説明

植物の栽培方法及び同装置

【課題】外からの燃料の供給が不要である植物の栽培技術を提供することを課題とする。
【解決手段】温室12に、燃料製造機17を併設する。燃料製造機17は、植物15の不要部分16を原料に、エチルアルコールを製造する。このエチルアルコールを燃料電池11へ供給する。燃料電池11は、照明13や空調機14などの電力を賄う。
【効果】育てた植物の不要部分を、燃料化して燃料電池へ供給するため、外部から燃料電池へ燃料を供給する必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
植物を人為的(人工的)な環境で育てるには、ハウス栽培が好適である。そして、ハウス栽培における光源や熱源に、燃料電池を利用することが提案されている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図2は従来の技術の基本構成を説明する図であり、温室101の外に配置されている燃料電池102へ、空気と燃料とを供給する。燃料電池102で発電した電気エネルギーで温室101内に設けられている照明103を点灯する。また、燃料電池102から排出される水(HO)とCOガスは、バブリング装置104で分離され、水(HO)は温水の形態で温室101へ供給され、また、COガスは適量を温室101へ供給され、植物の育成に供される。
【0004】
しかし、燃料を燃料電池102へ供給し続ける必要があり、省エネルギーの点から改善の余地がある。
また、温室101の外に配置されている燃料電池102は、熱効率のよい固体酸化物型燃料電池(SOFC)が好まれる。しかし、SOFCは、動作温度が700℃以上あるため、燃料電池102の外面温度は不可避的に高くなり、外気への放散熱が大きくなる。その対策も必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−250358公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、外からの燃料の供給が不要である植物の栽培技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る植物の栽培方法は、温室内で育てられた植物の不要部分を原料として水素、炭化水素又はアルコールからなる燃料を製造する燃料製造工程と、
製造された燃料により、燃料電池で発電すると共に水、二酸化炭素及び熱を排出させる電気エネルギー、水、二酸化炭素及び熱発生工程と、
この発生工程で発生した電気エネルギー、水、二酸化炭素及び熱により、温室内の植物を育てる植物育成工程と、
育った植物を刈り取り、必要部分と不要部分とに分別する分別工程と、
前記不要部分を前記燃料製造工程へ供給する不要部分供給工程と、
からなることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の植物の栽培方法に、前記刈り取った植物に相当する物質を、土壌及び肥料の形態で補充する補充工程を、含めることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る植物の栽培装置は、水素、炭化水素又はアルコールからなる燃料の供給を受けて発電すると共に水、二酸化炭素及び熱を排出する燃料電池と、この燃料電池から前記水、二酸化炭素及び熱が供給されると共に植栽用土壌を内蔵する温室と、この温室内に設けられ前記燃料電池からの給電により発光して植物へ照射する照明と、前記温室に設けられ前記燃料電池からの給電により前記温室内の空気の湿度及び温度を調整する空調機と、前記温室内で育てられた植物の不要部分を原料として水素、炭化水素又はアルコールからなる燃料を製造する燃料製造機と、からなることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る植物の栽培装置では、燃料電池は、固体酸化物型燃料電池であり、この固体酸化物型燃料電池は、前記温室内に設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る植物の栽培装置では、温室は、外気の出入りを抑制する密閉室であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、育った植物を刈り取り、必要部分と不要部分とに分別する分別工程と、前記不要部分を燃料製造工程へ供給する不要部分供給工程とを含む。すなわち、育てた植物の不要部分を、燃料化して燃料電池へ供給するため、外部から燃料電池へ燃料を供給する必要がない。そのため、十分な省エネルギーを図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、土壌及び肥料の形態で補充する補充工程を含むため、土壌が痩せる心配は無く、恒久的に植物を栽培し続けることができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、温室内で育てられた植物の不要部分を原料として水素、炭化水素又はアルコールからなる燃料を製造する燃料製造機を備えているため、外部から燃料電池へ燃料を供給する必要がない。そのため、十分な省エネルギーを図ることができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、温室内に、固体酸化物型燃料電池を設けた。固体酸化物型燃料電池の外面からの放散熱は、温室内へ放出され、温室内の温度上昇に供される。そのため、一層の省エネルギーを図ることができる。
