植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置
【課題】松や桜、杉といった樹木の生木に対して薬液を注入する装置に関するものである。
【解決手段】薬液注入装置1は、銃形本体2を有し、銃口に相当する部位にノズル3が取り付けられ、銃身に相当する部位の上部に密閉薬液タンク6が取り付けられている。密閉薬液タンク6は、略円筒形で、中央部分には複数の蛇腹7が設けられている。密閉薬液タンク6の中は空洞であり、下部の開口8を除いて内部は密閉されている。引き金部11を引くごとに内部のピストンが動作し、一定量の薬液がノズル3から排出される。
【解決手段】薬液注入装置1は、銃形本体2を有し、銃口に相当する部位にノズル3が取り付けられ、銃身に相当する部位の上部に密閉薬液タンク6が取り付けられている。密閉薬液タンク6は、略円筒形で、中央部分には複数の蛇腹7が設けられている。密閉薬液タンク6の中は空洞であり、下部の開口8を除いて内部は密閉されている。引き金部11を引くごとに内部のピストンが動作し、一定量の薬液がノズル3から排出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物に対して直接的に又は間接的に農薬や液状肥料等の薬液を付与する装置に関するものである。
本発明は、松や桜、杉といった樹木の生木に対して薬液を注入する装置として特に好適であり、樹木に害を与える害虫を排除・予防するためや、樹木に発生する病気を治癒・予防する為に樹木に対して薬液を注入する装置として使用することが推奨される装置である。
また本発明は、有害な植物を枯死させるために植物に対して農薬を注入する用途や、植物周辺土壌に薬液を注入する用途にも使用することができる。
【背景技術】
【0002】
樹木は害虫や病気に侵されることがある。害虫や病気から樹木を守るためには、薬液散布が有効である。
しかしながら、薬剤散布は、市街地の街路樹や、神社仏閣の境内や庭園、公園の植栽等の人家に近い場所では、対象の樹木以外へ飛散しない様に細心の注意が必要である。
そこで人家に近い場所に在る樹木に対しては、薬液散布に代わって、有効成分を樹脂のカートリッジに入れて樹幹に打ち込む方法や、樹木に孔をあけて薬液を注入したり、薬液を土壌に灌注する方法等が採用される場合が多い。
【0003】
有効成分を樹脂のカートリッジに入れて樹幹に打ち込む方法には例えば特許文献1に開示された方策がある。
特許文献1に開示された方策は、サクラに対するものであり、アセフェート等の有機リン系の殺虫成分を水溶性のカプセルに充填したものをカートリッジに収納し、それを樹幹部にハンマーなどを用いて打ち込み、食葉性害虫であるアメリカシロヒトリ及びモンクロシャチホコを駆除する。
この方策は、有効成分のみをカプセルに充填して樹体内に打ち込むものであるため、そのカートリッジは樹体内での薬剤の分散性や、効果の安定性に問題がある。また、幹周囲10cm毎に1個のカートリッジを打ち込む必要があり、さらにそのカートリッジは樹体内に残ったままになることから、樹木への負荷が大きいことも問題である。
【0004】
また樹木、フェンス等に絡んだクズ等蔓性植物を防除する方策として、イマザピルを楊枝様の木針に含有させてクズ等の樹幹に挿入し、塊根まで枯殺する方法が知られている(特許文献2)。
本方法は、除草剤を含有する液体に木針を浸漬して、その後乾燥するものであり、極微量の薬剤を処理する場合に限られる。
【0005】
一方、後者の樹木に孔をあけて薬液を注入する方策は、病虫害の防護効果が高く、例えば松の枯損をもたらすマツザイセンチュウ病の防除に用いられている。
ところでこの方策によって薬効を得るには、薬液を幹や枝から樹木に吸収させなければならないが、樹木の幹や枝が単位時間当たりに吸収する量が少ない。そのため、あたかも点滴のような態様によって薬液が注入される(特許文献3)。
即ち液状薬剤を容器に詰め、当該容器を枝に吊るし、容器から導入した挿入チューブを樹木にあけた孔に嵌合する。そして挿入チューブから薬液を滴下し、樹木に薬液を吸収させる。容器内を加圧することにより注入時間の短縮を図ることも可能である。
また小型の容器に薬液を充填し、容器の先端部だけを樹木の孔に嵌合させ、容器から薬液を漏出させ、樹木に薬液を吸収させる方策も知られている(特許文献4)。
【0006】
しかしながら上記した方策を採用する場合、容器内の薬液が無くなった頃を見計らって、薬液が入っていた容器等を回収する必要がある。
即ち容器から導入したチューブを樹木にあけた孔に嵌合する方策や小型の容器の先端部だけを樹木の孔に嵌合する方策では、容器を取り付けてから、数時間〜数日後に処理した樹木を再訪する必要があり、作業者の負担が大きい。
そこで本出願人らは、樹木に胸高直径に応じて比較的多数の孔を設け、当該孔に薬液を入れる方策を発明した(特許文献5)。
即ち樹木の処理部位の周囲に対して、電動ドリルを用いて5〜15cmの間隔で穿孔し、各孔に対して0.1〜2mLの薬液を注入する。本方策によると、容器を回収する必要がなく、1回の訪問で、樹木に対する処理を完了することができる。
【0007】
他に関連する先行技術を開示するものとして特許文献6〜8がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−45039号公報
【特許文献2】特公昭48−1178号公報
【特許文献3】特開昭62−198338号公報
【特許文献4】特開平9−23749号公報
【特許文献5】特開2008−179589号公報
【特許文献6】特開2005−25566号公報
【特許文献7】特開2005−53885号公報
【特許文献8】特開平8−175914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら特許文献5に開示した方策は、薬液が手指に触れる可能性が高く、作業者に不快感を与える懸念がある。
即ち上記した方策は、多数の孔に、1mL程度ずつ薬液を注入するものであるから、スポイドや注射器によるはかりとり作業が必要となる。
具体的に説明すると、薬液を瓶の開口内に入れ、スポイド等で瓶から薬液を一定量吸い出し、スポイドを木の孔に挿入して薬液を木の穴に入れる。そのためスポイドを瓶に入れる際に薬液が手指に触れそうになる。
薬液で処理する木は、市街地の街路樹や神社仏閣の境内や庭園・公園の植栽等のように足場がよい位置ばかりに在るわけではなく、急斜面で足場の悪いところに植えられているものもある。そのようなところでは、電動ドリルによる穿孔とスポイドでのはかりとり、及び薬液の注入を手指に薬液を触れることなくかつ効率よく連続して行うことは不可能に近い。
【0010】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、木の孔に薬液を注入するための専用機を開発することを課題とし、薬液が手指に触れることなく注入作業を行うことができること可能にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、シリンダー部と、前記シリンダー部に連通する細管状のノズルと、前記シリンダー内を摺動するピストンと、伸縮性を有する密閉薬液タンクとを備え、前記密閉薬液タンクがシリンダー部に連通する様に取り付けられてなる植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置である。
【0012】
本発明の薬液注入装置では、密閉薬液タンクがシリンダー部に連通する様に取り付けられており、密閉薬液タンクからシリンダー部に薬液が導入される。そしてシリンダー内の薬液がピストンによって押し出され、細管状のノズルから放出される。
本発明の薬液注入装置を使用して薬液の注入作業を行うと、薬液が手指に触れる機会が少なく、作業者に与える不安が少ない。即ち本発明の薬液注入装置では、伸縮性を有する密閉薬液タンクを備え、薬液は当該密閉薬液タンクに充填される。そのため作業者は、開放容器にスポイドを入れるという作業から開放され、薬液が手指に触れる機会が減少する。
また本発明で採用する薬液容器は、密閉容器であるから、薬液が容器からこぼれることはない。ここで密閉容器から薬液を取り出すと、容器内部が負圧傾向となって薬液の注出が不能になるが、本発明で採用する薬液容器は、伸縮性を有するから、全体の容積を縮小することによって負圧傾向を解消することができる。そのため本発明の薬液注入装置では、薬液のシリンダーへの導入が円滑に行われる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、握り部と引き金部と銃身部を有していて全体形状が銃状であり、引き金部がピストンに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置である。
【0014】
本発明の薬液注入装置は、銃状であって使いやすい。
【0015】
請求項3に記載の発明は、密閉薬液タンクは、銃身部の上に取り付けられており、シリンダー部と密閉薬液タンクとの間には、弁が設けられ、当該弁は、密閉薬液タンクからシリンダー部側への流通を許し、その逆を阻止するものであることを特徴とする請求項2に記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置である。
【0016】
本発明の薬液注入装置では、シリンダー部の上に密閉薬液タンクがあり、且つ両者の間に設けられた弁は、密閉薬液タンクからシリンダー部側への流通を許すものであるから、薬液は重力によって密閉薬液タンクからシリンダー部に導入される。また前記した弁は、シリンダー部側から密閉薬液タンクに向かう流通を阻止するから、ピストンで加圧する際に薬液が密閉薬液タンク側に戻ることはない。
【0017】
請求項4に記載の発明は、密閉薬液タンクは、樹脂製であって蛇腹を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置である。
【0018】
本発明で採用する密閉薬液タンクは、蛇腹を設けることによって伸縮性を与えている。
【0019】
請求項5に記載の発明は、ピストンの移動量を規制するピストン規制手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置である。
【0020】
