説明

植木鉢

【課題】簡単な構造で一定量の水を長期間植物に自動給水できると同時に、その貯水部を利用して魚等を飼育して双方を同時に楽しむこともできる植木鉢を提供する。
【解決手段】外壁1aで囲って形成した貯水部1の内部に、外壁1aと間隔をおいて内壁2aで囲われた上方を開口した植物育成部2が配置され、貯水部1の天板3と植物育成部2の内壁2aが連結されて貯水部1が密着されるとともに、植物育成部2の底板2bが貯水部1の底蓋4と間隔をおいて位置し、植物育成部2の下部に吸水ヒモ挿通孔2cが設けられ、吸水ヒモ挿通孔2cに毛細管の作用により貯水部1より吸水する吸水ヒモ5が密着させて挿通され、吸水ヒモ5が植物育成部2の底板2b上に載置した吸水マット6に接している植木鉢。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水部の水を植木鉢内の培土に安定して給水することにより、植物育成部で植物を育て、さらには貯水部で魚等を飼うこともできる植木鉢に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植木鉢内に水を自動供給する方式が知られている。例えば、特許文献1には、図7に示すように、動給水機能を持つ植木鉢として、外鉢11と、下方部に取水孔12aが設けられた内鉢12とから構成された植木鉢であって、外鉢11の中に内鉢12が着脱自在に固定される構造になっており、外鉢11の内周面と内鉢12の外周面との間隙が、取水孔12aを除き外気から遮蔽された貯水部13となる密閉空間が形成され、内鉢内の植物が水を消費するにつれ、貯水部13の水が取水孔12aを通じて内鉢12内に移動し、水位は培土を介して作用する大気圧の作用により常にほぼ定水位に保たれる植木鉢が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、自動給水機能をもつ底面給水方式の植木装置として、図8に示すように、培土容器14と、給水容器15と、溜水容器16と、給水容器15から溜水容器16に流れる水量を溜水容器16内の水位が常にほぼ一定になるように調整する水量調整装置から構成され、水量調整装置として止水弁17をフロート18によって給水孔19に直接押し付けたり離したりする方式を用い、また貯水容器を鑑賞魚用の水槽とすることが開示されている。
【特許文献1】特開2004−57184号
【非特許文献1】再公表特許WO01/000009号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の植木鉢では、密閉された貯水部の水が取水孔を通じて内鉢に移動するように構成されているので、大気圧の作用により、常にほぼ定水位に保たれるが、取水孔の位置によって内鉢内の水位が変わるので、植物の種類によってその植物に合った水位に適合する鉢を準備しなくてはならないという欠点がある。また、水を入れて鉢を組み立てる時、取水口から一時多くの水が入るためと、その後も一定の水位を保つしくみのため、ハイドロボール以外の用土で栽培した植物では根腐れを起こすおそれが大きいと思われる。また、貯水部の水が用土と直接接しているので汚れやすいという欠点がある。
【0005】
また、特許文献2の植木鉢では、給水容器と溜水容器の間に水量調整装置を設ける必要があるので植木鉢の構造が複雑になり、また、溜水容器の水位によって培土容器内の水位が変わるので、植物によっては根腐れを起こすおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構造で一定量の水を自動給水できる植木鉢を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の植木鉢は、外壁で囲って形成した貯水部の内部に、外壁と間隔をおいた内壁で囲われるとともに上方を開口した植物育成部が配置され、貯水部の天板と植物育成部の内壁が連結されて貯水部が密閉されるとともに、植物育成部の底部が貯水部の底部と間隔をおいて上方に位置し、植物育成部の下部に貯水部と植物育成部を貫通した吸水ヒモ挿通孔が設けられ、吸水ヒモ挿通孔に毛細管の作用により貯水部より吸水する吸水ヒモの一方が密着して挿通されて貯水部に垂れるとともに、吸水ヒモの他方が植物育成部の底板上に載置した吸水マットに接していることを特徴とする。
【0008】
