回動自在に連結されている。これにより、座5の後側部分5rがガススプリング10によって支柱4上に弾力的に支承された状態で前傾方向に回動し得るようになっている。
【0026】
カバー部材15の下端部には、フランジ状の係合部15bが形成されている。一方、支柱4の内壁の上端近傍には内側に突出した係止部4bが形成されている。ガススプリング10の伸張に伴ってカバー部材15が上方に移動する際、カバー部材15の係合部15bが支柱4の係止部4bに当接する。その結果、座5の後側部分5rの上方への移動が制限されると同時に、ガススプリング10の付勢力が支柱4に作用する。
【0027】
ベース3は、矩形状のベース板24を有し、そのベース板24がアンカーボルト23等を用いて床Fに固定されている。ベース板24上には、柱支持部25とスプリング支持部26とが形成されている。柱支持部25は、上部及び前面部が開口した箱形状に形成されている。スプリング支持部26は柱支持部25の内側に設けられている。
【0028】
柱支持部25の左右側壁部の先端近傍には、支柱4を軸支するための軸孔27が形成されている。支柱4の下端部には前方に迫り出した部分を有する脚部材28が固定されている。脚部材28の先端部近傍には、左右に貫通した軸孔29が形成されている。そして、柱支持部25の軸孔27と脚部材28の連結孔29とに支軸30が挿通されて両者が連結されることにより、支柱4がベース3に前後に揺動可能に支持されている。支柱4の揺動範囲は、柱支持部25内における脚部材28の可動範囲によって規定される。すなわち、支柱4の前方への揺動は、脚部材28の先端上部が柱支持部25の先端側内壁に当接することにより制限され、後方への揺動は、脚部材28がベース板24に完全に着座することにより制限されるようになっている。
【0029】
スプリング支持部26は、左右に離間した一対の突起部からなり、両突起部にガススプリング10を軸支するための軸孔31を有している。そして、ピストンロッド10Bの連結部20に設けられた軸孔20aとスプリング支持部26の軸孔31とに支軸32を挿通して両者を連結することにより、ガススプリング10がベース3に前後に揺動可能に支持されている。
【0030】
このように、ガススプリング10を支柱4内に挿通するとともに、ガススプリング10の下端部を床Fに固定されるベース3に連結し、上端部を座5の後板18rに固定された第2座受け部材16に連結したことにより、ガススプリング10によって座5の後側部分5rが支柱4の上方に支持されつつ常に上方に付勢された状態に保たれる。
また、支柱4がその下端部よりも前方に位置する支軸30を支点にして前後に揺動可能に支持されており、座5の後側部分5rが上限まで移動した時点から、支柱4内に挿通されているガススプリング10の付勢力が支柱4に対し上向きに作用する構造になっているので、ガススプリング10は支柱4を前傾させる向きに付勢する手段としても機能することになる。
【0031】
次に、上記のように構成された椅子2の動作について説明する。
図2(a)及び図4に示すように、椅子2は、不使用時には椅子2全体を前方に傾倒させた状態で収納される。このとき、座5の後側部分5rはガススプリング10の付勢力によって押し上げられており、前側部分5fは後側部分5rに対して下方に屈曲した状態になっている。また、椅子2とその後方に設置されている机1との間には、使用者Uが通行できる通路が確保されている。
【0032】
図2(a)及び図4の状態から椅子2に腰掛ける際、使用者Uは椅子2の背凭れ21に手を掛けて椅子2を起こすことにより、椅子2とその前方に設置されている机1との間に足を踏み入れることができる。椅子2を完全に起こしたとき支柱4は若干後傾姿勢になる。このとき、座5の前側部分5fは下方に傾斜しているが、後側部分5rは略水平姿勢に保たれている。
【0033】
図2(b)及び図5に示すように、使用者Uが座5に腰掛けると、使用者Uの臀部により後側部分5rが下方に押圧されるため、ガススプリング10の付勢力に抗して座5の後側部分5rが押し下げられる。その動きに連動して座5の前側部分5fが上方に回動する。
【0034】
そして、図2(c)及び図6に示すように、後側部分5rが完全に押し下げられた時点で、すなわち使用者Uが椅子2に完全に腰掛けた時点で、前側部分5fが略水平姿勢になる。
【0035】
一方、図2(c)及び図6の状態から使用者Uが腰を上げていくと、座5の後側部分5rがガススプリング10の付勢力によって持ち上げられ、その動きに連動して座5の前側部分5fが下方に回動していく。そして、使用者Uが椅子2から立ち上がり、椅子2と机1の間から離れる過程で、図2(b)及び図5の状態を経て椅子2全体が前方に傾動し、図2(a)及び図4の収納状態に戻る。
【0036】
上記のように、この実施形態の椅子2は、座5の前側部分5fを傾動方向に回動自在に支持する傾動支持機構9と、座5の後側部分5rを上方に付勢する付勢機構としてのガススプリング10とからなる簡単な構成の座姿勢可変機構6により座5の姿勢を可変とすることができる。また、座姿勢可変機構6を構成する要素のうち、支柱4の前方に存在する要素が、支柱4の上端部の前方にて座5の前側部分5fに連結された傾動支持機構9のみであるため、着席後における足元の空間を大きく確保することができる。また、未着座時においても座5の後側部分5rは略水平に保たれているので、使用状態にしなければ座面が水平姿勢にならない従来の椅子と比較して座りやすい。また、未着座時に座5の前側部分5fが後側部分5rに対して下方に屈曲しているので、使用者Uが着席したり離席したりする際に座5の前端が邪魔になることがなく、机1と座5との間に広い空間を確保できる。
【0037】