本発明の薬液注入装置では、ピストンの移動量を規制するピストン規制手段を有するので、一回の放出量を薬液に応じて規制することができる。そのため注入作業が容易となる他、ノズルからの垂れも少なくなり、薬液が手指に触れる機会がさらに減少する。
【0021】
請求項6に記載の発明は、シリンダー部とノズルとの間には弁が設けられ、当該弁は、シリンダー部側からノズル側への流通を許し、その逆を阻止するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置である。
【0022】
本発明によると、ピストンを動作させてシリンダー部の容積を増大させた際に、ノズル側からの空気の流入が無い。そのためシリンダー部に導入される薬液の量が安定し、一回の操作によって放出される薬液量のばらつきが小さくなる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、ノズルは可撓性を有するチューブであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置である。
【0024】
本発明によると、木の孔に挿入しやすく、作業性がよい。金属性のノズルでは、作業中に誤って人体を傷つけてしまうような事故が発生する可能性もある。
【発明の効果】
【0025】
本発明の薬液注入装置を使用して樹木に薬液を注入する場合、作業時に手指が汚れず、清潔である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る樹木に対する薬液注入装置の斜視図であり、密閉薬液タンク内に薬液が満たされている状態を示す。
【図2】図1の薬液注入装置の斜視図であり、密閉薬液タンク内の薬液が消費された状態を示す。
【図3】図1の薬液注入装置の断面図である。
【図4】図1の薬液注入装置の内部構造を示す一部破断斜視図である。
【図5】図1の薬液注入装置の分解斜視図である。
【図6】薬液注入装置1の使用時におけるピストンと弁の動作を説明する説明図であり、(a)は引き金部11を引く前の状態、(b)は引き金部11を引いている状態、(c)は引き金部11を引き切った状態を示す。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る樹木に対する薬液注入装置の正面図である。
【図8】図7の薬液注入装置を前方のノズル側から観察した斜視図である。
【図9】図7の薬液注入装置を後方側から観察した斜視図である。
【図10】図7の薬液注入装置の断面図である。
【図11】薬液注入装置1によって薬液を注入する樹木の幹を表す概略図である。
【図12】薬液注入装置1によって薬液を注入する際の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、さらに本発明の第一実施形態について説明する。
第一実施形態の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置1(以下、単に「薬液注入装置1」と称する。)は、図1,2の様に短銃形をしている。即ち薬液注入装置1は、銃形本体2を有し、銃口に相当する部位にノズル3が取り付けられ、銃身に相当する部位の上部に密閉薬液タンク6が取り付けられている。
【0028】
ノズル3は、内径が0.5mmから5mm程度の細い樹脂製チューブであり、可撓性を有している。
【0029】
密閉薬液タンク6は、ポリエチレン等の樹脂で作られており、小田原提灯の如く略円筒形で、中央部分には複数の蛇腹7が設けられている。密閉薬液タンク6の中は空洞であり、下部の開口8(図3,5)を除いて内部は密閉されている。
密閉薬液タンク6の下部の開口8の外周面には、管用ネジ(雄ねじ)が形成されている。
【0030】
銃形本体2の外側には、図1,2の様に握り部10と引き金部11及び銃身部12がある。引き金部11は、短銃の如く他の部位に対して揺動する。即ち引き金部11は、引き金部材15の一部であり、引き金部材15はピン16を介して他の部位に接続されており、ピン16を中心として揺動する。引き金部材15の引き金部11と対向する部位には、シリンダー押圧部17(図4)が設けられている。シリンダー押圧部17は円弧状をしている。
また銃形本体2の後端部にはストローク調節ネジ(ピストン規制手段)20が突出している。ストローク調節ネジ20は、銃形本体2に設けられた雌ねじと係合しており、ストローク調節ネジ20を回転させると、銃形本体2内におけるネジの突出量が変化する。
【0031】
銃形本体2の内部構造は、図3〜5に示す通りである。
即ち銃形本体2の内部は、軸方向に大きく機構部Aと、シリンダー部Bと、先端側弁室Cと、ノズルホルダー部Dとに別れている。さらにシリンダー部Bの上下の側面に供給側弁室Eと、残液排出部Fが設けられている。
また銃形本体2の内部には、ピストン21と、二つの弁22,23,及びバネ25が内蔵されている。
【0032】
即ち銃形本体2の内部は、中央にシリンダー部Bがある。シリンダー部Bは、銃身部12の長さ方向中央部にあり、銃身部12に対して同心的に設けられている。
シリンダー部Bの後端部には蓋部材26が設けられている。蓋部材26は、ある程度の長さを持つ部材であり、中央にピストン21が挿通される開口28があり、開口28の周囲にはシールが設けられている。
【0033】
一方、シリンダー部Bの先端部には小さな開口30が設けられており、シリンダー部Bは前記開口30によって隣接する先端側弁室Cと連通している。また先端側弁室Cの先端にはノズルホルダー31が設けられており、当該ノズルホルダー31にノズル3が設けられている。
【0034】
前記した先端側弁室Cには弁22が設けられている。弁22は、ハウジング35と、弁座37と、弁体38及び弁押さえ40によって構成されたものであり、逆止弁である。即ち弁22は、ハウジング35内に貫通孔41が設けられた弁座37を有するものである。また弁体38は、球形であり、弁座37と当接することによって弁座37の開口(貫通孔41)を封止する。弁押さえ40は、弁体38の動きを規制するものであり、弁体38は弁押さえ40によって弁座38からの移動距離が限定される。
前記した様に弁22は逆止弁であり、弁座37から弁押さえ40に向かう流体の流れを許し、逆を阻止する。
そして本実施形態では、弁22は弁座37がシリンダー部B側に取り付けられ、弁押さえ40がノズル3側に取り付けられているから、弁22はシリンダー部B側からノズル3側に向かう薬液の流れを許容し、逆を阻止する。
【0035】
またシリンダー部Bの上部側側面に供給側弁室Eがあり、供給側弁室Eの上部にタンク取付け口33が設けられている。タンク取付け口33は、管用ネジ(雌ねじ)が形成されている。
そして管用ネジ(雌ねじ)を介して密閉薬液タンク6が取り付けられている。
【0036】
前記した供給側弁室Eには弁23が設けられている。弁23の構造は、先に説明した弁22と同一であり、ハウジング35と、弁座37と、弁体38及び弁押さえ40によって構成され、逆止弁であり、弁座37から弁押さえ40に向かう流体の流れを許し、逆を阻止する。
そして本実施形態では、弁23は弁座37が密閉薬液タンク6側に取り付けられ、弁押さえ40がシリンダー部B側に取り付けられているから、弁23は密閉薬液タンク6側からシリンダー部B側に向かう薬液の流れを許容し、逆を阻止する。
【0037】
またシリンダー部Bの下部側側面に残液排出部Fが設けられている。残液排出部Fには雌ねじが形成され、ドレンプラグ43が装着されている。
【0038】
ピストン21は、金属で作られており、図3,4の様に、本体部45と、軸部46、バネ当接部47及び引き金係合部48によって構成されている。
ピストン21の本体部45は、円柱状の部位であり、その外径は、シリンダー部Bの内径と等しい。
軸部46は本体部45の後端側とバネ当接部47とを繋ぐ部位であり、前記した本体部45よりも細く作られている。
バネ当接部47はフランジ状であり、円板形をしている。引き金係合部48は、板状であり、バネ当接部47の円板形の平面に対して垂直方向に設けられている。そして引き金係合部48には、ピン50が設けられている。
【0039】
ピストン21は本体部45の基端部分が蓋部材26の開口28に挿通され、蓋部材26の開口28にガイドされて直線的に移動する。またピストン21の先端部分は、シリンダー部Bの内にあり、シリンダー部B内を摺動して、シリンダー部Bの先端とピストン21の先端に形成される空間52の容積を増減させる。
【0040】
機構部Aにおいては、ピストン21の軸部46があり、ピストン21の軸部46を中心としてバネ25が設けられている。
バネ25は、ピストン21のバネ当接部47と、シリンダー部Bの蓋部材26の間にあって、両者を離開する方向に付勢している。即ちバネ25は、圧縮状態でバネ当接部47と、シリンダー部Bの蓋部材26の間に装着されている。
【0041】
またピストン21の引き金係合部48に設けられたピン50が、引き金部材15のシリンダー押圧部17と当接している。
前記した様にピストン21のバネ当接部47と、シリンダー部Bの蓋部材26の間に圧縮バネ25があり、当該バネ25によって両者の間を離す方向に付勢しているから、ピストン21は、シリンダー部Bから抜け出る方向に付勢され、引き金部材15のシリンダー押圧部17の背面が、ストローク調節ネジ(ピストン規制手段)20と当接することによってピストンの位置が定まっている。
【0042】
次に本実施形態の薬液注入装置1の作用について説明する。図6は、薬液注入装置1の使用時におけるピストンと弁の動作を説明する説明図であり、(a)は引き金部11を引く前の状態、(b)は引き金部11を引いている状態、(c)は引き金部11を引き切った状態を示す。
【0043】
本実施形態の薬液注入装置1を使用する際には、予め密閉薬液タンク6内に薬液を充填しておく。実際の態様としては、薬液が充填された状態の密閉薬液タンク6を購入し、密閉薬液タンク6を銃形本体2の銃身部12の上に取り付けることが想定される。
そしてこの状態で握り部10を握り、密閉薬液タンク6を上、ドレンプラグ43が下となる姿勢に保つ。
【0044】
ここで前記した様にピストン21は、バネ25によってシリンダー部Bから抜け出る方向に付勢されており、バネ25によってシリンダー部B内では、図6(a)の様に、シリンダー部Bの先端とピストン21の先端に形成される空間52の容積が大きい。