本発明は、前記構成により、吸水ヒモ挿通孔より上の水を大気圧の作用により空気と交換しながら利用し、吸水ヒモ挿通孔より下の水を吸水ヒモの毛細管現象により利用するという特徴を持つものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の植木鉢は、植物育成部に吸水ヒモと吸水マットを組み合わせた簡単な構造でありながら、使用時に貯水部を密閉状態にすることで、長期間一定量の水を自動吸水することができる。
【0010】
本発明の植木鉢は、吸水ヒモ挿通孔と吸水ヒモを密着させて挿通させるので、貯水部の水が吸水ヒモ挿通孔を通して植物育成部に直接流れ込むことはなく、また貯水量が減っても吸水ヒモによって貯水部の水を底まで吸水するので、より長期間安定して水を供給できる。
【0011】
さらに、本発明の植木鉢は、吸水ヒモ挿通孔の吸水ヒモを通して、植物の吸った水の量だけ水中の魚等に空気(酸素)を供給することができ、透明な容器にすることで植物と魚等を同時に鑑賞することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施例について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1(a)は本発明の植木鉢の斜視図、(b)は(a)のA−A断面図、図2は本発明の植木鉢の使用状態を示す縦断面図である。
【0014】
図1、図2において、円筒状の外壁1aで囲って形成した貯水部1の内部に、外壁1aと間隔をおいて円筒状の内壁2aで囲われた、上方を開口した植物育成部2が配置される。貯水部1の天板3と植物育成部2の内壁2aが連結されて貯水部1が密閉される。貯水部1の密閉は、たとえば、貯水部1の外壁1aと植物育成部2の内壁2aのそれぞれの上縁を天板3で連結したり、あるいは貯水部1の天板3と植物育成部2の内壁2aとを接触させて植物育成部2を支持したりすることにより貯水部1を密着する。なお、天板3が貯水部1の外壁に対して、あるいは植物育成部2が天板に対して、あるいは天板3と一体の植物育成部が貯水部の外壁に対して密着あるいは取り外し可能な構造にしてもよい。
【0015】
なお、貯水部1は円筒状に限らず、例えば、金魚等を飼う容器のようにボール型や直方体など貯水できる形状であればよい。また、貯水部及び/又は植物育成部の一部又は全部が透明にして植木鉢の内部が見えるようにしてもよく、外壁1a、内壁2a、天板3を樹脂で一体成形する場合、透明材料、例えば透明のアクリル樹脂を使用してもよい。
【0016】
植物育成部2の下部は底板2bで塞がれており、底板2bは、貯水部1の下部に取り付けて貯水部1をOリング1bのパッキンを介して閉じる底蓋4から間隔をおいたレベルに形成する。底板2bと底蓋4との間に間隔を設けて貯水部1上部のドーナツ状横断面の貯水部が連通し、貯水量を増やすことができる。
【0017】
植物育成部2の下部には貯水部と植物育成部を貫通した吸水ヒモ挿通孔を設け、吸水ヒモの毛細管の作用により貯水部より吸水する。本実施例では、植物育成部2の内壁2aには底板2bの近くに毛細管の作用により吸水する吸水ヒモ5を押し込んで密着させて挿通させる吸水ヒモ挿通孔2cが形成されている。吸水ヒモ挿通孔2cからは吸水ヒモ5が底板2bに沿って水平方向に挿通されて貯水部1に垂れる。この吸水ヒモ挿通孔2cにより、吸水ヒモ挿通孔2cより上の水を大気圧の作用により空気と交換しながら利用し、吸水ヒモ挿通孔より下の水をヒモの毛細管現象により利用することができる。
【0018】
吸水ヒモ挿通孔2cに吸水ヒモ5を押し込んで密着させて挿通させるので、貯水部の水が吸水ヒモ挿通孔を通して植物育成部内に直接流れ込むことはない。
【0019】
底板2bから垂らした吸水ヒモ5は底蓋4に達するようにすることにより、貯水部1の底部に貯留された水を無駄なく利用することができる。
【0020】
図1(a)では吸水ヒモ挿通孔2cは一箇所であるが、吸水量を多くする場合には、複数の吸水ヒモ挿通孔2cを、間隔をおいて設置してもよい。
【0021】
吸水ヒモ5は植物育成部2の底板2bの上に載置した吸水マット6に接合され、吸水ヒモ5で吸水された水は吸水マット6に浸透していく。吸水ヒモ5と吸水マット6の接触面積を大きくするとともに、密着させることにより、吸水ヒモ5で吸水した水を吸水マット6に確実に浸透させて吸水することができる。
【0022】
次に、本発明の植木鉢の使用方法について説明する。
【0023】
図2において、植物育成部2の吸水ヒモ挿通孔2cに吸水ヒモ5を押し込んで密着した状態で挿通させ、吸水ヒモ5の一方の側を底板2bに残すとともに、他方の側の端を底蓋4に達するように垂らす。
【0024】
次いで、植木鉢を逆さまにした状態で、水を貯水部1に入れた後、底蓋4を、Oリング1bを介して外壁1aに取り付けて貯水部1を密閉する。貯水部1に魚や水草を入れる場合には、これらを入れた後に底蓋4を取り付ける。