【0016】
請求項5に係る発明では、温室へ外気が侵入すること及び温室内の暖気が外へ逃げることを防止することができるため、温室内の雰囲気の制御を精度良く実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る植物の栽培装置の原理図である。
【図2】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0019】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、植物の栽培装置10は、水素、炭化水素又はアルコールからなる燃料の供給を受けて発電すると共に水、二酸化炭素及び熱を排出する燃料電池11と、この燃料電池11から水、二酸化炭素及び熱が供給されると共に植栽用土壌を内蔵する温室12と、この温室12内に設けられ固体酸化物型燃料電池11からの給電により発光して植物へ照射する照明13と、温室12に設けられ燃料電池11からの給電により温室12内の空気の湿度及び温度を調整する空調機14と、温室12内で育てられた植物15の不要部分(茎、葉、根など)16を原料として水素、炭化水素又はアルコールからなる燃料を製造する燃料製造機17とからなる。
【0020】
以上の構成要素を詳しく説明する。
燃料電池11は、固体高分子型燃料電池(PEFC/PEM)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)の何れもが使用可能である。特に、固体高分子型燃料電池(PEFC/PEM)は動作温度が常温〜100℃であり、小型化が容易であるため、好ましい。ただし、発電効率は最大45%に留まる。一方、固体酸化物型燃料電池(SOFC)は動作温度が700〜1000℃であり、発電効率は最大60%に達する。
【0021】
以下、燃料電池11は固体酸化物型燃料電池(SOFC)を例に説明する。
固体酸化物型燃料電池11では、電解質の一方の面に水素ガス及び一酸化炭素ガスを接触させ、他方に面に酸素ガスを接触させ、化学反応により発電作用を発揮させる。副産物として水が生成される。水素ガス及び一酸化炭素ガスは、炭素と水素の結合体である水素、炭化水素又はアルコールを改質器で改質することで得られる。改質器は固体酸化物型燃料電池11に内蔵されている。固体酸化物型燃料電池11の動作温度は700〜1000℃であり、排熱の形態で、熱が排出される。また、燃料に含まれる炭素は二酸化炭素(CO)の形態で排出される。
【0022】
温室12は、天井21と壁22が透明体で構成され、太陽光が室内に採り入れられる。床23は、外気の侵入を防ぐためにコンクリート床とすることが望ましい。そして、温室12の出入り口は、外扉24と内扉25とを備えた二重扉室26で構成することが望ましい。二重扉室26では、外扉24と内扉25との一方のみが開放可能となるようにインターロックが掛けられており、外気の侵入及び室内の空気が外へ逃げることを防止することができる。
【0023】
したがって、温室12は、実質的に密閉された室である。密閉すると、温室内の雰囲気の温度、湿度、成分の制御が容易になる。温室であるから、ある程度の外気の侵入や温室内の空気の外への漏れは許容できるが、これらの量が大きいほど、温室内の雰囲気の温度、湿度、成分の制御が難しくなる。そのために、温室12は、完全又は殆ど密閉された室とすることが望ましい。
【0024】
空調機14は、室外機27と室内機28と冷媒管29とからなる、いわゆるエアコンデショナである。
空調機14は、照明13と共に固体酸化物型燃料電池11からの給電で駆動される。
そして、空調機14は、制御部30により、温室12内の雰囲気の温度と湿度を所望の値になるように制御される。
【0025】
固体酸化物型燃料電池11から排出された水は、ポンプ31で汲み上げられ、散水管32を介して植物15に散布され、土壌33へ供給される。ポンプ31のモータも燃料電池11からの電力で駆動する。
温室12の外には、燃料タンク34と、燃料製造機17とが設けられている。
【0026】
例えば、植物15がトマトであれば、トマトの実が必要部35で、その他の茎、葉、根が不要部分16となる。この不要部分16は、燃料製造機17の醗酵槽36へ投入され、醗酵され、精製槽37に移され、エチルアルコールの形態で回収される。