また供給側弁室Eに設けられた弁23は、弁23は密閉薬液タンク6側からシリンダー部B側に向かう薬液の流れを許容する。そのため密閉薬液タンク6内の薬液がシリンダー部B側に落下し、シリンダーB内の空間52が薬液で満たされる。ここで密閉薬液タンク6内の薬液がシリンダー部B側に落下する際、密閉薬液タンク6が縮んで体積が減少するから、密閉薬液タンク6が負圧状態となることはない。またシリンダー部B内の空気は、ノズル3から排出される。即ちノズル3側には弁22が設けられているが、当該弁22は、シリンダー部B側からノズル3側に向かう薬液の流れを許容し、逆を阻止するので、シリンダー部B内の空気は弁22を通過し、ノズル3から排出される。
なお実際の使用時においては、引き金部11を数回空打ちすることによってシリンダー部B内の空気を排出し、シリンダー部Bの空間52を液密状態としてから使用することとなる。
【0045】
そしてこの状態で、引き金部11を引くと、引き金部材15が、ピン16を中心として揺動し、引き金部材15のシリンダー押圧部17を押圧し、図6(b)の様にピストン21をノズル3側に移動させる。その結果、シリンダー部Bの先端とピストン21の先端に形成される空間52が縮まろうとし、シリンダー部B内で薬液が圧縮される。
ここで前記した様に、ノズル3側に設けられた弁22はシリンダー部B側からノズル3側に向かう薬液の流れを許容し、逆を阻止する。
一方、供給側弁室Eに設けられた弁23は、シリンダー部B側から密閉薬液タンク6側に向かう薬液の流れを阻止する。シリンダー部B内で薬液は、開口30を経て先端側弁室Cに流れ、さらにノズル3から外部に排出される。図6(c)の様に引き金部11を引き切ると、空間52内の薬液のほぼ全てが排出される。
【0046】
使用者が引き金部11から指を離すと、バネ25の力によって図6(a)の様にピストン21が後退する。その結果、シリンダー部B内が負圧状態となり、密閉薬液タンク6側から薬液を吸引する。
即ち前記した様に、供給側弁室Eに設けられた弁23は、密閉薬液タンク6側からシリンダー部B側に向かう薬液の流れを許容し、ノズル3側に設けられた弁22は、外部からの空気流入を阻止するので、バネ25の力によって図6(a)の様にピストン21が後退すると、シリンダー部B内が負圧状態となり、密閉薬液タンク6側から薬液が吸引される。
その後は、先の動作を繰り返し、引き金部11を引くごとに一定量の薬液がノズル3から排出される。
【0047】
また本実施形態では、薬液の排出量を調節することができる。即ち本実施形態では、銃形本体2の後端部にストローク調節ネジ20があり、ストローク調節ネジ20を回転させると、銃形本体2内におけるネジの突出量が変化する。そしてストローク調節ネジ20は、前記した様にピストンの出ししろを規制するものであり、ストローク調節ネジ20を調節することによって、薬液を吸引する際の空間52の容積が決まる。
そのため本実施形態では、薬液の種類に応じて吐出量を調節することができる。
【0048】
次に本発明の第2の実施形態を図7乃至図10を参照しつつ説明する。
第2実施形態の薬液注入装置61の形状、構造は、前記した第1実施形態の薬液注入装置1と概ね同一であるから、同一の機能を果たす部材に、同一の番号を付して重複した説明を省略する。
第2実施形態の薬液注入装置61は、前記した第1実施形態の薬液注入装置1と同様に短銃形をしており、銃形本体2を有し、銃口に相当する部位にノズル3が取り付けられ、銃身に相当する部位の上部に密閉薬液タンク6が取り付けられている。
銃形本体2の外側には、握り部10と引き金部11及び銃身部12がある。引き金部11は、引き金部材15の一部であり、引き金部材15はピン16を介して他の部位に接続されており、ピン16を中心として揺動する。引き金部材15の引き金部11と対向する部位には、シリンダー押圧部17(図10)が設けられている。シリンダー押圧部17は円弧状をしている。
なお、銃身部12は透明であり、薬液の注入状況を容易に確認することができる。
【0049】
銃形本体2の上部には、第一リング部66が設けられている。また握り部10の下部には第二リング部67が設けられている。第二リング部67は、線材で作られており、握り部10に対して揺動する。
第一リング部66及び第二リング部67は、薬液注入装置1を保管する際に壁に掛けたり、持ち歩く際に紐を通す用途に使用するものである。
【0050】
銃形本体2の後端部にはキャップ62が設けられている。キャップ62は内部が空洞であり、開口端の内周部にネジ63が設けられている。そして銃形本体2の後端部にもネジ65が形成され、キャップ62は両者のネジを嵌合させることによって銃形本体2に取り付けられている。
キャップ62は、図10に示すように、ストローク調節ネジ(ピストン規制手段)20をカバーするものである。即ち本実施形態では、ストローク調節ネジ20の外周部にキャップ62が装着されており、ストローク調節ネジ20は外部に露出しない。
【0051】
なおストローク調節ネジ20は、先の実施形態と同様、銃形本体2に設けられた雌ねじと係合しており、ストローク調節ネジ20を回転させると、銃形本体2内におけるネジの突出量が変化する。
【0052】
銃形本体2の内部は、図10に示すように機構部Aと、シリンダー部Bと、先端側弁室Cと、ノズルホルダー部Dとに別れている。さらにシリンダー部Bの上下の側面に供給側弁室Eと、残液排出部Fが設けられている。
また銃形本体2の内部には、ピストン21と、二つの弁22,23,及びバネ25が内蔵されている。
シリンダー部Bの後端部には蓋部材26が設けられている。これらの構造及び機能は、先の実施形態のそれと同様である。
【0053】
次に本実施形態の薬液注入装置1,61の使用方法について説明する。
図11は、薬液注入装置1によって薬液を注入する樹木の幹を表す概略図である。図12は、本実施形態の薬液注入装置1によって薬液を注入する際の様子を示す断面図である。
【0054】
本実施形態の薬液注入装置1は、例えば、マツザイセンチュウ病の防除に用いられている。
本実施形態の薬液注入装置1で薬液を注入するのに先立ち、樹木(松)に孔60を穿孔する。孔60は公知のドリルを使用して穿孔する。孔60の直径は、1mm〜10mm程度であり、最も推奨される孔径は、3mmから7mm程度である。
孔60の深さは、3cmから10cm程度であり、少なくとも表皮を貫通する深さまで孔をあける。
孔の個数は任意であり、例えば胸高直径に応じて孔数を設定することができる。例えば、10個以上設けることが推奨される。
また孔60は、薬液がこぼれない様に、図12の様に下向きの傾斜を設けて穿孔する。
【0055】
そして孔明け作業が終了すると、薬液注入装置1のノズル3を孔60内に装入し、引き金部11を一回だけ引く。その結果、決まった量の薬液が孔60に充填される。
密閉薬液タンク6内に薬液が無くなると、新たな密閉薬液タンク6に取り替える。薬液が無くなった密閉薬液タンク6は、廃棄する。
全ての作業が終了すると、ドレンプラグ43を外してシリンダー部B内の残液を排出し、さらに内部を洗浄する。
【0056】
本実施形態の薬液注入装置で注入される薬液としては、特に限定はないが、例えば、植物保護を目的とする任意の農薬活性化合物を有効成分として含有する薬液を挙げることができる。当該活性化合物としては、例えば、殺虫性化合物、殺線虫性化合物、殺菌性化合物、等が挙げられる。
【0057】
殺虫化合物又は殺線虫化合物の例としては、以下のものが挙げられる:O,O−ジメチル O−3−メチル−4−(メチルスルフィニル)フェニル ホスホロチオアート、トランス−1,4,5,6−テトラヒドロ−1−メチル−2−[2−(3−メチル−2−チエニル)ビニル]ピリミジン酒石酸塩、(−)−(S)−2,3,5,6−テトラヒドロ−6−フェニルイミダゾ[2,1−b]チアゾール塩酸塩、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミン、(RS)−S−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアート、O−エチル S,S,−ジプロピル ホスホロジチオアート、N−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N′−シアノ−N−メチルアセトアミジン、N−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N−エチル−N′−メチル−2−ニトロ−1,1−エタンジアミン、1−(2−クロロ−5−チアゾリルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(2−クロロ−5−チアゾリルメチル)−3,5−ジメチル−2−ニトロイミノ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンなど。
【0058】