【0025】
底蓋4をした後に植木鉢を反転させて起こし、植物育成部2の底板2bに吸水マット6を敷く。吸水マット6に吸水ヒモ5で吸い上げられた水が浸透してくる。
【0026】
吸水マット6が十分吸水したら、植物育成部2内に底部に吸水孔を有する花や庭園木などの植物を鹿沼土、ピートモスなどを混合した一般的な培土に植えた植物ポット7を載せ、植物ポット7の吸水孔と吸水マット6を密着させる。植物ポット7内には、吸水マット6の水が植物ポット7の吸水孔を通してしみ込んで植物に水が供給される。
【0027】
貯水部1に魚等を入れた場合、植物の吸水に応じて、大気圧により培土←→マット←→ひも←→の順に空気と水とが交換し、植物が吸った水の量だけ、ヒモ挿通孔から空気が貯水部に気泡として入り魚等に酸素が供給される。
【実施例2】
【0028】
図3は本発明の植木鉢の別実施例を示す縦断面図である。
【0029】
本実施例は、貯水部1の外壁1aと底部1cを一体に形成し、植物育成部2の円筒状の内壁2aにはその上縁の回りに天板3が設けられた構造にしたものである。なお、天板3は植物育成部2の内壁2aの上縁以外の他の位置で連結してもよい。外壁1aの上縁にはネジ1dが形成され、貯水部1の天板3には外壁1aの上縁のネジ1dに螺合するネジ2dが形成されているとともに、空気抜き、吸水あるいは給餌を兼ねた開孔3aが開けられ栓3bによって密栓できるように形成されている。開孔3aは、天板に限らず貯水部1の外壁や底板に設けてもよく、また、一箇所に限らず複数箇所に設けてもよい。
【0030】
本実施例では貯水部1に上から水を入れる。吸水ヒモ5及び吸水マット6をセットするとともに、空気抜き孔3aの栓3bをはずした植物育成部2を貯水部1の上部に載せると貯水部1の水位が上昇し、ネジ1d,2dを螺合させる時、植物育成部2が水を押し上げるため、最後には空気抜き孔3aから溢れ、植物育成部2に入ることなく貯水部1に一杯となる。この時栓3bをすることで貯水部1を密閉する。その後、植物育成部2内に、実施例1と同様に、植物ポットを給水マットに載せ給水できるようにする。
【0031】
実施例1では大型の植木鉢の場合、給水した後に反転させるので重たいのに対して、本実施例では、植木鉢を反転させる必要がないので、大型の植木鉢に適している。
【実施例3】
【0032】
図4は本発明の植木鉢の別実施例を示す縦断面図である。
【0033】
本実施例では、貯水部1に衣服に装着したり、本実施例の植木鉢を連結したりするため、クリップなどの固定手段1eを貯水部1に設けたものである。例えば、小さな植木鉢にして固定手段1eによりボールペンの様に衣服に装着することができる。この場合、実施例2と同じような構造になるが、小さいため空気抜き孔を使わず、ネジの螺合により水があふれないように密閉する。
【0034】
また、植物育成部に入れるものも用土を入れたポットよりは切花などがさせる人ロ培地が適している。本実施例の植木鉢は、小さな植物や切花での装飾に利用し、1個で衣服に装着したり、多数を連結して祭壇や菊人形風な装飾ができる。
【実施例4】
【0035】
図5は本発明の植木鉢の別実施例を示す縦断面図である。
【0036】
本実施例は、貯水部1と給水手段として外部の補助タンク20をホース20aにて接続して給水する例である。この場合、先ず空気抜き孔3aの栓3bを開け、補助タンク20からの水を、ホース20aを経て吸水孔20bを通して導入する。貯水部1が水で一杯になつた時、空気抜き孔3aに栓3bをすることで貯水部1を密閉する。後は他の実施例と同様に植木鉢ポット7を吸水マット6に載せる。
【0037】
本実施例の植木鉢は、主に貸し鉢などの大型植木鉢や複数鉢用トレイに使用するもので吸水マット6も厚みのあるものを使い、容器は不透明で丈夫なプラスチック製品などが適している。補助タンク20の容量しだいでは、一月以上の長期間の自動給水が可能である。また、一つの補助タンクから複数の植木鉢を連結して給水できるようにしてもよい。
【実施例5】
【0038】
実施例1〜4においては植物育成部2の下部の吸水ヒモ挿通孔2cとして、植物育成部2の内壁2aに底板2bと接する位置に吸水ヒモ挿通孔2cを形成した例について示したが、底板2に吸水ヒモ挿通孔2cを設けて吸水ヒモ5を押し込んで密着させて挿通させてもよい。
【0039】
図6は本発明において底板に吸水ヒモ挿通孔を設けた例を示す断面図である。図1に示す同一の部材には同一符号を付してその説明は省略する。
【0040】