また、この実施形態の椅子2は、座5の前側部分5fの下面部に設けられた第1座受け部材(ガイド部材)13と、座支持部7aの先端部に設けられた支軸2とが上下方向に互いに回動自在かつ座5の前側部分5fの下面に沿って前後方向に互いに摺動自在に連結されているので、座5の前側部分5fを座支持部7aによって支持しつつ、座5の前側部分5fと傾動支持機構9とを円滑に連動させて、座5の前側部分5fの姿勢を変化させることができる。
【0038】
図7は本発明の椅子の別の実施形態を例示する側面図である。図8(a)〜(c)は図7の椅子の動作態様を示す側面図である。
図1〜図6に示した実施形態では、座5の前側部分5fと後側部分5rとに板材を使用し、前側部分5fと後側部分5rとをヒンジ8で連結することにより、前側部分5fを後側部分5rに対して下方に屈曲自在に形成しているが、図7及び図8に示す椅子2においては、座5の屈曲する部分が可撓性を有する部材で構成されている。図7及び図8の例では、座5全体を高強度の樹脂材35で構成するとともに、樹脂材35の屈曲部の裏面側に左右に平行に延びる複数(この例では3)の溝35aを形成することにより、座5を屈曲自在に形成している。
この構成によれば、座5の前側部分5fと後側部分5rとを一体に構成できるので、ヒンジ8を省略することができる。また、前側部分5fと後側部分5rとの境目を無くすことができるので安全性も意匠性もともに向上する。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。
上記実施形態では、付勢機構としてガススプリング10を用いたが、コイルスプリングを用いた機構を採用してもよい。
また、上記実施形態では、座5の後側部分5rが支柱4に対して前傾方向に回動可能に構成されているが、座5の後側部分5rを支柱4に対して回動不能とし、前側部分5fのみ下方に回動し得る構成を採用した場合でも、図2(a)〜(c)に示す一連の姿勢変更動作は可能である。
また、上記実施形態では、支柱4がベース3によって前後に揺動自在に支持されているが、支柱4がベース3に後傾姿勢(図2(b)、(c)の姿勢)で固定されている構成を採用することも可能である。
また、上記実施形態では、支柱4を前傾させる向きに付勢するためにガススプリング10の付勢力を利用しているが、支柱4用の付勢手段をベース3の内部等に設けてもよい。
また、上記実施形態では、第1座受け部材(ガイド部材)13のガイド孔14に支軸12が回動自在かつ摺動自在に挿通されている構成を採用したが、第1座受け部材(ガイド部材)13にガイド孔14の代わりに溝状のガイド部を形成するとともに、当該溝状のガイド部と回動自在且つ摺動自在に係合する突起部を座支持部7aの先端部に形成してもよい。この場合、支軸12は不要である。
また、上記実施形態では、椅子2が机1と並べて床Fに設置されている形態について示したが、机1を使用せず椅子2のみを床Fに固定した形態での使用も可能である。
また、図7の例では、座5全体を可撓性を有する樹脂材35で構成しているが、座5の屈曲する部分のみを可撓性を有する部材で構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
2 椅子
3 ベース
4 支柱
5 座
5f 前側部分
5r 後側部分
6 座姿勢可変機構
7 支持フレーム
8 ヒンジ
9 傾動支持機構
10 ガススプリング(付勢機構)
12 支軸
F 床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に固定されるベースと、当該ベースにその下端部が支えられて床に立設される支柱と、当該支柱の上方に設けられた座と、を有する椅子であって、
前記座は、その前側部分が後側部分に対して下方に傾動自在に形成されるとともに、座姿勢可変機構を介して前記支柱に支持されており、
前記座姿勢可変機構は、
前記支柱の上端部の前方にて前記座の前側部分に連結され、かつ、前記座の前側部分を傾動方向に回動自在に支持する傾動支持機構と、
前記座の後側部分を前記支柱の上方に支持しつつ上方に付勢する付勢機構と、を有し、
未着座時には前記付勢機構の付勢力により前記座の後側部分が略水平に保たれ前側部分が下方に傾斜した姿勢となる状態を保持し、当該状態から前記座の後側部分に着座することにより、前記座付勢機構の付勢力に抗して前記座の後側部分が押し下げられ、その動きに連動して前記座の前側部分が略水平姿勢に変化するように構成されていることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記座の屈曲する部分が可撓性を有する部材からなることを特徴とする、請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記傾動支持機構は、前記支柱の上端部より前方に延びる座支持部の先端部に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の椅子。
【請求項4】
前記傾動支持機構は、前記座の前側部分の下面部に設けられたガイド部材と、前記座支持部の先端部に設けられた支軸とを有し、当該ガイド部材と当該支軸とが上下方向に互いに回動自在かつ当該前側部分の下面に沿って前後方向に互いに摺動自在に連結されていることを特徴とする、請求項3に記載の椅子。
【請求項5】
前記ガイド部材は、前記座の前側部分の下面に沿って前後方向に延びるガイド孔を有し、当該ガイド孔に前記支軸が回動可能かつ摺動自在に挿通されていることを特徴とする、請求項4に記載の椅子。
【請求項6】
前記支柱は、前記ベースに前後方向に回動自在に支持されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−72581(P2011−72581A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227498(P2009−227498)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】