殺菌化合物の例としては、以下のものが挙げられる:ジクロルフルアニド(ユーパレン)、トリルフルアニド(メチルユーパレン)、ホルペット、フルオロホルペット等のスルフェナミド類;カルベンダジム(MBC)、ベノミル、フベリダゾール、チアベンダゾール等のベンズイミダゾール類及びこれらの塩;チオシアナトメチルチオベンゾチアゾール(TCMTB)、メチレンビスチオシアネート(MBT)等のチオシアネート類;ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ベンジル−ジメチル−ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシル−ジメチルアンモニウムクロライド等の第四アンモニウム化合物;C11−C14−4−アルキル−2,6−ジメチル−モルホリン同族体(トリデモルフ)、(±)−cis−4−[3−(4−t−ブチルフェニル)−2−メチルプロピル]−2,6−ジメチルモルホリン(フェンプロピモルフ)ファリモルフ等のモルホリン誘導体;o−フェニルフェノール、トリブロモフェノール、テトラクロルフェノール、ペンタクロルフェノール、3−メチル−4−クロルフェノール、ジ−クロルフェン、クロルフェン等のフェノール類及びこれらの塩;トリアジメホン、トリアジメノール、ビテルタノール、テブコナゾール、プロピコナゾール、アザコナゾール、ヘキサコナゾール、プロクロラズ、シプロコナゾール、1−(2−クロルフェニル)−2−(1−クロルシクロプロピル)−3−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−プロパン−2−オール、1−(2−クロルフェニル)−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル−メチル)−3,3−ジメチル−ブタン−2−オール等のアゾール類;イオドプロパルギルブチル−カルバメート(IPBC)、イオドプロパルギルオキシエチルフェニルカルバメート等のイオドプロパルギル誘導体;ジイオドメチル−p−トリル−スルホンのようなジイオドメチル−p−アリール−スルホン等の沃素誘導体;ブロモポール等の臭素誘導体;N−メチルイソチアゾリン−3−オン、5−クロル−N−メチルイソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロル−N−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、N−オクチルイソチアゾリン−3−オン(オンチリノン)、ベンズイソチアゾリノン、シクロペンテン−イソチアゾリン等のイソチアゾリン類;1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオン、テトラクロル−4−メチルスルホニルピリジン等のピリジン類;2,4,5,6−テトラクロルイソフタロニトリル(クロルタロニル)等のニトリル類;Cl−Ac、MCA、テクタマー、ブロモポール、ブロミドックス等の活性ハロゲン基を有する殺菌剤;2−メルカプトベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール類;イプロジオン、ビンクロゾリン、プロシミドン等のジカルボキシイミド類;タゾメット等;8−ヒドロキシキノリン等のキノリン類、など。
【0059】
灌木枯殺化合物を注入することもできる。灌木枯殺化合物の例としては、以下のものが挙げられる:2−メトキシ−3,6−ジクロル安息香酸ジメチルアミン、2−メトキシ−3,6−ジクロル安息香酸ナトリウム、4−アミノ−3,5,6−トリクロロ−2−ピリジンカルボン酸カリウム、塩素酸塩、スルファミン酸アンモニウムなど。
【0060】
植物栄養物質を注入することもできる。植物栄養物質の例としては、以下のものが挙げられる:ナトリウム クロロフイリン、ナトリウム 銅 クロロフイリン等のクロロフイル基本構造を有する水溶性金属化合物;鉄、亜鉛及びマグネシウムよりなる群から選ばれた元素を供給する水溶性化合物、例えば、水溶性鉄化合物の例として、塩化第一鉄、硝酸第一鉄、硫酸第一鉄、硫酸アンモニウム第一鉄、酢酸第二鉄、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、クエン酸第二鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グリセロ燐酸鉄、酒石酸第二鉄、乳酸第二鉄、グリコール酸第二鉄等;これらの水溶性鉄化合物に対応する水溶性マグネシウム化合物及び水溶性亜鉛化合物;クエン酸及び硫酸の第二鉄−亜鉛複塩、同第二鉄−マンガン複塩、同亜鉛マンガン複塩、など。
【0061】
上述した化合物については、1種のみを採用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
薬液は、通常、前記したような活性化合物を溶剤及び/又は界面活性剤等に溶解、乳化若しくは懸濁させてなる液状製剤の形状で使用される。溶剤は水または水と混和しうるものが好ましく、具体的には、水、メタノール、エタノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びこれらのエステル及びエーテル類等のグリコール類、などを用いることが好ましい。
【0063】
一方、活性化合物が水に殆ど溶けないものである場合には、界面活性剤を併用してもよい。界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系のいずれのものも採用可能であるが、ノニオン系界面活性剤が特に好ましい。ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンヒマシ油類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物類、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類及びプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、などが挙げられる。
【0064】
薬液注入の対象となる樹木としては、アカマツ、クロマツ、エゾマツ、トドマツ、カラマツ、ドイツトウヒ等のマツ類;スギ、サワラ、ヒノキ等のスギ類;サクラ類、などが挙げられる。
【0065】
薬液による殺虫・殺菌対象となる有害生物としては、樹木に寄生ないし感染しうる昆虫、線虫、カビ・菌類、バクテリア等が挙げられる。昆虫の例としては、カミキリムシ類、キクイムシ類、ゾウムシ類、コガネムシ類、ハムシ類等の甲虫目;タマバチ類、ハバチ類等の膜翅目;タマバエ類等の双翅目;アブラムシ類、キジラミ類、カイガラムシ類、ハゴロモ類、アワフキムシ類、カメムシ類等の半翅目;ケムシ類、ミノムシ類、シャクトリムシ類、シンクイムシ類、ハマキムシ類、スカシバガ類、ボクトウガ類、コウモリガ類等の鱗翅目、等が挙げられる。線虫の例としては、マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus Nickle)等が挙げられる。
【0066】
カビ・菌類及びバクテリアの例としては、プラスモデイオホロミセテス(Plasmodiophoromycetes)、オーミセテス(Oomycetes)、キトリディオミセテス(Chytridiomycetes)、ジゴミセテス(Zygomycetes)、アスコミセテス(Ascomycetes)、バシジオミセテス(Basidiomycets)及びドイテロミセテス(Deuteromycetes)に属する種々の植物病害微生物;シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、リゾビウム科(Rhizobiaceae)、エンテロバクテリア科(Enterobacteriaceae)、コリネバクテリウム科(Corynebacteriaceae)及びストレプトミセス科(Streptomycetaceae)に属する種々の植物病害微生物、等が挙げられる。
【0067】
また薬液注入装置1,61を使用して、植物周辺の土壌に薬剤を注入してもよい。
【実施例】
【0068】
2008年5月に、駐車場の法面に植栽されている松50本に対し、図1に示す薬液注入装置1を使用してマツノザイセンチュウによる松枯れ防止用の樹幹注入剤(塩酸レバミゾール50%含有)を注入した。対象となった松は、10年〜20年生であり、平均胸高直径は15cmである。作業は、2名で行い、内1名が地表より1m前後の高さの樹幹周囲に電動ドリルで薬液注入用の孔を穿孔した。孔の大きさは、直径5mm、深さ5cmであり、孔の間隔は、約8cmである。孔の総数は(松50本に対する合計)は283個であった。そして別の作業員が、前記した孔に対して薬液注入装置1を使用して薬液を注入し、さらに樹木の腐朽を防ぐために孔に癒合剤を塗布した。薬液の注入量は、各1mLとした。
【0069】
上記した作業中、作業者が薬液に触れたのは、密閉薬液タンク6を取り替える際だけであり、孔に対して薬液を注入する際には薬液に触れることはなかった。薬液の注入に要した時間は、約90分であった。2008年12月に現場を訪れて経過を観察したが、いずれの松も生育不良は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、樹木等の植物を病害虫から防御する用途や、有害な植物を枯死させる用途に使用するものであり、農業及び林業の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 薬液注入装置
2 銃形本体
3 ノズル
6 密閉薬液タンク
7 蛇腹
10 握り部
11 引き金部
12 銃身部
15 引き金部材
20 ストローク調節ネジ(ピストン規制手段)
21 ピストン
22 弁
23 弁
43 ドレンプラグ
B シリンダー部
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物に対して直接的に又は間接的に農薬や液状肥料等の薬液を付与する装置に関するものである。
本発明は、松や桜、杉といった樹木の生木に対して薬液を注入する装置として特に好適であり、樹木に害を与える害虫を排除・予防するためや、樹木に発生する病気を治癒・予防する為に樹木に対して薬液を注入する装置として使用することが推奨される装置である。
また本発明は、有害な植物を枯死させるために植物に対して農薬を注入する用途や、植物周辺土壌に薬液を注入する用途にも使用することができる。
【背景技術】
【0002】
樹木は害虫や病気に侵されることがある。害虫や病気から樹木を守るためには、薬液散布が有効である。
しかしながら、薬剤散布は、市街地の街路樹や、神社仏閣の境内や庭園、公園の植栽等の人家に近い場所では、対象の樹木以外へ飛散しない様に細心の注意が必要である。
そこで人家に近い場所に在る樹木に対しては、薬液散布に代わって、有効成分を樹脂のカートリッジに入れて樹幹に打ち込む方法や、樹木に孔をあけて薬液を注入したり、薬液を土壌に灌注する方法等が採用される場合が多い。
【0003】
有効成分を樹脂のカートリッジに入れて樹幹に打ち込む方法には例えば特許文献1に開示された方策がある。
特許文献1に開示された方策は、サクラに対するものであり、アセフェート等の有機リン系の殺虫成分を水溶性のカプセルに充填したものをカートリッジに収納し、それを樹幹部にハンマーなどを用いて打ち込み、食葉性害虫であるアメリカシロヒトリ及びモンクロシャチホコを駆除する。
この方策は、有効成分のみをカプセルに充填して樹体内に打ち込むものであるため、そのカートリッジは樹体内での薬剤の分散性や、効果の安定性に問題がある。また、幹周囲10cm毎に1個のカートリッジを打ち込む必要があり、さらにそのカートリッジは樹体内に残ったままになることから、樹木への負荷が大きいことも問題である。