得られエチルアルコールは地下パイプ38を通じて、燃料タンク34へ移され、固体酸化物型燃料電池11へ供給される。
【0027】
以上の述べた植物の栽培装置の作用を次に述べる。
図1において、先ず、温室12内で育てられた植物15の不要部分16を原料として、燃料製造機17により、エチルアルコールを製造する(燃料製造工程)。
次に、製造されたエチルアルコールにより、固体酸化物型燃料電池11で発電すると共に水、二酸化炭素及び熱を排出させる(電気エネルギー、水、二酸化炭素及び熱発生工程)。
【0028】
得られた電気エネルギー、水、二酸化炭素及び熱により、温室12内の植物15を育てる(植物育成工程)。
育った植物15を刈り取り、必要部分35と不要部分16とに分別し(分別工程)、不要部分16を燃料製造機17へ供給する(不要部分供給工程)。
【0029】
本発明によれば、育てた植物の不要部分を、燃料化して固体酸化物型燃料電池などの燃料電池へ供給するため、外部から燃料電池へ燃料を供給する必要がない。そのため、十分な省エネルギーを図ることができる。
【0030】
ところで、植物15を刈り取り、温室12外へ搬出すると、植物15に相当する物質が温室12外へ出されることになる。植物15を構成する物質の一部はエチルアルコールの形態で温室12へ戻されるが、残渣などの残部は戻されない。そこで、残部に相当する物質を、土壌及び肥料の形態で補充する(補充工程)。
そうすれば、土壌が痩せる心配がない。
【0031】
尚、燃料製造機17は植物の不要部分を腐敗させてメタンガスを主体とする炭化水素ガスの形態で取り出す物であってもよい。そのため、固体酸化物型燃料電池などの燃料電池11へは、水素、炭化水素又はアルコールを供給することができる。
【0032】
また、固体酸化物型燃料電池11は、温室12内に配置することで、排熱を温室内で有効利用するようにしたが、温室12の外に配置することは差し支えない。
植物はトマト、イチゴ、メロンなど温室栽培に適した果実又は野菜であれば、種類は問わない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、果実又は野菜の栽培する温室に好適である。
【符号の説明】
【0034】
10…植物の栽培装置、11…燃料電池(固体電解質型燃料電池)、12…温室、13…照明、14…空調機、15…植物、16…植物の不要部分、17…燃料製造機、33…土壌、35…植物の必要部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室内で育てられた植物の不要部分を原料として水素、炭化水素又はアルコールからなる燃料を製造する燃料製造工程と、
製造された燃料により、燃料電池で発電すると共に水、二酸化炭素及び熱を排出させる電気エネルギー、水、二酸化炭素及び熱発生工程と、
この発生工程で発生した電気エネルギー、水、二酸化炭素及び熱により、温室内の植物を育てる植物育成工程と、
育った植物を刈り取り、必要部分と不要部分とに分別する分別工程と、
前記不要部分を前記燃料製造工程へ供給する不要部分供給工程と、
からなることを特徴とする植物の栽培方法。
【請求項2】
請求項1記載の植物の栽培方法に、前記刈り取った植物に相当する物質を、土壌及び肥料の形態で補充する補充工程を、含めることを特徴とする植物の栽培方法。
【請求項3】
水素、炭化水素又はアルコールからなる燃料の供給を受けて発電すると共に水、二酸化炭素及び熱を排出する燃料電池と、この燃料電池から前記水、二酸化炭素及び熱が供給されると共に植栽用土壌を内蔵する温室と、この温室内に設けられ前記燃料電池からの給電により発光して植物へ照射する照明と、前記温室に設けられ前記燃料電池からの給電により前記温室内の空気の湿度及び温度を調整する空調機と、前記温室内で育てられた植物の不要部分を原料として水素、炭化水素又はアルコールからなる燃料を製造する燃料製造機と、からなることを特徴とする植物の栽培装置。
【請求項4】
前記燃料電池は、固体酸化物型燃料電池であり、この固体酸化物型燃料電池は、前記温室内に設けられることを特徴とする請求項1記載の植物の栽培装置。
【請求項5】
前記温室は、外気の出入りを抑制する密閉室であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の植物の栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−246397(P2010−246397A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95763(P2009−95763)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】