吸水ヒモ5は、底板2に設けられた吸水ヒモ挿通孔2cに挿通し、一方を貯水部1に垂らし、他方を植物育成部2の底板2bの上に載置した吸水マット6に接することにより、吸水ヒモ5で吸水された水を吸水マット6に浸透させる。吸水ヒモ挿通孔2cに吸水ヒモ5を押し込んで密着させて挿通させるので、密閉された貯水部の水が吸水ヒモ挿通孔を通して植物育成部内に直接流れ込むことはない。
【0041】
なお、図6では吸水ヒモ挿通孔2cは、一箇所であるが、吸水量を多くする場合には複数の吸水ヒモ挿通孔2cを、間隔をおいて形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の植木鉢の斜視図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】本発明の植木鉢の使用状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の植木鉢の別実施例を示す縦断面図である。
【図4】本発明の植木鉢の別実施例を示す縦断面図である。
【図5】本発明の植木鉢の別実施例を示す縦断面図である。
【図6】本発明において底板に吸水ヒモ挿通孔を設けた例を示す断面図である。
【図7】従来の植木鉢の概略縦断面図である。
【図8】従来の別の植木鉢の概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1:貯水部
1a:外壁
1b:Oリング
1c:底部
1d:ネジ
1e:装着手段(クリップ)
2:植物育成部
2a:内壁
2b:底板
2c:吸水ヒモ挿通孔
2d:ネジ
3:天板
3a:開孔
3b:栓
4:底蓋
5:吸水ヒモ
6:吸水マット
7:植物ポット
11:外鉢
12:内鉢
12a:取水孔
13:貯水部
14:培土容器
15:給水容器
16:溜水容器
17:止水弁
18:フロート
19:給水孔
20:給水手段(外部補助タンク)
20a:ホース
20b:吸水孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁で囲って形成した貯水部の内部に、外壁と間隔をおいた内壁で囲われるとともに上方を開口した植物育成部が配置され、貯水部の天板と植物育成部の内壁とが連結されて貯水部が密閉されるとともに、植物育成部の底部が貯水部の底部と間隔をおいて上方に位置し、植物育成部の下部に貯水部と植物育成部を貫通した吸水ヒモ挿通孔が設けられ、吸水ヒモ挿通孔に毛細管の作用により貯水部より吸水する吸水ヒモの一方が密着して挿通されて貯水部に垂れるとともに、吸水ヒモの他方が植物育成部の底板上に載置した吸水マットに接していることを特徴とする植木鉢。
【請求項2】
貯水部の外壁の上縁と植物育成部の内壁の上縁が天板で連結されて貯水部が密閉されていることを特徴とする請求項1記載の植木鉢。
【請求項3】
貯水部の底部が貯水部の外壁の下部に対して取り外し可能な底蓋であることを特徴とする請求項1又は2記載の植木鉢。
【請求項4】
天板が貯水部の外壁に対して、あるいは植物育成部が天板に対して又は天板と一体に形成された植物育成部が貯水部の外壁に対して密着あるいは取り外し可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の植木鉢。
【請求項5】
貯水部に栓で開閉可能な開孔を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の植木鉢。
【請求項6】
植木鉢を固定するための固定手段を貯水部の外周に設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の植木鉢。
【請求項7】
貯水部に給水する給水手段を貯水部に接続したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の植木鉢。
【請求項8】
貯水部及び/又は植物育成部の一部又は全部が透明であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の植木鉢。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−223298(P2006−223298A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212011(P2005−212011)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(505023593)
【Fターム(参考)】