【0004】
また樹木、フェンス等に絡んだクズ等蔓性植物を防除する方策として、イマザピルを楊枝様の木針に含有させてクズ等の樹幹に挿入し、塊根まで枯殺する方法が知られている(特許文献2)。
本方法は、除草剤を含有する液体に木針を浸漬して、その後乾燥するものであり、極微量の薬剤を処理する場合に限られる。
【0005】
一方、後者の樹木に孔をあけて薬液を注入する方策は、病虫害の防護効果が高く、例えば松の枯損をもたらすマツザイセンチュウ病の防除に用いられている。
ところでこの方策によって薬効を得るには、薬液を幹や枝から樹木に吸収させなければならないが、樹木の幹や枝が単位時間当たりに吸収する量が少ない。そのため、あたかも点滴のような態様によって薬液が注入される(特許文献3)。
即ち液状薬剤を容器に詰め、当該容器を枝に吊るし、容器から導入した挿入チューブを樹木にあけた孔に嵌合する。そして挿入チューブから薬液を滴下し、樹木に薬液を吸収させる。容器内を加圧することにより注入時間の短縮を図ることも可能である。
また小型の容器に薬液を充填し、容器の先端部だけを樹木の孔に嵌合させ、容器から薬液を漏出させ、樹木に薬液を吸収させる方策も知られている(特許文献4)。
【0006】
しかしながら上記した方策を採用する場合、容器内の薬液が無くなった頃を見計らって、薬液が入っていた容器等を回収する必要がある。
即ち容器から導入したチューブを樹木にあけた孔に嵌合する方策や小型の容器の先端部だけを樹木の孔に嵌合する方策では、容器を取り付けてから、数時間〜数日後に処理した樹木を再訪する必要があり、作業者の負担が大きい。
そこで本出願人らは、樹木に胸高直径に応じて比較的多数の孔を設け、当該孔に薬液を入れる方策を発明した(特許文献5)。
即ち樹木の処理部位の周囲に対して、電動ドリルを用いて5〜15cmの間隔で穿孔し、各孔に対して0.1〜2mLの薬液を注入する。本方策によると、容器を回収する必要がなく、1回の訪問で、樹木に対する処理を完了することができる。
【0007】
他に関連する先行技術を開示するものとして特許文献6〜8がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−45039号公報
【特許文献2】特公昭48−1178号公報
【特許文献3】特開昭62−198338号公報
【特許文献4】特開平9−23749号公報
【特許文献5】特開2008−179589号公報
【特許文献6】特開2005−25566号公報
【特許文献7】特開2005−53885号公報
【特許文献8】特開平8−175914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら特許文献5に開示した方策は、薬液が手指に触れる可能性が高く、作業者に不快感を与える懸念がある。
即ち上記した方策は、多数の孔に、1mL程度ずつ薬液を注入するものであるから、スポイドや注射器によるはかりとり作業が必要となる。
具体的に説明すると、薬液を瓶の開口内に入れ、スポイド等で瓶から薬液を一定量吸い出し、スポイドを木の孔に挿入して薬液を木の穴に入れる。そのためスポイドを瓶に入れる際に薬液が手指に触れそうになる。
薬液で処理する木は、市街地の街路樹や神社仏閣の境内や庭園・公園の植栽等のように足場がよい位置ばかりに在るわけではなく、急斜面で足場の悪いところに植えられているものもある。そのようなところでは、電動ドリルによる穿孔とスポイドでのはかりとり、及び薬液の注入を手指に薬液を触れることなくかつ効率よく連続して行うことは不可能に近い。
【0010】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、木の孔に薬液を注入するための専用機を開発することを課題とし、薬液が手指に触れることなく注入作業を行うことができること可能にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、シリンダー部と、前記シリンダー部に連通する細管状のノズルと、前記シリンダー内を摺動するピストンと、伸縮性を有する密閉薬液タンクとを備え、前記密閉薬液タンクがシリンダー部に連通する様に取り付けられてなる植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置である。
【0012】
本発明の薬液注入装置では、密閉薬液タンクがシリンダー部に連通する様に取り付けられており、密閉薬液タンクからシリンダー部に薬液が導入される。そしてシリンダー内の薬液がピストンによって押し出され、細管状のノズルから放出される。
本発明の薬液注入装置を使用して薬液の注入作業を行うと、薬液が手指に触れる機会が少なく、作業者に与える不安が少ない。即ち本発明の薬液注入装置では、伸縮性を有する密閉薬液タンクを備え、薬液は当該密閉薬液タンクに充填される。そのため作業者は、開放容器にスポイドを入れるという作業から開放され、薬液が手指に触れる機会が減少する。
また本発明で採用する薬液容器は、密閉容器であるから、薬液が容器からこぼれることはない。ここで密閉容器から薬液を取り出すと、容器内部が負圧傾向となって薬液の注出が不能になるが、本発明で採用する薬液容器は、伸縮性を有するから、全体の容積を縮小することによって負圧傾向を解消することができる。そのため本発明の薬液注入装置では、薬液のシリンダーへの導入が円滑に行われる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、握り部と引き金部と銃身部を有していて全体形状が銃状であり、引き金部がピストンに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置である。
【0014】
本発明の薬液注入装置は、銃状であって使いやすい。
【0015】
請求項3に記載の発明は、密閉薬液タンクは、銃身部の上に取り付けられており、シリンダー部と密閉薬液タンクとの間には、弁が設けられ、当該弁は、密閉薬液タンクからシリンダー部側への流通を許し、その逆を阻止するものであることを特徴とする請求項2に記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置である。
【0016】
本発明の薬液注入装置では、シリンダー部の上に密閉薬液タンクがあり、且つ両者の間に設けられた弁は、密閉薬液タンクからシリンダー部側への流通を許すものであるから、薬液は重力によって密閉薬液タンクからシリンダー部に導入される。また前記した弁は、シリンダー部側から密閉薬液タンクに向かう流通を阻止するから、ピストンで加圧する際に薬液が密閉薬液タンク側に戻ることはない。
【0017】
請求項4に記載の発明は、密閉薬液タンクは、樹脂製であって蛇腹を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置である。
【0018】
本発明で採用する密閉薬液タンクは、蛇腹を設けることによって伸縮性を与えている。
【0019】
請求項5に記載の発明は、ピストンの移動量を規制するピストン規制手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置である。
【0020】
本発明の薬液注入装置では、ピストンの移動量を規制するピストン規制手段を有するので、一回の放出量を薬液に応じて規制することができる。そのため注入作業が容易となる他、ノズルからの垂れも少なくなり、薬液が手指に触れる機会がさらに減少する。
【0021】
請求項6に記載の発明は、シリンダー部とノズルとの間には弁が設けられ、当該弁は、シリンダー部側からノズル側への流通を許し、その逆を阻止するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置である。
【0022】
本発明によると、ピストンを動作させてシリンダー部の容積を増大させた際に、ノズル側からの空気の流入が無い。そのためシリンダー部に導入される薬液の量が安定し、一回の操作によって放出される薬液量のばらつきが小さくなる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、ノズルは可撓性を有するチューブであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置である。
【0024】
本発明によると、木の孔に挿入しやすく、作業性がよい。金属性のノズルでは、作業中に誤って人体を傷つけてしまうような事故が発生する可能性もある。
【発明の効果】
【0025】
本発明の薬液注入装置を使用して樹木に薬液を注入する場合、作業時に手指が汚れず、清潔である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る樹木に対する薬液注入装置の斜視図であり、密閉薬液タンク内に薬液が満たされている状態を示す。
【図2】図1の薬液注入装置の斜視図であり、密閉薬液タンク内の薬液が消費された状態を示す。
【図3】図1の薬液注入装置の断面図である。
【図4】図1の薬液注入装置の内部構造を示す一部破断斜視図である。
【図5】図1の薬液注入装置の分解斜視図である。
【図6】薬液注入装置1の使用時におけるピストンと弁の動作を説明する説明図であり、(a)は引き金部11を引く前の状態、(b)は引き金部11を引いている状態、(c)は引き金部11を引き切った状態を示す。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る樹木に対する薬液注入装置の正面図である。
【図8】図7の薬液注入装置を前方のノズル側から観察した斜視図である。
【図9】図7の薬液注入装置を後方側から観察した斜視図である。
【図10】図7の薬液注入装置の断面図である。
【図11】薬液注入装置1によって薬液を注入する樹木の幹を表す概略図である。
【図12】薬液注入装置1によって薬液を注入する際の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、さらに本発明の第一実施形態について説明する。
第一実施形態の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置1(以下、単に「薬液注入装置1」と称する。)は、図1,2の様に短銃形をしている。即ち薬液注入装置1は、銃形本体2を有し、銃口に相当する部位にノズル3が取り付けられ、銃身に相当する部位の上部に密閉薬液タンク6が取り付けられている。
【0028】
ノズル3は、内径が0.5mmから5mm程度の細い樹脂製チューブであり、可撓性を有している。
【0029】
密閉薬液タンク6は、ポリエチレン等の樹脂で作られており、小田原提灯の如く略円筒形で、中央部分には複数の蛇腹7が設けられている。密閉薬液タンク6の中は空洞であり、下部の開口8(図3,5)を除いて内部は密閉されている。
密閉薬液タンク6の下部の開口8の外周面には、管用ネジ(雄ねじ)が形成されている。
【0030】
銃形本体2の外側には、図1,2の様に握り部10と引き金部11及び銃身部12がある。引き金部11は、短銃の如く他の部位に対して揺動する。即ち引き金部11は、引き金部材15の一部であり、引き金部材15はピン16を介して他の部位に接続されており、ピン16を中心として揺動する。引き金部材15の引き金部11と対向する部位には、シリンダー押圧部17(図4)が設けられている。シリンダー押圧部17は円弧状をしている。
また銃形本体2の後端部にはストローク調節ネジ(ピストン規制手段)20が突出している。ストローク調節ネジ20は、銃形本体2に設けられた雌ねじと係合しており、ストローク調節ネジ20を回転させると、銃形本体2内におけるネジの突出量が変化する。
【0031】
銃形本体2の内部構造は、図3〜5に示す通りである。
即ち銃形本体2の内部は、軸方向に大きく機構部Aと、シリンダー部Bと、先端側弁室Cと、ノズルホルダー部Dとに別れている。さらにシリンダー部Bの上下の側面に供給側弁室Eと、残液排出部Fが設けられている。
また銃形本体2の内部には、ピストン21と、二つの弁22,23,及びバネ25が内蔵されている。
【0032】
即ち銃形本体2の内部は、中央にシリンダー部Bがある。シリンダー部Bは、銃身部12の長さ方向中央部にあり、銃身部12に対して同心的に設けられている。
シリンダー部Bの後端部には蓋部材26が設けられている。蓋部材26は、ある程度の長さを持つ部材であり、中央にピストン21が挿通される開口28があり、開口28の周囲にはシールが設けられている。
【0033】
一方、シリンダー部Bの先端部には小さな開口30が設けられており、シリンダー部Bは前記開口30によって隣接する先端側弁室Cと連通している。また先端側弁室Cの先端にはノズルホルダー31が設けられており、当該ノズルホルダー31にノズル3が設けられている。
【0034】
前記した先端側弁室Cには弁22が設けられている。弁22は、ハウジング35と、弁座37と、弁体38及び弁押さえ40によって構成されたものであり、逆止弁である。即ち弁22は、ハウジング35内に貫通孔41が設けられた弁座37を有するものである。また弁体38は、球形であり、弁座37と当接することによって弁座37の開口(貫通孔41)を封止する。弁押さえ40は、弁体38の動きを規制するものであり、弁体38は弁押さえ40によって弁座38からの移動距離が限定される。
前記した様に弁22は逆止弁であり、弁座37から弁押さえ40に向かう流体の流れを許し、逆を阻止する。
そして本実施形態では、弁22は弁座37がシリンダー部B側に取り付けられ、弁押さえ40がノズル3側に取り付けられているから、弁22はシリンダー部B側からノズル3側に向かう薬液の流れを許容し、逆を阻止する。
【0035】
またシリンダー部Bの上部側側面に供給側弁室Eがあり、供給側弁室Eの上部にタンク取付け口33が設けられている。タンク取付け口33は、管用ネジ(雌ねじ)が形成されている。
そして管用ネジ(雌ねじ)を介して密閉薬液タンク6が取り付けられている。
【0036】
前記した供給側弁室Eには弁23が設けられている。弁23の構造は、先に説明した弁22と同一であり、ハウジング35と、弁座37と、弁体38及び弁押さえ40によって構成され、逆止弁であり、弁座37から弁押さえ40に向かう流体の流れを許し、逆を阻止する。
そして本実施形態では、弁23は弁座37が密閉薬液タンク6側に取り付けられ、弁押さえ40がシリンダー部B側に取り付けられているから、弁23は密閉薬液タンク6側からシリンダー部B側に向かう薬液の流れを許容し、逆を阻止する。
【0037】
またシリンダー部Bの下部側側面に残液排出部Fが設けられている。残液排出部Fには雌ねじが形成され、ドレンプラグ43が装着されている。
【0038】
ピストン21は、金属で作られており、図3,4の様に、本体部45と、軸部46、バネ当接部47及び引き金係合部48によって構成されている。
ピストン21の本体部45は、円柱状の部位であり、その外径は、シリンダー部Bの内径と等しい。
軸部46は本体部45の後端側とバネ当接部47とを繋ぐ部位であり、前記した本体部45よりも細く作られている。
バネ当接部47はフランジ状であり、円板形をしている。引き金係合部48は、板状であり、バネ当接部47の円板形の平面に対して垂直方向に設けられている。そして引き金係合部48には、ピン50が設けられている。
【0039】
ピストン21は本体部45の基端部分が蓋部材26の開口28に挿通され、蓋部材26の開口28にガイドされて直線的に移動する。またピストン21の先端部分は、シリンダー部Bの内にあり、シリンダー部B内を摺動して、シリンダー部Bの先端とピストン21の先端に形成される空間52の容積を増減させる。
【0040】
機構部Aにおいては、ピストン21の軸部46があり、ピストン21の軸部46を中心としてバネ25が設けられている。
バネ25は、ピストン21のバネ当接部47と、シリンダー部Bの蓋部材26の間にあって、両者を離開する方向に付勢している。即ちバネ25は、圧縮状態でバネ当接部47と、シリンダー部Bの蓋部材26の間に装着されている。
【0041】
またピストン21の引き金係合部48に設けられたピン50が、引き金部材15のシリンダー押圧部17と当接している。
前記した様にピストン21のバネ当接部47と、シリンダー部Bの蓋部材26の間に圧縮バネ25があり、当該バネ25によって両者の間を離す方向に付勢しているから、ピストン21は、シリンダー部Bから抜け出る方向に付勢され、引き金部材15のシリンダー押圧部17の背面が、ストローク調節ネジ(ピストン規制手段)20と当接することによってピストンの位置が定まっている。
【0042】
次に本実施形態の薬液注入装置1の作用について説明する。図6は、薬液注入装置1の使用時におけるピストンと弁の動作を説明する説明図であり、(a)は引き金部11を引く前の状態、(b)は引き金部11を引いている状態、(c)は引き金部11を引き切った状態を示す。
【0043】
本実施形態の薬液注入装置1を使用する際には、予め密閉薬液タンク6内に薬液を充填しておく。実際の態様としては、薬液が充填された状態の密閉薬液タンク6を購入し、密閉薬液タンク6を銃形本体2の銃身部12の上に取り付けることが想定される。
そしてこの状態で握り部10を握り、密閉薬液タンク6を上、ドレンプラグ43が下となる姿勢に保つ。
【0044】
ここで前記した様にピストン21は、バネ25によってシリンダー部Bから抜け出る方向に付勢されており、バネ25によってシリンダー部B内では、図6(a)の様に、シリンダー部Bの先端とピストン21の先端に形成される空間52の容積が大きい。
また供給側弁室Eに設けられた弁23は、弁23は密閉薬液タンク6側からシリンダー部B側に向かう薬液の流れを許容する。そのため密閉薬液タンク6内の薬液がシリンダー部B側に落下し、シリンダーB内の空間52が薬液で満たされる。ここで密閉薬液タンク6内の薬液がシリンダー部B側に落下する際、密閉薬液タンク6が縮んで体積が減少するから、密閉薬液タンク6が負圧状態となることはない。またシリンダー部B内の空気は、ノズル3から排出される。即ちノズル3側には弁22が設けられているが、当該弁22は、シリンダー部B側からノズル3側に向かう薬液の流れを許容し、逆を阻止するので、シリンダー部B内の空気は弁22を通過し、ノズル3から排出される。
なお実際の使用時においては、引き金部11を数回空打ちすることによってシリンダー部B内の空気を排出し、シリンダー部Bの空間52を液密状態としてから使用することとなる。
【0045】
そしてこの状態で、引き金部11を引くと、引き金部材15が、ピン16を中心として揺動し、引き金部材15のシリンダー押圧部17を押圧し、図6(b)の様にピストン21をノズル3側に移動させる。その結果、シリンダー部Bの先端とピストン21の先端に形成される空間52が縮まろうとし、シリンダー部B内で薬液が圧縮される。
ここで前記した様に、ノズル3側に設けられた弁22はシリンダー部B側からノズル3側に向かう薬液の流れを許容し、逆を阻止する。
一方、供給側弁室Eに設けられた弁23は、シリンダー部B側から密閉薬液タンク6側に向かう薬液の流れを阻止する。シリンダー部B内で薬液は、開口30を経て先端側弁室Cに流れ、さらにノズル3から外部に排出される。図6(c)の様に引き金部11を引き切ると、空間52内の薬液のほぼ全てが排出される。
【0046】
使用者が引き金部11から指を離すと、バネ25の力によって図6(a)の様にピストン21が後退する。その結果、シリンダー部B内が負圧状態となり、密閉薬液タンク6側から薬液を吸引する。
即ち前記した様に、供給側弁室Eに設けられた弁23は、密閉薬液タンク6側からシリンダー部B側に向かう薬液の流れを許容し、ノズル3側に設けられた弁22は、外部からの空気流入を阻止するので、バネ25の力によって図6(a)の様にピストン21が後退すると、シリンダー部B内が負圧状態となり、密閉薬液タンク6側から薬液が吸引される。
その後は、先の動作を繰り返し、引き金部11を引くごとに一定量の薬液がノズル3から排出される。
【0047】
また本実施形態では、薬液の排出量を調節することができる。即ち本実施形態では、銃形本体2の後端部にストローク調節ネジ20があり、ストローク調節ネジ20を回転させると、銃形本体2内におけるネジの突出量が変化する。そしてストローク調節ネジ20は、前記した様にピストンの出ししろを規制するものであり、ストローク調節ネジ20を調節することによって、薬液を吸引する際の空間52の容積が決まる。
そのため本実施形態では、薬液の種類に応じて吐出量を調節することができる。
【0048】
次に本発明の第2の実施形態を図7乃至図10を参照しつつ説明する。
第2実施形態の薬液注入装置61の形状、構造は、前記した第1実施形態の薬液注入装置1と概ね同一であるから、同一の機能を果たす部材に、同一の番号を付して重複した説明を省略する。
第2実施形態の薬液注入装置61は、前記した第1実施形態の薬液注入装置1と同様に短銃形をしており、銃形本体2を有し、銃口に相当する部位にノズル3が取り付けられ、銃身に相当する部位の上部に密閉薬液タンク6が取り付けられている。
銃形本体2の外側には、握り部10と引き金部11及び銃身部12がある。引き金部11は、引き金部材15の一部であり、引き金部材15はピン16を介して他の部位に接続されており、ピン16を中心として揺動する。引き金部材15の引き金部11と対向する部位には、シリンダー押圧部17(図10)が設けられている。シリンダー押圧部17は円弧状をしている。
なお、銃身部12は透明であり、薬液の注入状況を容易に確認することができる。
【0049】
銃形本体2の上部には、第一リング部66が設けられている。また握り部10の下部には第二リング部67が設けられている。第二リング部67は、線材で作られており、握り部10に対して揺動する。
第一リング部66及び第二リング部67は、薬液注入装置1を保管する際に壁に掛けたり、持ち歩く際に紐を通す用途に使用するものである。
【0050】
銃形本体2の後端部にはキャップ62が設けられている。キャップ62は内部が空洞であり、開口端の内周部にネジ63が設けられている。そして銃形本体2の後端部にもネジ65が形成され、キャップ62は両者のネジを嵌合させることによって銃形本体2に取り付けられている。
キャップ62は、図10に示すように、ストローク調節ネジ(ピストン規制手段)20をカバーするものである。即ち本実施形態では、ストローク調節ネジ20の外周部にキャップ62が装着されており、ストローク調節ネジ20は外部に露出しない。
【0051】
なおストローク調節ネジ20は、先の実施形態と同様、銃形本体2に設けられた雌ねじと係合しており、ストローク調節ネジ20を回転させると、銃形本体2内におけるネジの突出量が変化する。
【0052】
銃形本体2の内部は、図10に示すように機構部Aと、シリンダー部Bと、先端側弁室Cと、ノズルホルダー部Dとに別れている。さらにシリンダー部Bの上下の側面に供給側弁室Eと、残液排出部Fが設けられている。
また銃形本体2の内部には、ピストン21と、二つの弁22,23,及びバネ25が内蔵されている。
シリンダー部Bの後端部には蓋部材26が設けられている。これらの構造及び機能は、先の実施形態のそれと同様である。
【0053】
次に本実施形態の薬液注入装置1,61の使用方法について説明する。
図11は、薬液注入装置1によって薬液を注入する樹木の幹を表す概略図である。図12は、本実施形態の薬液注入装置1によって薬液を注入する際の様子を示す断面図である。
【0054】
本実施形態の薬液注入装置1は、例えば、マツザイセンチュウ病の防除に用いられている。
本実施形態の薬液注入装置1で薬液を注入するのに先立ち、樹木(松)に孔60を穿孔する。孔60は公知のドリルを使用して穿孔する。孔60の直径は、1mm〜10mm程度であり、最も推奨される孔径は、3mmから7mm程度である。
孔60の深さは、3cmから10cm程度であり、少なくとも表皮を貫通する深さまで孔をあける。
孔の個数は任意であり、例えば胸高直径に応じて孔数を設定することができる。例えば、10個以上設けることが推奨される。
また孔60は、薬液がこぼれない様に、図12の様に下向きの傾斜を設けて穿孔する。
【0055】
そして孔明け作業が終了すると、薬液注入装置1のノズル3を孔60内に装入し、引き金部11を一回だけ引く。その結果、決まった量の薬液が孔60に充填される。
密閉薬液タンク6内に薬液が無くなると、新たな密閉薬液タンク6に取り替える。薬液が無くなった密閉薬液タンク6は、廃棄する。
全ての作業が終了すると、ドレンプラグ43を外してシリンダー部B内の残液を排出し、さらに内部を洗浄する。
【0056】
本実施形態の薬液注入装置で注入される薬液としては、特に限定はないが、例えば、植物保護を目的とする任意の農薬活性化合物を有効成分として含有する薬液を挙げることができる。当該活性化合物としては、例えば、殺虫性化合物、殺線虫性化合物、殺菌性化合物、等が挙げられる。
【0057】
殺虫化合物又は殺線虫化合物の例としては、以下のものが挙げられる:O,O−ジメチル O−3−メチル−4−(メチルスルフィニル)フェニル ホスホロチオアート、トランス−1,4,5,6−テトラヒドロ−1−メチル−2−[2−(3−メチル−2−チエニル)ビニル]ピリミジン酒石酸塩、(−)−(S)−2,3,5,6−テトラヒドロ−6−フェニルイミダゾ[2,1−b]チアゾール塩酸塩、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミン、(RS)−S−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアート、O−エチル S,S,−ジプロピル ホスホロジチオアート、N−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N′−シアノ−N−メチルアセトアミジン、N−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N−エチル−N′−メチル−2−ニトロ−1,1−エタンジアミン、1−(2−クロロ−5−チアゾリルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(2−クロロ−5−チアゾリルメチル)−3,5−ジメチル−2−ニトロイミノ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンなど。
【0058】
殺菌化合物の例としては、以下のものが挙げられる:ジクロルフルアニド(ユーパレン)、トリルフルアニド(メチルユーパレン)、ホルペット、フルオロホルペット等のスルフェナミド類;カルベンダジム(MBC)、ベノミル、フベリダゾール、チアベンダゾール等のベンズイミダゾール類及びこれらの塩;チオシアナトメチルチオベンゾチアゾール(TCMTB)、メチレンビスチオシアネート(MBT)等のチオシアネート類;ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ベンジル−ジメチル−ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシル−ジメチルアンモニウムクロライド等の第四アンモニウム化合物;C11−C14−4−アルキル−2,6−ジメチル−モルホリン同族体(トリデモルフ)、(±)−cis−4−[3−(4−t−ブチルフェニル)−2−メチルプロピル]−2,6−ジメチルモルホリン(フェンプロピモルフ)ファリモルフ等のモルホリン誘導体;o−フェニルフェノール、トリブロモフェノール、テトラクロルフェノール、ペンタクロルフェノール、3−メチル−4−クロルフェノール、ジ−クロルフェン、クロルフェン等のフェノール類及びこれらの塩;トリアジメホン、トリアジメノール、ビテルタノール、テブコナゾール、プロピコナゾール、アザコナゾール、ヘキサコナゾール、プロクロラズ、シプロコナゾール、1−(2−クロルフェニル)−2−(1−クロルシクロプロピル)−3−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−プロパン−2−オール、1−(2−クロルフェニル)−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イル−メチル)−3,3−ジメチル−ブタン−2−オール等のアゾール類;イオドプロパルギルブチル−カルバメート(IPBC)、イオドプロパルギルオキシエチルフェニルカルバメート等のイオドプロパルギル誘導体;ジイオドメチル−p−トリル−スルホンのようなジイオドメチル−p−アリール−スルホン等の沃素誘導体;ブロモポール等の臭素誘導体;N−メチルイソチアゾリン−3−オン、5−クロル−N−メチルイソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロル−N−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、N−オクチルイソチアゾリン−3−オン(オンチリノン)、ベンズイソチアゾリノン、シクロペンテン−イソチアゾリン等のイソチアゾリン類;1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオン、テトラクロル−4−メチルスルホニルピリジン等のピリジン類;2,4,5,6−テトラクロルイソフタロニトリル(クロルタロニル)等のニトリル類;Cl−Ac、MCA、テクタマー、ブロモポール、ブロミドックス等の活性ハロゲン基を有する殺菌剤;2−メルカプトベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール類;イプロジオン、ビンクロゾリン、プロシミドン等のジカルボキシイミド類;タゾメット等;8−ヒドロキシキノリン等のキノリン類、など。
【0059】
灌木枯殺化合物を注入することもできる。灌木枯殺化合物の例としては、以下のものが挙げられる:2−メトキシ−3,6−ジクロル安息香酸ジメチルアミン、2−メトキシ−3,6−ジクロル安息香酸ナトリウム、4−アミノ−3,5,6−トリクロロ−2−ピリジンカルボン酸カリウム、塩素酸塩、スルファミン酸アンモニウムなど。
【0060】
植物栄養物質を注入することもできる。植物栄養物質の例としては、以下のものが挙げられる:ナトリウム クロロフイリン、ナトリウム 銅 クロロフイリン等のクロロフイル基本構造を有する水溶性金属化合物;鉄、亜鉛及びマグネシウムよりなる群から選ばれた元素を供給する水溶性化合物、例えば、水溶性鉄化合物の例として、塩化第一鉄、硝酸第一鉄、硫酸第一鉄、硫酸アンモニウム第一鉄、酢酸第二鉄、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、クエン酸第二鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グリセロ燐酸鉄、酒石酸第二鉄、乳酸第二鉄、グリコール酸第二鉄等;これらの水溶性鉄化合物に対応する水溶性マグネシウム化合物及び水溶性亜鉛化合物;クエン酸及び硫酸の第二鉄−亜鉛複塩、同第二鉄−マンガン複塩、同亜鉛マンガン複塩、など。
【0061】
上述した化合物については、1種のみを採用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
薬液は、通常、前記したような活性化合物を溶剤及び/又は界面活性剤等に溶解、乳化若しくは懸濁させてなる液状製剤の形状で使用される。溶剤は水または水と混和しうるものが好ましく、具体的には、水、メタノール、エタノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びこれらのエステル及びエーテル類等のグリコール類、などを用いることが好ましい。
【0063】
一方、活性化合物が水に殆ど溶けないものである場合には、界面活性剤を併用してもよい。界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系のいずれのものも採用可能であるが、ノニオン系界面活性剤が特に好ましい。ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンヒマシ油類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物類、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類及びプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、などが挙げられる。
【0064】
薬液注入の対象となる樹木としては、アカマツ、クロマツ、エゾマツ、トドマツ、カラマツ、ドイツトウヒ等のマツ類;スギ、サワラ、ヒノキ等のスギ類;サクラ類、などが挙げられる。
【0065】
薬液による殺虫・殺菌対象となる有害生物としては、樹木に寄生ないし感染しうる昆虫、線虫、カビ・菌類、バクテリア等が挙げられる。昆虫の例としては、カミキリムシ類、キクイムシ類、ゾウムシ類、コガネムシ類、ハムシ類等の甲虫目;タマバチ類、ハバチ類等の膜翅目;タマバエ類等の双翅目;アブラムシ類、キジラミ類、カイガラムシ類、ハゴロモ類、アワフキムシ類、カメムシ類等の半翅目;ケムシ類、ミノムシ類、シャクトリムシ類、シンクイムシ類、ハマキムシ類、スカシバガ類、ボクトウガ類、コウモリガ類等の鱗翅目、等が挙げられる。線虫の例としては、マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus Nickle)等が挙げられる。
【0066】
カビ・菌類及びバクテリアの例としては、プラスモデイオホロミセテス(Plasmodiophoromycetes)、オーミセテス(Oomycetes)、キトリディオミセテス(Chytridiomycetes)、ジゴミセテス(Zygomycetes)、アスコミセテス(Ascomycetes)、バシジオミセテス(Basidiomycets)及びドイテロミセテス(Deuteromycetes)に属する種々の植物病害微生物;シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、リゾビウム科(Rhizobiaceae)、エンテロバクテリア科(Enterobacteriaceae)、コリネバクテリウム科(Corynebacteriaceae)及びストレプトミセス科(Streptomycetaceae)に属する種々の植物病害微生物、等が挙げられる。
【0067】
また薬液注入装置1,61を使用して、植物周辺の土壌に薬剤を注入してもよい。
【実施例】
【0068】
2008年5月に、駐車場の法面に植栽されている松50本に対し、図1に示す薬液注入装置1を使用してマツノザイセンチュウによる松枯れ防止用の樹幹注入剤(塩酸レバミゾール50%含有)を注入した。対象となった松は、10年〜20年生であり、平均胸高直径は15cmである。作業は、2名で行い、内1名が地表より1m前後の高さの樹幹周囲に電動ドリルで薬液注入用の孔を穿孔した。孔の大きさは、直径5mm、深さ5cmであり、孔の間隔は、約8cmである。孔の総数は(松50本に対する合計)は283個であった。そして別の作業員が、前記した孔に対して薬液注入装置1を使用して薬液を注入し、さらに樹木の腐朽を防ぐために孔に癒合剤を塗布した。薬液の注入量は、各1mLとした。
【0069】
上記した作業中、作業者が薬液に触れたのは、密閉薬液タンク6を取り替える際だけであり、孔に対して薬液を注入する際には薬液に触れることはなかった。薬液の注入に要した時間は、約90分であった。2008年12月に現場を訪れて経過を観察したが、いずれの松も生育不良は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、樹木等の植物を病害虫から防御する用途や、有害な植物を枯死させる用途に使用するものであり、農業及び林業の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 薬液注入装置
2 銃形本体
3 ノズル
6 密閉薬液タンク
7 蛇腹
10 握り部
11 引き金部
12 銃身部
15 引き金部材
20 ストローク調節ネジ(ピストン規制手段)
21 ピストン
22 弁
23 弁
43 ドレンプラグ
B シリンダー部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー部と、前記シリンダー部に連通する細管状のノズルと、前記シリンダー内を摺動するピストンと、伸縮性を有する密閉薬液タンクとを備え、前記密閉薬液タンクがシリンダー部に連通する様に取り付けられてなる植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置。
【請求項2】
握り部と引き金部と銃身部を有していて全体形状が銃状であり、引き金部がピストンに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置。
【請求項3】
密閉薬液タンクは、銃身部の上に取り付けられており、シリンダー部と密閉薬液タンクとの間には、弁が設けられ、当該弁は、密閉薬液タンクからシリンダー部側への流通を許し、その逆を阻止するものであることを特徴とする請求項2に記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置。
【請求項4】
密閉薬液タンクは、樹脂製であって蛇腹を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置。
【請求項5】
ピストンの移動量を規制するピストン規制手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置。
【請求項6】
シリンダー部とノズルとの間には弁が設けられ、当該弁は、シリンダー部側からノズル側への流通を許し、その逆を阻止するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置。
【請求項7】
ノズルは可撓性を有するチューブであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置。
【請求項1】
シリンダー部と、前記シリンダー部に連通する細管状のノズルと、前記シリンダー内を摺動するピストンと、伸縮性を有する密閉薬液タンクとを備え、前記密閉薬液タンクがシリンダー部に連通する様に取り付けられてなる植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置。
【請求項2】
握り部と引き金部と銃身部を有していて全体形状が銃状であり、引き金部がピストンに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置。
【請求項3】
密閉薬液タンクは、銃身部の上に取り付けられており、シリンダー部と密閉薬液タンクとの間には、弁が設けられ、当該弁は、密閉薬液タンクからシリンダー部側への流通を許し、その逆を阻止するものであることを特徴とする請求項2に記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置。
【請求項4】
密閉薬液タンクは、樹脂製であって蛇腹を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置。
【請求項5】
ピストンの移動量を規制するピストン規制手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置。
【請求項6】
シリンダー部とノズルとの間には弁が設けられ、当該弁は、シリンダー部側からノズル側への流通を許し、その逆を阻止するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置。
【請求項7】
ノズルは可撓性を有するチューブであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の植物又は植物周辺土壌に対する薬液注入装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−193802(P2010−193802A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42904(P2009−42904)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(393000928)株式会社日本グリーンアンドガーデン (11)
【出願人】(000149309)ジョプラックス株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(393000928)株式会社日本グリーンアンドガーデン (11)
【出願人】(000149309)ジョプラックス株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]